華代ちゃん[番外編]

ライバル

作:Tarota

「華代ちゃんシリーズ・番外編」の詳細については、以下のページを参照して下さい。
http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan02.html



こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に、私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたまた私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。

さて、今回のお客様は…。


誰にでも、競い合う相手がいる。

学校で、会社で、街で、競技場で…それが、ただの遊びであったとしてもだ。

個人間に留まらず、企業も国家も競争を続ける。

そうした人間の競争心が、世界を支え、世界を発展させてきたといっても過言ではないだろう。

神田洋介と、神保昭は、終生のライバルであった。

終生といっても、彼らはまだ高校1年であるが、小学校から今日まで競い合ってきた、間違い無くライバルであった。

しかし、彼らが争っている次元はあまり高いとは言えない。

例えば成績。200人中の100番前後を争っている。

例えばスポーツ。団体競技では互いの戦いに夢中でチームプレーが出来ず、個人競技ではミスの連続で自爆決着という盛り上がらない戦いになっている。

例えば格闘ゲームの対戦。お互いでは良い勝負を繰り広げるが、大会に出れば2人共2回戦止まり。 といった、まぁそんな感じのライバルだ。

そんな2人の関係に大きく差がつく出来事が起きた。

なんと洋介に彼女ができたのだ!

しかも、それなりに可愛い娘だ。

昭は大いに焦った。

何としてでも彼女を作らねばと、躍起になっていた。

今日も学内をうろつき、これはと思う娘に声をかけては玉砕していた。

街に出てナンパするなんて事が出来ないのも、昭らしいところではあった。


それはさておき…

今、この学校の校舎裏で、ちょっとした騒ぎが起きていた。

「な、なんだよこれ…」

学生服を着た女の子が、自分の胸を掴みながらそう叫んでいた。

「どう、これで、堂々と女子更衣室に忍びこめるでしょ!」

小学生くらいの女の子が、学生服の女の子に話し掛ける。

「こ、これじゃ意味ないよ!」

「あ、そうか、ごめんね!」

女の子が指をパチンとはじくと、学生服が見る見る内に形を変え、セーラー服に変化した。

「うーん、完璧!それじゃ、お姉ちゃん、頑張ってね!」

呆然としたセーラー服の女の子を残して、小さな女の子はその場を立ち去っていった。


神保昭は、ここ数日日課になっているナンパの旅にでていた。

しかし、今日は何かがおかしい。

彼の見知らぬ美少女が、やけに多いのである。

しかも、挙動不審な娘ばかりだ。

楽しそうにスキップしながら歩いている娘。

廊下に座り込み、泣いている娘。

「おれは男だぁ〜」と、意味不明な言葉を口にしながら廊下を爆走している娘。

自分の胸をゆさゆさと手で揺らしながら、にやにやと笑みを浮かべてる娘。

流石の昭も、こんな娘達には手が出せないでいた。

一体どうしたっていうんだ?

昭は暫くその光景を眺めていた。


「はぁー」

大塚悟は、何度目かのため息をついた。

彼の視線の先に映るのは、テニスコートで華麗にプレイする一人の女性徒。

かれこれ20分も前から、悟は木陰に隠れ彼女の事を眺めていた。

「素敵だ…」

うっとりとした瞳で彼女をただ見つめ続ける。勇気を出して声をかけたことは数回しかない。それも挨拶程度でだ。

「おーっほほほほ」

彼の鑑賞タイムは突如起こった高笑いによって打ち破られた。

「お悩みのようですわね」

声は彼の真後ろから聞こえてきた。

ハッとなって振り返る。

そこに一人の女性が立っていた。

午後の陽光を一杯にあびて、きらきらと輝く金の髪。

胸元が大胆に開かれた真っ赤なドレス。

そんな派手なドレスがぴったりと似合う、見事なプロポーション。

成熟した女性の色香が漂っている。

まるで、社交パーティから抜け出してきた貴婦人のようだ。

彼女の手には外見とは不釣合いな黒い大きな鞄が握られている。かなり重いらしく、両手で引きずるように持っている。

悟は呆然とその貴婦人を見つめていた。

「初めまして、わたくし、こういうものでございます」

一分の隙もない動作で名刺を差し出す貴婦人。

それは金箔が散りばめられた派手な名刺であったが、書いてあることはやけに簡素だった。

『心と体のお悩みに
 ゴージャスかつアカデミック
 にお応え致します
          三条院 沙耶』

「さ、沙耶さん?」

「ええ、サーヤとお呼びくださいませ、悟さん」

ぞくっと背筋がムズ痒くなる。

「ど、どうして僕の名前を?」

普段は「俺」を使っている悟だが、緊張のあまり、そんな一人称を使ってしまう。

「あら?お客様の名前を覚えるのも仕事のうちですわ」

「し、仕事?」

もう一度名刺を見る。

そういえば、悩みがどうとかと声をかけられた気もする。

「悩みの相談とかなんですか?」

「ええ、お客様の悩みを解消し、幸せになって頂くのが、わたくしの勤めですわ。
 悟様は、あの娘の事でお悩みですよね」

沙耶がテニスコートに目をやる。

ちょうど、彼女がスマッシュを決めた瞬間だった。

言われて悟は、彼女の事で頭が一杯だったことを思い出す。

それは、ここ一ヶ月の間、片時も忘れたことなど無かったはずの彼女の事が、彼の頭から抜け落ちてたということだ。

「あの娘と仲良くなりたいのかしら?」

「あ、ええ、まぁ」

「それとも、彼女の心が掴みたい?」

「う、うんそうですね」

「彼女の心を支配したい??」

ごくっ…

沙耶の問い詰めに、恐怖すら感じる。

悟の本能が、はっきりと答えるのを妨げているような感じだ。

懐柔するように、沙耶は甘い声で囁く。

「本当はどうしたいの?」

彼女の甘美な囁きの前に、悟の口から本心が漏れた。

「彼女を僕のものにしたいんだ…」

「うふっ。よろしくてよ」

鞄の中から何かを取り出す沙耶。

それは、一本の薬瓶であった。

「これさえあれば、あなたの悩みは解決するわ」

「なんですかそれは?」

「魔法のお薬よ。どう、欲しい?」

なるほど、悩みを聞いて、怪しい物を売りつけるというようなオカルト商法だったのか。美人なだけに断れる男は少なそうだ。

「……高いんでしょう?」

「あら、代金は結構よ。お客様が幸せになってくれるのが、わたくしにとっての無上の喜びですから」

無料奉仕ということは、効き目があるまで常用しないと云々とかいうのかもしれない。

が、まぁ美人の誘いなら試してみるだけならいいかな?

「どうすればいいんですか?」

「まず、相手のことを想いながらその薬を飲む事。
 それから、その相手と目を合わせれば、あなたの望み通りになるわ」

「目を合わせる…」

「あら?どうやら彼女、休憩時間に入ったみたいね。
 チャンスじゃないかしら」

確かに試すなら今がチャンスと言えた。

悟は沙耶に挨拶してその場を去ると、彼女が休んでいるベンチのそばへと移動した。

ポニーテールをした後姿に意識を集中し、薬瓶を開け中の液体を飲む。

甘い匂いのドロっとした液体だった。それを一気に流し込む。甘いような苦いような、不思議な味がした。

それから、金網越しに彼女に声をかける。

「笹岡さん!」

彼女が振り返る。目と目が合う。

「なに?」

と彼女の問いかけを聞き終わる間もなく、視界が揺れ、地面に倒れこんでしまった。

揺れる視界の中、最後に映ったのは、ベンチに倒れ込む彼女だったような気がした。


・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・


「…さん」

「…かさん」

誰かの揺さぶりで目を覚ました。

「ああ、良かった。大丈夫かい?
 練習に根つめすぎなんじゃないのかい?
 暫く休んでいるといいよ、じゃあね!」

見知らぬ男は、そういい残すと視界から消えていった。

何がどうなったんだ?

気が着くと、ベンチに横になっていた。テニスコートが何の障害も無く見える。

あれ?いつの間に内側に入ったんだ?

上半身を起き上がらせると、頭の後ろで何かが揺れた。

不信に思い、手で握ると、それは、柔らかい髪の毛の束であった。

髪の束が後頭部で束ねられている。試しに引っ張ってみると痛みを感じた。

ポニーテール!?

そう理解した瞬間、全身に違和感を覚えた。

学生ズボンを履いているはずなのに素足のような…

長袖のシャツを着ているはずなのに素手なような…

右腕に何か巻かれているような…

はっと、自分の体を見下ろす。

白のシャツと、白のスカートが見える。それは、よく見知ってはいたが、着たことはない服……女子のテニスウェアーだった。

短いスカートから、健康的に日焼けした2本の足が伸びている。剥き出しの2本の足を伸ばすと、白いソックスと、テニスシューズを履いていた。自由に動くところをみると、自分の足のようである。

白いシャツには、控え目にだが、2つの膨らみがある。

それを確かめようと思い、前に持ってきた腕は、日焼けした細い腕であった。手首の所にリストバンドが巻いてあった。

ごくりと、唾を呑みこむ。

鏡はないかと、辺りを見回した。

そのとき、背後の金網が、激しく揺らされる音がする。

振り返るとそこに、自分がいた。

目の前の自分が、俺を指さし、おかま言葉で言った。

「あたしは、笹岡洋子よ!あたしの体をしたあんたは誰?」

「俺は…大塚悟です。俺の体にいるのは片岡さんなんですか!」

俺の口から漏れたのは、女の声だった。

やはり、俺と笹岡さんの体が入れ替わってしまったという事だ!

『俺が彼女になってどうするんだよぉー!』

おーっほほほほ…

これで、彼女はあなたのものですわ。

あなたの望むときにいつでも会え、あなたと共に感じ、あなたの思うままに動きますわ。

まさに、彼女はあなただけのもの。

お悩みが解決されて、本当に良かったですわね。


ま、わたくしにかかれば、ざっとこんなものですわ。


神保昭が、廊下に突っ立って挙動不審な女の子達を眺めていると、不意にお腹のあたりになにか柔らかいものがぶつかってきた。

視線を下にやると、白い物体が映った。その物体は、昭から離れると、鼻をすりすりと可愛く摩って痛がった。

「いたた…」

それは、小学生くらいの女の子であった。

「あ、大丈夫かい?ごめんよ、ボーっとしてたからぶつかったんだね」

「あたしの方こそ、ちょっと余所見してたから、ごめんなさい」

女の子がぺこっと頭を下げる。

「あ、やっぱり君もこれ見てたのかい?何か変だよね…」

廊下でパニックになってる女の子の一団に目をやり、小声で昭が言う。

「うん。覚えがない人がいるなぁって…」

さり気なく女の子が言った。

「え?覚え??」

「あ、ううん。何でもないの。
 それじゃねぇ、お兄ちゃん」

「あ、うん、気をつけてね。バイバイ」

女の子は足早に消えて行った。

しかし、なんで学校に小さな女の子が?誰かの妹なのだろうか?

昭もパニックを続ける場を後にし、ナンパの旅の続きに出た。


「やっぱり、いい事した後は気分がいいわね!」

スキップしながら学校の敷地を歩く女の子。

「あら?華代さんじゃございませんこと?」

沙耶の問いかけに、華代と呼ばれた女の子が振り返る。

「あ、沙耶お姉ちゃんだ」

「もう、サーヤとお呼びなさいと何べん言えば解かるんですの」

「沙耶お姉ちゃんもこの学校に来てたんだね♪
 いつもは豪邸とか舞踏会とかにしか行かないのに…」

「うっぐ…偶然よ、偶然、たまたま通りかかっただけですわ」

「そうか、沙耶お姉ちゃんが来てたから、学校内が大騒ぎになってるんだね」

「あら?騒いでいるのはあなたのお客の方じゃありませんこと?」

どっちもだ!と突っ込みを入れたいが、怖いからやめておこう。

「華代さん、少しは商売になれましたかしら?」

「沙耶お姉ちゃん、まだあたしの事、子供扱いするの?
 華代はもう一人前の優秀なセールスレディなんですからねぇ!」

「あら、本当に?それじゃあ、どちらがお客様の悩みを上手に解決できるか勝負いたしましょうか?」

「望むところよ!」


校門前まで来ていた昭は、その女性の存在にくぎ付けになった。

夕日にさらされ、輝く金の髪の毛。

場違いな服装の筈なのに、場の方が間違って見えるほど、完璧に着こなされた真っ赤なドレス。

こんな綺麗な女性が、なぜ学校の校門にいるのだろう?そんな疑問をはさむ前に、昭は声をかけていた。

「お嬢さん、何かお困りですか?良かったら僕が手を貸しますが…」

女性が振り返る。予想通り、美しい顔だ。

しかし、女性は一人ではなかった。彼女の向かいに小さな女の子が見える。

それは、先ほど廊下でぶつかった女の子であった。

「あなたの悩みは、彼女が欲しい事ね!!」

女性と女の子が同時にそう叫んだ。

余りに突然の事に、こくこくと頷き続ける昭。

「解かりましたわ、その悩みわたくしが解決いたしますわ」

「よし、その悩みあたしが解決してあげるね!」

またまた同時に言う2人。

「はいこれ!」

と、またも同時に名刺が差し出される。

女の子の方の名刺には…

『ココロとカラダの悩み、お受け致します。
               真城 華代』

女性のほうの名刺には…

『心と体のお悩みに
 ゴージャスかつアカデミック
 にお応え致します
          三条院 沙耶』

と、同じような事が書かれていた。

「相性ぴったりの方が現れれば言い訳よね。それなら簡単ですわ。

 あなたと精神的に近い存在を呼び寄せればいい事ですもの」

沙耶という名刺を出した女性は、そんな事を言うと、素早く鞄の中から短い棒を取り出した。

良く見ると、銀の横笛であった。

「華代さんお先に」

沙耶は、口早に女の子に向かってそう言うと、銀の横笛を構え、艶やかなその唇から息を吹き込んだ。

美しくも怪しい旋律が横笛から漏れ出す。

その音楽を静聴していた昭の目に、良く知った人物が飛び込んできた。

終生のライバル。神田洋介その人である。

洋介は引き寄せられるように、ふらふらとした足取りで現れる。校門の外を歩いているところを見ると、途中まで帰ったところを引き返してきたようだ。

「よ、洋介!何しに戻って来たんだ?」

「知るか!あ、足が勝手にここまでは来たんだ!」

昭の隣まで来ると、洋介の足はようやく歩みを止めた。

「あら?男の方が来てしまいましたわね」

「それなら、えい!」

華代という名刺を出した女の子がそう叫ぶと、洋介の体が変化し始めた。

まず目に付いたのは、長く伸び始めた髪の毛。それから縮み出した身長。みるみるうちに、学生服がだぶだぶになっていく。そして、胸とお尻がほのかに膨らむ。

あっという間に、洋介の姿は可愛い女の子に変わっていた。

「な、なんだよこれ〜」

C.V.丹下桜とでも表示されそうな可愛い声をあげながら、学生服の袖をつまみ、自分の胸を見下ろす可愛い少女。顔も愛らしく変わっている。

その可愛さたるや、元の姿を知っていても充分許容範囲になるほどだった。

だから、昭もたっぷり2分ほど鑑賞した後、当然のように声をかけた。

「お嬢ちゃん、一緒にお茶でもどう?」

「何だよ昭。俺は、洋介だよ。変な事言うなよ。それより、何がどうなってるんだよ〜」

「まだ状況がつかめてないのか?これでどうだい?」

昭はなぜか用意してあった手鏡を見せる。

「こ、これがオレなのか?」

鏡に映った自分の顔にドキリとする洋介。

「そういうことだ。何だか良く解からんが、こうなった事を知ってるのは俺だけだ。
 さぁ、秘密を共有している者同士、仲良くしよう!!」

がばっと洋介の小さい体を包み込む。柔らかい感触が心地よい。

「おい、やめろ!
 変態か!こら!変なところさわるなぁー!!!」

洋介の叫びが夕日に吸い込まれていった。


そんな2人のやり取りを尻目に、華代と沙耶もまた言い争っていた。

「えへへ!華代の勝ちね!」

「何言ってるんですの?先に手を出したのはわたくしですよ。人のお客を横取りして」

「だって、勝負だって言ったじゃない」

「…。まぁ、引き分けと言う事にしておいても宜しくてよ。
 それより、相変わらず商売の基本がなってませんわね」

「また、『物を売りもしないで…』とか言うの?」

「その通りですわよ。やはり物を売ってこそ本当のセールスレディと言えましてよ」

「いいじゃないの、沙耶お姉ちゃんだって、お金貰ってないからセールスって言えないでしょ」

「あら?わたくし、それほどお金に困っておりませんもの」

「沙耶お姉ちゃんってば………」

「華代さんこそ………」

2人の言い争いも暫く続きそうである。

<FIN>


★あとがき★

どうも、華代ちゃん番外編の栄光の1番を書かせていただきました「Tarota」です。

なんでこんなに早いかは内緒です^^;;

真城さん、お手数おかけしましたm(__)m

サーヤちゃんが華代ちゃんを食ってしまいましたねぇ。

サーヤは、一応先祖返り?なんで、嵌めにいこうとするキャラです。

まぁ、基本は自分の「見栄」のための能力行使なんですが。

ちなみに、華代ちゃんと違って能力発揮には道具の手助けが必要という設定もあります。


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