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虚構現実

























































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虚構現実 - Simulation -
作:S.F.



机の上のデジタル時計はすでに、深夜1時を過ぎていた。
薄汚れたアパートの1階の隅の部屋にその男はすんでいた。
その男は部屋の電気を消し、足だけ布団に入れながら、
3日前に秋葉原で購入した恋愛シュミレーションゲームを楽しんでいた

その男は俗にいうオタクであった。

狭い4畳半の部屋には山のようにゲームがつみあげてあった。

時計が3時を過ぎたころ、男はゲームデータを保存し、布団に入った。
遅い時間だったこともあって、その男はすぐにねむりについた

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どれくらい時間が過ぎたのかわからない。
目覚し時計が鳴ったような気がした。
体が動かない、さらにどんなに力を込めても目が開かない。
「なんでだ、なんでおきられないんだ!」
男は叫んだつもりだった。しかし、声も出なかった。
「だれか!、たすけてくれ!」
もう一度叫んだところで男はおもいついた。
「そうだ、俺はまだ寝ていて、夢を見ているんだ」
そう思うほかに手だては無かった。
「やな夢だな、早く覚めてくれ!」
しかし、いぜんとして目は覚めないし、体も動かない。
「たすけてくれー」

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おそろしく長い時間が経ち、ガタンと言うドアの開く音がした。
「そうだ、今日は友達がくるんだ!」
男は思い出してさけんだ。
「助かるぞ」

しかし、体を揺さぶられている感じもしない。

「なんでだ、なんであいつは俺を起こさないんだ」
遠くのほうから友達の声が聞こえてきた。
「ったく、あいつどこに行ったんだよ!」
「さきにゲーム始めるか」
そんな声が聞こえてきた。
「そんなばかな、俺は部屋にいないのか?」

ガチャッっという音とともに目の前が明るくなった。
「俺は、起きたのか?」
しかし体の自由がきかなかった。
少しの時間が過ぎ、目の前に見慣れた町の景色が広がった。
「やった、助かったぞ」
しかし何か変だ。髪の毛が、うしろに引っ張られる感じがした。
「なんだこれは!」
男は下を見た瞬間に思った。
自分は太っていたので気づかなかったが、あきらかに胸が膨らんでいる。
さらに、腹が出ていない、
「なんだこれは!!」
男はもう一度叫んだ!
自分がどこかの学校の制服を着ているからだ。
「なんだこれは!!!」
どうも足が寒く感じ下を見た瞬間、男は叫んだ。
プリーツの入ったミニスカートを着ているのである。

近くに鏡が置いてあるのに気づき、かがみを見た瞬間。
男はもう一度さけんだ。
「なんだこれは!!!!」
そこには30過ぎの眼鏡をかけた、むさくるしいデブ男ではなく、
目が大きく、髪の毛をポニーテールにゴムで縛り、ほっそりした体つきの
美人というよりはかわいい感じの女の子がたたずんでいたからである。
「そんなばかな」と言いながら、おそるおそる自分の股に手を当てると、

無い、 確かに無い。

気が変になりそうだった。

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窓から外を眺めた。
この景色にはどことなく見覚えがある。
次の瞬間、頭を押さえてつぶやいた。
「・・・そんなばかな、自分がゲームの中にいるなんて・・」
「・・・しかも女で・・」
その男、いやその女の子はさらにふさぎこんだ。

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とつぜん、ギシギシというだれかが階段を登ってくる音がした。
「かくれないと!」
その元男はつぶやいた。
しかし隠れられそうなところはどこにもない。
かいだんをあがってきたのは30代後半ぐらいの女性だった。
その元男は疑問に思った。
たしかにその女性に怒られはしたが、なんだか雰囲気がちがう。
しかもその女性は自分のことを、由美と呼んでくるではないか。

その元男は女性にたずねた。
「由美ってだれですか?」
しかし相手の女性は、首をかしげてこういった。
「由美、あんたいったいどうしたの?」

元男は考えた。
(もしかして俺は、ゲームのキャラになっているのか?)
(いやいやそんなはずはない!そんなこと起こるわけないからだ)
しかし、そう考えるほかにてだてはなかった。

相手の女性は大きな声で呼びかけてきた。
「由美!いそがないと、転校初日から遅刻するわよ!」

いまさら自分が由美ではないと話しても無駄だろうと、
その元男、いや由美は考えた。

しかし学校へ行けと言われても、どこの学校かわからない。
へたに聞いても、また怒られるだろう。
だが、考えるよりも先に口が、動いていた。
「おかあさん、寂しいから校門までついて来て」
由美は、なんでおかあさんと言ったのかわからなかった。
しかしその女性はこう答えた。
「もうっ、今日だけよ」
そういうと、母親は車のキーをとった。

5分ほど走っただろうか、車はどこかの学校の校門の前に止まった。
由美は校門のまえに立ったときに、なんだか前にきたことがあるような気がした。
だが校舎に入ると、その理由がはっきりした。
(これは、あのゲームの主人公が通っている学校だ!)

由美はいままでのことを、頭の中でつないでいった。
・まず最初に自分がゲームのキャラクターになっていること
・しかも、高校生の女の子であること
・ゲームの中での親がいること
・自分の名前が由美であること
それはまぎれもない事実であった。

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