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――萌え燃えっ! 白塁学園高校女子ロボTRY部 EX4――

HERO美少女変身騒動っ(完結編)

・・・あるいは、「さらば女美川ヤマト 愛の戦士だし(笑)」

                      CREATED BY MONDO



舞香「さ〜て、前回までのお話は――」
祥子「校舎の屋上から夕日に向かって絶叫していた女美川ヤマトくんが、謎の光球から現れたM78星雲の宇宙人(?)の力で、可愛い女子小学生の “なでしこちゃん” に変身してしまうの」
かなめ「なでしこちゃんは美人のお母さんと二人暮らし。学校では友だちと文芸クラブに所属していて、放課後はティーンズファッション誌のモデルをしているのよ」
祥子「クラブの取材で白塁学園高校にやって来たなでしこちゃんは、そこで飯綱甲介先輩と出会って恋に落ちるの」
舞香「だけど先輩は事故にあって記憶をなくし、全くの別人になって彼女の前に現れるの」
祥子「でも、その時すでになでしこちゃんには親同士で決めた許嫁がっ」
舞香「……そして、二人が実は異母兄妹で不治の病だということが唐突に判明してしまうっ!!」
祥子「…………」
舞香「…………」
かなめ「…………ち、ちょっと違う……?」

 おもいっきり違う(……笑)。
 とにかく 『HERO美少女変身騒動っ(前編)』『HERO美少女変身騒動っ(後編)』を読み直すのだっ。




よく分かる(?)ダイジェストコミック(……笑)





(承前)

「はっ!?」

 突然我に返ったヤマト(なでしこ)は、弾かれたようにあたりを見回した。「……あ、あれ? どうしてボクはっ、こんな所に――」
 放課後の通学路。ランドセルを背負った自分――
「ちょっとどうしたの、なでしこっ? いきなり変な声出して」
「あ!? い、いや、え……えっ、と……」
 隣を歩く美也子に覗き込まれるように見つめられ、しどろもどろに返事する。
 いつの間に学校が終わって、校門を出たのだろう……?
 目を瞬かせてその顔を見返すと、彼女は大きなため息をつき、呆れ返ったような表情を浮かべた。
「しっかりしなさいよなでしこっ。先輩さんのことで頭ん中一杯なのわかるけど、寝ボケてる場合じゃないんだからっ」
「……?」
 きょとんとした表情を浮かべるヤマト(なでしこ)の肩に、両手を置く美也子。その横で桜子が、人差し指を立てて片目をつむった。
「わたしたちの集めた情報によりますと、飯綱先輩さんはあの交差点で部長さんと別れて、そのあとこの道を真っ直ぐ通って家に帰られるということですの。ですからここで待ち構えていれば、誰にも邪魔されず先輩さんにアプローチできるというわけですわ♪」
 道のむこうを指し示して、にっこりと笑みを浮かべる。
「え? え? え……え〜っと、その、あの……?」
「あああもうっ全くじれったいわねっ。いいっ!? 今ここで一気にいっとかないと、あとで絶対後悔することになるわよ、なでしこっ」
「いつまでもじっと見てるだけじゃだめですわっ。先輩さんとの仲を深めるためにも、ここは積極的にならないとっ」
 ぐぐっと身をのりだして力説(?)する親友二人に気圧されて、ヤマト(なでしこ)は、わけのわからないまま反射的に頷いてしまった。
「う――うん、わ、わかった…………って、飯綱先輩いっ!?
 思わず声が裏返る。
「あっ! 噂をすればなんとやらですわっ」「ラッキー♪ 今日はひとりきりじゃんっ」
 美也子と桜子の視線を追うと、交差点の方から見慣れた人影がひとり、こっちに向かって近づいてくる。
「さあなでしこちゃん、告白タイムですわっ!」
 背中をぽんっと押され、ヤマト(なでしこ)はつんのめるように一歩前へ出た。
「……!!」
 後ろを振り返ると、美也子は握った拳の親指を立て、桜子は柔らかく微笑んでいた。
 目線で、がんばれ……と励ましてくる。

 ――そう……そうだ、ボク……ボクは……飯綱先輩に…………今から、告白……する、の……

「…………」
 両手を胸元でぎゅっと握りしめ、ヤマト(なでしこ)は二人に背を向けると、ゆっくり歩き出した。
 人影がだんだん近づいてくる。知らず知らずのうちに、歩き方がだんだん速足になっていく。
 制服のプリーツがひるがえり、長い髪が揺れる。
 そのたびに身体の芯がキュンとして、甘酸っぱい緊張感が身体中に広がっていく……
 どきどき、どきどき……膨らみかけの胸の奥で、鼓動がどんどん大きくなる。

「……あれ? きみ、確か――」

「先輩好きですっ! ・・・これ、受け取ってくださいっ!!」

 みなまで言わさず、目をつむったまま下を向いて……両腕を真っ直ぐ前に突き出す。
 その手にあるのは、薄いピンク色の洋封筒――
 どきどき、どきどき……まわりがしーんと静まり返って、胸の音だけしか聞こえない。
「…………」
 どきどき、どきどき…………受け取ってくれなかったらどうしよう…………中を読んでくれたらどうしよう……
「…………れ……」
 どきどき、どきどき…………断られちゃったらどうしよう…………OKされたらどうしよう……
「…………くれ……」
 どきどき、どきどき…………「好きだ」って言われたらどうしよう…………抱きしめられて、ほっぺにキスされちゃったらどうしよう……
「…………んでくれ……」「へ……?」
 どきどき、どきどき…………思わず顔を上げた目の前に…………肉がそそり立っていた(笑)。

「…………呼んでくれ……お兄さまと呼んでくれえええええええっ!!」

「い・・・いやあああああああっ!!」

 迷彩柄のアーミーパンツにジャングルブーツ。
 ごつごつした胸筋にぴちっと張りつく、モスグリーンのランニング――
 何の脈絡もなく出現したまっする大爆発な怪人(笑)がビルダー笑いを浮かべ、両手を広げて迫ってくるっ。
「……いやああああっ!! ……みゃあちゃん! 桜子ちゃあんっ!!」
 潜在意識レベルの恐怖に襲われてあとずさり、反射的に助けを求めて振り返る。

 ……って、誰もいないしいいいっ!!

「ボクをひとりにしないでえええええっ!!」
 あわてて逃げ出そうとしたが、脚がもつれてその場にころんでしまうっ。

「・・・お兄さまと呼んでくれえええええええっ!!」

「・・・お兄ちゃんと呼んでくれえええええっ!!」

「・・・兄くんと呼んでくれえええええっ!!」

「・・・兄ぃと呼んでくれえええええっ!!」

「・・・兄ちゃまと呼んでくれえええええっ!!」

「・・・オゥ、プリーズコールミー、『マイエルダーブラザア』っ!!」

 ……って、増えてるしいいいいいっ!!

「いやああっ、だ……誰か助けてえええええっ!!
 まわりを同じ顔、同じ格好の筋肉たち(うげげ……)にぐるりと取り囲まれ、甲高い悲鳴があたりにこだまする。
 ヤマト(なでしこ)は顔を引きつらせ、目に涙を浮かべてその場にうずくまった。

「お兄さまとぉっ――」

「お兄ちゃんとぉっ――」

「兄くんとぉっ――」

「兄ぃとぉっ――」

「兄ちゃまとぉっ――」

「エルダアブラザアアアアアっ!!」

「いやあああああああ〜っ!!」

 頭を抱え、髪をふり乱し、いやいやをするように首を何度も横に振る。
 ただただ汗くさいまっするスメルと、無駄に暑苦しいまっするオーラがあたり一帯に充満し、その恐怖感をさらに倍増させる……

「あの〜、何かお困りですか?」

 突然、場違いなほどのんびりした声が頭の上で響いた。「……お悩みごとがありましたら、解決いたしますよ」
 はっと顔を上げると、傍らに白いワンピースを着た小学生くらいの女の子がしゃがみこんで、こちらを笑顔で見つめていた。
「はいこれっ――」
「な、何でもいいからなんとかしてえええっ!!」
 少女が差し出してきた紙切れを無視し、藁をもつかむ思いでそう叫ぶ。

「お兄さまと呼んでくれえええええええっ!!」

「お兄ちゃんと呼んでくれえええええっ!!」

「兄くんと呼んでくれえええええっ!!」

「兄ぃと呼んでくれえええええっ!!」

「兄ちゃまと呼んでくれえええええっ!!」

「プリーズコールミー、『マイエルダーブラザアアア』っ!!」

「え〜っと…………はい、わっかりましたぁ! ……それではっ」

 ぽんっ――

 めみ、めみ、めみめみがわがわっ……
 女美川むきむき、女美川むきむき、いっぱい鍛えて〜っ、脳まできんに〜く〜っ。

「・・・はぁ〜っはっはっは〜っ!! 兄貴いいい〜っ!!」



 今回の依頼もばっちり解決…………え? いつもだったら、まわりの連中を女の子に変えちゃうんじゃないのかですって?
 でも、あの女の子は「何でもいいから」って言ってたし、だからマッチョマンさんたちの「お兄さんと呼んでほしい」って願いを優先しちゃいました。
 ほら、今じゃほんとの兄弟みたいに仲良し♪ お互いポーズの決めっこして。……いいですよね、男同士の友情って。

 今度はあなたの住む町にお邪魔するかもしれません。そのときは気軽に声をかけてくださいね。
 それではまた――

「・・・いや〜っ!! マッチョは嫌あああ〜っ!!」

 甲高い悲鳴を上げて、ヤマト(なでしこ)はがばっと身を起こした。
「はあ……はあ……はあ…………あ、ゆ――夢……?」
 日曜日の朝。レースのカーテン越しに、日の光が差し込んでくる。
 しばしそのままの姿勢で硬直し、やがてゆっくり手を動かすと、おそるおそる自分の身体を触っていく。
 長い髪、すっきりした小顔、細い肩、膨らみかけの胸……
「…………」
 ふうっ……と息をつき、両手を胸元で握りしめて祈るように目を閉じる。「よかった、なでしこのままだ……」

 ……よかった?

 一瞬、そんな思いが頭の隅をよぎった。
 けれど、壁のハンガーにかかっているものを目にすると、ヤマト(なでしこ)はシーツの端を引き寄せ、照れくさそうに口元を隠して笑みを浮かべた。
 昨日の夜遅くまで、クローゼットの中の洋服を何度も取っかえ引っかえして、やっと選んだ若草色のワンピース。
 そう、今日は――



 着替えを手に部屋を出て階段を降り、ヤマト(なでしこ)は脱衣場の籠にそれをそっと置いた。
 ナイティと下着を脱ぎ捨てて、髪をまとめる。
 お風呂場に入ると、ひんやりとしたタイルの感触が足の裏から伝わってきた。
「……ふうっ」
 給湯器のスイッチを入れて、コックをひねる。
 ぬるめのお湯が、すべすべした桜色の肌を流れ落ちていく。
 しばらくするとシャワーの水音に重なって、可愛らしいハミングが聞こえてきた。

「……ふふ〜ん、ふ〜ん♪ ふんふふ〜んっ♪ ふふ〜ん、ふんふ〜ん♪ ふんふふ〜んっ♪」

 くちびるから転(まろ)び出る、砂糖をまぶしたようなソプラノの声。
 水しぶきの中で感じる、ローティーンの少女特有の未成熟な肢体。
 リズムに合わせて身体を小刻みに揺らすと、ほつれた髪を伝った水滴が、ぱっとあたりに舞い散った。
「……ふふ〜ん、ふんふふ〜ん♪ ……」
 二の腕をこすると、ちょっぴりくすぐったい気持ちになって、クスクスと笑い声がこぼれる。
 その柔らかな、すべすべした感触に、うっとりと目を細める。
 ついこの間まで、ぎゅっと目をつむり、がちがちに緊張してお風呂に入っていたのがまるで嘘のようだ。
「んふっ……」
 シャワーを浴びながら、そっとすくい上げるように、胸の小さな膨らみを持ち上げる。
 両の手をゆっくり動かすと、重みと柔らかさ、そしてぷるんとした弾力感が手のひらに伝わってきた。
「……んっ!」
 こりっとした感覚とともに、かすかな痛みをおぼえる。
「……あ、……んん……っ」
 無意識に顔を横に背けると、浴室の鏡に映った少女が恥ずかしげに頬を染め、潤んだ瞳でこちらを見返していた。



 服を着替えて髪を整え、お気に入りのアクセサリーを身につけると、ヤマト(なでしこ)はドキドキする胸を押さえて家の玄関を出た。
 待ち合わせは10時だけど、ちょっと早めに約束の場所へと向かう。
 秋の風に長い髪とスカートをなびかせ、駅への道を急ぐ……

 ――そ、そういえば、この姿で街の方まで来たのって、今日が初めてかも……

 そんなことを思いながら、ふと横を向くと、ショーウィンドウに映った自分の姿が目にとび込んできた。
「……あ」
 思わず立ち止まり、しげしげと見つめてしまう。
 若草色のワンピースを、可愛く着こなす自分。
 パフスリーブの袖から伸びた、白っぽい両の腕。
 サッシュの巻かれた、細くたおやかな腰。
 ミニのプリーツから見え隠れする、きゅっと締まった両の足――
「…………」
 髪を軽く払って、おすまししてみる。
 背筋を伸ばし、手や脚を内向きにして、モデルをやっている時みたいに軽くポーズをつけてみる。
 そうすることで、ショーウィンドウに映る少女はますます可愛らしく、魅力的になっていく……
「……!!」
 ガラス越しにいくつもの視線を感じ、ヤマト(なでしこ)は顔を赤らめながら、あわててその場をあとにした。

 ――な、なにやってるんだ、ボク……

 恥ずかしげに顔を伏せ、早足で急かされるように歩を進める。
 素足をなでていく、スカートの裾。
 風にサラサラとなびく長い髪。
 胸元のリボンの下にある、慎ましげな膨らみ。
 すれ違う人たちや、追い越していく人たちの視線。
 それらを意識すると、背中越しにきゅっと優しく抱きしめられるようなときめきをおぼえる。
 くすぐったいような、甘酸っぱい気持ち。
 心の中で、少女としての自覚がむくむくと頭をもたげてくる……

 いつしか顔を上げ、口元に笑みを浮かべ、スカートを翻して歩きだすヤマト(なでしこ)だった。



 駅前にあるからくり時計台の下には、大勢の人が待ち合わせていた。

「ごめん、待った?」
「……ううん、今来たところ♪」

 横にいた二十歳くらいの女性が、駆け寄ってきた恋人らしき男性と連れ立って、その場を歩き去っていく。
 その後ろ姿を見送りながら、ヤマト(なでしこ)はふと思う。
 もし、自分があんな風に声をかけられたら、どう返事するのだろう……

 カーン、カーン、カーン、カーン…………

 涼やかな鐘の音が響き、電子オルゴールのメロディとともに、頭上にあるからくり時計の文字盤が真ん中から左右に開いた。
 その奥から現れた機械仕掛けの妖精たちが、曲に合わせてくるくると踊り始める。
 いつしかその動きをぼーっと目で追いかけていたヤマト(なでしこ)は、待ち合わせの相手が隣にそっと寄り添ったことに気づかなかった。
「おはようっ、早く来てたんだ。……待たせちゃったかな?」
「!? ……え!? あ…ひ……ひゃああぁあぅあぅあああああっ!!」
 顔を一気に赤らめ、奇声を上げてばたばたと両腕を慌ただしく振り回す。

「まま〜、あのおねえちゃんどうしたの〜?」
「しっ! 目を合わせちゃダメですっ」

 駅の階段を降りてきた親子連れが、一瞬ギョっと立ち止まり、ひそひそと囁き合って逃げるように立ち去っていく。
「…………」
 そんなヤマト(なでしこ)のうろたえように、待ち人――甲介はしばらく二の句が継げなかった。



「え〜っと、藤森……美也子ちゃんと大豪寺桜子ちゃん、だったっけ? 二人はまだ来てないの?」
「え? あ……は、はい、ま――まだ、みたい…………です……」
 ようやく落ち着いたヤマト(なでしこ)はそう答えると、横目で甲介の顔をちらちらとうかがった。
 まだほんの少し、頬が赤い。

 ――い、飯綱先輩って……こんなに背が高かったんだ……

 小学生の女の子に転生(変身)して、自分の背が低くなったという自覚は、今のヤマト(なでしこ)にはないようだ。
 むしろ “なでしこ” としての今の自分に、不自然さを感じなくなってきているのかも、しれない。
「ふうん……じゃあもう少し、待ってみますか――」「…………」
 ぐっとひと伸びして、甲介は通りの方へと視線を戻した。ちなみに今日は、紺色のカジュアルシャツにベージュのジャケットを合わせ、ボトムはブラックジーンズという装いである。
 そのそっけない口調に、ヤマト(なでしこ)はつい黙り込んでしまう。

 ――ううう〜っ、や……やっぱり変な女の子だなって、思っているのかも……。な、何か、言わなきゃ……

 もじもじと、指先でスカートの裾をもてあそぶ。
 今日はこれから、「女子ロボTRY部の男子メカニック飯綱甲介さんを徹底取材!」と題し、美也子と桜子を含む四人で、郊外にある遊園地で開催されるイベントを見に行く予定なのだ。
 当然、甲介は “保護者” 役も兼ねている。昨今、高校生の男子が小学生の女の子たちを連れ回したりしていたら何かと問題がありそうだが、なでしこの母親の、「文月先輩の息子さんなら大丈夫よね〜」という “お墨付き” で、あっさりOKが出ていたりする。

 〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪ 〜♪ 〜♪ 〜〜〜♪♪ ……飯綱せ・ん・ぱいっ♪

 手にしたポーチの中から、着メロが聞こえてきた。
 ヤマト(なでしこ)はあわてて携帯電話を取り出し、ディスプレイにメッセージを表示する。

 『メールが1件届きました


To: なでしこ
From: Miya&Sakura
Title: (^_^)v (^_^)/~

今日の “取材” は
なでしこに全部
まかせるから
がんばってね〜っ★

by Miyako

お二人のジャマは
いたしませんので
どうぞごゆっくり♪

by Sakura



「……!!」
 かああっ――と、頬が……否、顔全体が熱くなる。
「……何?」
「あっ、い、ひゃあああっ!! べ、べべべべっ、別に、な……なんでも…………」
 甲介に声をかけられ、ヤマト(なでしこ)は携帯電話を覆い隠すように胸元に握りしめ、跳び上がってあとずさった。
「それって……二人から?」
「あ、あのその…………そ、そ……その、じ、実は、その――」
「……?」
「え、え〜っと……そ、その、ふ、二人とも、ま…………間違えて、先に行っちゃった……みたい……です……」
 とっさに目をそらしながら、思いついたでまかせを口にする。
 しかし甲介はそれに気づかず、「ああ、そう……」と納得したようにつぶやくと、ヤマト(なでしこ)に向かって手を差し出した。
「じゃあ、こっちも早く行こう。二人を逆に待たせちゃ悪いしね」
「え……? あ、は、はい……」
 甲介にしてみれば、あくまでも “保護者” としての意識がはたらいての行為だったのだろう。
 だが、ヤマト(なでしこ)は頬を赤くしたまま、その手に自分の手のひらをそっと重ねて握りしめた。



 空は快晴。ときおり爽やかな風が木立を静かに揺らす。
 夏が終わり、秋の気配が感じ始められる、心地よい陽気。
 その澄んだ空のもと、ヤマト(なでしこ)と甲介は、目的地である「甘水(あまみ)ファンタジアランド」のゲート前に到着した。
「見当たらないなあ……何処で待ってるんだろう? あの二人」
「さ、さあ……」
 チケットブースのあたりを見渡す甲介に、ヤマト(なでしこ)はあいまいな返事で答えた。
 二人が今いるここ甘水ファンタジアランド(略称AFL)は、総面積120万平方メートルもの敷地を持つ巨大テーマパークである。敷地内にさまざまなアトラクションやライド、ショッピングモール等を有し、若者から家族連れまで楽しめる場所として人気がある。
 もちろん定番の――と、ここまで思い出し、次の瞬間ヤマト(なでしこ)は握りしめていた甲介の手を思わず振り払い、顔を赤らめて下を向いた。
 ぎゅっと身を縮め、握りしめた両手を胸元に押しつける。

 ――こ、これって……これってもしかして……デートぉ?

「ど、どうかしたの?」
「あ……あのっ、あのその……え、えっと、あ――あの二人、た、多分、もう……入っちゃったんじゃ、ない、か、なって……」
 怪訝な表情を浮かべた甲介にそう声をかけられ、ヤマト(なでしこ)はしどろもどろになってそう答えた。

 ――うううっ……ま、また、嘘ついちゃった…………

 頬がますます火照ってくる。
 どきどき……どきどき……どきどきどき…………
 まるで、耳元に自分の心臓があるような気がする。
「これからどんどん混んでくるだろうし、とりあえずこっちも中に入っとこうか」
 そう言ってうなずくと、甲介はヤマト(なでしこ)を連れてチケットブースの前にできた行列に並んだ。
 とっさのでまかせには、まだ気づいていないようである。
 隣に立つヤマト(なでしこ)は、ちらっとその横顔をうかがい、少しずつ肩を寄せて近づいていく。
 ……さっきあわてて手を離したことを、後悔するかのように。



 ほどなくして料金を払い、園内全ての施設を利用できるフリーパスを首から下げてエントランスをくぐる。
 目の前には様々な意匠を凝らしたショップがずらりと立ち並ぶ、大アーケード――ショッピングスクエアが広がる。
「…………」
 ヤマト(なでしこ)は甲介に寄り添って歩きながら、いつしかショーウィンドウに飾られた洋服やアクセサリーを、無意識に目で追っていた。

 ――あっ、あのジャケットとブラウスだったら、今の先輩の服とつり合わせられるかも……って何考えてるんだボクはああっ!?

「それにしても、小早川さんみたいな女の子がロボTRYやメガパペットに興味あるなんて、珍しいね」
「そ、そんなことないですっ。えっと、その……操縦、だって……」
 できるんです――と言いかけて、あわてて言葉を濁す。
「……?」

 ――何か……何か言わなきゃ。……そ、そうだ、よ、よかったら……

「あ、あのよ、よかったら、『なでしこ』って――」
「じゃあ、とりあえずイベント広場の方へ行こうか? 二人とも、そこにいるかもしれないし」
 真ん中あたりにある噴水のそばで立ち止まり、甲介は振り向いてそう尋ねてきた。
「……え? っと――」
 しばし逡巡する、ヤマト(なでしこ)。
 目当てのイベントが始まるのはお昼過ぎ。それまで来もしない美也子と桜子をずーっと待っているなんて……
「あ……あのっ、せ、せっかくだから、す……少し中を歩きません、か?」 
 手にしたポーチの紐を指に絡ませ、上目遣いで問いかける。「……も、もしかしたらその方が、ふたりと落ち合えるかも、しれ、ないし――」
「そ、そうだね。じっとしてるのもなんだし、ちょっとあちこち見に行ってみようか? ……なでしこちゃん」
「あ……!? ……は、はいっ♪」
 笑顔で答える甲介の視線を受け、名前で呼ばれたことの嬉しさとともに、胸にちくっとした痛みをおぼえるヤマト(なでしこ)。
 嘘に嘘を重ね、さらには “お膳立て” してくれた友だち二人をも「ダシ」にしてしまう、そんな今の自分にかすかな嫌悪感。

 ――もしかしたらボクは、ずるい女の子になっちゃったのかも、しれない……



 耳元を風切り音が通り過ぎ、天地が逆転する。

「きゃああああああああ……っ♪」

 猛スピードでスパイラルやループを駆け抜ける人気の大型ジェットコースター《ダンジョンドラグーン》 の最前列の座席で、ヤマト(なでしこ)は飛ばされそうになる帽子を押さえて嬉声を上げた。
「…………」
 隣にいる甲介は、笑って……いや、引きつっていた(……)。
 通常のジェットコースターだと結構平気なのだが、足元がない “吊り下げ” 型のものだけは、どうしても苦手なのである。
「あ、あはははは……か、かっこ悪いとこ見せちゃった……ね……」
 搭乗口から階段を降りてくる甲介の足は、若干もつれていた(……笑)。
「そ、そんなことないですっ。……あっ、つ、次これ行きましょうっ♪」「ち――ちょっとっ!」
 そんな甲介の手を取り、次の絶叫系ライド――ウォータースライダー《ヴォルケーノ&ストリーム》 へと引っぱっていくヤマト(なでしこ)。
 元のヤマトはこの手の乗り物が大好きだし、“なでしこ” としてもへっちゃらなようだ。
 というわけで、「あとの二人を捜すのはどうなって……」という甲介の言葉は、きっちりスルーされるのであった(笑)。



 絶叫マシンやアトラクションを五つほどハシゴして、ヤマト(なでしこ)と甲介はようやくイベント広場へとやって来た。
 今日ここで開催されるのは、一週間後に公開を控えた話題の映画『ぶれいぶ☆がーるず』の宣伝イベントである。
 タイトルや、広告代理店などの社名が記されたアーチ状の看板をくぐって中に入ると、観客席の最前列あたりはすでに一杯になっていた。主役を務めた人気アイドルユニットや、主題歌を担当したアーティストのファンたちが大勢集まっているようだ。
 広場の中央に設けられた円形ステージと、それを三方から囲む観客席。正面には巨大ディスプレイが設置され、映画の予告編が映されている。
 ロボTRYを題材にした映画なので、イベント内でエキジビションマッチがおこなわれる予定があり、ステージの片隅にはスポーティなカラーリングを施されたメガパペット(競技用人型有脚マニピュレータ)が五体、立て膝をついて駐機していた。

「え……?」

 隣を歩いていた甲介がヤマト(なでしこ)からついっ……と離れ、観客席とステージを隔てる柵へと駆け寄った。
 近づいてきた警備スタッフとふた言三言、言葉を交わし、そしてステージに向けて手を振る。

「お〜いっ、ほのかっ!」
「……甲介?」

 オレンジ色の機体のそばにいた人影――エキジビジョンマッチに参加するプレイヤーのひとりが、その呼びかけに一段高くなったステージから飛び降りて近づいてきた。「ちょっと甲介っ、あんたなんでここに……あれ? あなた確か――」
 後ろにいたヤマト(なでしこ)の姿に気づき、その口調が誰何するものに変わる。
「…………」
 その視線にスカートの裾をぎゅっと握りしめ、身を固くするヤマト(なでしこ)。
 あごをわずかに引き、上目遣いに無言で一礼する。
 怪訝な表情を浮かべつつも、彼女――ほのかは片手を上げてそれに答え、そのまま「ちょいちょい」と甲介を手招きした。
「……どうしてあの娘(こ)があんたと一緒にいるのよ?」
「引率だよ、引率。こないだの文芸クラブの子たちがロボTRYのイベントを見たいって」
 そう小声で言うと、甲介はヤマト(なでしこ)の方をちらっと見て、「――彼女のお母さんがうちの母さんと知り合いでさ、それで頼まれたんだよ」
「相変わらず顔が広いわねぇ、甲介んとこのお母さん」
「オレもそう思う」
 呆れたような口調で言うほのかに苦笑しながら、そうつぶやいた。



「…………」
 そんな二人のたわいもない(?)やり取りを、ヤマト(なでしこ)はじっと押し黙ったまま、身じろぎもせずに見つめていた。
 手足の先から、身体がすーっと冷えていく。
 足元の地面が、一気に崩れ落ちていくような喪失感。
 目の前にいる甲介の姿と声が、音もなく遠ざかっていくような孤立感――
 胸の奥からもやもやしたものがわき出てきて、無意識のうちにポーチの紐を指に固く絡ませる。
 なんで……どうしてこんなとこに藤原ほのかがいるんだっ!? 今日は先輩と先輩とふたりっきりのはずなのに……っ!!

「まさか小学生に手ぇ出したりしてないでしょうね、甲介……」
「するかっ! どういう目でオレを見てるっ?」
「あははは冗談冗談。で、ほかの子は?」
「いや、その……先に来てるはずなんだけど――」
「何それ? 頼りない引率ね〜」
「……うっ」

 まるで当たり前のように、甲介と軽口を言い合うほのか。
 “なでしこ” の自分は何か話そうとするたびに、いっぱいいろいろ思って考えて……その十分の一も伝えられない。
 ふと視線を落として、自分の姿を見る。
 小さな手、細い指、腰までとどく長い髪。
 膨らんだ胸元、丸みを帯びた体つき、スカートから伸びる脚。
 そして、その奥には――
「…………」
 何が……どこがどう違うというのだろう? 同じ女の子なのに―― 「……!!」
 次の瞬間、ヤマト(なでしこ)は顔をこわばらせたまま、開いた両の手のひらに視線を落とした。

 ――ボク、嫉妬してる………… “女の子” として……



 最後に挨拶をしたプロデューサーの男性が、ステージの端に用意された席へと下がった。

「お待たせしましたっ!! ただいまより、映画『ぶれいぶ☆がーるず』公開記念エキジビションマッチを開催しますっ!!」

 MC(司会者)が声高らかに宣言し、客席からの大歓声がそれに呼応する。
 イベント広場を包み込む興奮と熱気のボルテージが、一気に跳ね上がる。
 そんな中、ヤマト(なでしこ)は借り物のトリガー(メガパペット操縦器)をぎゅっと握りしめ、隣に立つほのかの姿を横目でうかがった。
「ごめんねなでしこちゃん。……でも大丈夫? メガパペットちゃんと使えるの?」
 視線に気づいたほのかが、小声でそう声をかけてきた。
 ステージの中央では、映画の主人公を演じた美少女アイドルが、ファンに向かって笑顔で手を振っている。おそらくこのエキジビションでも “主役” なのだろう。
 役作りのために、全国大会常連のメガパペットプレイヤーのもとで特訓した――ということになってはいるが、本当かどうか怪しいものだ。
「…………」
 観客席へと視線を向ける。人込みに紛れて手を振る甲介の姿に気づき、ぽっ……と顔を赤らめる。

「まずはゼッケン01番、甘水市地区ランク10位の実力派プレイヤー、藤原ほのかちゃんっ!」

 MCの紹介に、あちこちから歓声が上がった。
 次々と紹介されていく、五人の出場者たち。正面の巨大ディスプレイには、プレイヤーの顔と各メガパペットが交互に映し出される。

「……ゼッケン04番、飛び入り参加の美少女小学生っ、小早川なでしこちゃんっ!」

 観客席中の視線が全て自分に集まったような気がして、ヤマト(なでしこ)は思わず身をすくめた。

 プレイヤーとして出場するはずだった女の子が一人ドタキャンしてしまい、その代役としてステージに上がったヤマト(なでしこ)。
 ほのかはそれを気づかって、あれこれアドバイスしようとするのだが……

「危なくなったらセミオートに切り換えて、逃げ回っててもいいからねっ」
「…………」
 しばし無言でその顔を見つめ返し、そして――

「お前っ、い――いや、あ、あなたにだけは……絶対負けな――負けませんっ」

 つぶやくようにそう答えると、ヤマト(なでしこ)はほのかに背を向け、自分に割り当てられた機体へと歩いていく。
「え……っ、と――」
 戸惑った表情を浮かべて首をかしげるほのかだったが、あわてて気を取り直し、彼女も自分のメガパペットへと駆け寄った。
 背中のドラムから伸びたケーブルの先を、手にしたトリガーのコネクタに接続。コマンドを入力して四肢の関節のロックをはずす。
 ステージの中央に立つ、ピンクに白のストライプが入った機体――映画のプロップ(小道具)として使われた「主人公用」のメガパペットを取り囲むように、他のプレイヤーたちの機体も、それぞれ所定の配置につく。
 ヤマト(なでしこ)に割り当てられたグリッド(スタート時の立ち位置)は、ほのかの機体の後方。
 機体は “初心者向け” TX−40型。カラーリングは白地に濃淡グリーンのスプリッター迷彩風。右肩に貼られた「04」の番号。

 ――他のプレイヤーなんかどうでもいい……狙うは藤原ほのかのみ!

 競技形式はバトルロイヤル(生き残り戦)。自分以外の機体を全て倒すか、場外へ叩き出せば勝ちとなる。

「……そして、『ぶれいぶ☆がーるず』主人公、ツンデレ女子高生プレイヤー春日野スズカを演じた、平野綾菜(ひらの・あやな)ちゃんっ!!」

 歓声が、一段と大きくなる。
 どのみち優勝するのは、中央のメガパペットを操る彼女に(あらかじめ)決まっているのだろうが……そんなことは関係ない。
 甲介――飯綱先輩の目の前でほのかを倒し、自分の方がパートナーとしてふさわしいということを認めてもらう。
 そのために今、この場にいるのだから。

「……絶対負けない…………この闘いに、ボクの全てを賭けるっ!!」

 ヤマト(なでしこ)は力一杯トリガーを握りしめ、空いた方の手をびしっと水平に振ってほのかの背中をにらみ付けた。
 刺すようなその視線に気づいて振り返り、困惑したような表情で笑みを浮かべるほのか。
 スピーカーから流れていたBGMが途切れ、司会者がマイクを握り直す。
「OK、ガールズ! Get Ready,……
「…………」
 口元をぎゅっと結び、ヤマト(なでしこ)はトリガーを握る手に力を込めた。

「・・・GO!!」「「いっけええええええええ〜っ!!」」

 大歓声が会場全体にこだまし、客席のテンションが一気に頂点へと上昇・加速する!
「いくぞぉっ!! 藤原ほのかああっ!!」
 そんな中、空いた方の手をぐっと握りしめ、絶叫とともにトリガーを持つ手を大きく真横に振る。
 接続されたケーブルが一気にしなり、ヤマト(なでしこ)が操るメガパペットは大きく右腕を振りかぶると、一気にほのかの機体との間合いを詰めた。
 だが――
「……!!」
 左側からピンク色の機体――「主人公」のメガパペットが、体当たりを仕掛けてきた。
 動作制動! ヤマト(なでしこ)の機体は、たたらを踏むように身をかわす。
「なでしこちゃんっ!? ……ちょっ、段取りと違うっ!」
 「主役」の美少女アイドルは、素人っぽく見えるヤマト――いや、“なでしこ” を真っ先に潰してしまおうと考えたようだ。
 トリガーを操作し、ほのかは自分の機体をヤマト(なでしこ)たちの間に割り込ませようとした。
 しかし、残りの二体が彼女の機体の前に立ちふさがる。
 白地にブルー&コバルトブルーの塗り分けを施した機体と、赤身がかった濃いピンク色をした機体……いわゆる「種」なカラーリング。

「ほのかっ! なでしこちゃんを――!」
「わかってるっ!」

 甲介の声に、間髪入れずに答えるほのか。
 そのやりとりがなぜか気に障り、ヤマト(なでしこ)は思わず叫んだ。「……こんなド素人、ボク一人で充分だっ!」

 ――そうっ! こいつを倒したら……次はお前だ藤原ほのかっ!!

「…………」
 ヤマト(なでしこ)の言葉に、相対する美少女アイドルの口元が引きつった。
 背中に回した手の指を立て、残りの二人に指示を出す。ほのかのメガパペットと対峙していた彼女たちは、互いに目配せし合うと……同時にトリガーを引き絞った。

 ブンッ――!

 ツープラトンのラリアット。ほのかのメガパペット――TX−44《キャロット》は腕をはね上げ、その攻撃を上にそらした。
「こっこらあああっ! 二人掛かりでくるなあっ!!」
 そのまま間を突っ切ろうとするが、二体は左右からタイミングを合わせて挟撃してくる。
 どうやらこの二人、ヤマト(なでしこ)を本気で潰しにかかろうとする「主役」を援護するため、ほのかの牽制に徹するつもりらしい。
「くっ……」
 同時に二体のメガパペットを相手にし、さしものほのかも手一杯。
 隣接してきた白い機体――「02」番機のパンチを右腕で払いのける……と同時に、左側からピンクの機体――「03」番機が両腕を叩きつけてきた。
 《キャロット》は上半身をひねってその攻撃をかわし、カウンターで掌底を放つ。
「きゃっ!!」「……もらいぃっ!」
 ひるんだ「03」番機の脇を、《キャロット》とともにすり抜けるほのか。
 だが、もう一体がすかさず前へと回り込んでくる。「あぁんもぉっ! ……なでしこちゃんっ!」
 そして――

 ガッ――!!

 機体の重量を載せてきた体当たりを、両の腕甲を楯にしてブロックする。
 しかし、他の機体に比べてアンダーパワーで軽量級のTX−40――ヤマト(なでしこ)の機体は、堪えきれずに後ろへとよろめいた。
「いっただきぃっ!」「……ちぃいっ」
 美少女アイドルのメガパペット――「05」番機はすかさず側面に回り込み、突き飛ばそうと右腕を繰り出す。
 ヤマト(なでしこ)は定点ターンで機体の向きを変え、伸びてきた相手の機体の腕を薙ぎ払った。
「しまっ――」
 脚をもつれさせ、前のめりにバランスを崩す「05」番機。
 そのまま畳みかけようと、ヤマト(なでしこ)はトリガーから伸びたケーブルをさばき、機体の動きに合わせて素早く横へと位置を変えた。

……!!」

 ふわり、とひるがえるスカート。客席にいる甲介と視線が合う。
 一瞬、嬉しさにときめくが……次の瞬間、ヤマト(なでしこ)は顔を真っ赤にして身を縮めた。

 ――みっ、見られたっ!? 飯綱先輩……に………き……「――きゃやぁぁんっ!!」

 こみ上げてきた恥ずかしさに、あわててスカートの裾を両手で押さえつける。
 ヤマト(なでしこ)の機体――「04」番機の動きが一瞬止まり、「05」番機はその隙を逃さず、一気に攻勢に転じた。
「こっこの……このっ、このっ、この……こ……あ、だ……だ、だめっ、……だ――だめえええっ!!」
 空いた方の手でスカートの裾をなでつけながら、ヤマト(なでしこ)は頬を真っ赤に染めたままトリガーを引き絞る。
 間断なく繰り返される単調な攻撃――おそらくプリセットキーに個々の動作を割り振っているのだろう――を、ブロックするだけで精一杯。
 左前パンチ、前パンチ、前パンチ、前パンチ、右フック、右フック、前パンチ、右フック――
 「04」番機は徐々にステージの端へと追い込まれた。
 焦りの色が、ヤマト(なでしこ)の顔に浮かぶ。

 ――先輩が見てるっ、先輩が見てるっ、…………な、なんとか、しなきゃ……

「くすっ。……ほらっ、あなたと一緒にいた年上のカレシ、あそこであなたのこと応援してるわよっ」
「……えっ!?」

 すいっ――と近寄ってきた「主役」の美少女アイドルに耳元でささやかれ、思わず観客席の方に目をやってしまう。
 その一瞬に間合いを詰められ……

 がすっ――!

 胸部に一撃を受けて、ヤマト(なでしこ)の機体は左へ傾(かし)いだ。
「……っ!!」
 あわててトリガーを操作する。左右の腕を大きく振り回し、その反動で「04」番機はかろうじて姿勢を保つ。
 咄嗟に機体の上半身を後ろにそらせたため、クリティカルヒットにならなかったようだ。
 そのまま右のフックを紙一重でかわし、大きく間合いをとる。
「あんっ、惜しいっ」
 などとつぶやく彼女を、ヤマト(なでしこ)はきっとにらみ付けた。
「先輩を――先輩をオトリにするなんて許さないっ……っ! ……いくぞっ! こんどはこっちの番だっ」
 恥ずかしさを振り払うように声を張り上げ、トリガーを握り直す。
 美少女アイドルの「05」番機は、右腕を大きく横に振って後方へとび退がり、溜めをつくると、右肩から一直線に突っ込んできた。
「ワンパターンの、体当たりかっ。……ならばっ!!」
 ヤマト(なでしこ)は両足を開いて仁王立ちになると、ケーブルを大きくしならせ、トリガーを両手で大きく振り上げた。

「くらえぇっ!! カイザーマグナムっ、ナックゥゥゥゥゥルっ!!」

 砕けっ!! 貫けっ!! 王者の拳っ!!
 裂帛(れっぱく)の気合いとともに、トリガーを一気に振り下ろす。
 その動きに呼応するかのように、「04」番機は重心を落とし、腰だめに構えた両腕を大きく前へと突き出した。
 アクチュエータ(人工筋肉)が唸り、肩にあるベンチレータが排気煙を吹き上げるっ!!
 …………………………………………
 ……………………
 …………
 ……

「……………………あ」

 拳は空を切り、一拍置いて凄まじい衝突音が響く。
 ショルダーチャージをもろに食らい、ヤマト(なでしこ)の機体は突き出したままの両の拳を天に向け、場外へとはじき出された。
「…………」
 胸元のカウリング(外装)がクラックし、破片がとび散る。
 まるでスローモーションのように、ゆっくりと仰向けに倒れていく自分の機体の姿が、見開いた瞳に映る。
 地響き、砂煙、フレームと関節部が軋む音――

 ……借り物の(市販の)メガパペットに、ロケットパンチが装備されているわけなかった。

 『system closed

 転倒の衝撃で脚部の駆動系が破損、回路のあちこちが遮断され、操縦系も完全に沈黙する。
「ま、……負け、た?」
 手にしたトリガーを取り落とすと、ヤマト(なでしこ)は崩れ込むように膝立ちになり、その顔に呆然とした表情を浮かべた。

 歓声が、遠くに聞こえる。
 負けた……負けたのか……? 藤原ほのかと一撃も拳を交えずに…………っ!?

「ああっとぉ! ゼッケン04番、小早川なでしこちゃんの機体がいきなりクラッシュ! 早くも一人目の失格者だあっ!!」

 MCの絶叫を背に、虚ろな視線でステージの上を見やるヤマト(なでしこ)。
 そこではオレンジ色の機体――ほのかの駆るメガパペットがなおも闘い続けている。

「……!!」

 一瞬、ふたりの視線が交差する。
 ほのかは心配して様子をうかがったのだが、ヤマト(なでしこ)の目には、邪悪な笑みを浮かべる彼女の姿が重なるように映っていた。

 ――ふっ、しょせんお子ちゃまにはロボTRYは無理なのよ……
 無理なのよ…… 無理なのよ…… 無理なのよ…… 無理なのよ…… 甲介の…… ――は…………

 脳内で、妄想がリフレインする(笑)。
 悔しさと苛立ちをおぼえ、ぎゅっと拳を握りしめる。
 負けたくない、負けたくない……彼女だけには絶対負けたくない――

 ――だって、だって……ボク、先輩の……飯綱先輩のことがっ…………

 甲介が、人込みに邪魔されながらもこっちに駆け寄ろうとしている。だけど、逆にその姿がどんどん遠ざかっていくように感じる……
 ふと、ヤマト(なでしこ)は、手の中に何かを握り込んでいることに気づいた。
 手のひらを開いてみると、そこにあったのは――
「……!!」
 鈍い光を放つ、青みががった色をした丸い形のペンダント。

 ・・・よせっ! 今それを使ったらっ、お前は二度と女美川ヤマトの姿に戻れないぞっ!!

 頭の中に響くその声を、打ち消すように首を振る。「それでもかまわない……ボクは…………ボクは……っ!!」



……確か小早川さん、だったよね? ……取材?」
……あ、え……えっと、そ、その……



 脳裏を走馬灯のようによぎっていく、数々の思い出。



「い、飯綱先輩……!?」
……あれ? きみ、確か昨日の――」



 ゆっくりと立ち上がり、膝についた土ぼこりを払う。



「じゃあ、こっちも早く行こう。……二人を逆に待たせちゃ悪いしね」
「え……? あ、は、はい……



 空いた手をそっと胸に当て、静かに目を閉じる。



「あ……あのっ、せ、せっかくだから、す……少し中を歩きません、か?」
「そ、そうだね。ちょっとあちこち見に行ってみようか? ……なでしこちゃん」



 そしてペンダントを、頭上に高く掲げると――



「あ、あはははは……か、かっこ悪いとこ見せちゃった…………
「そ、そんなことないですっ。……あっ、つ、次これ行きましょうっ♪」「ち――ちょっとっ!」



 ……ヤマト(なでしこ)は万感の思いを込めて、その名を叫んだ。


「・・・バンガイオおおおお〜っ!!」


 ペンダントに仕掛けられたビーコンが音声キーワードに反応して起動し、指先にかすかな振動が伝わってくる。
 もう、あとには引けない……だけど、これは自分自身で選んだ運命(さだめ)。

 さらば……さらば、女美川ヤマト――

 ぎゅっとつむった目からひとすじ、涙がこぼれ落ちる。
 右手の甲でそれをぬぐい、ヤマト……いや、なでしこは眦(まなじり)を決して顔を上げた。
「そう、ボクは……ボクはなでしこ、小早川なでしこ。聖アルビオン学園初等部の五年生……放課後は美少女モデルっ!!」
 その表情に、もはや一遍の迷いなし。
 “なでしこ” として生きていく以上、もう二度とトリガーを握ることはないだろう。
 誰かに正体を知られたら、二度と元の姿には戻れない……それはヒーローのお約束っ!

「だけどオレの知ってるなでしこちゃんは、今のなでしこちゃんだ。……元が誰だろうと関係ないさっ!(……きらっ☆)」
「飯綱先輩っ……♪」

 ――そうっ!! 先輩ならきっとそう言ってくれるはずっ! 「……だから見ててください飯綱先輩っ、ボクの本当の戦いをっ!!」

 思い込みがレッドゾーンを振り切り、限界点を突破した。

「……いくぞ藤原ほのかっ! これが《バンガイオーRV3》、最後の戦いだっ!!」

 脚を開き、拳をぎゅっと握りしめ、空いた方の手を鋭く横に振って見得を切る。
 バトルロイヤルから脱落したにもかかわらず、ステージの端でただ一人テンションを上げるヤマト(なでしこ)。
 もっとも甲介は人込みに巻き込まれて揉みくちゃにされ、ステージの上のほのかは残り三機を相手に孤軍奮闘しているので――

「あんたたちコントロールケーブル伸ばし過ぎっ! 立ち位置と動きに合わせて巻き取ったりしないからこうなるのよっ。……ほらっ、その輪になったとこにトリガーくぐらせるっ。……だめだめっ、そっちへ無理に引っぱらないっ! ……あ〜もうっよけいに絡んじゃうでしょがっ!!」

 もとい、絡まってしまった彼女たちのケーブルをほどくのに手間取っているので、二人ともその様子は全く目に入っていないようだ……
「…………」
 とかなんとかやってるうちに、ドリルノーズのデルタ翼機が轟音とともに飛来する。
 深い紺色のカラーリング。機体各部に施された赤がアクセントになり、見る人にスパルタンな印象を与える。
 戦闘時には推進ポッドが脚部と化し、主翼が背中にまわり、後部から頭が迫り出して人型へと変形する。
 高周波ブレード、フリスビーカッター、ブーメランなどさまざまな武器を内蔵し、分子核結合処理を施されたボディはいかなる攻撃も寄せつけない。
 そう、これが……これが女美川重工脅威の技術力っ、スーパーワンオフ可変メガパペット、《バンガイオーRV3》――

「……?」

 よく見るとその機体の上に、何者かが風に逆らって仁王立ちしている。
 どピンク色のよそ行きスーツを身につけた、ビア樽みたいなその人影は、手にしたメガホン型のハンドマイクを口に当て……

「ヤマトちゃ〜んっ!! どっこにいるざますかあああっ!!」

「い……っ、・・・いやあああああああ〜っ!!」

 次の瞬間、ヤマト(なでしこ)は顔を引きつらせ、頭を抱えていやいやをするように首を左右に振った。
 見開いた目に涙をいっぱい浮かべ、肩を小刻みに震わせながら、一歩、また一歩その場からあとずさる。

「・・・突・貫っざますうううううっ!!」

 勇壮な行進曲風にアレンジされた『最初から今まで(韓国TVドラマ「冬のソナタ」のテーマ)』が、風にのってどこからともなく聞こえてくる。
 甲介が、ほのかが、プレイヤーと観客たちがそれに気づいて空を見上げる……

「「「……!!」」」

 紺色の飛行メカは絶叫するピンクのビア樽(笑)を載せたまま、ヤマト(なでしこ)の目の前にまっすぐ突っ込んできた――

 どっぱあああああああああ〜んっ――!!

 舞い上がった土煙が、あたり一面を覆い尽くす。
 たちまち騒然となる会場――観客たちは悲鳴を上げ、我先に出入り口へと殺到する。
 そしてもうもうと立ち込める煙の向こう側で太った人影がのそり……と立ち上がった時、ヤマト(なでしこ)のパニックは頂点に達した。

「いやあっ!! 来ないでえええええっ!!」

 ヒステリックな悲鳴を上げると、人影に背を向け、脱兎の如く走り出す。
 脚がもつれ、帽子が飛ばされて髪の毛が乱れ散る。
「……せ、先輩っ、……飯綱先輩いぃ〜っ!!」
 押し寄せる人波に巻き込まれながらも、甲介の姿を捜してあたりを見回す。
 ちらりと見えたその後ろ姿に、人込みを必死にかき分けて駆け寄り、そして――
「先輩……飯綱先輩っ!!」
 ヤマト(なでしこ)は甲高い声でそう呼びかけながら、両の手を伸ばし、その腕にぎゅっとしがみついて目を閉じた。
 長い髪がさらさらとなびいて、首筋や肩をくすぐる。
 小さな胸の膨らみが、どきどきと上下する。
 身体の芯を駆け上がる、甘酸っぱいときめき。今まで感じたことのない、不思議な安らぎ。
 もう、違和感も嫌悪感もない……少女の自分。
 そのまま甘えたような表情を浮かべ、たくましく固い胸板にそっと頬を押しつける――

「……え?」

 なんか、ごつごつしている。
 おまけにすごく、汗臭い……
「…………」
 ぎぎぎぎぎっ――とゼンマイ仕掛けの人形のように首を動かし、ヤマト(なでしこ)は自分が抱きついている人間の顔を見上げた。

「なんと惰弱(だじゃく)な……妹よおおおおお〜っであああ〜るっ!!」

「びぎゃあああああああ〜っ!!(血涙っ)」

 むっとする暑苦しさと、いかついシルエット。
 迷彩柄のアーミーパンツにジャングルブーツ。ごつごつした胸筋にぴちっと張りつく、モスグリーンのランニング――
 潜在意識レベルのさらに奥底――根源的な恐怖に、なでしこの中のヤマトの精神は…………崩壊した。




















「は〜いお疲れさまでした〜っ。またお会いしましょうです〜っ♪」





















「……うわあああああああっ!!」

 絶叫とともに毛布を跳ねのけ、がばっと身を起こす。
 そのままの姿勢でしばし硬直し、そしてゆっくりとあたりを見渡すと……

「あ、気がついた」
「大丈夫? 身体のどこか、痛いところない?」
「…………」

 見覚えのある女の子が三人、顔を覗き込んできた。
 ひとりは制服姿でないと、小学生と間違えてしまいそうな小柄で童顔な少女。
 もうひとりはバレッタで髪の毛をアップにした、勝気そうな少女。
 そして最後のひとりは眼鏡をかけた、一見大人びた雰囲気を持つ少女――
「……ここ――は?」
「保健室よ、保健室。あんた屋上で立ちくらみ起こして倒れてたのよ。おぼえてる?」
「ほんとに大丈夫? ……ヤマトくん」

 ――え……?

 その問いかけに、反射的に自分の身体を見る。
 白の開襟シャツ、グレーのズボン――
 “いつも” と変わらない自分。

 ……ボクは、いったい……?

 まだ、頭の中がぼんやりしている……開いた両の手をしげしげとながめ、無言のまま首をかしげる。
「いつになくテンション低めだけど、地べたかどこかで頭打ったんじゃない? あんた」
 勝気少女――古堂かなめがつぶやく。
「もしかして、おなかすいてるとか?」
 童顔少女――新山舞香がボケをかます。「……それとも何か、変な夢でも見たの? ヤマトくん」
「……!」
 その言葉に一瞬、きょとんとした表情を浮かべ……

「くくっ……は、ははは……はは……あはは……」
「「……?」」

 怪訝な表情を浮かべて顔を見合わせるふたりを尻目に、その笑い声は徐々に大きくなっていく。
「……ははは、な、なんだ……そうか……そうだ、ゆ、夢、だったんだ…………ははは、そ――そうだよな、あはははは……」

……本当にそう思う?」

 ずっと黙っていた眼鏡少女――加納祥子が静かに口を開いた。
 かなめと舞香が無言のまま、その左右に立つ。
 そして彼女たちは無表情のまま、まばたきもせずにこちらをじっと見つめてくる――
「……?」
 三人の視線に、思わず下を向く。
 いつの間にか胸元が…………ふっくらと膨らんでいた。

「い・・・・・・いやあああああああ〜っ!!」



 …………ヤマトの悪夢(笑)は、まだ終わらない……

(おしまい?)




お着替えなでしこちゃんと、デートウェア♪






沙織 「逃亡したMONDOの奴に代わって、オレ――もとい、あたし文月沙織がこの場を担当します」
母親 「沙織の母です。いつもうちの娘がお世話になっています」
沙織 「けげっ! か……母さっ、じゃなくてママっ!? なんでここにっ!?」
母親 「沙織ちゃん一人だと、間がもたないでしょ? でも嬉しいわ。ちゃんと女の子らしく、『ママ』って呼んでくれて――」
沙織 「(小声で)沙織の時は女言葉使わないと、バイト代減らすって言ったくせに……」
母親 「ぶつくさ言ってないで、ほらっ、進めて進めて♪」
沙織 「……え、え〜っと、『HERO美少女変身騒動』全三話、いかがでしたか? か・な・り無理矢理な展開でしたけど、“女の子の立場” にずるずると流されていっては我に返るヤマト改めなでしこちゃんの悪戦苦闘(?)ぷりを楽しんでいただけたなら、作者冥利に尽きます――と、うちのMONDOがほざいて……申しておりました」
母親 「作者さんは『ロボTRY』の中で、沙織ちゃんとは別のタイプのTSっ娘を書きたかった――とも言ってたわね」
沙織 「でも、だからってあのヤマトにその役回りさせるのは、やっぱ無謀過ぎるというかなんというか……そりゃ、筋肉ダルマが女性化する(うげげっ……想像しちまった……)よりはマシかもしれないけど――」
母親 「何言ってるのよ。ノリノリでそのなでしこちゃんとデートしてたくせに」
沙織 「本編では中身がヤマトだなんて全然知らんかったんだっ!」
母親 「沙織ちゃん、今月のバイト代半額」
沙織 「(胸元で手の指組んで)あ〜ん許してママお願いっ。欲しい最新式のパーツや動作ソフトがいっぱいあるのっ」
母親 「はいはい、ひとつ貸しね。……でもまあ、確かに今回の話は無理矢理で無謀過ぎたかもしれないわね。話をまとめるのにずいぶん時間と手間がかかってたみたいだし」
沙織 「言い訳になるかもしれないけど、『フェイク☆ガール』とかいろいろ手を広げ過ぎたのも、遅筆の原因じゃないのか――しら? ……おまけにさんざん盛り上げといて、一気に突き落とすようなオチつけるし」
母親 「……だけど、TSっ娘としてのなでしこちゃんは、ちょっと惜しかったなって思うの」
沙織 「惜しかった? 何が?」
母親 「例えば、なでしこちゃんが沙織ちゃんと同じタイプのTSっ娘だったら、ある時は『こうちゃん&なでしこちゃん』、またある時は『沙織ちゃん&ヤマトくん』になって、どっちでも何の問題なくお付き合いできるんじゃないかと――」
沙織 「きっ、気色悪いこと言わないで〜っ(……汗)」
母親 「あら? 可逆っ娘カップル萌え〜っ♪ とか言ってなかった? 沙織ちゃん」
沙織 「それはMONDOの奴! 基本が男だって分かっとったら、いろんな意味で萎えるわいっ!」
母親 「自分のこと棚に上げてない? ……それと沙織ちゃん、バイト代4分の1ね」
沙織 「(あわてて)や〜んママの意地悪ぅ〜っ。あたしこんなに一生懸命女の子してるのに〜っ」
母親 「(ジト目)……じゃあ、今度はほのかちゃんが男の子に変身して、女の子になりきった沙織ちゃんとラブラブになるというのはどうかしら?」
沙織 「そ、それもちょっとやだ。なんか行き着くところまで行ったあげく、そのまま完全に女の子に “確定” してしまいそうな気がする(……乾笑)」
母親 「性別逆転カップル萌え〜っ♪ だと思ったんだけど、違った?」
沙織 「だからそれもMONDOの奴! それに、そんなこと言ってたら感想掲示板に、『その展開、猛烈にキボンヌ』なんて書き込みされるかも……」
母親 「今時『キボンヌ』なんて使う人いないと思うけど(笑)……それも読者さま方のニーズということで――」
沙織 「激しく拒否っ! ……させていただきますわっ(笑)」

2006.9.10. ブティック《らびあんろーず》 店内にて。































「……うわあああああああっ!! あ……ゆ、夢――?」

 絶叫とともに、がばっと身を起こし……反射的に枕元にある鏡を見る。
 そこに映っているのは――

 ヤマト? ……それとも、なでしこ?

(ほんとにおしまい?)

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