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華代ちゃんシリーズ番外編  「パープル・カーク」

作:Zyuka


※ 「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照にしてください。

http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html

※ 「華代ちゃんシリーズ・番外編」の詳細については、http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan02.html
を参照にしてください。



 アホッダス共和国。そこで独裁政権のトップに立っている大統領、バーカ・マヌッケは世界的犯罪者といわれている。
 テロリストと裏でつながっているとか、隣国の資源を秘密裏に奪って国を発展させているとか、気に入らない人間は無実の罪で投獄して処刑しているとか、とにかく悪いうわさが耐えない。
 だが、証拠がないため、真実はわからないのが現状だった。

「だからこそ、暗殺してしまえってわけね」
 彼女は、そういいながらライフルに弾丸を込めた。
 彼女は…パープル・カークという名前の暗殺者である。
 まだ年若い女性。その他は、東洋人ということぐらいしかわかっていない。
 国籍不明、年齢不詳、ものすごく腕の立つ暗殺者。
 それが彼女だった。
「そろそろ、時間ね…」
 彼女の計画は、綿密だった。今日、バーカ・マヌッケ大統領は訪日する。
 独裁政権、自己中心的政府、自国以外のことは何も考えない大統領が、最近になってなぜ国交をはじめたのかはわからないが、これは願ってもないチャンスだった。
 空港に降り立った瞬間に狙撃する!!
 それで、アホッダスの反政府組織からの依頼は完遂だ。

 大統領専用機が、東京国際空港に降り立つ。
 そこからまず、一人の少女が降りてきた。
「……?あれは誰?」
 パープル・カークの頭の中には、大統領とその側近達の情報が完全に入っていたはずである。…その中に、あの少女はいない。
「まあ、予定外の出来事の一つや二つはあるでしょう。でも、私の計画は狂わない」
 パープル・カークの頭の中に、大統領の顔写真が浮かび上がる。その男が現れれば、打てばいい。
「……あれ」
 いつまで待ってもバーカ・マヌッケ大統領は降りてこなかった。
「…どうなっているの?」
 PPPPPPP……
 突如、電話の電子音鳴り響く。
「はい、もしもし…」
 電話にでる。その間も、飛行機の監視は怠らない。もしかしたら、バーカ・マヌッケ大統領がひょっこり顔を出すかもしれないからだ。
『カークか…?』
「その声は…サイレンス・ジョーズね…」
 サイレンス・ジョーズ…沈黙の鮫、彼はパープル・カークの同業者であった。彼もまた、国籍不明、年齢不詳。性別は、どうやら男らしかった。
『…お前、失敗したみたいだな…』
「まさか、あなたの仕業なの?」
『いや違う。俺もバーカ・マヌッケがターゲットだったんだ。
「…へえ…」
『だが、やつは現れなかった…これはどういうことだ?』
「私に聞かないで」
『少し調べてみる必要があるようだ。…お前も、協力するか?』



 所変わってこちらはアメリカ・FBI。EXP(超能力)開発室…
「説明を聞こうか、ロイド」
 そこの室長であるジムが、部下の一人に命令する。
「はい、皆様にお渡ししたのはかの独裁国家、アホッダスの大統領が代替わりしたという資料です」
 今このEXP開発室には、四人の男性と一人の女性がいる。一人は室長ジム、そしてロイド。後の三人は、ともにこの開発室に籍を置く者。すなわち超能力者たち、そのなかでもトップクラスの者たちである。
「アホッダスの大統領はほん数日前、バーカ・マヌッケからその娘、トップス・マヌッケに変わりました。このトップスという新大統領は、父親のバーカよりもはるかに優れた政治手腕を持っており、アホッダスでは初めての…いえ、世界中でもまれに見る善政をしいているという話です」
「それはいいことじゃないか?民が苦しまないわけだろ?」
 エスパーの一人、トニィが発言する。
「でも、その話には疑問点がありますわ」
 女性のエスパー、ビビアンが口をはさむ。
「一つ、前大統領に娘がいたなんて、誰も知らなかったこと。二つ、現大統領はいいとして、前大統領、すなわちバーカはどうしたのか?」
 彼女はタロットカードを取り出し、机の上に並べる。
「私のカードで占ってみたところ、バーカの命運はまだ尽きていません。むしろ、巨大な星に照らされて、ますます輝くと出ています」
「だけど、いなくなっちゃったってわけだろ?」
 最後の一人。この中では一番若そうな黒髪の少年…どうやら東洋人らしい…が声を出す。
「一人の人間が消えて、知らない別の人間が出てきたわけだ。こういった異常事態において、考えられる可能性は…」
「ターゲット」
 少年の言葉を、トニィが引き継ぐ。
「ギンガ、君が言いたい事はわかるよ」
 トニィの能力はテレパシー。近くにいる人間で、心をゆるしている者の考えならすぐにわかる。また、そういった人物なら、自分の思考を相手に伝えることもできる。精神を集中させれば、どんな人間の心の中もみとうせると言う。ただし、そのときはものすごく腹が減ってしまう。
「私の占いにも、はっきりと出ています。強く輝く星…」
 ビビアンの超能力は予知。本人は占いと言ってはいるが、その的中率は80%を軽く超える。ただ、彼女自信、および、彼女とつながりのあるものの事になると、とたんに的中率が下がってしまうのである。
「ということは、やはり現れたんだな。ターゲットが。我々FBIがのどから手が出るほどほしい人材」
 事務が人差し指で眼鏡を上げていう。
「超、がいくつもつく強力な力の持ち主が…」
「捕らえろ。その娘こそが、我らの未来を作る。そう」
 一枚の少女の写真が、机の上に置かれる。
カヨ・マシロ を…」

「娘…?」
『ああ、すまなかった、パープル・カーク。我々反政府組織には、その情報が届いていなかったのだ』
 電話の相手は、パープル・カークに大統領暗殺を依頼した反政府組織の一人だった。今彼女は、アホッダスの都市の一つにいる。
『あの方は、悪魔のような父親とは違う。まるで、女神のような方だ…』
「女神…?」
『そう、我々を暖かく受け入れてくれた…あなたにはすまないが、この依頼……なかったことにしてはもらえないだろうか…?』
「…わかったわ…」
 元々、殺人は好きではない。彼女が殺すのは、どうしても許すことができない人物だけだった。父親がどんな大罪人でも、娘に罪はなかろう。
「かなり善政をしてるみたいだしね」
 彼女は電話を切り、新聞を広げる。そこにはアホッダスの新大統領、トップス・マヌッケの記事がでかでかと載っていた。
「ずいぶん甘い考えだなパープル・カーク…」
「サイレント・ジョーズ…」
 いつの間にこのばに現れたのか…と言っても、サイレント・シャークはこういった芸当が得意な暗殺者だ。音も気配もなく、相手に近づき…ダンッ!!
 それが彼の“サイレント”の由来である。後、“ジョーズ”の由来は、彼の首筋に残る三本の傷跡…これが鮫のえらのように見えるからついたのだ。
「娘は父親の血を引いている。今は女神のようだ、仁君だ、といわれていても、いつ父親のようになるかはわからない。それなら、いっそ今のうちに…」
 ジャキ…サイレント・ジョーズの愛銃、ワルサーBBKの檄鉄が外れる。
「…邪魔をする気か?パープル・カーク…」

「それで僕はその子に頼んだんだ。僕らは大統領にひどい目にあわされてきた。だから大統領が、思いやりがあってやさしくて、すばらしい女神みたいな人がいいって……」
「なるほど、その子は君のその願いをかなえたわけだ」
「うん、そうなのかな。だって、今の大統領は僕の理想にぴったしだもの」
「ところで、その子はどこに行ったかわかるか?」
「わかんない…」
「わかった、じゃあ…」
「その子からもらった物が何かあるはずだ。渡してもらおうか」
 ジムの質問に答えていた少年は、ギンガの言葉には反応しなかった。
「…渡してくれ」
 ジムがそう言うと、少年小さな紙切れを5人に手渡した。
「間違いない…ギンガ、読んでくれ」
「…了解」
 そこにかかれているのは「日本語」だった。なら、日本人であるギンガが読むにふさわしい。
「ココロとカラダの悩み、お受け致します。
               真城 華代」

「…ビンゴ!!」
「やはり、大統領の突然の交代劇には、カヨ・マシロの影があったのね」
「それで、その子はどこへ行ったかわかるか…?」
「ううん…」
「わかった…もういっていい」
 サムがそう言うと、少年は走っていった。ちなみに、サムの能力は催眠術。と言っても、遥に高度なマインド・コントロールと言ったほうがいい。ついでに、ロイドの能力はテレポート。アメリカにいた5人が、このアホッダスにいるのはそう言うわけである。
「さ、次はお前の出番だ、ギンガ。お前の目で、彼女を探せるか?」
「やってみよう」
 ギンガは、右目の方眼鏡を外す…そこには、左の黒い瞳と違い、銀色に輝く瞳があった。

「俺は…直接恨みがあるんだ。バーカ・マヌッケにね…」
「…それで、その血を引く現大統領を殺そうっていうの?」
「今の大統領の姿に、惹かれたのか…パープル・カーク」
「…おかしい、おかしいよ。サイレント・ジョーズ…」

「…何か、今、銃声がしなかったか?」
「おい、ギンガ。そっちじゃないだろ。ターゲットは…」
「気になることがある。みんな、先いってくれ!」
「お、おい、ギンガ…」
「行きましょう」
「ちょっと、ビビアン!?」
「ギンガ、あなたには今、大きな転機が訪れようとしています。私には、わかります」
「君は、近しい人の未来は見えないんじゃなかったけ?」
「…あなたが、離れていくんです。だから未来が見えたのですわ」
「…感謝する」
 そう言ってギンガは四人の仲間から離れていった。

「俺は、ただしい事をしたのか…?」
 サイレンス・シャークは自問する。
「そして、これからすることはただしいのか?」
 なぜ俺は、パープル・カークに向けて引き金を引いたのか?
 すべては、あのときから狂っていた。あの時、飛行機のタラップから下りてくるトップス・マヌッケを見た瞬間から…
「あの時、俺は父母の仇であるバーカ・マヌッケを殺すためにあそこへ行った」
 さび付いた短剣を、握り締める。
「いくら警備がいようと、どんな妨害があろうと、暗殺をやり遂げる…そう心の誓っていた。だが……」
 タラップから降りてきた少女、それを見たとき…一瞬、女神が舞い降りたのかと思った。運命を感じた。
『今の大統領の姿に、惹かれたのか…パープル・カーク』
 そういったのは自分だ。そして、自分は彼女を撃った。
 なぜ…………?
 同業者である以外、特に関係のない女性だった。
「…もしかしたら、あの大統領の姿に惹かれたのは自分のほうだったのかもしれない…」
 ちょっと、口から出た言葉。それは、恐ろしい仮説だった。
「俺が、惹かれた…?」
「え、ひかれたってなんですか?」
 突然、聞こえてきた言葉に、サイレンス・ジョーズは思考を中断される。
「……」
 沈黙の鮫…気配も物音もなしに標的に近づくことからついた異名…
 その異名を持つ自分が、気が付かなかった?
「引く、引く物…車…そんなわけないし…ヒク、轢く、退く…」
 サイレンス・ジョーズの隣に現れたのは8、9歳ぐらいの女の子。白いつばの帽子をかぶった、プリティ・リトル・レディ……
「引く、車で轢く、荷物を引く、引き算……」
 少女は、なにやら、一生懸命考えている。
「お、お前は、誰だ……?」
「あ、ごめんなさい。私は、こういうものです!」
 少女は、そう言って一枚の紙をサイレント・ジョーズに手渡した。
 そこには、
「ココロとカラダの悩み、お受け致します。
               真城 華代」
 とかかれていた。
「…はあ?」
 わけがわからず、一瞬きょとんとするサイレンス・ジョーズ。
 と、
「あ、ピアノ!!」
 突然、少女…真城華代が叫ぶ。
「ピアノを弾く、だね、お兄ちゃん!!」
「な、何………?」
 サイレンス・ジョーズにはもう、ついていけなかった。
「お兄ちゃん、ピアニストになりたいのね!じゃあ、華代がその願いをかなえてあげる!!」
 そして華代は、サイレンス・ジョーズの体をぽんっとたたいた。


「どうなっているんだ!?これじゃあの子を追いかけられない!!」
 ジム、ロイド、トニィ、ビビアンの4人は、突如出現した人ごみに行く手を阻まれた。
 どうやら空き地の真ん中で、誰かがピアノを演奏しているらしい。そのすばらしい音色に町の人たちは魅了されて、集まってきているのだ。
 ピアノを弾いているのは、海の青のような美しいドレスを着た、妙齢の美女だった…


「大丈夫か!?しっかりしろ!!」
「うん…?」
 ギンガは、街のはずれの目立たない場所に倒れていたパープル・カークを助け起こしていた。
「…っつ!!」
 パープル・カークの左腕に激痛が走る。サイレント・ジョーズに撃たれたさい、無意識にかばっていたのだ。
「…日本人、かしら?」
 パープル・カークは、目の前にいるのが同国人と知り、少しだけ気を緩める。
「ああ、僕は七瀬銀河。…君は?」
「…星見、紫鶴…」

 それが、最初の出会いだった………………

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「とまあ、これがきっかけで僕達は出会い、つきあって、結婚したわけさ!!」
 七瀬銀河ことハンター7号は、得意げに締めくくってあたりを見渡した。
「あ、あれ、あれれれれれ……?」
 ここはハンター本部の会議室。かなり広い部屋に、ハンター7号と、もう一人、事務のOLがいるだけで、閑散としていた。
「…あ、あの、桃香ちゃん、皆は?」
 7号に桃香と呼ばれた事務員の女性は軽くうなづいて、目をごしごしさせる。どうやら半分寝ていたらしい。
 彼女の名前は安土桃香。7号とは同期入社(笑)で、ハンター事務の水野さんと沢田さんの後輩に当たる。年も近いせいもあり、7号と行動することが多い。大きな丸めがね、みつあみ、年より3っつていど下に見られる。そんな女性だった。
「…えっと、いちごさんは『くだらない与太話をこれ以上聞きたくない』といわれて部屋をでられました」
「へ……?」
「3号さんは『後で要約して聞かせて』といわれて、5号さんは『腹減ったー飯』と言われて、りくさんは『もう飽きた』と言われて、水野先輩は『誇大広告ね、ジャ○に電話するわ』と言われて、沢田先輩は『いちごちゃんのプレゼントでも選んでくるわ』といわれて、それぞれ出ていかれました」
「え…皆、僕と紫鶴の馴れ初めの話、聞きたがってたじゃん」
「それは、ほどによると思いますけど…あんなうそっぱっちな話、誰が信じるんですか?」
「い、いや…」
「この間、紫鶴さんにお会いしましたよ、私」
「え…?」
「いい人ですね。7号さんの奥さんにはちょっともったいないって感じでした」
「あ、そう…」
「だから、うそはすぐばれます。今度は本当の話を聞かせてくださいね」
 そう言って、桃香も会議室を後にした。
「……そんなにうそっぽい話だったかな?」
 一人取り残された7号に向かって、どこからともなく一陣の風が吹いた。
「へくしっ!」

−了−


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