カオルの日常   第弐話

the collapsing daily life

作:SATO

<カオル>

カオル「ただいまー。」

あーやっと帰り着いた。なんかほっとしたのと疲れが同時に出てきた。

ユーリ「おっかえりー。あっ、ほんとに女になってる!あははははははは!もうこれじゃお兄ちゃんじゃなくてお姉ちゃんだね―――。」

いきなり結理(ユーリ。僕の妹で中学1年生。妹といっても、もともと今の父さんの連れ子で、誕生日も3ヶ月くらいしか離れていない。)が飛び出してきた。なぜかこれは高すぎだというくらいテンションが高い。いつにも増して。

カオル「うるさいなもう!こっちは傷心なんだから!」

ユーリ「べつにいいじゃん。でもけっこー美人じゃん。ギリギリ紙一重でこっちの負けかな。」

カオル「―――・・・」

リカと同じようなことを言っているので思わずつっこみたくなったけど、ある諺(ことわざ)が頭に浮かんできたので止めた。

「触らぬ神に祟りなし」

僕の家は僕、ユーリ、母さんの3人家族。実の父さんは僕が小学校に入る前に死んで顔も覚えていない。昔から父さんが居なくて寂しい思いもしたけど、3年位前に今の父さんと再婚した。ちなみに今は単身赴任で大阪にいる。

「「いただきまーす。」」

今日の食卓での話題はもちろん僕のことについて。

ユーリ「それにしてもこれからどうなるのかな?元に戻れるのかな?個人的な希望としてはそのままがいいなー。」

カオル「一体何を言い出すんだよ・・・このままでいいわけないだろ・・・」

カオル母「でもどうして突然こんなことになったの?心当たりとかないの?」

カオル「そんなこと言われてもぜんぜん心当たりないよ。」

確かに原因を考えるっていうのが当然だけど、全くそれらしきものは思い当たらない。

別に中国かどっかの池で溺れた訳でもないし、お湯をかぶって元に戻りそうな気配もない。変な薬も飲んでない。

原因がわかれば対処法とかもあるはずだけど・・・

食事が終わって僕とユーリはテレビを見ている。母さんは台所で食事の後片付けをしている。

カオル母「カオル、ユーリ、どっちか先にお風呂入りなさい。」

二人「はーい。」

ユーリ「お先どうぞ。」

テレビがいいところだったので僕も入りたくはなかったけど、一旦落ち着きたくもあったので言われるままに入ることにした。

脱衣所で一人になってやっとほっとすることが出来た。

ふと鏡を見てみるとそこに映るのはやっぱり女の子だった。

・・・?さっきまで錯乱気味だったので気付かなかったけど・・・よく見ると・・・

かわいい。間違いなく平均点以上。なんだかリカやユーリの言うこともわかるような・・・

ナルシストっぽく自分に見とれていたら自分の手に違和感を感じた。

手は実際一日の中で自分の顔よりも多く見ているところなのでその場所に違和感を感じるのは当然のはず。

手そのものは一回り小さくなったような気がするし、指もどことなくすらっとした感じになっている。爪は以前の正方形のような貝爪ではなく、細長い竹爪になっている。一言で言えば女の子の爪になっているということ。

カオル「そういえばお風呂に入るんだっけ。」

当初の目的を忘れかけていたけど、僕はとりあえず服を脱いだ。すると女物の下着が姿を現した。

最初の頃は違和感があったものの、今では少し気に入ってしまったりしている。

それにしても目の前に女の子の裸があるのに全くドキドキしない。あって当然のものを見ているような気分だ。

なんだか心まで女の子になってしまったような気がして少し怖かった。

気を取り直して()下着を脱ぎ、お風呂に入ることにした。

体を洗おうとするけど、どうも男のときとは勝手が違う。胸には「余計なもの」が付いてるし、「本来あるべきもの」がない。

戸惑いながらも体を洗うと、次は髪だ。

いつも使っている男物()のシャンプーを使おうとしたけど、なんだかこれじゃ駄目な気がするので、ユーリがいつも使っているシャンプーを使うことにした。

髪は肩の少し上あたりまで伸びているので、そんなに長いわけじゃないと思うけど、髪を伸ばしたことのない僕にとっては十分長かった。

髪がとても繊細なもののように思えたのでゆっくりと方向に沿ってなでるように洗った。

体の泡を流して湯船につかりほっと一息。

なんだか女の子は神経を使うなー。そう思うとリカやユーリが凄いような気がしてきた。日常化すればそうでもないのかも知れないけど。

学校に行っているときから思っていたけど、今の状態で男物の服を着ると微妙に違和感がある。

寝るときはTシャツとハーフパンツを着ているけど、どちらもガボガボで、特にハーフパンツはウエストがゆるくてすぐにずり落ちそうになってしまう。なのになぜか胸やヒップはきつい。このアンバランスさがどうしようもなく気持ち悪い。

ちなみに下着だけは病院の帰りに買ってきた。

それにしても慣れないことばかりで精神的に疲れる。別に慣れるつもりはないけど。

カオル「あーーー、気持ちが安らぐどころか疲れたー。」

ユーリ「お疲れさん。」

はたから見ればとても風呂あがりとは思えない会話だ。

ユーリ「それじゃ次私入ってこよっと。」

・・・ヤレヤレだ。

こういう時はさっさと寝てしまった方がいい。

カオル「母さん、僕もう寝るから。おやすみ。」

カオル母「えっ?もう?まだ9時よ?」

いつもは11時位まで起きているのでそう言われるのは当たり前。9時なんて今時小学生でも寝てはいない。

でもこのままでは心労で倒れてしまいそうだ。しばしの間心身ともに休めなくては。

そう思いながら僕は布団にもぐりこんだ。

「もしかしたら寝て覚めたら元に戻ってるかも」という期待を抱きながら。

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カオル「うわぁぁぁ!」

あ・・・あれ?なんだ夢か・・・変な夢だった。本来食べるはずのちくわに食べられるなんとも恐ろしい夢だ。

ふと胸に手を当ててみると「むにゅっ」という柔らかい感触と、触られた感触が同時に伝わってきた。

やっぱりだめか・・・そもそも元に戻ってるかもなんて期待するのが間違っていたのかもしれない。

それにしても学校に行くのが今日ほど苦痛なことは今までに無かった。しかし、昨日「行く」と言ってしまったので行くしかない。

それにしてもこの身体にいつもの男子の制服というのもアンバランス。いっそのこと女子の制服を着たほうが自然だし、気も楽なんだけど、さすがにそれは僕の中の何かが許さない。

仕方ない・・・意を決して学校に行くか。

<リカ>

早くカオル来ないかな――――。

昨日からずっとわくわくしていつもはギリギリに登校する私もいつもより30分近く早く学校に着いちゃった。カオルはいつもこのくらいの時間に来てるみたいだけど。

でも今日は少し遅いなー。せっかくカオルを待ち伏せするために早起きまでしたのに気合は完全に空回り。

!廊下の先に未確認カオル発見!よーしこうなったら後ろから・・・・・

カオルが教室に入る!今だ!

リカ「カオルーーーおっはよーーーー!えいっ!」

「むにゅうっ」

背後からカオルの胸を思いっきり掴んだ。

カオル「キャアァァァァァァァァァァァァ!」

わ!カオルすっごい高い声!でも予想どうりの反応♪

リカ「カーオールー、女の子みたいな声出してどーおしちゃったのかなー?もしかして少し気持ち良かった?」

カオル「バカ!何言ってんだよ!いきなりあんな事されて驚かないわけ無いだろ!」

リカ「ふふふふふふふ。真っ赤になっちゃってかーわいー。」

カオル「なっ・・・・・・・・・・・・!」

それにしてもカオルの口からあんな声が聞けるなんて・・・感激♪

私の「カオルの完全なる女の子化計画」は順調ね・・・だって「キャアァァ」なんて男は普通言わないもん。

リュウ「俺にも胸触らせろーーー!」

ユキノ「その発言セクハラ。ちなみにセクハラとはセクシャルハラスメント(女性への性的いやがらせ)の略称。あれ?この場合カオルは異性ってことになんのかな?でも戸籍その他は男だし。うーん・・・」

問題発言と共に現れたのは西村龍(ニシムラ リュウ。背が高くてガンマニア。しかも空手の段持ちなのでからかわない方がいいかも。)と西山雪乃(ニシヤマ ユキノ。女の子みたいな顔と名前にコンプレックスを持っているみたい。)の爆裂コンビ。

リュウ「別にいーじゃねーかー。減るもんじゃなーし。」

ユキノ「そういう問題じゃないだろ。」

リカ「そうそう、カオルの胸に触っていいのはこの私だけなんだから。」

カオル「駄目に決まってるだろ!」

リカ「ふふふ、カオルの意思は関係無いんだよ・・・せいぜい後ろに気を付ければ?」

カオル「恐いなもう・・・」

<ユウ>

カオル「あ、ユウ。おはよう。」

ユウ「あ、ああ。おはよう。」

なんだか変な気分だ。見た目と声は女なのにカオルの口調で話し掛けられると妙にドキッとさせられる。

カオル「?どうかした?顔赤いよ?今度はそっちが熱あるんじゃない?」

ユウ「な・なんでもない・・・」

カオルの喋り方が少し女側に傾いてきたような気が・・・それも完全な女言葉じゃなくて、時々女言葉っぽくなったりしているみたいだ。多分カオルも気が付かないうちに出てしまっているんだろう。

入れ物が変わるとやっぱり中身も変わってしまうんだろうか。なんだか少し寂しい気もするけど、妙な「良さ」がある気もする。

・・・なんで昨日まで男だった奴にドキドキしたりするんだ?俺は別にホモとかそういうのじゃ・・・ん?これってホモになるのか?いやでも一応戸籍上はカオルもまだ男だし・・・って戸籍上女ならいいって訳じゃ・・・何一人で突っ走ってんだか。

<カオル>

僕が音楽の次に好きな体育の時間。

僕は今大きな問題に直面していた。

カオル「・・・・・何処で着替えよう・・・・・」

いつもは男子は教室、女子は体育館で着替えているけど、さすがにこれじゃ教室で着替える訳にも行かない。そんなことしようものなら間違いなく視線を集めてしまう。期待している奴も数名いるみたいだ。リュウとか。

カオル「リカ・・・僕って何処で着替えるべきなのかな?」

リカ「別に体育館でいいんじゃない?」

女子A「皆野君、体育館で着替えなよ。」

女子B[うんうん、誰も気にしないしね。]

3人の瞳の中で何かがきらりと光る。興味・・・?・・・下心ミエミエだなぁ・・・

―そして体育館―

リカ「あ!やっぱりカオル結構胸大きい!」

女子「でもなんていうか大きすぎず小さすぎずだよね。」

リカ「巨乳というよりは美乳かな。」

カオル「な・・・!」

何言ってんだよ!と言おうとしたけどいきなりのことで声が出てこない。

向こうは誉めているのか面白がっているのかわからないけど(おそらく後者)なんだか妙な気恥ずかしさがある。

リカ「ねえ、もうちょっと嬉しそうな顔とかしたら?」

カオル「そんなこと言われても素直に喜べるわけ無いじゃないか・・・」

リカ「でもちゃっかりブラは付けてるのね。」

カオル「し、仕方ないだろ!気持ち悪いんだから!」

リカ「ふーん、ほんとにそれだけかなー?」

カオル「な、何だよ。」

僕をからかう時の目だ。

リカ「もしかして女装趣味とかあったりするんじゃないの?」

カオル「そんなわけないだろ!

男物は全くサイズが合わなくなってしまっているので仕方がない。

今着ている体操服ですらもサイズが合わない。特にズボンの紐は思いっきり閉めてもなかなか締まりきらず、常にゆるい。ウエストが細くなっているからなんだろうけど、喜んでいいものやら・・・

この分だと服をほとんど買い換えないといけないかもしれない。でもそれは『このまま女の子として暮らすなら』ってことだから別に本当に買い換えるつもりは全く無い。病院で検査とかあってるはずだから運がよければ一週間後には元に戻れる、はず。まあ、日本の医学に期待するしかないか。

<ユウ>

リュウ「チクショォォォォォォ!カオルを逃がしたぁぁぁぁぁぁ!」

ユウ「うわっ!な、なんだ?」

リュウがなにやら叫んでる。

ユキノ「さっきからずっとこの調子だよ・・・カオルの着替えを見そこなったって。」

ユウ「カオルの着替えって・・・お前そんなもんが見たかったのか?」

リュウ「だってよ!健全な中学生の92.6%が見たいと思っているものが見れたかもしれなかったんだぞ!お前それをそんなもの呼ばわりしやがって・・・」

ユキノ「話が長すぎて分かんねーよ。一言ずつ区切れよ。」

どこかで聞いたセリフだな・・・あ!そうだ「シーマン」だ!何でこいつそんなセリフを・・・ま、それは置いといて。

ユウ「でもなんでカオルなんだよ?別に他の女子の着替えでも覗けばいいだろ。ってこれは犯罪か。」

リュウ「そう!そこなんだよ、ポイントは!」

ユウ&ユキノ「「?」」

リュウ「つまりだ。朝ユキノが言ったように今のカオルは見た目が女でも戸籍とかは男なんだからこのカオルの裸とかを無理矢理見ても罪としては問われないはず・・・」

ユキノ「でも強制わいせつって相手の性別関係ないよ。」

リュウ「えっ?そうなのか?」

ユキノ「あ、でも少年法ってあるからなぁ・・・」

リュウ「ってことは他の女子でもOKってことか。よし、今日から実践!少年法だもんね少年法!」

ユキノ「あっ!ど、どこ行くんだよ!待てってば!」

ユウ「こういう奴がいるから少年法って改正しなきゃいけないんだなぁ・・・」

―運動場―

ユウ「あ、カオル!どうしたんだよそれ!」

俺の目に映ったのはゴムで髪を後ろに束ねたカオルだった。顔はうんざりとした表情だ。

リカ「ふふふ、どう?かわいいでしょ?わたしがしてあげたんだよ。やっぱりこういう時しか出来ないことを思いっきり楽しまなくちゃ。」

カオル「半ば強制的にやったくせに・・・」

リカ「なんか言った?」

カオル「べつに・・・でもなんか見られてるよぉ。やっぱり恥ずかしいよ。」

カオルの顔が真っ赤になった。なんというか・・・変な色気みたいなものが・・・もしかしてリカはこれを狙っていたんじゃ・・・

リュウ「なんか・・・なんつーか・・・「来る」な・・・」

リカ「やっぱりリュウ君もそう思う?」

リュウ「何!お前もか!」

リカ「ねぇ、私に協力する気ない?今ならもれなく「カオルのいろんな写真」プレゼント!」

リュウ「お前・・・結構いい奴だな・・・」

二人の間に怪しい友情が生まれたみたいだ。それにしてもいろんな写真って・・・

カオル「勝手な事するなよ!」

ユキノ「盗撮犯って結構女が多いんだってさ。」

<カオル>

カオル「あぁぁぁぁぁ。やっぱり体力落ちてる〜。」

リカ「当たり前じゃない。でもそれでも十分女の子としては驚異的よ?」

カオル「それはそうだけど・・・」

50m走のタイムが6秒9から7秒5になったんだからまだ十分速いけど、もうすぐ部活でやってる陸上の大会があるのでこの落ち方は少しヤバイ。

カオル「そういえば・・・今度の大会ってどうなんの?男子と女子どっちで出るんだろ?」

ちなみにリカとあとの3人も全員陸上部。だから仲がいいんだけど。

リカ「そんなこと私に訊かないでよ。でも男子で出るのはやっぱしマズイと思うし、かといって女子ではルール的に出れないだろうし。多分棄権した方がいいんじゃないかな。」

カオル「え〜〜〜?結構マジになって練習してたのにな〜。」

でもよく考えたらこのままだと不便なことは他にも山ほどある。なにせ見た目は女なのに社会的にはまだ男、という中途半端な状態だから。

あ〜あ。なんかもういっそのこと戸籍も女にしてほしいような気分になってきた・・・

つづく、のかな?


う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!何だこの点数はぁぁぁぁぁぁぁ!

え?あ、いや、こっちの話。上のは・・・今の心境かな・・・そりゃぁテストの順位が208人中11番から38番に落ちれば誰でも落ち込むって。ちなみに高校は「県内でも1,2を争うほど学費が高いけどライフル部というなんとも素敵な部のある高校」に学力特待生で行くか、少年自衛隊に入ろうか考えております。でもこの分だとどっちも無理かな・・・またテスト期間中に書いたし。人間って最も学習能力のない動物だって言うけどほんとなんだなぁ・・・でも今度のテストは!自信ありまくり!なんせ前回テスト当日の朝に2時間しか勉強しなかったのに対して今回はテスト3日前から2時間ずつやってきたから。ってあまり変わってないか。

ところで奇跡とも言える2作目ですが、完全にユーリとリカのキャラがかぶってますねぇ。最初はもっと違うように書くつもりだったんだけどなぁ。う〜ん、おかしい。

ではまた


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