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AZUKI 4話
作:ごく普通のサラリーマン



  昨日のスキー帰りは、渋滞に巻き込まれ というか渋滞に積極的に入ったため、帰宅が12時を回ってしまった。
 あずきの変身時間 5時間 ぎりぎりで、途中変身が解けた場合、
 最悪 俺が運転をして帰るはめになるところだった。
 おかげで、ベットに入ったのが、1時すぎ 
 結果起きた時間がまた朝の10時になってしまった。
 どうも睡眠時間は最低でも9時間以上必要みたいである。
 
  昨日の帰途途中 あずきは探査を運転と並行で実施してるらしく、一言もしゃべらなかった。
 こちらも、そんなあずきを見ることが初めてで、帰宅まで何も聞けないままだった。
 
  顔を洗って 歯を磨き リビングに行くと 美紀は一人でテレビを見ていた。
 「あっ お父さん 朝食用意するね」
 「ありがとう。  あずきは? 」
 「朝から姿が見えないの」心配そうに美紀がつぶやく。
 初めて見るあずきの一面 
 一体 奴は何者なんだろう。
 なにか、すこし重苦しい気分になる。それにあずきが言った昨日の正体不明の力 
 実際に,なんの危険もあったわけではないけれども、今後どう対処すればいい?
 
 「あたしがスキーに行きたいなんて、いわなければ」
 朝食をもってきたあと、美紀が下を向き 泣きそうな顔をする。
 「美紀が気にすることじゃない」
 「美紀にはなんの責任もない。もしあるとしたら、俺とあずきだ」
 俺は美紀の肩を抱き 髪を優しくなでる。
 「まあ あのクソ猫のことだ、すぐに戻ってくるさ。まっ あんな奴いなくても、せいせいするし」
 「私はクソ猫ではなく、あずきと言う名前があります」
 真後ろでいきなり声がする。
 「だーーっ いきなり出てくるじゃない。せめてノックぐらいしやがれ!! 」  
  あずきはこたつの上にチョコンと座り にやっと笑った気がした。
 「美紀ちゃんは、私のことを泣くほど心配してくれたのに、ユーキはクソ猫ですか そうですか」
 「あれは愛情表現の裏返しで…… 」
 「これは、貸しにしておきます」  うう こいつ執念深いので後が怖い。
 「あずきちゃん」美紀はあずきを抱き締める。
 「心配したんだよ。どっかに行っちゃたんだと思っちゃて…… 」目には涙が浮かぶ。
 「いえいえ どこかの白状な飼い主と違って、美紀ちゃんを置いて勝手にどこかに行くことはありませんから」
 じと目で俺を見る。俺が悪かったって。
 
 「ところで昨日の件 あれは何だったんだ? 」
 「わかりません。帰途途中 ずっと探査をかけたのですが、はっきりととらえられませんでした」
 「最悪の想定ですが、私の探査でとらえきれない場合、後をつけられた可能性もあります」
 「そのため 朝から周辺を探っていたのですが、特に異常はありませんでした」
 「なんだったんだ、その”力”って」
 「動きと状況から、おそらく人間かと 特殊な力を持った人間と思われます」
 「なんで俺を? 」
 「わかりません。 ユーキになんらかの興味があると思われますが、それは私にもわかりかねます」
 
  うーん こいつがまじめな話をすると凄い違和感がある。で俺に興味ってなに。
 ま まさかストーカー!
 「ストーカーではないとおもいますよ」
 だから心を読むなっ!
 「いずれにせよ しばらく警戒が必要と思われます」
 
 しかし それは思ったより早くやって来た。
 
 
 
 
  「お父さん 消しゴムないんだけどコンビニ行っていい? 」
 「あ じゃあ一緒に 俺も少年○ガジン買いにいく」
 まだ午後5時だし、ぜんぜん 問題ないだろう。
 「念のため 私も行きます」とあずき
 「このマンションは猫禁止だから、あたしの胸に入ってね」
 ひさしぶりの親子二人の散歩だ。コンビニまで、公園を横切って5分ぐらい
 まだ時間が早く、変質者なんかも出ないだろうし。
 
  俺は防風の上下のスポーツジャケット 美紀もジャージにコートを羽織ったラフな格好だ。
 この町の神社に隣接した、比較的大きな公園を抜けた通りにコンビニがある。
 マンションから歩いて5分くらい。
 
  夜遅くなるとたまに変質者がでることもあり、夜は普通ここを通らない。
 まだ5時で比較的明るく、公園を直接突っ切ることにした。
 通りには多くの車が走っているが、公園内には、まだ寒さが厳しいためか誰もいない。
 
  雑談をしながら公園の中央ぐらいに来た時、よくわからないが、なにかいやな感じがした。
 とたんに美紀の胸にいたあずきが、バッと飛び出し毛を逆立て唸る。
 「ユーキ 今特殊なフィールドが展開されました。範囲は ほぼこの公園の面積と同じです」
 「力学的なものではなく、人間の知覚に作用する情報系のものと思われます」
 「人払いの結界!?」思わず自覚なく口から言葉が漏れる。
 「おそらくそのような種類の物と思われます。警戒してください」
 しまった。ぐっと唇をかむ。よりによって美紀がいるときに…… もっと注意すべきだったのに。
 緊張で心拍数が跳ね上がる。
 「あずき 美紀を頼むぞ」
 美紀だけは絶対まもらなければならないと、自分に何度も言い聞かせる。
 俺は喧嘩は苦手だが、美紀を傷つけるものは許さない。
 
  突如 強い突風が吹き 乾いた公園に砂塵が舞う。次の瞬間 砂塵が多くのつむじ風に分岐し
 左右から、高速で近づいてきた。
 「ユーキ 旋風中に急激な気圧低下域を確認 接触すると裂傷を負う可能性があります」
 「かまいたち!? 」
 げっ そんなこと急に言われても間に合わない。なんとか両手で顔をガードする。
 強い突風を感じた後 腕と肩に強い痛みとともに鮮血が飛ぶ。
 連続で、つむじ風が襲ってくる。美紀と逆の方向に走る。今の一撃でスポーツジャケットは破れ
 手と肩は血だらけだ。こんなの連続でくらったら、確実に命はない。
 「どうすればいい!?」あずきに怒鳴る。
 「恐らくこれを操っている、存在が居るはずです。それを狙うしかありません」
 スキーの時にわかったことだが、運動能力は男の時よりも実は上がっている。
 それでも、高速で襲ってくる風の凶器を 避け続けるのは極めて困難だ。
 よけきれず、右足に深い切傷を負う。 出血がひどい。このままでは動けなくなってしまう。
 「敵はどこだっ! 」
 「探索中です」
 「早くしてくれ! 」
 いくつかに別れたつむじ風がいったん集まり、今度は美紀とあずきに向かっていく。
 「なんでそっち! 目的は俺だろうが!」
 操者を探す俺とあずきの会話が目標を変えさせたのかもしれない。
 まずい! 全速で美紀に向かって走る。
  美紀は恐怖で足がすくんで動けないでいる。くっ これでは間に合わない。
 考えるより早く体が動き ダイビングで美紀に飛びつき、体全体でガードする。
 次の瞬間 突風とともに背中全体に切り裂かれる強烈な痛みが走る。
 「うがっ!」その痛みといままでの出血で 気が遠くなる。
 まずい これでは助からないかもしれない。
 しかし なぜか不思議と死への恐怖は無かった。
 「お父さん!! 」
 「大丈夫か 美紀…… 」
 目がかすんでいく。ああ初めて父親らしいことしたかな。
 耳元で美紀が絶叫する。
 「お父さん----!! 」
  耳元で叫ぶな、うるさいって。
 あれ 目の前が明るい 麻紀? あれ お迎え 短かったなあ俺の人生 まあいいけど。
 でもよく見ると光っているのは、お迎えではなく、あれ胸の麻紀の形見のペンダント どうして?
 光のなかで麻紀がなんか言ったような気がした。
 
 「ユーキ ユーキ 返信をお願いします」
 あ〜 お前もうるさい。人がいい気持ちになっているのに。
 「操者が判明 東20m 偽装シールドを解除した模様 ユーキに向かっています。約秒速1M」
 「恐らく ユーキが、現在完全に戦闘不能と判断していると思われます」
 いやもう あたしは完全に戦闘不能なんですが。
 「視覚でとらえることが可能です」
 「距離5m」
 「ユーキ 起きてください。このままだと美紀ちゃんに危害が及びます」
 その言葉に体が反応 あれれ、急に力が戻ってくる。意識がはっきりしてくる。
 美紀に近づくんじゃない!!  「だーーーっ」気合いを入れ 一気に立ち上がる。
 目の前の相手に血まみれの腕で掴みかかり、渾身の右パンチを叩きこむ。
 「この野郎! 」
 意外にも、あっさりとヒット それになんかヒット感 凄く軽いんですけど。
 相手は一撃で吹き飛び 前方に倒れる。
 終った? なんかあっけない。不意打ち成功なのか?
 
  相手は完全にのびている様で、まったく動かない。
 よろよろと相手に近づき胸ぐらをつかむ。
 むにゅ なにこの感触。
 隣の道を通る車のライトが相手の顔に当たる。
 そこには、まだ少し幼さの残る美紀と同じくらいの少女がいた。
 「えっ どういうこと!!! 」
 
 
 
  俺は大量の出血と重傷の割には、なぜか意識ははっきりしており、なんとか歩ける状態。
 美紀は一度 俺が死んだと思ったらしく、まだ泣いている。
 そんな泣き顔だと美人が台無しなどど、俺はどうでもいいことを考えていた。
 正直 なんで自分が立てるのか不思議。
 
 「美紀 あずき とりあえず一旦家に帰ろう」
 「なに言ってるの!お父さん 早く救急車を! 」
 「いや なんか大丈夫な気がするんだけど」
 「大丈夫じゃない!!! 」泣きながら美紀が怒る。まあ全身を切り裂かれ 血まみれの姿を見れば当然だけど。
 黙っていたあずきが、
 「ユーキの傷の修復率がすでに50%を超えています。理由は分かりませんが」
 感情があるのか ないのかわからない、あずきが驚いている様子。
 「それって大丈夫ってこと? 」
 「生命維持にまったく問題はありません。異常な回復速度です」
 ふと 首元からペンダントを取り出すと、かすかに淡い光で輝いている。
 ただのペンダントだったはずなのに、これも 俺とあずきと一緒で あの時 なにかが変わったのかもしれない。
 でも、あの時の麻紀の顔…… 俺と美紀を守ってくれのか?
 それと 何を言いたかったのだろう?
 
 
 「この子も連れてかえるか」完全に気を失っている少女を見て、俺は唐突にそういった。
 「お父さん なに言ってるの!!! 」
 「極めて危険と思われます。本来なら処分すべき相手です」
 「処分って…… よくわかんないけど、麻紀が 母さんが連れて帰れって、そう言っているような気がして」
 「母さんが!?」美紀が驚いた顔をする。
 「母さんの形見のペンダント さっき気を失いかけた時 ペンダントが光って 母さんが何故か、そう言ったような気がして」
  自分でも、なんでこんな事言っているだろうと思うが、こんな目にあったのに不思議と、その女の子を憎む気持ちは全くなかった。
 それどころか、なんというか、優しい気持ち というか 麻紀の気持ちが流れ込んできて、気分は悪くなかった。
 「だから 美紀 あずきお願い! 」
 「お父さんがそう言うなら……仕方がないけど」
 美紀はぜんぜん納得していない様子。
 「わかりました。しばらく拘束することは可能です」とあずき
 「ありがとう 彼女は俺が連れて帰る。あずき 血だまりの掃除をお願いできるか?」
 このままだと猟奇事件で騒ぎが起きてしまう。
 「了解しました」
 
  ぼろぼろのスポーツジャケットを隠しながら、女の子を抱いてマンションまで戻った。
 この傷 この出血で なんでそんなに力がでるか全く不思議だった。
 普通であれば、立つことも出来ないだろう。
 すでに周囲は暗く 寒さのためか誰とも会わず、なんとかマンションに帰りつくことができた。
 
  部屋に戻り、少女をリビングに寝かせる。
 「ユーキ 公園の片づけは終了しました」とあずき
 「早! 」
 「途中の血痕等もすべて消しておきました」うーん 良く解らんがこいつ凄いな。
 「この子は私が監視しますので、ユーキは休んでください」
 「ありがとう」
  そう言って、俺は風呂場にはいり、ズタズタに破れ血がこびりついたジャケットを脱ぐ
 血でべっとりのアンダーウエアと下着をなんとか脱ぐ というか散髪用のはさみで切り取り裸になる。
 血が少し固まりかけており、肌からウエアをはがす時に壮絶な痛みとあらたな出血が襲う。
 なんとか裸になった時は、正直 息も絶え絶えとなっていた。 風呂場が血で染まる。
 ふと鏡を見る。血だらけで裸の俺は、なんか倒錯的で、怖いぐらい美しかった。ちょっとびびってしまう。
 我ながら危ない。こんな時に何考えているんだ 俺
  一体どのくらい出血したのだろう。普通このくらい出血したら確実に死ぬだろう。
 しかし最初にやられた腕とみると、すでに傷口はピンク色の盛り上がりになっており
 ほぼ治っている。
 うーん なんだかプラナリアの気持ちがわかった気がする。
 
  そのままシャワーを浴びる。「ぐっ 痛て−−−!! 」思わず大声をあげてしまった。
 痛みのため、しばらくうずくまる。
 「お父さん 大丈夫!! 」美紀がかけこんできた。
 血だらけの風呂場 血まみれの服 血と傷だらけで裸になっている俺を見て絶句する。
 みるみる涙があふれ、抱きついてくる。
 「触ると血がつく 離れていなさい」
 「だって だって…… 」
 「いや 傷はかなり治ってきている。ちょっとシャワーの温度間違えただけだって」
 「大丈夫 それより 着替えを持ってきてくれるか? 」
 美紀は分かったと言ってリビングにもどり 下着と部屋着を持ってきてくれた。
 俺はなんとか全身の血を洗い流し。軽く全身をタオルで拭く。
 タオルにはまだ大量の血がつくが、新たな出血は無いようだ。
 「美紀 気持ち悪いだろうが、ごみ袋を出して服を入れてくれ。それでベランダに出しといて」
 俺は薄めのタオルを体に巻き、なんとか部屋着を着て ベットに入る。
 すぐに意識を失った。



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