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−華代ちゃんシリーズ−

「昼下がりの少年 2」

作:神川綾乃


※ 「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照にしてください。

http://www7.plala.or.jp/mashiroyou/kayo_chan00.html



 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。
 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
 報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

 さて、今回のお客様は…。





『それにしても………暑い………。』
真夏の東京。一般的言えば、”お盆”と言われる季節。世間では、帰省ラッシュが起きて、首都圏から各地方に里帰りする人が多くて、高速道路や公共交通機関が大混雑する時期。
『毎年の事だけど、なんでこんなに暑いんだろう?』
僕はというと、そんな世間の流れとは全く反対。地方から上京してきて、いまは、この世界では一番有名なイベントの会場にいる。
 ぼくはというと、人気のあるアニメ作品のキャラクタの姿で、その会場を歩いている。いわゆる、コスプレってやつをしている。この場で去年会った女性のコスプレイヤーと意気投合して、彼女と一緒に同じ作品のコスプレをしている。

『女の子っていいよな、なんか涼しそうで。』
 相方の彼女は、水色のミニスカートが特徴のあるキャラクタのコスプレをしている。

「ちょっと、大丈夫?」
「この暑さ、僕にはかなりきついかな………。」
その会場の東館の外で、日陰になっていて風通しの良いところで座っていると、ジュースを買いに行った彼女が戻ってきた。
「女の子に買い物いかせるなんて、だらしないわよ?」
彼女はそう言って、さっき頼んだジュースを差し出してくれた。僕は、そのジュースを右手で受け取ると、
「ありがとう。でも、仕方ないじゃん?僕北国の生まれなんだし。」
と言った。
「北海道だったっけ?」
「うん。北海道だよ。」
「そっか、それなら大変かもね。東京生まれの東京育ちの私でさえ、この暑さはたまらないもん。」
空は快晴の真夏の午後。アスファルトは太陽の光を一杯浴びて、高温になってその照り返しの光と熱は、すざまじい。
「ねえ、スカートって涼しい?」
受け取った缶ジュースを開けながら、不意にそんなことを言ってしまった。
「どうしたの、いきなり。」
「うーん、ただ気になってさ。」
「純って、女コスはしないんだったっけ?」
「したことないよ。しようとも思わない。」
「うーん、純なら似合うような気もするけど………。」
彼女は左手の人差し指を伸ばして、口元にくっつけながらいった。きっと、僕の女装姿を想像しているに違いない。
「あのさ、変な想像しないでくれる?」
「変な想像?変な想像なんて、してないよ。ただ、純がこの格好してみたらどんな感じかなって思っただけ。」
「……………おい、それだよ。変な想像って。」
「あはは、気にしないで。」
彼女は、そういうとジュースを一口含む。
「でさ、純。純って身長低いし、体格も華奢だとおもうから、どう?一度試してみる?その顔だったら大丈夫だとおもうし、髪の毛はウィッグかなんか使えばいいんじゃない?私の衣装、貸してあげるわよ?」
彼女は、結局その変な想像をふくらませていたらしい。
「おい、いい加減にしてくれよ。」
「え、いいと思ったんだけどー。」
彼女はそう言うと、僕に微笑んだ。



 その日の夕方、コスプレ衣装の入った大きめのバックを肩にかけて帰る僕と彼女。僕と彼女は、会場のすぐそばから出ているゆりかもめに乗って、新橋駅についた。ここで帰る方向が違うので、別れることになる。
「じゃ、純また明日ね。明日は小虎だよね。私はプラム。ちゃんと用意してあるから、大丈夫。」
小虎とプラムは、少女漫画に出てくるキャラクタだった。去年彼女と出会って教えられるそれまでは当時から有名だった作品だったけど、僕はその作品の事を知らなかった。まさか、その作品に僕もハマってしまい、一緒に彼女とその作品のコスをすることになるとは思っても居なかった。
「うん、分かったよ。じゃあ、また明日。」
彼女と駅の改札口で別れて、ホームに向かった。
「さてっと………。それにしても、この時間でも暑いな………。」
夕方になっても、まだ厳しい暑さが残る。
「明日の小虎って、ほとんど真冬に近い格好の衣装なんだよな………。」
この茹だる暑さに、僕は心配だった。
 それから、何度か電車を乗り換えること1時間。いまとなっては地元の駅に着いた。
「うーん、6時になろうとしているのにまだ暑い………。」
ここまで来れば、あとは歩いて15分もかからない。
「さてと、帰りますか………。」
なんとなく、衣装の入った鞄が今までよりも重たく感じる。初日だったとはいえ、かなり疲れたのだろうか。僕は家に帰ると、入浴し夕食をとると、明日の支度も早々に、早く眠ってしまった。


 そして、僕はその夜、不思議な夢を見た。



 気づくと、何もない真っ白な世界。僕の目の前には、白いフリルの効いた可愛いワンピースを着て、肩にはポシェットを掛けたロングヘアの女の子が立っている。
「え?ここはどこ?君は誰?」
「お兄さん、はじめまして。」
戸惑っている僕を前に、彼女はなにも驚くこともないまま、あいさつをしてきた。
「はじめまして。」
女の子にあいさつをされて、僕は彼女にあわせてあいさつをする。
「お兄さん、何か悩みごとあるみたいですね?」
そう言う女の子は、何か不適な笑みを浮かべたような気がする。
「えっ?悩み事?
突拍子のないことを言われ、僕は聞き返す。でも、女の子は僕に1枚のカードを差し出してきた。
「何、これ?」
「私の名刺です。」
”ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代”
真っ白の紙に、ただそう書かれているだけの名刺だった。
「お兄さんの悩み、お引き受けいたしました。」
女の子は、僕がその名刺を受け取ってしどろもどろをしているのを見ながらそういった。

 そして、いつのまにか女の子は僕の目の前から消えてしまっていた。



”PiPiPiPi!PiPiPiPi!”
”朝、朝だよ〜ぉっ!早く起きて学校いくよぉ〜〜っ!”

 昨日、寝る前に純がセットしておいた目覚まし時計が、一斉に鳴り出す。
「………………う、う〜ん……………。」
ベットの上に眠っている純。朝に弱い彼は、大切な出来事があるときにはたくさんの目覚ましをセットして眠りにつくようにしていた。

 目覚ましが鳴り出して30秒ほどしてから、ようやく純は目を覚ます。
「…………まだ、眠いよ………………。」
眠気眼で、右手で両目をこする。
「………う〜…………………。」
綺麗な長い黒髪の姿になった彼は、やがて自分の体に起きた異変に気づく。
「…………?」
彼は、首から肩、そして腰に届きそうな髪の存在を感じる。頭のてっぺんに両手を置いて、美しく流れる髪をたどって両手をおろしていく。まだ、その彼女の顔は眠たそうな表情に包まれている。
「………??」
今度は、両手で自分の胸を触ってみる。
「………………???」
そして、左手を胸にそのままに、右手を股間に這わせる。
「…………………?!」
その瞬間、
「…………………って、どわりゃっっっっっっーーーーーーっっ!!!!!????」
甲高い絶叫が、彼女の部屋から家全体を包んだ。その声は、一気に眠りから覚めた割にはとても大きな声だった。
「そ、そんなっっっ!?!?」
信じられないでいる純は、ベットの上で呆然としてしまった。



 それから2時間くらい後。



 純は、自分の体に起きたことが信じられないでいた。ベットの上でうずくまり、あれこれいろいろなことを考えていた。
「確か、変な夢を見て………それで………でもなんで、女になってるんだ?」
ずっと同じ事を思い続けても、ただ女になってしまったという事実だけは間違いがない。彼女と新橋駅で7時頃に待ち合わせなんて事も、とっくのとうに忘れてしまっていた。
 その時、純の携帯に着信が入った。
『ああ、この着信音は有佳からだ………』
純は、あわてて枕元にある携帯を手に取ると、着信ボタンを押した。
「ちょっと、純!どこにいるのよ!」
携帯電話の向こうで、有佳がとても怒っている声を張り上げている。
「もしもし?」
純は、すっかりかわいく変化した声で話す。
「って、あんた誰?なんで純の携帯に女が出るわけ!?」
いままでに聞いたことのない有佳の怒り声だった。
「有佳、有佳だよね?」
「なれなれしく言わないでよ、私あんたなんて知らないわよ?!」
「僕だよ、僕。純だよ。」
「純?何いってんの?純は男でしょ?」
「信じられないなら………そうだ、写真を送るよ。」
「あんた、なにいってんの?!純を出してよ!」
有佳はまったく聞いてはくれそうもない。
「有佳、ごめんね。」
小さな声でそう言うと、純は携帯電話のボタンを押す。そして、薄暗い部屋のままなので部屋の電気をつけると、携帯電話のカメラで自分を撮る。そして、そのファイルを添付して、有佳の携帯にメールした。
「何度かここに来たことはあるから、これで信じてくれると良いんだけど………。」
メールを送信してから3分くらい経ってから、また有佳の携帯から電話がかかってきた。
「もしもし?」
純が恐る恐る電話に出る。
「………メール見たわ………信じられなかったけど………本当に純なのね?」
「………うん、朝起きたらこんなふうになってて、自分でも訳が分からなくて………。」
「とにかく、いまからそっちにいくわ。良い?」
「うん……いいの?」
「バカじゃない、純のことのほうがずっと大切なの!」
「ありがとう………。」
「まっていてね。ここからだから、1時間くらいかかると思うけど。」
「うん………。」
「変な気は起こしちゃダメよ、いい?」
「うん………。」
「じゃ、私電車に乗るから。」
そういうと、有佳は携帯の通話を切った。

 そして、それからさらに1時間ほど後………。

 玄関に出てきた純を見て、有佳はこういった。
「本当に、純なの!?」
純は男物のスウェットを着ていたが、肩やウェストや足のあたりはだぶだぶだった。顔から足まで、有佳が一回りみたあと、有佳は
「か、かわいいっっっっっ!!!」
といって純に飛びついた。







 今回のお客様は、夏は暑くてない。スカートなどを涼しそうだなとおっしゃられておりました。それですから、お客様の気持ちを大切に受け止め、スカートのよく似合うかわいい女の子になっていただきました。

 このあと、彼女がどうなったのかは私は存じませんけれど、きっとご満足いただけたことでしょう。

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