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TS八犬伝
シャイニング・スピリッツ・ブレイヴス
第11話
「最後に来た戦士」

By:ことぶきひかる&NDCセキュリティサービス


彼は、夢を見ていた。
夢の中で、1人の少女と出会っていた。
少女という言い方は、おかしいかもしれない。
彼女は、ほぼ確実に、彼より年上で、お姉さんと呼んだ方が、しっくりするような気がした。
けど、なぜか、自分の中では、少女という言い方しかできない。
美しい少女だった。
可愛らしい少女だった。
アニメやマンガの中でも、これほどまで可愛いコは見たことがない。
いや、人間の手では、これほどまで可愛いものを造ることはできない。
そんな想いがした。
そして、少女は泣いていた。
同級生の女のコのような、騒ぎ立てるような泣き方ではない。
堪えようとしたが果たせず、ついに瞳から溢れだした涙が、静かに頬を伝い、そこからこぼれ落ちた滴が、膝の上に置かれた手の甲に当たるような・・・
なんで、彼女は泣いているんだろう・・・
そんな彼の想いに反応するように、少女の顔が、彼の方へと向く。
彼は、ごくりと粋と唾を呑み・・・
目が覚めた。
「あ〜あ、また、この夢か・・・」
かれこれ、1週間以上、同じ夢を見ては、途中で目を覚ます。ということを繰り返していた。
もはや、少女の顔を描けるほど、彼女の夢を見ていた。
「あ、いけねえ。」
のんびりしていると、トイレや洗面所を両親や祖父母に占領されてしまう。
少年は、布団を跳ね飛ばすようにして起きあがった。


光一、義和、孝弘、敬吾の4人、そして、将則、克実、武行の3人の邂逅は、それぞれに、歓喜、そして驚愕をもたらした。
一挙に仲間が増えたことは喜ぶべき事ではあったが、少なくとも2つ以上の町に、”マーダー”が出現していたことは、危惧して当然のことだった。
不幸中の幸いと言うべきか、瞬間移動能力を敬吾という存在により移動手段だけは確保されており、4人と3人との居住地間の距離による制約だけは受けずに済みそうだった。
今後、”マーダー”との戦闘は、ますます激しくなっていくことだろう。
7人で戦っても苦戦するような事態が、いつくるとも限らない。
そして、残された仲間は、後1人。
彼を見つけだすことが、”マーダー”との戦いのターニングポイントになるであろうことは、誰もが分かることだった。


翌日。
あの後、7人は、相談し、今後の活動を取り決めあった。
まず、もっとも重要なのが8人目の戦士を見つけること。
そして、”マーダー”を1体でも多く倒すこと。
これまでの経験からして、”マーダー”との接触が、光の戦士の覚醒を促し、また、光の戦士は、”マーダー”という存在に引き寄せられる傾向にあることが分かっていた。
今後も、”マーダー”と戦っていれば、8人目の戦士と出会える可能性は高い。
将則、克実、武行は、地元の・・・”マーダー”と戦った裏山をもう1度探索してもらうことにした。
可能性で言えば、彼らの町に4人目がいると考えた方がよい。
もちろん、4人の方も、もう一度、”マーダー”との接触地域を調べ直すことにした。
まずは、あの丘、そして、学校の裏庭。
光の戦士のうち、だれかが、”マーダー”と接触すれば、あの少女が、他の仲間に伝えてくれる。
後は、敬吾に運んでもらうだけだ。
その敬吾は、自宅で待機ということになった。
移動の要である彼には、常に所在が分かる場所にいてもらうためだ。
病弱なことから、そう自由に外出できないことも考慮してある。
もっとも、光の戦士として覚醒後、彼の病状は、みるみる回復の方向へと進んでいた。
少なくとも、以前のように、ちょっと外出した程度では、発熱するようなことはなくなっていた。
だが、10年以上、そういう状態で過ごしてきただけに、母親は、そうそう安心してもいないらしい。
その目を盗んで外出するしかない以上、迂闊な行動はとれなかった。
学校の敷地内の探索は光一、郊外の野原は義和に任せ、孝弘は、あの丘を調べ直すことにした。
1人で”マーダー”と接触した際のことも考えたが、彼の光盾は、攻撃力こそ皆無に等しいが、その分絶対的な防御力を誇る。
例え、”マーダー”と戦闘になっても、仲間が来るまで、ねばり強く耐えることが可能だ。
まず心配はいらないだろう。
「それじゃ、出かけてきます。」
家を出た孝弘の後を追う小さな影があった。
彼の6歳違いの甥である智行だ。
戸籍上は、叔父と甥とはいえ、その年齢差そして1つ屋根の下で暮らしていることからいって、実質的には、兄のような存在だ。
その兄貴分のところに、年齢がバラバラの友人が訪ねてくるようになったり、頻繁に外出するようになったりしては、小学生の好奇心がおとなしくしているはずがない。
(孝弘兄ちゃん、どこにいくのかなあ・・・)
気づかれないよう変装(といっても、いつもと違う帽子をかぶっている程度なのだが)して、智行は、孝弘の後を付け始めた。
もっとも、そこは、小学生の考えること。
秘密基地だの、そんなことが頭に浮かんでいた。
もっとも、孝弘は、まさか甥が自分の後をつけてきているなど想ってもおらず、気づく気配は全くない。
しばらくして、智行は、孝弘の脚が、次第に郊外に向かっていることに気づいた。
その先は、ちょっと前に、隕石騒ぎのあった丘だ。
(あれ・・・兄ちゃん、なんでこんなとこに・・・)
訝しみながら、しつこく後を追う智行。
人通りが絶えたため、見つからないよう、茂みに姿を隠しながらの尾行だ。
もっとも、孝弘は、ここまで1度も振り返ってはおらず、多分、隠れる必要はないのだが、そこはやはり小学生、尾行するという行為そのものに浸っていることはまず間違いない。
やがて、孝弘は、その丘に登り始めた。
(なんで、兄ちゃん、こんな丘に・・・)
この丘は、子供の遊び場としてよく使われてはいるが、特に何もないはずなのだ。
(う〜ん、なんで・・・あ!もしかしたら!)
智行の頭に、1つの事柄が浮かぶ。
(兄ちゃん、もしかして、隕石か何か見つけたんじゃ?!)
孝弘の行動が変わったのは、隕石騒動から数日後・・・時間的には、それほど差はない。
(そうだ!きっとそうなんだ!)
証拠のない確信が、智行を興奮させる。
これは、見逃す手はない。
見つからないようにと身を隠すことも忘れ、智行は、孝弘の後を追いかけた。


丘のてっぺんに、孝弘はたどり着いた。
光一が、初めて”マーダー”に接触し、そして、昨日、”マーダー”に囲まれた3人と出会ったのは、この場所だ。
流石に、今日は、”マーダー”の気配は感じ取れない。
茂みや木々を揺らしながら、吹き抜けていく風が心地よい。
「ふう・・・」
登ってくるまでにかいた汗を、風が乾かしていってくれる。
孝弘は、大きく息を吐いた。
「さて・・・と・・・」
早速、孝弘は、周囲を探ってみることにした。
昨日、あれだけの数を倒しただけに、この周辺には、もはや”マーダー”がいない可能性もあったが、油断はできない。
もっとも、近くに”マーダー”がくれば、そうと分かるのだが。
防御主体のためか、孝弘は、他の光の戦士に比べ、”マーダー”の感知能力が高いようだった。
昨日、7人が戦ったあの場所は、”マーダー”の量を思いしらせるように、広大な空き地と化していた。
まるで、ユンボが掘り返したかのように、地肌が剥き出しになり、雑草1本生えていない。。
どうやら、”マーダー”は、植物を取り込み、その植物に擬態する能力を持っているようだ。
もし、昨日の戦闘がなかったら、この山そのものが、そっくり”マーダー”になっていた可能性もある。
それだけの”マーダー”に襲いかかられたら、7人どころか、8人が揃ったとしても、到底かないそうにない。
(早く、8人目を見つけないと・・・みんな頑張ってるかな・・・)
そんなことを考えながら、探索を続ける孝弘。
再び頂上へと戻ろうとした彼は、不意に、悪寒にも似た不快感を覚えた。
(!この感触は・・・)
想い出そうとする努力は不要だった。
間違いない。
”マーダー”が近くにいるのだ。
不意に、髪が伸び、胸と腰・・・特に胸にに圧迫感を感じた。
気づけば、孝弘は、あの夢の少女の姿に変身していた。
これで、”マーダー”が近くにいることは、確信するしかない。
これまでのパターンからして、周囲の茂みが、突然、”マーダー”となる可能性が高い。
孝弘は、その場でゆっくりと回転しながら、周囲を見渡す。
不快感は、ますます強まっていく。
いつ、”マーダー”が現れても不思議ではない。
孝弘は、ごくりと息を呑んだ。
不快感の方向が変わった。
水平方向ではない。
垂直方向だ。
「上?!」
なんと、”マーダー”は、雑草ではなく、生い茂る木々の葉に擬態していたのだ。
生い茂った緑色の葉が、瞬時に灰色の肉塊と化し、孝弘に遅いかからんと落下する。
既に、変身を完了させていた孝弘は、すんでの所で、光盾を張り巡らし、その攻撃を回避する。
光盾に弾かれた”マーダー”は、地面に落ちると、怪しげな脈動を始めた。
一方、孝弘の方は、かなり余裕を持っていた。
自分が、”マーダー”と接触したことは、既に、他の仲間へと伝わっていることだろう。
後は、仲間が来るまで、防御に徹していればいい。
そして、彼の光の能力は、防御においてもっともその力を発揮するのだ。


「あれ、兄ちゃん、どこにいったんだろう・・・」
頂上までたどり着いた智行は、あたりを見回した。
ここまでは、1本路のはずだから、どこかで、行き違いになるはずはないのに・・・
「反対側に降りてったのかなあ?」
一応、ここまで登ってきた路とはほぼ反対方向へと降りる路も存在している。
「あれ?」
少し離れた場所で、木々が大きく揺れるのを、智行は見つけた。
「兄ちゃん、あそこかな。」
他に判断材料が見つからない以上、そこにいってみるしかない。
膝のあたりまで伸びた草を踏み分けるようにして、智行は、木が揺れた方へと向かう。
不意に、前方で物音がした。
目を凝らすと、なにか人の姿が見える。
(あ、きっと兄ちゃんだ。)
そう想いながら、智行は、その方へと歩みを進めた。
(こんなとこで、何、してるのかなあ・・・)
後を付けたのがばれたら怒られるかも知れない。
そう想った智行は、隠れるように、ゆっくりと脚を進める。
「あれ?」
智行は、小さく呟いた。
どうやら、その人影は、孝弘ではないようだった。
まず、髪の毛が長い。
腰の近くまで、長い髪が伸びている。
どうみても、それは、女性・・・少女にしか見えなかった。
(兄ちゃんじゃない・・・)
じゃあ、どこにいったんだろうかと、想った智行は、ふと別の考えに行き当たった。
(あ、もしかして、兄ちゃん、この女の人と・・・)
こんな場所で、待ち合わせなど普通考えないものだが、小学生の一方通行な思考は、全然とんでも内結論に達してしまった。
(兄ちゃんの彼女って、どんな人なんだろう。)
ここからでは、背中しか見えず、智行は、気づかれないようにと慎重に、回り込んだ。
もう少しで横顔が見える・・・というところまできて、智行は、別の何かに気づいた。
少女が、何かを見つめているのだ。
それも、明らかに、敵意を剥き出しにしたように・・・
(え、なに?)
少女の視線の先へと、意識を向ける智行。
「!」
一目見て、智行は、言葉を失った。
少女が睨み付けているその先には、まるで粘土を想わせる灰色の塊が、まるで、生きているかのように脈動していたからだ。
(な、なんだ、こりゃ?!)
当然、智行が、”マーダー”のことを知っているはずがない。
だが、見たことのない生き物との遭遇に、智行の好奇心が、刺激された。
もっとよく見てみようと、木立に隠れるようにして、前進する。
と、彼が手をかけていた枝が、ぽきりと折れた。
体勢を整えるには、あまりにも、その枝に体重を任せてしまっていた。
折れた枝を抱え込むようにして、智行は、前方へと転がってしまう。
はっと、気づけば、そこは、肉塊の真ん前。
「ひ!」
流石に、泣き声混じりの悲鳴があがる。
「智行?!」
少女が、いきなり彼の名前を呼んだ。


「智行?!」
”マーダー”の出方をうかがっていた孝弘は、いきなり目の前に転がり出てきた甥の存在に、想わず声をあげてしまった。
当然といえば当然のことなのだが、全く予想外のアクシデントだ。
なにより、生身の人間では、”マーダー”と戦うどころか、身を守ることさえ不可能に近い。
「ちっ!」
智行の方へと駆け出しながら、孝弘は、光盾を発動させる。
幸いにも、自分の能力は、防御だ。
自分が、”マーダー”と接触した以上、もう少しすれば、仲間が来てくれる。
2分か3分か・・・せいぜい5分・・・
とにかく、その間だけ、持ちこたえればいいのだ。
智行をかばうために、光盾を、そちらへと向けようとした孝弘は、新たな異変に気づいた。
”マーダー”を見つめたまま、呆然としていた智行の右手が光り始めていた。
「え・・・」
その光に、孝弘は見覚えがあった。
かつての自分も、これと同じ光を・・・
「智行、まさか、お前が8人目?!・・・」
智行の身体は、光に完全に覆われてしまう。
光そのものは、これまで同様、10秒とかからず、収まった。
そして、光の収まった後、その場に屈み込んでいたのは、紛うことなき、あの夢の中の少女の姿だった。


「と、智行・・・」
目の前の少女に、孝弘は、力無く呟いた。
可能性としてはありえないことではなかったが、いくらなんでも、自分の甥が、光の戦士であろうとは想ってもみないことだった。
しかし、これはある意味、僥倖だったといえる。
なんといっても8人目の戦士が、ついに覚醒したのだ。
今回出現した”マーダー”は、その数も少なく、他の仲間がきてくれれば、すぐ様、倒せてしまうだろう。
しかも、防御担当の孝弘が、ここにいる以上、守りに関しては、心配はないといえた。
智行の目の前に、光の塊が出現する。
叔父としては、少々不謹慎ではあるが、孝弘は、智行の能力に感心を持たずにはいられない。
何しろ、8人目の・・・最後の戦士なのだ。
嫌でも、その力への期待は高まる。
光の塊は、次第に膨らんでいく。
いつのまにか、それは、智行を呑み込まんばかりの大きさになっていた。
と、不意に、光が変わった。
膨張が、一転して収縮に変わる。
ふたまわりほど小さくなったところで、新たな変化が訪れた。
光の中から、4本の棒が突き出したかと想うと、それは脚となって、大地を踏みしめる。
更に、別の部分が、大きく盛り上がり、頭部と化し、その反対側からは、尻尾と思しき突起が伸びた。
最後に、光の塊本体が、パン生地のように、くいっと伸びた。
身震いでもするように、光が、軽く全身を震わせる。
それは、虎とも狼とも区別できない光の獣だった。
「な、何?」
孝弘は、想わず声をあげていた。
これまで、光の戦士の様々な能力を見てきたが、これほど、明確に、光が形をとるのを見たのは初めてのことだった。
光の獣と、”マーダー”は1メートルほどの距離を置いて、対峙する。
獣の唸り声が聞こえてきそうな、緊迫した空間・・・
先に動いたのは、光獣の方だった。
まさに、獲物への間合いを慎重に計っていた獣が、まさに虎か狼のように、”マーダー”へと襲いかかった。
それを迎え撃つように、”マーダー”が触手の槍を伸ばす。
身体を僅かに翻しながら、その攻撃をかわした光獣は、その勢いを借りて、”マーダー”に襲いかかる。
鋭い爪が、”マーダー”を押さえ込み、牙が、”マーダー”を切り裂き引きちぎる。
だが、”マーダー”もやられるにまかせているわけではなかった。
光獣の攻撃の合間をくぐるようにして、触手が伸びた。
反撃に気づいた光獣が、顎を離すより早く、今度は鞭と化した触手が、光獣へを絡みつく。
さしもの光獣も、複数の触手に絡まれては身動きがとれない。
このまま絞め殺そうというのか、それとも抑え込んだところを、槍と化した触手で、突き刺そうというのか。
しかし、光獣は意外な手段を用いて、この戒めから抜け出した。
いきなり、ふっと、光獣の体型が、狐か鼬のように細まる。
あっと想う間もなく、光獣は、するりと、触手の束縛から抜け出していた。
抑え込むことが不可能としった”マーダー”は、新たな攻撃に出る。
突如、その一部が、爆発した。
爆発した部分が、数百に分かれ、宙に浮かぶ。
光の戦士を幾度となく苦しめてきた分裂攻撃だ。
もっとも、孝弘の光盾の力を持ってすれば、倒せなくても、その攻撃を封じることは容易い。
孝弘が、光盾により、その動きを封じようとしたとき、光の獣が、”マーダー”の動きに呼応した。
獣から光が分裂した。
鷹か隼か、猛禽を想わせる翼を持った鳥の形を模した光の塊が、宙へと舞い上がる。
空で小さく旋回したかと想うと、その光の鳥は、分裂した”マーダー”の中へと舞い降りた。
嘴が、”マーダー”に食らいつき、爪が、”マーダー”を引き裂き、翼が、”マーダー”を切り裂く。
分裂した分、力の弱まった”マーダー”では、光の鷹の猛攻兼速攻を前にしては、反撃する術を知らない。
孝弘が息を呑む間に、分裂した”マーダー”は見る間に、その数を減らしていく。
一方で、地上に残った”マーダー”は、光の獣によって、その肉体を引き裂かれ、噛みちぎられていた。
空と陸の立体的な攻撃の前に、”マーダー”は反撃に出るどころか、その攻撃を防ぐことすらできずにいた。
孝弘の助けなど、全く必要としていない。
分裂した”マーダー”は、もう、数えるほどしか、残っていない。
もはや、”マーダー”に勝ち目がないことは、誰に目にも(といっても、ここには、孝弘と智行しかいない。のだが)明らかだった。


敬吾が、他の仲間を連れ、たどり着いた頃には、戦闘は終結していた。
”マーダー”の数こそ少なかったとはいえ、初陣にて、これだけの戦果を現すとは、智行の潜在能力の片鱗を伺わせるものがあった。
「すげえ・・・これ、みんな、あの子がやったのかい・・・」
孝弘の説明を聞きながら、驚きを隠せない将則。
一方、今日のヒーローというかヒロインというかは、今だ、呆然とした状態から抜け出せないでいた。
他の戦士達同様、覚醒直後は、やはり、意識を失ってしまうようだ。
「う、う〜ん・・・あれ?」
周囲に賑わいに反応したのか、ようやく、智行は、自分を取り戻した。
「あれ、オレ、どうしたんだろう・・・」
灰色の粘土モドキをみた直後から、記憶が失われていた。
あたりを見渡せば、その粘土モドキとにらみ合っていた女の人がいる。
それも、1人ではない。
全部で7人も。
(え、まさか、7つご?!)
普通ありえないことを考えてしまった智行だったが、この場合、まあ、仕方ないことだろう。
「あ、あの・・・」
一体、何があったのか、聞こうと想い、彼女たちに声をかけようとした智行は、そこで、異変に気づいた。
耳に絡みつき、頬をなでる、柔らかな感触。
蜘蛛の巣でもからまったのかと想い、それを振り払おうとした智行は、自分の髪が引っ張られる感触をとらえた。
「え?これって、オレの髪?!」
柔らかなものが絡まったままの指を、目の前に持ってくると、それは、明らかに、髪の毛だった。
「え、え、なんで、オレの髪、なんで、こんなに長く?!」
慌てた弾みで、意味もなく振り回した手が、いきなり、自分の胸に当たる。

ふに

ものすごーく柔らかくて、しかも弾力に富んだ物体に触ったときに似た感触・・・
そういうものにさわれるのは、かなり気持ちいいことなのだが、なぜ、自分の胸に、そんなものが・・・
そういえば、先ほどか、胸の部分に、妙な圧迫感を感じていた。
おそるおそる視線を下にむける。
元の身体が小学生のためか、それは、小ぶりではあったが、見ただけで、それと分かる程度には、胸が膨らんでいた。
そして、いくら小学生でも、それが何かくらいは、想像がついた。
「え?え?なに、なんだ。なんなんだよこれー!」
それが何かは分かっていても、なぜ、それが、自分に・・・男の子である自分についているのか、分からず、悲鳴をあげる智行。
「おい、あの子、小学生何だろ。変な方向へ向かう前に、事情を説明してやった方がいいじゃない。」
「そうだな。叔父兼兄役としても、一応、教育には注意しないと・・・」
義和の提案に、孝弘が頷きながら、甥の方へと歩き出そうとしたとき、不意に、彼らの目の前の空間が歪んだ。
「あ、これって・・・」
「ああ」
智行以外は、既に何度も見ている光景だ。
歪みは、やがて、1つの像を結ぶ。
現れたのは、夢の中のあの少女だ。
「おい、8人は揃ったぞ。」
少女の言葉が待ちきれず、先に口を開く光一。
と、そこで、彼らは気づいた。
いつもと・・・これまでとは違う。
そこに映し出されている姿は、明らかに現実のもの・・・肉体を伴ったものではない。
しかし、今までとは明らかに違う。
同じテレビの放送でも、録画と生放送では、その雰囲気の違いが分かるように、今、彼らの前にある少女の姿は、これまで、彼らの見てきた少女の姿とは、どこか違う。
そう!そうなのだ!
今の彼女には、まるでそこにいるかのような・・・例えその姿が幻影だとしても・・・実在感があった。
「今、8人の戦士が揃いました・・・私の最後の想いを受け止め継いでくれた光の勇者・・・」
最後の想いという言葉に、皆、息を呑んだ。
最後の・・・ということは、もしかして、彼女は、既にこの世の人ではないのかも・・・
「私は、王女サウティ・・・”マーダー”に滅ぼされた星の最後の王女・・・」
少女の声が、自分の名前を告げた。
その時、8人の光の戦士は、あまりにも見慣れたその少女の名を、今、初めて知ったことに気づいた。

第11話 了


次回予告
遂に8人が戦士揃った!
王女サウティの告げた”マーダー”の秘密
そして衝撃の事実とは?

次回、シャイニング・スピリッツ・ブレイヴス
第12話
「輝ける魂」


あとがき
やっと、8人の戦士が揃いました。
ここまでの道のり、長かったにょー。
実は、今回登場した智行くん、かなり初期の段階で、その設定は完了していた。
八犬伝を知っている人なら、登場シーンで、ある程度予測してたかも知れないね。
まあ、伏線はってから、だいぶ話数と時間がたっちゃってるから、彼という存在そのものを忘れてる人もいるかも知れないが。
(ちなみに智行くんは第5話で1度登場紹介済み)

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