[ RENTAL BODY Ver4.02 〜少女探偵物語〜 ]

 昼過ぎの気怠い陽射しが換気扇の隙間から射し込む。
 時間の経過を感じさせないゆっくりとしたプロペラの回転に、光と影のコントラストが部屋を照らす。
 扉はもちろん、窓一つ開けていないのに、部屋の中に潮の香りが漂うのは、近くに海があるため――否――それ以前に、ここは港の倉庫の一つだった。
 粗大ゴミ置き場から拾ってきたような薄汚れた机の上に足を乗せながら、新聞を読む男が一人。
 ざんばらに伸ばした髪に無精髭。一見して年齢不詳だが、前髪の下に見える瞳の色はまだ若い。無駄のない鍛え上げられた中肉中背の身体は20代半ばと言ったところか。
 そんな停滞した彼と、時を同じように享受しているのが机の上の丸まった三毛の子猫だけだった。
 だが、子猫の時間は、一瞬だけ男よりも早く針を進めた。
 不意に寝ていた子猫が顔を上げ、正面にある扉を見やった、次の瞬間――
 バンッ!
 勢いよく開け放たれた無骨な金属製の扉。そこから射し込む陽射しは、揺れ動く水面に乱反射して眩しかった。
 面倒臭げに読んでいた新聞を折り、扉を開けた主を見やる。ただし、陽光が逆光となり、男には主の影しか分からなかった。
 だが、それでも男には誰だか分かっていた。
「葉月――か」
「葉月じゃありません!」
 レイヤーの入ったセミロングの黒髪を揺らしながら、肩をいからせて歩いてくる――少女と言うには少し疑問を感じる21才の女子大生。ただ、白のブラウスにタイトスカート、目一杯大人の女を演じているが、その顔には幼さが残る深沢葉月だ。
「何しているんですか、所長さん!」
 所長と呼ばれた男――双海(ふたみ)葵。双海探偵事務所の唯一の正社員だ。
「何をしてるって、見たとおり、午後の気怠さを新聞読みながら退廃的に過ごしているだけだ」
「いい身分ですね」
「まぁな。こうしている間が一番心が落ち着くんだよ。あの中近東で戦ってきた日々が夢のようだ……」
 みりんを撫でながら遠い目をする葵。
 かつて、彼は凄腕の傭兵として世界中を駆け巡っていた。それが今、場末の倉庫街で開く売れない探偵事務所で、日がな一日何もない平穏を堪能しているのである。
「この平和な一日を守るためなら、俺は仕事なんかしなくてもいい気分だ」
「いい気分じゃありません! それで、駅前での待ち合わせを忘れたんですか!? 依頼者の所へ行くからって、昨日約束したじゃないですか!!」
「そう言えば、そんな約束をしたような、しなかったような……」
「したんです! だいたい、仕事無くて苦労しているから、私がわざわざちゃんとした依頼を持ってきて上げたのに――」
「そうは言っても、その依頼って古城のだろ。あいつの依頼って、無理難題過ぎて嫌いなんだよ」
 そうとう嫌なのか、露骨に顔を顰める葵。
「依頼を選り好みできると思っているんですか! だいたい、そんなことだから、迷子の子猫探しの依頼しか来ないんですよ!」
「別に俺は迷子の子猫探しでもいいんだが……なっ、みりん」
 机の上の子猫――みりんの喉を撫でた。前回の子猫探しの依頼で、依頼対象の猫と間違えて拾ってきた捨て猫だ。
 気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らすみりん。
 再び時が止まりかけそうになったのを、葉月が先んじて阻止した。
「所長!」
 バンッと机に手をつく葉月。そのあまりの勢いに、倉庫全体が揺れたような錯覚を感じた葵だった。
 葉月の放つ怒りのオーラに危険を感じたのか、みりんは机からさっと飛び降り、開けっ放しの扉から出ていってしまった。
「ぐずぐず言わないの! そんなコト言うなら、滞納している家賃を払ってからにして下さい! いくら大家が私の叔父さんでも、堪忍袋の緒が切れて追い出されることだってあり得るんですから!
 それに、これ以上滞納なんかしたりすると、私が親族会議にかけられるんですよ」
「何で、そこで親族会議が出てくるんだ?」
 胡散臭げな視線を向ける葵。
「葵さんのように最低限のモラルを守らないような所にアルバイトに行かせるのは駄目だって話が、親戚の間で出ているんです!」
「それなら、ウチでバイトするのを辞めればいいだろ。別に、こっちから頼んだわけでもないんだし」
 そう。探偵に憧れを持っていた深沢葉月は、叔父が貸している港の倉庫に一人の探偵が事務所を開くと言うことを聞き、強引に押し掛け助手を始めたのは、半年前のことだった。
「だいたい、大学生が何で探偵助手のバイトなんかやりたがるんだよ。若いんだから他にやるべきコトがあるだろうに!」
 葵の叫びに、葉月はそのつぶらな瞳を細めた。
「所長。おっしゃりたいお言葉はそれだけですか」
 努めて丁寧な口調。ただ、必要以上に力が入っているのか、声音が震えている。そして、手も――
 …………。
「分かった。分かりました。古城の依頼を受ければいいんだろ」
 身の危険を感じた葵は、渋々ながら受諾の言葉を洩らす。
「それは助かるよ」
「のわっ!?」
 いきなり目の前に現れた男に、葵は驚き退けぞった。
 薄い微笑みを口元に浮かべた20代半ばの優男。小綺麗なスーツは、葵には分からない一流ブランドの品だが、嫌味がない。完璧に着こなしていた。
 彼の名前は、古城秀之。
 葉月が持ってきた依頼の主であり、葵の苦手とする男であった。
「双海クンが遅いから、僕の方から来たんだ」
「そいつはどうも――」
 憮然と応える葵の素っ気なさだが、別に気にする様子でもなく、古城は依頼内容を切り出してきた。
「仕事内容は簡単に言って、ボディーガード。1日10万で一週間のガードを頼みたい」
「誰を守るんだ? お前を守るなら他を当たってくれ。死の商人の護衛なんてしたら、俺の命がやばいからな」
「死の商人とはつれない言葉だね……僕はただ、扱っている品物に銃やミサイルもあると言うだけなんだし……」
 表向きには普通の商社を営んでいる古城だが、裏では金さえ払えば非合法な物までをも扱っている。
「大丈夫。そっち関連じゃないから。ただの知り合いの女の子だよ」
「ふ〜ん」
 訝しげな視線を向けるが、古城は笑顔を崩すことなく平然としている。
「それで、誰から守るんだよ」
「それはストーカーみたいなものかな」
「あっ、珈琲でも煎れてきますね」
 そう言って、倉庫の奥に設けた簡易式のキッチンに向かう葉月。
「葉月さん。すまないけど、僕のは紅茶で頼むよ」
 その背に何気なく言葉をかけてから、話を進める古城。
「1週間無事に守り抜いた場合の成功報酬でプラス100万。悪い条件だとは思わないけど」
 何処か解せないものを感じる葵だが、キッチンの向こうから睨み付ける葉月の視線に、嫌々ながらも依頼を受けることを承諾した。
 依頼の承諾書にサインを入れる葵。そこに葉月が珈琲と紅茶をいれたカップを運んできた。
「本当にお前の仕事関連じゃないだろうな?」
 承諾書を古城に渡し、珈琲に口を付ける。
 葵が一口飲み干したのを待って、
「大丈夫だよ。ただのプライベートだから」
「それって、余計にやばいんじゃ――」
 急激に襲ってきた微睡みに、言葉を言い終えることなく葵は机の上にうつ伏せた。
 葉月のいれた珈琲に睡眠薬を混ぜられていたことに気付いたのは、意識が完全に闇に落ちる寸前だった。

§

――――――所長。――――葵所長。――葵さん」
 遠くで葵を呼ぶ声がする。
「葵さん。起きて下さい」
 ペシペシと軽く頬を叩かれた衝撃に、葵が気怠そうに重い瞼を開けると、そこには葉月の顔があった。
「あっ、やっと起きましたね」
「葉月か……」
 半分寝ぼけたまま、葵は上半身を起こした。鼻に消毒液の臭いを感じながら、見渡した部屋は探偵事務所と違うが、葵には見覚えがあった。
 古城の館の医務室だ。
 ぼやけた頭を振りながらベットから降りる葵。何故自分がそこにいるのか覚えがない。
 しばしぼぉーっとしていると、少しずつ思いだしていく事が――
「あっ! 葉月、お前、一服盛っただろ!」
 葉月を捕まえようとベットから飛び降りた葵。葉月に向かって伸ばしかけた手が止まる。何かがおかしい。
「あれ? お前、背が高くなったんじゃないか?」
 目の前に立つ葉月の身長が自分よりも若干高くなっている。ヒールの高い靴でも履いているのかとも考えたが、探偵助手を申し込まれた時に靴だけは動きやすいのにしろと言って以来、葉月はどんな服装をしても決まって靴はスニーカーを履いていた。
 まだ寝ぼけているのかなと思いながらいつもの癖で頭を掻く葵。
 ポリ、ポリ、ポリ…………カリ!?
 指先が何か堅い物ふれた。
 手に取ってみると、それが装飾品のカチューシャだというのが分かった。黒いカチューシャにアクセントとして赤いリボンが付いている。
「葉月。これ、お前のいた――」
 ――ずらかと続ける言葉が飲み込まれた。
 何気なく見下ろした身体。事務所でのTシャツに麻のジャケットのラフな姿とは違い、グレーのセーターを着ていた。しかも、身体にフィットしたセーターの胸には、何故か二つの膨らみが見える……
 カチューシャをひとまず頭に戻し、開いた両手でそれぞれの膨らみに触れてみる葵。
 むにぃ〜
「あっ――」
 口から洩れた吐息。
 柔らかい感触は、ベットの上で女の胸を揉んだ時と同じ感触がする。ただし、胸の内から感じる感触は、筋肉質の胸板を撫でた時とはまったく違う――始めて味わう恍惚感をともなった感触は、まさしく女の胸であった。
「なんじゃ、こりゃ!?」
 快感に任せて揉み扱きそうになるの、叫ぶことで止める葵。胸の下に目を見やれば、ロングスカートが見えた。
「コレはどういうコトなんだよ、葉月!」
 迫ってきた葵に、葉月は医務室の片隅にある姿見を指さした。
 鏡の前に立つ葵。
葵−少女ヴァージョン 75%縮小処理済み 「…………」
 そこに映し出された少女の姿に言葉がない。
 年は、葉月よりも若い女子高生ぐらい。長くストレートの黒髪、色白の肌、円らな瞳、線の細い――深窓の令嬢って言葉が似合いそうな可憐な少女だ。
 何気なくロングスカートの裾を摘み、持ち上げる――っと、鏡には白いショーツとガーターベルトが映った。
「あぁぁ! 無い。無い! 無い!! 俺の太くて立派なち――」
「女の子が下品な言葉を使うものじゃないですよ!」
 バッコン!
 葉月の一撃を後頭部に受け、大きく前へつんのめる葵。鏡の向こうで同じように少女が迫ってくることからして、やはり鏡の少女が自分なのを実感した。
「おっ、やっと気が付いたようだね」
 笑顔と共に入ってきたのは古城だった。その背後には一人の老執事が控えている。
「おい、古城! 何なんだよ、この姿は!!」
 詰め寄る葵。
「まぁ、まぁ、まぁ。そこらへんの話は食事でもしながらでどうです?」

 目の前には豪勢な料理が並べられているが、そのどれにも手を付けようともせず、
「――で、なんで俺がこんな姿をしているんだ?」
 憮然とテーブルに頬杖を突きながら、葵は対面に腰掛けている古城に訊ねた。
「それはやっぱり、狙っている相手の目を誤魔化すためのカムフラージュだよ」
「誤魔化すため?」
 訝りながらも少し考え、自分の中で結論を導き出した。
「つまり、狙っている相手に俺がガードをしているということを知られたくないわけだ」
「まぁ、そんなところかな」
 ワインを嗜みながら頷く古城。
「それで、俺がガードする女の子とやらは、何処にいるんだ?」
「もう居ますよ。僕の目の前に」
 古城の言葉に、キョトンとする葵。古城の目の前に居るのは自分と葉月の二人しかいない。首を傾げながら、葵は隣で一人黙々と食事を取っている相棒を指さした。
「まさか、女の子って葉月なのか? 確かにこいつは童顔だけど……女の子と言うにはとうが立ちすぎ――」
 葉月の鋭い一瞥に、葵はそれ以上は口にできなかった。
「いや、違うよ」
 古城の否定に、指していた指を泳がせ、やがて自分を指さす。そんな葵の行動に対し、肯定を示すように古城は頷いた。
「そう。キミだよ、双海クン」
「へっ!?」
 まったく話の全貌が掴めず、唖然と間の抜けた顔をする葵。
「相手の目を誤魔化すために少女の姿になったことで狙われるであろう、双海クン自身の護衛を頼んだんだよ」
「それって、文法的におかしくないか? 少女の姿になったことで狙われるって、お前がこんな姿にさせなければ狙われる必要は無かったと言うことなんだろ……」
 ふと、何か浮かんだのか、じとーっとした粘り気のある視線を向ける葵。
「古城、お前、何を企んでいるんだ?」
「企むだなんて心外だな」
 乾いた笑い声を上げて誤魔化そうとする古城だが、葵には通じていない。
 古城は、コッホンっと咳払いを一つし、
「実は、とある女性に見初められてしまってね。それも、ストーカー的なまで執拗に僕に迫ってくるような一途な女性なんだよ」
「どうせ、恋人なんていないんだろ。その女性と付き合ったらどうだ?」
「止めてくれよ。僕はまだ結婚する気はないんだから」
 軽く肩を竦めてみせる古城。心底困っているのか、浮かべる笑顔に悲愴感が差し込んでいた。
「その事をそいつに言ったらどうだ?」
「生憎聞く耳持ってくれなくてさ……」
「それなら、好きな人でもいるとか言って誤魔化したらどうなんだ?」
「誤魔化したさ。フィアンセがいるって。そしたら、勝負させろと言ってきたんだよ」
「勝負?」
「明日からの一週間、そのフィアンセに戦いを申し込むって。それで買った方が僕を取るんだとさ」
「そんなの、飲まなければいいじゃないか」
「飲まざるおえないんだよ。勝負させなければ、僕を殺して自分も死ぬって言ってきているんだから……僕はまだ死にたくないんだよ」
「それで、俺をそのフィアンセに仕立て上げるために、レンタルボディに魂を移したわけか。
 けど、それなら、こんな面倒臭いことしなくても、自慢のメイド達の誰かにフィアンセ役でもやらせればいいだろ」
 死の商人と陰口をたたかれる古城の周りはそこそこ危険があり、何かあった場合を考え、古城の館に働く者達全てが何らかの格闘技を身に付けていた。そして、メイド達と言えば、軍隊の一個小隊に匹敵する戦いのプロフェッショナルの集まりでさえある。
 もっとも、そこまでの凄腕に鍛え上げたのは、以前古城に依頼された葵だったりする。
「無茶言わないでくれよ。ツインテール相手に、僕の可愛いメイド達を戦わせるわけにはいかないだろ」
 古城の叫びに、空気が一瞬停滞した。
 葉月の使うフォークとナイフの音だけが、虚しく響く。
「相手は、あのツインテールなのか!?」
 驚きの声を上げる葵。
「おい、おい。洒落になんないぜ……」
 顔半分を手で覆い、低く唸る葵。そんな上司の姿に、何も解っていない葉月は小首を傾げて、気楽な口調で訊ねた。
「ねぇ、所長さん。そのツインテールって何なんです?」
「殺し屋だ」
「えっ!?」
 あまりにも簡潔な答えに、葉月の表情が固まった。そんな彼女に追い打ちをかけるように、葵は忌々しげに続ける。
「ありとあらゆる銃火器を操り、格闘術にも長ける凄腕の殺し屋だ。最近は活動を控えているようだが、その手の業界じゃ三本の指に入るな」
「三本って……そんなの相手にして、勝てるんですか?」
「さぁな。ハッキリ言えるのは、ツインテールからのボディガードを依頼されても、守り抜く自信は無いって断言できるぐらいだ」
「双海クンの持てるスキルの全てを出し切っても、自分の身を守るのが限界ってところじゃないかな」
「まぁ、確かに自分の身ぐらいなら守れるが……それも本来の身体の話で、この身体では――」
 自虐的に肩を竦める。
 女性の身体で生き抜く自信はない。
「その点は大丈夫だよ」
 古城の悲愴感漂う顔が急に明るくなった。
「その身体は今度ウチの主力商品になる予定のレンタルボディだからね」
「……戦争の兵士用か」
 忌々しげに洩らした言葉は小声で誰の耳にも届いていなかった。
「外見は普通の少女だけど、持久力、耐久力、瞬発力、殺傷力、そのどれを取っても超一流のアスリートや格闘家相手にしても一歩もひけをとらない身体をしてるよ。さらに、格闘術を始め戦闘術、生存術――ツインテールと相対して、必要と思われる全ての知識をインストールしておいたから、大丈夫だと思うよ」
 商売人の性か、商品を語る時は異様に熱がこもる古城。
 どう見ても力があるとは思えない自分の腕を見つめる葵。何気ない手を付けずに置かれたままのフォークを手に取り――
 ブチッ!
 左右に引っ張ってみたら、フォークは柄の真ん中の部分でぶち切れた。
「…………」
 自分のしたコトとはいえ、唖然としながらも千切れたスプーンをテーブルに置き、インストールされていると言う知識を思い出してみる。
 頭に浮かぶ多種多様な知識――
 確かにこれなら本来の自分の身体と比べても――慣れない少女と言うことを差し引いても――遜色がない。
「ここまで凄い身体なら、別に俺じゃなくても、誰でもいいじゃないか?」
 大きく息を吐きながら、古城は首を横に振った。
「レンタルボディの欠点という奴でね、知識を植え付けることができても、経験と応用力はその身体に宿る魂に頼るしかないんだよ。生憎、明日までに手配できる人材の中で、ツインテールを互角の経験を積んだ人間はキミしか思い付かなかったんだ」
「ツインテールが相手なのは分かったが、どうしてお前が惚れられるんだよ。それに、フィアンセを仕立てるのにこの身体、若すぎないか?」
 どう見積もっても女子高生だ。
「一目惚れには理論はないからね」
 そう前置きをしてから、古城は語る。
「実は彼女――ツインテールは元々、某国の軍隊と欧州の兵器会社が共同で進めていた、ヒューマンウェポンの試作体なんだよ。
 クローン培養した身体に、可能な限りの戦術スキルを覚え込ませ――ここら辺は今の双海クンの身体と同じ理論で作っているんだけど――特殊な霊的プログラムを施した被験者の魂を乗り移させるコトによって、上官の命令に絶対服従する倫理観を持たない兵士を作り上げることができるんだ。
 そうして生まれたツインテールは、その国のお抱えの暗殺者に仕立て上げられたんだ。
 そんな非合法なことをしている国は気にくわなかったからね。相対する組織にウチから兵器を回して潰したんだけど……」
 死の商人をやっていながらも、弱者には手を出さないことを信条としている古城は、レジスタンスとかに兵器を売っている。それも、ほとんどが原価ぎりぎりの捨て値だ。
 そこら辺が気に入っているから、葵は古城と付き合いを持っていた。
「それで、ツインテールをも保護することができてね。心を戒めていた霊的プログラムを解除して自由にしてやったんだけど……擦り込む現象とでもいったところかな。心を持ったその瞬間、始めて見た僕に恋心を抱いてしまったんだ。
 それからだよ、ことある毎に僕にまとわりつき始めたのは。
 レンタルボディの年齢設定が若いのは、フィアンセがいると言った時に何故結婚していないのかと問われ、まだ女子高生だからと口走ってしまったんだ。
 それで、ツインテールにキミの正体がばれるとコトだから、僕と執事と、キミ達二人以外には正体を明かさないでくれよ。
 まぁ、そう言うことだから、今日から一週間、双海クンにはこちらで用意したマンションで暮らして貰うよ。あっ、それから。リアリティを出すために、明日からの一週間は女子高にも通って貰うから」
「ちょっと待て! 女子高にまで通うのか?」
「完璧に演じて貰わないとね。一応、戸籍とかはこちらで用意しておいたから」
 差し出されたIDカードには、名前はそのまま双海葵だが、中身の内容が全て本来の履歴とは違う、架空の女子高生のものであった。
「おい、おい、マジかよ。俺に女子高生を演じろ――」
「駄目よ、葵ちゃん。女の子が俺なんて言ったりしたら」
 そう葵の言葉遣いを窘めたのは、一人先に食事を終えた葉月だった。ナプキンで口元を拭きながら、横目で葵を見据えている。
「無理言うなよ! いきなり女の子を演じろと言われて、ハイそうですかと、できるか!」
「やるんです! これも家賃を支払うためなんですから。そのために私も一緒にいるんです」
 葉月は、自分がここにいるのは、葵の助手としての面以外にも、葵にボロを出させないためのフォローでもあることを話した。
「一応、葉月さんにもキミと行動して貰うことになっているから。彼女にキミを一人前の少女として生活できるように教育してもらう事になっている」
「教育ってな……そんな面倒臭いことするなら、始めから性質設定で大人しい女の子でも設定しておけばいいじゃないか」
「性質設定は、要らぬ負担を精神にかけるからね。もしもの場合、それが原因でツインテールに遅れをとらないとも考えられないだろ」
 古城の正論に、葵は何も反論できない。
「あっ、依頼を受けないなんてつれないこと言わないでくれよ。キミの身体を僕が預かっていることをお忘れなく」
「…………」
 手持ちぶさたにサラダを突っつくナイフで突っつきながら、これからの一週間を考えて、暗澹とした気分になった葵には、さらに続く古城の説明は既に届いてはいなかった。
「ツインテールとの勝負での勝敗は、どちらかが死ぬか、降参するまで。ツインテールに付いてのわかる限りの情報は、キミの頭の方に入れておいたから――――」

§

 見上げた天井はいつもと違う――
 半分寝ぼけ眼の前にかざした腕は、白く細い。浅黒く灼けた筋肉質の腕はそこにはなかった。
 ぼぉ〜。
 寝起きの気怠さを享受するように、目が覚めた今もしばらく横でいる葵。
 ガチャ――
 扉の開く音に目だけを向ければ、トレーナーにエプロン姿の葉月が立っていた。手にはお玉を持っているあたり、朝食でも作っていたのだろう。
 古城が用意したマンションに、彼女も葵をフォローするために一緒に住み込んでいた。
「おはようございます、所長さん――じゃなかった、葵ちゃん。朝食用意しましたから――」
 もそもそと起きあがり、ベットの端に腰掛ける葵。身体の設定が低血圧なのか、それとも魂と身体が上手く同調していないのか、まだ完全に目が覚めていない。
「ちょっと、葵ちゃん。女の子が股を大開きで座ったりしては駄目ですよ」
 大きく股を開いていたのを葉月に叱られ、仕方なく膝を揃えて腰掛け直す。
 昨日、依頼を承諾した時から終始こんな感じで葉月の叱咤を受け続けた葵。心の内に鬱積していくストレスに、疑心暗鬼になっていく。
(こいつ、絶対に俺を困らす為にこの依頼を受けやがったな――)
 そんなことを考えながら、葵は朝食を取るべくして食堂に向かう。

 朝食を終えた葵は、そのままテレビでニュースを見ようとしたのを、葉月に高校へ行く準備をしてからと促されて、仕方なく洗面所に向かった。
 冷たい水で一気に顔を洗うと、次第に意識がハッキリしていく。
 鏡に映し出されたタオルで水気を拭った顔は、まさに少女の顔。肌理の細かい肌は、化粧の必要が全くない。顔を洗っただけで、十分人前に立つことができる。
 そこは、身だしなみに気を使わないずぼらな葵には有り難かった。ここで化粧まで強制されたらものなら、気分はどん底にまで滅入る。
 顔を洗い終えて洗面所から出てくる葵。黒くて長いストレートの髪は、寝ぐせが付いておらず、ブラシを一回通すだけで簡単に整えられた。
「葵ちゃん。制服はクローゼットの中に入っているって」
 用意された葵の自室は、まるで本当に女子高生が生活していたかのように、年頃の少女の部屋が再現されている。
 クローゼットからこれから通う予定の高校の制服を取り出し、ベットの上に置く葵。ちなみに、葵が通う高校は、ミッション系の女子高――世に言うお嬢様学校だった。
 着ていたパジャマを脱ぎ捨て、どこか修道女の服装を模した様な制服の袖に手を通す葵。
「ちょっと、葵ちゃん」
 開けっ放しだった扉から、慌てて声をかける葉月がいた。彼女はキッチンで食べ終わった食器を洗っている。
「ブラジャー付けて。ブラジャー」
「あっ……」
 下を見ると、白く形のいい乳房がそこにあった。
 ブラジャーを取り出そうと、クローゼットを覗く葵。そこには清純そうなパステル色の下着が数組用意されていた。
 それらの中から、白くて一番ノーマルの奴に手を伸ばす葵。その際、指先に堅いモノが当たった。
「これって……」
 かき分けた下着の下にあった物は――

 制服に着替え終わった葵は、鏡の前で軽くポーズを取ってみる。
「…………」
 それが妙に綺麗すぎて、逆に嫌になってくる。
 たおやめなその姿。その気になれば、熊をも殺す力が秘められているとは誰も想像がつかないだろう。
「葵ちゃん。そろそろ学校に行きましょ」
 車のカギを持った葉月が声をかけてきた。
 その姿は、グレーのスーツを着込んでいた。
「お前も、学校に行くのか?」
「お前じゃなくてあなたよ。あなたも学校に行くのですか――よ」
 言葉遣いを訂正する葉月。
 葵自身は、別にざっくばらんに話す女子高生でもいいと思うのだが、古城から指定された少女の設定では、古武術を身に付けている良家のお嬢様――大和撫子と言ったものらしく、言葉遣いや物腰もそこそこ丁寧じゃないとツインテールに疑われる可能性があってまずいらしい。
「古城さんに所長のフォローを頼まれていますからね。一応、あの人の手引きで臨時講師って話が学校に付いてるんですって」
「…………(俺のフォローって言うよりも、見張りだよな、コレって)」
 ポリポリポリと面倒臭げに頭を掻き、
「俺、電車で行くよ」
 廻れ右をして葉月の前から立ち去ろうとする葵。その肩を素早く葉月が掴んだ。
「駄目よ、葵ちゃん。お嬢様が満員電車なんて乗ったりしたら。それに、その姿で乗ったら、絶対に痴漢に遭うわよ」

 渋々ながらも葉月の運転する車に乗り込む葵。自分が運転してもいいのだが、今の少女の姿ではそれもできない。レンタルボディ利用者は、別に免許さえ持ってさえいれば借り物の身体でも運転はできるのだが、古城商会の裏商品である今の葵の身体には、レンタルボディであることを証明するバーコードは何処にも記されていない。
 さらに、DNAチェックを受けても、古城が用意して置いた『双海葵』という女子高生のデータが検索されるに過ぎない。
「そう言えば、古城さんって、よくその身体の戸籍を用意できましたね」
 車を走らせながら訊ねる葉月。真っ直ぐな道を走っている割には、何故か横揺れが激しい。
「ツテさえあれば、戸籍は買うことも売ることもできるんだ――できるんです」
 横目で睨む葉月の視線に気付き、語尾を修正する葵。心の中で暗澹とした溜息をついた。
「それに、偽造なんかも結構簡単にしてくれ――ますからね。古城――さんは、その手の業界にお詳しいですから」
 古城にさん付けをすることに抵抗を感じるが、今の言葉遣いだと、付けないと何処かおかしい。
「それより、お前――葉月さんは、よく平気でいられ――ますね」
「何がです?」
「俺――じゃなかった、わたしが殺し屋と対決すること」
 少女の言葉遣いに慣れていない葵は、自然と言葉が簡潔になる。
「ああ、それですか。平気ってわけじゃないですけど、別に気にしてもいませんからね」
「何故?」
「だって、あたしは所長さんを信じていますから。あたしの所長さんが、いくら凄腕とは言っても殺し屋如きに負けるはず、無いじゃないですか」
 あっけらかんと応える葉月。その横顔には自分の信じた道を行くことに微塵の迷いもない。相当な度胸を持っているとでも言ったところか……
 もっとも、それくらいじゃないと、傭兵あがりの探偵や死の商人と対等に付き合うことはできない。
(ツインテールが噂通り無駄な殺しをしないなら、こいつにまで危害がいくとは思えないが……最悪の場合は俺が守り抜くしかないか)
 そっとスカート越しに内ももに触れる葵。そこには、クローゼットの中で見つけた、古城が用意しておいてくれた短銃が装備されていた。

§

 ――ン……
 始まりのチャイムの余韻を遠くに聞きながら、静まり返った廊下に響く三人の靴音。
「そう言えば、お二人はご一緒のマンションにお暮らしなんですよね」
 先を歩く老婦人が声をかけてきた。
「ええ。従姉妹なんですよ。教頭先生」
 そう応えたのは葉月だった。葵は、ボロを出さないように口数少なくしずしずと二人についていく。
「あら。そうなんですか。従姉妹のお姉さんが担任なら、双海さんも安心よね」
「はい」
 短く返事を返す葵。本人はボロを出さないようにしているだけなのだが、教頭には転校で緊張していると受け取れた。
「ここですよ、お二人の教室は」
 教頭が案内してきたのは2年生のとある教室だった。先生が来ていないため、教室の中からは若干のざわめきが聞こえてくる。
 葉月は、事故で入院しているこの教室の担任の代理として雇われた講師であった。
 葵には廊下で待つように告げ、教頭は先に紹介すべき臨時講師の葉月を連れて教室へと入っていった。
 一瞬、ざわめきが大きくなったかと思うとすぐに止む。そして、少し間を置いて、またざわめきが聞こえだした。
 生徒達に質問責めでも食らっているところだろう。次は己の身かと思うと、陰鬱になる葵だった。
 それも落ち着いた頃、教頭が教室から出てきた。そして、自分と入れ代わるように教室に入るように葵に促す。
 開いた扉の向こうから漂う、事務所である倉庫での塩の臭いとも、戦い生き抜いてきた硝煙と血の臭いとも違う、甘酸っぱい匂いを鼻に感じながら一歩足を踏み入れた――瞬間、
 パチ、パチ、パチ――
 大音響の拍手に、思わず身が退ける葵。
 ザッと見渡した教室は、少数編成なのか20人ほどの生徒数しかない。
 生徒達の視線を一身に浴びながら、葉月の待つ壇上に向かう葵。男子禁制の秘密の花園。これが普通の男としてやってきたのなら、そこそこ葵も嬉しかったのだが……
 笑わなくちゃと思うが、どうも頬がひきつって笑顔がぎこちない。
 葉月は、黒板に葵の名前を書くと、葵のことを簡単に紹介した。
「えっと、彼女は双海葵さん。一応、先生の従姉妹でもあるからよろしくして上げてね♪ 先日、隣町にあたしと一緒に引っ越してきたの」
 自分と違って見事に溶け込んでいる葉月に、葵は横目を向けた。
「ねぇねぇ、双海さんって、前は何処の学校にいたの?」
「恋人っているの?」
「好きな音楽はなに?」
「綺麗な肌ね。何か、特別のケアしているの?」
「趣味は何ですの?」
「前の学校ではクラブには入っていたの?」
「得意な教科は何?」
   ・
   ・
   ・
「…………etc」
 女三人寄れば姦しい。それが20人もいれば、葵の少女に対応できるキャパシティを越えていた。
 怒濤の質問責めに、
 ――ッ!――
 心の中で何かが切れた。
「えぇいっ、騒ぎ立てるんじゃない!! わたしは聖徳太子じゃないんだから、そんなにギャアギャア一気に質問するんじゃないよ!!! 人様に質問する時は順を追って一人ずつ質問するもんだって、小学生の時に習わなかったのかい!!!!」
 捲し立てるように啖呵を切る葵。辛うじて本来の口調に戻らなかったのは、僅かな理性が残っていたのかも知れない。
 ――――。
 水を打ったような静けさという言葉があるが、今の教室がまさにその通りだった。
「あっ……」
 呟きと共に見渡した教室。そこにいる全ての生徒があんぐりと口を開けて間の抜けた顔をしている。
 隣の葉月は、あちゃ〜っと顰めっ面に手をあてていた。彼女は、葵の視線に気付きはしたが、フォロー不能の状態に、首を横に振って自分でどうにかしてと伝えてきた。
 葉月からの援護がない今、葵がまずしたことは――
 ニコッ☆
 涼しげな笑顔を浮かべ、一拍置いてから、
「――っと、殿方に思われますよ。新人のわたしが言うのも何ですが、もう少しお静かにした方が宜しいのでは?
 以上を持ちまして、転入の挨拶とさせて貰います」
 深々と頭を下げる葵。そのまま唖然としている生徒達の間を、空いている席に向かって歩いていく。
 あまりにも颯爽とした姿に、生徒達は狐につままれた表情をしている。
 一番奥の席に斜に腰掛けて、ふぅーっと大きく息を吐く葵。
(おい、おい。本当にこんな所で一週間暮らすのか……俺は)
 机の上に頬杖をつきながら、机の表面を見つめる。
 ふと、隣からの視線を感じて目を向けると、隣のブロンドヘアーの娘が自分を凝視していた。
「あっ」
 慌てて頬杖をつくのを止めて、淑やかに座り直す。しかし、頬にはまだ視線を感じる。
 顔を向けると、隣の娘はブルーの瞳の視線を和らげて、クスッと微笑んだ。
「あたし、プラム。よろしくね、葵ちゃん」
「あっ、よろしくお願いします……」
「休憩時間になったら、学園を案内してあげるよ」
「……ありがとう」
 そう応えておくのが一番無難だった。

§

 ダイニングのテーブルの上に顎を載せてばてている葵。着替えもせずにその姿は制服のままだ。
 カチャ――
「ただいま」
 教師という立場上、葵よりも遅く帰宅してきた葉月。行きは葉月の車で学校に行った葵だが、帰りは古城が手配してくれた迎えのリムジンで帰ってきた。
「かなりのお疲れみたいですね、葵ちゃん」
「ふみぃ〜」
 何か応えようと口を開くが、出るのは意味不明の擬音だけだった。
 肉体的な疲労はないのだが、傭兵として紛争地域を回り、探偵として街の裏に生きる葵には、キャピキャピとした若い娘に囲まれて生活することは精神的にかなりの負担を強いる。
 まぁ、不幸中の幸いなのが、まともに話しかけてきたのは隣の席のプラムぐらいだけだったというところか。他の者達は、興味はあるが何処か近寄りがたい雰囲気を無意識にかもし出す――ツインテールの襲撃を無意識レベルで警戒していた――葵に近寄る勇気が無く、遠目で見ているだけであったのだ。
 それはそれで、動物園の珍獣になった気分で気恥ずかしくもあったが……

§

 2日目――
 早朝の学校。下駄箱の扉を開けると、そこにはこぼれ落ちそうになるぐらいのラブレターで一杯だった。
 それらを両腕に抱えて途方に暮れる葵。
「おっはよう、葵ちゃん♪」
「プラム――さん」
 あっかるい声と共に現れたプラム。葵の腕の中のラブレターを目敏く見つけた。
「あ〜ぁ、もてるんだ」
「こんなの貰っても困るんだ――ですけどね」
 愁いげなため息をつき、葵はラブレターを鞄に入れた。ゴミ箱に捨てようかとも考えたが、さすがに学校でそれをやるには気が引けた。
「無理もないよ。あれだけの啖呵切っちゃったんだから。おとなしい娘なんて、もう葵ちゃんにメロメロよ。今日明日にでもファンクラブでもできるんじゃない?」
「う゛っ!?」
 プラムの指摘に露骨に嫌な顔をする葵。そして、プラムの言葉の示すとおり、教室へと向かう葵は、女子高生達の熱い視線を一身に浴びていた。
 ただ、プラムの言葉に間違いがあるとすれば、ファンクラブは既に転校初日にできあがっていたコトぐらいか……

 3日目――
 始まりの歯車は唐突に動き出した。

 多くの視線を身体の至る所に感じながら、他のクラスメートに混じって放課後の広い講堂をモップで拭いていた葵。
 不意に、今までの熱のこもった憧れの視線とは異なる鋭い視線に、葵の背筋にゾクッとした冷たさが駆け抜けた。
 息もつけないほどの『見られている』という殺意のプレッシャーを肌に感じながらも、葵はなに食わぬ顔でモップを動かす。
 普通の感覚を保有している人間なら、立っていることすら辛い殺気に対して、葵は何もしないことで対応していた。心を空っぽにすることにより、自分に向けられた殺意をすり抜けさせる。相手に自分の底を計らせないための術だ。
 数刻にも感じられる1分足らずの時、不意にかけられていた重圧が消えた。
 顔見せが終わったとでも言ったところか。
 完璧に気配が消えた後も10分ほどは黙々と掃除をし、それから思いだしたように葵はホッと一息付いた。
 そんな駆け引きがあったことを知らない生徒達には、ひたむきに掃除をする葵お姉さまと見えていた。

 4日目――
 昨日と同じプレッシャーを授業を始め、終始感じていた。
「どうかしたの?」
 殺気の主を探ろうと目配せを送っている葵の顔を、プラムが覗き込んできた。
 始めは、唯一自分に話しかけてくるこのプラムを疑ったが、殺気は彼女とは別の方向から放たれていた。
 しかし、殺気の主は何も仕掛けてはこなかった。

 そして、日を追う毎に増えていくラブレターの中に、熱烈な想いが込められた一通の手紙が混じっていた。
『秀之様を惑わす女――貴女を殺す』

 5日目――
 回り廻った歯車は、次の大きな歯車を動かす。

 二日前と同じように講堂を掃除していた葵は、不意に全脚力を持って横に跳んだ。
 別に殺気を感じたわけでもない。言うなれば、今までとは違う空気の変化に、戦場で身に付けた生き抜く想いが身体を突き動かしたのだ。
 今まで葵に立っていた木造の床が小さく弾ける。
(ツインテール!?)
 自分が狙われていることを認識した途端、まるで狙い澄ましたように首筋に鋭い殺気を感じた。
 タッ!
 タッ! タッ!! タッ!!! タッ――
 講堂を駆け抜ける葵。狙っている先が分からない以上、同じ所に立っているわけにもいかない。
 パンッ!
 パンッ! パンッ!! パンッ!!! パンッ――
 葵からワンテンポ遅れてなびくスカートの裾に次々を穴を開けていく銃弾。
 弾を避けながら周りを見渡すと、
 ツインテールの仕業か、偶然か、掃除を一緒にしているクラスメートも、取り巻きのファンクラブの娘達の姿も何処にもない。
 広い講堂には葵独りしかいなかった。
 心の中で一息付く葵。最悪、自分がやられるだけで、誰も巻き込むことは無いわけだ。
 それでも、実際に息を付く暇はない。
 四方から放たれる銃弾を反射的に避ける。
 ――っと、
 高速で移動する葵は、講堂の柱やカーテン、二階席の影に設置されている銃を見つけた。そして、その上に備え付けられている小さな装置には見覚えがあった。全自動のレーザー照準機だ。
 銃口の位置さえ分かれば避けるのも簡単。
 タッ!
 タッタン!
 タッ!
 ステップ軽やかに弾を避ける葵。フワリと舞うスカートの下から内ももに装備していた銃を抜き、的確に装置を破壊していく。
 後1つ――
 クルリとターンをしたのとほぼ同時に、講堂の西にある扉の一つが開け放たれた。
「あれ!? みんなもう帰ったの?」
 頓狂な声と共に、扉の向こうから差し込む斜陽に、葵の視界が紅く染め上がった。
 ――!?――
 限界までに目の能力――視力及び動体視力――を上げていた葵は、西日に目が眩み、動きが一瞬鈍った。
 パンッ!
「クッ!」
 一瞬、引き金を引くのが遅れたおかげで、一発の弾丸が葵の右肩を貫いた。
「えっ!? 何?」
 扉を開けたのは、ゴミ箱を持ったプラムだった。
 夕日が照らす緋色の講堂で、一際紅く滴る血――
 口径の小さい威力の低い弾だったから肩をもっていかれることはなかったが、右腕に全然力が入らない。
 低下していく握力。グリップを握り締める力すらなく、銃が床に落ちた。
 肩を押さえてうずくまる葵。
「葵ちゃん!」
 空になったゴミ箱を投げ捨て、駆け寄るプラム。
「プラム――さん。どうして、ここに?」
 傷口を押さえても溢れ流れる血が制服を紅く染めていく。
「講堂のゴミを捨てに行ってきた帰りだよ。それよりもどうしたのよ、そのケガは何なの? それに、銃声が聞こえたけど」
 講堂は締め切っていれば完全防音となっており、その事を知っていたのか、ツインテールの仕掛けていた銃にはサイレンサーが取り付けられていなかった。
 開け放たれた扉から、プラムは最後の銃声を聞いていた。
「それ、銃だよね」
 プラムの見つめるのは床に落とした葵の銃だった。
 慌てて左手で拾い上げようとした葵だが、
 ゾクッ――
 今まで以上に鋭い殺気に拾うのを止めて急ぎ立ち上がると、プラムに背を向けて身構える――
 刹那!
 葵は反射的に身体をスライドさせた。
 フワリと遅れて舞う黒髪に、妖しく煌めくナイフの刃が突き刺さる。
 数本の髪が切られただけで、間一髪でかわした
「あっは☆ あたしのナイフを避けるなんて凄いんだね、葵ちゃんは」
 伸ばした腕を戻しながら、小悪魔的微笑を浮かべるプラム。
「でも、あれはどうかな?」
「あれ?」
 振り返ったそこには、白煙を発しながら迫ってくるロケット弾が!
「わぁっ!?」
 大きく首を振って避ける葵。ただ、螺旋の回転が見えるほど間近に迫っていたロケット弾は、その小さな尾翼の一枚が葵の頬を掠めていった。
 傷の深さは浅いが、頬には一筋の紅い線が走る。そして弾の方は講堂の奥にある柱の一本に辺り爆発した。
 背後で巻き上がる炎の紅さに彩られた髪を爆風に乱しながら、そっと頬に触れた指先に粘り気のある血が付く。
「あれまで避けるなんて、さすがは秀之様が選ばれたフィアンセだね」
 声の主はロケット弾が飛んできた方角――プラムが入ってきた扉の方からだ。
 夕日を逆光に浮かび上がるロケットランチャーを構えたシルエット。高校の制服を着込んだブロンドの髪をしたその顔は――
「プラム?」
「あたしはチェリーだよ」
 プラムと同じ顔と声を持つ少女――チェリー。
 ピシィ――
「双子!?」
「あれ? 葵ちゃんってば、知らなかったんだ。チェリーちゃんはあたし達のお隣のクラスに通っているんだよ」
 …………。
 ツインテールが二人いるなんて聞いてはいない。否、それ以前にツインテールに関する情報が何も教えてもらっていないことを思いだした。
 だが逆に、ツインテールの事を何も知らないと考えた事から、葵の頭にはツインテールに関する知識が次々と思い出されていく。
 双子であることから、容姿に年齢、それぞれの名前――今は古城の取りなしで女子高生として生活していることまで……
(そう言えば、俺の頭にツインテールに関する情報を入れておいたとか……)
 曖昧な記憶の中、古城がそんなようなことを言っていた気がする葵。実際に頭の中に知識として情報があるのだから、言っていたのは事実であるのだが……
 それを忘れていては何もならない。
 レンタルボディの欠点の一つに、直接植え付けられた知識は思い出そうと意識しない限り、魂の方には伝わらないと言うモノがあった。
 もう少し早く思いだしていれば、違った対応もできたことだろが、今はもうどうにもならない。
 双子の殺し屋と睨み合う葵。明るく元気で愛らしい外見と違い、その青い瞳の奥には、対峙する生きとし生けるモノ全てに等しく死を与える死神の影があった。
 不意に、その影に飲み込まれまいと負けじと睨み返していた葵の瞳が緩んだ。
「負けだ」
「「えっ!?」」
 葵が呟いた負けの言葉に、キョトンと聞き返す双子。突然の事に、頭がついていっていないようだ。
 メキィ――
「負けって?」
「文字通り、俺の負け。古城が欲しければ、お前らにやるよ」
 軽く肩を竦める。その際、撃たれた肩に痛みが走る。
「言われてみれば、俺の依頼は自分の身を一週間守り抜くことで、ツインテールと戦う事じゃないからな」
 激痛に涙を浮かべながら、小声で独りごちる葵。このまま帰ったら古城がうるさいだろうが、勝手にこんな身体にしたんだ。いい気味だと思えば、文句など気にもならなかった。
「本当にいいの?」
「ああ」
「本当に、本当?」
「くどいな。いいって言ってるんだから、言いに決まっているだろ。利き腕をやられたからな。一人だけなら逃げおおせる自信もあったが、二人相手じゃ生き抜く自信もないんだよ。まして、ロケットランチャーまで持ち出されて、どうしろってんだよ」
 叫び声が傷に響き、さらなる痛みが走る。
 右肩を押さえてうずくまる葵。リボンを解き、口と左手を使って肩の付け根を縛り上げて止血する。
 パラッ――
「?」
 肩に落ちてきた小さなコンクリートの破片。
 何気なしに見上げたそこには、
「!?」
 蜘蛛の巣然りの無数のヒビが入っていた。どうやら、チェリーの放ったロケット弾が壊した柱から走ってきたようだ。
 僅かな衝撃でも加えようものなら、一斉に崩れてきそうだ。
「――クッ」
 肩の痛みに耐えながら、講堂から出ようと忍び足で歩き出そうとするが、顔を覗き込む二人に邪魔をされた。
 何事かと訊ねようとする葵よりも先に、プラムがぽつりと洩らした。
「つまんない」
「へっ!?」
「せっかく久しぶりに本気で遊べれると思ったのにぃ! もっと遊びたい!!」
 ヒステリック気味に叫ぶチェリー。その瞳は何処か行っちゃっていた。
 パシィ――
 チェリーの叫びに呼応するように、ひびが広まる。
「バカ! 叫ぶな!! 講堂が崩れそうなんだぞ」
 皮肉にも、それが引き金となり、講堂の天井が崩れだした。
「キャァッ!」
「キャァ――――」
 突然の出来事にさしものツインテールも反応が遅れた。
 そんな二人に対し、一人だけ反応できた葵は――
 痛む身体にむち打って、開いた扉と自分の対角線上にいたチェリーを蹴り飛ばした。
 それから、残るプラムを――

 うっすらと瞼を開けたプラムの青い瞳に映し出されたのは、崩れてきた瓦礫の固まりから自分を守る葵の姿だった。
「……あおい……ちゃん!?」
「気が付いたなら、どいてくれ。結構、重いんだから」
 瓦礫を左手一本で支える葵。そんな葵を呆然と見上げるプラム。
「どうして、あたしを助けてくれたの?」
「知るか!」
 一言そう叫んでみた。正直、自分の命を危険にさらしてまで、自分を殺そうとしていたヤツまで助けたのかは分からない。
 ただ、講堂が崩壊したあの時、自分一人だけ逃げ出すのに抵抗があったのが事実だ。
「どうしたんだよ、早くそこからどけよ。何処もケガしてないんだろ」
 何も応えずにじぃーっと見つめるプラム。その視線、どこかで感じたことがあるなと思った葵。
 潤んだ熱のこもった瞳。
 それが、ファンクラブの娘達から向けられている憧れの視線と同質なモノに気付いた時には、
「好き」
 プラムは柱を支えている葵の首に抱きついてきた。
「ちょっと、何の真似だよ!?」
「あたしの命を救ってくれた、お姉さま。だーいすき☆」
 スリスリと頬ずりをしてくるプラムは、何を言っても答えてくれない。
 困り果てていた葵の前に人影が現れた。
 チェリーだ。
 葵が咄嗟に講堂の外へと蹴り飛ばすことにより、無事に命を救われたのだ。
 瓦礫を踏み越えて近付いてくるチェリー。
 双子の片割れを自分から離れさせてくるのかと考えていた葵だが、彼女の行動は予想の範疇を超えていた。
「のわっ!?」
 いきなり、プラムとは逆サイドから飛び付いてきたのだ。
 そして、
「好き」
 同じように頬ずりをしてくる。
 ただ、違うことと言えば、彼女が撃たれた葵の右肩方向から抱きついてきたことである。
 身体を駆け抜ける激痛に、思わず瓦礫を支えていた左腕の力が抜け――
 落ちてきた瓦礫を脳天に食らい、葵の意識は闇の中へと混濁した。

§

 葵が目を覚ましたのは、少女の身体で目覚めた時と同じ古城の館の医務室だった。
 右肩を見れば綺麗に巻かれた包帯がある。痛みが無いところからすると、多分鎮痛剤でも打たれているのだろう。
 そっと触れた頬には、ロケット弾でできた傷跡に絆創膏が貼られていた。
「おやっ、やっと気が付いたみたいだね」
 医務室に入ってきたのは、古城だった。
「古城……」
 やってきた古城に事の顛末を聞かされる葵。講堂が崩れた後、葵はやってきた救助隊に救われ、古城商会の息のかかった病院で治療した後、館に運ばれたそうだ。
 葉月は講堂爆破の事故処理を古城に頼まれ、学校に残っていると言う。講師として学校に潜り込んでいた葉月の仕事は、何も葵の女子高生としての生活をフォローするだけではなく、葵とツインテールの戦いで起こる被害の隠蔽工作も担当していた。
 もっとも、口先三寸で学校側及び警察を煙に巻くだけであるが……
「双海クン。キミは最高だよ。一週間の期間を使わずして依頼を果たすんだから」
「依頼を……果たす?」
 訝る葵。自分は、プラム達に古城を受け渡す約束をしている。それがどうして、古城の依頼達成に繋がるのか分からない。
 小首を傾げた葵の耳は、パタパタと足を音を発てて近付いてくる者達の存在を捉えた。
 バンッ――
 勢いよく開けられた扉から飛び込んできたのは、ツインテールの双子だった。
「「お姉さま〜☆」」
「わぁつ!?」
 瞳を潤ませて抱きついてくる二人。
「おい、古城。この二人は何なんだよ」
「この二人は強力な精神感応で心が繋がっているんだよ。二人でありながら一人。一心別体とでも言ったところかな」
 それは、頭の中にインストールされている知識の中にあった情報の一つとして、葵も知るところである。
 その精神感応能力が、ツインテールをトップクラスの殺し屋にランクする最大の要因であった。
「おかげで、片方が好きなると、もう片方も好きになっている。まったく同じ感情を抱くんだ。だから、僕が好かれた時は、両方から結婚を申し込まれてね、重婚なんてできないから断り続けていたんだよ。
 彼女たちの興味がキミに移行されたからね、僕としては嬉しい所存だよ」
 ツインテールの興味が自分から離れたことに、古城は手放しで喜びたいところなのだが、葵の怒り混じりの一瞥でそれは封じられていた。
「――で、これはどうしてくれるんだよ?」
 憮然と言い放つ葵。ツインテールの二人に、自分が本当は男で、古城の依頼でフィアンセを演じていたのだと教えるが、
「パパのフィアンセなんて、どうでもいいの」
「パパなんて、もう知らない」
 葵に心を奪われた瞬間から彼女たち双子の中では、古城は恋人候補から保護者に立場を変えていた。
『パパ』と呼ばれることに抵抗はあるものの、再びまとわりつかれることを考えると古城は快く二人の保護者役を買ってでた。
「まぁまぁ、そんなに怒らない。キミが元の身体に戻れば彼女たちも幻滅して、興味を無くすと思うんだけど」
「それって、俺に魅力が無いみたいだな」
「素材は悪くないんだけど、あんだけむさい格好してるいるとね……近付いてくる女性も、葉月さんのような物好きぐらいしかいないんじゃないかな? あっ、何なら、キミの身体をデジタルデータから復元する際、整えておいてあげようか?」
「大きなお世話だ! それよりも、早く俺を元に戻してくれ」
「ああ、分かってる。今、手配させよう」
「えぇ〜。お姉さま、男に戻っちゃうの!?」
「そんなの嫌ぁ〜。お姉さまは、その美しい姿じゃないといけないのよ!」
 どうも、葵に惚れた時に同性愛者としての資質に目覚めてしまった二人であった。
「あ、そうだ、チェリーちゃん。あたし達でお姉さまの身体を処分してしまえばいいのよ」
「ナイスアイデア、プラムちゃんって賢い♪」
「おい、おい、お前らな〜。んなことしたら、一生口聞いてやんないぞ」
 投げやりげに言った言葉だが、それなりの効果はあったようだ。
「「お姉さま。そんなコトしませんから、あたし達を嫌いにならないで」」
 必死な瞳で訴えてくる双子に、葵はヤレヤレと肩を竦めた。本気に好かれてしまったようだ。
「旦那様!」
 ノックもせずに、老執事が部屋に飛び込んできた。
「なんだい、騒々しい」
「システム管理部から、商会のコンピュータにハッキングしてきた者がいると連絡が入りました」
「ふーん。そんな報告をわざわざしてくるとは珍しいね。何かあったのかい?」
 完璧なセキュリティを誇る古城商会のコンピュータ。それを破れる者がいるとはとうてい思えない古城。
「それがその……」
 言葉を濁すように老執事は葵を横目で一目見てから、
「メインシステムには進入されはしなかったのですが、双海様のお身体のデジタルデータを保管してあるデータバンクが荒らされてしまいまして……」
 老執事の話を聞いていくうちに、葵の顔色が青くなっていく。
「それって、俺の身体が再構成できないってことなのか?」
「平たく言えば、そうなります」
「…………」
 言葉無くし途方にくれる葵に対し、
「「やったぁ♪ これであたし達のお姉さまは健在よ」」
 ツインテールは歓喜の声を上げていた。
「ウチのシステム部総出で大至急修正するから――しばらくは、そのままでいてくれないか」
「しばらくって?」
「こういうケースは初めてだからね……半年から一年はみないと何とも言えない」
「おい、おい。一年間もこの格好のままいれというのかよ」
 顰めっ面の葵に、両脇から頬をスリスリしてくるプラムとチェリー。
「「お姉さま〜☆」」
「わぁっ! 頬ずりしてくるんじゃない!!」

 チャン、チャン♪




[ RENTAL BODY Ver4.02 〜少女探偵物語〜 ] ■あとがき■

 こんにちわ、2bitです。
 約3ヶ月ぶりのRENTAL BODYはどうでしたか? もっとも、2bit自身は、三ヶ月ぶりって気がしないんですけどね(執筆はずぅーっとしていたし、未完成のVer3もありましたから)
 もともと、このVer4はVer3までの繋ぎとして、Ver3の設定を一部用いて急遽書いた話です(しかも、かなり端折ってる……)
 しかし、回を重ねる毎にますますコミカルになっていく話だな……RBシリーズって。まぁ、設定からして、他の投稿者の方々と比べるとコミカルな設定しているし(苦笑)
 本当のところは、もう少しシリアスな路線の話も書いてみたいんですけどね。なかなか難しくて。
 何はともあれ、2bitが執筆する少年少女文庫へ投稿できる形のSSとしてのRENTAL BODYは次回投稿予定のVer3が最後になる予定です(などと言いつつ、それぞれの作品のVer UPを考えていたりして/それに、Ver4を単独で続けたりすることも可能だけど。もっとも、評価次第ですけどね)
 ただ、Ver3はRBの総決算として最高のモノとして作り上げたいため、執筆にはしばらく掛かることをご了承下さい(ちなみに、このVer4の公表が確認され次第、途中まで暫定公開していたVer3のデータは消しますので、アクセスしても無駄です/しかし、掲示板で少し前に置き場のアドレス記していただけなのに、何故いまだにアクセスしてくる人がいるんだろうか……)

 それにしても、TSを物語のテーマから物語の素材の一つにしているよな、この話って。

...next new story [ RENTAL BODY Ver3 〜微熱風味〜 ]


 
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