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カースアイテム・ストーリーズ
第3話「チェンジリング」
作:KCA



カンッ!! キンッ! ギィィン!!

薄闇の中に金属が撃ち合うような音と、火花が飛び散る。

俺は目の前に飛び込んできた小翼魔(インプ)の爪をかわし、愛用の
長剣で袈裟懸けに斬り捨てながら、背後にいるはずの相棒に声をかけた。

「おい、レッド! こんなとき使える魔法はないのかよ? このままだと、
ジリ貧だぜ!?」

「む、無理だよぉ、アンバー。ボク、もうほとんど精神力(マインド
パワー)残ってないし。さっきの陥夢(スリープ)で打ち止め」

か細い声が頼りなげに答える。
普段なら保護欲を刺激するその声も、こういう状況にあっちゃあ、
かえってイライラさせられるだけだ。

「チッ、せめてブラスたちと合流できりゃあな……」

俺はこの場にいない、ふたりの仲間のことを思い浮かべた。

吟遊詩人のブラスなら、この状況を打破できるような呪歌を知ってる
かもしれんし、ドワーフの女盗賊アイビーがいれば、ちっとは戦いが楽
になるはずだ。

もっとも、この遺跡の探索を始めた早々に、シュート(落とし穴)の罠で、
ふたりとは分断されちまったんだが……。

ついでだから、自己紹介しておこう。
俺の名はアンバー・ナーガス、"駆け出し"は卒業したといえるくらいには
経験を積んだ、20歳の傭兵だ。故郷は結構大きな宿場町で、16歳の頃から
用心棒や護衛の仕事で糊口をしのいできたんだが、いい加減ウンザリした
んで18歳の時に、町を飛び出していまの稼業−冒険者になった。

ちなみに、俺の後ろでヘッピリ腰で短剣構えてるのがレッド・ドレイクン。
一応、職業(クラス)は学者ってコトになっている。俺とはガキの頃からの
腐れ縁で、時期を同じくして冒険者家業に入ったんだから、それなりの経
験を積んでるはずなんだが、あんまり頼りになりそうにないのは、こいつ
の容姿と性格のせいだろう。

レッドは人間(ヒューマン)の男にしてはかなり小柄で華奢な体格をしてる。
あまつさえ、耳の先がちょっとトンガってるもんだから、よくハーフエルフ
と間違われるが、両親ともにれっきとした人間だ。長老のじいさんに聞いた
んだが、何代か前にエルフの血が混じった人間がいると起こる、"取り換え
子(チェンジリング)"とかいう、一種の先祖返り現象らしい。
容貌のほうも、エルフの血のせいか結構美形−なんだが、ガキの頃は
そういうヤツはえてして「男女」とバカにされることが多い。レッドもそう
だったが、家が隣り同士でひとつ年上の俺は、自然とこいつを悪ガキども
から庇う役回りを担うことになった。まあ、おかげでケンカが強くなった
し、ひいてはこういう傭兵なんて商売につくことができたんだから、別に
迷惑だと思ってるワケじゃねぇが。もっとも、いつまでたってもシャキっ
としないコイツの性格を見てると、ちょっと過保護にしすぎたかと思わな
いでもない。

とりわけ、迷宮で十数匹のモンスターの群れに囲まれてる現在みたいな
状況では。

「あと何の呪文が使えるんだ?」

「んと……念楯(シールド)と念剣(エンチャントブレード)は使っちゃった
から……あと、役に立ちそうなのは環氷縛(アイスバインド)か養気波(ヒール)
ぐらい……」

なんてこった。足止めと小回復じゃあ、なくてもたいして変わらん。
こりゃあ、本気で腹くくらんとなぁ。
ん? 待てよ。

「おい、レッド、まだ奥の手があるだろうが!」

「…もしかして、アレ?」

言外にやだなぁ…という雰囲気は漂っているが、この際背に腹は代えられん。

「無論!」

成長すれば4系統の魔法を使いこなせる学者(スカラー)という職業だが、
生憎レッドはその域には達してない。それを補うために、こいつにいくつか
魔法のアイテムを持たせてある。そのうちのひとつを使えば……。

「もうっ! どうなっても知らないからね!!」

半ば自棄気味に言うと、レッドは左手にはめた指輪を頭上高くに掲げた。

「古えの秘宝よ、汝の主とその友の身を速やかに助けよ!!」

瞬間、パリンッ! とガラスが割れるような音とともに、あたりの光景が
グニャリと歪み、俺は気を失った。

× × ×

意識を失っていたのは、多分一瞬のことだったろう。
気がつくと、俺は遺跡のすぐ外に倒れていた。
傍らにまだ気を失ったままのレッドの姿もある。

「転移の魔法が作動したのか……助かったぜ。」

さっきレッドが使ったのは"変異の指環"というマジックアイテムだ。
半年ほど前、別の遺跡で見つけた古代文明の遺品のひとつで、よくは
知らんが、持ち主の危機を救う遺失呪文"変異"の魔力が込められてい
る……らしい。金貨に換算して3千枚は下らない貴重品だ。
ただ、失敗作なのかそれともそういう仕様なのか、この指輪を使うと、
必ず何らかの形で反動−しっぺ返しがくるのだ。

1度目に使ったときは、犬鬼(コボルト)の大群に囲まれたときだった。
そのときはブラス達もいたし、何とかできないこともなかったんだが、も
のは試しと、レッドに発動させてみた。確かに、雷破槌乱舞(ソールレイヴ)
の呪文が作動して、30匹近くいた犬鬼どもは1匹残らず黒焦げになった。
それはいい。だが、俺達味方にまで、いくつかとばっちりがきて、体力の
半分近くを削られたのには参ったぜ。

2度目は、誤って古代王墓の主棺室に踏み込んで、木乃伊(マミー)の不
意打ちをくらった時だ。神官や巫女といったアンデッド対策の専門家がい
ないオレたちは、危うく全滅するところだったのだが、あのときもレッド
の機転で指輪を使い、難を逃れている。床に落ちていた葡萄の種が一瞬に
して成長し、マミーたちにからみついて動きを止めてくれたのだ。もっと
も、それ以来、しばらくレッドは髪が尋常でない速さで伸びる−なにせ、
1日で膝くらいまで伸びるのだ−呪いに悩まされてたけどな。

まあ、そんな訳で、実を言うと今回のしっぺ返しが何かわからん以上、
俺としても無条件に助かったと喜ぶワケにはいかなかったんだが。

「う、う〜ん……」

チェッ、レッドのヤツ、無邪気な顔して寝て(気絶して)やがるぜ。
しかも、女みたいな悩ましい吐息まで漏らしやがって。俺にそのケ
があったら、とっくに襲っちまってるぞ。

ちょっと腹がたった俺は、ペチペチと少々乱暴にレッドの頬っぺたを
叩いてヤツを起こしてやった。

「ふわ……あれ、アンバー、ここは?」

「遺跡のすぐ外だ。どうやら助かったらしいぜ。何か異常はねぇか?」

「ないよ……って、ああっ、指輪が!」

見れば、変異の指環に取り付けられていた紅玉が無数のヒビが入り、
俺たちの見ている前で、粉々に砕け散ってしまった。

ん? 紅玉が砕ける瞬間、レッドの周囲にもやのようなものが見えた
んだが……気のせいかな。

「−おーうい、アンバーぁ、レッドぉ、無事ですかぁ?」

一瞬抱いた疑念も、遺跡の入り口から聞こえてくる呼び声にたちまち
かき消された。

「ブラス! アイビー!」

ふたりとの再会に喜びが込み上げてくる。ほんの半日ほど別れていた
だけだが、修羅場をくぐったあとのせいか、仲間の存在がいつになく、
ありがたく感じる。

「きゃーん、レッドちゃんも元気してた? アンバーくんにいぢめられ
たりしなかった?」

跳ねるような足取りで走ってきた小柄な少女が、レッドに飛びつく。
いや、少女と言ったのは言葉のアヤだ。人間で言えば、12、3歳くらいの
背丈だが、体つきは未成熟な感じはまったくしない。よくいえばグラマー
で肉感的、悪く言えば、筋肉質でかなり骨太な体型だ。
ドワーフにしてはこれでも大柄なほうだというアイビーは、そのカルい
言葉使いに反して、俺達の仲間内では、じつは一番年上だったりする。
そのせいか、この女盗賊はいちばん年下のレッドを弟のようにかわい
がっているんだが……ん? なんだか妙な顔つきで固まってるぞ。

「あなた…レッドちゃん、よねぇ?」

? 何言ってるんだ、アイビー。そいつがレッド以外の何者に見える?

「ちょっと、アンバーくん! 手、貸して!!」

訳もわからず差し出した俺の手を、レッドの胸に押し付けるアイビー。

いったい、なんだってんだ、まったく……。
!!

帯金鎧(バンデッドメイル)を着込んだ俺と違って、学者という職業柄、
レッドはかなり軽装だ。袖なしシャツとショートパンツという服装の上から
各部をパッドで強化したローブを羽織っているだけのはずなんだが……。

貧弱で筋肉なんてほとんどないはずのレッドの胸板に、なぜかモニュ
モニュした柔らかいものの存在を感じる。
ハハ……き、きっとローブについたパッドの感触だよな?

当惑する俺の様子に、「やっぱり」という顔をしたアイビーの指示がとぶ。

「アンバーくん、そのローブ脱がしちゃって!」

反射的にその言葉に従う。なぜか同様に呆然としていたレッドは、
ほとんど抵抗を示すことはなく、簡単にローブを脱がせることができた。

「「「!!」」」

体の線を隠すローブを取り去り、上半身シャツ1枚となったレッドの
胸は……はっきりと盛り上がりを見せていた。
やや小ぶりながら奇麗な形をしていることが薄いシャツの上からでも
わかるふたつの乳房。
おそるおそる手を伸ばし、軽く握ってみる。

フニュ、フニュ……。

間違いない。さして経験豊かとは言えんが、片手に余るくらいの
"女"は知ってる俺が断言しよう。

レッドのオッパイは極上だ。

……ダーッ、違う! そうじゃなくて。

「あれ、レッドくんって、実は女の子だったんですか?」

ようやく追いついてきた吟遊詩人のブラスが、俺の気持ちを代弁して
くれる。

そう、そうなんだよ! レッド! おまえ、男のはずだろ!?
こちとら、物心つく頃から一緒にいた仲なんだぜ。いっしょに水浴び
したこともあるし、オマエのちっちぇピーッもちゃんと見たことあるんだ。

「ところで……」

事態をわかっているのかいないのか、いつもどおりノンビリしたペースを
崩さないブラス。

「いつまで、レッドの胸つかんでるんですか、アンバー?」

「え?」

反射的に右掌に力が入り、結果的に掌中の乳房を強く握る形となる。

「あん……」

掌から伝わる感触よりも、レッドが無意識にあげた吐息に反応して、
俺は真っ赤になった。

× × ×

手近な町へと帰る道すがら、色々話し合った結果、どうやらこれが
変異の指環の反作用らしいという結論に、俺たちは落ち着いた。

恥ずかしがるレッドを説き伏せ、興味津々で裸を見たアイビーによる
と、下半身の方も完全に女性化しているらしい。

まあ、幸いレッドの服装は男女どちらであっても違和感の無い格好な
ので、仮に女とわかっても町で好奇の目にさらされることはないだろう。
町へ帰れば、神殿でこの呪いを解いてもらえるはずだ。
以前、髪が伸びる呪いを受けたときも、町の神殿で簡単に解呪して
もらえたし。
少し惜しい気もするけど……って、俺は何考えてんだ!?


ところが、神殿に行った結果、じつは事態はそう簡単ではないことが
判明した。

「うーむ、かなり複雑な呪いですなぁ、これは」

対応してくれた神官によると、肉体を変化させるタイプの魔法や呪いは
複数のレベルがあって、外見だけそれらしくするものから、完全に機能を
変えてしまうものまで様々らしい。たとえば、翼を生やした天使の姿に変
える魔法があったとして、単に飾り物の翼が生えているだけのものから、
実際にその翼で空を飛べるもの、さらに天使の聖なる力が使えるようになる
ものまでいくつかの段階があるのだ。
今回レッドにかかった呪いは、どちらかという後者に近いかなり高レベル
のものらしい。呪いの元となったアイテムがあれば、魔力の系統を分析して
何とかなったらしいのだが……。

「紅玉が砕けちまったからなぁ……」

宿の1階にある酒場で、俺達−俺とブラスとアイビーは、酒を前にして
陰気くさい雰囲気を醸しだしていた。ちなみにレッドは自室−っていって
も俺との二人部屋だが−に引き篭って、降りて来ない。

「でも、女性化した以外の弊害は無いんでしょ? 不幸中の幸いじゃない」

アイビーがことさらに陽気に言う。

「まあ、確かにレッドくんは学者ですからね。力仕事の前衛なら少々困
ったことになったでしょうが……」

ブラスもニコヤカに同調する。
確かに、冒険者4人パーティとしての機能には支障はないかもしれない。
だが……。

「そういうコトじゃ、ねぇだろうが!」

バンッ!

俺はテーブルを拳で叩いた。ちょっと悪酔いしていたのかもしれない。

「アイツは……アイツは今、悩んでるんだぞ!? 当分、もしかしたら
一生男に戻れないかもしれない。女のままかしれない。それなのに、お
前ら、パーティの戦力のことしか考えてないのかよっ!!」

「アラ、それはこんな所でウジウジしているアンバーくん同罪だと思う
んだけどなぁ」

アイビーの言葉に気勢を削がれる。

「仲間といって、やっぱり僕らはまだ付き合いは短いですからね。プラ
イベートなことまで踏み込むのはどうかと思いますし」

ブラスの正論が、ヤケに勘に触る。

「フン、わかったよ。俺が何とかしてやらぁ!」

足音高く2階へ向った俺は、ふたりが「してやったり」という表情を浮か
べていたことに気づかなかった。


勢いでああ言ったものの、やはりレッドと顔を合わすのは気が引ける。
俺は可能な限り静かにゆっくりとドアをノックした。

「−俺だ。入っていいか?」

「……ウン」

部屋に入ると、レッドはベッドの上で布団にくるまって体を丸めていた。
もしかしたら、泣いてたのかもしれない。そうだよな。普通はショック
だよな。

「……」

「……」

無言の間が続く。

「…何か用?」

呟くようなレッドの問いに我に返る。

「−えーっと……あのな。うまく言えないけど、そんなに気を落とす
なよ。お前が何であっても、たとえ女になっちまっても、俺は絶対に
お前のそばにいるから」

言いながら、俺は幼い頃、泣いてるコイツを慰めたときのことを思い
出した。そうだ。あのときも、こいつは「エルフっ娘」って悪ガキどもに
いぢめられてたんだっけ。

「…ホント?」

ガバッと布団を跳ねのけて、レッドがベッドの上に起き上がる。

う……そんなウルウルした目で俺を見るなよ。ヘンな気分になるじゃ
ねぇか。
落ち着け、俺。いくら、元からカワイイ顔してたとはいえ、コイツは
本来は幼なじみの男なんだぞ。
レッドの顔から逸らした俺の視線が下方にさ迷う。
マ、マズい。
ローブを脱いで、白い袖なしシャツとショートパンツだけになった
レッドは、ただでさえ露出が多いのに、今は寝乱れてさらにヤバい格
好になっている。
とくに、片方の肩からズレ落ちかかっているシャツの隙間から見える
柔らかそうな−いや、昼間に触って実際に柔らかいことは熟知してるん
だが−乳房が、俺の煩悩を刺激する。
クソッ、こんなときに昼間の触感を思い出しちまったぜ。
必死で目を逸らしたものの、今度はスラリとした白い太腿が俺の自制
心を徐々に蝕んでいく。

「アンバーぁ……」

レッドのちょっと鼻にかかった甘い声を聞いたとき、俺の理性の防波
堤は、脆くも決壊した。

「レッドぉぉぉぉぉぉーーーーーーっ!」

「キャッ!」

そのまま、ベッドに押し倒し、そのあとのことは……自分でもよく
覚えていない。

× × ×

気がつくと、俺達はひとつの寝台で裸のまま仲良く寄り添っていた。

「もうちょっと、優しくしてほしかったなぁ……」

俺の左腕を腕枕にして、レッドが頬を染めながら呟く。

「す、すまん……って、怒ってないのか?」

「何を?」

「何をって……オマエ、レイプ同然に男に抱かれて、嫌じゃないのか?」

「アンバーならいいよ。それに、レイプじゃないし……」

「へっ!?」

「鈍いなぁ、もう……合意のうえだって言ってるの」

さすがに恥ずかしいのか、覗き込む俺の視線を避けて掛け布団を頭
まで引っ張り上げる。
そのままの体勢で、レッドはポツリポツリと話し始めた。

小さい頃から、俺のことが好きだったこと。思春期を過ぎるにつれ、
その思いが恋と呼べるものに変わっていったこと。ただ、同性だからと
そばにいれるだけで我慢していたこと。俺が娼館に出かけたときなどは、
悔しくて泣いていたこと……など、切々と思いを打ち明けられた。

「だから、この呪いにかかったときは本当は小躍りしたいほど嬉しか
ったんだ。女の子なら……アンバーに抱いてらえるかもしれない。ひ
とつになれるかもしれないって」

それを聞いているうちに、ずっと手のかかる弟みたいに思っていた
レッドへの感情が、俺の中で微妙に変化していくのがわかった。

以前なら認めることを拒んだだろう「愛しい」という想いを、今なら
素直に認められる。

「だから、アンバーに抱いてもらえて……きゃん!」

俺は布団をはねのけると、レッドのきゃしゃな体を後ろから抱きしめた。

「言ったろうが。俺はいつもお前のそばにいるって」

「−うん。ねえ……それって、プロポーズ?」

「う!?」

硬直している俺にレッドは悪戯っぽく笑いかけた。

「責任……とってね」

× × ×

あの事件から1年後。
俺達4人組は、いくつか大きな依頼をこなし、その筋の間ではそこそこ
有名になりつつある。

「ねぇ、急ご! 早く町に行って、このグリフォンの首お金に替えちゃ
おうよォ!!」

レッドは女になってからむしろ積極的で明るくなったみたいだ。
俺は愛しげに彼女の姿を見つめた。

生成りの綿のシャツの上から毛皮の胸当てをつけ、さらにその上に紅い
レザーのジャケットを羽織っている。下はジャケットと同じ素材のタイ
トなミニスカート、足元には膝まで覆う丈夫なブーツを履いていて、腰
には魔法で強化された鞭(ウイップ)が吊るしてある。
腰まで伸びた髪をポニーテイルにしているのも、活動的な印象を与える。
いかにも、遺跡捜しに手慣れた女学者っていでたちだ。

かつての弱気な青年学者のころとは、まったく印象が一変しているが、
俺は今のレッドも変らず好ましく思う。

「ホラホラ、急いで!」

とはいえ、いつもは慎重派のレッドがここまで浮かれているには訳がある。
この冒険が終わったら、町である儀式が待っているからだ。

「レッドちゃん、お腹が目立たないうちにウェディングドレス着れそうで
よかったわねぇ。ね、"パパ"」

「まぁ、式が済んだらお子さんが生まれるまで、しばらくおふたりでイチャ
イチャしててください。僕らも当分はノンビリさせてらいますから」

つまりは……そういうことだ。まあ、惚気だと取ってもらっても構わん。
実際、幸せの絶頂にいると言って過言ではないわけだからな。

とはいえ、故郷の親−俺とレッドの両方だ−に、どうやってこのことを
説明しようか……というのが、悩みの種ではあるのだが。

<HAPPY END?>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(後書き)
どうも、今回はあまり間が空かずに登場のKCAです。
前回予告したとおり、CIS(カースアイテム・ストーリーズ)の
第1弾ですが、「第3話」と銘打っているのは、元々のマンガ原作
用シナリオに応募したとき(落選しましたけど)の通しナンバーを
そのまま使っているからで、他意はありません。では、なぜ3話
をはじめに持ってきたかというと……まあ、比較的明るくて、万
人向け(?)だと思えるストーリー展開だったからです。
本来は、"呪いの魔道具"というくらいですから、ダークな話が多
いんですけどね。そのへんは次回以降で披露したいと思います。

なお、以下は「聖命樹の大地」と共通する世界観を有するということ
での蛇足説明です。読まなくてもまったく支障はありません。

*アイテム
「変異の指環」(チェンジ・リング)
古代魔法都市デュゼルフェイムで試作された希少なマジックアイ
テムのひとつ。3回だけ"変異"の呪文が使える(使用後、崩壊)。
ただし、使用者に強烈な反作用が魔法のフィードバック、もしく
はランダムカースの形で跳ね返るため、多くは製造されなかった。

*遺失呪文(ロストスペル)
「変異」
超高位の基礎系呪文。絶対絶命の危機から使用者とのその仲間を
救い出す。効果は、高度な魔法障壁、味方全員の体力全快、敵対
者の対転移による排除、安全地帯への転移など、状況に応じ多様。
ただし、使用者は一時的にその精神力(MP)の全てを失い、気絶する。

*職業(クラス)
・傭兵(マーシナリィ)
単なる雇われ兵士(ハイアリング)と異なり、あらゆる武具を使い
こなす武器戦闘のプロフェッショナル。ただし、魔法の類は一切
使えない(イメージ的には、「ウィザードリィ」の戦士や「マイト&
マジック」の騎士などに相当)。
・学者(スカラー)
古書や遺跡の類を調べ、人々の役に立つ知識を発掘・整理する
ことを生業とする者。基礎、攻撃、防御、回復の4系統の魔法
を使えるが、その習得はごく低レベルの呪文に限られる。他の
ファンタジー世界観でのいわゆる"魔術師"が存在しないこの世
界においては、肉体的にもっとも脆弱なクラス。
・吟遊詩人(バード)
広義には、その名の通り歌唱演奏を生業として金を稼ぐ者を
指すが、冒険者としてのそれは弓使い(アーチャー)のなかでも、
より魔法よりのクラスを意味する。弓矢をはじめ飛び道具の扱い
に長じ、中レベルまでの攻撃魔法、及び高位の召喚魔法を習得
できる。また、"呪歌"という特殊な韻律を含む歌を歌って、
聞き手の精神に干渉する(眠り、恐怖、昂揚など)こともできる。
・盗賊(シーフ)
冒険者としての"盗賊"は、単なる物取り、スリの類とは異なる、
スカウト(隠密)としての特殊技術を持ったクラスを指す。
戦闘に於いても、防具こそやや頼りないものの、それなりの
武器を巧みに操ってりっぱに前衛で戦うことができる。また、
高位の盗賊はわずかながら基礎系の魔法を習得することも可能。



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