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My pure Clone-Doll

リベンジャー真子

作:Ayame




 僕の名は、春日真一。二十二歳。のはずだった。
 だが、今の僕は春日真子(まこ)十六歳になってしまった。
 どうしてそういうことになったかは前の話に譲るとして、僕は大変な屈辱を受けていた。
 曲りなりにもマッドサイエンティストを自認するこの僕が、何が悲しくてこんなうざったい無精ひげ男の下僕に成り下がらなきゃならんのだ。
 あいつは夜な夜な僕にいろいろな悪戯をしてくる。
 ぴらぴらの少女趣味の服を着せて。まあ服装のことは許せる。僕も自分が人並み以上に可愛いと認めてるし、女の子らしく装うのははっきり言って好きだ。何とでもいってくれ。もはや僕は十六歳の可憐な少女だ、誰にも文句は言わせない。
 ちなみに今日はひまわり模様のノースリーブのワンピースの上に白衣を羽織っている。どうだ萌えるだろう。白衣はマッドサイエンティストの必需品だ。

 しかし、毎晩あいつが僕にさせること・・・これだけは許せない。いや、しかし、それをしなければ僕は生きていけないんだ。
 あいつが僕に組み込んだアポトーシス・プログラム。
 一定期間、あいつの生殖細胞を取り込まないと僕の体細胞は壊死をはじめ数日の内に死んでしまうのだ。マッドな奴。さすが僕のオリジナルだ。
 別に毎晩やる必要はないはずだが、あいつはそれを盾に毎日僕に強要するのだ。
 はっきり言ってあれだけは好きになれない。いやなりたくも無い。
 そりゃあ、僕だって、せっかく女になったんだから男に無い感覚を楽しんでいるが、この柔らかい胸を「むにっ」と握った感触とか、その時身体を駆け抜ける快感は・・・「あうっ・・・んっ・・・」



 し、失礼、ついそっちに世界に入ってしまった。・・・でも、もっとすんごいのが、男には無いアノ、秘密の・・・「あ・・・んっ・・・・・・・・・・・」












・・・っはぁ、はぁ、・・・なんの話だっけ、あ、そうそう、あいつが僕になした仕打ち。あの屈辱を受け続けなければいけないようにしたあいつに、復讐してやるんだ。なんたって復讐とマッドサイエンティストは切っても切れない関係にあるからね。
 まずはアポトーシス・プログラムを解除する。僕の科学力を持ってすればたやすいことだ。ただ、そのためにはあいつの協力が不可欠なんだ。装置を外側から操作する必要があるからね。しばらくは大人しい振りをして、手なずけておいて、頃合いを見計らってあいつにその気にさせてやるんだ。
 アポトーシス・プログラムを解除してしまえばあいつはもう用済みだ。奴を処分したら、いよいよ僕が世界征服にのり出すんだ。
 完璧な計画だろう。何しろ僕はマッドサイエンティストだからね。

「おーい、真子、そこで何やってるんだ?」
「あ、真一様ぁ」
「ちょっと手伝ってくれ」
「はーい」

 どうだい、奴はすっかり油断して、僕を優秀な助手と見ている。今に見ていろ。あいつの呪縛から逃れたら10倍にして返してやる。




 そろそろ頃合いはいいだろう。アプローチしてみよう。慎重にな。失敗して気づかれたらおしまいだ。何しろあいつは僕の人権は認めてないからな。バレたらおそらく薬品で処分されて骨も残さないだろう。あいつはそういう奴だ。

「あの、真一様ぁ」
「うん、なんだい?」
 気持ち悪い奴。締まりの無い笑顔をうかべやがって。
「わたし、真一様に創り出して頂いて感謝してますわ」
「どうしたんだい?急にそんなこと言い出して」
「真一様のような偉大な科学者のご奉仕ができるんですもの」
「うん、その通りだ」
 何威張ってんだ、バカ。
「それに夜も可愛がってくださるし・・・」
 くそう、思い出すだけで腹が立つ。
「・・・真子」
 わっ、バカ、何勘違いしてやがるんだ。怒りで顔が赤くなったのを誤解してるな。
 早く話を進めよう。
「でも・・・」
「でもなんだい?」
「わたしのことを信頼してくださらないのがとても悲しいです」
 ようし、ここで憂いのある表情だ。毎日隠れて鏡の前で練習した成果を見せるんだ。
「真子?そんなこと無いよ。君のことは信頼しているよ私生活から研究まで完璧にサポートしてくれているじゃないか」
 当り前だよ。記憶をコピーしているんだから。そんな事も忘れてるのかこのボケ。
「でも、わたしを縛り付けているわ」
「そんなことないよ」
 バカ、早く気づけよな。シナリオと違うじゃないか。
「・・・わたし、真一様の・・・」
 しょうがないな。これはまだ使うつもりじゃなかったんだが。・・・いてっ、目に染みる。
「アポトーシス・プログラムか」
 やっと思い出したか。この色ボケ野郎が。
「こめんよ、君があの事でそんなに苦しんでいるなんて知らなかったんだ」
「え、それじゃあ・・・」
「解除するよ。なあに、僕の科学力を持ってすればたやすいことだから」
 ようし。成功だぁ。仕上げは笑顔で・・・
「真一様ぁ!」




 くっくっくっ、これで僕は自由の身になれるぞ。まずはあいつの頭を改造して僕の下僕にしてやろうか。それとも、そうだ、サイボーグ化するのも悪くないかも。あいつの脳を動物に移植して苛めてやるのも面白そうだな・・・・

「真子?」
「えっ、あ、真一様?」
 あぶないあぶない、ここでバレたら元のもくあみだ。
「部品が足りないから買い出しに行くんだけど一緒に行かないか?」
 一緒に買い物だぁ?何考えてんだこいつ。まあいいか、これが最後だし。最後にいい夢を見させてやるか。
「わかりました。御いっしょさせて頂きます」






 水色のワンピースだ。これはあいつが最初に僕にくれた服だ。それまではあいつの服を着ていた・・・まあ僕にとっては「自分の服」って感覚だったけど。

 あいつは僕の方を惚けた顔で見ている。ふふっ、僕の美しさに見とれているんだ。なんか気分かいいぜ。

「真一様ぁ。どうなさったのですか?」
「いや、真子か可愛かったから見とれてたんだ」
 バカか?よくそんなセリフ真顔で言えるなあ、こっちまで恥ずかしくなるじゃないか。
「いやですわ、真一様」
「その服、あの時の」
「真一様が初めてわたしにくださった服ですわ」
 うーん、こいつとの会話は無意識でできるようになってきてるな。
 まあいいか、これで最後だし。
「じゃあ行こうか」
「はい」




 僕らはまず秋葉原まで行って部品屋で小さな部品を漁った。
「じゃあ、真子はあっちをさがして、僕はこっちの方を探すから」
「わかりました」
 部品はあっさり見つかった。自分の正面にあった店で聞いたら在庫があったのだ。
 店の男は何も言わないのに値引きしてくれた、こういう時、女は得だ。
「さて、真一様・・」
 しまった。あいつのいないところで「様」なんていう必要無い。「あいつ」で十分だ。口癖になってしまったようだ。
 買うものは買ったし、あいつを探そう。

 部品街をいったん出てあいつのいそうなところを探す。
「かーのじょ、一人?」
 ・・・いるんだよな、こういう奴。秋葉原まで来てナンパしてる、オタクなナンパなんて、見たくも無い。
 無視して通り過ぎよう。
「待ってよ、ここ、初めて?なんなら僕らが案内してあげるよ」
 残念だけどはじめてじゃないよ。小学生の頃から何百回と来てるからね。僕は小学生の頃からマッドサイエンティストだったんだから。
「ねえねえ、かーのじょぉ」
 しつこいなあ、護身用の武器で眠らせてやろうか。色々あるぞ。超小型スタンガン、即効性強力麻酔ガス、衝撃波銃・・・小型爆弾もあるぜ(ニヤリ)
「どうだい、あっちで格闘ゲームのデモやってるから・・・」
バタリ
 あれ、まだ何もしてないのになんで気絶したんだ?こいつ。
「真子、大丈夫か?」
「真一様?」
 なんだ、こいつ、助けたつもりか?・・・どこから現れたんだ?
「はぁ、はぁ、良かった。」
 息切らしてやがる。走ってきたんだ。
「・・・ゴメンね、発信機、その服につけてあるんだ。」
 あーっ、何だよそのイヤホンは?
「いいですわ。こうやって助けてくださったから」
「そ、そう言ってくれると僕も嬉しいよ」
「でも、もう止めてくださいね」
「え?」
「・・・トイレ行った時とか恥ずかしいですから」
 このスケベ。
「ごめん、もうやらないよ」
 当然だ!このバカタレめ!
 ・・・そんな優しい顔するなよ、顔がほてってくるじゃないか!








 あいつは何を考えたのかバーガーショップに寄ると言い出した。まあ、僕も歩き
回って腹が減ってきたからいいだろう。

「ジャンボバーガーのセット。真子は?」
「あ、同じのでいい」
「えっ、結構ボリュームあるよ大丈夫かい?」
 大きなお世話だ、僕が食べたいんだからいいじゃないか。
「大丈夫です」
「そうか、じゃあそれ二つで・・・」



「僕は世界征服してすべてを僕の物にしようと思ってたけど、真子に半分あげても
いいかなって最近は思っているんだ」
 ばーか、半分もやらないよ、全部僕の物になるのさ。
「いらない」
「どうして?」
「だってわたしは、真一様のものだから、わたしのものは全部真一様のものだわ」
 なーんちゃって。ほんとは逆だよん。
「真子」
「真一様」
 ん?なんだこの雰囲気。
「だめ、人が見ているわ」
ちゅっ
 だぁーっ、おでこにキスしやがった。・・・き、

 ・・・・・・・・・気持ちいいじゃないか。



 なんか僕変だ・・・・










 ポンプを動かすモーター音が聞こえている。
 ここは僕の研究室。自宅の地下に作り上げた秘密の部屋だ。
 僕は今培養液に浸かっている。酸素は培養液から供給されるのでどっぷり浸かっていても苦しくはない。
「じゃあ、はじめるよ」
 僕はあいつの顔を見て了解を示すために肯いた。
 体の中を電流が流れる感覚がして気が遠くなって行く。
 オペレーションはデリケートで状態を常に監視して適切な操作をする必要があるのだが、身体の全部の細胞を変化させるためどうしても気を失ってしまう。
 これがあいつに協力してもらわなければならない理由だ。














 


 あれからどれくらい経ったのだろうか。
 いつのまにか僕は培養液の中から出されていた。
 体がだるい。奇妙な脱力感。
 それに・・・
 ・・・・思い出した!そうだ!あいつの呪縛から逃れられたんだ。
 僕はあわてて体を起こした。
 自分では「がばっ」と跳ね起きるつもりだったが、実際には、脱力感に抗ってゆっくりと上体を起こすのが精一杯だった。
「真子」
 あいつが目の前にいた
 無精ひげとぼさぼさ頭の男が。
 なに優しい顔で笑ってやがるんだ。これからは僕がおまえのご主人様になるんだぞ。
「これで、もう真子を束縛するものは無くなったんだよ」
 くそう。なんてことだ。あいつの笑顔がまぶしい。
「違うわ」
「違うって?」
「わたしは真一様の心に縛られてしまっているわ」
 しょうがないな、一緒に世界征服してやるから感謝しろ。
「一生、わたしは真一様のしもべよ」
「それはだめだ」
 なんでだよ!この僕が付いていくって言ってるんだぞ!
「どうしてですか?」
「君は僕のパートナーだからさ」

 コイツ、ウインク出来ねえでやんの。似合わないセリフ喋るんじゃねえよ!!



 ・・・・可愛い奴。














<おわり>




後日談


 朝、僕は真一を起こしに真一の部屋に行った。
「起きろ!!」
「ああ?真子?」
「なんだよ、その間抜けな顔は?」
「い、一体どうしたんだい、その喋り方は、・・もしかして記憶の再生にバグが・・・」
「なに寝ぼけてんだ、僕は初めからこの喋り方だよ!」
「そんな・・・」
「誰の記憶を僕にコピーしたか忘れたのか、このバカ」
「あ・・・・じゃあ、今までのは・・・・」
「ふっ、感謝してるぜ、あれを解除してくれて」
「だ、騙したな。僕を裏切ったんだな」
 僕は真一を抱きしめてほっぺたにキスをした。
 真一を抱きしめたまま言った。
「バカ。何聞いてるんだ。か・ん・しゃ・してるって言ったろ!」
「え?」
 僕は赤くなった顔を見られないようにベッドから離れ、部屋から出ていく前に言った。
「朝飯用意できてるから早く食べにこいよ!」

「・・・・真子?」

 台所で僕は少し緊張して真一が来るのを待っていた。

「真子」
「何だよ!」
 あいつは何を思ったのか、僕を後ろから抱きしめてきた。
「バカ!何するんだよ!」
「その言葉づかいの方が可愛い!」
「へ、変態か!おまえ!」
「当然だよ!僕はマッドサイエンティストだからね」












ちゃんちゃん♪





萌えましたか?

Ayameです。今回は「マイ・ピュア・クローン・ドール」の続編を書かせて頂きました。
前作(「慎吾から真奈へ」)とは打って変って、今度は危険な香りのするかなりキテる話です。
私の名前を見て期待された方、見事に裏切られたことでしょう。
禁断の愛・・・だって、真子は真一と同じ遺伝子を持つ訳ですから。
(あまつさえXY構成まで同じ・・・)
「萌えた」そこのあなた!もう危険な道に入ってますよ!大丈夫ですか?

1998.7.7 Ayame


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