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 びんぼんばんぼ〜んっ――

 チャイムのはずなのに重々しい音が響き、妙に威圧感のある男性のアナウンスがあとに続いた。
「ようこそ、女美川重工本社ビルに」
「当施設は万全のセキュリティシステムによって、24時間警備されています。立ち入り禁止区域に侵入した場合は、理由の如何を問わず生命の保障はありません」
「施設見学の受付は一階カウンターへ、商談の申し込みは三階の販売促進課へ、役員とのアポイントメントは24階の管理局室へ、そして商品のクレームと当社への苦情は地下13階にあるバイオラボ廃棄物処理槽奥の苦情処理専用デスクへお越しください」
「明るい女美川、みんなの女美川。日本の明日を担(にな)う女美川重工からのお知らせでした――」

 ごぼごぼごぼっ……

「……オルタナティブ01、半覚醒状態に移行」
 モニターをにらんでいた白衣姿の研究員が、そう言って顔を上げた。
 彼の……いや、女美川重工本社苦情処理専用デスク(笑)のさらに奥にある “特別” 実験室内にいた全ての人間の視線が、部屋の中央にある円筒形の水槽に注がれる。
 否、その中に浮かぶ “もの” に――だ。
「心拍数、脈拍、ともに低レベルで推移」
「脳波パターン安定してます。意識が完全に覚醒する兆候はありません」
「では、起動実験を開始します」
 水槽の中には黄色がかった半透明の液体が充填され、その中に一体の人影が身体のあちこちに電極を打ち込まれ、ケーブルを接続された状態でぷかぷかと浮いていた。
 人間……にしては、いびつなそのシルエット。全体的に痩せ型だが、両肩が不自然に張り出しており、そこから伸びた腕は異様に長い。
 節くれだった手足の指の先には捻じ曲がった鉤爪が生えていて、断続的に小さな泡(あぶく)を吹き上げる口の端は、先が尖った耳元まで大きく裂けている。
 これで頭に角、お尻に尻尾でもあれば、十人が十人ともそれを「悪魔」と称するに違いない。
 しかし、ここにいる研究員たちにとって、それは単に「人型の未知生物」以外の何者でもなかった――

 あるいは、「実験材料」……か。

「データ送信開始。……フィードバック情報を逐次記録せよ」
「了解」
 次の瞬間、「オルタナティブ01」と名付けられた水槽の中の人影は、びくん――と身を震わせ、かすかに瞼(まぶた)を動かした。
 わずかに開いたその瞳は、濁ったような金色だった……






―― 萌え燃えっ! 白塁学園高校女子ロボTRY部 EX−S 「さおりんとりびゅーと」03 ――

「運命の再戦!?(もしくは、「螺旋錐の魔人」)」

CREATED BY MONDO(原案・協力:ライターマンさん)





 その電話が飯綱家にかかってきたのは、今からちょうどひと月前。
 長かった残暑の日差しがようやく緩み、朝晩の涼しさに秋の到来を感じられるようになった頃だった。
「はいもしもし……はい…………あら三代さん? お久しぶり〜。…………いえいえ、こちらこそお世話になりっぱなしで……」
「…………えっ!? 武士くんが? …………はあ、そうですか…………驚きましたわ。それは大変ですわね…………」
「……はい、……はい、…………えっと、あの、『ロボTRY』のことでしょうか? …………はいはい、確かにうちの息子がそれに夢中になってますが…………、え……? はあ…………えっと、うちのはかまいませんが、そちらは…………、はい……、はい…………では、代わりに――」


 その日の夕食時――
「……ねえ甲ちゃん、前に近所にいた三代(みしろ)さんのこと――おぼえてる?」
「ん? 武士んとこ? もちろんおぼえてるけど……それがどうかした?」
 箸を止めて顔を上げた甲介に、母親は先刻かかってきた電話の件を話してきかせた。
 三代武士(みしろ・たけし)――かの “お師匠” にともに師事していた、甲介にとっては「弟分」ともいえる少年である。
「……でね、武士くんの双子の妹さんが学校のロボTRY同好会の助っ人を頼まれて、それでメガパペット(競技用有線操縦式人型二脚歩行マニュピレータ)の操縦をレクチャーしてほしいんだって」
「へえ……でも初耳だな。あいつに妹がいたなんて」
 そうつぶやきながら、甲介は箸で目の前にあるエビフライをつまみ上げた。
「事情があって離れて暮らしてたんだって。でもそういうのって現実にあるのねぇ……甲ちゃんと沙織ちゃんみたく♪」
「……うぐっ」
 含み笑いを浮かべて顔を覗き込んでくる母親の視線に、口に入れたものを喉につっかえさせる。
「…………」
 くすくす笑みをこぼす母親に、甲介は仏頂面を浮かべた。


 突然 “湧いて” 出た(……笑)甲介の従姉妹、沙織。
 彼女が実は、体内にインプラントされた謎のナノマシンの力で女性体に変身した甲介本人であることを知るのは、母親とお師匠、そして限られた一部の人間だけだったりする――


「そういうわけで明後日の金曜日に、新間市に引っ越した三代さんちに行ってほしいのよ。どう?」
「別にかまわないけど……」
 食後のお茶をすすりながら、返事する甲介。
 週末は特に予定があるわけでもないし、メガパペットの操縦を教えてほしいという、その双子の妹とやらにも会ってみたい。
「…………」
 ……けど、何か引っかかる。
 こんな風に、母親がこっちの知らないうちにいろいろと段取りしている時は、決まってろくなことがない。
「あ、それから三代さんには、従姉妹の子を行かせるって伝えてあるから……沙織ちゃんとして行ってちょうだいね」

 ぶぼっ――! 「……な、なんでっ!?」

「だって相手の子は女の子だし、お泊まりするんだから女の子同士の方が気兼ねしないでしょ?」
 ……予感的中。
 お茶を吹き出す甲介に、母親はしれっとした口調で答え……そしてだめ押しのひと言を口にした。「……そうそう、ほのかちゃんにも声かけてあるのよ。『沙織ちゃんと一緒に行ってあげてくれない?』って。ほのかちゃん、二つ返事でOKしてくれたわ♪」
「…………」
 外堀内堀、全て埋め立てられて完璧に舗装済み――だった(笑)。
「か……確信犯っ」


 というわけでその週末、甲介……いや、沙織はほのかと一緒に三代家へとお邪魔し、真奈美と出会ったのである。
 そして次の日には彼女とともに、「腐れ縁」ともいえる女美川軍団とメガパペットバトル……くわしい事の顛末は、ライターマンさん作『変身美少女戦士ミラージュガール 番外編その1「運命の出会い」』を読んでいただきたい。


 その一ヶ月後――

 ざっざっざっざっ、ざっざっざっざっ…… 「全体〜っ、止まれっ!!」「「いえっ、さーっ!!」」

 目の前に現れたのは、もう二度と見たくないと思っていた、まっそーの群れ。
 そしてその先頭に立つのは、ひときわ巨大な筋肉ダルマ……
「いよいよ決戦でああああ〜るっ!! かあああくごはよいか〜っ、特攻娘2号っ!! ……であああ〜るっ!!」
「だっ、誰が『特攻娘』だっ!? 誰が2号だっ!!」
 怒鳴り返すが、そいつはまったく聞く耳を持っていない。
「見よおおおおっ!! 貴ぃ〜様との決戦のために特注した、《パワーエリート・インパルス》の勇姿をっであああ〜るっ!!」

 どおおおおおおおお〜んっ――!!

 巨大筋肉の横に立って無駄に威圧感を振りまいている、全長2メートルの人型――メガパペット。
 外装のカラーリングは、毎度おなじみ青赤白の某機動戦士トリコロール。
 頭部の二本ツノ、胸元の黄色い縁のエアインテーク(?)とV字のエンブレム、赤く塗られた爪先、と――
「また性懲りもなくパクリやがって……」
「驚くのはまだ早いのであああ〜る!! この《パワーエリート・インパルス》はっ、シ〇エットシステムによりっ、あらゆる戦況に応じて武装を瞬時に変更できるのであああ〜るっ!!」
「…………」
 半眼でねめつけられ、ツッコミを入れられてもどこ吹く風。
 もはや呆れて言葉も出ない。
「ソードシル〇ット射出〜っ!! まあああっぷたつになるのであああ〜るっ!!」
 居並ぶ筋肉軍団の背後に止まったトレーラーのカーゴ部分が観音開きに割れ、中からカタパルトがせり出してくる。
 そしてそこから射出された、巨大な刀を装備した背嚢(バックパック)が、赤いワイヤーに導かれて一直線に接近し――
「……!!」

 どっかああああああ〜んっ――!!

 ――メガパペット《パワーエリート・インパルス》の背中にそのままの勢いで追突し、もろともに木っ端微塵となった……
 ……………………………………………………………………………………
 …………………………………………
 ……………………
 …………
……ってうわあああああああっ!! あ……? ゆ、夢? …………はああ、なんつー夢だよ――」
 ベッドの上でがばっと身を起こし、我に返って目を瞬かせる。
 いささか女の子らしくない口調でそうつぶやくと、黒髪の少女――真奈美はその愛らしい顔をしかめて溜め息をついた。


 突然〇ョッカーの別計画を追って……もとい、病気療養で学校を離れた三代武士と入れ替わりに転校してきた双子の妹、三代真奈美(みしろ・まなみ)。
 彼女が実は、魔界からの侵入者と戦うために美少女戦士に変身し、ついでに女の子になっちゃった(笑)武士本人であることを知るのは、母親とお師匠、そして限られた一部の人間だけだったりする――


【Manami】

「あっ……真奈美ちゃ〜ん、こっちこっち!!」

 人込みの中で手を振るボブカットのお姉さん――ほのかさんの姿に気付き、俺は手を振り返しながら駆け寄った。
「お久しぶりです、ほのかさん、沙織さん。……すいません、遅くなって」
「いいっていいって、あたしたちもほんの少し前に来たばかりだから」
「こんにちは真奈美ちゃん。……あれ? 箱崎さんは?」
 ほのかさんの隣に立っていたキャンディヘアの小柄な女の子――沙織さんが首をかしげた。今日は赤いセーターに黒のプリーツミニスカートという装いで、足元は黒のハイソックスを履いている。スカートの短さが気になるのか、恥ずかしそうに腰のあたりをもぞもぞさせていた。
「…………」
「……? どうした……の? 真奈美ちゃん?」
「い――いや、べ、別に……」
 沙織さんのふっくらした胸の膨らみに思わず視線が行きかけてしまい、俺は咳払いをしてあわてて目をそらした。
 い……いかんいかん。今の俺は二人と同じ、女の子なんだから。
 ほのかさんの格好は綿シャツにスリムジーンズを合わせ、その上から薄紫色のカーディガン。対して俺はクリーム色のブラウスと、焦げ茶色のバルーンスカート、襟元にはスカーフをネクタイ風に結んでいる。
「あ……えっと、箱崎さんには、れ、連絡したんですけど、今日は用事があるからって……お二人によろしくって言ってました」
「用事? なら仕方ないか。残念だけど」
「もしかしたらデートかもね。……ほらっ、あの千早くんって子と」
「さ、さあ……」真奈美ちゃん♪
 さすがはほのかさん……鋭い勘である。
 電話越しに聞こえてきた箱崎さんのはしゃぎ声を思い出し、俺はかすかに口の端を引きつらせた。


 俺、三代武士改め三代真奈美は、以前知り合った沙織さんとほのかさんに、ひと月ぶりに再会した。
 新間市郊外の公園にある野外ステージで開催されるメガパペット・アトラクション『巨神戦記・第三章 〜運命の代償〜』を一緒に見に行かないか……と、二人に誘われたのだ。
 『巨神戦記』は、競技用ロボットであるメガパペットを使った野外劇で、火薬や吊り(ワイヤーアクション)、特殊効果などもふんだんに取り入れた本格的なアトラクションである。興行当初は「色物(もしくはヒーローショウ)」扱いされてもいたが、その迫力とファンタジックな筋立て、生身の役者とメガパペットが斬り結ぶスリリングな殺陣(たて)にリピーターも多く、人気を博している。
 今回は『第一章 〜砕かれた剣〜』『第二章 〜謎の聖乙女〜』に続く三作目で、完結編でもあるとか。
 俺はもちろん二つ返事でOKした。沙織さんたちにもまた会いたかったし。
 ロボTRY同好会の箱崎さんも一緒にって言われたんだけど、前述の通り先約(笑)があったので、今回は申し訳ないけど――ということになった。
「あたしもほんとは甲介の奴と行くつもりだったのよね……なのにあのバカ、急にドタキャンするんだからっ。でもまあ、それで沙織ちゃんが代わりに来てくれて、真奈美ちゃんにも声をかけることができたのよ」
 そう説明するほのかさんの後ろで、拳を握りしめた沙織さんが「前の試合で制御系にダメージ受けて借金なんかしなきゃ――」とつぶやいていた。
 ……よくわからないけど、なんかいろいろ大変そうだ。


 始まるまでまだ時間があったので、三人で公園の中にあったオープンカフェに立ち寄った。
 「ついでに『真奈美ちゃん誕生七ヶ月目記念ショッピング(なんつーネーミングだ……)』に行きましょう♪」なんて言って俺と一緒に来た母さんは、沙織さんたちについて来た甲介さんのお母さんと連れ立って何処かに行ってしまった。
 背中越しに聞こえてきた二人の話し声から、「ゴスロリ」とか「エプロンドレス」とか「絶対領域」とかいう単語が漏れ聞こえてきたので、思わず沙織さんと顔を見合わせる。…………ううっ、あとが怖いっ。
「はああ……いい加減にして欲しいよ――わよ。着せ替え人形じゃないんだし」
 テーブルにつくなり開口一番、沙織さんがそう言った。
「そうそう、何かと言えばスカートやらワンピースやら着せやがるんだから……」
「それもふりふりとかリボンとか、い〜っぱいついたやつ」
 同意した俺に、沙織さんはうんうんと頷く。「……ったく、コスプレじゃあるまいし」
「動きにくいし、気ぃ使って肩こるし……」
「あんな格好、普通の女の子だって絶対恥ずかしいって」
「だいたい普段着から着飾ってどうするんだよ」
「『女の子らしくするなら、このくらいがいい』なんてしれっと言うし――」
「『可愛い女の子はお洒落するのが義務よ〜』だなんて、何処の義務だっつ〜の――」

「「そもそも俺は好きで女の子やってるんじゃないっ! ……っ!?」」

 見事にハモったセリフに、次の瞬間、俺と沙織さんはぎょっ――と互いに顔を見合わせた。
「あははは……な――なんか、暑いです、よね……」
「はははは……そ、そうよね……あ、暑くて、げ――幻聴が聞こえてきた、みたい……」
 引きつった口を動かして、無理やり笑顔を作る。
「……?」
 そんな俺たちを横から見ていたほのかさんは、不思議そうに首をかしげていた。


【3rd-p viewpoint】

「……という夢を見たんですよね」
「あ、あはははは……」
「ま、真奈美ちゃん、それなんかリアル過ぎ――」
 女三人(うち二人はパチモン?)寄れば、か〇まし娘……もとい、姦(かしま)しいとはよく言ったものである。
 真奈美が今朝見た(バカっぽい)夢の話をすると、沙織とほのかは腹を抱えて笑い出した。
「た――確かに射出したままの勢いで背中にドッキングさせようとしたら、衝突して大破してしまうよな……わよ、ね」
「ていうか、試合でそんなの装備しようとしたら、その時点でルール違反、即失格よ」
「それにしても……またなんつーリアルな夢を……」
 沙織が半分呆れ顔で、そうつぶやいた。
「で、でも……あ、あの筋肉ダルマなら、やりそうな気がしませんか? そーゆーの」
「……はは、確かに」
「あの馬鹿ならやりかねないわね〜。なまじ金持ってるし……」
「毎回毎回『最新作』が放映されるたびに、律儀に作り替えてくるし」
「いつか制作会社か、おもちゃメーカーに訴えられるわよ、あいつ」
「ち――ちょっと、ほのかっ、……さんっ」
 話の内容がヤバげな方向へ傾き始めたことに気付いて、あわててストップをかけようとする沙織。真奈美もその雰囲気を察して、話題を変えようと口をはさんだ。
「そ――そういえば、前に千早くんがこんなこと言ってました。『アニメに出てくるロボットをパクった機体は、たいてい弱い』って」
「確かにROBO−ONEやロボファイトの時代から、そう言われてるよな……よね」
「そうよねー。だからいつもあたしたちが勝つんだけど……あいつら相手にすると、それだけですっごく疲れるのよ〜」
「……いっそのこと本人がガ〇ダムの着ぐるみ着て出場した方が、試合に勝てたりして」
「「あはは、それいえてるーっ!!」」
 大笑いする沙織とほのか。つられて真奈美も笑い声を上げた。

 ざっざっざっざっ、ざっざっざっざっ…… 「全体〜っ、止まれっ!!」「「いえっ、さーっ!!」」

「と、ところで沙織さんもほのかさんも、き、『巨神戦記』の一章と二章は……み、見たんですか?」
「……じ、実は見てないのよ。は――話の筋は知ってるんだけどね」
「ま、真奈美ちゃん……は?」

「ふっふっふっ……ここで会ったがひと月目っ、そして三人揃っているとは好都合なのであああ〜るっ!!」「「いえっ、さーっ!!」」

「あ……え、え〜っと、俺――じゃなかった、あたしも実は雑誌でしか見たことなくて……あ、で、でもヒロインのセレスタ姫、可愛いですよねぇ〜」
「そ……そうそう。それとあの衣装もすてきなのよね〜。ま、真奈美ちゃんも、い、一度着てみたいと思う、でしょ?」
「え、ええ……お、お姫さまドレスは、お――女の子の、あ、あこがれですよね〜」

「あの戦い以来、しばらくは夜も眠れず(だから昼間に寝ていた)、ご飯も喉を通らなかった(プロテインと栄養バーは食ってた)のであああ〜るっ!!」「「いえっ、さーっ!!」」

「あ、あらあら……ふ、二人ともふりふりした服は、き――嫌いだったんじゃなかった、の?」
「えっ、そ――そんなこと、い、言いましたっけ〜? ……ね、ね〜沙織さん♪」
「そっ、そうよね〜、お――女の子なら、だ、誰だって、お……お姫さまになりたいもん、ね〜真奈美ちゃん♪」

「しかぁしっ! 今こそ前回の戦いに完全決着をつける時が来たのであああ〜るっ!!」「「いえっ、さーっ!!」」

「あ、え――えっと……は、話変わるんですけど、か――『か〇まし娘』って何ですか?」
「もちろん大佛は〇む、栗栖と〇り、神泉や〇菜の三人であああ〜るっ!!」
「「――じゃなくて、大阪で活躍してた女性歌謡漫才トリオのことっ!! …………」」
「…………」
「…………」

「「「わざとシカトしてることくらい気づけこの筋肉頭あああああっ!!」」」


【Manami】

「「「わざとシカトしてることくらい気づけこの筋肉頭あああああっ!!」」」

 沙織さんとほのかさん、そして俺の叫び声がキレイにハモった。
 とはいうものの、こいつらに「空気読め」と言っても無駄だということは、前回で嫌というほど思い知っている。
 そう、俺たちの目の前にわいて出たのは、白塁学園高校元祖ロボTRY部……沙織さんたちにしょっちゅう難癖をつけてくる筋肉(バカ)軍団だ。
 ひと月前、俺の通う津留木学園のロボTRY同好会に試合を持ちかけ、そこで無理難題を押しつけてきたのもこの連中である。まあ、それが元で沙織さんと知り合えたんだけど。
 曹操の話をすれば曹操が来る……沙織さんたちの前では二度とこいつらの話題は出さないでおこう。俺は心の中で固く誓った。

 でも、なんでこの筋肉ダルマが『か〇まし』なんか知ってるんだろう? ……謎だ(笑)。

「見よおおおおっ!! 貴ぃ〜様たちとの決戦のために特注した、《パワーエリート・エクシア》の勇姿をっであああ〜るっ!!」
「…………」
 相変わらずな迷彩柄のアーミーパンツにジャングルブーツ(それしか着るものないのか?)、モスグリーンのランニングが無駄にぶ厚い胸筋にぴちっと張りつき、そこから伸びた腕もこれ見よがしに太い。
 そんな筋肉ダルマたちの背後に立つ青赤白に塗り分けられたメガパペットと、そのセリフにいや〜な既視感をおぼえ、俺はこめかみを押さえた。
 確かに「フタマル」に出てくるやつに見えなくもないが……相変わらず無理矢理な機体である。ほんとにいつか訴えられるぞ。
「ほっ――ほのかっ、……さんっ、真奈美ちゃんっ」
「全く、用もないのにぞろぞろと……ゴキブリかあんたらはっ!」
 沙織さんとほのかさんが俺を守るように前に出る。ほのかさんの眉がつり上がった。握った拳がぶるぶる震えている。
 そしてまわりにいた人はみな、固唾を呑んで成り行きを見守っている……が、
「…………」
 もしかするとCMの撮影か、路上コントか何かだと思われてるのかもしれない(……笑)。こいつら見た目とノリは海兵隊っぽいが、中身はパッ〇ラ隊かケ〇ロ小隊に近いからなぁ。
「驚くのはまだ早いのであああ〜る!! この《パワーエリート・エクシア》はっ、新開発の男魂(おとこん)ドライブを搭載することによりっ、無限のパワーを得ることができるのであああ〜るっ!!」
「…………」
 会話を成立させろ会話をっ……ていうか何だよ「男魂ドライブ」って。
 多分あの胸の真ん中にある、丸っこい部分のことなんだろうけど…………設定的に。
「……はいはい。けどねぇ、あたしらはあんたたちと違って、四六時中メガパペット引き連れ回しているわけじゃないのよっ」
 ほのかさんが声を荒らげた。
 そりゃそうだ。……ていうか、許可もなく道路を歩かせたら、道路交通法に引っかかるんじゃなかったっけ? メガパペットって。
「だいたいひと月前のやつは、お前らが “自爆” して決着ついているだろがっ」
 腰に手を当て、男前な口調でまくし立てる沙織さん。
 沙織さんの言う通りである。ひと月前のロボTRY同好会との試合?で、こいつらは今目の前にある《パワーエリート》型のメガパペットと、レギュレーション破りのバイオメック(生体重機)を繰り出したあげく、機体に暴走されてプレイヤー(操縦者)だった筋肉ダルマたちが場外へ放り出され、そこでリングアウト負けになっている。
 途中で部外者(俺と甲介さんのお師匠)が乱入してきたりもしたから、ノーコンテストだと主張されても仕方ないのだが。
「なああにを言うっ、負けを認めぬ不屈の闘志がある限りっ、負けたことにはならないのであああ〜るっ!!」
「…………」
 何処ぞの脚本家みたいなことを、偉そうに言う筋肉ダルマ。連中の頭の中では、「敗北」は一切カウントされていないらしい。
「とにかくっ! メガパペットもないこんな状況でケンカ売られても迷惑なだけなのっ!! そんくらい脳筋なあんたらでもわかるでしょがっ!!」
「ぬううううっ……ならば副長〜っ! こいつらの使う機体を、あそこから現地ちょ〜達するのであああ〜るっ!!」
「了解でありまああすっ! 隊長殿ぉっ!」
「「何考えてんだお前らはあああああっ!!」」
 『巨神戦記』の野外ステージをびしっと指差す筋肉ダルマ(そりゃ、近くでメガパペット置いてるのはそこしかないけどさ……)に、沙織さんとほのかさんがマジギレた。……なるほど、確かに毎回毎回これやってたら疲れるよな(笑)。
 と、その時――

 〜♪ 〜〜♪♪ 〜♪ 〜♪

 カフェの椅子の上に置いてあった沙織さんのポーチから、携帯電話の着信音が聞こえてきた。


【3rd-p viewpoint】

 ディスプレイに表示された通話相手の名前に嫌な予感をおぼえつつ、沙織は携帯電話を耳元に当てた。
「も、もしも――」

『お〜沙織ちゃん、なんかまたトラブってるみたいだな〜っ』

「お……おやっさん?」
 いきなり聞こえてきたテンションの高いオヤジ声に、沙織は顔にタテ線を入れて口元を引きつらせた。
 な、なんで知ってるんですかっ? ……と、言おうとするが、相手は委細かまわずおっかぶせるように(青〇 武似な)声を張り上げてきた。

『おうよっ! いや〜沙織ちゃんにそう呼んでもらえるとは嬉しいねぇ……』

「あ、い――いやその……あの、お――お、お……」
 ついいつもの――“甲介” の時のつもりで呼びかけてしまい、沙織はあわてて言い直そうとする。
 電話の相手はメガパペットの修理やメンテナンス(整備)で何かとお世話になっている、不動モーターショップのオーナー不動源次郎。
 腕のいい職人気質(かたぎ)のメカニックで、沙織の大ファンでもある熟年オヤジである。
 いつもいろいろと無理を聞いてもらっているので、沙織としても、甲介としても頭が上がらない……

『でよ、ちょうどヒメの修理と慣らしが終わったところでよ……今、うちの若いのに届けさせたから、そっちで受け取ってくれやっ』

「えええ〜っ!?」
 ま、またなんでそんな余計なことををを〜っ……という言葉を飲み込む沙織。何故か涙目。
 ちなみに「ヒメ」とは、沙織のメガパペット《スカーレットプリンセス》のことだ。

『機体のリミッターは切ってあるから全開でいけるぜっ。な〜に、運び賃は取らねえよっ。俺っちと沙織ちゃんの仲じゃねーか……おっと、甲介の奴にはナイショだぜ。じゃあなっ』

「あ、あ――あの……」

 ぷつっ。…………

 言いたいことを言うだけ言って、電話はぷっつりと切れた。「…………」
 ……いつもこうなのだ。本人はよかれと思ってやっているだけに、余計にタチが悪い。
「あ、あの、沙織さん……」
「う、うぁ――? あ、え……えっと……」
 心配そうに顔を覗き込んできた真奈美に、沙織は間の抜けた返事をしてしまう。
 漏れ聞こえてきた声に事情を察したほのかが、大きくため息をついた。


【Manami】

「ふっふっふっさすがは特攻娘。我ら同様、常に戦いに備えているということかであああ〜るっ! うむっ、それでこそ我が好敵手っ! ――と書いて『とも』と読むのであああ〜るっ!! いっつ あ ふれんどしいいぃっぷっ!!」
「読まなくていい読まなくてっ!! つーかお前らと一緒くたにするなあああっ!! ……お願いだからっ」
 《パワーエリート・エクシア》の横で高笑いする筋肉ダルマに、沙織さんは心底嫌そうに怒鳴り返した。
 電話の相手からメガパペットを届けられ、沙織さんは結局、筋肉ダルマと一戦交える羽目になってしまった。機体を運んできた人は、すまなさそうな……それでいて微妙に哀れみを含んだ目で沙織さんを見ていた(……)。
 で、さすがにオープンカフェの店先で試合うわけにもいかず、野外ステージ近くの広場へと移動する。筋肉軍団たちがその周囲をぐるりと取り囲み、野次馬たちを中に入れないよう人垣を作った。
 俺とほのかさんは、トリガー(操縦器)を握る沙織さんのそばに寄り添い、筋肉ダルマに対峙している。
 そして目の前には真紅のメガパペット――沙織さんの愛機《スカーレットプリンセス》が立つ。
 片や美少女(……照)三人組、片や格闘ゲームの中でしかお目にかかれないようなミリタリ筋肉。
 まわりにいる人たちは皆、これから何が起こるのだろうかと期待に満ち満ちた視線を向けてくる…………うううっ、やっぱり路上コントだと思われてる〜っ。
「沙織ちゃん気をつけて。『無限のパワー』なんてハッタリだと思うけど……あの機体、なんか変な感じがする」
「俺……じゃなかった、あ――あたしもそう思います」
 ほのかさんの言葉に俺もうなずいた。某エクシアな外見に誤魔化されていたが、筋肉ダルマのメガパペットには何だかよく分からないけど、こっちを不安にさせるような雰囲気があった。
「……!?」

 い――今、なんか目が合ったような……

「わかった、気をつける」
 そう言って沙織さんはトリガーを操作し、《スカーレットプリンセス》に「天地風水」――「天」の構えをとらせた。相手の攻撃を受け止め、カウンターで攻撃に移行する構えだ。
 目つきが変わった。本気モードだ。
 それにしても、こういう時の沙織さんってやっぱり本当によく似てるよな……甲介さんに。
「ゆ〜くぞ特攻娘1号っ! 我が元祖ロボTRY部の真の本気の実力の底力を今まさにこの瞬間その目に焼き付けてくれるのであああ〜るっ!!」
 なんか日本語めちゃめちゃ。ていうか俺はやっぱり「2号」なのね……

「《パワーエリート・エクシア》っ!! あったあああああああ〜くっ!!」

 次の瞬間、某エクシアなメガパペットは、ぐぐっと上半身をひねり…………何故か筋肉ダルマの方に向き直った。
 そして――

「……俺に指図するな」


【3rd-p viewpoint】

「…………」
「…………」
「もしかして…………ネタ?」
 し〜んと静まり返った中、沙織のつぶやきが白々しく響いた。
 ネタ――だとしたら、完全にスベっている。
 《パワーエリート・エクシア》から聞こえてきてた「セリフ」に、野次馬たちは皆、笑っていいのかどうか一瞬判断に迷った。
 というか、わざわざ音声を仕込んでまでして、メガパペットとひとり漫才するか……この状況で。
「うむっ! その意気や、よおおおおしであああ〜るっ!!」
「「「…………」」」
 だが、自機に逆らわれた?にもかかわらず、筋肉ダルマ――女美川(終身名誉)部長は胸筋をそびやかし、感極まった表情で天を見上げた。
 そして沙織たちの方を向き、尊大な態度で腰を手を当てると、「……ふっ。説明してやろうっであああ〜るっ! 男魂ドライブをとーさいした《パワーエリート・エクシア》はっ、男の魂に目覚めた時っ、自らの判断でミッションを遂行することができるのであああ〜るっ!!」
「そういうのはパペット(操り人形)とは言わんだろが……」
「沙織さん、ツッコミどころが違う……」
「そもそも説明になってないじゃない……」
 三人三様につぶやく沙織たち。
 どういう原理か知らないが、「男魂ドライブ」とやらはバッテリー(動力機関)と自律型AI(人工知能)の役割をあわせ持っているらしい。
「……ということでこの勝負ぅっ、『中の人』に預けるのであああ〜るっ!!」
「だから『中の人』ってなんだよっ!? 『中の人』って!?」
 排気量10ccにつき、妖精さんがひとり(by某『女神さまっ』)――ではないと思う。……たぶん。
 トリガーを握りしめたまま、仁王立ちで腕組みをする女美川(終身名誉)部長。《パワーエリート・エクシア》はその横で両肘両膝を曲げて身をかがめ、力を溜め込む(ような)動作をした。

 ごごごこご――っ!!

 くぐもったような振動音が沙織たち……いや、その場にいた全ての者の耳朶を打った。

「・・・ひいぃっさあああっつっ!! ギガマッスルアタァァァァァァァ〜ック!!」

 雄叫びとともに背筋をのけぞり気味に伸ばし、右の拳を勢いよく空に突き上げる。
 その拳がいきなりゴム風船のように大きく膨れ上がり、一瞬後、巨大な円錐……否――
……なんでドリルっ!?」
「グ〇ンラ〇ンかお前はあああああっ!!」
「――っていうか、どういう仕組みなのよ……」

 ……そのツッコミが、隙を生んだ。

 右腕に生えた(笑)巨大ドリルを回転させ、《パワーエリート・エクシア》は地面を蹴って《スカーレットプリンセス》に襲いかかるっ。
「しまっ――」
 操作が遅れた。かわせない……ならばっ。「……押さえ込むまでっ!」
 ケーブルをしならせ、トリガーを引き絞る沙織。
 《スカーレットプリンセス》は腰を引き、唸りを上げて突っ込んできた巨大ドリルをその両腕で強引に抱え込んだ。
「……!!」
 激突音とFRPが擦れ合う音が響き、人工筋肉駆動用リンゲルとオイル、千切れたマニピュレータの指がとび散る。
 しかし《スカーレットプリンセス》は、胸元ぎりぎりで《パワーエリート・エクシア》の巨大ドリルを押さえつけた。


 問題:高速回転するドリルを無理矢理停止させると、どうなる?
 答え:本体の方が逆回転する。


「ぬうぉあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」 「ぬうぉあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」

 悲鳴がふたつ、重なった。
 逆回転する《パワーエリート・エクシア》の胴体に、背中から伸びていたケーブルが巻きついていく。
 当然、その先にあるトリガーを握っていた女美川(終身名誉)部長もたぐり寄せられ、一緒に絡まってぐるぐるぐる〜っと…………


【3rd-p viewpoint】

 “それ” は、悪夢を見ていた――

「やれやれ…………異界の者はせっかちでいかんのぅ」
 のんびりした声が間近で聞こえたかと思った次の瞬間、みぞおちに激痛がはしり、背後の大木に背中から叩きつけられる。

「ぐ……っ!! ……がはっ!!」

 腹の中から空気が押し出されたように、苦鳴を上げる……

 邪霊界からこじ開けた「扉」をくぐって “それ” が最初にまみえたのは、ひとりの老人だった。
 「獲物」としていくばくかのもの足りなさをおぼえつつ、問答無用で襲いかかったのだが――

「ほう……おぬしのペットどもは、おぬしより聡(さと)いようぢゃの」
 身を起こして周囲を見回す。
 引き連れてきた眷属――魔獣たちは傷だらけになって皆おびえたようにあとずさり……身を翻して次々と「扉」へ逃げ込んでいく。
「……で、おぬしはどうする? その異形では、この地に長くとどまれぬと見たが」

「…………」

 答えの代わりに、貫手を放つ。
 同時に鉤爪が生えたその指が全て癒着し、巨大な鏃(やじり)へと変化する……

「……!?」

 ……しかし、それにくし刺しになっているはずの老人の姿は、そこにはなかった。

 ばきいぃ――っ!! 「……ぐぎゃあああああああああああっ!!」

 一瞬後、腕が変じた鋭錐を叩き折られ……悲鳴と絶叫を上げる。
 老人は返り血を浴びることもなく、さっきと同じ場所に、静かにたたずんでいる。

 ――ばっ、馬鹿なっ!? 精霊どもの加護を受けていない人間ごときに……っ!?

 “それ” は初めて、「恐怖」をおぼえた…………










 ……………………………………………………………………………………
 ……………ふと気付くと、暗い森の中をよろめきながら彷徨(さまよ)っていた。
 「扉」はとうに閉じてしまい、位置も特定できない。
 砕かれた腕はかろうじて再生できたが、それに力を使ったため、もはや結界を張ることもできない……

 どさっ――

 手足の自由を失い、その場に朽木のように倒れ込む。
 全身から際限なく流れ出ていく魔力……この地でそれを補うすべはなく、待っているのは緩慢な死。

「……!?」

 気がつかないうちに、意識が途切れていたようだ。
 漆黒の闇の中、唐突に光に照らされ…… “それ” は眩しさに目を細めた。

「――いました。人型です」
「なんだこれは……?」
「呼吸しています。けど、自力では動けないようです」
「野生化した《デカプリオンくん参号機》を捜索していて、こんなものに遭遇するとは――」
「エネルギー放出を確認……しかし、数値が徐々に下がっています」
「本社より指示。『拘束して回収せよ』」
「了解。現時点でこれを『オルタナティブ01』と認定、呼称する」

 再生した右腕をつかまれ、そこにちくりと痛みがはしる。
 “それ” が薄れていく意識の中で見たのは、自分の周囲を取り囲む白い防疫服姿の一団だった。


【Manami】

「おえええええええええ……」 「おえええええええええ……」

「「「…………」」」
 勝負あった……と言うべきなのだろうか?
 両手両膝を地面についておえおえやっている筋肉ダルマと《パワーエリート・エクシア》(なんでっ?)を見やり、俺はひと月前にも感じた脱力感と疲労感をおぼえた。
 まあ、あれだけぐるぐる回されたら、吐きもどしたくもなるわな……ってトリガー放せばよかったのに。
「はああ……結局、こうなったか――」
 沙織さんが投げやり気味にそう言って、肩の力を抜いた。
「お疲れさま。……でも、また修理に出さなきゃね、これ」
「ううう……」
 ほのかさんの指摘に、傷ついた《スカーレットプリンセス》を見上げて涙目になる沙織さん。
 特にドリルを受け止めた手首の部分がひどいありさまだ。……確か以前、マニピュレータ部分は値段がはるって言ってなかったっけ?
「おえええええええええ……」
「たいちょおおおおおっ、傷は浅いでありまああああ〜すっ!!」
 さっきから副長(だよな、多分)が筋肉ダルマの背中をしきりにさすっている。そして他の連中は、身体張ったギャグに挑んだ?隊長を讃えるかのように目の幅涙を流しながら敬礼している。
 筋肉ダルマは死んでもトリガーを放しませんでした…………って、なんかいろいろ間違ってるぞお前ら。

「おえええええええええ……おえええええええええ…………お――」

 その時、えづいて?いた《パワーエリート・エクシア》が、いきなりがばっと身を起こした。
 両腕を前方に突き出したまま、ぶるぶると震え出す。
「……?」
「な、何?」
「……マシントラブル?」
 俺たちが見守る中、《パワーエリート・エクシア》はゆっくりと肘を軽く曲げた両腕を頭上に掲げ、両膝を地面に着いたまま背筋をのけぞらせた。

 次の瞬間、ばしっ――と鋭い音がして、その上半身が…………ぶ、分解した!?

「な……何だぁ?」
「い、意外といい加減なつくり……」
 両腕が肩から脱落し、頭部がもげて、胸の外装がぼろぼろとはがれていく。
 そして胸の中央にあったでっかい球体――男魂ドライブが音をたてて地面に落ち、ごろごろと転がってくる。
「「「…………」」」
 ぴたりと止まったその表面に、ひと筋の亀裂が入る。
「……!!」
 さっきからずっと感じていた得体の知れない不安感が、一気に膨れ上がった。

 ……いや、違うっ! これはっ――

さおりん&ほのかっち♪
【3rd-p viewpoint】

「……うぐっ!?」
「なっ……何よっこの臭いっ!?」
 真っ二つに割れた男魂ドライブから、もうもうと白煙が吹き上がった。
 同時に濃縮された汗の臭いが一気に漂ってくる。瘴気?をまともに食らった沙織たちはめまいを起こし、気が遠くなりかけた。
 野次馬の何人かもよろめいたり、顔色が悪くなったりしている。
「「……!?」」

 煙の中で、何かが立ち上がった。

「な……『中の人』っ!?」
「んなアホなっ!?」
 しかしその影は、人型だったが “ヒト” ではなかった。
 灰色の、ぬらぬらしたオイリーな肌。胸元に黒いステンシルで「01」とナンバリングされている――

「…………」

 身体中にくっついていたケーブルを、身を揺すって振り落とす。
 いびつなそのシルエット……痩せた体躯に、不自然に張り出した両肩。そこから伸びた、節くれだった異様に長い腕。
 そしてその指の先には、捻じ曲がった鉤爪が生えている……

「き……きゃああああああああっ!!」

 何処からともなく、悲鳴が上がった。
 それを合図に、まわりを取り囲んでいた野次馬たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「な、何!? コイツ……」
「ほのかっ――さんっ、下がってっ!!」
 沙織はそう叫ぶと、トリガーを握り直した。
 《スカーレットプリンセス》が、ふたりとその異形の人影の間に割って入る。
 しかし、男魂ドライブの中から出てきたそれは全く目もくれず、肩を震わせ、右の手のひらで顔を覆った。

「くくく……もう貧弱なボウヤとは呼ばせない…………だあありゃっしゃふぁいやあああああああああっ!!」

 絶叫とともに、両の拳を天に突き上げる。
 同時に節くれだった腕と脚が、丸太のように膨れ上がった。
 胸元が分厚く鎧われ、下腹部が六つに割れ、首筋が盛り上がった肩に埋没する。
 ぬらぬらした皮膚がさらに光沢を帯び、筋肉のモールドが全身を覆い尽くしていく。
 そして――

「ふっふっふっ……ふふふふふ……ふふふっ……はぁ〜っはっはっはっはっはぁ〜っ!!

 
ふんぬっ!! ふんぬっ!! だあありゃっしゃああああああっ!!」

 逆三角形のマッシブなシルエットに変貌した「中の人」(?)は、パンプアップした肉体を誇示するかのようにポーズを決め、声高らかに絶叫した。

「男の魂炎と燃えてっ、燃える男の魂だっであああ〜るっ!!」

 男魂ドライブの中で怪しげな液体にずっと漬け込まれていたせいか、すっかり「脳まで筋肉」と化しているようだ。
 暑苦しく燃え上がったオーラ?の力で、周囲の体感温度が一気に真夏日と化した。
「…………」
「き……筋肉ダルマのクローン人間?」
 もちろんそんなわけないのだろうが……頭から否定できない何かが、そこに厳然とあった。

「そうっ!! 魔力を失ったわたしはっ、その代わりに新たなる力……男魂力(おとこんりょく)を手に入れたのであああ〜るっ!!」

「「…………」」
 そんな沙織たちの視線に気付いているのかいないのか、ぐぐっと両の拳に力を込め、四肢の筋肉をぴくぴく脈動させる。
 むきむきまっする。当然、上から下まで生まれたまんまのすっぽんぽ……
……なんでドリルっ!?」

「ただのドリルではないっ! 男の魂のドリルなのであああああ〜るっ!!」

 腰に手を当て、これ見よがしにふんぞりかえる「中の人」。
 へその下に屹立(きつりつ)したドリル(爆)が、うなりを上げて回転しながら上下にぷらんぷらん揺れた(……)。

「ふっふっふっふっふっふっふっ……この男魂力ドリルでっ、人間界の全てを貫くのであああ〜るっ!!

ふんぬっ!! ふんぬはんぬっ!! だあありゃっしゃああああああっ、ふぁいっ!!」

 ビルダー笑いを顔に貼りつかせたまま、一歩一歩、地響きを立ててゆっくりと歩き出す。
 すでに怒張完了(爆)。へそ下ドリルが、さらに甲高い音をたてる。

 きゅいいいいっ、きゅいいいいっ、ぶらんぶらんぶらん…………

「さっ……沙織ちゃんっ、ここここっち来るううううっ!!」
「うわああっこっこんな変態っ、メガパペット越しでも触れたくない〜っ!!!!」
 得体の知れない恐怖とあまりの気色悪さに、さしものふたりも顔を引きつらせてあとずさる。
 だが――

 ごぶちっ――!! 「その股間の……股間のドリルがめっさ気に入らないのであああ〜るっ!!」

 折り合いの悪い弟の使うメガパペットでも連想したのか、復活した女美川(終身名誉)部長が、横からいきなり「中の人」をぶん殴った。

「なっ、何をするのだでああああ〜るっ!!」

 「中の人」はすかさず身を起こし、鼻血をだくだく流しながら怒りをあらわにする。
 女美川(終身名誉)部長も顔を歪め、その鼻先にビシッと指を突きつけた。「……その口調もっ、気に入らないのであああ〜るっ!!」

「貴様こそっ、わたしの口調を真似するなであああ〜るっ!!」

 どうやら「同族嫌悪」とかいうやつらしい。確かに皮膚の色(と、股間のドリル)以外、見た目もクリソツ。
 互いの闘気が一気に膨れ上がってMAXになり、そこだけ地球温暖化が確実に進行した(おいおい……)。

「わたしのこの手が光って唸るのであああ〜るっ!!」 「お前を倒せと轟き叫ぶのであああ〜るっ!!」

 目と目が合ったその日からっ、見知らぬあなたと男魂バトルっ(笑)。
 女美川(終身名誉)部長と「中の人」は、絶叫と同時に相手にとびかかった。
 もはや言葉はいらない。あとは己が拳で語るのみっ!!

「うおおおおおっ!! 男魂腕ドリルうううっ!!」 「うおおおおおっ!! 男魂腕ドリル返しいいいっ!!」

 ごぶちっ――!!

 カウンターで互いに相手の一撃を顔面に食らって、同時に吹っとばされる。
 しかし、両者ともすかさず起き上がると……

「うおおおおおっ!! 男魂肘ドリルうううっ!!」 「うおおおおおっ!! 男魂肘ドリル返しいいいっ!!」

 ごぶちっ――!!

「うおおおおおっ!! 男魂肩ドリルうううっ!!」 「うおおおおおっ!! 男魂肩ドリル返しいいいっ!!」

 ごぶちっ――!!

 ごぶちっ――!!

 ごぶちっ――!!

 厚い黒雲が空を覆い尽くして稲妻が轟き渡り、脈絡なく大地が割れて火山が爆発し、吹き上がった火柱の中で光り輝く龍と虎が意味もなく互いに螺旋を描いて急上昇しながらぶつかり合い、そのただ中を甲高い鳴き声を上げてフェニックス(不死鳥)がカッ飛んでいく……という脳内イメージの中、両腕両肘両肩にもドリルを生やして襲いかかる「中の人」と、互角の戦い(笑)を繰り広げる女美川(終身名誉)部長。
「な――なんか展開についていけない……」
「ほっといていいんじゃない? お互いに潰しあってくれたらこっちも楽だし」(←なげやり)
「で……でも、このまま殴り合いさせておいたら、『なかなかやるな』『お前こそ』とか言って意気投合しちゃうかも……」
「あはは、そんなバカな…………って、あ――ありえるかも(……汗)」
「…………」
 と、その時……

「待ちなさいっ!」


【Manami】

 逃げまどう人の中に紛れ込み、俺は沙織さんたちから離れて『巨神戦記』の楽屋テントの影に隠れた。
 誰も見ていないことを確認して、ブラウスのポケットからブローチを取り出す。

「ミラージュマジック ・ ミラクルチャージ!!」

 キーワードを唱えると、手にしたブローチが光り出し、着ていた服が光の粒子に変わっていく。
 光の粒子は裸になった俺の周囲を回りだし、光沢のある白い生地の服とミニスカート、手袋、ブーツ、宝石のはまったブレスレットやヘアバンドになって俺の身体を包み込んだ。
 ブローチが胸の中心に固定され、変身が完了する。
「……よしっ」
 《パワーエリート・エクシア》の中から出てきたのは、邪霊界の魔人……魔獣を操り、この世界に混乱と破壊をもたらそうと画策する異形の者だ。
 おそらくひと月前、お師匠に泣かされ?て行方不明になっていた奴だろう。なんで筋肉ダルマのメガパペットの中にいたのかは分からないが、そうすることで魔力の消耗を抑えていたに違いない。
 早く倒しておかないと……でも、このまま沙織さんたちの前に出ていったら、俺――三代真奈美が美少女戦士ミラージュホワイトだとバレてしまう。
 いや、ヘタすると「真奈美=武士」ってことまで気付かれてしまうかも――
「どうしよう…………そうだっ!」
 ちょっと恥ずかしいけど、背に腹は変えられない。
 俺は身を翻して、テントの中へとび込んだ……


【3rd-p viewpoint】

「待ちなさいっ!」

 頭上から聞こえてきたその声に沙織とほのかが顔を上げると、《スカーレットプリンセス》の肩の上に人影がひらりと舞い降りた。
「「……!?」」
 長い黒髪と、白いスカートの裾が風になびく。
 金のティアラと半透明のベールを頭にかぶり、その左手には一本の杖――巨神たちを統べる『女神の杖』が握られている。
「セ――」
「セレスタ……姫?」
 『巨神戦記』のヒロイン――争いを続ける人と巨神族との架け橋となるべく旅を続ける、運命の乙女。
 《スカーレットプリンセス》の肩の上に立っていたのは、そのセレスタ姫の衣装を纏った人物だった。

「邪悪なる異界の者よ、ここはお前の世界ではありませんっ――」

 凛とした涼やかな声が、あたりに響いた。
 しかし逆光で、その表情は見えない。

「うおおおおおっ!! 男魂膝ドリルうううっ!!」 「うおおおおおっ!! 男魂膝ドリル返しいいいっ!!」

 ごぶちっ――!!

 ごぶちっ――!!

 ごぶちっ――!!

 そして延々と続く、筋肉(バカ)二人の不毛などつき合い――

「ふ――なかなかやるな……」 「貴様こそ……」

「だがしかぁしっ!! 貴様の技は全て見切ったのであああ〜るっ!!」

「ならば最後の必殺技っ!! 男魂頭ドリルであああ〜るっ!!」

 ぎゅるるるるっ――と、「中の人」の頭のてっぺんが渦を巻いて尖り、巨大なドリルと化した。
 まさに「脳筋」ならぬ、「脳ドリル」状態(……笑)。

「はぁ〜っはっはっは〜っ!! 究・極・十本ドリルうううううううっ!!」

「なんの必殺っ、究極十本ドリル返しいいいいいっ、であああ〜るっ!!」

 両腕両肘両肩両膝に一本ずつ、そして股間(……)と頭にそれぞれ一本で、計十本。
 イッちゃった表情を浮かべてとびかかってきた「中の人」を、女美川(終身名誉)部長は真っ正面から抱え込み、身体を後ろへのけぞらせた。

「……!!」

 ルー・テーズばりのバックドロップうううっ!!(←表現が古い)

ルー・テーズ【Lou Thesz】(1916〜2002)
 「鉄人」の異名を持つ、20世紀最強のレスラーのひとり。プロレス技の「バックドロップ」は彼が元祖である。

 問題:高速回転するドリルを地面にめり込ませると、どうなる?
 答え:やっぱり本体の方が逆回転する。


「ぬうぉあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」 「ぬうぉあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ〜っ!!」

 悲鳴がふたつ、重なった。
 頭を軸にぐるぐると逆回転する「中の人」。当然、その身体を抱え込んでいる女美川(終身名誉)部長も一緒にぐるぐるぐる〜っと…………
「…………」
 そして唖然とする沙織たちの前で、セレスタ姫?の背中が、わなわなと震え出した。

「お、お、お、……お前らヒトの話聞けえええええっ!! ライトニングスマああああああああッシュっ!!」

 次の瞬間、強烈な閃光があたりを包み込んだ……


【Manami】

 『巨神戦記・第三章 〜運命の代償〜』の舞台が終わった。
 興奮冷めららぬ表情で立ち上がる観客たちに混じって、俺と沙織さん、ほのかさんの三人も客席をあとにした。
「よ、よかったですね……沙織さん、ほのかさん」
「…………」
「……あ? ああ、ご――ごめん、真奈美ちゃん」
 眉根を寄せてうつむいていたほのかさんが、弾かれたように顔を上げる。
「…………夢――だったの、かな……」
 黙り込んでいた沙織さんが、ぽつりとつぶやいた。
「…………」
 う〜ん、そう思っておいてもらえると、こっちとしてはありがたいのだけど……


 正体を隠すためにセレスタ姫の衣装(多分、予備のやつ)を拝借し、早着替え(男に戻れていた頃に身につけた特技。あんまり自慢できるものじゃないけど……)でミラージュガールのコスチュームの上から重ね着して沙織さんたちの前に出ていったのだけど、魔人は筋肉ダルマと殴り合いを続けていて、俺のことは完全にシカトされた。
 頭にきたのでフルパワーのライトニングスマッシュをぶつけてやったのだが、魔人は魔力をかなり失っていたらしくあっさり消滅してしまい、あとには真っ黒焦げになった筋肉ダルマだけが残って――

 あれ? ミラージュガールの力は人間には無害なはず、なんだけど……

 ……ま、まあいいか。とにかく俺はその閃光で沙織さんたちが目を眩ませている間に姿を隠し、変身を解いて着替えて服返してあわてて戻ってきた――というわけだ。
 もう一度やれと言われても、多分できない(笑)。

「沙織ちゃんほのかちゃん、真奈美ちゃ〜んっ」

 公園の出口で、母さんたちが手を振っていた。反対の手にある大量の紙袋に、思わず沙織さんと顔を見合わせる。
 あの紙袋のロゴって、確か少女趣味全開なデザインで有名なティーンズブランドのやつじゃ……
「みんなお帰り。……なんか大変だったみたいね」
「あ、あははは……」
 引きつった笑い声を上げる沙織さんの横を、両手を破損させた《スカーレットプリンセス》を載せたキャリアーが通り過ぎていく。
 ちなみに黒コゲになった筋肉ダルマは軍団の面々に担がれて病院に直行(ひと晩過ぎたらまたピンピンして戻ってくるはず……とは沙織さんの談)し、魔人が消滅してカラッポになった《パワーエリート・エクシア》は、何処からともなく現れた防疫服姿の一団が回収していった。
 いまだに何人かが怪しげな測定器を持ってうろうろしているところを見ると、どうやらそいつらが、魔力を失いかけて瀕死になった魔人をメガパペットに閉じ込めたらしい。
 全く知らないとはいえ、はた迷惑な連中である。
「真奈美ちゃん、今夜はみんな家に来てもらうから……いろいろお手伝いしてね♪」
「…………」
 我が家でのファッションショー開催が、すでに決定しているようだ……
 一難去って、また一難。はああ……と、ため息をシンクロさせた俺と沙織さんの肩を、ほのかさんが「御愁傷さま」といった感じで、ぽんと叩いた。
「あ、そうそう、ほのかちゃんの分も頼まれてたから、ちゃんと買ってあるわよっ」
「え゛……
 甲介さんのお母さんがにっこり笑みを浮かべて紙袋を持ち上げ、同時にほのかさんの顔にタテ線が入った。
「「……!」」
 俺と沙織さんは腰の引けたほのかさんの腕を、すかさず左右から同時に絡めとった。
「うっふっふ〜っ、よかったですわね〜っほのかお姉さま〜っ♪」「いつまでも部外者ヅラさせませんですことよ〜っ♪」

「ち、ちょっとふたりともぉ〜っ!? お、おばさまたちもそんな気使わなくたっていいですからぁ〜っ!! ・・・いや〜っ!!」

 悲鳴を上げるほのかさんをずりずりと引きずって、俺たちは帰路についた。
 ああ……やっぱり平和が一番だなぁ…………(←現実逃避モード)

(おしまい)































「……真奈美ちゃ〜ん、実はこんなのもあるんだけど〜っ♪」
「げげっ!!」
 母さんに見せられた携帯電話の待ち受け画面には、セレスタ姫の衣装を着た俺の姿がしっかりと映っていた。



母親「あらっ、結構似合うじゃない♪」
真奈美「……(照)」




 い……いつの間に――?

(おまけの終わり)




 あとがきがわりの二人座談会――

真奈美 「あ……あのっ、えっと、は――初めましてっ。み、三代っ、武士のい……妹のま、真奈美ですっ。……よ、よろしくお願い、し、しますっ」
甲介 「え――えっと、その、こ……こちらこそ、よ、よろしく……ま、真奈美ちゃん」
真奈美 「ど、どうも――(赤面してうつむく)」
甲介 「…………(視線をそらして頭をかく)」
真奈美 「あ、あのっ、え――えっと……甲介さん?」
甲介 「ななっ……何かな? ま、真奈美ちゃん」
真奈美 「えっと、あの……(そわそわ)こ、甲介さんに、き――ききたい、ことが……」
甲介 「うっ……(思わず身構える)」
真奈美 「えっと、その……」
甲介 「……(緊張)」
真奈美 「あ――あの……」
甲介 「……(汗)」
真奈美 「……え、え〜っと…………その、ど――どうして今頃になって、ミラージュ番外編1の後日談なんですか?」
甲介 「……へ?(点目)」
真奈美 「あ、い、いやその……も、もうずいぶん間が空いているし――」
甲介 「そ、そそそうだ、ね……(どきどきっ)」
真奈美 「……?」
甲介 「え……えっと、も――MONDOの奴も以前から漠然と考えてたらしいんだ。『ミラージュの番外編でお師匠に泣かされていなくなった魔人は、その後どうなったんだろう?』って」
真奈美 「へぇ……」
甲介 「で、去年ライターマンさんが少年少女文庫の第二掲示板に短編で『運命の再戦?』を書き込んでくれたんで、ちょうどいい機会だし、それを元にして話を膨らませた……って言ってたっけ」
真奈美 「な、なるほど……そうだったんだ――ですか」
甲介 「あらためてお礼を言います。ライターマンさん、本当にありがとうございました」
真奈美 「それにしても、魔力をなくした魔人が女美川重工に捕まって、メガパペットの生体CPUにされていたなんて……」
甲介 「それだけうさん臭い面のある企業なんだよ、あそこは」
真奈美 「そ、そうなんだ……」
甲介 「筋肉ダルマも『中の人』にまかせるっ――とかほざいてたけど、ほんとに『中の人』が入ってるなんて思ってなかったろうな……」
真奈美 「でしょうね。げろげろやってたから、魔人が出てきたところも見てなさそうだし」
甲介 「そうそう(笑)。で、なんかよくわからないうちに真っ黒焦げになってたし」
真奈美 「な……なんでそんなにくわしいんですか? 甲介さん」
甲介 「いっ!? い、いやその……そ、そうっ! さ――沙織の奴にきいたんだよ、うんっ」
真奈美 「…………」
甲介 「――と、ところで真奈美ちゃん、武士の奴は……どうしてるの?」
真奈美 「えっ!? あ、え〜っと……その、げ、元気です、よ――」
甲介 「そっか……じゃあ、またいつか会えるかな? オレにとっても大事な弟分だし」
真奈美 「甲介さん……(うるうる)」
甲介 「そ、そうだっ(あせあせっ)、武士の奴って真奈美ちゃんには、どんなお兄さんなのかな?」
真奈美 「えっ!? え〜っと……(赤面)なんていうか、その――(そわそわ)えっと、や……優しくて、たっ、たよりがいが、あって――」
甲介 「……もしかして、真奈美ちゃんにとって理想の男性?」
真奈美 「いぃっ!?(大赤面) い――いや、そそそそういうわけじゃ……っ!! って、どうしてそういう話になるんですかっ!!」
甲介 「そこまで照れなくても……あ、そっか、ちゃんとボーイフレンドがいたんだっけ」
真奈美 「だっ……だからどうしてそんなことまで知ってるんですかっ? 甲介さんっ」
甲介 「あ……」

2008.1.26 MONDO


真奈美 「……改訂版だと、筋肉ダルマと魔人がどつき合うシーンが変わっているんですね」
甲介 「読んでくれた人から、『最後までドリルにこだわってほしい』って感想もらったんで、なるほどって思って書き直したらしいよ」
真奈美 「究極十本ドリル(笑)は、『科学戦隊ダイナマン』に出てきた “十本尻尾” のパロディですよね」

十本尻尾【じゅっぽんしっぽ】
 スーパー戦隊シリーズ第7作『科学戦隊ダイナマン』(1983〜1984)に登場した地底有尾人一族には「尻尾の数が多いほどエライ」という身分制度があり、十本尻尾には絶対的な権力(不老不死)がもたらされると伝えられている。彼等はレトロウィルスの力で自分たちの尻尾を(人為的に)増やそうとするが……

甲介 「よく知ってるね〜そんな古い特撮もの。……あ、もしかして武士の奴に無理矢理付き合わされたとか?」
真奈美 「え? あ、いや――その……(照)。…………え、えっと、そ……それと最後の俺――あ、あたしのイラストも変わってるんですけど」
甲介 「あ……あれはね、感想くれた別の人に『三蔵法師?』って言われたんで急遽描き直したらしい」
真奈美 「さ、三蔵法師――ですか……(笑)」
甲介 「前のバージョンは巡礼服のイメージで描いたらしいんだけど、女の子があこがれるドレスとはちょっと違うかもね」
真奈美 「そ、そう……ですか? う〜ん……けど、まさか甲介さんからも女の子のファッションの話題が出るなんて――」
甲介 「…………(苦笑)」





ほのか「沙織ちゃんたちはいいわよ。似合ってるし……」
沙織「そう言われても……あんまし嬉しくない」
真奈美「…………(照)」




2008.3.20 三蔵法師……三蔵法師……あああやっぱりそう見えるうううううううっ!! MONDO

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