女神仮面 ミーミル
By KEBO

<第二十二話:プロジェクトA>

「ほほう、思いの外早かったな」
「は」
「いよいよ我らが治世が始まるのだ」
「では父上・・・」
「ああ。A計画を発動する」
 辰巳家の屋敷。八蔵と三姉妹にもたらされた葉山の報告は、A計画を大きく前進させるものであった。
「して、ワクチンの方は」
「必要数の確保まで、あと十日ほどかと」
「よし、海龍の艦長に伝えよ。出撃準備を整えよとな」
「かしこまりました」
「二ヶ月ほどで、世界は我らのものとなる。参るぞ」


「そんな・・・課長」
「驚くことはないXX7、君の報告が間違っていたわけではない。しかしそれ以上に彼らを前進させる何かがあったのだ」
 某国国家安全保障局XX課の本部。XX7と呼ばれる男が課長に呼ばれていた。
「ところで、ここ数日XX4からの報告が途絶えている」
「そこで、私の出番というわけですか」
「察しがいいな。おそらくXX4はもうこの世にはいまい。しかし情勢は急速に変化し始めた。局長の許可も貰ってある。首相も、今回のことでは表だった動きを起こせず対処に苦慮して居られるそうだ」
「わかりました。私も無関係ではありませんし」
「よろしい。では早速行ってくれたまえ。Sには、話をしておく」
「イエス、サー」


「う、ううう・・・」
 辰巳屋敷の地下。一人の男が、部屋に閉じこめられている。男は、裸のまま身体を丸くして苦しみに耐えていた。
「どうかしら、気分は」綾奈が、冷たい言葉を投げかける。
「貴様ら・・・ただではすまんぞ・・・」
「あら、どう済まないのかしら?」
「世界が、黙ってはいない・・・ああ」苦痛に思わず叫び声を上げる男。
「無理無理、あなたの報告は届いていないもの、ね、スパイさん。もうすぐ世界中の男たちがあなたと同じ苦しみを味わうの。あなたは少しそれが早いだけ。さあ、大人しく女になっちゃいなさい。それとも、なりきれなくて死ぬかしら?」
「ううう・・・」
「言ってなかったけど、年齢が高くなるにつれて、女性化しきれずに死ぬ率は上がるのよ」
「おのれ・・・」
「あなたに投与した物の改良型を、今弾頭に詰めているわ。感染力は、比べ物にならないほど強くなっているけど。もうすぐ世界中から争いはなくなる。そして、私たちが平和に支配するのよ」
「何億人を、殺してか」
「殺すのはウィルス。私たちじゃないわ。それに、絶対死ぬ訳じゃないし」
「う、うあああ・・・」男が、再び悲鳴を上げて静かになった。
「あらまあ、気絶してしまったようね」綾奈は、気絶した男の身体に注目した。
 男の下半身部から、黒ずんで腐ったような物体が抜け落ちる。
「うふふ、どうやら第一関門は突破したようね。このままうまく女になれるかしら」
 綾奈の妖しい笑いだけが響く。


「この四人、でございますか」
「そう。この四人だけは、A計画の前に消しておかなければならないわ」
 麗奈は、目の前にいる女に指示を出していた。
「亀乃なんかに負けるわけには行かない。頼んだわよ、貴美子さん」
「かしこまりました」
 貴美子は、辰巳家を後にした。


「ゆ、優・・・・」
「優、お兄ちゃん・・・?」
 日野神家の朝。蘭と紗希が驚きの声をあげる。
「うるさいな・・・・朝起きて、なんか胸のあたりが苦しいと思ったらこうなってたの」
 朝起きると優は女性化していたのだ。
「いったい何なんだよ・・・・また何か出るのかよ」
 悪態をつきながらカーテンを開ける優。そして優は、彼に起こったことの理由を発見した。
「うそ!」リビングにいる誰もが驚いた。
 窓の外には、一人の女が立っていた。
「おはようございます」
「おはようございます、じゃないだろ!朝から人んちに勝手に入り込んで」
「まあ、威勢のよろしいこと。今日は挑戦状をお持ちしましたの」
「挑戦状!?」
 女は、紙飛行機にしたその挑戦状を、優の方に投げた。
「どういうつもりだ」
「どうもこうも、ここでは他の方に迷惑が掛かりますので、よそに場所を移そうと思っただけですわ。そこにも書いてあるとおり、もし応じていただけない場合は」
「あのねえ、これ、思いっきり他の人に迷惑だよ。無差別破壊活動なんて」
「無差別破壊活動!?」紗希が目を丸くしている。
「応じていただけるなら何てことはございませんわ。では後ほど。ごきげんよう」
「おい、こら、ちょっと待て!」
 女は優の止めるのを無視して堂々と門から出ていった。
 挑戦状には、場所と時間、そしてその通りにしなかった場合は日野神家周辺での無差別破壊活動を始める旨が書いてある。
「優・・・大丈夫?」
「仕方ないな、兄貴に電話でも」
「そうじゃなくって、着ていく服ある?」
「あのねえ・・・勝手に俺が行くことに決めてない?」
「優お兄ちゃん、大丈夫。私も行くから」
「紗希ちゃんまで・・・」
「いいわね。今私の服貸してあげるから」
 蘭がそそくさと二階へ行く。
「紗希ちゃん、これは遊びじゃないんだよ」
「わかってるわ。でも、この月の石と出会ったのは、偶然じゃないはずだから」
「紗希ちゃん・・・」
「あらあら、優よりも全然物わかりがいいわね」
 蘭が着替えを持って降りてくる。
「あのねえ母さん、責任感てものがないの?もし紗希ちゃんに何かあったら」
「世界が滅べば一緒よ」
「別に世界が滅ぶ訳じゃ・・・」
「無差別破壊活動するんならそういうことでしょ」
「あのなあ・・・」相変わらず凄い台詞をさらっと吐く蘭に、優は閉口した。
 数分後、優はレディス物のジーンズとTシャツという姿に着替えていた。
「これなら大丈夫。急に男に戻ってもそう慌てないはずよ」
「でも、この下着が・・・・」
 優は胸に着けたその下着の線が透けているのが気になった。
「着けなかったら余計みっともないわよ。男に戻ったらはずして持って帰ってきてね、それ高かったんだから。サイズが合っただけでも良かったと思いなさい」
「もしかして母さん、俺のこと着々と本物のギャル化しようとしてない?」
「ほら、その格好で俺、とか言わないの。ほら、早くしないとまた戻れなくなるわよ」
「まったく、ほんとに冷たい親だな」
 優は紗希を従えて指定の場所へ向かった。


「まったく、ヒーロー系特撮の見すぎじゃないの」
 優達がたどり着いた場所は、町はずれの採石場だった。
 お約束のように貴美子が砕石の山の上に立っている。
「あら、もう一人はどこかしら」
「あいつは、今連絡の取れないところにいる」
「それじゃ困るわ。ちゃんと連絡取って頂かなきゃ」
「じゃあ取れよ」優は、貴美子に向かって携帯電話を放った。
 貴美子が電話を取る。
『この電話は、現在通話のできない区域か・・・・』
「なるほどね。では仕方がないわ。もっとも、各個撃破したほうがめんどくさい分楽ではあるけど」言うなり貴美子は、その正体を現した。
「おい、電話!」言っても無駄なのは優も承知している。
「グオォォォォ!」
 あっという間に巨大化する貴美子。バスほどの大きさに巨大化したその姿が、六本の脚と双頭をもつ怪龍に変身していく。
「何だ何だ、アジップのマークじゃあるまいし」
「優お兄ちゃん、こ、これと戦うの」ビビっている紗希。
「そうみたい。行くよ、紗希ちゃん」左手を挙げる優。
「え、待ってよ」慌てて紗希もポーズを取った。
「女神転生!」「ムーンライト・イリュージョン!」
 ミーミルとカグヤは変身するなり跳ばなければならなかった。
「うわお!」
「シネイ!」
 ブオォォォォォ!
 双頭のそれぞれの口から、炎が襲う。炎を避けて跳んだ先に、今度は踏みつぶそうと巨大な脚が降りてくる。ミーミルとカグヤは逃げ回るので手一杯になった。
「キャアアア!」逃げながら悲鳴を上げるカグヤ。
「だから、言わんこっちゃない!おっと!」ミーミルも、カグヤにかまっているゆとりはなかった。
「こんなの町で暴れたら!」
「自衛隊だね、こりゃ」
 ミーミルがそう言った次の瞬間!
 ドオオォォォン!キミコの足下に何かが爆発した。
「え!?」
「お待たせ!」
 ブウゥゥゥゥン・・・・人一人乗るぐらいの超小型のヘリコプターが、頭上に現れる。
「本度さん!」
「ほらほら、よそ見しない!うわ!」
 延びる炎。本度は慌てて操縦桿を切った。
「オノレェ・・・!」
 キミコは怒り狂い無茶苦茶に炎を振りまく。しかし本度は動じていなかった。
「ほれほれ、隙あり!」
 ブシュー!飛ぶミサイル。ミサイルは正確にキミコの横腹を捉えた。
 ドォォォン!
「ウグググ・・・」横倒れになるキミコ。
「優君早く!もうミサイル積んでないぞ!」
「名前で呼ばないで!」ミーミルは、両手を差し上げた。
「ミミー・ミョルニル!」
 ミーミルは、巨大なハンマーをしっかりとキミコに向かって振り下ろした。
 ガガガガガガガガガガガガガガガガ・・・・・・走るエネルギーの帯。
「ウガガガガガァアァアァ!」キミコは苦悶の声を上げながらも、その片方の口に炎を孕ませミーミルの方に向けようとする。
「そうはさせるもんですか!ルナチック・ブーメラン!」
 カグヤがこれまた巨大な光のブーメランを放つ。そしてそれは超高速で回転しながらキミコの首へとまっしぐらに飛んでいった。
「ギャアアアア!」ブォォォォォ!断末魔の悲鳴と共に、首が切り落とされ、その首から炎が吹き出す。そして、その一瞬後、
 ドドドドドドバボボボボボーン!キミコは全身から炎を吹き出して爆発すると、粉々に砕け散って消滅した。


「助かった、本度さん」優は、本度との再会を喜んだ。しかし、本度と紗希は笑いを堪えている様子だ。
「優君、むね、むね・・・」
「え、あ!」
 優は男に戻っていたのだ。慌ててブラジャーを外そうとするが、慣れない上にホックが変な場所に引っ掛かり、なかなか外れない。
「まあまあ落ち着いて。他に誰もいないし」
「そうそう」紗希が笑いながら、優のブラジャーを外す。
「・・・・・」優は顔を真っ赤にした。
「まあそれはともかく、少々手伝って欲しいことがある」本度は本題に入った。
「もしかして、また敵のアジト?」恐る恐る聞く優。
「ご名答。やっとこさ辰巳の屋敷に潜り込む許可が出た」
「それはいいけど、何で本度さんが」
「決まってんじゃないか。また世界の危機だよ世界の危機」
「世界って、本度さんの国のでしょ」
「人聞きの悪い。今度もまさしく世界の危機だ」
「ねえ、優お兄ちゃん、この人誰?」
「人に助けて貰ってこの人誰、はないだろ」本度が抗議する。
「あ、紹介してなかった。この子、従姉妹の紗希ちゃん」
「で、その子も変身ヒロインなわけ。一体お宅の家はどうなってんだか」
「まったくだよ。あ、そうそう、この人が、表向きは産業スパイの下請けの本度 恭一郎さん」
「へえ、この人が・・・優兄ちゃん、こんなカッコイイおじさまと知り合いだったなんて一言も聞いてないわよ」
「言う必要があるのか」
「おいおい」たしなめる本度。
「行ってくれるのか、くれないのか」
「俺たちに選択の余地、あるわけ」
「まあそうとも言うが、その前に、着替えぐらいはさせてやろうと思ってな。そのぶんじゃ、下の方も、女物はいてるんだろ」
「う、辛いところを」
「とりあえず、乗れよ」
「うわ、いつの間に」
 三人は、いつの間にかリモコンで現れたBMWに乗り込んだ。


 車の前に、一人の男が立ちはだかる。
「止めろ」
 八蔵はリムジンを止めさせた。
 海岸沿いの道路。道路のすぐ下は断崖になっている。
 車を降りて、男に話しかける八蔵。
「そろそろ現れると思っていたぞ、ドラド」
「この時を待っていた。親父の仇、取らせて貰う」幸一郎は答えた。
「ほほう、仇とな」
「とぼけるな。俺の名は剣 幸一郎。父の名は、真夫」
「そして、母の名は、仁美。旧姓は黒木という。違うか」
「貴様・・・」
「やはりな。あの時仁美は身籠もっていたのだ。あの時は私も若かった。確かに剣 真夫を殺したのは私だ。しかし、剣はおまえの父ではない」
「貴様、この期に及んで言い訳をする気か」
「ハハハ、そのような意味のないこと。おまえの挑戦、今ここで受けよう。おまえが我が一族を率いるに足る男か、この手で試してくれる」
「何!」
「ちなみに仁美・・・・仁美は今どうしているのだ」
「母は、死んだ」
「そうか・・・」八蔵は一瞬遠くを見るような目をした。
「下がっておれ。ではゆくぞ。蛇神転生!」
 供の者を下がらせた八蔵が両手を広げて叫ぶ。その姿が、鱗をかたどった紅い鎧とマントに包まれ、頭には、八頭の大蛇をかたどった仮面が装着される。
「蛇神帝王ヤマタ見参」
 驚く剣。ヤマタの姿は色と仮面は違えどまるでドラドに瓜二つだったのだ。
「どうした、掛かって参れ」
 剣は動揺しながらも両手を広げた。
「エル・ド・ラーッド!!」
 剣の身体を、ヤマタと同じ鱗をかたどった黄金色の鎧とマントが包んでいく。そして、やはり最後に頭部に竜頭の仮面が装着された。
「太陽騎士ドラド!」
「ほほう、立派な姿になったものだ。草薙の剣よ!」
 ヤマタが剣を構える。ドラドもそれに応じた。
「太陽剣よ!」
 太陽剣を構えるドラド。二人は、間合いを保ったまま対峙した。

<つづく>



<次回予告>


「我々三姉妹の実力を見せつけてやるのよ」
「人ごとだと思いやがって・・・」
「待て、今何と・・・」
「ガドラ!」
「ゲドラ!」
「グドラーン!」
「待たせたな」
 次回「三姉妹恐怖の正体」お楽しみに


*このお話はフィクションであり、ここに登場するすべての人物、団体等は実在の物とは全く関係ありません。

ご意見、ご感想等をお寄せ下さい
<女神仮面ミーミル END>


<作者のたわごと>
 話が展開し始めました。しかし、ヤマタさん、娘たちより先に二次形態を現すとは思いも寄りませんでした。でもまだ最終形態じゃありません。最終形態はもちろん、あれです。(たぶんバレバレでしょう)。
 彼に限らず巳族の方々は巨大化される方が多いので本当に困ります。次回は、娘さんたちもその美しい姿を披露することができるでしょう。どうやって倒そうか、いや本当に倒せるのか今から心配です。ちなみにキミコさんの正体はキメラでした。三姉妹は、何でしょう?(かなりバレバレに近い内緒。ヒント:亀乃さんに近いものがあります)。
では。

KEBO。



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