第3話ファーストミッション

 公園のベンチに、二人の美少女がベンチにかけてアイスクリームを食べている。4月初旬という季節は、ここN市でも桜色の花びらが街を彩る。片方はただの薄いブルーの綿のシャツにジーンズ。長い髪の毛は一つにまとめ三つ編にしている。もう片方はチェックのミニスカートに黄色いパーカー。おしゃれをしていると言うよりは、動きやすい服装を選択しているようだ。
 長髪の少女が自分の足元に何かぶつかったことに気がついた。足元を見ると、ボールが転がってきている。向こうから小さな男の子が走ってきた。少女は立ち上がって、ボールを拾い、男の子のほうへ歩いていった。
男の子の前に来たとき、しゃがんでにっこりと笑った。
「はい、ちゃんと捕まえておくのよ。」
男の子もにっこりと笑い返した。
「おねえちゃん、ありがとう」
手を振って走っていく男の子を後ろから見ていた。
「おねえちゃん、か」
見知らぬ男の子からそう言われると、自分が今女の子であることが実感できる。つい3月ほど前までは、自分も「男の子」であったはずなのに。彼女が今の出来事の余韻に浸っていると、もう片方の女の子がちょっかいをかけてきた。
「真琴ちゃん、やさしいっ。このこのっ」
亜紀はいつのまにか背後にいて、真琴のことを指でつつく。
 真琴はちょっと不機嫌になった。彼女の顔から微笑みが消える。亜紀は真琴の正面へ回り込んできた。そこで、真琴は亜紀に尋ねる。
「冷やかさないの。ところで、亜紀ちゃん。私のアイスクリームは?」
「えへへ。食べちゃった。」
ぺろっと亜紀が舌を出す。
「こらっ!」
真琴の手が亜紀の頭上に上がった。
「ごっめ〜ん。後でちゃんとおごるから、ちゃいして?」
「もうっ。」
 見た目ほどには、真琴は怒ってはいない。そのあたりは彼女はわきまえている。彼女は自分の感情をストレートに出すようなことをしない。そういう性分なのである。彼女が本気で怒ったら、このN市は壊滅に陥るだろう。この二人は科学が生み出した徒花。脅威の生体兵器なのだから。
 真琴は左手首の腕時計を見た。
「そろそろじゃない?」
「そうだね」
真琴はベンチから立ち上がり、亜紀はくるりと後ろを向く。そろそろ目的地へと行かなければならない。もうターゲットが動き出す頃合いのはずだ。

真行寺の執務兼研究室は意外に殺風景である。そこに海野真琴と更科亜紀の両名はやってきた。真行寺は自分のデスクの上の端末をなにやらいじっていた。
「海野真琴、更科亜紀、ただいま到着しました」
凛とした真琴の声が真行寺の耳に届いた。
「待ってたよ、そこのソファに座ってくれないか?」
そういうと、内線を取った。
「私だ、コーヒーを一つ、ああ、いつもの通りだ。後、紅茶の方がいいかな?紅茶を二つ、私のラボまで頼む。ああ、あの子達だよ」
 真行寺博士は20代の後半という若さにして、バイオテクノロジーの俊英。しかし、当代随一のヲタクでもある。年がら年中アニメのプリントTシャツか、アニメのプリントのトレーナーの上に白衣、という人間も珍しい。しかも、それを誇りに思っているのだ。本物のヲタクは周囲のことなど歯牙にもかけない。周りが見えているうちは、真のオタクではない。ただの逸般人である。理解されなくて一般人に恨みを抱くなど、オタクにあるまじき行為だ。しかし、今白衣を着て内線に向かっている姿は希代のマッドサイエンティストというよりは、普通の科学者に見える。
「すまないね。今お茶を持ってこさせるから。用件をまず伝えておこうか。君たちにはN市へと行ってもらいたいんだ」
「N市ですか?」
 真琴は真行寺に聞き返した。
真琴と亜紀がこのあまり相手にしたくない男に会いに来ているのは、彼に呼び出されたからだった。彼の身分は、一応自衛隊の士官なのだ。彼女たちも特例として自衛官として任官していることになっている。したがって、真行寺博士は一応彼女たちの上官、ということになる。
「君たちの任務は、N市に住む男子高校生、座間勇一を捕獲すること。まあ、調整槽にぶち込むから、足が一本もげようが手がなくなろうが、かまわん。奇麗に再生してやる。しかし、殺すなよ。我々が欲しいのは彼の類いまれなる戦闘能力で、DNAじゃないんだ。」
「類いまれなる、ってどの程度なんですか?」
待っていましたと言わんばかりに、真行寺博士はテーブルの天板の下側のボタンを押した。何の変哲もない天井から支柱が延び、大画面平面ディスプレイが降りてきた。そのスクリーンに、学生服を着た、一人の男子高校生の映像が浮かぶ。
「これは?」
「座間勇一の捕獲作戦は、過去に何度も行ったのだが、その全てが失敗に終わったのだ。」
映像が続いた。黒眼鏡の男達が勇一に襲い掛かる。黒眼鏡の右ストレートが勇一に向かうが勇一は軽々とよける。次々と黒眼鏡が勇一に飛び掛かるが、黒眼鏡の拳は一発もあたら図、勇一の手足の肘が奇麗に黒眼鏡達に入る。彼らが矢継ぎ早に来なくなるのを見ると、勇一はにやりと笑うと、予備動作に入った。
 今だ!と、真琴は思う。一瞬勇一に隙が出来た。黒眼鏡達はそれを見逃さない。右拳を構えながら、勇一の間合いに飛び込んでいく。その右拳が勇一の胸元に入ろうとするや否や、勇一が叫んだ。
「ギャラクティカ・マグナム!!!」
真琴は信じられないものを見た。おそろしいことに、勇一の拳を受けた黒眼鏡5号は10mは吹っ飛んだ。
「へへへ、リングにかけろ!を熟読してこれだけはマスターできたんだ。」
勇一が黒眼鏡たちに言っている。
 座間勇一、16才。身長は162cm。男性としてはかなり小柄な部類に入るが、そのコンプレックスをばねにしてか戦闘能力は抜群であった。おかげで、政府直属の特殊部隊の人間が彼に数々の敗退の山を築くことになった。
 あるものは、勇一に顎を砕かれ、あるものは肋骨を折られた。死ななかっただけマシという話もあるが人的被害は甚大である。彼を殺すことが目的なら、ここまで苦労することはなかっただろうが、目的は生け捕りだ。しかし、生け捕りをするには戦闘能力において彼よりも幾段か上にいる必要がある。そして、真行寺博士の側で彼の戦闘能力を上回れそうな駒、というと、亜紀と真琴の両者しか残っていなかったのだ。
この映像を見たとき、亜紀が始めて声を出した。
「な、何よこの子」
人間技ではない。
「作者も科学的考証をあきらめたのかしらね?」
真琴が首をかしげる。
「これで一応マッドなサイエンティストを目指していたとか言うんだから笑えるよね」
亜紀がころころと笑い転げる。
「その結果が工学部中退じゃ笑えないよね」
貴様らっ。創造主に対してなんたる言い草だっ。削除してやる。
「いいわよっ。それで話を続けられるならね。」
真琴が上を向いて大きな声で言い放った。くっ。作者の負けだ。
「取り込み中、悪いんだが、話を続けてはいいかな?」
ぬっ、と二人の眼前に真行寺の無精ひげの顔が大アップで浮かび、真琴達はつい一歩あとずさった。
「は、はい」
声が震えている。よっぽど恐ろしいものをみたのだろう。しかしそれにかまわず真行寺はこほん、と咳をしてから話を続けた。
「こんな常識外れな奴相手にまともに相手はしてられないしね。ということで訓練も兼ねて君たちに行ってもらいたいわけだ。」
「は、はあ」
「色仕掛けでも脅迫でもなんでもかまない。とにかくこいつをここにつれてきてくれ。」
「わかりました」
ということで、彼女たちは今N市にいる。

 N市にある県立高校。その校門の前で、真琴達は勇一を待っていた。先ほどの公園からはそれほど離れていない。情報によると彼は学校が終わったらすぐに、校門から出てくるらしいので、待ち伏せることにした。時刻は3時40分。そろそろ勇一が出てくるはずだ。
「あ、真琴ちゃん。あれあれ」
亜紀がターゲットを発見したようである。学生服にボストンバッグを肩に抱えている。
「どうする?」
亜紀が聞くが、どうするもなにも、とりあえずアタックあるのみだ。
「ここはお約束よね。」
「亜紀ちゃん、作戦第一号よ」
「えーっ、私がいくの〜?」
真琴の目が怪しく光る。
「あなた以外に適任者はいないでしょ。さ、早く早く。」
しぶしぶ亜紀は勇一のそばに走っていった。
「あ、あの・・・」
いじらしい女の子のふりをして、亜紀は勇一の前に立ちはだかり、声をかける。
「なんだお前?用がないなら先に行くぞ」
どうも、こいつは女には優しくないようだ。
「あ、あのっ・・・・好きです。つきあってくださいっ!」
この言葉は亜紀は心臓がドキドキするのを我慢して、周りに聞こえるように自分が可能なかぎり大きな声を出した。もちろん、周囲に聞こえるように、である。
「断る。」
ここで予測されるリアクションは、一瞬戸惑う、ところであろう。しかし、勇一は並の神経ではなかった。何事もなかったように、そう言いきる。しかし、亜紀もなかなか役者であった。そうは問屋が卸さない。
「ひどいっ!『趣味じゃない』とか『ブス』だとか言わなくてもいいじゃないっ」
亜紀は絶叫した。目には涙を浮かべている。亜紀の大袈裟な反応に、勇一と同じように帰宅しようとする学生の目が止まった。
「座間君、女の子泣かせるなんてサイテー」
「勇一もなかなかやるなあ。」
あちこちから冷たい視線が勇一に注がれ、ひそひそ声が聞こえる。
「ち、違うんだ。俺はこんな子知らないぞ」
「ひ、ひどいっ。あんなにしてくれたのに、知らないなんてっ」
女の涙は、おそろしい。しかし、勇一の神経は真琴と亜紀の想像を遥かに超えてずぶとかった。
「ホントに君のことなんて知らないんだ。人違いだろ、じゃな。」
亜紀に軽く手を振りながらすたすたと勇一は歩いていく。呆然となっている亜紀と、唖然としている一般大衆がそこに取り残された。
「し、信じられない」
真琴はぽつりとそう言った。作戦はひとまず失敗に終わった。

 二人はN市内のホテルに宿を取っていた。女の子二人で訝しがられはしたが、金払いは確かだから、ホテルも文句は言わない。真琴はベッドに座って本を読んでいて、亜紀はふてくされてベッドに寝っ転がっていた。
「あ〜あ、あんなにデリカシーのない馬鹿だとは思わなかったな。こんなかわいい女の子が相手にしてるっていうのにさ。」
 亜紀は両手を突いてベッドの上に座り直すと、亜紀は真琴に言った。ラボのスタッフやエージェントのハートをがっちりロックしている彼女なりの発言だ。だいたい、男の子だったときも男の子からナンパされた事もあるのだ。もっとも彼にそんな趣味はなかったので、事実を述べてそのまま途中で逃げられてしまうのだが。
「そうよね。普通ついていくわよね。」
 この時点で亜紀はすでに真琴のそばにいなかったのだが、いろいろと考え事をしていたので、真琴はそのことに気づいていなかった。真琴は別の視点からものを言っている。普通の男の子であれば、彼はついていくはずだ、と言っているのだ。今の亜紀は普通の男の子なら誰でもついて行ってしまうようなかわいい少女だ。この子についていかないなんて、彼はいったい・・・
「不感症かしら?」
断っておくが、彼女たちもつい最近まで健康的な男子高校生だったのだ。かわいい女の子を目にしたときの心理はよくわかる。普通かわいい女の子から「付き合ってください」とかいわれて邪険に扱うそういう馬鹿な男がいるとは思えない。
「まさか、私たちの事に気づいた、とか?」
「あの無神経に、そんなことあるわけないじゃん。」
亜紀が横から顔を出した。
「わあっ!」
亜紀はバスタオルを巻いた姿でそばにいる。
「いきなり出て来ないでよ」
「ごめんごめん、シャワー空いたよ。使ったら?」
「そうね。」
真琴は気分を切り替えて、鼻歌を歌いながら、シャワーを浴びる準備を始めた。

 早朝の公園。公園といっても、ここはかなりの広さがある。
座間勇一は一人で訓練に励んでいた。早朝のランニングは彼の日課だ。毎朝学校に行く前にこの公園で一通りの訓練メニューをこなす。ランニング、腕立て伏せ、腹筋、背筋など、各種筋肉トレーニングに励む。  一息ついてベンチに座ろうとすると、見知らぬ少女がタオルを持って立っていた。
「どうぞ」 勇一は立ったままタオルを受け取った。彼女もジャージに身を包んでいて、長い髪は編んで上でまとめている。日頃から体を動かしていることが体のあちこちから勇一には感じられた。
「毎朝、鍛練に励んでいるのね?」
「ああ、強くなりたいからな。」
 少女がやや表情を曇らせたのが勇一にも分かった。 「強いって本当にいい事だと思う?」
「思わないね。強さは人を見失わせる。でも強くなろう、という思いが見せる人間の輝きは何ものにも代えられないと俺は思う。だから、俺は強くなろう、としてるんだ。」
真琴はさらに悲しそうな顔をした。でも、さっき見せた悲しさとは別のものだった。
「そうね。私もそう思うわ。座間勇一君」
そして僕もそうしたかったよ。座間勇一君。
そしてもっと強くなった君を見たかったよ。
「尊敬している人とかいるの?」
「別にいないよ」
いつのまにかベンチに勇一は腰掛けていた。
「でもそうだな、強い奴は好きだよ。あんたみたいにね」
勇一は不敵に笑った。真琴は彼にとって自分が何なのかを理解していることを悟った。
「じゃあ、単刀直入に言うわね。私についてきてちょうだい」
「そうか?ついてこない場合は力づくで、とでもいうつもりかな?」
「そうよ。悪い?」
真琴も少し微笑んだ。
 二人はベンチから立ち上がって、お互いに構えた。対峙して数十秒の時間が過ぎた。先に口火を切ったのは、勇一の方だった。 「ちょっとはやるようだな。女だと思って手加減はしないぞ。いくぞ!ギャラクティカ・マグナム!」
しかし、勇一の拳は真琴には届いてはいなかった。彼のこぶしをほぼ掠める位置に真琴は立っていた。
「いくら強力でも当たらなければ意味ないわよね」
今度は真琴が不敵に笑っている。
「えいっ」
真琴からの蹴りが勇一に飛んだ。勇一が両手を交差させて受ける。
(やるな。さすがは、というところか・・・)
心の中で真琴は思った。
(こいつ、強い。女だかと思ってなめてかかると、痛い目に遭うな)
勇一も同じことを考える。
ひたすらに技の応酬が続く。片方が蹴るともう片方が受ける、もう片方が突くともう片方がよける。
「このままじゃきりがないわね」 真琴も手加減をするのをやめにすることにした。予備動作を大きく取る。 「勇一君ごめんね」
そうつぶやきながら、足を一歩踏み出し、腰をひねり、全身の力が右腕に込められ、加速された右拳が勇一に襲い掛かった。勇一はその突きを受けた。受けてそのまま返し技に持って行こうとした。しかし、彼の読みは甘かった。 「ぐわぁ〜〜〜〜」
言葉にならない絶叫が公園に響いた。真琴の突きは勇一の両腕を砕き、肋骨をも砕いた。激痛でそのまま彼は崩れ落ちた。それを見届けると、真琴はそれ以上見ていられずに、彼を背にして歩き出した。
「ま、まだ戦うぞ。」
幽鬼のように立ち上る勇一を背後に感じた。 「やめましょう。あなたをこれ以上傷つけたくないの。」
勇一はその場で倒れた。痛みで意識が飛んだのだ。
エンジン音が聞こえてきた。
ヘリが真琴の立っているところに降りてきた。数人の黒眼鏡の男達が降りてきて、勇一を担架に乗せて、ヘリに乗せる。
「さすがですね。我々が束になってかかっても勝てなかったというのに。」
黒眼鏡の一人が真琴に言った。
「貴方はこんな力が欲しいですか。私は欲しくなかった。」
男は無言だった。
男達がヘリに乗り込み、ヘリが上昇していくのを見上げながら、真琴はぽつりと言葉を漏らした。
「ごめんね。勇一君」
目に涙が浮かんでいた。

ここは、真行寺博士のラボである。
少女が全裸でカプセルの中に浮かんでいた。
「心拍数平常。血圧平常。体温37℃。アポートーシス反応正常。」
白衣の科学者達がモニターを見る。
「『調整』は順調に進んでいますね。博士。」
「ああ、この子には申し訳ないが、日本の未来のためだ。」
なかなか気の利いたジョークのつもりなのかもしれない。その証拠に白衣の科学者達の表情はどこか、ニタニタしている。地球の平和を守るための戦士を生み出す、という崇高な使命のために、非人道的な処置を悲痛な気持ちで、行っているという気持ちは微塵も感じられない。彼らは自分の趣味のために突っ走っているのだ。
「『調整』完了です。お姫様が目を覚ましますよ。」
「何度やっても、この瞬間は萌えるよなあ。」
助手の一人がパネルを操作し、カプセルをあけた。
少女がゆっくりと目を覚ます。
「お目覚めかな、座間勇一君。」
真行寺正志は全裸の少女に語りかけた。
勇一は混乱していた。
俺は朝、いつもの鍛練の途中で、あの少女とやりあって、そして奴の突きを受けて・・・
そして。気がついたら、ここにいた。
どうも変だ。
自分の体に違和感を感じている。いつも感じるものを感じず、いつも感じないものを体に感じる。別の入れ物に入っている、とでもいうのだろうか?
下を見ると、胸の膨らみが自分の眼前に見える。
「おめでとう、座間勇一君。君は生まれ変わったのだ。美少女としてね」
カプセルのガラスに少女が映っていた。
勇一が口を開けると口を開け、勇一が片目を閉じると片目を閉じる。
その少女が自分である事は、嘘ではないようだ。
「どういうことだ?」
「いいにくいことだが、君に日本の未来を託す事にした。君は今日から地球を守る戦士だ!」
大嘘である。彼女たち生体兵器が必要な理由は河原崎からは真行寺は聞かされていない。
「バイオテクノロジーを駆使して、君の体を作り替えたのだ。」
勇一を指差しながら、白衣のヲタクな男、−真行寺正志博士と名乗っている−、半径2m以内には絶対に近づきたくならないその男はそう答えた。
「地球外生命体が地球を侵略しようという情報をペンタゴンが入手した。そこでわれわれは、バイオテクノロジーを駆使し、彼らと戦うための戦士を生み出す事にしたのだ。それが君たちだ。」
「それはそうとして」
勇一は自分の体を見回した。
「俺が女になっているのはどういうことだ。」
「女性の方が何かと油断されやすい」
それは勇一が身を持って知った。もしあれほどの突きを彼女が繰り出せる事がわかっていたら、彼は別の戦い方を考えただろう。女だから、という甘さが彼にあった事は否めない。だがしかし。
「だったら、女の子を集めりゃいいだろ。改造するなら、能力のハンデは補えるはずじゃねーか」
「それにはふか〜〜〜い、事情がある。」
真行寺は、くるり勇一に背を向けた。こぶしをにぎりしめ、肩を震わせている。突然、真行寺が振り返った。
「それはな。」
勇一はごくりとつばを飲み込んだ。
「元男の方が萌えるからだ。」
改造強化された勇一の右ストレートが真行寺のボディに炸裂した。真行寺はその場でうずくまった。

「君たちに新しいメンバーを紹介しよう。」
真行寺博士は勇一を二人の少女に紹介した。
「あ〜〜〜〜!お前らは」
勇一は絶叫した。
片方は自分に突きを食らわし腕を砕いた張本人。あの髪の長い少女だ。今日は髪の毛をおろし、ブラウスとロングのスカートといういでたちである。もうひとりは、自分の目の前で泣いてみせた小悪魔。フリルのミニスカートがよく似合っている。
「海野真琴です。よろしく。」
髪の長い方が答えた。
「更級亜紀っていいます。よろしくお願いしま〜す」
「こちらは、座間勇一君。二人とも名前は知ってるな。」
「もしもし、まさかこの子達も?」
勇一の顔に青線が入る。
「そうだよ。もとは男だ。萌えるだろう?」
と言ったところで、真行寺はポンっと手をたたいた。
「ところで、これが君の服だ。着てみたまえ。」
亜紀に更衣室に連れて行かれて、着替えて勇一は戻ってきた。デニム地のミニスカートに、明るい色のセーター。髪の毛はポニーテール。靴はスニーカー。
活動的な少女、という雰囲気だ。
「うんうん、やっぱり女の子はミニだねえ。萌えるなあ」
「バカヤロー」 座り込んで勇一のひざとふとももをじっとみる真行寺に、勇一はひじを食らわせた。

勇一に眠らされた真行寺をよそに、亜紀が騒ぎ出した。
「うわあ、かわいくなっちゃったよねえ。」
亜紀が勇一をまじまじとみつめる。
「あの時はごめんね。」
そう言ってから深々と亜紀は勇一にお辞儀をした。
「ごめんですむかっ。貴様らのせいで、貴様らのせいでこんな姿にされたんだぞっ」
亜紀は不思議そうな顔をして勇一に言った。
「どうして?いっちゃん、そんなにかわいいのに?」」
勇一は誰の事だと思ってきょろきょろした。
「いっちゃんってだれだ?」
「あなたのこと。勇一じゃ男の子の名前だし、かわいくないから、いさむじゃあれだし、いさみでいいかなって。だからいっちゃん。」
「人の名前を勝手に決めるんじゃないっ!」
「いいじゃないの、いさみちゃんで。かわいくて」
真琴が苦笑いしている。
「ほら決まり、今日からあなたはいさみちゃんっ」
亜紀がうれしそうに勇一を指差した。
勇一がテーブルに手をついて叫んだ。
「き、貴様らには男としてののプライドはないのかっ!」
「そんなの、初めっからないもん。」
亜紀があっさりと返答した。
「ま、まあ、今更持とうと思ってももう持てないわよね。」
苦笑いしながら真琴もそう返答する。
二人の態度に勇一は頭を抱えていた。

次回予告

いさみげー、なんだよこの格好
真琴なにって制服じゃない。
亜紀いっちゃんにあうにあう
いさみどうしてこんな格好俺がしなきゃならないんだ
真琴あなたは今日から私たちと同じ学校に転校するの。クラブ=ノーマの一件でちょっと遅れたけれど、今日からあなたも花の女子高生よ。
いさみえ〜。なんか恥ずかしいなあ。
亜紀男勝りの女子高生だっているんだから、別にいつものいさみちゃんでいいわよ。次回第四話 座間いさみの長い1日 をよろしくね。
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