華代ちゃんシリーズ

「変声」

作:Kardy




こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんのために私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりまし
たとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どう
ぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は…。


そろそろ夏から秋に移りそうな、ある晴れた日曜日。時刻は、全国的に12時半ぐらい。
とある中学校の屋上。
Yシャツ姿の男子生徒が、パンをかじりながらため息を吐いていた。
「恵美子ちゃん・・・」

「おにぃ〜ちゃんっ!!」
「おわぁっ!!??」
突然の呼びかけに、少年は腰を抜かさんばかりに驚いた。
はずみで、食べかけのパンが足元に落ち、8割方中身の残っていたりんごジュースがぶちまけられた。
「あ〜あ、もったいない・・・あ、ゴメンねお兄ちゃん。
 これ、お兄ちゃんのお昼ごはんだったんでしょ?」
「い、いや、それはいいんだけど・・・
 ところで、君、誰?どこからこの学校に・・・」
言いかけた少年を遮って、8歳ぐらいにしか見えない少女は名刺を取り出した。

「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」

子供のごっこ遊びにしては、えらく本格的だ。
「セールスレディ、ってとこかしら。いろんな人の悩みを聞いて、解決してあげるの。」
「悩み?・・・もしかして、君が聞いてくれるの?」
「そうよ。お兄ちゃん、すっごく悩んでるみたいだったから。」
目の前の少女に、とても人の悩みをカウンセリングする力はなさそうだ。まして解決なんて・・・。
でも、もとよりどうあがいても仕方のない事。
もしかしたら、この子にでも話せば、それだけですっきりできるかもしれない。
少年は意を決して、真城華代と名乗るその少女に、心のもやもやを打ち明けた。


彼の名は五十嵐 祐真(いがらし・ゆうま)。某私立中学の1年生である。
クラシック好きの良心に影響され、小学校時代から合唱を続けてきた祐真は、
中学でも合唱部に入り、独特の響きを持つボーイソプラノでめきめき頭角をあらわした。
だがそんな彼にも、声楽をたしなむ男子にとって避けられない問題が襲い掛かってきた。

声変わりである。

2〜3週間前から、喉の不調を訴えていた祐真だったが、
一昨日の朝、ついに自分が声変わりを迎えている事を知ってしまった。
五十嵐家は遺伝的に男子の声が低い。このままでは、祐真もそうなってしまうだろう。
もちろん、声が低くなったからと言って合唱部を追い出されるわけでもないし、パートを変えれば済む事。むしろ中学でバスぐらいになれば、貴重な戦力として扱ってもらえるだろう。
だが、祐真にはパートを変えられない事情があった。

現在練習している曲はソプラノのソロがあり、祐真は男子のソロとして抜擢されている。そして、自分とともにソロを与えられた女子ソプラノ担当の環月 恵美子(かんづき・えみこ)と2人っきりで練習する事が多い。祐真としては、この時間を失う事は絶対に避けたいのだ。

「つまり祐真お兄ちゃんは、その恵美子お姉ちゃんの事が好きなんだね!」
「こ、声が大きいよ、華代ちゃん!!」
中学生くらいの集団では、この手の噂はどこから漏れるかわからない。下手に本人の耳にでも入ろうものなら、たちどころに学校中の視線にさらされる事になってしまう。
「だから、僕は声変わりなんて嫌なんだ。でも・・・こればっかりは仕方ないってさ。お医者さんも言って・・・」
そういい終わらないうちに、華代は立ち上がった。
「大丈夫よ、お兄ちゃん。あたしにまかせて!」
それだけ言うと、華代は祐真の手を引いて、物陰までやってきた。

「ここなら大丈夫ね。
 さてお兄ちゃん、ちょっと目を閉じてくれる?」
「え?目を・・・?」
どうせ、この少女ではどうにもならない事はわかりきっている。
元々子供が嫌いでない祐真は、すこしこの少女と遊んであげようかと思った。
目をつぶる祐真。
「こ、これでいいかい?」
そういい終わると同時に、風が吹き抜けていくのを感じた。

その直後だった。
全身がむず痒いような、熱いような、気持ちいいような、奇妙な間隔に捕らわれた。
立っていられなくなり、思わずうずくまってしまう祐真。
お坊ちゃんスタイルに刈り上げられた髪が、一気に長さを増した。
ワイシャツの下で、両胸がみるみるうちに膨らんでいく。
はえはじめた体毛がごっそり抜け落ち、ほとんど産毛だけになった。
腰が細くくびれ、ヒップが容量を増していく。

下半身を覆っていた黒いズボンが、脚を這い上がるように短くなっていった。
そして、ひざの当たりまで来た時には、それは紺色のスカートと化していた。
Yシャツの首の部分に、どこからともなくリボンが巻き付いてきた。
そして、その下に着込んでいたTシャツは面積を縮め、やがて胸を覆うブラジャーとなった。
ズボンの後を追うように、靴下が脚を這い上がっていく。
やがて腰の当たりまで来た時、それはナイロン地のストッキングになった。

「これでおっけ〜」
「これでおっけ〜、って・・・なんだか、随分苦しかったけど・・・って、え?え?えぇ〜っ!?」
慌てて顔の前に手をかざす祐真。その手は白く、細くなっていた。
「こ、これ・・・僕の手!?・・・あれ?そういえば・・・あ〜っ、あぁ〜っ・・・」
何度となく出してみたその声は、少ししゃがれた変声期独特の男子の声ではなく、
幼さを残した少女のものに変わっていた。

「よかったぁ。これで問題は万事解決よね。
 さぁ、そろそろ音楽室でみんなが待ってるわよ♪」
そう言って、華代は階段を駆け降りていった。
後には、状況が良く飲み込めずに、祐真だった女子生徒が呆然としていた。
 
 
 
 
 
 

今回の依頼は、結局簡単な事だったんです。要は、声変わりしなきゃいいんですから。
男子の場合はだいたい1オクターブぐらい下がりますけど、女子の場合は、せいぜい1〜2音ぐらいですからねぇ。むしろ上がる人もいるぐらいで。これまでと、そう違った音にはならないはずですよ。
しかも今回は、依頼者の恋の悩みまで解決しちゃったんですから、一石二鳥・・・

「ちょっとまってよ華代ちゃん!!全然解決になってないよ!!」
「あ、あれ?祐真お兄・・・じゃなかったお姉ちゃん、どうしたの?」
「女の子になって声変わりしなくなったのはいいんだけど、今度は恵美子ちゃんとパート取り合う事になっちゃったんだ!これじゃ、どっちに転んでも2人っきりで練習なんて出来ないよ!!」
「あ・・・そう言えば、ソロは男女一人ずつだっけ・・・?」
「どうしてくれるんだよぉっ!!これじゃ、彼女に嫌われちゃうよぉ!!」

えへへ、今回はちょっと失敗しちゃいました。反省反省。
さて、何か困ったことがありましたら何なりとお申しつけ下さい。今度はあなたの街にお邪魔するかも知れません。

それではまた。

Dead End


ども、Kardyでございます。
とうとう、オイラも華代ちゃんシリーズに参加させて頂く事になってしまいました。
どうかこのシリーズに汚点を残さぬ事を祈るのみでありますが・・・。

さて、今回の作品ですが、以前から話題に上っていた
「華代ちゃんの失敗」を軸に話を進めてみました。
ちなみに、変声に関する医学的な知識は、必ずしも正確ではありません。
引用の際はくれぐれもご注意ください。

でゅわっ!・・・もとい。

では。

1999年8月21日
24時間テレビの募金のうち、かならず数パーセントが使途不明として計上されるのはどうしてなんだろう
Kardy
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