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冥土の森

作:新ヶ浜咲衛門



 ある日のこと。
 とある小学校の教室で、三人の男の子が何やら話し込んでいた。
 三人の名前は、英賀原健也(あがあら けんや)、沼田宗太(ぬた そうた)、麓屋栄治(ろくや えいじ)。小学三年生だ。
 彼らは、幼稚園も同じところで、いつもその三人でいろいろな所を探検しているのであった。
「今度はあの森に行こうぜ」
「ええっ!? あの森は入っちゃダメって、お母さんが言ってたよ……」
 あの森とは、学校から北に500メートルほど行ったところにある、広さが2500万平方メートルという広大な森で、その森の中心には祠がある。
 三人はその森を探検する相談をしていたのであった。
「宗太、あの森は入ったら二度と出られないって言われてるよ」
「そんなの迷信だろ? 健也」
 健也は臆病な性格。それに対してリーダー格の宗太は怖いもの知らずな性格、そして栄治は強気な性格だ。
「あ、あと、森の祠にイタズラをすると、よくないことが起きるって言われているよ」
 よくないことが何なのかは具体的にはわからないが、この辺りでは「祠に悪戯をすると、冥土にいく」と言い伝えられている。
「健也は心配性だな。いつもあちこち探検しているじゃないか。今回も大丈夫だよ、なっ、栄治」
「で、宗太、いつ行くんだ?」
「ああ、次の日曜日に行こうと思うんだ」
「わかった」
「わ、わかったよ……」
「よし! じゃあ次の日曜日、朝7時に学校の前に集合だ!」



 そして日曜日、三人は小学校の前に集合した。
「みんな揃ったな。ではしゅっぱ〜つ!」

(不安だな……)

 健也は帰ってこれるかどうか、心配になってきた。
 森に行く途中、近所のおじいさんに出会った。三人が森に入ることを伝えると、おじいさんは驚き、
「森に入るのはやめなさい。森に入ったら出られないかもしれないし、祠を悪戯したら冥土にいってしまうぞ!」
 と忠告してきた。
 しかし宗太と栄治はそれを無視して、怖じ気づく健也をひっぱり森へと向かった。


 5分ほどで森の入り口についた。
「これから、森に入るぞ!」
「おおお!」
 宗太と栄治が意気込んでいる。
 しかし、健也は不安でいっぱいだった。
「やっぱりやめようよ! なんか胸騒ぎがするよ!」
 健也は二人が森に入るのを止めようとした。しかし、
「ここまで来てやめられるかよ! 帰るならひとりで帰れ!」
「えーっ!」
 結局森に入ることとなった。健也もついていくことになった。





 もし、止めていればあんなことは起こらなかったのかもしれない。





 森の中は、鬱蒼としていて、迷いそうなほど、薄暗く、木が密集していた。

(嫌な予感がするなぁ)

 健也は常に不安が渦巻いていた。
 森に入ってから2時間たち、さすがに彼らも少し疲れてきたので、10分ほど休んだ。
 休んだといっても、木の根っこに腰を掛けるものであった。
 また歩いて2時間ほど経つと、大きく開けた場所に出た。
「あれがあの祠じゃないのか?」
「たぶんそうだ!」
 空き地の真ん中に祠が建っていて、扉にお札が張られていた。
 お供えなのか、その前におまんじゅうが置かれていた。
 三人は祠に近寄ったが、森に入る前におじいさんに言われた言葉を思い出した。
「確か、祠にイタズラをしたら冥土にいくって言ってたな……」
「本当に冥土に行くか、試してみようぜ!」
「や、やめようよ……本当に行ったらどうするの〜?」
 健也は必死に止めようとした。しかし、二人はそれを振り切って祠のお札をはがしてしまった。

 その時、風が強く吹き、鳥が一斉に飛び立つ音が聞こえた。

「な、なんだ!?」
 三人が驚いたのもつかの間……突然、健也の体に激しい寒気が訪れた。
 それはすぐに収まったが、収まると同時に体に変化が起こった。
 背がぐんぐんと伸びていく。それに伴って腕や脚も伸びていき、ほっそりとしたものになった。
 ぼさぼさで短く切られていたはずの黒い髪が緑色に染まり、さらさらなびきながら腰の辺りまで伸びていく。
「あっ……ああっ、お、おっぱいが!?」
 胸とお尻がむくむくと膨らんでいき、やわらかなものとなり、腰がくびれていく。
 ふとももには肉が付き、むちむちとしたものに変わった。
 健也が自分の体を見下ろすと、いつも見ている視点よりも高く、きつくなった子ども服と大きく膨らんだ自分の胸が目についた。
「あ……あああ……」
 その声はすでに少年の声ではなくお姉さんの声だったが、健也は他の体の変化でそれには気が付かなかった。
「け、健也……? お、お前もか……?」
 聞きなれない声で呼ばれて前を見ると、健也の前に見知らぬお姉さんが二人立っていた。
 一人は髪の色が青色で、もう一人は金髪だった。
 着ている服から見ておそらくこの二人は宗太と栄治なのだろうが……顔も身長などいろいろなところが大きく変わっていて、もう誰だかわからなくなっていた。
「ふ、服が変わっていく……」
 二人の服が、変化を始めた。
 胸を締め上げるかのように、ブラジャーが装着される。
「きゃっ……ああっ……!?」
 二人は体験したことのない胸を締め付ける感覚に、喘ぎ声を上げながら、体を震わせ、仰け反らせる。
「ぱ、パンツが……」
 下着も体に合った、女性のものとなる。
 体に合っておらず、きゅうきゅうだった服は体に合ったものとなる。
 ズボンの足を出す二つの部分がつながってひとつにまとまり、スカートになる。
 両脚が直に触れ合うようになり、擦れ合わされた。
「あっ……」
 その感触は柔らかくてすべすべしており、二人はまた喘ぎ声を上げた。
 その顔は、少し赤らんでいた。
 スカートと服とがつながって黒く染まって、ワンピースになった。
「あ……ああっ……」
 ワンピースの感触も二人にとって未知の感覚で、またもや喘ぎ声を上げた。
 裾がフリルで飾られ、どこからか白いエプロンが現れてワンピースの上から被さってきた。
 胸の部分に赤いリボンが留められた。
 柔らかくすべすべになった脚を包むように、靴下が黒く染まりながら伸びて黒いストッキングになり、ガーターベルトで固定される。
 ストッキングをこすりあわせた感触は、少しざらざらしていた。
 足には黒くて踵の高い靴が履かされる。さらさらと長く伸びた髪の上に、髪飾りが乗っかった。
「め……メイドさんに……?」
 宗太と栄治、二人はメイド少女となってしまった。健也はそれを口を開けて見ていることしかできなかった。
 そのとき、足元に風が入った。
「ま……まさか!?」
 嫌な予感がしてもう一度体を見ると、健也も二人と同じように、黒いワンピースに白いエプロンを身につけていた。
「あ、あああ……ぼ、僕もメイドさんに……」

 祠の前には、三人のメイド少女が立っていた。

 他から見れば、それはまるで、天国であったのかもしれないが、三人にとっては地獄であった。
「め、冥土にいくって……こ、こういうことだったのか……」
「うわああああ〜んっ! ど、どうしようっ!?」
「女なんてやだよお〜っ!」
 三人はその場所にへたり込み、声を上げて泣き出した。
 その座り方はすっかり女の子特有の座り方であった。

 「冥土にいく」とは、冥土(あの世)に行くのではなく、メイド少女になってしまうという意味であったのだ。



 30分程経ち、三人はふと立ち上がった。
 涙は出尽くして、すでに乾いている。
「と、とりあえず森を出よう……」
「う、うん……」
「そうだね……」
 三人は来た道を引き返し始めた。
 体が子どもではなく、女性の体つきになり、服装もいつも着慣れているものではない。
 靴も履いたこともない踵の高いものなので、森に入る時よりも歩きづらく、数歩歩くとバランスを取られて転びそうになった。そして体とメイド服が擦れて、「ああっ」と喘ぎ声が出てしまう。
 30分ほど歩くと、すぐに疲れてしまい、休まなければならなかった。
 また、履いている靴と根っこなどで転びそうになることが多々あった。



 結局森を出るのに、5時間もかかってしまった。
 ところが森を出たそこは、入ってきたところではなく、テレビに出てくるような屋敷が建っていた。
 その屋敷の前には大きな門があり、そこには健也たちとは別のメイドさんが立っていた。
 彼女は三人を見るなり、
「あなたたち、今日からここに来ることになったメイドさんたちね。とりあえず屋敷の中に入って」
「えっ? ええっ!?」
「ぼ、僕たちのこと?」
「なんで? どうして?」
 彼女に急かされるように屋敷の中に入れられて、三人はその屋敷に仕えるメイドとして働くことになってしまった。



 最初は、屋敷の掃除と書斎の片づけを任された。
 三人は小学校でも掃除はやっていたが、サボってばかりいて、どっちかといえば苦手であった。
 しかし、掃除を始めるとなぜか体がやり慣れているかのように、テキパキと作業することができた。
 片づけも同じようにテキパキと行うことができ、時間もあまりかからずに終わらせられた。


 その夜。
 健也たちは屋敷のメイドたちが入る風呂に入った。
「あっ……僕のおっぱい、大きい……」
 健也は自分の胸の膨らみを触った。服越しよりも大きくて、触ってみるととてもやわらかかった。
「ふともも、すべすべしている……」
 宗太は自分のふとももを撫でた。むちむちとしていて、触るとすべすべだった。
「髪もさらさらしてる……」
 栄治は自分の髪に触れた。癖のない金色の髪が、前に垂れていた。

(森に入らなければ……)
(祠をイタズラしなければ……)
(だからやめようって言ったのに……)

 三人は今日のことを後悔したが、もう後の祭りであった。































 その後。

「今日もお掃除、お掃除〜♪」
「これが済んだら、お庭のお手入れ〜♪」
「それからお料理の下ごしらえ〜♪」

 健也、宗太、栄治の三人は、メイドとしてあのお屋敷で働いていた。
 三人のメイドとしての腕前は、ほかの先輩であるメイドと比較にもならないくらい上出来なものであった。
 そしていつしか、彼ら──彼女らは、ときどき男の子だった自分がメイドに変わるというシーンを思い出すことがあっても、それ以外の小学生のときの記憶をほとんど忘れてしまっていた……

 英賀原健也は、英賀原健奈(あがはら すこな)として……

 沼田宗太は、沼田宗子(ぬた そうこ)として……

 麓屋栄治は、麓屋栄奈(ろくや えいな)として……

 彼女たちはメイドとして、女性としての人生を歩んでいった。
(END)

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