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女神仮面 ミーミル
By KEBO

<第二十六話:決着の時>

 ドォォォォン!ブォォォォン!
 破壊が続く基地内。
「私としたことが・・・・」ユグトスは、外れた触手を再び伸ばしながらそうつぶやいた。
 ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!恐るべきスピードで飛来する触手。しかしさっきの攻撃で大きなダメージを負ったヤマタには、すでに限界が来つつあった。「海龍」は本度によって爆発炎上し、愛娘三姉妹はすでに亡い。彼に残されていたのは、彼自身ともう一つの物だけだった。
 ドゥドゥドゥドゥ・・・不気味な音をあげて、触手がヤマタを次々と貫く。八頭の龍神ヤマタは、文字通り串刺しになった。
「・・・・我が事、ならずか」
動きを止めるヤマタ。突き刺さった時と変わらぬスピードで触手が引いていく。
「フフフ、私としたことが戦いに夢中になって獲物を取り損ねるとはね。まあいい。もう会うこともないでしょうが」ユグトスは、崩れるヤマタを前に元の不定型に戻った。
「ここにはもう用はないのでね」ユグトスは、そう言い残すと消えるように去っていった。


「なかなかやるな」
「貴様こそ」
 ドラドとアザートは、凄まじい戦いを繰り広げていた。剣と剣とがぶつかり合い、火花を散らす。しかし、どちらも一歩も譲らず全く互角の戦いである。
 すでに彼らの周りでも爆発が起こっていた。それだけでなく、爆発で生じた亀裂からは海水が噴き出してもいた。
 しかし、彼らの眼中に周りの出来事はない。互いの目に映っているのは、あまりに手強い相手の動きだけだった。少しでも周りの状況に気を取られれば、一瞬にして敗北の淵に立たされる。二人の戦いはそれほど熾烈だった。
 ガチーン!ガツーン!
 アザートの突きを太陽剣が受け返す。逆に今度はドラドが斬りかかる。かわしつつ反撃の機会を窺うアザート。その暗黒剣が振られ、ドラドを掠める。しかしドラドも慎重にそれをかわす。
 ドラドのスピードとアザートのパワー。双方のぶつかり合いは続いた。


 ガガガガガガガガ・・・・・
「ハァァァァァァァ!」さらに力を込めるミーミル。
「ウウウウウウウ」黒い玉を必死に押さえる闇奈。あらゆるエネルギーを吸収するブラックボールも、ミミー・ミョルニルの巨大なエネルギーはさすがに吸収しきれないようだ。
「ア・・・アアアア・・・」次第に押される闇奈。ミーミルの後ろには、必死にその身体を支えるアポロンと、カグヤの姿がある。兄妹と従妹の三人のエネルギーが、三人の姉を倒した末娘の力を凌駕しつつあった。そして・・・
「キャアアアア!」
「ウワァ!」
 ドゥオオオォォォォォォン!大爆発と共に吹き飛ぶブラックボール。
「ああああああ・・・」闇奈はドックの広い空間に投げ出され、吹き出した海水が溜まりだした下の方へ落ちていく。
「うわ!」
「きゃあ!」
「ああ!」
 逆に三人は、反対側の壁に叩きつけられた。
「・・・・・無事か」アポロンが、辛うじて立ち上がり他の二人を気遣う。
「ええ、なんとか・・・」答えるカグヤ。しかしミーミルの方は返事がない。
「優、優!おい、しっかりしろ!」肩を揺するアポロン。
「・・・・・・」
「おい、大丈夫か!・・・・」
「・・・・あいつ」
「ん!?」
「あいつ、自分の姉さん三人も殺したくせに、何とも思ってない・・・」
「優・・・」
「フェムニスや巳族の連中は、少なくとも目的のために戦っていたのに・・・あいつは心底楽しんで戦って、いや殺している・・・」
 ミーミル、いや優は、闇奈との戦いにいまだかつてない恐怖を感じていたのだ。
「優、ここは危ない。脱出しよう」
 アポロンは、カグヤとともにミーミルを担ぎ上げる。
「大丈夫。立てるから」ミーミルは立ち上がった。
 三人は脱出にかかった。


 ドゥゥゥゥゥン!
「ううう・・・・」
 戦士の形態に戻ったヤマタは、傷ついた身体を引きずって爆発の続くドックを脱出しようとしていた。その時、彼は戦いに気付いた。
「おまえだけは・・・・死なせるわけには行かぬ・・・」


「トゥ!」
 アザートが飛ぶ。ドラドはアザートの攻撃を避けて逆方向へジャンプした。
 しかしその時!
 ドォォォォォン!
「ウォ!」突然の爆発に足を取られるドラド。体勢を立て直そうとした彼に隙ができる。
「貰ったぁぁぁ!」再び跳んだアザートが暗黒剣を振りかぶる。その刃が、黒い光を放った。
 恐怖に動きを止められてしまうドラド。
「邪光・断絶!」
 アザートは勝利を確信して暗黒剣を振り下ろした。しかし!
「ウアァァァァ!」
「何!」
「アアアアア・・・・」
「親父!」ドラドは咄嗟に叫んでいた。
 倒れたのは、ドラドではなかった。アザートが剣を振り下ろそうとした瞬間、その一瞬の間にアザートとドラドの間にヤマタが割って入っていたのだ。
「・・・・・俺としたことが・・・」剣を納めるアザート。
「アザート・・・」倒れるヤマタを抱きかかえるドラド。
「敵とはいえ本来の相手ではない者を斬ってしまうとは・・・・勝負は預けた。ドラド、また会う日を楽しみにしているぞ」
 きびすを返して立ち去るアザート。
「・・・・・・」ドラドは無言でそれを見送ると、ヤマタを抱え起こした。
「何故だ・・・何故俺を・・・」
「無事であったか・・・ドラド、いや幸一郎」
「何故俺を助けたんだ・・・」
「それはおまえが一番よくわかっていよう・・・」
「・・・・・・・」
 ヤマタは、遠くを見るような目をした。
「私は、仁美を愛していたのだよ。仁美も、それに応えてくれた。しかし、当時我々一族は内紛を抱えていたのだ。一族が分裂するのを免れるためには、私が敵対勢力の姫を娶るほかには無かった。それを知った仁美は、自ら私の元を去ったのだ。しかしまさか身籠もっていたとは」
「何故、父を・・・」
「剣はいい男だった。私の妻は仁美のことを知って嫉妬に狂い、仁美を消すための刺客を送ったのだ。それに気付いた私は別の者を送り、その刺客を片付けようとした。しかし間に合わなかった。刺客は倒したが剣は仁美を守り盾となって死んだ。私は自らの不明のために剣を死なせてしまった。私が殺したのと同じ事だ。そして、仁美は二度と私に会おうとはしてくれなかった」
「・・・・・・・」
「それ以来、私は鬼となった。そして二度と争いと破滅がない世界を作るために、犠牲を厭わずこの計画を建てた。巳族最強の長たることが仁美への償いであると。しかし、それは間違っていたようだな・・・」
「母は、おまえを恨んではいなかった。それを俺は・・・・」
「もうよい。すべては終わったことだ」
「親父・・・」
「父と、呼んでくれるのか・・・」
 ドォォォォ!近くで爆発が起こる。
「早く脱出しないと」ドラドは、ヤマタを背負おうとした。しかしヤマタはそれを制した。
「幸一郎よ、ここから先はおまえだけで行くのだ。おまえのような・・・息子が・・・いたことを・・・・私は・・・誇りに思う」
「親父!」
 ヤマタは、ドラドの腕の中で絶命した。


「もう!どこも塞がってる!」カグヤが悲鳴を上げた。その時、
「何やってるのよ、こっちよ」
 驚いて振り返る三人。そこには、英 マリが立っていた。

「こっちって、そっちはドックじゃ」
「海水に浸かったドックの亀裂から、外に出れるわ」
 頷くカグヤ。三人は人魚の後に続いて元来た通路を戻った。


「フッ、この小娘」
 アザートは、ドックの中に倒れている闇奈を担ぎ上げた。
「全く世話の焼ける・・・」そう言うと彼は、剣を振り上げた。
「グレイヴよ!」
 突如空間が裂ける。その裂け目から、青黒く光る長めのたてがみをなびかせる、普通よりはふた回りほど大きな感じを受ける黒い馬が現れた。
 ヒュイィィィン!いななくグレイヴ。アザートは、闇奈を担いだままその馬に跨り姿を消した。


 ドォォォォン!グオォォォォン!
 基地内はいよいよ断末魔の叫びのように燃え上がっていた。
「早く!」
 ドックの端の通路を走る四人。別の通路から、ドラドが現れる。
「剣!生きてたか!」
「日野神!」
「さあ、行くわよ!」
 マリにミーミル、アポロン、カグヤ、そしてドラドが、次々とドック内を浸した海水の中に飛び込む。それと同時に今までいた通路が吹き飛んだ。
「おお、あっぶねえ!」
「安心してる場合じゃないわ、潜るわよ!」
 五人は脱出口目指して潜った。


 大爆発が立て続けに起き、秘密基地は「海龍」はもちろん、細菌弾頭もろとも岬の先端ごと崩れ落ちていった。
「おお、まさに危機一髪」
 少し離れた海岸に泳ぎ着いたミーミルたちは、崩れ落ちる基地を眺めながら変身を解いた。少しきつい服と慣れない場所に着いている下着の違和感を気にする優。
 ドコドコドコドコドコドコドコ・・・・・
「おーい!」
 頭上からヘリコプターの爆音に混じって聞こえる声。
「本度さん!」
「無事なようだな。じゃ、またな!」
 本度を乗せたヘリは沖の方へ飛んでいった。
「まったく、いつも調子のいいこって」
「仕方ない、あれがあの人たちの仕事なんだろうからな。それより優、その格好」
「うるさい!少し黙っとれ!」優が女装姿のまま薫を睨む。
「それより、どうやって帰ろうか」無邪気な紗希。
「そうか、本度さんの車で来たんだった・・・・」


「フォッフォッフォッフォ・・・・」
 闇のアジトとでも言おうか・・・・
 暗黒の力を持つ彼らは、密かに日本に上陸し、人間の欲望等、闇のエネルギーが渦巻くとある町の地下に広大な神殿を築いていた。そのエネルギーを利用して、「彼」を復活させるために・・・
「そう笑わないでもらいましょう。しかし私としたことがとんだミスをしでかして」
「そうよのう。魔王ユグトスともあろう者がそんな失態をしでかすとは。まあ良いではないか。それより、その闇奈を倒した者ども、これから邪魔になりそうじゃのう」
「そうですね・・・・どちらにしろしばらく時間は掛かるわけですし、ここらで私が遊んであげることにしましょう」
「フォッフォッフォ、そう来ると思ったわ。存分に遊んでやれい」


「お礼は言っておくわ」
「フッ、いい加減物の言い方を覚えたらどうだ?自分で子供じゃないなどとのたまいおって」
「いちいちうるさいわね、わかったわよ」
「それより早く服を着たらどうだ」
 闇奈は再び黒いローブを羽織った。
「ねえ、私の身体に何も感じなかったの?」
「そういうことは人間の男にでも言え。俺は強い相手と戦うこと以外に興味はない」
「なら何であたしを」
「気が合いそうだからだ。少し頼りないがな」
 アザートは、腕を組んで立ったままそう言った。
「あの連中・・・」呻くようにつぶやく闇奈。
「ああ。思ったより骨のありそうな奴らのようだな。おまえも戦士なら次の戦いに備えて体を休めておくことだ」
「そんな必要ないわ。すぐにでもあいつらの首吹っ飛ばしてやる」
「おうおう、元気のいいことだ。それが子供だというのに」
「うるさいわね。それに私は戦士なんかじゃないわ、神よ。死神」
「人の子が・・・よく言う」
 アザートは、闇奈を面白そうに眺めた。


「日野神・・・・」
 薫は剣に呼び出されていた。何かを手渡す剣。
「剣・・・これは!?」
「日輪のブレスだ」
 薫は自身の持つコロナブレスと見比べた。双方に同じ太陽の紋章とも言うべき紋様がある。
「それはおまえが使ってくれ」
「剣・・・」
「自分の憎しみに負けるような俺には、それを使う資格などないことがよくわかったのさ。その力は、おまえのような男が使うべきだ」
「おまえは・・・・」
「俺はしばらく旅に出る。心配はいらん、愛子は、俺を必ず待っている。あれは、そういう女だ。どのみち今のままの俺では、愛子を幸せにしてやることなどできん」
「剣・・・・」
「日野神、奴と相見えるときがあったら伝えてくれ。ドラドは必ず貴様と決着をつけるとな。俺が、自分の力で光を得たとき、俺は再び奴と戦う。そして、父親の敵を討つ」
「わかった。必ず伝えよう」
「頼んだぞ、日野神。さらばだ・・・・」
 立ち去る剣。
 薫は、そんな剣の後ろ姿をただ無言で見送った。


「ゆーくん!」
 文香の笑顔。しかし、優は難しい顔をしている。
「ねえ、ゆーくんってば!」
「ん、ああ、ごめん」
「もう!なんかゆーくん、変!」
 文香との久しぶりのデートにもかかわらず、優の心は晴れなかった。
 闇奈の陰惨な笑いが、今でも目に焼き付いている。
「文香・・・」
「え!?」急にまじめな顔で見つめられた文香は思わず頬を赤らめる。
「腹、減らない?」
「もう!ムードも何もあったもんじゃない」
 少しがっかりした文香は、優の手を引っ張った。
「え、あ、おい、どこ行くんだ」
「決まってるでしょ。オリエントホテルのランチバイキング。今ならまだ間に合うわよ!」
 グゥゥ・・・言うが早いか文香のおなかが鳴った。一瞬目を合わせて停止する二人。
「あ、聞ーちゃった、きーちゃった」
「もう!」
「わかったわかった、早く行こう!」駆け出す優。
「イヤだからね、おなか鳴ったなんて言いふらしたら」
 文香はあわてて優を追いかけた。

<つづく>



*このお話はフィクションであり、ここに登場するすべての人物、団体等は実在の物とは全く関係ありません。


ご意見、ご感想等をお寄せ下さい
<女神仮面ミーミル END>


<作者の大たわごと:第2クール終了記念大反省大会>
 というわけで、なんとか第二クール最終回を迎えることができました。こうなったら勢いで第三クールも書いてまおうかな・・・何て思う今日この頃。

1)主役は誰だ!?
 みなさんおわかりかと思いますが、第二クールの焦点は、辰巳家のお家騒動でした。最後の何回かははっきり言って優達、出る必要性あまりないし、もしかしたらこのお話の主役は本度さんで、ミーミルたちは実はカプセル怪獣なんじゃないかとも思えます。ついでになんの必要性もなさそうな「海に出ない」原潜の出現。でもね、これには訳があって、細菌戦争に潜水艦はつきものなんです(例:復活の日等)。
 しかしもともとカグヤちゃんなんかはテコ入れのためのテコ入れみたいなもんです。だいたい登場の動機じたいが不純ですからね。おわかりの方がおられるかどうか知りませんけど、薫、ゆう、とくれば「さき」なんですよね。その次は「幸」だったりするわけで、この話題はこの辺にしておきましょう。どこから攻撃されるかわからない。私は変身できないのですぐにやられてしまうでしょうし(笑)。

2)ドラドって一体・・・・
 紗希ちゃんが健全だったので、三姉妹シリーズとしては「父さんを殺したのはおまえだ!」を別の人にする必要があったわけです。そこでほとんどブル・ブラックとアグルのノリでドラドさんを出してしまったのでございます(なんて最近の特撮ネタ・・・あっしも以外とミーハーだな・・・・笑)。この方は格好以外まったく新規のキャラクターだったのでネーミングが大変でした。
 まあ、剣術の名人と言うことで人間名と相方は割と早く決まったんですけどね(例によってファンの皆様ごめんなさい!!)、その先、かなり強引に決めました。だいたい見てくれからしてそのまんまだし、変身も派手だし、蛇系と言うことで・・・・ちなみにこの人の登場した時点で、三姉妹の正体がばれたという話もあります。最後はルークになってるし。ヤマタさんなんてもっと悪い人のはずだったのに、いつのまにかいい人になってました。普段がマスク姿じゃなかったのがもったいないぐらい(笑)。
 ネーミングといえばクィンドラ。これも苦労しました。本当は三人だったので「・・・トライ・・・」風の名前にしたかったんですけどね。あまりにもそのまんますぎるし。

3)そして闇奈ちゃん
 この方も登場予定の無かった方です。だいたい母親の腹ぶち破って生まれてくるぐらいだから相当な生命力なんでしょうね。はっきり言って勢いで生まれました。この方の前途はまったく持って決まってません。果たしてマリアになるのか(とすればさしずめグレイはアザートか・・・)、アンリになるのか(もう呪文書くのは・・・・)、はたまたもっと凄いことになるのか、それはまだ私自身もわかりません。この方に限らずこのシリーズは生命力旺盛で勝手なことする人達が多くて困ります。もっと作者の言うこと聞けっちゅーの。

4)例によってこれからの展開は・・・・
 一応あります(!)。
 シリーズの折り返し点まで着いたからには四捨五入して最後まで書きたいとは思います。
 ただ第一クールの時もそうだったようにこれ書いてるとすべてが止まってしまうんですよね。その辺が落ち着いたらと言うことで。
 もっともそこまで一気に書く時間があるかどうかは疑問ではありますが・・・
 予定としては、予想外に大河的になってしまった第二クールの反省をふまえてオーソドックスな話を多くしようと思っています。愛しの文香ちゃんなかなか出てこないし。まあ今回本物(?)のミーミルちゃんもめでたくご出演なさったので良しとしましょう。
 では。例によってここまでおつきあいいただきありがとうございます。
 また第三クールでお会いしましょう。

KEBO


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