シアワセのかたち
作K



 白い床、薄いクリーム色の壁、次々と続く多くの窓、私は新しい学校の廊下を歩いている。
朝のホームルームが始まるか始まらないかの時間。ざわざわとした雰囲気が教室からあふれ出て、廊下ににまで充満している。
 (ここが私の新しい学校か、うまくやっていけるかな。うんん、うまくやっていけるかな?でなく、うまくやってくように努力しなくっちゃ。でないと・・・。自分のシアワセを自分で作っていくって決めたんだから。)
 私は、窓の外を見上げた。真っ青な空が広がっている。今こうしてすがすがしい空を見上げることが出来るだけでもシアワセにひたれた。太ももに、まとわりつくひざ上のスカートの感触、さらさらと首あたりにふれる髪の感触、すべてが心地よく感じられる。
「川村さん、ここがあなたの今日からの教室、二年二組ですよ。あなたを紹介しますから、さあ、入って。」
 ここまで私の前を歩いていた先生が振り返って私に言った。
「はい。」
 私は答え、先生に続いて教室の入り口をくぐる。この瞬間はとてもドキドキする。私が教室に入ると教室内の生徒が一斉に私の事を見た。みんなのささやく声が私の耳まで聞こえた。
「あのこが転校生ね。」
「あっ、かわいい。」
「かわいいというより、美人系じゃない。」
「スタイルもよさそうだし、ずるいなー。」
「でも、チョット冷たそうな感じしないー。」
「うんうん、表情あまり表にださなそー。」
 みんなのざわめきが止めどもなく続きそうである。さすが女子高。
「さあ、みんな。おしゃべりの時間はここまで、朝のホームルームを始めるわよ。」
 (あ、この先生の一言で教室が静まった。この先生すごいな。)
「さて、今日からこのクラスに転校してきた川村さんです。川村さん自己紹介してください。」
「はい、わたしは川村志衣(かわむら・しい)です。東京の学校から転校してきました。この場所にもなれてなく、女子高も始めてなのでなれないことも多いですが皆さんよろしくお願いします。」
 私は言い終わった後みんなを見まわした。大体が好機の視線だが、冷たい視線も感じられたような気もした。
「それじぁあ川村さんは、あそこの空いてる席に座ってくださいね。」
「はいはい、ここですよ。空いてるのは私の隣でーす。」
「小笠原さん、見れば彼女も分かりますからそう騒がないで。川村さん、騒がしい小笠原さんの隣の席です。」
「そんなー、かってに騒がしいなんて決め付けないでくださいよ。この明るさが私の取得なんだからー。ね、志衣ちゃん。私、小笠原美紀。よろしくね。」
 会話の前半は先生への反論、後半は私への挨拶になっていた。
 (志衣ちゃんか、そう呼ぶのは私のお母さんと一緒だな。)
「よろしくお願いします。小笠原さん。」
「志衣ちゃん・・・、ひとつお願い。私はあなたのことを志衣ちゃんと呼ぶことに決めました。私のことは美紀って呼んでね、みんなそう言ってるし『小笠原さん』なんて堅苦しいし、くすぐったい感じしちゃうもん。」
「うん、よろしくね。美紀・・・ちゃん。」
「うーん、私にちゃん付けですか。まあしょうがないでしょう、志衣ちゃん育ちよさそうだし呼び捨てできなそうだもんね。」
「そろそろ、授業を始めたいんですけど。よろしいですか騒がしい小笠原さん。」
「はーい、しずかにしまーす。」
「それがうるさいんです、さあ授業はじめますよ。」
 やっとクラスの中が落ち着き授業が始まった。それにしても、小笠原さん・・・美紀ちゃんの明るさはすごいな、先生に対しても何のきがねもない。私も見習わなくっちゃ、明るく前向きに生きることに決めたんだから。


 そして、私は休み時間のたびに質問攻めとなった。何かと答えにくいこともあったけれど、美紀ちゃんが何かとフォローを入れてくれたりした。美紀ちゃんは、とにかく明るく無邪気、裏表のない子で好感をもてた。誰に対してもこういうオープンな性格らしくクラスでも人気者らしい。こういう子にはじめに知り合いになれたのはシアワセだった。
休み時間といっても授業間の休み時間はたかがしれていたので、やはり時間のたっぷりある昼休みがもっとも質問を受けることとなった。
「・・・じゃあ、川村さんは普段もお化粧とかしないんだー。」
「うん、めんどうだしやらないね。お母さんはやりなさいって言うけど。」
「志衣ちゃん、お母さんの言うとおりだよ。化粧は女のタシナミだし、女の子はやっぱり綺麗でなれれば!。」
「美紀,美紀。あなたは化粧でしっかり化けないといけないけど、川村さんはスッピンで十分可愛いんだからいいの。自分のことと他人のことを混同しない!。」
「あー、真子ー。ひっどーい。私がスッピンじゃ見られない顔みたいじゃない。この花の女子コーセーの私に向かって。」
「ところで川村さん、向こうの学校も女子高だったの。」
「いえ、前の学校は共学だよ。」
「あっ、真子。わたしのスッピンの問題から話をそらせて。へっ共学だったのじゃあ彼氏とかいたんでしょ。」
「えっ、その・・・。彼氏はいませんでした。」
「えっ、うそー。東京の学校では川村さんみたいにこんな可愛いこをほっとくのー、でも仲のいい男と友達とかはいたんでしょ?。」
「えっ、まー親しい程度の友達らいたけど。」
「なんだ、志衣ちゃんやっぱり彼氏いたんじゃない。男の子で親しいと言える友達がいたら十分彼氏だよ。やっぱりねー志衣ちゃんをほっとくわけがないよね男共が。美人でおしとやかなんだから。」
「み、美紀ちゃん・・・。そんなのとちがうから。」
「あっ、志衣ちゃん。うつむいて赤くなってる、かーわいー。表情に余り出てないけど態度に感情が素直にでるタイプね。」
「うん、川村さんてキリッとした美人で一見冷たそうに見えるけど、感情が表に余り出ないだけで話してみると印象が違って素直でかわいいね。」
「え、うっ。」
「あー、志衣ちゃん。ほめられてまた赤くなってるー。ほんとに可愛いんだからー。」
 話がこんな方にいってしまい、私は下を向いてるしかなかった。
「きゃっ。」
 何の脈略もなくそんな声が聞こえたので、私が顔をあげてそちらを見上げるとさっきまで私達の輪にいなかった娘が美紀ちゃんの隣にいた、真子ちゃんを突き飛ばしたようであった。
「教室のこんなところでたむろってないでよね。邪魔になるじゃない。」
「ごっ、こめん。」
「ふん。」
 その娘は私達に不快感だけを残しさっさと去っていってしまった。
「なんなの、春日さん。確かに私達が通路ふさいでたのは悪いけど、あんな言い方ないんじゃない。」
「なに言ってんのよ、春日さんはいつもあんな風に自分勝手でわがままじゃない、美紀ー。」
「そんな事言ったって、真子。やっぱり気持ちが収まらないよ。」
「美紀ちゃん、春日さんていつもあんな感じなの。」
「うん、わがままな感じだね。そう言えば、奈々子は中学校から春日さんと一緒だよね。」
「ううん中学校からじゃなくて、小学校から一緒だよ。あんまり話す機会は無かったけど前はチョット違ったような気がするな。彼女、大きい病院の一人娘で両親に過保護に育てられたみたいなんだ。だから悪く言えばわがままなんだけど、自分勝手に振舞っているだけだった見たいなんだけど最近はチョット意地悪と言うか自分の感情を押さえきれてないと言うか・・・。」
「奈々子、自分の感情を押さえきれないのをわがまま、それを他人なあたるのが意地悪っていうの。やっぱやなやつ。」
「うーん、なんと言うのかなー。春日さん昔はあんないやな人じゃなかったんだけどなー。」
「もー春日さんの事なんてどうでもいいじゃない、ところで志衣ちゃん。」
「ん?、美紀ちゃん何?。」
「明日土曜日でしょ、学校終わってから志衣ちゃんのお家ちに行っていい?。」
「あっ、それいいね。川村さんの部屋って興味あるよね。奈々子もね。」
「えっ、うーん。引っ越したばかりでコチャゴチャしてるし。」
「あんまり迷惑かけないから!」
「うん、それじゃあ今日帰ったらお母さんに聞いてみるね。」
「よし、じゃああまり大人数で行くと迷惑だろうから私と、真子、奈々子って所ね。」
「オッケー、美紀。じゃあ明日の午後ね。」
「あのー、もう決定ですか。美紀ちゃん。」
「志衣ちゃんは気にしない気にしない、大丈夫、大丈夫。」
「美紀ー、川村さんの家に行くのに本人に気にするななんて。君がもうチョット気にした方がいいよ。」
「あっ、志衣ちゃんゴメーンまた調子に乗って先走っちゃった。」
「ハハハハハ・・・。」
ということで同級生三人をうちに招くことになってしまった。


 転校初日はあっというまに過ぎてしまった。帰る方向が同じだった美紀ちゃんは家まで一緒に帰ってくれた。
「志衣ちゃん、また明日ねー。」
「うん、また明日。」
 美紀ちゃんと分かれ、家の玄関を空けた。この時間だとお母さんが夕食の準備を始めている頃だろう。
「だだいまー。」
「おかえりー。」
 やはりお母さんの声は1階の台所の方から聞こえた。私は自分の部屋のある二階へ階段であがっていった。
「えーと、着替えはこれでいいのかな。スカートを脱いで、あれ?、スカートってどうゆう風にかけとけばいいんだろー。」
「お母さん、制服って、スカートってどういう風にえもんかけにかけとけばいいの?。」
 私はどうすればいいのか分からないので台所のお母さんのところへ聞きに行った。
「あっ、志衣ちゃんなんてかっこしてるの。」
「だって始めて女子高の制服を着て、制服のかけ方が分からなくって・・・、あっ。」
 私は下着姿のまま一階まで来ているのに気づいた。
「いい、志衣ちゃん。女のこがそんなカッコでうろうろしてはいけません。」
「はーい、そうだよねこんな美少女が下着姿でうろつくのはキケンだ。」
「なーに自分のこと美少女だなんて、まあそう言うことです。制服のかけ方も教えるから早くお部屋で着替えてらっしゃい。」
「はーい。」
 お母さんに制服のかけ方を教えてもらい、服を着替えてから台所に先に戻っていたお母さんに声をかけた。
「お母さん夕食作るの何か手伝おうか?。」
「あら、ほんと?。」
「うん、女の子だもん。これくらい・ね。」
「そうね、じゃあお願いしようかしら。」
「はーい。」
 そして、私はお母さんと一緒に夕食作りををした。
「やっぱりお父さんがいないとさみしいなー。」
「しょうがないでしょ、志衣ちゃん。私達はこっちに引っ越したけれどお父さんは東京でお仕事があるんだから、土日しかお家に帰れないのよ。」
「うん、私の為に・・・。」
「・・・志衣ちゃん、お父さん明日の土曜日の帰りは夕方になるって言ってたし、今日お手伝いしてくれたご褒美にお洋服でも買いに行きましょうか。お部屋の方も女の子の部屋にしては寂しいから何か小物も買って。」
「えっ、洋服?。」
「志衣ちゃんは女の子なんだからお洋服買ってくれるといったら喜ばなきゃ。」
「うん、でも。あっそういえば、今日学校でお友達が出来たの。」
「あら、よかったじゃない。」
「それでね、明日家に着たいって言うんだけど。三人。」
「いいじゃない、およびなさい。親しい友達をいっぱいつくらなくっちゃね。」
「うん、明日来てもらうね。だから買い物は・・・。」
「お買い物はまた今度にしましょう。その時はたっぷり時間をとって母娘ふたりで志衣ちゃんを着せ替え人形のようにして、いろいろなお洋服を買ってあげるからね。」
「はい・・・。」
 そんなこんなで、転校初日はあっという間に終わってしまいました。



 翌日の朝。
「志衣ちゃん、お友達が迎えに来てくれたわよ。」
「はい、今行きます。」
 私は制服の上着を羽織ながら玄関に向かっていった。
「あっ、おっはよー志衣ちゃん。」
「おはよ、美紀ちゃん。わざわざ迎えに来てくれたんだね。」
「わざわざって、志衣ちゃんちは家から学校への通り道だもん。それで、今日は大丈夫?。」
「うん、汚いところですけど良かったら家に来てください。」
「わー、よかった昨日はすっかり行く気になってたけど、お家の方の了解をまだ取ってなかったんだもんね。」
「こらこらお二人さん、家の前でいつまでも長話してると学校に遅刻するわよ。」
「あっお母さん。」
「はい、おばさん。私、小笠原美紀です。今日は放課後またお邪魔しますのでよろしくお願いします。」
「はい、お待ちしてます、小笠原さん。」
「じゃあ美紀ちゃん行こう、お母さん行ってきまーす。」
「二人ともきおつけて行ってらっしゃい・・・。ふう、行ったようね。でも志衣ちゃんもいいお友達が出来たみたいね良かったわ。」
 お母さんは玄関先から私達二人を見送っていた。
 その登校の途中、私と美紀ちゃんはずっと前の方に春日さんを見かけた。
「あっ、春日さんだ。昨日あんなことあったから声かけずらいよね、志衣ちゃん。」
「う、うん。」
「でも、距離もチョットあるし無理に声かけることもないよ。」
 そんな話を春日さんを見ながらしていると、その春日さんに走ってきた小学生がぶつかって二人とも倒れてしまった。」
「あっ、あの小学生よりによって春日さんとぶつかるなんて。」
「美紀ちゃん、そんな言い方って。」
「あれ?、春日さん怒りもしないで小学生のズボンまではたいてあげて。以外ね」
「美紀ちゃん、やっぱり根っから悪い人なんていないのよ。春日さんもいい人よ、きっと。」
 そして、私達は自然と春日さんに追いついてので私が春日さんに声をかけた。
「おはよう、春日さん。」
「あ、お・・・。ふん。」
 しかし、春日さんは最初驚いた顔、そして次に表情を隠すようにして私達の前から走り去ってしまった。
「美紀ちゃん、私、春日さんに嫌われてるのかな?。あまり話たことも無いんだけど。」
「志衣ちゃん、気にしなくていいんじゃない。今のが私の知ってる春日さんだから。」
 私は何か釈然としない気持ちを抱えつつ学校へ向かった。


転校二日目も無難にすぎ放課後になった。私は、美紀ちゃん、真子ちゃん、奈々子ちゃんと四人で私の家に向かっていた。
「志衣ちゃんのお母さんて、今朝会っただけだけどやさしそうね。」
「うん、とってもやさしいお母さんだよ。」
「いいなあ、ウチなんて厳しくって厳しくって。」
「そうだよね、真子だけ去年の夏休み旅行に一緒に行けなかったもんね。」
「あっそうだ、志衣ちゃん今年も夏休みどっかへ旅行する計画を企画するから一緒に行こうね。」
「うん、美紀ちゃんありがとう。あ、もうここが家だからチョット待ってて。」
 私は三人に玄関前で待ってもらって、先に家に入った。
「だだいまー。」
「おかえり、志衣ちゃん。お友達は?。」
「今玄関の前で待ってもらってる。」
「お食事まだでしょ、パスタできてるから食べてもらってね。」
「はい。」


 そして、私達は女の子四人のなぎやかな昼食となった。美紀ちゃん達はお母さんの料理をおいしいと言って食べてくれ、お母さんもこのにぎやかな食卓を楽しがっているようだった。
「ごちそう様でした、おばさん。」
「ごちそう様でした。あーおいしかった。」
「お粗末さまでした。それじゃあ、志衣ちゃんお部屋に上がってもらったら?。」
「はい、じゃあみんな私の部屋は二階だからこっちに来て。」
「おばさん、おいしかったです。」
「ゆっくりなさっていってね、みなさん。」
「はーい、じゃあ遠慮なく。」
 美紀ちゃんがそう言うと。
「美紀はもともと遠慮なんて言葉知りませんから。」
と真子ちゃんが言った。
「そんなことないもん・・・。」
「ははははは・・・」
 私が案内して二階の自分の部屋にやってきた。
「さあ、ここが私の部屋、入ってね。」
「ここが志衣ちゃんの部屋か。」
「川村さんの部屋ってずいぶんさっぱりしてるのね。」
「まあ、適当なところに腰掛けて、はいクッションはこれね。」
「なんか男のこの部屋みたいだね。」
「奈々子、そんなこと言うんだから男の子の部屋に言ったことあるんだー。」
「な、真子ー、勘違いしないでよ。私の弟の部屋見たことがうるだけよ。」
「えっ奈々子、男の子の部屋に言ったことあるの?。」
「もー、美紀までー。」
「あっ、志衣ちゃん何この写真。男の子だけ三人組みの写真があるよ、この中の誰かが彼氏?。」
「え、美紀。よく見つけた。ほーう、ほんとだ男だけ三人の写真だ。この中の一人が川村さんの彼氏か、もしくは想いの人に違いないわね。」
「えっ、美紀ちゃん、真子ちゃん。そんなんじゃないよこの前も学校で行ったじゃない、親しい男友達がいたって。その写真よ。」
「川村さん、私もこの前言ったわよね。そういう関係の男が「彼氏」なんだって、さあ、この写真の三人の誰が彼氏なの白状しなさい。」
「だからー。」
「志衣ちゃん、私この右側の男の子が好みだなー。」
「私も・・・、美紀と同じかなー。」
「なに、美紀も奈々子も写真の男の品評してるのよ。チョット私にも見せて御覧なさい、・・・うーん、チョット気弱そうだけどやっぱり右側の男が一番いけてるかなー。」
「ねー、志衣ちゃん。この右側の子がいいなーって思うんだけど・・・、彼が志衣ちゃんの彼氏?。」
「えっ、この右側の子って。ぼく・・・。」
「あっ、志衣ちゃん下向いて顔真っ赤にしてるー。やっぱりこの子が彼氏なんだー。」
「チッ、川村さんの彼氏じゃなければ紹介してもらおうかと思ったのに。」
「真子、本気で悔しがってるね。もし紹介してもらっても相手が東京じゃあ遠距離恋愛になっちゃうのに。」
「奈々子、恋愛に距離は関係ないの。と言う訳で川村さん、遠距離恋愛に私達は協力を惜しまないからね。」
「そっそんなんじゃないってば、本当に。」
「嘘つくんじゃありません、彼氏を発見された以外にうつむいて、顔真っ赤にする理由なんてないじゃない。」
「そっそれは、自分が女の子にほめられれば・・・。」
「ほらっ、自分の彼氏がかっこいいってほめられて恥ずかしくなったんでしょ。もー、川村さんは本当に可愛いんだからー。」
「真子、この辺にしとこうよ。志衣ちゃん本当に困った顔してるよ、彼氏を発見する為に私達は来たんじゃないんだから。」
「あ、ごめん。今日は私が美紀みたい前後見境なく突っ走っちゃった。川村さんごめんね。」
「ううん、いいよ真子ちゃん。」
「あのー、この私、美紀がひどい言われか方したみたいなんですけどー。」
「美紀、気にしない。いつものことなんだから、それよりも川村さん、今度一緒に買い物しに行こうよ。まだこの部屋引っ越したばかりで寂しいからいろいろな小物とかかって。」
「あっ今の奈々子の意見に賛成。電車の駅で三つ行ったところがこの辺で一番大きい待ちで、会社とか病院とかも大きいのがあるんだけどそこの駅ビルの中にいろいろ可愛いものがあるお店がいっぱいあるんだ。」
「うん、そうだね。お買い物か。・・・」
「志衣ちゃん、行こう行こう。そのチョット行ったところにねおいしてあんみつ屋さんがあってね。」
「・・・。」
「まったく、美紀は本当にあんみつ好きなんだから。」
「・・・。」
「川村さんは甘いものは・・・。」
「・・・。」
「川村さん・・・。」
「・・・。」
「志衣ちゃん・・・、どうしたの。」
「・・・。えっ、あっごめん。チョット頭が痛くなって。」
「大丈夫、川村さん。」
「うっうん、大丈夫。」
「志衣ちゃん、そう言えば顔色も良くないしあんまり大丈夫じゃないみたい。」
「そうだよね、川村さんは昨日転校してきたばっかりでなれない環境だし、疲れがたまるよね。」
「奈々子の言うとおりよね、そのうえ美紀みたいにうるさいのがあがりこんで騒いでたら疲れ倍増よね。」
「また、私のことわるくいってる・・・。」
「はいはい、今はそんなこと気にしない。じゃあ川村さん私達、そろそろ帰るね。」
「えっ、大丈夫だから。真子ちゃん」
「川村さん、やっぱり今日は帰るわ。疲れはしっかり取らなくちゃ。」
「奈々子ちゃん・・・。じゃあ玄関まで。」
「志衣ちゃん。そのまま横になって、私たちのことはいいから。だって私達はお友達で、志衣ちゃんは転校してきたばっかりなんだからこれからいくらでも時間はあるわ。またお邪魔しに来ます、いいわね。」
「ありかとう、美紀ちゃん。」
「じゃあ、またね。」
「お邪魔しました、川村さん。」
「志衣ちゃん、また月曜日迎えに来るから。」
「みんな、またね。」
 そして、三人は帰っていった。下の方で「お邪魔しました。」と言う声が聞こえて、そのあとお母さんが私の部屋にやってきた。
「頭が痛いんだって、大丈夫?。」
「うん、ちょっと横になってる・・・。大丈夫だよお母さん心配しないで。」
「だって・・・、心配性にもなってしまうわよ前にあんなことがあって・・・。」
「大丈夫、前経験から本当に苦しいときはそう言うから。」
「本当に言って頂戴ね、健康が本当に第一だから。」
「うん、じゃあチョット寝るね。」
「おやすみなさい、志衣ちゃん。」
 一眠りすると頭痛はとりあえずおさまっていた。


 こうして、私の女子高生生活は始まったのであった。転校早々にいいお友達も出来て順調な滑り出しだと思う。大方のクラスメイトとは友好的関係である。これは美紀ちゃん達のおかげが大きい、本当に最初にいい友達が出来てシアワセだった。
春日さんとの関係は相変わらずで、私が声をかけても答えてくれなかった。彼女はクラスの誰に対しても心を開こうとはせず自ら孤立していっているように見えた。あの、転校二日目の朝に見た春日さんのやさしさは何だったんだろう、と思う。
もうひとつ、心配事と言えるのは時々頭痛があると言うことだった。お父さんとお母さんと相談して、今度おじさんに連絡をすること決めた。


 学校にも慣れが出てきた2週目の木曜日、午前中の最後の授業は体育で長距離走になっていた。
「志衣ちゃん、やっぱり長距離走はつらいよね。もうだめ。」
「美紀ちゃんはペース落として、私もうちょっとがんばるから。」
「志衣チャーン、真面目なんだからー。」
「あっ、春日さんだ。」
 私は春日さんと並んだときに、あの頭痛が襲ってきた。今回は今までにない強烈な頭痛で立ってられず、春日さんを巻き込むかたちで倒れこんでしまった。
「えっ、あ。川村さん。」
「志衣チャーン大丈夫?。」
 校庭に倒れこんだ私と春日さんの周りに人が集まってきたが、私はまだ頭痛がひどく立つことが出来なかった。
「川村さん、春日さん大丈夫?。」
 体育の先生が声をかけると、春日さんはさっと立ちあがった。
「私は大丈夫です。川村さんが倒れこんできて巻き込まれただけですから。」
と言うとどっかへいってしまった。
「何!?、今の春日さんの態度。」
「真子ちゃん、今回は私が春日さんを一方的に巻き込んだわけだし。」
「川村さん、大丈夫?、立てる?。小笠原さん川村さんを保健室へ連れていってあげて。」
「はい、先生。志衣ちゃん大丈夫?。」
「うん、まだちょっと頭痛いけどさっきよりだいぶ楽になったから。」
(やっぱり体の調子がよくないや、おじさんにそうだんしてみよう。)



 そして、その週の日曜日、私は電車で三駅行ったところにあるサイバネティックス社という会社の前に来ていた。
「あっ、マスター。お久しぶりです。」
「やあ、君をお母さんにお渡しして以来だね。今回君のおじさんの指示で、君の製作主任だった私が東京からここまで来たわけだからよろしく。」
「私の為にここまで来てくださってすみません、マスター。」
「まあ、君は公表できないのが惜しいけれど、わが社の作ったものの中で現在最高の傑作だからね。そのメンテナンスをするのは私の誇りだよ。今わね廃番になったC型の次のD型の開発も試験販売の段階まで行ったんで私の仕事も一段落してるんでね、時間は取れるんだよ。さあ、社内に入ってくれとりあえず検査をするから。」
「はい。」
 私は半日がかりの精密検査を受け終わり、社内の部屋でマスターと体の調子の事についての説明を受けた。
「まずは、君にはB型の人間サポート用ロボットの基本設定が強く残ってしまっているようだね。会うなり私のことをマスターと呼んだし。まあ、もともとC型生体ロボットとして作られたその体だからしょうがないけどね。」
「それが何か影響を。」
「まあ、順序だてて言っていくよ。君の体は人間そのものの本当の人間体であるけれど、人工的に作られた人工人間だ。体のそれぞれの動きは問題無いんだが、脳の動きだけはちょっした調整が必要だったんだ。体に無理をさせない為のリミッターというもの、これは人間にもついてるんだけどね人間も筋力を全開にすると骨を折るほどの力が出てしまうので、特別なとき意外はリミッターがかかっている。このリミッターが外れたときのちからが「火事場のくそ力」とかいわれてるもんだ。
 生体ロボットの場合、緊急時など状況判断でリミッターを自分ではずせたりした方が都合がいいので深層意識でなく、意識的にリミッターのオンオフが出来るようになっている。これは、一例だが君の体は本当の人間ならば、深層意識などで考えることと意識的に考えることが混ざってしまうんだよ。」
「えっと、つまり脳が考えすぎで混乱してそれが体にも影響して頭痛という形で現れるということですか。」
「うん、それをまた細かく分析すると。意識に、女性型の生体ロボットと君のもともと記憶それぞれの考えを統合しようとしているときに転校で新たな記憶が加わって脳が混乱したんだろう。これは、だんだんおさまって行くと思う。君は今の体に合った女っぽい仕草になってきている、意識的にもしているんだろうがだんだん意識的統合が済めばおさまるだろう。」
「じゃあ、この前の強烈な頭痛ももう少しすれば起こらなくなるんですね。」
「いや、あの強烈なのはさっき言った。リミッターの関係の方だと思う、脳がいろんな考えでいっぱいな時に本当の人間なら深層意識で処理したはずのリミッターを自分で考なければならなくなったので強烈な頭痛となって、脳の過剰労働を訴えたんだと思う。」
「それは、どうすれば直るんですか。」
「なに、リミッターを元から意識すれば大丈夫だよ。これからまでは無意識に任せていたからリミッターの決断が出来ずに混乱していたんだが、自らの意思でリミッターの判断をしてくれればその処理は終わるんで脳の過剰労働は終わるから。」
「なんだ、簡単なんですね。」
「でも言っておくがリミッターは簡単にははずしたらいかんよ、リミッターをはずした場合筋力に骨の方が耐え切れないだろうから。君は普通の女性と違って生体ロボットなので筋力が強くなっている、筋力を全開すれば体に絶対無理が来る。」
「はい、わかりました。」
「よろしい、じゃあ出口まで送ろう。」
 そして私は白衣のマスターと一緒に会社の出口までやってきた。
「君はわが社の最高芸術品だけど、表情までは完璧に行かなかったな。」
「へっ。」
「顔面の筋肉は非常に繊細でね、本当の人間ほど表情豊かには出来なかった、と言うわけだ。」
「・・・。」
「でも、君は大丈夫だよ。私達でわ作れない、本当の感情が君の奥から感じられる。ちょっとだけ君に好意を持ってくれている人なら君の心に気づいてくれるはずだよ。」
「はい、ありがとう。マスター。」
「ふっ、本当にいい顔をしてるよ。君は戸籍もある本当の人間なんだから変なことに後ろめたさを感じずに、自分のシアワセを見つけなさい。じゃあ、さようなら。」
「今日は私のためにわざわざありがとうございました。」
 私はマスターとわかれ帰り道についた。


 そして、翌日の月曜日。いつものように美紀ちゃんが朝迎えに来てくれるのでいっしょに登校し教室の扉をくぐった。
「おっはよーみんなー。」
「おはよー。」
 私と美紀ちゃんが扉をくぐると真子ちゃんが走りよってきて声をかけようとしたが、そのまえに私に向かって大きな声がかけられた。
「あーら、ロボットさんの登校ね。」
「え?。」
「・・・。」
 美紀ちゃんは驚愕の声をあげた、私は黙ってその声の主、春日さんの方を見た。
「川村さん、あなたロボットなんでしょー。きのうね、駅で三つ行った所にパパの病院があるんだけどそこに行った帰りに、人間サポート用ロボットの販売元で有名なサイバネティックス社の前を通りがかったんだけど。見ちゃったのよね、その会社から白衣の男と一緒に出てくる川村さんを。」
「志衣ちゃんが、そのサイ・・バ・・何とか社から出てきただけでロボットだなんて決め付けるなんておかしいんじゃない。」
「小笠原さん、あなたは見たことないでしょうけど今度サイバネティックス社から新発売されたロボットがね川村さんに似てるのよ。顔かたちも、その無感情な顔もね。その無感情こそまさしくプログラムで動くロボットじゃない」
「えっ、志衣ちゃんの何処が無感情なのよ。表情には余り出ないけどちょっと態度を見れば感情豊かなかわいい女の子じゃない。」
「ふん、何言ってるのよ。ロボットに感情なんてあるわけ無いし、必要もないわ。プログラム仕掛けのお人形でしょ。」
「まったく、春日さんは分からずやね。志衣ちゃん違うものは違うとはっきり言って上げてよ。」
 私は美紀ちゃんに声をかけられたが、春日さんに反論することはできなかった。私の体は正確に分類する「ロボット」ではない、機械の部分はまったくなく体の組織は細胞レベルまで人間そのものである。しかし、私の今の体は両親の愛の結晶ではなく、人工的に作られたものである。ロボットとではないかもしれないけど作りものの人形である。
「ふんっやっぱり川村さん、いいえロボットさん言い訳できないじゃない。それは「私がロボットです」と肯定してるようなもんよ。」
「・・・。」
「・・・志衣ちゃん、何で何にも言わないの。黙ってたって何も解決しないよ、志衣ちゃん。」
 私は美紀ちゃんにそう言われた。しかし、春日さんに本当のことを言われたこととそれよりも、それを美紀ちゃんに黙っている事。そしてもうひとつ、まだ隠し事があることの後ろめたいので美紀ちゃんの顔を見ることが出来なかった。
 美紀ちゃんは私を見ていたが、私が話さないので真子ちゃんの方へ走りよっていった。私は無言のまま自分の席についた。春日さんもとりあえず自分の席で口を閉じて座っている。
「真子、何であんな話になったの。」
「美紀、あさいちのはなしはね春日さんがその会社の前で川村さんを見たって事だったんだけど。」
「・・・ロボットに似てる。」
「・・・変な事言わないでよ。」
「・・・ロボットなんじゃない。」
「・・・絶対にロボットよ。」
 美紀ちゃん達の声が途切れ途切れに私の耳にはいったが頭にまでは届かなかった。私はただこれからどうしようか出口のない考えをめぐらせていた。


 その日一日、私は誰とも話さなかった。美紀ちゃんも始めのうちは声をかけてくれたが私が答えないので声をかけなくなった。一方、春日さんも朝あれだけ言ったにもかかわらずその後は一人自分席で黙っていた。
 その日授業が終わると私は足早に学校を後にした。とりあえず今は一人っきりになりたかった。何を考えるでもなくとぼとぼ歩いていると、ちょっと先で信号待ちをしている春日さんがいた。
「そういえば、春日さんは授業が終わるといつもすぐいなくなる。いつもこんなに早く帰っていたんだ、クラスメイトに親しい子がいないじゃあ早く帰りたくもなるだろう。
 今日は特に春日さんと接触したくはないな。今朝あんなことがあったばかりだし。間隔を十分とって追いつかない様に歩こう」と思って顔を上げた時だった。
 青信号になり横断歩道を渡る春日さん。
 向こうから来る自動車。
 その自動車は赤信号なのに減速の気配がない。
 その時、私は走り出した。
 ぼうっとしてるのか、気がつかない春日さん。
 信号を無視して交差点に進入する自動車。
 やっと自動車に気づいたが足がすくんだのか動かない春日さん。
「ちっ、間に合うか。」僕の全力で飛び込めば、リミッターとやらを意識的に開放しようと考える。
 始めてだけどうまく行くか。
 そんなことより、全力で春日さんを。
 僕は全力で春日さんに飛びついた。
 春日さんを抱え込み、地面をぐるぐる回るように受身を取ろうとする。
 腕の中に春日さんの感覚、背中には地面がぶつかる感触。
 車にはぶつからないで済んだのか?。
 自分の全身を突き抜ける痛みを感じた。
 春日さんは無事か?、確認しようとしたけれど全身の痛みに耐え切れず、僕は意識を失った。


 体中のづきづきとする痛みに僕は意識を取り戻した。背中にはやらかい沈み込む感触、体の上にも何かかけてある。どうやらここは、病院のベットの上のようだ。
 そして、僕のベットの横のイスに腰掛けそのベットに頭を押し付けふさぎこんでいる人の気配に気づいた。
「春日・・・さん?。」
「あっ・・・。川村さん・・・。」
 川村さんは僕と眼が会うと、彼女の目が涙でいっぱいになるのが分かった。
「ごめんね、ごめんね・・・。」
 彼女は僕にしがみつき、ただ「ごめんね」と繰り返した。
「春日さん・・・は、大丈夫?。」
「私のことなんて心配しないで、あなたのおかげで軽い擦り傷だけ。あなたこそ何で、私なんかの為に・・・今朝あんな事言った・・・、私なんかの為に。」
「クラスメイトでしょ・・・、友達でしょ。」
「うっ・・・、川村さんあなたロボットなんかじゃないじゃない。どうして朝、私に違うって怒らなかったの。」
「えっ、何でそんなこと。」
「ここは、私のパパの病院だから。川村さん、検査うけたから。私が嘘言っちゃって。今朝の話も最初は川村さんをサイバネティックス社の前で見たって言っただけだったんだけど。話がだんだんエスカレートして、クラスに転校したてで馴染んだあなたに私、嫉妬してた。自分がつまらない意地張ってクラスに溶け込めないのわかってるのに、他人のせいにして。川村さんを勝手に私が嫌って、ロボットみたいに無表情だって、ロボットなんだろうって。そしたらもう私、自分を押さえきれなくて、自分でもわかってるんだけど、わがままで自分勝手で、一度言い出すと引っ込みつかなくなって、あなたに大声でロボットでしょうて言ってて。ごめんなさいってどうしても言えなくって、素直になれなくて。」
「春日さん、君は本当はやさしいんだから。もうちょっとだけ素直になろうよ、勇気を出して。今までクラスでどういう風に振舞ってきたとか、変な事考えずに本当の気持ちを言おうよ。そうすれば友達もいっぱい出来るよ。僕は知ってるよ、小学生とぶつかった後の君のやさしい態度。僕と長距離走の時ぶつかった後の一瞬心配そうな目をしてた、でも、みんなが集まってきたらクールな振りして立ち上がってしまった君。変な意地を張らずに本当の春日さんでいればいいんだよ。」
「うん。」
「でもね、春日さん。僕がロボットだと言うのは本当のことだよ。」
「・・・え、何言ってるの。」
「僕は、去年病気で死んだんだ。高校一年だった。そしてサイバネティックス社で作られていた、生体ロボット。つまり人工的に作られた人間に記憶を移されたんだ。」
「・・・。」
「しかも僕は、この体になる前は男だったんだ。僕のおじさんはね、サイバネティックス社の開発担当で生体ロボットを作る責任者で、僕が死んでしまうと分かったときに僕の記憶・・・意識をこの体にうつしたんだ。
 生体ロボットはね、女性型しか必要ないんだって。男性型つまり力仕事を万能にこなすロボットを作るぐらいなら単一機能専用機械にしてしまった方が機能的だから。」
「・・・。」
「春日さん、だからね僕は女の子でも、ましてや人間でもないんだ。僕こそ今までみんなをだましてて、うそをついてて。」
「ちがう。」
「えっ。」
「ちがうわ、川村さん。あなたはの過去は知らないは、でも今のあなたはDNAから人間で、生物学的に女性です。」
「でも、春日さん。」
「医者の娘が言うんだから間違いありません。医学的にはあなたは今、「川村志衣」という女性です。」
 その時、病室のドアが開き部屋の中に二人が入ってきた。
「医学的にだけじゃないわ、いろいろな人の協力で法律上、戸籍上も「川村志衣」は存在するわよ。」
「あっ、お母さん。美紀ちゃん。」
「ごめーん、志衣ちゃん外で聞いちゃった。中に入るタイミング失っちゃって。外で全部聞いちゃった。」
「川村さん。」
 春日さんは、改めて僕に向き直っていった。
「あなたは、医学上も法律上も「川村志衣」と言う女性です。そしてあなたの過去も、どうしてこうなったかも、本当の事は私は知りません。でも、医学的、法律的な現在の、今の世の中の現実では「川村志衣」は実在するんです。そして今は私の心の中にも「川村志衣」は存在します。おおきく、そしてやさしい存在として。川村さん私たちのクラスメイト、いいえ、お友達ですよね。」
「そうだよ、春日さんの言うとおりだよ志衣ちゃん。私は今の志衣ちゃんが好き、別に昔の事なんて気にしないよ。昔の事で悩んでるなら相談に乗るけど、私たち昔の事よりこれからの事の方がいっぱいあるし、大切なんだから。私の本心から言います志衣ちゃんは私の大切なお友達です、志衣ちゃんにとっても私はお友達でしょ。」
「春日さん、美紀ちゃん。ふたりとも僕の・・・、ううん、私の「川村志衣」の大切なお友達だよ・・・。ありがとう。」
 こうして、私「川村志衣」に本当に親しい友達が出来た。これ以上何を望もうというのか。何の苦難もなく平坦な、楽な人生を送れるのもたしかにシアワセのひとつのかたちだろう。
 だけど、私のようにいろいろな苦労という波を乗り越えて、自分で・・・お友達の力を借りて作り上げていくシアワセも価値のあるものだと思う。
 今、私には親しい友達と、やさしい両親がいます。これが現在の私の「シアワセのかたち」です。




※この話は「シアワセの価値」続編として書きました。by K 1999,5,30,・7,17,訂正

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