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ある噂

 華代ちゃんシリーズ番外編



よっすぃー 作


「華代ちゃんシリーズ・番外編」の詳細についてはhttp://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan02.htmlを参照して下さい




 その日、いつものようにパソコンを立ち上げた僕は、これまたいつものようにネットサーフィンを始めた。
 いつも巡るサイトも一巡し、さして興味をひく更新もなく、いささか欲求不満だった僕は、リンクを辿って新規開拓をすることにした。
 「こことここはこの間行った。ここもチェック済み」
 そんな感じでいくつかのリンクを辿っていくと、あるチャットルームに到達した。
 別段興味があったわけでも無かったが、入室しないでもリアルタイムでログを読むことが出来たので、画面を止めて読み出した。

 「悩み事なんだけど、聞いてくれる?」
 そのことから始まったチャットは異様なまでに盛り上がっていた。
 『なに?』
 [どんなこと?]
 「実はヒゲが濃くて…接客業だからマメに剃らないといけないのだけど、肌が弱いから血まみれになっちゃって…」
 自分も同じ悩みがあったので、思わず画面に食い入ってしまった。
 僕も営業職だから、ヒゲはこまめに剃らないと印象がよくない。とはいえ、ヒゲが強くてちょっとあてたくらいでは全然剃れず、刃を思いっきりあててカミソリ負けしてしまうことも一度や二度ではない。
 『あるある』
 [自分もだ]
 チャット参加者も賛同したみたいだ。
 【永久脱毛したら?】
 「そりゃ、それが一番だけど、出費がねぇ…」
 うぅ、身につまされるなぁ。
 [そそ、人生それだけじゃないからね]
 【一時的だったら脱毛クリームという方法もあるよ】
 [でも、あれ、肌とかに影響でない?]
 「場所が顔だけにね」
 【コレなんかお奨め】
 特定の銘柄を指定していた。よし、メモしておこう。
 チャットってバカにしていたけど、結構ためになることもあるんだな。
 「ヒゲもそうだけど、ズラが蒸れるしねぇ」
 【○○さんもズラしているの?】
 「しょうがないじゃない。人前に出る仕事なんだから」
 そんなものなのかねぇ〜。僕は幸い髪の毛には不自由していないので、そういうことには縁がない。でも工場勤務の連中から、「ヘルメットだと夏場は蒸れて、髪の毛が大量に抜けるんだよ」という愚痴を聞かされたことがある。多分それと同じなんだろうな。
 「時代劇じゃないから、手ぬぐいを入れるってわけにはいかないでしょう?」
 『そうだね』
 【それで元の髪の毛が抜けたら本末転倒みたいだし】
 [うんうん]
 具体的に誰々とは言えないけど、その手の人が聞いたら身につまされるんだろうなぁ。
 しばらくそういう肌や頭髪の悩みについての相談や、対処法についてのログが流れた。
 全然役に立たないものもあったが、中には興味を惹くものや意外な活用法などがあり、結構ためになったと思う。
 そうこうしているうちにログがワンパになり、少々飽きだしてきた。仕事のためのウインドも開いたし、そろそろ潮時かな?と思っていた矢先、新しくログインしてきた奴がいて、状況が一変した。
 明るい口調で入ってきたそいつは、全く違った話題をぶち込んだ。
 {旅行から帰ってきたよ♪}
 「おかえり〜」
 【お帰りなさい】
 [てことは、やってきたの?]
 {もちろん。モロッコにスッゴイ人がいたのよん}
 [そんなにスゴい?]
 {も、カンペキ。モンクの付けようも無いくらい。名刺貰ってあるからアップしようか?}
 「して」
 【是非】
 {じゃあ、ここ。http://www.○★▲◆………}
 最後に参加した奴がなにかをアップした途端、ログの進行が突然とまってしまった。
 僕は他のウインドゥで仕事もしていたので、それ程気にならなかったが、5分くらい全く更新がなかったようだ。
 しばらくしてログが動き出すと、信じられないような事が書き込まれていた。
 「すごいわ!」
 『信じられないけど、積年の夢が叶っちゃった』
 [これで日陰者扱いされなくて済んだわ]
 一体どういう事なんだ?
 {でしょう。心だけでなく身体もカンペキに女の子になれたのよ。あのお方様々だわ}
 モロッコで女の子になるって、性転換の医者のことか?でも最後に参加してきた奴はともかく、チャットに参加しているだけで、一体どうして転換できるんだ?
 気になって僕はアップしているURLにアクセスした。
 
 画面に出てきた映像は1枚の名刺だった。名刺の肩書きにはこんな事が書かれていた。

 ――ココロとカラダの悩み、お受け致します。 真城 華代――

 なんじゃこりゃ?
 そう思ったが、画面のログは歓喜の声しかアップされていない。覗いていたのが、ニューハーフのチャットだったなんて……
 しばし呆然としていた僕だったが、玄関をノックする音に不意に我に返った。
 「ごめんくださ〜い。お兄ちゃん、私のことを呼んだでしょう?」
 明らかに少女の口調の女の子が玄関先でドアを叩いていた。


                                FIN

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