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※ 「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照にしてください。

http://www7.plala.or.jp/mashiroyou/kayo_chan00.html





 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんなみなさんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 報酬ですか? いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

 さて、今回のお客様は……












華代ちゃんシリーズ 「GO TO HELL!!」

作:NHK





 俺はアスファルトを蹴りつけるようにミュールを鳴らして歩き続けた。……俺は今、猛烈に怒っている!
 実はたった今さっき、会社を辞めてきた。辞めた理由は……あぁっ! 思い出しただけで腹が立つ!!



 俺はある出版社に勤めていた。出版社といっても、親潮社や鋼談社、過度川書店みたいな大手の出版社じゃない。斜陽舎という小さな出版社だ。
 地方自治体や地元企業などのコミュニティー誌を細々と発行している。社員数も10人で、すべて男性社員。しかも20代は俺ひとりしかいない。

 今日は朝から全社員を集めての異例の緊急会議が開かれた。金剛峰寺社長は俺たち社員の顔を見回すと、沈痛な面持ちで切り出した。
「諸君、心して聞いてくれ。いま、我が社の経営はもはや伝説の巨神状態にある」
 は? 伝説の巨神? 何だそりゃ?
 俺は自分の耳を一瞬疑った。まわりの社員たちから社長に質問が飛ぶ。
「社長! それは王・長島時代の……」
「その巨人ではない!」
「では、日本特撮映画の先駆けといわれる……」
「大魔人でもない!」
「ひょっとして、北の独裁者さまに依頼されて円谷プロが製作したという……」
「それは伝説の大怪獣プ○ガサリだ! ……私の言う巨神とはだな――」
 金剛峰寺社長はそこでひとつ大きな咳払いをすると、
「延暦寺営業部長、続きを頼む」
 延暦寺部長は薄くなった髪を少し撫で付け、
「つまり我が社の経営状態は、伝説の巨神イデオン状態にある、と社長はおっしゃっているのだ」
 その瞬間、周囲から、おぉぉぉ! と動揺の声が起こった。だが、俺には何のことだかさっぱり分からない。
 俺は手を挙げて質問する。
「延暦寺部長、伝説の巨神イデオンとは何ですか?」
「鹿苑寺くん、君はそんなことも知らんのかね? まったく、これだから最近の若い者は……」
 延暦寺部長はあきれた様子で俺をにらみつけた。
「中尊寺人事課長、鹿苑寺くんに説明してやりなさい!」
 中尊寺課長は黒ぶち眼鏡のずれを直すと、
伝説の巨神イデオンとは、富野由悠季御大将がお作りになられたロボットアニメで、物語のラストでは、宇宙全体が滅亡して、全滅した登場人物たちがすっぽんぽんの幽霊になって宇宙空間を飛びまくるという壮絶な――」
 何だ? そのホスピタル直行もののエンディングは?
「……あの、つまり」
 俺は慎重に言葉を選ぶ。「……我が社は倒産寸前にある、ということでしょうか?」
 社長たちは無言で頷いた。
 何故? なぜ倒産しそうだと説明するのにイデオンなんて比喩が? あぁ、眩暈がしそうだ……
「そこでっ! この危機を脱し、我が社を活性化するアイデアを皆に求めたいと思うっ!!」
 金剛峰寺社長は声を張り上げて言った。俺は遠のく意識を気力で無理やり繋ぎとめ、社長に提案した。
「社長! いまこそ我が社にコンピュータを導入し、業務の効率化を図るべきですっ!!」
 そう……恐ろしいことに、ITの時代にあってこの会社にはコンピュータが一台も無いのだ。例外的に俺のデスクにはパワーブックが置かれているが、これは会社の備品ではなく、俺の私物だ。
 早い話、この会社はコンピュータの扱える人間が俺以外にいない、超アナクロ企業なのだ。
 その為帳簿整理から誌面のレイアウトまで、膨大な量の仕事が俺のデスクに持ち込まれる。そのくせこの会社では俺が一番下っ端なので、給料は一番少ない。
 だからこそコンピュータの導入は俺の悲願なのだ。ところが次に社長が発した言葉は……
「馬鹿者ぉ! コンピューターを買うのにいくらかかると思っているのだっ!! そもそも我が社はこれまでコンピューターなど無くてもやってこられたのだぞっ!!」
 ああぁ……分かっちゃいないっ! 社長はコンピュータがどれだけ便利かを、まるで分かっちゃいないっ!!
 またしても意識が遠のいていく。頭部から血が引いていくのを感じる。
「社長っ! 私めに案があります。……これをご覧下さい」
 そう言って延暦寺営業部長は雑誌を取り出した。【目経経営ナビ】だ。
 その見出しには、【今月の特集 女子社員の力を活かして業績アップ!】と印刷されている。
「……ほぅ、なるほど。打開策は女子社員か」
 指に唾をつけてはページをめくり、しきりに感心する金剛峰寺社長。
 これはまずい! 何としても社長にコンピュータの導入を決意させなければ……
「ちょっと待ってください! 四天王寺さんも善光寺さんも浅草寺さんも、女子社員は先月、全員辞めちゃったじゃないですか! だいたいコンピュータを導入する資金も無いのに、どうやって女子社員を雇うんです!?」
 俺はすかさず反論した。コンピュータを知れば、社長の考えだって変わるはずだっ!
「……なるほど、延暦寺営業部長のアイデアはすばらしい! しかし、鹿苑寺くんの言うように、我が社には新しく女子社員を雇う余裕は無いぞ。どうするんだね?」
「勿論、よい方法を考えてあります。鹿苑寺くん、ちょっと来たまえ、君に渡すものがある」
 そう言うと延暦寺部長は俺を手招きした。どんな考えがあるというのだろう?
 俺は意味の分からないまま部長の前に進み出る。部長は俺に一枚の名刺を差し出した。
 その名刺には……

ココロとカラダの悩み解決します

真城華代


 俺がその名刺を受け取った瞬間、室内で吹くはずのない突風が吹いた!
 突風はつむじ風となり、デスクに置かれた紙の束を巻き上げていく!
「うわあああぁぁぁ!」
 俺は目を閉じ、腕で顔を覆った。
 つむじ風が止むのを待って目を開けてみると、そこにはにやにやと笑う延暦寺部長がいた。
「いや〜鹿苑寺くん、可愛くなったじゃないか」
……どういうことデス? ……って、え? ナ……何だヨこの声!?」
 俺の口から出た声は、俺の声ではなかった。まるで女の子の声だ!
 俺は自分の姿を確認する。靴はミュールに変わり、ミュールからはすらりと白い足が伸び、腰は細くくびれ、胸には二つのふくらみが……。
「見てみたまえ、鹿苑寺くん」
 延暦寺部長は俺の前に鏡を差し出した。鏡の中にはアイスブルーの瞳をした、亜麻色の髪の少女がいた。
 年齢は18歳くらいだろうか……しかし、なぜ頭にナースキャップが?
「ほぅ、綺麗になったじゃないか、キャメロン・ディアスみたいだよ」
 金剛峰寺社長が俺の隣に来て言った。それにしても、キャメロン・ディアス? あんなおばさんと一緒にしないでほしい。
「延暦寺部長! コレはどういうことデスか!?」
「どういうことも何も、鹿苑寺くん……今日から君には女子社員として働いてもらうよ」
 そう言うと、延暦寺部長は俺のお尻を触った。
……キャアアッ!」
 俺は反射的に体を反らし、延暦寺部長の手を払い除けた。
「うんうん、期待しているよ、鹿苑寺くん」
 続いて金剛峰寺社長が俺のお尻を撫でた。
……や、止めてくだサイ!」
「何を怒っているんだい? 君は白衣の天使だろ? ほら、スマイル、スマイル!」
 延暦寺部長も金剛峰寺社長も、まったく悪びれる様子がない。
「そもそも、四天王寺サンも善光寺サンも浅草寺サンも、アナタたちのセクハラが原因で会社を辞めたんじゃないデスか!」
「セクハラとは何だっ!! 失礼なことを言うなっ!!」
「そうだぞっ! あれは社員との純粋なスキンシップじゃないかっ!!」
 いきなり逆ギレする社長と部長。その時俺の中で何かが、ぷつん――と切れる音がした。
 もういいっ! もうたくさんだっ! こんな会社、辞めてやるっ!!
 俺はデスクの端を掴むと力いっぱい引っくり返し、大声で怒鳴った!!



「YOU CAN GO TO HELL!! (てめぇら地獄に行くがいい!!)」








 最後まで読んで頂き、ありがとうございます。NHKです。
 当然ながら、この物語はフィクションです。
 実在の人物、団体、事件とはいっさい関係がありません。
 今回の短編は、ややマイナーなネタが多く、分かっていただけたか、非常に心配です。



 ちなみに、NHKが富野監督のことが(比較的)好きです。
 劇場作品が少ないので、宮崎監督や押井監督ほど知名度は高くありませんが、作っているものはかなり凄い(&きわどい)と思っています。



 最近、『悪魔少女ニコ』より先に書きたいものが出来てしまったので、
 『悪魔少女ニコ』を読んでくださっている方、すいませんが、もう少し待ってくださいね。

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