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〜真奈の中の慎吾2〜

クラスメイト

作: もと(MOTO)




[入学式]



 学校の大きな門を入ったところには桜の木が植わっていた。そしてその横は大きな立て看板が書かれていた。

「第55回聖トゥルース女子大学付属高校・中学校入学式」

 その看板の前に慎吾は立っていた。そして、抱きしめるようにして女の人が横に立ち、向こうでカメラをのぞき込んでいる男の人に笑いかけた。
「さあママ、真奈。写すぞ。」
「はい、真奈ちゃん、パパに向かって笑って。」
 パパのカメラに向かって笑ったのは、ママと真奈と呼ばれた慎吾だった。
(今日から、ここの女子中学生になるんだな)
 慎吾(真奈)はそう考えていた。

 交通事故から3ヶ月たってもまだ、完全に慎吾は真奈になりきれていなかった。もちろん、今の自分が12歳の女の子であることもよく自覚していたが、それでも自分が完全にふつうの女の子になっているとはとても思えなかったのである。
 それでも、真奈の両親は自分に優しくしてくれたし、小学校には不登校状態だったので同級生と会うこともなかったので、ぼろを出すことはなかったのである。
(でも、今日からは女の子のなかで女の子しないといけないんだ)
 それが、慎吾(真奈)をちょっと不安にしていたのだ。

 入学式での校長や後援会会長といったお偉いさんのお話が終わるとクラスごとに分かれて、教室に入る。慎吾(真奈)は1年B組だ。担任は坂上先生という若い女の先生だった。
「私がこの1年B組のクラス担任になりました坂上直美です。みんなよろしく。」
 この日は行事予定のプリントを配って、明日からの予定を説明しておしまいとなった。
 帰っていいとなると、教室にいていた生徒達は同じ学校の子や同じ塾の子どうし集まって、両親もまじえていっしょににおしゃべりしている。だけど、慎吾(真奈)は同じ小学校から子はいないし、塾に通わず受験勉強したので、塾の知り合いもいない。
 そのためなんとなく身の置き所がなくなったので、廊下で待っていた両親と一緒に慎吾(真奈)は帰ることにした。
(このまま、真奈に友達できなかったら寂しいな)


[オリエンテーリング]



 明くる日から真奈は1人で学校に行かないといけなかった。考えてみたら、女の子になって1人きりで外出すること自体が初めてだ。
 小さい体をいっそう小さくするようにラッシュの電車に乗って、郊外の駅に着く。
 改札口をでて、ゆっくりと学校のある方向へ足を動かしていく。まわりは同じ新しい制服を着た女の子たちが歩いていた。そのなかの一人になって学校に向かってい歩いていきながら、ただ、変に思われないようにだけを考えながら歩いていた。それに、スカートがすーすーしてなんだか恥ずかしくってしかたなかった。
(とにかく、おちついて、あたしはもう真奈なんだから。)

 学校に着き、教室に入る。そして、自分の席に所在なげに座る。教室の後ろでは、同じ学校から来た子同士がが話していて、時たまキャーという声をあげてる。とにかく無難に学校にたどりつき(当然なんだけどね)すこしは、落ち着きを取り戻した真奈はその声を何とはなしに聞いていた。
(話し相手がいないな〜)
 そんなことを考えながら真奈は筆箱と下敷きを出した。

「あ、それ。セイントチェリーでしょ。」
 その時、後ろの席から声がとんできた。
「う、うん。」
 後ろを振り向くと、ショートボブの髪の毛の下にちょっといたずらっぽく目を輝かせた子が座っていた。
「私も好きなんだ、セイントチェリー。」
「そうなんだ…」
 下敷きに書かれていた女の子の絵をそっとなでてみて真奈は答えた。
「うん、毎週見ていたんだけど、お母さんからはおこられちゃったけどさ。」
「そっか、去年やってたもんね。」
(そうなんだよな、あの頃は、このこの話の台本をよく届けてたもんな。)
「あたし、嶋怜子。よろしくね。」
「あ、あたしは真奈、島村真奈です。」
「ねえ、真奈ちゃんと呼んでいいよね。」
「う、うん。」
 明るくしゃべるその子に引き込まれるように、真奈は返事をした。
「ねえ、真奈ちゃんってどこの小学校の出身なの?」
「え、と、東南小学校。」
 自分が足も踏み入れたこと無い小学校なので、ついつい身構えてしまう。
「ふ〜ん、ねえ、東南小学校の子ってこの学校多いの?」
「え、あ、あたし一人だと思うけど…」
(そう、だからこの学校選んだんだもんな。それより、あんまり東南小の話してぼろが出ちゃったらまずいもんな。)
「ねえ、それより嶋さんってどこの小学校出身なの。」
「あ、怜子って呼んでよ。葛城小なんだけど、今年ここに来たの私だけなんだ。だから、さびしくってさ。」
「う、うん、じゃあ 嶋…、怜子ちゃんもアニメ好きなんだ。」
 答えながら、昔、慎吾だったときにアニメスタジオによく届け物をしていた。そんなことを思い出して、ついアニメの話をしてしまう。
 だけど、その時担任の先生が入ってきたので、みんなあわてて席に着いた。
「みなさんおはよう。」
「おはようございま〜す〜」
「それじゃ、まずみんなに自己紹介してもらおうか。早くたくさん友達をつくろうね。」
(友達か…)
 みんなが順番に自己紹介を始めていくのを聞きながら真奈(慎吾)は心の中でつぶやいた。
(たくさん友達作りたいな。真奈のためにも)
「それじゃ、島村さん。」
「は、はい。」
 そういって、あわてて立ち上がったせいか、真奈の座っていた椅子が大きな音を立てて横に転がってしまった。
「あ、ご、ごめんなさい。」
 ひとしきり、笑い声が周りでおこって、真奈はいよいよあがってしまった。
「あ、あの…」
「はい、落ち着いて。みんなにお名前を言ってください。」
「は、はい島村真奈です。よろしくお願いします。」
「はい、趣味は何かな?」
「え、えっと。」
 思わず、口ごもってしまった。考えたら真奈になってから、勉強とかはしたけども、いわゆる女の子らしい趣味は何もしてこなかったのである。まさか、勉強って答えるわけにも行かず、うろたえそうになったとき、ふと、さっきの下敷きが目に入った。
「読書やそれからドラマとかアニメ見るのも好きです…」
「そう、この学校にも大きな図書館があるから、たくさん本を読んでね、じゃあ次…」
(ふぅ、何とか乗り切った)
 席に座ってやれやれと思って後ろをちらっと見たら、怜子が軽くウインクしてにやっと笑いかけてきた。
(よかった、とりあえず友達ができて…)


[始業式]



 明日は始業式だった。今度は、先輩達といっしょだ。駅の混雑をすり抜けて学校へ向かって歩いていく。真奈は小学生にしては身長が高い方だけど、それでも周りをいっしょに歩いている女子高生や先輩の女子中学生の中にはいると、あらためて自分が12歳の女の子になってしまったんだなと思いしらされるのであった。
 始業式で校庭に集合して、向こうの「先輩」たちをみると、自分がかつては彼女たちより年上の男だったというのが信じられなくなったくる。
 ふぅ〜ぅ、とため息をつきながら教室に戻っていく途中、怜子が話しかけてきた。
「真奈ちゃんどうしたのよ?」
「う、うん。先輩のひとって大人だなっと思ってさ。」
「そりゃそうよ、あたし達より何年か先に生まれてるんだしさ。」
(じつは私の方が先に生まれてるんだけどね…)
「だいたい、真奈ちゃんってスタイルいいじゃん、あたし今日の健康診断でちょっとは身長のびてたいもんね。」
 そう、始業式の後、今日は健康診断になっている。まだ中学生とはいえ女の子といっしょに着替えるのだ。
「どうしたの、早く教室にもどろうよ。」
 怜子にせかされるようにされて教室に向かうと、もう気の早い子は着替えを始めていた。
「ねえ、早く閉めてよ。」
「あ、はい。」
 あわてて扉を閉めて中に入る。
 女の子だけで、しかもまだ中1だということもあって、みんな大胆に着替えている。
「真奈ちゃんどうしたの、早く着替えようよ?」
 みんなの着替えを恥ずかしそうに見て、あわてて目をそらした真奈を怜子が不審そうに声をかけた。
「う、うん。」
 そう返事したものの、どうしてもまわりで着替えている同級生達から目をそらすようになってしまう。
(まずは、体操服ださなきゃ)
 そう思って鞄の中をあけて、布でできた袋の中を見てみる。その中には、体操服の上着とブルマが入っていた。
(どうしよう)
 考えても仕方なかった。とりあえず、男子の体操服と違いのない上着から出す。
(え〜いぃ、ままよ)
 そして、そそくさっとセーラー服の裾を持って、ファスナーを下げ、一気に脱ぐ。そして、速攻で上着をかぶって体操服を着込む。そして、つづけてブルマを出す。ちらっと怜子の方を見てみるとちょうど、怜子もブルマを穿くところだった。見てみると怜子はスカートは穿いた状態でブルマを穿こうとしている。
(そっか、なにもスカートを脱いでからやらなくってもいいんだ)
 それをみてなんだか落ち着いた気持ちになって真奈はブルマを穿いた。そして、ゆっくりスカートのファスナーをおろし、スカートを脱いだ。
 でも、あらためてまわりを見渡すとまだ着替えている子、ブルマと体操服でおしゃべりしている子が目に入る。つい、慎吾だった時代に見たHな雑誌の写真を思い出してしまう。そして、自分自身の姿を見てみると、まわりの子たちといっしょの格好をしているのである。
 そのことに気がつき、ついつい顔が赤くなっているのを感じてしまうのであった。

 保健室で行列を作って順番に身長、体重を測ってもらうのを待つ。向こうで高3のクラスの生徒が順番に測定をしている。むかしはあの子たちより身長も体重も上だったのに今では、身長は160cmを越えているとはいえ、体重も男だったときの半分近く。そして、高3の先輩達よりあきらかに子供の体つきである。
 教室に帰ってきて次の検査の時間を待つ。体つきはまわりの子と違和感はないけども、それでもまだやっぱり落ち着かない。
「どうしたの真奈ちゃん、もじもじして。」
「うぅん、なんでもないの。ねえ次の測定いつからだっけ。」
「順番に呼びに来てくれるって話だから、まだ時間がかかるんじゃない?どうして?」
「え、あ、ぁあのさ…」
 こう言って変にもじもじしている真奈をみて、何を勘違いしたのか怜子は、
「あ、ひょっとしたらトイレ?、じゃあいっしょに行こうよ。」
「え、でもこの格好で行くの?」
「え、どうして?」
 考えたら、この格好でグラウンドを走るわけだから当然なんだけど、つい、そう言ってしまうのだった。
「い、いやべつに?」
「じゃあ、今の内行っとこうよ。」
 怜子は真奈の手をとって廊下にでていき、校舎の端にある生徒用トイレに小走りに向かった。
(そういえば、女子達ってトイレにみんな集団でいってたよな)
 そんなそんな昔の記憶がふとよみがえる。でも、今はその女子の1人に自分がなっているんだ。トイレで個室に入り、となりの個室に怜子が入る音を耳にしながら、
(ほんとうに、おれ…じゃないあたしやっていけるのかな…)
と考え込んでしまうのだった。


[自習時間]



 明日から授業が始まる。英語や数学なんかは中学生レベルでも大したことはない。正直言って授業に時の方が落ち着くくらいである。
 休み時間は怜子やアニメが好きだという子とおしゃべりをするようになった。でも、どうしても、女の子独特の「キャピキャピしたノリ」にはどうも、ついていけなかった。そして体育の時間の着替えの時もどうしても恥ずかしさが抜けず、つい隅の方で着替えることになってしまう。だけど、そんな真奈を怜子は”内気な女の子”だと思ったらしく、なにかとかまってくれるようになったのだった。
 今日も、教室の中は女の子のおしゃべりの声であふれていた。5時間目が自習になり、先生が教室にいないので、ほとんどおしゃべり大会のようなノリになってしまうのだ。
 それはいいのだが、向こうの隅でおしゃべりしていた子がふざけあって、急に横の子のスカートをめくり始めた。めくられた子も、男子がいない気楽さだろうか、「きゃーー」とは言いつつも面白がって、最初にめくった子のスカートをめくり返そうとする。たちまちその子たちの間でスカートめくり合戦が発生した。そのうち、その中の一人の風間美由紀が中村文子におっかけられて真奈の席の近くまで走ってきた。
 そして、美由紀のスカートが真奈の前で文子にめくられると、美由紀は、
「きゃーぁ、えっちぃ。え〜ぃ見ちゃったのなら、あたしもするぞぉ」
というと、文子だけでなく、真奈のスカートも大きくめくりあげたのだった。
(あ、あたしのスカートが、パンツを、パンツを見られちゃった…!)
 その瞬間、真奈の頭の中は真っ白けになった。人の下着姿を見るのも恥ずかしかったのに、いきいなりみんなの前でスカートをめくりあげられてしまったのだ。
「ねっ、ねえ…、どうしたの…」
 他の子たちと違ってきゃーとも、やめてよ!とも言わない真奈の様子に美由紀が声を出すと、真奈の目には涙がたまり始めた。
(見られゃったよぉ)
 そう思うだけで、真奈は涙があふれてくるのをどうすることもできなかった。
「ちょっと、真奈に何をしたのよ!!}
 怒って、食い下がる怜子の声も、どこか別の場所のもののように聞こえていた。
「真奈、真奈、大丈夫?」
 怜子が抱きかかえるように真奈の肩をだくと、怜子に寄りかかるとともに真奈の意識は急速に遠のいていった。


[保健室]



 真奈の頬にちょっとつめたい早春の風があたった。目があいた真奈は、最初、自分が保健室のベッドに寝かされていること気がつかなかった。
「そっかぁ、あたしスカートをめくられて…」
 思い出しながら、真奈はベッドの中で体を動かそうとした。その時、パンツの中がなんだか濡れているのに気がついた。
(あ、ひょっとしたら…)
 いそいで、パンツの中に手を入れてみて、その指についた血の色を見て、真奈はあわてた。
(どうしよう。ナプキン準備してないよぉ)
 もし準備ができていても、鞄は教室である。かってにでて行くわけにも行かずもじもじしていると、ついたての向こうから保健の先生が顔をのぞかせた。
「あら、気がついたの?」
「は、はい。」
「そう、熱は無いみたいだけど貧血かしら。お昼ごはんちゃんと食べた?」
「お弁当をたべました。」
「そう。じゃあ、体調が悪かったのかしら…」
「あ、あの…先生…」
「なに?」
「あ、あたし…急に…生理に…なちゃって…」
「ああ、そういうこと。そう。ナプキンとか持ってる?」
「い、いえ…ないです…」
「そう、じゃあ、」
 そういって先生は棚からナプキンを取り出した。
「使い方わかるわね?」
「う、うん。」
「女の子なんだから、予定日が近づいたら準備しときなさいね。」
「は、はい。」

 真奈が服をなおして終わる頃、保健室のドアが開いた。
「先生!島村さんだいじょうぶ?」
 放課後、ホームルームを終えて怜子たちだった。そして、そのうしろから風間美由紀や中村文子も姿を現した。
「島村さん、ごめん…。あの〜あたし…」
「ち、ちがうの。私、その…体調が悪かったの…、それで急に倒れちゃったの。ねえ、先生。」
 そういって、保健の先生をみつめた。保健の先生も真奈の真剣な表情に、訳知り顔で微笑んでしてうなずくのだった。
「島村さん…」
 スカートめくりのいたずらをかばおうとしている真奈を美由紀と文子は見つめた。

「嶋さん。あなた教室に行って島村さんの鞄とってきて。」
「は、はい。」
 そういって、保健の先生は、すこし怒ったように不満顔の怜子を教室へ送り出した。
「OK、じゃあ坂上先生の方はあたしの方から言っておくわ。あなたたち島村さんの世話をお願いね。すぐもどるから。」
 こういって先生はドアをでていった。
「島村さん…ごめんなさい…」
「ゆるして…。スカートめくりでこんなことになちゃって…」
 すこし涙目になりながら美由紀はいった。
「…いいの。ちょっと恥ずかしかったから…」
「…ねえ、じゃあ、これでゆるして…」
 そういうと美由紀は自分のスカートをおおきくめくりあげた。
「あたしもパンツ丸見えだから。」
「あ、あたしも。」
 文子もいきなりスカートをめくった。
「風間さん、中村さん…」
 スカートの裾から手をはなして美由紀は言った。
「これで、おあいこ。みんなパンツをみたもの…」
 はずかしそうに笑う美由紀につりこまれるように真奈も笑ってしまった。
「うん、これであたし達パンツ友達だね。」
 その言葉に3人は大笑いした。
「島村さんっておもしろい人ね。」
「真奈でいいよぉ。もう友達だもん。」
「うん、私のことも美由紀ってよんでね。」
「あたしは”ふみこ”だけど小学校の子は”ブンコ”ってよぶんだ。」
「うん、あ、怜子が帰ってきた。」
「じゃあ、あたしたち行くね。」
「うん」
 怜子と入れ替わりにでていった美由紀と文子を真奈は見送った。
(よかった、ともだちなれて…)
 本当だったら、女子中学生がスカートをめくりあげるなんていうのを目の当たりにしたら、Hな気持ちになるのが当然だった。だけど、真奈の胸の中には、あたたかいほのぼのとしたものが拡がっていた。


[帰り道]



「ほんとうに大丈夫?!」
「うん、もうなんともないよ。」
 学校から駅に向かっていく下り坂を怜子と真奈はゆっくりと降りていった。
「でも、どうしてかばったりしたのよ。ホントのこと言っていいじゃない。」
「え…、だって…」
 まだ、ちょっと怒りがおさまらない風の怜子に、真奈は口ごもった。
「だって、本当にちょっと体調が悪かったんだもの。」
「あ、そうなの。」
「うん、ちょっと腰がおもいっていうか…」
「……真奈、ひょっとしてあの日?」
「えっ!……」
 うろたえてしまった真奈の様子を見て、怜子は半分ため息をつきながらつづけた。
「なんだ、そうだったらそういえばいいのに。」
「…なんで判るのよぉ?」
「だって、なんだか、どよよぉぉんとしていてさ。生理だったら生理って言ってくれたらいいのに。」
「だって、だって、恥ずかしいもん。」
「なぁにいってるのよ、女の子同士じゃん。あ、ひょっとしたら、真奈って初めてなの?生理。」
「……2度目…」
「そっか、あたしなんて5年生だったから。もうベテランだよ。だっから、おっねえさんにまかしなさい。」
 Vサインをだしながら怜子は笑った。
「つらいかもしれないけどさ、そのうち慣れるからさ。」
 そういって怜子は真奈の肩に手を回してくきた。その怜子の腕のぬくもりを制服ごしに感じ、真奈は心の中に暖かいものが広がるのを感じていた。
(お姉さんか、そうかも…。女の子としては怜子の方がお姉さんだもんね。でもそんな怜子のことが、うれしい。)
「ねえ…、その…生理だってこと秘密よ…。教えたの怜子だけなんだから。」
「うん、二人だけの秘密ね。私なんて小学校だから、男子にからかわれちゃってさ…。男子って自分に無いことだから無神経でや〜よねぇ〜」
 その言葉にうんうん頷きながら、真奈はあることに気がついていた。
(そうだよね…、だってさ…。)
「ねえ、あたし達って女の子だよね。」
「えっ?」
「そうよね。うん、そうよね。」
 いきなり、両手をつかって怜子の手をしっかり握りしめた真奈にびっくりしながら、
「何言ってんのよ。」
と怜子は答えた。
 だけど、真奈ははっきりわかったのだ。
(だって、私は真奈って言う中学生の女の子なんだもの。だけど女の子になってよかった。)
「うふ、怜子ちゃんと出会えて良かったって思ってんの。」
「な、なによ急に…」
「ねえ、明日いっしょに学校へ行こうよね。」
「う、うんいいよ。」
 急に元気になった真奈の声をいぶかしながら、怜子はうなずいた。


[エピローグ そして いっしょの登校]



「あ、真奈、こっち!」
 改札口からでてきた真奈に怜子が手を振った。
「あ、怜子ちゃんごめん、待った?」
「ちょっとだけよ。さあ、行こう。」
「うん」
 なかよく2人並んで学校へ向かう怜子と真奈に春の風が吹け抜けていった。
「今日はリボンしてるんだ。」
「うん、一度してみたくってさ。」
「ふ〜ん。あんまりリボンしないんだ。」
「でもさ、女の子って大変なこといろいろあるけどさ、良いことや楽しいこともいろいろあるよね。」
 その言葉を聞いて、怜子は昨日の真奈の生理の様子を思い出した。そして、笑顔になって、
「そりゃそうよ。真奈ちゃんもリボンだけじゃなくおしゃれしなくちゃ。」
「そう、そうよね。おしゃれか…。」
「ねえ、この土曜日家に遊びにおいでよ。アニメビデオ買ったんだ。それから、お洋服もいっしょに見ようよ。」
「うん」
(お洋服を着て、女の子しなくっちゃ。だって私ってもう女の子なんだもんね。)
 春の光の中、うれしそうに笑った真奈の表情に、幸せがいっぱい広がった。


〔FIN〕



[あとがき]

 みなさま、はじめまして、もと(MOTO)ともうします。
 みたまさんの「真奈の中の慎吾」シリーズの1つをお届けします。みたまさんの”だれか「どきどき女子校編」書いて”という言葉がずっと引っかかっていました。そこで、初めてたくさんの女の子達に囲まれた生活をはじめる時のどきどきを書いてみたいと思いました。
 ほんとうならもっと早くに仕上げたかったのですが、なにしろ筆無精なので、こんなに遅れてしまいました。ゴメンナサイ。
 ご感想をお待ちしています

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