戻る

女神仮面 ミーミル
By KEBO

<第二十五話:血の報酬>

 ドドドドド・・・・・バババババ・・・・
 すでに秘密基地の入り口付近では特殊部隊と守備隊との間で激戦が繰り広げられていた。
 さすがに八蔵も、各国からの攻撃を予想していたのかそれなりの兵力を集めている。正面から基地内に侵入するのは困難と思われた。
「どこか他に侵入口が・・・・」本度が考える。
「あるわよ」あっさりと言う紗希。
「え」
「崖の途中に、排気口があるはずよ」
「どこでそんなの見たんだ」驚く薫。
「だって、基地の図面のデータあったじゃない」
「紗希ちゃん、君は大学へ行かなくていい。ウチの課でリクルートしようかな」本度が本気で悩む顔をする。
「こらこら。で、本度さん」優が口を開く。
「ん」
「崖を降りるロープ、あるんでしょ」
「そんな物いちいち・・・・・・・持ってるよ」
「よし決まった。行こう!」


「どうだ」
「は、出撃準備完了まであと三時間ほど・・・」
 潜水艦のブリッジ。八蔵が艦長に指令を与える。
「二時間でするのだ。すでにここが攻撃されているということは、ドックを出た瞬間に敵潜が群がって来るぞ」
「ハ!急がせます」
 辰巳グループが総力を挙げて極秘裏に建造した原子力潜水艦「海龍」は、着々とその出撃準備が進められていた。積み込まれたミサイルには、核弾頭の代わりに女性化ウィルスを詰め込んだ弾頭が搭載されている。
「原子炉出力、正常」
「発射管チェック良し」
 ロシアやアメリカをはじめ世界各国から集められたクルーが、作業を進めていく。その実力は、決して各国の潜水艦乗りに劣らない精鋭たちだった。
「閣下!」報告が上がってくる。
「どうした」
「基地内に、敵が侵入しました」


 巧妙にカムフラージュされてはいたが、崖の途中にある排気口はすぐに発見できた。本度が先頭にその狭い通路に侵入していく。
「本度さん、その大きい荷物、もしかしてまたあれ?」
「いや、今回はバレットは無し。その代わりに爆発物関係がたくさんだ」
 おもむろに、排気管の蓋を外す本度。
「さあ、出るぞ」
 順番に、基地内に侵入する優達。しかし敵の動きは、優達を全く無視しているかのようだ。
「本隊が突入に成功したかな?」つぶやく本度。しかし、優の方には別の反応が現れていた。
「おうおう、また始まった・・・」いつもよりはゆっくりとだが、女性化していく優。
 その時、剣がぴく、と振り向いた。
「どうした」
「奴を感じる・・・・」
「剣」
「日野神、奴は俺に任せろ」
 頷く薫。
「本度さん、こっちは基地の破壊を」
「よし。行こう!」
 一行は基地内を進みはじめた。


「アッハッハッハッハ!」ヒステリックな笑いが響く。
「う、うわ、バケモノだ、あああ!」
 次々と飛ぶ生首。青白く生気のない顔に生々しく紅い唇をした闇奈は、そのあどけなさの中に残忍な笑みを浮かべながら、まるで死神のようなカマを構えて一歩一歩進んでいく。彼女がそのカマを目に見えぬほどの早さで振り下ろすたびに血飛沫が上がり、胴体と切り離された首が彼女の足下に転がるのだ。
 突如出現した敵に、効かない銃を無茶苦茶に撃ち込みながら後ずさりする守備要員たち。
「閣下に報告しろ。このままでは、制御室までやられるぞ!うわ!」
 そう叫んだ男の首が飛ぶ。闇奈はドックの制御室に迫りつつあった。


 そのころ、まだ戦闘になっていない別のゲートに、一台のトレーラーが到着していた。
 厚さ数メートルもの岩にカムフラージュされたゲートが開き、トレーラーが収容される。
 警備兵が八蔵に報告した。
「お嬢様方が到着されました」


「麗奈・・・・その姿は」
「父上、申し訳ありません。清華をはじめ、ことごとく・・・・葉山も死にました」
「そうか・・・それよりおまえたちの方が」
「私たちは大丈夫です。基地内の敵は私たちに任せて、父上は出撃準備を」
「わかった。麗奈、綾奈、香奈」
「はい」
「無理をするでないぞ。おまえたちは生き延びねばならぬ」
「承知しております。では」
 モニターが消える。
「綾奈、香奈、行くわよ」
「ええ、お姉さま」
 振り向く麗奈。その姿は、すでに半ば人間の物ではなかった。重傷を負った部分を機械組織の移植によってサイボーグ化した麗奈たちは、命に代えても一族の野望を果たすべくこの基地へやってきたのだ。
「ガドラ!」「ゲドラ!」「グドラーン!」
 再び三人が合身する。そこに現れたのは元のクィンドラではなかった。
 ダメージを負った中央の首と胴体、そして翼を機械化したメカクィンドラとも言うべき姿になった三姉妹は、基地内に侵入していった。


「アッハッハ。死ね!死ね!死ね!」
 狂ったように残忍な声を上げながら進む闇奈。その前に、巨大な何かが立ちはだかった。
「ココカラ先ヘハ行カセヌ」
「なによ、あんた」その冷たい光を湛えた視線を向ける闇奈。
 思わずたじろぐメカクィンドラ。
「オマエハ・・・・」
「もしかして、例のお姉さんたちね」
「ソノ姿ハ・・・・」
「はじめまして、お姉さん方。私は闇奈。黙ってくれそうじゃないけど誕生祝いにその生首頂くわ」
「何ヲ!」
 言うなりカマを振りかぶる闇奈。メカクィンドラもさらに強化された虹色の光線を闇奈に向けて放つ。
「アッハッハ!」ふわり、と移動しつつ光線をよける闇奈。三人の姉と末娘の死闘が始まった。


「本度さん、あれ!」
 薫たちの眼前に、巨大な箱のような空間に鎮座した黒い物体が現れる。
「こいつが原潜か」
 そういいつつ、本度は手を休めない。瞬く間に起爆装置をセットすると、まだ水の張られていないドックに駆け込み原潜の船体にてきぱきと爆弾を取り付けはじめた。
「そんな小さい爆弾でいいの?」優の素朴な疑問。
「破壊できなくても出撃不能にすればいい」
「なるほど」
「本度さん、危ない!」紗希が叫ぶ。
「おっと!」
 バババ!炸裂する銃弾。守備要員が本度たちに気付いたのだ。拳銃を抜いて応戦する本度。
 その時、優が遙か頭上で展開されるメカクィンドラと闇奈の戦いに気付いた。
「あれは!」
「優、紗希ちゃん!」薫はすでにポーズを取っている。
「光力招来!」「女神転生!」「ムーンライト・イリュージョン!」
 変身する兄弟と従妹。本度も頷く。
「行くぞ!」三人は、原潜の船体を跳び上がっていく。


「あれは・・・艦長、後は任せた。私がくい止めるうちに準備を」
「イエス・サー!」
 ブリッジを出る八蔵。その頭越しに何かが伸びる。辛うじてかわす八蔵。
「何奴!」
「はじめまして。いや、もうすでにお会いしてはいますがね、葉山さんの身体を借りて」
 甲板上で警備兵の格好をしたそいつの姿が、一瞬にしてグニャグニャの不定型に変わる。
「おのれ、貴様が葉山を」
「今頃気付いても遅いですよ。今日もこの潜水艦、頂いて帰りますから」
「そうはさせぬ。蛇神転生!」
 変身したヤマタに、ユグトスの触手が伸びる。ヤマタが草薙の剣でなぎはらいながら触手をかわすうちに、ユグトスの身体が変化していく。
「何!」
「だから頂くと言ったでしょう。あなたはここで朽ち果てればよろしい」
 伸びた触手がヤマタに巻き付く。その付け根は薄く拡がり、徐々に潜水艦そのものを包み込みはじめた。
「おのれ!こうなってはやむを得ぬ」
「ははあ、どうなさるのですか」
「見るがよい!巳族の長ヤマタの、本当の姿を!」
 草薙の剣をかざすヤマタ。その身体が燃え上がり炎の柱になる。やがてその先が八つに別れ、それぞれ龍の頭になり、やがて炎の柱は燃え上がったまま八頭の大蛇になった。
「八頭蛇神ヤマタ!」
「遂に正体を現したわけですね。面白い、受けて立ちましょう」
 ユグトスは一度広げた身体を収束するとヤマタと同じように八頭の大蛇の形に変形した。
「オノレ・・・フザケタ真似ヲ」
 原潜の甲板上で正対するユグトスとヤマタ。


「あれは・・・・」剣は、そのヤマタを発見した。
「行くぞ、エル・ド・ラーッド!」ドラドに変身する剣。
「待て!」
 ドックの通路から潜水艦の甲板に向かって跳ぼうとしたドラドを何者かが呼び止めた。
 振り向くドラド。
「何者だ!」
「俺はアザート。暗黒の騎士」
「残念だがおまえにかまっている暇はない」ドラドは言い捨てる。しかしアザートは言った。
「それは違うな。今奴は俺の仲間と一対一の勝負をしている。それを邪魔させるわけには行かん」
「何!」
「見たところ貴様もなかなかの使い手と見た。俺と勝負しろ」
 暗黒剣を構えるアザート。
「よかろう。太陽剣よ!」ドラドは挑戦を受けた。
「貴様の名を聞こう」
「太陽騎士、ドラド」
「ではドラド、行くぞ!」


「きゃあああ!」
 ビュビュビュビュビュビュビュビュ!ドドドドド!
 闇奈のボディに次々と炸裂する虹色の光線。闇奈はメカクィンドラのパワーに圧倒されているかのように見えた。そして遂に、闇奈が崩れ落ちるように倒れる。
「タトエ貴様ガ我ラノ妹デアロウト邪魔スル者ハ容赦セヌ」
「妹!?」耳を疑うアポロン。
「そんな・・・姉妹どうしで・・・」カグヤも衝撃を受けていた。
「兄貴・・・・・」ミーミルも思わず立ち止まる。
 攻撃を中止し、一歩一歩闇奈に迫っていくメカクィンドラ。アポロンたちは介入するのを避け、その様子を見守った。
「・・・・・やってくれるわね、お姉さま方」
「何!」
 すっくと立ち上がる闇奈。彼女は無邪気さを邪気で満たした微笑みを浮かべると、立ち止まるメカクィンドラの前でおもむろに黒いローブを脱ぎ、生気のない、しかし妖しい色香を発散させる青白い裸体を晒した。さらに脱ぎ捨てたローブを丸めると、それが黒い水晶玉のような物体になる。闇奈は妖しく光る黒い玉を両手でしっかりと持ってメカクィンドラの前に立ちはだかった。
「ドウイウツモリダ・・・・」
「さあ、どういうつもりかしら」挑発する闇奈。
「エエイ!ナラバ、死ネ!」メカクィンドラは、再び虹色の光線を放つ。しかし、その光線はことごとく黒い玉に吸い込まれていった。
「アッハッハッハッハ!無駄な事よ」闇奈のヒステリックな声が響く。
「ドウイウコトダ・・・・」驚くメカクィンドラ。
「こういう事よ」黒い玉が恐ろしく冷たい光を放つ。
 ビュオォォォォン!
「え!」「う!」「そんな・・・」凍り付くミーミルたち。
「ウ・・・・・」両膝を着くメカクィンドラ。玉から伸びた黒く太い光線が、胴体の中央部を貫いていた。
 胴体に開いた穴から虹色の光が溢れる。
「アッハッハッハッハッハッハ!」
「・・・・・父・・・上・・・」力無く巨体を横たえるメカクィンドラ。その目から、命の光が消えていく。そして・・・
 グオォォォォン!
 メカクィンドラは、大爆発を起こした。
「あああ・・・」信じがたい出来事に呆然とするミーミルたち。しかしその爆発が、彼らに正気を呼び戻した。
「優、やめろ!」
爆発の中から四方八方に飛び散る虹色の光が、次々と周り中を破壊していく。その中、アポロンが止めるのも聞かずにミーミルは闇奈に戦いを挑んでいく。
「おまえは一体・・・・」怒りに打ち震えながら言うミーミル。
「私は闇奈。今死んだ三人の妹よ」
「姉まで殺して・・・・何が目的だ!」
 ヒステリックな笑いを響かせながら闇奈が答える。
「かーんたん。この潜水艦ごと細菌弾頭を貰いに来たの」
「そうはさせない!」ミーミルは両手を差し上げた。
「優、よせ!」アポロンの叫びはミーミルには通じなかった。
「アッハッハ!あなたも死なせてあげる」闇奈も黒い玉を両手で差し出す。
「ミミー・ミョルニル!」ハンマーを振り下ろすミーミル。
 ガガガガガガガガガガガ・・・・迸るエネルギー。
「う!」そのエネルギーを黒い玉に受ける闇奈。
「優!」「優お兄ちゃん!」
 力の限り踏ん張るミーミル。それを後ろからアポロンとカグヤが支える。
「うわああああああ!」
「うううううううう!」闇奈も一歩も引かない。


「何!」ヤマタは娘たちの死を感じた。
 ヒュン!ヒュン!ユグトスの触手が飛ぶ。ヤマタと同じ形に変形したユグトスはヤマタが八つの口から炎を吐く代わりに八つの触手を伸ばしてヤマタに襲いかかっていた。
「そら、頂きますよ」娘の死に気を取られたヤマタに、一瞬の隙が生じる。
「ウウ!」
 ユグトスの触手の一本が、ヤマタの胴体を貫いた。
「ウオォォォ!」強烈な炎のブレスでその触手をなぎ払うヤマタ。しかし受けたダメージは大きかった。
「ホッホッホ!娘の後を追うがいい!」ユグトスの触手が束になって飛んでくる。
しかし突然の爆発に煽られそれはヤマタを捉えられなかった。
「何!」


「中佐!」
 特殊部隊は、ドック内部をようやく制圧した。それに援護されて原潜に爆弾を仕掛け終えた本度が走る。
「ありゃあ・・・・」脱出する途中、ミーミルたちの戦いが目に入るがもう時間はなかった。
「中佐!」再び隊員に急かされる本度。すでにメカクィンドラの爆発によりドックそのものの破壊は始まっており、そこら中で爆発が起こっていた。
「・・・・仕方ない。ヒーローなら生き延びろよ」
 本度はドックから確保された脱出路に駆け込むと、走りながら自分も起爆装置を作動させた。
 ドオォォォォ!次々と爆発する爆弾。優にはそう言わなかったが小型でも十分破壊力のある爆弾だったのだ。ドック内に火柱が上がる。
「急げ!脱出だ!」本度と特殊部隊は脱出路をひた走った。

<つづく>



<次回予告>


「私としたことが・・・・」
「なかなかやるな」
「貴様こそ」
「おい、大丈夫か!・・・・」
「大丈夫。立てるから」
「おまえだけは・・・・死なせるわけには行かぬ・・・」
「邪光・断絶!」
 次回「決着の時」お楽しみに。


*このお話はフィクションであり、ここに登場するすべての人物、団体等は実在の物とは全く関係ありません。

ご意見、ご感想等をお寄せ下さい
<女神仮面ミーミル END>


<作者のたわごと>
 どうも!第二十五話「血の報酬」です。
 いやあ、前回ぐらいからいきなり血生臭くてグロい展開になってますね。最近結構お子様向け風な展開だったのに、ここへ来ていきなり深夜番組に戻った気がします。まあ元々のコンセプトが深夜番組風ですからいいんだけど。
 だいたいサブタイからしてそうですね。血ですよ血。闇奈ちゃんがケラケラ笑いながら生首吹っ飛ばすの図なんて想像するだけでゾクゾクしますね(あっぶねー・・・・!)。
 まああまりかくと危険人物だと思われるので(まあ否定はしませんが:笑)ここらでやめときましょう。今回は仲良し兄弟(兄妹?)+従妹と険悪姉妹の対比を描いてみました。
次回、第二クール最終回をお楽しみに(っていうほどの展開でもないけど)。
 では。

KEBO


戻る


□ 感想はこちらに □