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僕らの関係〜中学編〜

文:johny


俺はいま、健二の部屋にいる。
健二とは小学校以来ずっと親友で、同じサッカー部に所属し、喧嘩するときもいつも一緒だった。今も同じ高校でしかも同じクラスでもある。巡り合わせ、そしてここまで気があうのはなにゆえだろうか・・・健二は身体は大きく喧嘩っ早いが、動物や弱いモノにはとことんやさしく、また女にはからきし弱かった。そんな大雑把な生き方が俺は気に入っている。今日も「相談がある」と呼び出されたが、俺にはそれが「好きな女への告白」についての相談であることがわかった。
「なあ裕太・・・俺どうしたらいい?」
「すいぶんと唐突な奴だなお前は・・まず相手を教えてくれないとアドバイスのしようがないだろ。」
「あっそうか・・・わりぃ」
きまってこれである。すでに足が地に着いていないかのように緊張しているようだ。
「で誰なんだよ?C組の幸子かそれともE組の由美ちゃんか?」
健二は既に説明したように女性にはからきし弱いくせに、惚れやすい。惚れた数なら俺のつき合った女性よりは圧倒的に勝っている。そうそう補足しておくが、俺はいま同じクラスの麻衣子とつき合っている。麻衣子との出会いは、健二がはじめに麻衣子に惚れ、相談にのっているうちに俺と麻衣子がつきあい始めてしまったのだ。しかし健二はなにも言わなかった。これが友情なんだろうか?
俺にはわからなかったが、ときおり辛く感じることもある。俺は健二のことを考えると、申し訳なくてか胸が締めつけられる思いをしていた。それゆえに俺は親身になって相談には極力のっているんだろう・・・このときはまだそう思っていた。
「D組の多佳子・・・」
「おい本気かよ、彼女はやめとけって。」
「どうしてだい?」
多佳子は学年1の美人で、少女向けのファッション雑誌モデルをやっている。それゆえか大人の社会を知っており、年上の男とつき合っているという噂だ。同学年には興味ないっていう噂もある。ましてや健二なんか相手にもしないだろう。
「それはさ・・・とにかくやめとけって!」
「でも俺のなかでなんかこう・・爆発するように駆けめぐってんだ。もうとめられねぇーよ。」
「けどなぁ・・・」
「頼むよ、いい方法を教えてくれよ。」
「うーんどうしてもか?」
「ああ!」
健二は握り拳を俺に見せた。俺はそれをみて彼が本気なのがよくわかった。むろん彼はいつどんなときでも本気なのだが・・・。
「しゃーない人肌ぬいでやるか・・・」
「ホントか!サンキュー裕太!でどうすんだ?」
健二の険しく曇った顔が急に晴れ間をのぞかせた。
「まあ正攻法でいこう。ただし告白の練習を徹底的にしてだ。」
「練習?」
「ああ、健二はいつも相手の前にたった時点で、舞いあがっちまうだろ?」
「・・・ああ」
「だから告白の練習をすんだよ。」
「そうか練習しておいて、それどおりにすればいいわけか・・・」
ポンと手を叩くと健二は座っていたイスから立ち上がった。
「そうだよ。じゃあ俺を多佳子だと思って言ってみな。」
「えっそんな無理だよ。裕太は裕太だしさ。」
「イメージでいいんだ、やってみな。」
健二はゴクリと唾を飲み込み、俺の前に立った。
「ほら言ってみな。」
「じゃ・・じゃあ始めるぞ。うっうん・・・あっあの・・・」
「?」
「その・・・」
「??」
「だから・・・」
「ちょっとちょっと待った。それじゃ相手はどっかに行ってしまうぜ!」
いつものことであるここまので健二の勝敗は、0勝9敗・・・いずれも「好きだ」のひとことも言えていない。どうしてこう女の前では弱いのか・・・。ましてや今はただの練習なのに・・・まったく。
「そうかい?どうすればいいんだよ。」
「まず相手を引きつけるように強引な雰囲気を見せる。」
「どうやって?押し倒すのか?」
「おいおい強姦するわけじゃーないんだ。雰囲気だけでいいんだよ。」
「そうか・・・やってみる。」
健二は再びゴクリと喉を鳴らし、俺の肩を掴んだ。
「そっいいぞ・・・そのままいっちまうんだ。」
「あっ・・あの・・その・・きっと・・・」
「おいおいどうした?」
「やっぱ駄目だよ。どうしても裕太の顔をみてるとその気になれねぇーよ。」
ホント健二は、女の子の前でも言えないくせにわがままな奴だ。
「そればっかりはどうしてようも・・・いや待てよ。」
「?」
「じゃあもっと本番に近い形で練習するか?」
「えっどうやって?」
俺はガバッと立ち上がり、健二の腕を掴んで外へ連れ出した。
「おいどうしたんだよ。」
「いいから乗れ!」
俺は自分の自転車に乗り込み、健二にも自転車に乗るように指示した。そして俺達は深夜の街を滑走した。

健二に多佳子の家の前で待つように指示し、いったん別れた俺は家にいったん帰り、押入の中からひとつの小箱を持ち出し、再び健二と合流した。
「なにやってたんだよ。」
「これさ!」
俺は健二にその古ぼけた小箱をみせた。
「なんだいそりゃ?」
「まあまあ、いいからついてきな。」
俺と健二は多佳子の家に忍び込んだ。深夜とは言え、まさにこれは泥棒そのままだった。なんとか家の人間に気がつかれず1階の屋根に登った俺と健二は、カーテンがかけられたその部屋まで辿り着くと、半分あいていた窓を静かに開いた。
「おいここ多佳子の部屋なのか?まさかいま告白させる気か?」
「告白したいんだろ?ついてきなよ。」
「でもこれって犯罪だろ・・・」
「愛の前では法も警察も全て無力なの!」
「愛って・・・そうだなわかったよ裕太。」
健二は何をわかったのか、顔を満面の笑みを浮かべ、白い歯を輝かせて見せた。
「まあいいか・・・では・・・」
俺と健二は靴を脱ぎ、カーテンをめくってその部屋に忍び込んだ。部屋は意外というか大人びた彼女のイメージに反してSMAPのポスターなどが貼られており、ミーハーな一面を覗かせていた。壁にはうちの学校のセーラー服がしっかりアイロンがけされかけられていた。健二はさっきから部屋の臭いを嗅いだり、部屋の中をキョロキョロと見渡していた。こいつは一体・・・まあしゃーないか。
「おい健二なにやってんだよ。」
俺は小声で健二に言った。そして手でベットを指さした。健二は俺の横に立ち、ベットの上の人物を観た。そこには多佳子がすこやかな寝息をたてながら寝ていた。仕事があったのだろうかかなり熟睡している様子だった。
「ん☆!○×ア¥!!」
健二は自ら口元を押さえながら、なにやら叫び、反対の手で多佳子を指さした。俺はニンマリとした笑顔をみせ、コクリと頷いた。
「どっどうすんだよ裕太?」
「まあみてなって!」
俺は古ぼけた小箱を取り出し、蓋を取り除いた。小箱の中には緑色の液体が入った小瓶が納められていた。
「なんだいその変な液体は?」
「いいからみてなって・・・」
俺はその小瓶の蓋をとり、その液体をぐいっと飲み干した。その液体が喉をとおり、胃袋にはいったのが手に取るように判った。そして次の瞬間、激痛が俺の身体に走った。激痛は一瞬で、俺は声をあげる間もなく続いて気を失うような感覚を感じた。
「おい裕太!大丈夫なのか?」
健二が心配そうな顔をみせながら俺の身体を揺さぶった。しかし俺は既に肉体的感覚はなかった。ゆさぶられるたびに気持ちよくフワリと宙に浮かんだ気がした。
「ゆっ裕太!お前宙に浮かんでる・・・ぞ。」
俺が視線を下に向けると、確かにおれは中に浮かんでいた。そして下には俺の身体が目を閉じ横たわっていた。つまり俺の魂が身体から抜け出たわけだ。
「幽体離脱だよ。」
「へっ幽体離脱?」
「ああ、さっきの薬は冒険家のじいちゃんからもらった幽体離脱の薬さ。」
「そんなのありかよ・・・」
「まあ俺も半信半疑だったけどな・・・」
「で・・・どうすんだよ。」
「健二、多佳子の掛け布団を取り払ってくれ。」
「ああ・・・」
「そっとだぞ・・・多佳子を起こすなよ・・・」
健二は多佳子を起こさないようにそっーと掛け布団をめくっていった。なんとか掛け布団がとられると俺は、浮かびながらベットの上へ乗った。
「じゃあ行くぜ・・・」
ゴクリ・・・緊張する健二の喉が鳴った。俺は意を決し、多佳子と同じポーズをとりながら強く念じた。すると次第に俺はそのまま下降し、多佳子の身体に染み込むように入り込んだ。多佳子の意志が抵抗しているのか、染み込む度に、なにか強烈な拒否反応に似たなにかが俺の意志に流れ込んできたが、俺はそれを押さえつけるようにして無理矢理入り込もうと努力した。そして・・・完全に入り込めたのか、なにかのフィット感とやわらかく暖かいベットの感触が伝わってきた。
「おいどうなったんだよ?」
健二のそんな台詞が耳から聞こえてきた。俺は目をあけ、身を起こした。
「多佳子・・・?」
健二は突然目を開け、起き出した多佳子を観て驚いた。俺は自分の身体を確かめようとまず自分の手をみると、それはか弱さを感じさせる長く細い指だった。続いて俺はパジャマの上から股間部に手をやると、そこには男のシンボルであるあの膨らみがなかった。成功したのだ。俺は満面の笑顔を健二に見せた。
「成功だよ健二。」
「えっ・・・多佳子?」
「俺だよ、俺!」
「?」
「裕太だよ・・・」
「えっ裕太?でも・・なんで・・」
「馬鹿だな・・幽体離脱しただろ、だから多佳子の身体に入ったんだ。」
「はいったって・・じゃあ多佳子は・・・」
「そっ今は俺が多佳子の身体を動かしているんだ。」
「そんな馬鹿なこと・・多佳子はどうなったんだよ。」
そんなこと俺にも判るはずがなかった。それでも目を閉じると、誰か別の・・おそらく多佳子のだろう存在というか思念みたいなものを感じた。
「よくわかんないが、今は眠っている状態かな。」
「じゃあ裕太の身体はどうなったんだ?」
「さあ・・・きっと仮死状態なんじゃない?」
「なんじゃ・・・って死んじゃうんじゃないか?」
「大丈夫だと思うぜ。説明書に書いてあったもん。」
「説明書?」
「ああその小箱に入っているよ。」
俺が多佳子の指で小箱を指すと、健二は小箱をひらいあげ瓶と共に入っていた古ぼけた紙切れを取り出した。その間に俺は、ベットから立ち上がった。身長差からだろうか少し周りの見え方が違ったが、もともとモデルをやっている多佳子の身長は高く、そう気になるほどの差は感じなかった。しかしもともと健二と俺の身長は同じくらいだったのに、今は健二の顔を見上げるように観ることになったのはとても違和感があった。健二は説明書を不思議そうな顔で読んでいた。
「こんな薬あるんだな・・・しかも説明書ってことは何処かで売られているのか?」
「さあ、よく知らない。」
「ふぅーん・・・なになに"魂の抜け出した身体は2時間で死に至るので、それまでにやりたいことをやり、元に戻るようにしましょう。"ってかかれてるぜ。」
「そっ今から2時間だ。」
俺は多佳子の部屋の壁時計を観ると、2時36分をさしていた。ということは4時35分までにここに戻り、元に戻れば多佳子にも気がつかれなくてすむわけだ。
「どうすんだよ?」
「決まってるだろ!告白の練習さ。」
「練習?」
「そっ俺じゃ雰囲気でないっていうなら、本番と同じように多佳子の顔をみて言えばいいだろ!」
「裕太・・・お前って奴は・・・いい奴だな。」
「俺ら親友だろ。あったり前よ!さっさ、あんまし時間はないぜ。近くの公園にでも行こう。」
「ああ・・・そうだな。サンキュー。」
「あっその前に健二その洋服ダンスあけてくれ!」
「えっなんで?」
「このままじゃーでられないだろ。着替えだよ。お前の好きなやつを出してくれ!」
「出せって・・・」
健二は恐る恐る洋服ダンスの扉を開いた。
「大丈夫だよ。多佳子は寝てるんだから・・・」
「ああ・・・」
健二は洋服ダンスの中をまさぐり始めた。俺はその間に身体に馴染むようにひとつ背伸びをした。がっちりとした俺の本来の身体にくらべて華奢なこの身体は弱々しく感じたが、新鮮な感覚が体中から満ちあふれているようだった。背伸びした際に、パジャマは盛り上がった胸に引っ張られるような格好となった。そういえばさっきからいつもと違う胸元の重みすら感じる。俺はパジャマの胸元をひっぱり中を覗いてみた。月の光に照らされてか余計に白く見えるその肌、そして胸元にはプルンとゆっくりと揺れるオッパイがそこにあった。桜色したてっぺんが恥ずかしそうにこっちを見返しているようだった。俺は急に恥ずかしくなり、顔が真っ赤になるのを感じた。
「・・・おっ・・おい健二、ブラジャーも用意してくれ。」
「ぶっブラジャー?」
「ああ、はやいとこ頼むよ。」
俺はとりあえず化粧台の前に座り、長く美しい髪に簡単にブラシをいれた。それにしても鏡に映った俺の・・いや多佳子の顔はすっぴんだと言うのにとてもかわいかった。確かに学年・・・いや学校いちの美人と言われるわけだ。俺はとりあえず化粧をと思ったが、化粧なんてしたことのない俺は、下手に化粧はせず、とりあえずピンクの口紅だけ多佳子の唇に塗った。観よう見まねでやったのだが、けっこう綺麗に唇はピンクに彩られた。
「おい健二まだなのか?」
俺が振り返ると、健二が手に洋服を持ちこっちをみつめていた。俺は健二にみつめられた為かまた顔が真っ赤になった。
「おいそんな目で見るなよ。てれるじゃないか・・・。」
「だってよー俺さ・・・」
「告白の練習するだけなんだからさ、変なこと考えるなよ。」
「おっおう・・・」
「それよかそれでいいのか?」
「ああ・・・」
健二は手に持っていたブラジャーと洋服を俺に手渡した。それは白のブラジャーと光沢をもったチャイナシャツと黒のサブリナパンツだった。
「お前こういうの趣味なわけ?」
健二は照れくさそうに笑っていた。
「わかったわかったこれに着替えればいいんだろ。手伝ってくれよ。」
そう言い俺はパジャマのボタンを上から外した。さきほどのオッパイが再び姿を表した。ゴクリとそれを見下ろしていると、健二もゴクリと唾を苦しそうに飲み込みながら俺の胸元をみていた。俺は急に恥ずかしくなり、パジャマで胸元を隠した。
「あんま観るなよ・・・」
俺は健二に言った。
「お前もな・・・」
「ああ・・・そうだな・・」
俺は健二に背を向けながら、パジャマを脱ぎ去り、ブラジャーで胸を覆った。ブラジャーは俺の・・・いや多佳子の胸を優しく包み込んだ。ホックが後ろにあるせいか手を回してもなかなかとめることができなかった。
「おい健二ホックをとめてくれ・・・」
「・・・いいのか?」
「そんなあやしい口調で言うなよ。」
健二は手渡されたブラジャーの両サイドを持ちながら、震える手でホックを留めた。「どうだ?」
「ああ・・なんか安心というか落ち着くって感じかな。」
「ふぅーん、いいなぁ・・・」
「誰のためにやってると思っているんだ?」
続いて俺は黒のサブリナパンツに脚を通した。パンツはぴっちりと吸い付くような感じでちょっと恥ずかしい感じもしたが、モデルをやっている多佳子の長い脚によく似合っているし、スカートをはかされるよりはマシだ。続いて俺は光沢を持ったそのシャツを着た。それもまたピチッとした小さめのシャツで多佳子の身体にフィットして胸元を強調しているようだった。最後に襟元の花ボタンをとめ、着替えが完了したころにはもう3時10分をさしていた。
「さっ時間がないから・・・行こう。」
「お前の身体はどうすんだよ?」
「とりあえずここに置いておこう。持ち歩いても怪しいしな。じゃあ外でまっててくれ。」
「お前はどうすんだよ?」
「玄関から靴を履いてくる。」
「そっか・・・」
健二は入ってきたときのように窓から外にでて、俺は玄関に行き、多佳子の靴を履いて外に出た。
「よっお待たせ!」
俺は自分の自転車に乗り込み、健二と共に多佳子の家の前を離れた。それにしても身体がかわっただけでこんなにも風の感じ方がかわるなんて、いや風だけでなく街を彩る夜景もいつもより輝いて見えた。

「何処に行く?」
「公園とかだろ?お前の予定ではどこなんだよ?」
「・・・俺んち!」
「お前自分の部屋で告白する気かよ。」
「あっああ・・・」
「そりゃ女の子は警戒するぜ。」
「そっかなぁーでも俺の部屋にしようぜ。誰にもみられなくていいしさ。」
「まあ・・いいか」
俺達は健二の家まで再び戻ってきた。健二の両親は温泉旅行に行っているらしく、家には誰もいなかった。自転車をとめ、健二の家に上がり込んだ。健二は飲み物を用意するといい台所へ消えていった。俺はそのまま健二の部屋までいった。健二の部屋に入ったところで、正面のガラス戸に映った自分の姿をみて少しびっくりした。それはさっき健二の部屋に来たときと全く違う、借り物の姿・・・多佳子そのものだった。俺は多佳子に近づき改めて多佳子の全身を正面から見つめた。
「確かに可愛いよな・・・」
多佳子の唇から俺の台詞がそう漏れた。俺の気持ちを表すように多佳子の頬が赤らむ、俺は盛り上がった胸の上にしなやかな両手をそっと置いた。触れた瞬間に胸のあたりがピクッと抵抗するようにしまるような感じすらした。俺はそのまま両手を這わし、オッパイを下から持ち上げるようにして胸をすくいあげた。
「へぇ〜女って気持ちいいもんだな。いっそこのまま・・・」
そのとき健二が上がってくるのがわかった。
「という訳にはいかないか・・・さっさと健二の奴に練習させて、元に戻らなきゃな。」
健二が部屋に入ってきた。そして俺にビールの缶をひとつ投げてよこした。
「おいビールかよ。」
「いつもこれだろ・・・」
「でもお前、俺は今・・・」
「飲まないのか?おいしいぜ。」
健二は自分の手にした感のタブをあけ美味そうに喉に流し込んだ。
「酔って襲うなよ!」
「大丈夫だって・・・親友を襲うようなまねはしないよ。」
まあ健二は女に奥手だし、ましてや今の多佳子の中身は親友の俺なんだし・・・と考えた俺は缶のタブをあけ、同じように喉に流した。多佳子の身体のせいだろうか、いつもと違う苦みを感じたが悪くない。俺は半分ぐらいまで一気に空けたところで、本題を切り出した。
「じゃあ始めるか・・・」
「おうっ!」
「なんか偉く乗り気だな。」
「ああ今ならバッチリだよ。」
「よしその調子だ。じゃあさっきの続きからやってみろ!俺はここで立ってるから・・。」
「おう・・・強引な雰囲気だったな・・・」
健二はひとつ深いため息をつくと、俺の前にたった。確かにさっきまでの雰囲気とは違う。やはり好きなこの前では気合いの入り方も違うってことだな。健二は勢いよく言った。
「俺!キミのことが・・・」
しかし健二の勢いは、しょんべんカーブみたいに急に勢いをなくし萎んでしまった。
「おいどうしたんだよ?」
「やっぱ俺には駄目だ・・・」
「なにいってんだよ。俺だってここまでやってるんだぜ。」
「けど・・・」
俺はチラッと健二の机の上にある時計を観た。時刻はまだ3時45分、しかし時間もそう多く残されていない。しゃーない路線変更するか・・・俺はそう考えた。
「ねぇ?健二くん・・・ワタシの事好きなんだって?」
「えっ裕太?・・・多佳子?」
「ねぇどうなの?」
俺は自分が多佳子の声を借りてしゃべっているその台詞に吹き出しそうになったがなんとか堪えて女言葉を続けた。こうやってきっかけさえ与えてやればどうにかなるだろうと考えたのだ。
「ねぇ?」
「おっ俺は・・・」
「ん?」
よしよし健二の奴、言い出しそうだぞ!やっぱこういうのに男は弱いしな。ほらあと一息だ。
「ん?どうなの?ワタシのこと好きなの?嫌いなの?」
俺は最後のひとおしをした。それはとても効果あったらしく健二は再び鼓舞しを握りしめそして言った。
「俺は多佳子の事が好きだ!」
キュン・・・なにやら俺の胸の奥でそんな音がなった気がした。本当ならここで親友の試練無事クリアを喜ぶべきだったが、なにか別の気持ちが俺の心の中で爆発的に広がっていた。なんだろうこの気持ちは・・・。
「うぉおおおお〜!」
健二のそんな叫び声で、俺は急に現実に引き戻された。健二の目つきが突然あやしくなり、俺の・・・いや多佳子の全身をなめるようにして見つめている。
「ばっ馬鹿・・・健二、やめろ!」
俺の抵抗むなしく、健二は俺をベットに押し倒した。
「おっおい!もういい芝居はいいんだよ。馬鹿!胸掴むなよ!痛いよ・・・。」
しかし既に正気を失った健二は俺の上に覆い被さり、荒い鼻息を俺に吹きかけた。
「だから俺だって・・おい俺は裕太だっ・・・」
健二は俺の首筋に唇をつけ、そしてしまいには舐めやがった。
「だっ・・・だか・・ら・・俺は・・・た・・佳子・・・あっ・・・」
だんだん何も判らなくなってきた。今までに体験したこともない快感が俺の全身を走り、俺は抵抗できなくなっていた。健二の手が俺の胸を弄くり回し・・・そしていつの間に俺は「多佳子好きだ・・・」となんども呟いている健二のその言葉に酔いしれていた。もしかしたら俺は親友としてでなく、健二の事を昔からすきだったのかもしれない。
しまいに健二はズボンのチャックをおろし、裸になろうとしていた。このまま健二とHしちゃっても・・・いいかもしれない。俺も自分の着ているチャイナシャツを脱ごうと手をかけた瞬間・・・多佳子の身体・・・いや俺の身体になにか激痛みたいな感触が走った。それは身体的激痛ではなくなんかこう魂が揺さぶられるような・・・感じで。そしてそこで急に我に返った俺は力まかせに健二を突き飛ばした。女の身である今の俺にはさほど力はでなかったが、不意をついたためか健二はベットから突き落すことができた。
「どうしたんだよ多佳子?」
「うっう・・・健二・・頭が痛い・・・」
「えっ多佳子・・・?・・・裕太?」
「う・・・痛い・・・頭が割れそうだ。」
「どうした?」
「まだ時間じゃないのに・・・」
俺は頭をおさえ、痛みを鎮めようとしながら、時計をみた。時刻は・・・まだ4時02分だった。しかしなんで・・・まさか・・・
「大丈夫か?裕太・・・」
「うっ健二・・あの時計は・・・あってるんだろうな・・・?」
俺が震える手で時計をさすと、健二は急に青ざめて言った。
「あっ!あの時計は・・・30分遅れているんだった!」
「なっ・・なにぃ!じゃああと何分だ?」
「30分遅れているから、今が4時32分位で、あと4分・・・」
俺と健二は互いに青ざめた顔を見合わせた。どう急いだって、ここから多佳子の家まで10分以上かかる。とてもじゃないが間に合わないのだ。
「やばい俺の身体が死んでしまう。」
「どっどっどうすんだよ裕太?」
「とにかく・・・多佳子の家へ・・・」
俺は割れそうに痛い頭をおさえながら、玄関まで走り、健二と共に自転車に乗り込んだ。

どれ位ペダルをこいだろう、数十分以上こいだ気もしたが、なぜか前に進んだ気がしない。どうしようもなかった。途中、公園の時計が見えた。俺は静かに自転車をとめた。
「健二!・・健二!」
「どうした裕太・・・もうすぐ多佳子の家だぜ!」
「いやもういい・・・」
先行する健二は自転車を反転させ、俺に近づいてきた。
「みろ!」
俺が指さした公園の時計は静かに4時45分をさしていた。
「間に合わなかったのか・・・」
「ああ・・俺の身体が死んだんだ。」
「・・・俺のせいだ・・・。」
「しょーがないさ。」
「なんていったらいいのか・・・でもお前は・・・お前はどうなるんだ?」
「わからない・・・でもさっきまで感じていた頭痛は消えている。それに俺の中に確かに眠っていた多佳子の存在が感じられない。そう多佳子は消えてしまったかもしれない。」
「?・・・ということは・・・」
「ああ・・・多佳子の魂も死んでしまったんだと思う。」
しばらく無言が続いた。俺もショックだが、健二もまた恋した相手が死んだことに言葉がでなかった。本当なら告白の練習をして、元の身体に戻り、健二が多佳子に告白してハッピーエンドとなるはずだったのに・・・。
「裕太・・・」
健二は俺になにか慰めの言葉をかけようとしたのだろうが、良い言葉が浮かばず俺の名前を呼んだだけだった。しかし俺にはそんな健二の気持ちがとてもうれしかった。
「なあ健二・・これで良かったのかもしれないな。」
「えっ?」
「健二は俺のこと愛してくれるんだろ?」
「えっ俺は・・・」
「どうだい?」
健二はしばらく下を向いて悩んでいたが、やがて白い歯を俺にみせて言った。
「俺は多佳子も裕太も好きだよ。」
「・・・ありがとう健二。」
健二は自転車をささえていた手を離し、多佳子の身体を・・・いや俺を両手で抱えた。
「裕太・・・俺とつき合ってくれるのかい?」
「ああこれからもずっと一緒さ。」
俺と健二はお互いの身体をささえあうようにして、自転車をおして健二の家へゆっくりと戻っていった。
「なあ健二・・・」
「ん?どうした・・・」
「俺の尻から手を離せよ・・・馬鹿。」

〜続く〜     ・・・か?

<あとがき>
っというわけで処女作となった「オヤジ狩り」の不味い点を再確認しながら作成した第2弾です。実は「オヤジ狩り」以降3つも入れ替われものを途中まで書いたのですが、構成が悪いのか長くなってしまい、完成が長引きそうでした。そこで別途ショートストーリーを心がけ、無理のない形で書き上げたのがこの作品です。入れ替わりというわけではなく、強いて言えば「乗り移り」系の作品ですが、好評であれば、先も面白そうなので続きを書くかもしれません。アドバイスやご感想とかご指摘があれば是非ご連絡ください。

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