――華代ちゃんシリーズ――
「操り人形」
          
原案:真城 悠      CREATED BY MONDO      

※「華代ちゃん」シリーズの詳細については、
http://www7.plala.or.jp/mashiroyou/kayo_chan00.htmlを参照して下さい


 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申しつけ下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申しつけ下さいませ。

 報酬ですか? いえ。お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

 さて、今回のお客様は……



 特設アリーナの中央で、二体の人型が拳をまじえていた。
 全高約三メートル。FRP(強化プラスチック)の装甲をまとい、アクチュエータの伸縮音を響かせながら取っ組み合うそれらは、ヒトの形と動きを模した機械――メガパペット(競技用有線操作式人型有脚マニピュレーター)と呼ばれる代物である。
 背中にあるドラムからケーブルが伸び、その先端はトリガーと呼ばれる操縦器に接続されている。プレイヤー(操縦者)はそれを介して自らのメガパペットを操り、人型機械用に考案された様々な競技に参加するのだ。
 それらを総じて、ロボTRY(ロボット・トライアスロン)という。
 今、この場で開催されているのは、メガパペットを使った “格闘戦” である。……プレイヤーの技量と使用するメガパペットの性能、そして、プレイヤーの機体に対する思い入れが如実にあらわれる競技だ。


「ふ〜ん。パドックからだとこんな風に見えるんだ……」
 駐機場からアリーナを見ていた正樹は、その可愛らしい声に思わず振り返った。
 アリーナ中央ではその瞬間、一方のメガパペットがもう一方の肩と胴体の接合部に手刀を叩き込んで、勝負を決した。
「わあっ、すごいすごい。逆転勝ち〜っ」
 正樹の横で手をたたきながらはしゃいでいたのは、小学生くらいの少女であった。
 出場者の身内の子かな……と思いながら、正樹はあたりを見回した。だが、駐機場にいる者はみな、自分の機体のチェックをしているか、次の試合に気を取られているかのどちらかであった。
 誰も少女のことを目にとめてはいない。
「……あ、ごめん。おにいちゃん」
 正樹の視線に気付いたのか、少女は口に手を当てて軽く微笑む。そして首から下げていたポシェットからごそごそと何かを取り出し、差し出した。「……申し遅れました。あたし、こーゆー者です」

 ――ココロとカラダの悩み、お受け致します。 真城 華代――

「ねえ、おにいちゃんもこれに出場するんでしょ?」
 目の前にいる、学生である自分より明らかに年下に見える少女と、渡された名刺のアンバランスさにしばし戸惑っていた正樹は、そう尋ねられて思わず顔を上げた。
「う…………うん、出るよ」
 歯切れの悪いその口調に、少女は眉をひそめる。「あれ……? もしかしたら、出たくないの?」
「そ、そんなこと……ないけど……」
 目をそらして答える正樹。のぞき込むように、少女は顔を近づけてきた。
「そう。…………ねえ、おにいちゃんのメガパペットって、どれなの?」
 一瞬、正樹の顔に朱がさす。そして、ため息をひとつつくと、彼は駐機場の隅を指さした。
「……あっ、あたしこれ知ってる。来月から始まるTVアニメに出てくるロボットでしょ?」
 機体の足元に駆け寄って、それを見上げる少女。
 細身のメガパペットであった。ベース機はおそらくTXシリーズであろう。
「うわあ、すっご〜いっ」
 少女の歓声に、正樹は照れくさそうに頬を掻いた。


 肩のつけ根をえぐられたメガパペットが、台車に乗せられて戻ってきた。勝利した相手は、アリーナを挟んだ反対側の駐機場へと引き上げている。
「へ〜っ。じゃあ、これって番組の宣伝用に作ったものなんだ……」
「ああ。実はオレ、バイトでアニメ製作の進行手伝っててさ。
 ……んで、今日の競技会に参加するって言ったら、『じゃあこの機体でエントリーしてくれ』 って、宣伝部のヒトに押しつけられちゃって……」
「ふ〜ん」
 いつしか正樹は、自分の機体の前で少女と話し込んでいた。
「エントリー費用や経費はみんな会社でもつからって言われて、ついふたつ返事でOKしちゃったけどさ――
「でも…………あまり乗り気じゃない」
「まあね。いまさらだけど」
「う〜ん、確かにこのメガパペット、強そうっていうより……」
 そうつぶやきながら腕を組んで、正樹の機体を上から下まで眺めまわす少女。
 手脚はワンランク小ぶりなものに換装されており、よけいに細く、華奢に見える。さらにかかとはハイヒール、腰まわりのベンチレーター(排熱器)とスタビライザーはフレアスカートを思わせ、胸元にはリボン風の飾り装甲。腕や肩、足首にはハート型の意匠がちりばめられ、頭部にはシニヨンのつもりか球形のパーツが取り付けてある。
 カラーリングはパールホワイトにピンク。ごていねいなことに、顔面も女の子のそれを模していた。
 肩の先から新体操のリボンのような布が垂れ下がっている。機体が動くとヒラヒラするのだろう。
「……どっちかっていうと、かわいらしい、って感じね」
 いわゆる女性型――というより女の子型のメガパペットであった。「要するに、恥ずかしいってわけだ」
 その一言に、正樹はまたため息をつく。
 ……それにしても、よくレギュレーションを通過したものだ。
「ああそうだよ。…………おまけに宣伝部の連中、競技中に最低三回はポーズ決めろなんて言いやがるし……」
 正樹はそう言うと、自分の機体に背を向け、頭の後ろで指を組んだ。「……ったく、ほんといまさらだと思うけど、せめてマーキングと余計な飾りくらいなんとかして欲しいよ、これ」
 次の瞬間、少女はにっこりと笑みを浮かべた。
「ふふふ、まかせてっ! メガパペットのことは専門外だけど、なんとかしてみせるわっ!」
「おいおい」
 勢い込む少女に苦笑する正樹。その視界が、急にガクンと下がった。
「うわわわっ!!」
 その声に、駐機場にいた他のプレイヤーたちがいっせいに振り返り、そして……目を見開いた。
「「!!」」
 ゆらゆらと揺れる正樹の、そこそこがっちりしていた身体つきがみるみる華奢になっていく。Tシャツから伸びた腕と、ツナギの中の脚が細く、小さく、なめらかなものになっていった。
 軽く日焼けしていた肌が透きとおるように白くなり、一気にきめが細かくなる。腰とお尻がキュッと持ち上がって膨らんでいく。ウエストが絞られるように引き締められ、同時に胸が丸みを帯び、股間のモノがみるみる縮んでいくのをとまどいながらも正樹は感じた。
「な……なななななななんだこれはあああっ!?」
 と、叫んだ声も、甲高く涼やかなものになっている。顔つきもだんだんと幼く、可愛らしく変化していった。
 目は黒曜石のようにきらめき、タマゴ型になった頬はふっくらとした弾力を持ち、鼻筋がツンと上を向いてくちびるは小さく、そして艶やかな桜色に色づく。黒かった髪の毛は明るい茶色に変わり、ふわっと肩まで伸びた。
「「…………」」
 すっかり十二、三歳くらいの少女に変わってしまった正樹。まわりの人間は驚きに声も出ない。
 さらに、ぶかぶかになった服が風もないのにゆらめきだす。Tシャツの袖が膨らみパフスリーブになり、首まわりに丸い襟が生じてあっというまにブラウスと化した。
 腰のあたりで縛っていたツナギの袖が大きなリボンに変わって背中側へ移動、ツナギ自身は足首の所からほどけてめくれ上がると、硬質な布地に変わって花びらのように広がり、ギャザーが生じて真っ赤なフレアスカートに変化する。その下にはふわふわしたペチコートが、そしてその奥では柄物のトランクスがいつの間にか純白のアンダースコートに変わり、少女の大切な場所を覆っていた。
 履いていたエアマックスは皮製の小さなおしゃれ靴に、靴下は膝まで覆うニーソックスに、頭に逆向きで被っていたアポロキャップは材質を変えて大きなベレー帽に置き換わる。
 襟元に紺色のリボンが巻かれ、袖口や手首、靴の甲にもぽんぽんぽんっとリボンが生じて変化は止まった。
「こ…………これって、ま、まさか……っ!?」
 知らず知らずのうちに内股になり、正樹は震えながらも自分の姿を見回した。そのとき、会場全体にアナウンスが響いた。
「さあっ、次の第六試合は本大会の常連、高校生プレイヤー飯綱甲介の操るTX−44 《マシンノート》 と――
 対するは…………おおおっと! 来月からスタートするアニメの新番組、『電脳妖精アセンブル・リーナ』 の主人公リーナちゃんが操るマジカル・メガパペット、《ミルキィ・リップ》 の登場だあああああっ!!」


 今回は事前の学習をうまく生かすことができました。やはりセールスレディたる者、知識の間口を広く開けて、多種多様なお客様のニーズに答えなければなりませんね。
 さすがの私もメガパペットはどうしようもありませんでしたし、時間がなかったので逆に依頼人さんの方を 「合わせて」 しまったわけなのですが、あれならおそろいですから気にすることなんてないでしょう。またまた結果オーライということで。
 それに、やっぱり女の子ロボットを男の人が操縦するなんて、ちょっと興ざめです。
 ……そうそう、『電脳妖精アセンブル・リーナ』 は、久々のスマッシュヒット・アニメになりそうですよ。
 なんといっても、イベントに必ず現れる主人公そっくりの女の子に、ファンクラブまでできるくらいですから。いやあ、何はともあれよかったよかった。


 では、もし何か困ったことがありましたら、何なりとお申しつけ下さいませ。
 今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

 それではまた。


 どうも、MONDOです。
 「シェアワールド・華代ちゃんシリーズ」 に、わたしも参加させていただきました。
 ……と、言いつつ、実は華代ちゃんをわたしの作品世界に引きずり込んだような展開でした。
 (ちなみに、甲介は反対側のパドックにいたので、華代ちゃんには会っていません。念のため)
 調子こいてメカデザイン(?)もしてしまうし。
 さらには図々しくもに原作者の真城さんを差し置いて、“アニメキャラのコスプレ” やってしまいました。
 おまけにあのキャラクター、モトネタは何かって言うと、一目……もとい、一読瞭然。
 …………ああっ、石を投げないでっ。


                                                   1999.8.22 
MONDO

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