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――萌え燃えっ! 白塁学園高校女子ロボTRY部 episode――
日曜日は美少女っ
           
CREATED BY MONDO      


 飯綱 甲介:16歳・男。私立白塁学園高校1年。本編主人公(のはず……)。謎の美少女に託された銀色の腕輪の力で、女の子に変身する能力を得る。性格は大雑把。考える前に動くタイプ。基本的に女性には弱い。特技はメガパペット(有線遠隔操作式人型有脚マニピュレーター)の操縦。趣味は機械いじりとトレッキング。
 文月 沙織:15歳・女。某お嬢さま学校中等部3年(という設定)。甲介の変身した姿。見た目は可愛らしいが、ボーイッシュ(当然だ)。普段は恥ずかしがり屋だけどトリガー(メガパペット用操縦器)を握ると性格が変わる……と、思われている。特技はメガパペットの操縦。趣味はお菓子づくり(という設定)。



〈PHASE:1〉
「……………………で、一体ここで何やってんだろ。……オレって」
 長い髪をダブルのアップテールにした小柄な少女が、可愛い声に似合わぬぞんざいな口調でそうつぶやいた。
「こ・らっ、駄目でしょ沙織ちゃん。“沙織” のときはそんな男の子の言葉づかいしないって、ママと約束したじゃないのっ」
 エプロン姿の母親が、腰に手を当て注意する。「沙織」 と呼ばれた少女は一瞬うっ……と言葉を詰まらせたが、すぐに気を取り直して、オーブンの用意を始めた母親に尋ね返した。
「――いや、だから、なんでオレ…………あたしがキッチンでクッキー作りなんかやってるのかなーっ、て」
「……だって沙織ちゃん、お菓子づくりが大好きなんでしょ?」
「そ……それは、『趣味は?』 とかきかれたらそう答えるようにって、決めておいたものじゃ……」
 左手にボウル、右手にホイッパーを持って口を尖らせる沙織。パフスリーブの薄いサマードレスの上から、パステルピンクの可愛らしいデザインのエプロン――もちろん母親の見立てたもの――を着けている。
 鼻の頭に小麦粉がとんでくっ付いているのはご愛嬌だ。
「それはそうだけど、できるに越したことないんじゃない? それに沙織ちゃんと一緒にキッチンに立つのって、ママもとっても楽しいし。…………やっぱり女の子って、いいわよね〜」
 可愛いお洋服も着せられるし、と、るんるん気分で付け加える母親。
「男のときでも夕食の用意は手伝ってたけどな……」
 しゃかしゃかしゃか、とボウルの中の材料をかき混ぜながら沙織がつぶやく。
 そう、沙織は正確には 『女の子』 ではない。確かに見た目はそうだし、肉体的にも完璧に♀である。調べても染色体はXXのはずだ。しかし、中身……というか、精神(人格)はまぎれもなく男子高校生の飯綱甲介であり、その気になればいつでも――というほど自由自在ではないが、本来の男の姿になることだってできる。
 どうしてそんな非常識なことができるようになったのかについては、ここではあえて記さない(episode参照)。とにかく紆余曲折があったあと、唯一その秘密を知っている母親との約束で、甲介はときどき沙織に変身し娘としても生活しているわけだ。
 ――結局この腕輪の正体も分からずじまいだし、なんかどんどんドツボにはまっていってる気がするな〜っ。
 ただ、男と女の二重生活をまるっきり嫌がっているかというと、実はどうもそうじゃないフシがある。…………なんだかんだいっても甲介自身、この女の子ライフを結構楽しんでいたりするのだが……
「クッキーができたら、今度はケーキとかプリンとか……あ、パンナコッタやプチ・デザートなんかもいいわね〜っ」
 お気楽な母親にあっけらかんとそう言われ、沙織(甲介)は手にしていたボウルを流しにだんっ、と置いて背を向けた。「だ〜っ! もうやめたっ。いっくら今女の子だからって、そこまでやってられっかっ」
 肩をいからせ、キッチンから大股で出ていこうとする。そんな彼女に母親がぽつりと言い放った。
「あら、そう……………………じゃあ、ほのかちゃんにこうちゃんの秘密、ばっらしちゃおっと」
「だああああああっお願いっ、それだけはやめてっ、ママっ」
 沙織はあわてて振り向き胸の前で指を組み、女の子の口調で懇願する。

 今日も飯綱家は平和であった。


 完全週休二日制が定着したとはいえ、クラブ・サークル活動のさかんな私立白塁学園高校では、土曜日といえども生徒の出入りは多い。
 甲介の幼なじみで恋人未満の、藤原ほのかが部長をつとめる第2ロボTRY(ロボット・トライアスロン)部――通称 『女子ロボTRY部』 も例外ではない。特に前回、悪名高き “元祖” ロボTRY部を学内バトルで破って以来、その噂をききつけた他校のロボTRYサークルや一般のプライベート・チームからの対戦申し込みが相次ぎ、部員たちはそれに備えて今日も昼過ぎから練習を続けている。
 ちなみに女子ロボTRY部のメンバーは、部長のほのかだけが高等部で、あとは中等部の女子生徒が三名、そして番外部員――他校の生徒でクラブにのみ加入――が一名の、計五名である。
 あの一件(“元祖” 側はいまだ負けを認めていない)で貸しをつくった生徒会執行部から予算をもぎ取ることができ、また、“元祖” の女美川部長が 「人型マっシンは戦ってこ〜そ華あああっ。それが漢(おとこ)のろ〜まんなのだっっ!」 などと、格闘系以外のロボTRY競技に全く興味を持たないこともあって、対外試合に積極的なほのかたち女子ロボTRY部は、正式に学園のクラブとして認められる(認めざるを得ない)こととなったのである。
 もちろん、学内で好き勝手やる軍隊バカに対するひそかな反発が、追い風になっていることは言うまでもない。


 ぱくっ。……ぽりぽり…………。「……お〜いしいっ」
「どれどれ……へーっ、これほんとに手作り?」 「あ、このチョコチップのやつもおいしいっ」
「ほんと、すっごくおいしい。上手ね〜沙織ちゃん」
「あ…………あ、ありがと……」
 もじもじしながら顔を赤らめ、返事をする沙織。資料室――もとい、女子ロボTRY部の部室のテーブルの真ん中には、昨日沙織(甲介)がぶつぶつ言いながらも母親と一緒に作ったクッキーが、広げられた可愛らしい包み紙の上にあけられていた。
 練習後の反省会、という名のお茶会。ほのかたちから苦心惨憺(さんたん)した手作りクッキーを誉められ、当の沙織(甲介)は嬉しいというか、痛しかゆしといったところだ。
「お菓子つくるのが好き……なーんて、ロボTRYやってるときからは全然想像つかないわね」
 ほのかのその言葉に、飲んでたアイスティーをのどに詰まらせる沙織。
「でもこっちの方が、さおりんらしくて可愛いよ」
「ね、ねっ、こんどあたしにも作り方教えてよ、さおりん」
「あーっ、ずっるーい。あたしもっ」 「えーっ? あんた前に作ったことあんじゃない」 「で、でもこんなにうまくできなかったもんっ。……ね、さおりん、お願い♪」
「……う、うん。いい……いいわよっ」
 きゃぴきゃぴしたノリで話しかけてくる三人娘(祥子、舞香、かなめ)にそう言ってしまってから、あーまた雰囲気に流されてしまったああっ……と、心の中で絶叫する沙織の中の甲介。本来ならば後輩であるはずの中坊に 「さおりん」 などとタメ口をきかれ、同い年のほのかに妹みたいに扱われ、男としてのアイデンティティは何処いったんだっ、おいっ、と自分にツッコミを入れるべきところであるはずだ。
 だが、アイスティーにジャムをたっぷり入れて飲む(ロシアンティーかっ)その姿は、何処から見ても甘いもの好きな可愛らしい女の子であった。……甲介に言わせれば、「変身時に消費した体内のエネルギーを糖分で補い、再変身に備えて」 いるのだそうだが。
「そうだ、今日はさおりんにあたしたちからプレゼントがあるのよっ」
 長い髪の毛をバレッタでとめ上げ、うさぎの耳みたいにふたつにはねさせた髪型のかなめが、そう言って足元から大きめの紙袋を持ち上げた。「はいっ、さおりん♪」
「……え、な、なん……なの……?」 と手渡された紙袋の中身を見て、沙織は次の瞬間思わず口ごもった。「こっ、こっこっ……、これって……」
「あたしの予備のお古だけどさ、サイズは合うと思うよ」 と、舞香が得意げに答えた。肩までの髪がふわふわっとウェーブのかかった、沙織と同じくらいの背格好の女生徒である。
「へーっ、うちの中等部の夏服じゃない」
 ほのかがクッキーをくわえながら身をのり出してくる。高等部女子の制服(標準服)はジャンパースカートタイプだが、中等部のそれはグリーンのセーラー服。高等部から入学したほのかはこれを着たことがない。
「このクラブに来てるときは、白塁学園の生徒でいこうよ。ひとりだけ私服だと浮いちゃうしさ」
「……で、でも…………」 と沙織。確かに今日は半袖ブラウスにデニム地のキュロットという服装だ。
「あんっ、気にしない気にしない」 「ね、着てみてよさおりんっ」 「そーそー、絶対似合うって」
 三人とも、要は沙織の制服姿が見たいのである。
「あたしも見たいな、沙織ちゃんの制服姿っ♪」 「ほ、ほのかっ…………さんまで……」
 たじろぐ沙織。そんな彼女を見て三人娘に目配せするほのか。そして、
「…………せーのーでっ!! で、いきなり沙織にとびかかるほのかたちっ!

「わああっ! ち……ちょっと、なに、待って、わっ、やめっ、ちょっ……おいっ、きゃっ、わ――――――――っっ!!

 ……1分後。

「よく似合ってるよ、沙織ちゃんっ」 「うん、似合う似合う。ぴったりじゃん」 「わっ、さおりんかわいーっ」 「…………もう、何もそこまで抵抗しなくてもいいのに……」
 三人娘のリーダー格、眼鏡っ娘(こ)の祥子が、床に座り込んでぼーぜんとしている沙織を立ち上がらせ、部屋の隅にある姿見の前へと引っぱっていった。
 何故部室に姿見が……という疑問はさておいて、そこには無理矢理着せられたセーラー服に身を包んだ可愛らしい女子生徒が、祥子に手を引かれて映っていた。
 
――ううっ、…………に、似合い過ぎてる〜っ(汗)。
 鏡の中の美少女は引きつった笑顔を浮かべながら、そんな自分自身を見つめかえしていた。


 ……でもってその日の帰り道――
 三人娘とは方向が違うので、今は沙織とほのかの二人だけである。あとは適当なところでほのかと別れ、ぐるっと遠回りして家に帰れば問題ない。しかし、
「ほんとに似合ってるんだから、もっと普通にしてれば?」 「う……うん」
 隣を歩くほのかにそう声をかけられ、それでも沙織は顔を赤らめたまま、ますます身をちぢこませる。結局あのあと着替えるタイミングを逸して、まだセーラー服姿のままなのだ。
「……変なの」 と、くすくす笑いながらほのかがつぶやく。沙織(甲介)の方は恥ずかしがりながらも、くっそーっ家帰ったら速攻で元に戻ってやるっ。母さんがデジカメ用意する前に絶対男に戻ってやるっ! ……などと心の中で叫んでいたりするのだが。
「ところでさ〜沙織ちゃん。明日の日曜、何か予定ある?」
 沙織の服をひんむいたことなど、毛の先ほども悪びれた様子はない。もちろん、沙織=幼なじみの甲介だとは思いもしない…………って、それが当たり前だ。
 ほのかにとって沙織は、恥ずかしがり屋で可愛くて、それでいてロボTRYの時はパワフルで甲介同様頼りになる――動態視力と反射神経がUPしているから、能力的には甲介より高いかもしれない――年下の女の子なのだ。
「えっ? べ、別に何もないけど――」
「じゃあ、よかったら今晩、うちに泊まりにこない? 商店主組合の親睦旅行でパパもママも家にいないし」
「……へ? お、オ…………じゃなくって、あ、あたしがっ!?
 いきなりのお誘いに、自分を指さし目をぱちくりさせる沙織。
「ひとりだと晩御飯さびしいし……いろいろおしゃべりもしたいし…………ね♪」
 そう言いながら沙織の手を握ってくるほのか。その表情に思わず 「う、うん」 とうなずいてしまってから、あああまた流されてしまったああっ……と、沙織の中の甲介は、ますますドツボにはまる自分を自覚するのであった。
 …………どうやら今夜は、甲介に戻れそうにない。


〈PHASE:2〉
 ぴんぽーんっ――
「あら、いらっしゃい沙織ちゃん。待ってたわよ」
「こ、こんばんわ。ほのか……さん」
 ドアを開けて笑顔で迎えてくれるほのかに、沙織は思わずついお辞儀してしまった。
 ほのかの家はごくごく普通の一戸建て。両親の経営する店(メガパペット用チューニングパーツショップ)は別のところにある。
「もう……っ、相変わらず肩っ苦しいんだから。さあ、どうぞ。上がって」 「は……はいっ」
 母親に用意してもらった 『お泊まりセット』 が入ったバッグを手に、玄関から家の中へと遠慮がちに入る沙織。
甲介にとっては勝手知ったる他人の家なのだが、沙織としては初めての “お呼ばれ” である(おまけに “お泊まり” は甲介としても初めて)。下手にすいすい歩き回ったりしたら変に訝しがられる……と、彼女は必要以上に意識(緊張)している。
 だからそのあと一緒に晩御飯食べても、何処に入ったのやらさっぱり分からない。
「意外と少食ね〜、沙織ちゃんって」 「そ……そっか、な……?」 「もしかして、口に合わなかった?」 「そそそそんなことないっ。おいしいよ、とっても」
 ……ただ、好奇心というか下心というか、そんなものが全くなかったと言えば嘘になる。
 そして他愛のないおしゃべりをしたり、
テレビを見たりしているうちに夜も更けてきた。
「沙織ちゃん、お風呂入らない?」
 ほのかにそう勧められて、沙織はバッグから替えの下着と寝間着――ぞろっとした裾の長いネグリジェ風のパジャマ(むろん母親の見立てた可愛いやつ)を取り出し、風呂場へと向かった。
 脱衣場で服を脱ぐ。女の子としての自分の裸……そして裸になることには、慣れたつもりのようでまだドキドキする。長い髪を頭の上にまとめてタオルで包むと、恥ずかしさと
な好奇心の板挟み状態のまま、沙織(甲介)は湯船に身を沈めた。
「ふう……」 緊張が一気に緩んでいく。そしてしばらくして余裕が出てきたりすると、お湯の中で身体をくねらせ、女の子になりきって鼻唄まじりに片足上げたり、バスタブのふちにしなだれかかったり、さらにはお約束通り、自分の乳房を触ったりなぜたり揉んだりし始める。
「……………………んっ、…………ん……………………んあっ……………………あっ、んんっ…………」
 沙織の押し殺した声が風呂場に響く。…………だが、そうは問屋が卸さない(←何を?)。
「沙織ちゃーんっ、湯加減どお?」
 脱衣場の方からほのかがそう声をかけてきて、思わず沙織は湯船のなかで手足をバタつかせてしまう。「えっ、えーっと……ち、ちょうどいいよ」
「そお? じゃあ、一緒に入ろっ」
 反射的に 「う、うん」 と答えた沙織(甲介)であったが、次の瞬間バスタブの中でがばっ、と立ち上がった。
 ――な、
なにいいいいいいいっ!!

 しかし、あわてて立ち上がったために、向こう脛ぶつけて洗い場にくううっ……とうずくまってしまう。
「おまたせ…………って、ど、どうしたの沙織ちゃんっ!?」 と、ほのかが前も隠さずとび込んでくる。
「な、なんでも……ちょっとあわて――うっ!?」 「…………もう、気をつけてよ。前にパパが酔っぱらって滑って腰打っちゃってさ……」
 などと言いながらほのかはお湯をかぶり、沙織と入れ代わりに湯船につかる。ほのかのヌードを真っ正面から見て興奮のゲージが振り切れてしまった沙織(甲介)は、あわててシャワーのところにうずくまり、水をくんで頭からかぶった。
 ――みみみ見ちゃった見ちゃった見ちゃった見ちゃったほほほほのかのははははだかっ……。
 鼻血が出なかったのは奇跡的だが、顔の火照りは止められない。「……おおお落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…………あ、あたしは女の子、女の子なんだから……」
 自己暗示モードに入って、小声でつぶやく沙織。
「何やってんの、一体?」 「わっひゃああああああっ!」
 背後からほのかに声をかけられ、沙織の心臓がとび跳ねた。
「大丈夫? 顔色赤いよ?」
 湯あたりか何かと思ったのか、心配そうにほのかがのぞき込む。
「……ご、ごめん…………他の女の子と一緒にお風呂入るの……その、初めてだから…………」
 そりゃ確かにそうだろう。
「もおっ、ほんとに恥ずかしがり屋なんだから……」 と、言いながら沙織の後ろにしゃがみ込むほのか。「背中流してあげよか? 沙織ちゃんっ」
「う、う……ん」
「…………へ〜っ、結構着やせするんだ沙織ちゃんって……………………ふにふにっ♪」
「ひっ――ひゃああああああっ! ほ、ほのかっ……さんっ」
 沙織(甲介)のバスタイムは、まだまだ終わりそうにない。


 ――ええっ!? 寝るってま、まさかひとつのベッドでっ……??
 火照ってのぼせきった身体にパジャマを着て、そしてほのかの部屋に連れられた沙織(甲介)は、そのことに気付いてまたまた顔を真っ赤にさせる。
「早くおいでよ沙織ちゃん。大きめだから一緒に寝れるよっ」
 ベッドの端に腰掛けて、ほのかが無邪気に手招きする。クーラーがきいているはずなのに沙織は汗ジト状態だ。
 ああああたしは女の子女の子女の子……と口の中でつぶやきながら、ぎくしゃくした動きでほのかの隣に座る沙織。
――あ〜明日の朝までまぢでもつんだろうか…………オレの理性……。
「そうだ、髪の毛編んだげるよ」
 いつの間にか後ろに回ったほのかが、沙織の長い
髪をいじり始めた。着ているにんじん模様のパジャマがちょっとミスマッチな感じだ。
「…………え、あ……あの……?」 「ふっふ〜ん大丈夫っ。お姉さんにまっかせなさいっ」
 手慣れた感じで沙織の髪を束ねていくほのか。
 ――そ、そういやほのかのやつ、前に妹が欲しいなんて言ってたよな……。
 
そう思いながらも、沙織(甲介)は目をつぶってほのかのされるままになった。そして、
「…………にんじん……好きなんだ……」
「ちっちゃい頃は見るのも嫌だったんだけどねー」
 沙織の問いかけに、手を動かしながら答えるほのか。「……小学校の給食にでてきた、にんじんのグラッセ(甘煮)が食べられなくて固まってたときに、隣にいた甲介がさっと食べてくれたことがあってさ。
 んで、すぐに先生に見つかっちゃって、『他の子の給食にまで手をだすなっ』 ってこっぴどく怒られて……でも甲介の奴、最後まであたしの名前出さずにいたから、結局欠食児童呼ばわりされちゃってさっ」
 そーいやそんなこともあったっけ……と思う沙織の中の甲介。「それで、《キャロット》 なんだ……」
 ほのかの操るメガパペットの愛称である。
「ん〜、他に思いつかなかっただけだよ――っと、できたっ。
 …………
いいじゃない。寝るときはその方が邪魔にならなくていいわよ。それに結構似合ってるし」
「う、うんっ」
 お姉さんぶって言うほのかに、沙織は自分でも驚くほど素直に返事をし、頭の左右にできた髪のお団子に触れてみた。ちょっと嬉しい。
「じゃあ、寝よっか」 「(ごくっ……)は、はいっ」
「……もおっ、何緊張してるのよ。あたしまで変に意識しちゃうじゃない」
「ご、ごめん……なさい」 「ふふっ。沙織ちゃんって、ほんと可愛い♪」
 覚悟(?)をきめて、沙織はほのかの隣に横になる。ほのかは電気を消すと、自分の被ってる布団を沙織にそっと掛けてあげた。
「…………ねえ、沙織ちゃん」 「ななな、何?」 「そのブレスレット、お風呂のときも着けてたよね……」
「う……うん。そ、その……お気に入り、なんだ。…………や、安物だけど……」
 沙織は右手を布団から出して、手首にはまった銀色の腕輪を顔の前に持ってきた。
「ふーん……………………………………そういえば甲介も同じようなの、着けてるよね」
 ぎっくうっ!! 「そ……そう? ど、何処にでもあるようなやつだ、から……」

 気付いてたのかっ――と、沙織(甲介)はほのかの方へ顔を向けた。思わず目が合う。
「……あのさ、この際ずばりきくけど、沙織ちゃんって…………甲介とどういう関係?」
「え…………え、え〜っと……」 声が震える沙織。「…………あ、あの……と、遠縁の親戚……」
 あ〜月並みな設定っ、と思う沙織の中の甲介。しかしまさか 『腹違いの妹』 などと言うわけにもいくまい(笑)。
「そっか……じゃあ、前々から知ってたんだ、甲介のこと……」
 お店(甲介の母親が経営するブティック)の常連だ、なんて言ってたくせに――と、ほのかの声のトーンが変わる。「あのバカのこと……好きなの?」
「そ…………そんなこと、な、ない……よ」
 だ、誰がバカだっ! と思いつつそう言う沙織(甲介)。その肩をほのかが両手でがしっ、とつかんだ。
「あたしに遠慮しないでちゃんと言って。…………お願いだから」 「ほ、ほのか……さん」
 真剣な表情でそう問うてくるほのかに、沙織(甲介)も下手な言い訳はできないと腹をくくった。しかし正体を告げる気は毛頭ない。まず信じてはもらえないだろうし、信じさせたら今度は変態呼ばわりされて、縁を切られるのは目に見えている。
 布団の中でほのかの方にちゃんと向き直る。目を閉じて深呼吸。そして――
「…………す、好きだよ。……で、でもオ……じゃなくて、こ……甲介、くんは、ほ、ほのかっ、さんしか…………み、見て、ない……から…………」
 だんだん小さくなる声でそう言ってしまって、顔からプラズマ火炎が出るほど恥ずかしくなる沙織の中の甲介。
 ほのかはそんな沙織の顔をじっと見つめ、そしてやにわにその頭をぎゅううっと胸に抱きしめた。
「わわ……っぷ!?」 「ごめん…………ごめんね、沙織ちゃん……っ」
 カンの良さが今回は仇になった(?)ようだ。ほのかの頭の中では、「沙織は甲介のことが好き。でも甲介は自分(ほのか)のことが好き。そして沙織は失恋した」 というお話が形作られたらしい。
 考えようによっては結構図々しいというか自信過剰いうか……。
「…………」
 彼女を結果的にだましてしまった、という罪悪感が沸き上がり、沙織(甲介)はほのかの腰に手を回して優しく抱きしめ返した。男のときだったら興奮して押し倒す――! といったところなのだろうが、女の子同士なためかそれだけで何故か満ち足りた気持ちになってくる。
 ――ま、いいか。今はほのかの “妹” になっても……。
 …………いつしかふたりは、抱き合ったまま安らかな寝息を立てていた……。


 …………………………………………………………………………
「むにっ……ふにゃああっ」 ごすっ――!

 ベッドの上で大の字になったほのかの右こぶしが、沙織のあごを捉えた。
 上から被っていた布団は、とうに足元に蹴とばされている――。
「うぐっ、んぐぐ……んあっ……」
どしっ――!

 お返し(?)とばかりに沙織の左の一撃が、ほのかの脇腹にたたき込まれた。
 おやすみタイマーでクーラーが止まっていたのは幸いであった。でなければ寝相の悪いふたりとも、一発で夏カゼをひいてしまうだろう。
 それにしても、よくベッドから落ちないものである。
 …………ま、しょせんこんなもんだ。



〈PHASE:3〉
 次の日は朝から真夏日であった。
 お昼御飯を外で食べようと、沙織とほのかは駅前のショッピング街へとやって来た。今日の沙織は白いノースリーブのブラウスに膝上ミニのフレアスカート、パンプス風のサンダルでシンプルに、ほのかは薄い水色のワンピースと、同色のカチューシャでお嬢様風にきめている。
「ねえ、沙織ちゃん。ちょっと買い物つき合ってよ」
 昼食のあと、すっかり女の子になりきってウインドウ・ショッピングを楽しんでいた沙織に、ほのかがそう声をかけてきた。
「う、うん、……いいけど。ねえ、何買うの?」
「へっへーっ。いいからいいから」 と、沙織の手を取りほのかが入ったのは、デパートの水着売り場であった。
「…………今年の夏は水着買い換えよって、お金貯めてたんだよねーっ♪」
 そう言いながら、売り場のあちこちをあれこれ物色するほのか。そんな彼女を見ながら、ふーん、あのほのかがねえ……と心の中でつぶやく沙織の中の甲介。
 ――こづかいやバイト料は、みんな 《キャロット》 に注ぎ込んでると思ってたけどな……。
 幼なじみの意外な一面を見て、なんだかぽやーっとした気分になってしまった沙織(甲介)に、当のほのかが両手に別々の水着を持ってかけ寄ってきた。
「ねっ、ねっ、沙織ちゃん、これとこっち……どっちがいいと思う?」
 左右の水着を交互に胸に当て、そう尋ねてくる。沙織はうーん、と口に指を当て、
「そ、そう……ね。……ビキニより、そっちのセパレートの方がいいと思う……けど……」
「あ、やっぱそう思う? あたしもそーじゃないかなーっ、てなんとなく思ってたんだ〜っ」
 だったらいちいちきくなよなーっ……などと思う沙織(甲介)の胸元に、ほのかがもうひとつの水着――ビキニの方を押しつけた。オレンジ色を基調にした、トロピカルな模様のものである。
「こっちは沙織ちゃんの方が似合いそうだね」
「……へっ??」 と面食らった次の瞬間、沙織(甲介)は、何故かその水着を抱えて試着室の真ん中に突っ立っている自分に気がついた。「あ……………………あれっ?」
 しばし呆然。やがて後ろを振り向き、ため息ひとつ。
「……………………これ試着しないと、ここから出してもらえそうにないな……」
 そうつぶやくと、沙織は気合(?)を入れてブラウスのボタンに指をかけた。女の子の水着を身につけることに対する多少の好奇心も、もちろんあったり(おいおい……)するのだが。
「えーと、こ、こうか……な?」
 前かがみになってビキニの上下をつけ、そのランジェリーとは違う感触に少し赤面する沙織。仕上げに腰にパレオを巻き、髪をはらって鏡の前で軽くポーズを付けてみる。
 ――うーん。もうちょっと胸があった方がいいのかな……。
 しばし逡巡したあと、脚を閉じ、揃えた膝の上に両手を重ねて置き、少し前かがみになって胸を突き出す。二の腕で左右から胸の膨らみをはさみ込むように寄せて、そして右腕の内側でくいっと上げてみる。
「…………んふっ♪」
「ふふっ。結構気に入ってるみたいじゃない、沙織ちゃん」
「えっ? …………っ、て……うわわわわわああああっっ!!

 いきなり後ろからのぞき込んできたほのかにそう声をかけられ、仰天した沙織は狭い試着室の中で足を滑らせて、思いっきりひっくり返ってしまった。
 もちろん、店員があわててすっとんで来たのはいうまでもない。


「…………結局買ってしまった……」
 公園のベンチにひとり座り、沙織は膝の上に置かれた紙袋を見つめてそうつぶやいた。
 紙袋の中には、もちろんさきほどのビキニが入っている。ほのかの強引な薦めと、店員が放つ無言のプレッシャー――試着室であれだけ大騒ぎしたんだからさもありなん――に負けてしまったわけだ。
 うーっ、たったこれっぽっちの布っ切れがなんであんなにするんだっ!? と、軽くなった財布に涙する沙織(甲介)。
 普段自分が着ている洋服やランジェリーは、ブティックを切り盛りしている母親に用意してもらっているので、女の子の衣服がどれくらいするのかなんて、いまいち分からないのである。
 ――それにしてもほのかのやつ、何処までいったんだろ?
 首を巡らせ幼なじみの姿をさがす。暑さとその他もろもろでへばってしまった沙織を見て、「ちょっと待ってて」 と、ジュースを買いに行ったきり、なかなか戻ってこないのだ。
「……ふうっ」 と、ため息をつき、つい男のときみたいに脚を組んでしまう。だが、
「ねえかっのじょ〜っ、ひっとり〜っ?」
 背後からいきなり声をかけられて、沙織はあわてて脚を閉じ、振り向いて相手を見た。「うげ…………っ!」
 後ろでへらへらと笑いを浮かべていたのは、中途半端に髪を染め、中途半端に不健康そうな肌をした大学生風の二人組であった。
「よかったらさーっ、ボクらと一緒にカラオケ行かな〜いっ?」
 だが沙織(甲介)に、男に声をかけられて喜ぶ趣味などない。女の子として声をかけられ、ちょっとした優越感にひたったりすることはあっても――だ。
「ねえねえ、かーのじょ〜ってばああっ」
 ベンチの後ろから身をのり出し、耳元で馴れ馴れしくそう誘ってくる。沙織はそっぽを向き、手をしっしっと振って拒否の意志を表した。男のときでもかかわり合いたくないタイプであった。
「…………けっ。ミニスカで股開いて挑発してたクセに、お高くとまりやがって……っ!」
 そう言いながら前に回り込んできた男たちにヤバいものを感じた沙織は、ベンチからあわてて立ち上がり、ビキニの入った紙袋を胸に抱えて二、三歩あとずさった。
 まわりに人影はない。――でも、この格好で男に戻るわけにもいかないし。
 相手はふたり…………やれるかっ
!?
 軽く脚を開き、空いた方の手を握りしめる。甲介が近所にある道場の師範に教わっているのは、発勁(はっけい)の一種であり、その気になれば小柄で非力な沙織の身体でも、逃げ出す隙くらい作ることはできるはずだ。
 しかし――
「……つ〜かまえたっ♪」 「う……うわ……っ!!」
 後ろから忍び寄って来た三人目の男に突然はがい締めにされ、沙織は手足を無我夢中でバタつかせる。
「はっ……離せっ! このっ、離せってばっ
!!
 何とか振りほどこうとするが、今の彼女の力ではかなわず、更に人気のない場所へと引きずり込まれた。
「やっ、やめろっ! やめっ……お前らっ! このっ……いいかげ――もごごっ!?
 あっという間に手首と足首を押さえつけられ、口の奥に布切れを噛まされてしまう。
「おいっ、ちゃんと押さえとけよっ。ヘタに暴れられたらたまんねえからなっ」
 地面に仰向けにされた沙織の身体を馬乗りに跨いだ男が、残りのふたりに押し殺した声で言った。
「……そっちこそ調子こいて服破ったり、傷付けたりすんじゃねーぞっ」 「んなことして輪姦(まわ)したのモロバレったら、この女が黙っててもまわりがうるせーからな」
 そう言い返されて男はくくくっ、と喉の奥で笑った。「なーに、姦(や)っちまいながら薬でもキメさせときゃ、イッちまって記憶がトンじまうからあと腐れなくできるぜっ」
「…………もごがごうぐぐぐぐぐっ
!!
 手前勝手なことを言いながら狂気と興奮、そして酷薄な表情を浮かべる三人に、怒りをあらわにしてもがき続ける沙織。だが右の乳房を服越しに、がっ――! と握られ、痛みとともに嫌悪感と戦慄……そして、いままで感じたことのない恐怖が彼女の背中を駆け上がった。
 犯される、犯される、犯される、犯される……っ
!!
 首を振り身をよじりながらも、じわっ――と目に涙がうかぶ。男の姿に戻ろうにも、半ばパニクっているこの状態では、精神集中もままならない。
 ミニスカートの中に強引に手を突っ込まれ、ショーツが無理矢理引き下ろされる。
 ――
やめろやめろやめろやめろやめろやめろ誰かっっ!! …………その時っ!
「待てっ!!

 ……という叫び声ともに、にじんだ視界にとび込んできた人影が、彼女に覆いかぶさろうとした男を蹴り倒す。そして手足の戒めが解かれると同時に、限界まできていた緊張の糸がぷっつりと切れ…………
 沙織(甲介)の意識が一瞬、ふっと途切れた。


「大丈夫かっ」
 その声にはっ――と身体を起こし、目の前に立つ人影に思わず胸元をかき抱き
ながら、地面に座り込んだまま後ずさる沙織。しかしその人影がさっきの連中と違うこと、そして自分の身体に何も異常がないことに気付いて、彼女は警戒しながらも身体の力をゆるめた。
「あ…………あなたが助けてくれたの……?」
「ああ、心配しなくていい。あいつらは、このボクが追っ払った」
 はきはきとした口調でそう答えた人影は、甲介とさほど変わらぬ年格好の少年であった。細身の身体にぴちっとしたブラックジーンズ、そして丈の短い赤色のレザー・ジャケットを羽織り、その袖をまくり上げている。「……それよりも、下着をちゃんと上げた方がいいんじゃないか?」
「!!」 真顔でそう言われ、沙織は膝近くにまでずり下げられた自分のショーツに気付いて、あわてて背中を向けて真っ赤になりながら衣服を整えた。
 どきどきどき……鼓動が早くなり、頬がますます火照りだす。――や、やだっ、恥ずかしい……。
「立てるかっ?」 「あ……はい」
 差し出された右手につかまり立ち上がる沙織。だが勢い余ってバランスを崩し、思わず少年に抱きついてしまう。
「きゃっ! ……ご、ごめんなさいっ」
 沙織はあわてて身を離し、両手を握りしめてうつむいてしまう。
 ……そして、さらに胸の鼓動が早くなる。
「行こう。ここは危険だ」
 肩を抱かれ、思わずびくっとなる沙織。そのままゆっくりと歩きだし、そして、横にいる少年の整った顔をちらちらとうかがうのだが……
 ――な、なんだあ? なんでこいつの顔がまともに見れないんだ? ど、どうしてドキドキが止まらないんだっ
!?
 自分の中に芽生えた未知の感情にとまどう沙織……の中の甲介。
「あ、あの……」 「なんだ?」
 幾人かの人影がある広場まで戻ってきたふたり。沙織は少しだけ落ち着きを取り戻した。「……あ、ありがとう。…………その…………あの、助けてくれて……」
 しかし、少年に話しかけようとしただけで、彼女の胸の高鳴りが再び早くなっていく。
 ――ま、まさかオレ…………と、と、ときめいてるのかこいつにっ
!?
 そんなバカなっ
!? いくら身体は女の子でもそんな趣味なんかっそうこれはナニされそうになったから恐怖してそんでドキドキして疑似恋愛感情ってやつで身近な異性にナニがこうして……と、混乱する沙織(甲介)であったが、自分の方を見返す少年の視線に我知らず頬を染め、
 ――わっ、め、目が合っちゃった……。と、恥ずかしそうにうつむき口元に手を当ててしまう。
「何も気にすることはない。そうっ、これがボクの――」 と、そんな沙織に少年がそう返事したとき、
「さ、沙織ちゃんっ、いったい何処行ってたの? さがしたのよっ」
 ……と、人影の中からほのかが両手にジュースの缶を持って駆け寄ってきた。「…………な、何かあったの沙織ちゃん? ま、まさかそいつに変なこと――」
「ち……違うっ、違うのほのかさんっ。あ、あたしが危ないところをこのヒトが助けてくれたのっ」
 ほのかの誤解を解こうと、沙織はあわてて口をはさんだ。そして頬を染めたまま少年の顔を見上げ……、
「……いっ??」 その顔がわざとらしい驚きの表情に歪んで固まっているのに、思わず身をはがして引いてしまう。
「…………さ、沙織……? ……それにほのかだ、と…………?」
 首をぎにっ――と回してふたりを交互に見る少年。やにわに彼は 「とうっ!」 とトンボを切って沙織たちからとび離れると、脚を開いてヒーロー立ちになり人差し指をふたりにびしっ、と突きつけた。
「お、お前たちっ! お前たちが白塁学園高校を混乱の坩堝に招いた、
悪の美少女コンビかっ!!

「……………………………………………………………………………………は?」
 沙織とほのかの思考が一瞬フリーズした。だが、少年はそんなふたりにかまわず拳を握りしめ、空いた方の腕をブンッ――と身体の横に振る。「ボクの名前は女美川ヤマトっ! そうっ、お前たちに卑怯な手段で倒された女美川武尊の弟だっっ!!」
「うそっ!」 と、ほのか。沙織の方は目が点だ。
「……そうっ、学園の平和と正義の名の元にっ、いまこそ兄様の仇を討つ
!! 
 バンガイオオオオっ、かああむひあああああっ
!!
 やにわに胸元からペンダント(?)を取り出し、頭上に掲げて絶叫するヤマト。
 ばばんばばんばんば〜んっ、といったイントロとともに沙織とほのかの頭の上を3メートルくらいの飛行物体――ぱっと見は飛行機だが、空力を無視した角張ったデザインで……おまけに機首にドリルが付いている――が通り過ぎ、次の瞬間ガンガンガンッ! と音をたてて人型に変形、二本の脚で目の前に着地した。
「へ、へ、へ…………変形メガパペットおおお
っ!?
 その非常識な代物に、ほのかは呆れ返りながらも驚く。
 プログラミングでもされているのか、そのいかにもヒーローでございなデザインの機体(しかもカラーリングが赤青黄の三原色)は、両の拳を胸元で打ち鳴らし、腕をぶんぶんと振ってキメポーズをとった。そして、その横でそれと同じ動きを披露したヤマトが、高らかに叫んだ。
「無敵機動勇者っ、
バン、ガイ、おおおおおおおっっ!! ああああ〜るっ、ぶいすりゃあああああっっ!!

 首に巻かれた白いスカーフで気付くべきだった。
 両手にはめられた指ぬきのドライバー・グローブで気付くべきだった。
 腰に巻かれたベルトの光って唸るバックルで…………って、気付くぞ普通。
 とにかく、機体頭部の双眼センサーがびいんっ! と点灯し、新手のパフォーマンスか何かと勘違いしたまわりから、拍手がぱらぱらと聞こえてきた。
 しかしその瞬間、沙織(甲介)の頭の中は思いっきり真っ白になってしまった……。



 ……………………なお、「ぶいすりゃあっ!」 という掛け声は、俳優の某M内氏以外やってはいけない。


〈PHASE:4〉
「さあ〜ああっ、くうぉいいいいっ!」
 ジャケットの内側に隠し持っていたトリガーの先に、機体―― 《バンガイオーRV3》 の背中から伸びたケーブルを接続し、芝居がかったツクリ声を上げて構える女美川ヤマト。見た目はあの筋肉ダルマな兄、武尊と似ても似つかないが、目つきや全身からにじみ出るなんとも言えないその雰囲気は、なるほど良く似ている。
 沙織を襲った連中が退散したのは、もしかしたらそこいらへんにヤバいものを感じたため…………なのかもしれない。
「……何が 『さあ来い』 よっ。あたしらにその怪し過ぎるメガパペットと、生身で闘えっていうつもりっ?」
 ほのかが思いっきりくってかかる。だが、ヤマトはまた脚を広げてヒーロー立ちになると、人差し指をびしっ! と突きつけ言い返してきた。「ならばお前たちも、そうっ、自分のメガパペットを呼べばいいじゃないかっ」
 いちいちポーズをつけないと、しゃべれないらしい。
「んなことできるかっ! 非常識なあんたと一緒にするなっ!!
 空飛んで変形するのだから十二分に非常識……と、いうより現行のテクノロジーを大きく逸脱している。それはともかく、さすがのほのかもこの場合、メガパペットなしではどうしようもない。
「ふっ、学園に巣くう悪の美少女コンビも、そうっ、この 《バンガイオーRぶいすりゃあ》 には勝てないとみえるっ」

 ……だから 『ぶいすりゃあ』 はやめなさいってば。

「誰があんたなんぞにっ――」 と、怒りで前に出ようとするほのか。しかし、隣にいた沙織の左腕がそれをすっ……と遮った。「……さ、沙織…………ちゃ、ん?」
 しかし彼女はほのかの方を全く見ずに、何やらぶつぶつとつぶやいている。
「…………………………………………た……………………のに…………いた……………………」
「ち、ちょっと沙織ちゃんっ」
 その肩をつかんで、左右に揺さぶるほのか。だが沙織のつぶやきは止まらない。
「……………………いた……………………なのに…………めいた……………………ん……なのに…………きめ……いた…………あん……………………なのに……………………とき…………めいた……」
 虚ろな表情でぶつぶつとそう繰り返す沙織。だが、突然キッ――とヤマトを睨みつけると、次の瞬間彼女は脱兎の如く公園の出口へと走った。
「むううっ、逃げるかっ
!?」 と叫ぶヤマト。沙織は脚を止め、くるっと振り返ると、逆に指を突きつけ怒鳴り返した。
「誰が逃げるかっ! そこで待ってろっ! ……すぐにぎったんぎったんの、ぐっちょぐちょにしてやるっっ
!!
 強姦されそうになったところを助けてもらったことなど、とうに忘却の彼方である。……もっともヤマトにとっては彼女を助けたなどという意識は全くなく、単に 「悪をやっつけた」 程度にしか思っていないのだが。
 ――うううっあんなのにときめいたあんなのにときめいたあんなのにときめいたあんなのにときめいたっっ
!!
 再び走り出した沙織の目に、いつしか涙がにじんできた。それは悔し涙か、それとも…………。



 小柄な美少女を腕にのせ、全高3メートルの鉄の巨人――といっても装甲はFRP(強化プラスチック)だが――が、動力付きローラーブレードで疾走する。
有線遠隔操作式人型有脚マニピュレーター、ロボTRY用メガパペット。機種はTX−44、機体の愛称は 《マシンノート》 。
 ……しかしその機体は走りながら、ヒトの耳にあたる部分にある円形のパーツをポップアップさせ、そこからアップテールを思わせるはね飾りを突き出させる。同時に尻部のアーマー(増加装甲)がはね上がり、内側に折り畳まれていたフレアスカートのようなカウリングが広がって腰部を覆った。
 そしてその、浅黄色と灰白色に塗り分けられた全身が、変色素子の力でピンク色へと変化していく。手首や肩に入ったストライプは深紅色になり、先程までとは機体の印象ががらりと変わった。
 その名も 《スカーレットプリンセス》。持ち主同様ふたつの姿を持つメガパペットである。


「よ〜しっ来たなああああっいくぞおおおおおおおっ!」
 一直線に自分へと向かってくるピンク色のメガパペットに気付いて、ヤマトはあわてて三たびヒーロー立ちになり、びしっとポーズをとって声を張り上げた。「……世のためヒトのためっ、世界の平和を――」
「いゃっかましいいいいいっっ
!!
 疾走する
《スカーレットプリンセス》 の腕を蹴って、そこからとび下りる沙織。トリガーを大きく振ってケーブルを引き出し、機体の脚を止めずにそのまま肩から突っ込ませる。
 どがっ――! と、そのチャージ(体当たり)をもろにくらった 《バンガイオーRV3》 は、ヤマトの斜め後ろへと大きく弾きとばされた。
「何をするっ! キメゼリフ中に攻撃するのは、そうっ、ルール違反だぞ卑怯者めっ」
「誰がそんなルール決めたっ、誰がっ!」
 それでもむくりと起き上がる 《バンガイオーRV3》。
「……くっそーっ、非常識に頑丈なガタイしやがってっ」
 吐き捨てるように奥歯を鳴らしてつぶやく沙織。ほのかはそんな彼女を見て、あああまた性格思いっきり変わっちゃってるよ、沙織ちゃん……などと思ったりする。
 ちなみにほのかは沙織が戻ってくるまでの間、目の前のヒーローバカ相手に 「あの娘(こ)は絶対来るっ」 「来るもんかっ。そうっ、お前は裏切られたんだっ!」 といった、低レベルな怒鳴り合いを続けていたのだが。
「ならば今度はこちらからいくぞっ。くらえっ、カイザーマグナムナックウウウウルっ!」
 そのバカ……もとい、ヤマトがそう叫び、《バンガイオーRV3》 の両腕が肘の部分から切り離され、ロケットモーターの轟音とともに大きく弧を描いて 《スカーレットプリンセス》 に襲いかかった。野次馬たちから、おおっ――と声が漏れる。
 音声入力方式であった。
「ふっざけるなあああっ!」 と、トリガーを引きしぼる沙織。左腕の攻撃を見切りでかわし、右腕の突進をはらって間合いを詰めた 《スカーレットプリンセス》 は、肘から下のない 《バンガイオーRV3》 に連打を浴びせ、大きく突きとばした。
「おおおお前っ、飛んで行った腕が元に戻ってくるまで攻撃しないのがお約束――」 「だったらそのお約束に殉じて死ねえええええっ!!
 メガパペットを操りながら、ミニスカートをひるがえし走り回る美少女に、野次馬たちの間から黄色い歓声がとぶ。だが、怒り(自己嫌悪?)で頭に血が逆流している沙織の耳には全く届いていない。一方、悪を倒せ悪を倒せ悪を倒せ……と、デンパ受信モードに入っているヤマトは、野次馬がいようがいまいが知ったこっちゃない。
 ――ブッ倒すっ! ……絶対絶対ブッ倒すっっ
!!
 男としての意識に反して 「ときめいて(?)」 しまったその相手が、コトもあろうにあの筋肉ダルマの弟で、しかも兄貴同様、常人逸脱我が道一直線……だったものだから、沙織(甲介)の心情としては、先程までの件を一切合切(いっさいがっさい) “なかったこと” にしてしまいたいのだろう。
 …………ま、ある種のやつあたり、といってしまえばそれまでなのだが。
 起き上がろうとする
《バンガイオーRV3》 の頭部を潰そうと、両腕を振り上げる 《スカーレットプリンセス》。
 しかし――
「沙織ちゃんっ、後ろっ!」 「な……っ!?
 ぐるっと回ってきた 『ロケット腕』 に背後から襲いかかられ、沙織はあわてて機体を相手から離した。その間にヤマトは自分の機体を立ち上がらせ、頭上に舞い上がった両腕を肘を上に向けて回収する。
「ならばこれはどうだっ。シュツルムウイングっ、ブウウメッランンッ!」
 続いて背中のバカでかい翼(おいおい)に手をかけ、前に振り抜く 《バンガイオーRV3》。光の粒子(?)をまき散らしながら、はずされた翼の部分がくるくると回転し、まっすぐ 《スカーレットプリンセス》 に突っ込んできた。
「さっきのロケットパンチと何処がどう違うのよ……」
 思わずツッこむほのか。だか、光学(ビーム)系の武装や機関砲を民生機に装備するわけにはいかないだろう。
「……もしかしたら、こいつメガパペットの格闘戦できないんじゃ――」 と、勘繰ってしまう。たぶん正解だ。
「ひゃあああっ!」
 と声を上げながらも、沙織は 《スカーレットプリンセス》 の身をかがめさせてそれをやりすごす。いちいち名前を叫んでからの攻撃なぞ、かわすことなど造作もない。
 標的をあっさり見失った翼のブーメランは、野次馬たちをかすめ(あっぶねーなっ)、公園の木の幹にどがっ――と刺さって沈黙した。
 攻撃の命中率と回避率は最低だが、防御力だけはオニのようにある “スーパーロボット系” な機体。ほとんど何処ぞのゲームの中での扱いそのものである(?)。
「…………」
 野次馬たちがずずっ、とひいてしまい、さらにそのうちの何人かが、さすがにあとずさるように離れていった。
 ……しかし、肩で息をしながらにらみ合う沙織とヤマトは、それに全く気付いていない。
「ぬううっ。とどめだっ! 伝・説・剣っ、レッジェンドスウオオオオドッ!!」
 どこら辺が “とどめ” で “伝説” なのかよく分からないが、その掛け声に合わせて 《バンガイオーRV3》 の胸部飾り装甲が前にとび出し、巨大な直刀へと変形した。
「「……ど、何処にそんな刃が入ってたっ!?」」 と、沙織とほのかが同時にツッこむ。だがヤマトは
それを無視(?)して、その刃先でぐるっと円を描かせ、剣を正眼に構えさせた。
 刀身の分子が高速で振動し、やがて鈍く光を放ち始める。
「ひっいっさあああつ! スっプリーム一文字斬りいいいいいっ!!
 ヤマトの絶叫とともに、《バンガイオーRV3》 の機体が地面すれすれに浮かび、そして滑るように 《スカーレットプリンセス》 へと突っ込んできた。……ただ、有線でつながっているため、引きずられるようにその後ろを追いかけるヤマトの姿が、ちょっと間抜けだったりするが。
「一・刀・両・だあああああああんっっ!!」 「なめるなあああああっ!」
 剣を大上段に振りかぶらせるヤマト。その瞬間、沙織は機体をかがませて相手の内懐にもぐり込ませ、振り降ろされた剣のつばの部分を左腕で受け止めさせた。
「こらあああっ! フィニッシュのときは大きく胸はって突っ込んでくるのが――」 「ま・だ言うかあああああっ!」
 浮いている相手の脚を力一杯蹴たぐる
《スカーレットプリンセス》。バランスを崩した 《バンガイオーRV3》 を支えようとして、ヤマトは思わず剣を持っている方の腕を動かしてしまい、そして、

 ぼきっ――!

 地面に突きたてられ、機体の全重量がかかった 『伝説』 の剣とやらは、あっけなく折れてしまう。
「んなああああああああああああああああああああっっ!!

 ヤマトのヒステリックな悲鳴があたりにこだました。「……あ、あ、あ、ああうわあうあうあうあああああ〜っっ!!
 お脳の何処かがキレたのか、奇声を上げながらトリガー持つ手をぶんぶんさせるヤマト。中ほどから折れた剣をヤク中の通り魔みたいに振り回し、不安定な足運びでよたつく
《バンガイオーRV3》 に、“痛恨の一撃” を恐れて沙織は回避に専念する。
「沙織ちゃんっ、あれ!」「……そうかっ!」
 ほのかの指さす方を見て、沙織はすかさずトリガーに指示を打ち込み 《スカーレットプリンセス》 を走らせた。
「ま、まさか……っ!」 と、正気に戻ったヤマトがそれに気付いた。「……も、戻れっ、シュツルム――」
「おっそおおおおおいっ!!」
 振り向きざまに両腕を大きくスイングさせる
《スカーレットプリンセス》。その手には木の幹に刺さっていた 《バンガイオーRV3》 のバカでかい翼が、しっかりと握られていた。

 どがああああっっ――!!

 その一撃は折れた剣を弾きとばし、がら空きになった横っ腹に大きくくい込んだ。一拍おいてそこから蒸気とオイルが吹き出し――
「ば……」
《バンガイオーRV3》 は、
「……バカなっ!?
崩れるように……
「そんなバカなっ!!」
…………その場に擱座してしまう。
「そ……そんなっ、そんなそんなそんなあああああっ! ……た、立てっ、立つんだばんがいおおおおおおおっっ!!
 機体に駆け寄りヤマトが絶叫する。しかし完全に沈黙した機体はピクリとも動かない。
「た、立てっ、立てっ、立てっ、立てっ!」 と、彼は半狂乱になってバンバンと装甲を叩きまくる。「……立てっ、立てっ、立てっ、たっ……立って……………………うっ……うううっ…………」
 そして、その口からいつしか嗚咽が漏れだした……。


 バトルは終わった。…………だが、虚しさだけが残った。
 大破した機体に両手をつき、うなだれた姿勢のまま動こうとしないヤマト。メガパペット・プレイヤーの中には、彼のように「なりきってしまう」 奴がときどきいたりするのだが、夢はいつかは醒めるもの。――そう、メガパペットはしょせん単なるホビーマシンに過ぎないことを、彼らはいつか悟るのだ。
 だから沙織もほのかも、声もかけずにそんなヤマトを見つめ続ける。だが……
「……ありがとうバンガイオーっ、お前の…………お前の熱き魂はっ、

 《バンガイオーRぶいすりゃああマークツー》に受け継がれるんだあああああっ!!」

 ……………………………………………………………………………………おい。

 あっけにとられた周囲を尻目に、次回新型主役ロボ登場っ! といったノリでぐぐっと拳を握りしめ目をうるうるさせるヤマト。
 そしていきなり沙織に向かって人差し指を突きつけ、
――また会おう文月沙織っ。お前の洗脳は……このボクが必ず解いてやるっ!!」
「…………」

 『兄様の仇』が、いつの間にか『悪の洗脳美少女』になっていた(笑)。

「お、お……お前ら兄弟そろって何考えてんだあああああああああっっ!!」
 そう怒鳴り返しながら、やっぱり筋肉ダルマの弟だ、こいつ――と確信するほのか。
 だか、言いたいことを言い終わったヤマトは、「さらばだっ!」 と叫んで近くに置いてあった自転車に跨がり、ハングオンしながら颯爽と広場から去っていくのであった。
 ちなみに放置された 《バンガイオーRV3》 は、あとで女美川重工の社員が回収に来るのだろう。
「……う〜ん、ルックスだ・けはそこそこイケてるのに…………なんかもったいない……わね」
 トリガーを持って立ち尽くす沙織の肩をぽんっとたたき、ほのかがぽつりとそう言った。
 すると、緊張の解けた沙織の目から、「うーっ」 と、何故か大粒の涙がこぼれ始める。いつしか彼女は、ほのかの肩にもたれかかって声も上げずに泣き出していた。
「ね、ねえ、沙織ちゃん…………いい男はもっといっぱいいるよ。きっと――
「…………違う……そうじゃ……なくて…………」
「うん、うん。…………ね、気分直しに甘いものでも食べに行こうよ。あたしがおごったげるからさ、……何がいい?」「……………………ジャンボチョコパ……」「――はいはい」

 ……かくして沙織の、女の子としての初恋(……?)は、ものの10分もたたないうちに木っ端みじんになってしまったのであった。


〈APPENDIX〉
「ターゲット2に接触。撃破を確認。……しかし因果律の変動値、変化ありません」
 ホログラフィー・ディスプレイの立ち並ぶ中、沙織そっくりの小柄な少女――この場では 『マム』 と呼ばれている――は女性オペレーターのその報告に黙ってうなずき返した。
「しかも前回と違って、今回は不特定多数の人間に “オーバーテック” が目撃されています。……あの、マム?」
「何?」 「……私たちのやっていることって、本当に意味があるんでしょうか?」
 小首を傾げて返事をした 『マム』 に、そのオペレーターは真剣な面持ちで言葉を続ける。「このまま “オーバーテック” が浸透していけば、新たな因果律が形成されて、我々が何もしなくても変動は収束に向かう――そんな気がするんです……けど」
「そうね…………もしかしたらそうかもしれない……」
 大人びた口調で 『マム』 がつぶやく。「……でも、その新たな因果律が 『前倒しの破滅』 を導く可能性がゼロでない以上、あたしたちの行為……いえ、あの子にやらせていることはけっして無駄ではないわ」
 正面のディスプレイを見つめながら、彼女は口元に曲げた指を当てた。
「…………少なくともクギは刺しておく必要がある。“オーバーテック” があのレベルでとどまっているうちに――

                                                    episode2 END


 甲介: おい、作者。
 MONDO: ……なんだ。甲介ではないか。
 甲介: オレの出番はどうした?
 MONDO: 何寝ぼけたこと言っとる? 最初から最後まで出ずっぱりではないか。
 甲介: それは 『沙織』 としてのオレだろっ。今回のエピソードにオレ自身は全く出ていないぞっ。
 MONDO: そういえばそうだな。……だが、実はこれにはふか〜い事情があるっ(←真〇寺博士風)。
 甲介: ほおおっ。納得できるかきかせてもらおうじゃないか。
 MONDO: うむ。実は今回のエピソードは、少年少女文庫にある他の作品のパロディ――ってのがコンセプトだったのだ。つまり、「母親と一緒にお料理」 「初めてのセーラー服」 「女の子同士でお風呂&ベッド」 「試着室でドッキリ」 ……だからお前にはずーっと沙織のままでいてもらったのだ。
 甲介: …………で、オチがあれかいっ。
 MONDO: ま、まあそう言うな。女美川ヤマトのキャラクターにはいささか無理があったような気がしたが、巨大ロ ボットが個人所有できるようになったら、ああゆう輩(やから)もでてくるんじゃないかなって……。
 甲介: まあ、確かにオレが沙織のままだったのも分からんでもないが…………でもやっぱり納得いかないぞ。
 MONDO: う〜ん。実はあのラストシーンのあとに、男に戻ったお前が “マーク2” を用意したヤマトにケンカ売られて返り討ちにする、という展開も考えていたんだが、クドくなりすぎるし、ヤマトのキャラにもいまいち合わないし……と考えてカットしたのだ。
 甲介: 一応 『正義のヒーロー』 だから、見ず知らずの人間にケンカ売るわけにもいかないか。ところで今後の展開はどうなる?
 MONDO: episode3は 「生理の話」 にしようと思ってるんだが……。
 甲介: ち、ちょっと待て。それはやらないって以前に書いたろ!?
 MONDO: 気が変わった……というより、ちょっとしたアイデアがひらめいたのだ。
 甲介: ううっ、また 『沙織』 になりっぱなしな気がする……。で、具体的にはどんな話だ?
 MONDO: ふっふっふっ、発勁の師匠にお前の秘密がパレる。
 甲介: ぶっ! …………ああ、やっぱセメント(真剣)な巨大ロボットものにでたかった……(涙)。
 MONDO: ……身ぃ削って笑いをとるっ、それが関西芸人やあああっ!!(←意味不明)
                                                   1999.5.1 
MONDO


〈NEXT EPISODE 〉
「…………え……っ!? ……………………元に…………甲介の姿に戻らないっ!!??」


「…………ま、まあ、なるようになるわよ沙織ちゃん。それよりもこっち来て、お赤飯食べなさい」
「だああああっ、こ……これでいいのかっ、いいのんかっ!?


「甲介…………いや沙織よ。今日からはこの儂(わし)を 『おじいさま』 と呼ぶのじゃっ。
 …………ふふふ……萌えるっ、萌えるわっ…………萌えおるわあああっ!!
「ああ……し、師匠が壊れてく…………」


「わったくしが女美川の母ざぁますっ! 女美川家の嫁になるならば、この私を倒してからにするざますっ!
 ……さあ、いくざますっ! 作業用生体重機試作一号、《デカプリオン》 くんっっ!!
 しゃぎゃあああああああああああっっ――!!

「……どこが作業用だっ、どこがっ」
次回、「生理中は美少女っ(仮)」 に、LADY ,GO !!

「…………『おじいさま』 と呼ばんかっ! ……この、ぶわか弟子がああああ〜っっ!!

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