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女神仮面 ミーミル
By KEBO

<第二十三話:三姉妹恐怖の正体>

 無言のまま向かい合う二人。
 ドラドの太陽剣が、微かに動いたのを皮切りに、両者のぶつかり合いが始まった。
 カシュンカシューン!
 目にも留まらぬスピードで動き、ぶつかり合う太陽剣と草薙の剣。
 数度の火花を散らして、最初の応酬は終わった。
「ほう、なかなかやるな」ヤマタは、仮面の奥で微かな笑みを浮かべてつぶやいた。
 無言で隙を窺うドラド。しかし、ドラド同様ヤマタにも付け入る隙がない。
 両者の間の緊迫度は、周囲で見守るヤマタの供たちをも圧倒していた。
「ハッ」ドラドが一歩踏み込み、攻勢を掛ける。
 カンカンカシューン!ヤマタも冷静にドラドの攻撃を受け流す。
「ホッ!」今度はヤマタが反撃した。
 ヒュインキュアイーン!冷静な剣さばきでその攻撃を受けるドラド。
 ジジジジジ・・・・太陽剣と草薙の剣がぶつかったままエネルギーの火花が落ちる。ヤマタの押しで、剣が離れた。一歩後退するドラド。それに乗じてヤマタは再び攻勢を掛けたが、ドラドはそれをかわして反撃を掛ける。目にも留まらぬ見事な連続攻撃に今度はヤマタが押し返される。しかしそれも冷静に受け止めるヤマタに打撃を与えるには足らず、両者は再び緊張のもとに正対した。
 ぶつかり合う視線と視線。ヤマタとドラド、両者があまりにも隙のない相手の隙を窺って、じりじりと位置取りを変えていく。
「見事なものだ。これほどの腕とはな」感嘆するヤマタ。しかし、ドラドはそれには応じなかった。
「トウ!」再びドラドが攻撃をしかける。両者の剣がめまぐるしい動きを見せ、火花が散る。
 両者の戦いは続いた。


「お姉さま・・・」
「わかっているわ。貴美子さんまでがやられたようね。どうやら私たちが戦うしかなさそうよ」
 麗奈は綾奈、香奈を前にそう言った。
「いずれ奴らはここに来るはず。覚悟して置きなさい、我々三姉妹の実力を見せつけてやるのよ」
 二人の妹は力強く頷いた。


「いつも息子たちがお世話になって・・・」
「奥さん、いつもこんな美味しいコーヒー煎れてらっしゃるんですか?」
 日野神家のリビング。本度がソファーに腰掛けてコーヒーを飲んでいる。
「あらいやだ。本度さん、お上手ですのね」蘭が照れる。
「あのなあ・・・・」呆れる優。
「あら優、まだ着替えてなかったの」
「着替えも何も、俺の着る服ないじゃないか」
「え、部屋に掛けといたでしょ」
「あのなあ、また俺にあの服着せるわけ?俺の、いつもの服どこにやったの!」
「せっかくの機会だから全部クリーニングに出したわよ」
 本度がコーヒーを吹き出すのを辛うじて抑えている。
「すみません、いつもこんな調子なもので」紗希が本度にそう言うと。本度はたまらず口を押さえて下を向いた。
「いいじゃないの、どうせすぐ女の子になっちゃうんだから。それより優、着替え終わったら教えて頂戴」
「人ごとだと思いやがって・・・」優は何だかんだいいながらかつて本度に貰ったパンツスーツに再び袖を通した。
「ちゃんと下着は着けた?」
「いい加減にしろよ!俺はそんな趣味は」
「趣味じゃなくて現実でしょ。それより・・・ま、なかなか似合うじゃないの。どうもすいません本度さん、こんなに高そうな服頂いてしまって」
「・・・ま、ま、経費ですから」本度もさすがに答えに困った。
「まあいいわ、いらっしゃい優」
 半ば強引に両親の寝室に連れて行かれる優。
 十分後・・・・
「アッハッハッハッハ!」ついに大笑いしてしまう本度。
「見ないでくれよ、本度さん・・・・」
「いいじゃないの。そんなに濃くしてないし、それなら変身しなくても十分女の子に見えるわよ。その服装でも全然違和感ないし」満足そうな蘭。
「いくら娘が欲しかったからって・・・・自分の願望押しつけやがって」
 蘭によって軽く化粧を施された優は、憮然とした表情で言った。
「もうイヤだこんな家!行こう、本度さん」
「はいはい」
「行ってらっしゃーい」
「行って来まーす!」
 元気に答える紗希。BMWは一路辰巳屋敷へと向かった。


 ドラドとヤマタの戦いは、依然続いていた。
 数回の応酬があったが、いずれも両者にダメージを与えるには至っていない。しかしヤマタは、その力を徐々に現しつつあった。
「何・・・・」異様なパワーを感じるドラド。
「ハハハ、おまえの腕が見事なのはわかった。しかし私にも都合というものがある。そろそろ切り上げさせて貰うぞ」
 そう言うとヤマタは、剣を天空に向かって差し上げた。草薙の剣に空から稲妻が迸る。
「何だと!」始めて焦りを見せるドラド。ヤマタは、稲妻が迸ったままの剣を地面に突き立てる。
 バババ!ドゥーン!
「ウァァァァァ!」大地を走る稲妻に直撃され、吹っ飛ぶドラド。辛うじて立ち上がった彼を、第二撃が襲う。ドラドは必死に太陽剣を突き立てそれを受けたが、今度は太陽剣ごと吹き飛ばされてしまう。
「太陽剣が・・・・」
 吹き飛ばされた太陽剣は、断崖の下へと落ちていく。
 ドラドは完全に意気を挫かれるどころか変身まで解け、人間体に戻ってしまった。
 じりじりと、ヤマタが迫る。
「どうした、そこまでか」迫るヤマタに押され、幸一郎は後ずさる。その片足が、不意に崖を踏み外した。
「うあああ!」落ちるドラド。彼は辛うじて立木に掴まり転落を逃れたが、その木も重みに耐えかねて、かなりたわんでいる。
「畜生、早くとどめを刺せ」強がる幸一郎。しかしヤマタは、意外な行動に出た。
「ど、どういうつもりだ」驚く幸一郎。
 ヤマタは剣を置くと、幸一郎に手を差し延べたのだ。
「私と一緒に来い。おまえの力はとくと見届けた。おまえは、我が一族を率いて行くに十分な力を持っている。我ら親子で力を合わせれば、世界の支配だけではない。あの、暗黒の神々をも倒せるやもしれぬ」
「待て、今何と・・・」
「そうとも、我が息子よ。おまえが現れるのをずっと待っていた。間違おうはずもない。おまえのその面影は、まさしく、まさしく私がただ一人愛した女、仁美のもの。そしてその力は、我が巳族の力。私が愛し、そして私を愛するが故に姿を消した仁美の忘れ形見よ」
「嘘だ・・・・貴様は、俺の・・・・うああああ!」
 バサ!幸一郎の体重を辛うじて保っていた木が、遂に折れた。
 まっさかさまに断崖の真下へ落ちていく幸一郎。ヤマタはその姿が海に落ちるのを見届けると、剣を納め、人間体に戻った。
「殿」供の者達が駆け寄る。八蔵は、ただ何も言わず遠くを見つめていたが、しばらくすると向き直りリムジンに戻った。
「参るぞ」
 八蔵は、そう一言だけ供に告げた。リムジンは、再びスタートした。


「行くぞ!」
「あいよ!」
「きゃ!」
 ドサ!
「いたーい!」
「シッ!大声出さないの」
「だって痛いんだもん」
「仕方ないだろ、正門から堂々と入れないんだから」
 優、紗希、そして本度の三人は、夜陰に乗じて高い壁を越え、辰巳屋敷に侵入した。しかし、せっかく暗闇の中を突破したのは全く無意味だった。
「あれあれ・・・・」やはり女性化してしまう優。しかし、暗さと化粧が手伝って本度たちにはわからない。
「よく来たわね」女の声。
 振り返る優達。そこには、たくさんのトカゲ人間たちを従えた辰巳三姉妹がスリップドレスのような薄着で立っていた。
「何だ何だ、歌でも歌うのか」例によって不敵な台詞を吐く優。しかしその声は高く細い声に変わっていた。
「残念でした。でも不法侵入しといて随分な物言いね」
「そろそろ、教えてくれてもいいんじゃないのか、何を企んでいるんだか」本度が口を挟む。
「さあ何かしら。でも残念ね、あなた達は、それを知ることはできないんですもの。かかれ!」
 トカゲ人間たちがその爪を立てて襲いかかってくる。
「ちょっと待てよ!」優が飛びかかってくるトカゲ人間をよけながら左手を挙げた。
「女神転生!」
 ピカァァァン!知恵の瞳が輝いた。
 知恵の瞳は指輪から離れると優の頭上で輝き、次第に形をとっていく。手、脚、胴体、そして最後に頭と、輝きの中で取られた形がちょうど光で作られた鎧のように優の体を包みこむ。
 次の瞬間、白と紫のツートンにプラチナ色のラインが入った鎧のようなスーツと仮面、そしてマントに身を包んだ女戦士が、そこに立っていた。
「女神仮面ミーミル!」
 ミーミルは、次々とトカゲ人間たちを投げ飛ばす。本度もどこから取り出したのかサブマシンガンを取り出して撃ちまくっている。
「本度さん!TMP撃ちまくるのはいいけど当てないでよ!」
「味方に当てるゆとりなんかないよ!」
 見ればトカゲ人間は、十発近く打ち込まなければ倒れないのだ。
「紗希ちゃん!」
 逃げ回る紗希もようやくポーズを取った。
「ムーンライト・イリュージョン!」
 首に掛かったペンダントが輝く。と同時に空から彼女に向かって光が降り注いだ。
 光の中、彼女の身体に光の鎧が装着されていく。
 やがて光が収束し、そこに西洋の甲冑のようだがもっと身体にフィットしたサイズのレモンイエローをした鎧、いやスーツを身に纏った彼女が現れた。
「月光天使、カグヤ!」
 群がるトカゲ人間たちを次々と倒すカグヤとミーミル、そして本度。
 不意に、攻撃がやんだ。
 トカゲ人間たちが下がっていく。
「ホホホホホ、そろそろ私たちの出番のようね」
 三人娘は麗奈を中心に、伸ばした手の甲を重ねた。
「ガドラ!」
「ゲドラ!」
「グドラーン!」
 各々が叫ぶ。すると三人の姿は、それぞれ、赤、青、黄色い龍の姿に変わっていく。そしてその龍たちが、螺旋状に絡み合いながら上空へ上っていく。
「一体何が起こるんだ!」本度が叫ぶ。
 三姉妹が変身した龍はエネルギー体のように発光し、やがて光を放って爆発した。
「うわ!」おもわず身を伏せる三人。爆発の炎は、徐々に収束し一つの形となっていく。
「あれは・・・・」
「ホホホホホ・・・・・ホホホホホ」
 そこに現れたのは、三つの頭部、二本の尾、そして二枚の羽を持った、ミーミルたちの三倍近くはあろうかという極彩色の巨大な龍だった。
「我、クィンドラ!ココカラ先ハイカセヌ!」
 クィンドラは三本の首をミーミルたちに向けると、攻撃を開始した。
 ビュビュビュン!ビュビュビュン!ビュビュビュン!
 三本の首から稲妻のような虹色の光線が雨霰のように、まるで地表を破壊し尽くすかのごとく降り注ぐ。
「うわわわわわわわ!」慌てて逃げ回るミーミルとカグヤ。しかし本度に向かっては光線は飛んでこなかった。
「何故だ!何故俺を狙わぬ!」
「普通ノ人間ヲコノ力デ攻撃ハセヌ」
「こっちはそうはいかないぞ」
 本度は背中のバッグから携帯式ロケットランチャーを取り出すと、あっという間に組み立ててクィンドラに向けて放った。
 ブシュー!ドォォォォン!
「ホホホホホ・・・・ソンナ物ガ我ニ効クト思ウテカ」
 ランチャーの弾頭は、クィンドラに命中する前に撃破されていた。
「何て事だ」と言いながら走る本度。しかしその足下に光線が炸裂した。
「うわ!」
「言ッタハズ。ココカラ先ヘハイカセヌ!」
 本度は陰に隠れているしかなかった。
 一方、嵐のような攻撃を受けるミーミルたちも、限界に達しようとしていた。
「きゃ!」転ぶカグヤ。そのカグヤを次々と光線が襲う。
「キャアアアアア!」転げ回るカグヤ。
「紗希ちゃん!」しかしミーミルもカグヤにかまっているゆとりはない。その脚を光線が捉える。
「イヤ!」
 地面に叩きつけられるミーミル。まるで雨の如く二人の身体に光線が炸裂する。
 ドトドトドトドト・・・・
「アアアアアア」「イヤアアアア!」
 苦しむ二人。本度も全く手を出せない。
 不意に攻撃がやんだ。ダメージのあまり立ち上がれないミーミルとカグヤ。
「サテ、ソロソロ終ワラセテ貰イマショウ」クィンドラが地面に降り立つ。しかしその時!
「待て!」鋭い声が響く。
 クィンドラを始めそこにいる全員が振り返った。
 シュ!黒薔薇のカードがクィンドラの足下に突き刺さる。
「兄貴・・・遅いよ・・・」
「待たせたな」
「貴様、何奴」
「いまさら名乗るのも何だが、聞かれたからには答えてやる」
 黒いマントに黒いスーツ、黒い仮面、そしてアイラインを始めとして身体中に輝く金色のライン。彼はゆっくりとその姿を現した。
「闇を切り裂く正義の光!太陽仮面・アポロン!」
「一人増エヨウガ同ジ事。喰ラエ!」
 三本の首から発射される虹色の光線が、嵐のごとくアポロンを襲う。しかしアポロンは一歩も引かない。
「太陽刀よ!」
 アポロンの右手に現れる光り輝く刀。アポロンはその刀を腰の高さで横一文字に構えた。
 光線はその激しさをさらに増していく。アポロンが叫んだ。
「秘剣・陽炎!」
 叫びながら彼は、太陽刀を横一文字のまま頭の高さまで平行に振り上げる。アポロンの前面の空気が歪んだように見えた。
「何・・・・」
 クィンドラの光線が、ことごとくその歪みによって屈折させられ、あらぬ方向に飛んでいく。クィンドラは、必死に光線を集めて攻撃を強化したが逆にアポロンは、一歩一歩クィンドラに近づいていった。そして・・・
「必殺剣・陽炎落とし!」
「ギェェェェェ!」
 一瞬にして、縦に振りかぶられた太陽刀が、一気に振り下ろされる。次の瞬間、クィンドラの中央の首が切り落とされていた。
 ドオオオオ・・・崩れ落ちるクィンドラ。クィンドラは残りの首からも泡を吹いて動かなくなった。
「兄貴・・・」ようやく立ち上がるミーミル。しかし、アポロンも片膝を付く。
「あの光線、正面から受けるのやっぱしんどいわ」
「助かったよ、薫君」本度が駆け寄る。
「さあ、急ぎましょう」立ち上がるアポロン。
「ちょっと、待ってよ・・・」カグヤもようやく立ち上がる。
「おっと、早くしないと置いてくよ、紗希ちゃん」
 四人は、ついに辰巳屋敷の内部に侵入した。

<つづく>



<次回予告>

「ウィルス!?」
「清華様、私と共に来ていただきましょう」
「いいえ、まだ終わってはいないわ」
「この車にしておいてよかったよ。行くぞ」
「信じてるわ。あなた」
「さあいでよ、新たなる暗黒の生命よ」
「久しいなナイ。息災か」
 次回「闇の鼓動」お楽しみに。

*このお話はフィクションであり、ここに登場するすべての人物、団体等は実在の物とは全く関係ありません。

ご意見、ご感想等をお寄せ下さい
<女神仮面ミーミル END>


<作者のたわごと>
 お約束サブタイ「三姉妹恐怖の正体」です。
 たぶんおわかりと思いますが今回は、かつて銀幕を舞台に大暴れされたキングギドラさんをイメージした(そのまんまという話も・・・)極彩色の龍、クィンドラに登場していただきました。これは「三姉妹」にした時点で決めていたことです。(とんでもないね、まったく)
 念のため、キングギドラさんについて説明しておきますと、彼?はかの阪急東宝グループが宝塚歌劇と並んで世界に誇る世紀の大怪獣ゴジラシリーズ最大の敵役怪獣さんで、その金色に輝く美しい姿と、ゴジラたち地球怪獣が束になって掛かってようやく対抗(撃破、ではない)できるというとてつもない強さは「宇宙超怪獣」(超ドラゴン怪獣にあらず!)の肩書きに相応しい物でした。初登場から三十年いや四十年近く経つ今でも、強い、カッコイイ、インパクト強いと三拍子揃った凄い怪獣というのは他にほとんどいませんねえ(ちなみに流星人間ゾーンでは二週間掛けてやられてましたが・・・)。もっとも最初に登場したときは私もまだ生まれていませんでしたが・・・最近モスラさんが「鈍行」で倒したときにはショックを隠しきれませんでした。
 話がそれましたが、次回でようやくほとんどバレバレの陰謀が明らかになります。
 では。


 KEBO。


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