戻る
Disc1へ

シ ャ ウ ト !
- D i s c   2 -

作:バレット




《Track6 シャウト》

 唐突に鳴り出した爆音。
 ヴォーカルである僕はマイクスタンドをぐるぐる回しながらステージ脇の階段を駆け上がり、槍の穂先で敵に切りかかるように、先端のガイコツマイクを空に突き出し、掲げた。
 そんな僕に続くのが、リードギターの柳、サイドギターの城嶋、ベースの楠森、肩から吊り下げた卓上電子ドラムの橋本だった。ともに走りながらの演奏のため、そのインパクトは強い。しかも、演奏している曲が、世界に名を馳せたヴァイオリニスト葉加瀬太郎の代名詞『情熱大陸』のサビ、そこからつなげたバックストリートボーイズの有名な作品『ザ・ワン』のサビとをつなぎ合わせたメドレー。それを、僕も柳の声で熱唱し始める。多くの人が知っているであろう2つの曲をメドレー形式にしてハイテンポパンクロックにアレンジしたこの演奏によって、会場は大きくにぎわった。または、この演奏を聴いて駆けつけた人も多いだろう、僕がこのステージに駆け上ったときより、人が増えている気がする。
 ドラムの最後の1発が鳴り止んだとき、僕は息を大きく吸い、叫ぶように自己紹介した。
「『シャウト』ですっ!」
 簡潔に短く自己紹介しただけなのに、観客は拳を空に突き上げ、「うぉーっ!」と叫んだ。気持ちいい、この感覚だけはどうしようもないほどに僕の心を揺り動かす。強制連行される形で入ったバンドだけど、この快感を知った今はそんなことを振り返ってなどいられない。
「新参ヴォーカル、青島柳です、今日は、よろしく、お願いします」
 無名の『柳』だが、多くの観客から「ウォーッ」「キャーッ」という歓声をかけてもらった。1発目の歌が、しっかり観客の心をつかんだのだろう、出だしはとてもいい。
「どうも、ギターとヴォーカルの新穂翔です」「同じくギターの、城嶋七雄です」
 僕のいつもの挨拶よりも若干控えめだが、柳は僕の名前を名乗って自己紹介した。しかし、そんな柳よりも寡黙である城島は、透き通るようなすがすがしい声がもったいないほど短く、簡潔で、テンションも低く感じる。だが、そんな城嶋にも女子のファンはいるようで、城嶋の名前をプリントしたうちわを掲げていたりする。
「このバンドのリーダーでベース、楠森樹生です。今日は風音祭に来てくれて、どうもありがとう! プログラムの1つを担うバンドとして恥ずかしくない演奏をしたいと思うので、みんな、応援よろしく!」
 楠森が拳を突き上げると、再び会場は声を張り上げる。こういうパフォーマンス1つひとつで、どんどん僕たちはシンクロしていくんだ。でも、ここでお約束のコントシーンが待っている。
「んじゃあ、次の曲……」「待てよ!」
 そう、ドラムの橋本が完璧に無視されている。
「オレの紹介なし? それって幾らなんでも酷くね?」
「うっせぇ、お前が口を開くと会場が凍るんだよ。ここは俺たちの雑談場じゃねぇんだから、ちったぁ黙ってろ」
「んだと、このファッ……」
 そこから先は言わすまいと、柳が使用楽器ギブソン・レスポール・チェリーサンバースト(僕のだぞ、それ)のネックを両手でつかみ、ボディを橋本の頭に叩きつけた。もちろんこれもパフォーマンスで、僕もいつものライブでは手加減しているのだが、柳はどうやら手加減なして殴ったようで、卑猥な暴言を吐こうとした橋本はしばらくその場でのた打ち回っていた。
 ……数日前、調子に乗った橋本にエロ本見せられた腹癒せだな、きっと。

 気を取り直して。
 橋本は卓上ドラムを置き、ステージに用意されたドラムセット(ポジションは前もって調整済み)に腰掛けた。こいつの楽器は、『パール・サウンドチェック』シリーズの『ジュニア』。通常のサウンドチェックより若干小さめで、橋本曰く「オレの勇姿を見てほしい」という理由だけで、こちらを選んだらしい。
 柳がもう1台のマイクをスタンドにセットして自分の前に置き、2曲目の準備が完了する。そして軽いトークを交えて3曲連続で、僕らの趣味でチョイスしたロック、コアなアニメソング、古い自作1曲を歌いきった。
 そんな中、城島と楠森がステージを飛び越え、客席でギターとベースをかき鳴らすという荒技を披露した。城島は女子のまん前でソロをやらかして女子のハートをがっしりつかんだあとに相手を気絶させ、楠森は1人の客にリズムに合わせて適当に弾いてもらっている間に、ムカデリレーのようなことをして客と遊んでいた。城島に余裕があるときは、ジミ・ヘンドリックスの背中演奏、歯ギターなんてものも披露する。
 柳=『僕』のパフォーマンスでは、客席から1人お客さんを引っ張りあげてピックを持たせ、タイミングをあわせて絃を弾いてもらうというサプライズがある。橋本はと言うと、ドラムにテニスボールをありったけぶつけたり、ヌンチャクなんかを持ち出したり、漫画を真似てコブラのおもちゃを両手に持って叩いたりしていた。ボールはあとで誰が片付けるなんて知ったことではないらしい。
 それぞれがそれぞれのポジションや特技を生かしたパフォーマンスを繰り広げる。こういったパフォーマンスも、観客と心を通わせるサプライズとして、僕らが大事にしていることだ。ちなみに、今の僕=『柳』のパフォーマンスは、長野と金城先輩によるダブルの騎馬の上に立って、客席で熱唱すると言うもの。これはこれで結構盛り上がったのだが、パンツを撮影されるというハプニングに陥った。
 客も客で騒いでいた。歌詞や小節に合わせて拳やコルナサインを振り上げたり、両手を波のように大きく揺らしたり、パラパラのように踊ったり中には体をくねくねさせて意味不明なダンスを披露しているやつまでいる。極めつけは、押し競饅頭になったあとに1人ずつ、男女問わず若い観客(その半分は学生)がステージに投げ込まれるという事態にまで陥った。

 持ち時間が残り4分となったところで、会場はまだ興奮の嵐に包まれ、僕たちのテンションもこれ以上とないくらいに上がってきた。しかしこれ以上ないのは僕の声も同じで、あと1曲、何とか歌いきれるというところだった。少し息を落ち着かせるために、僕の代わりに柳が、最後の曲を紹介する。
「残りの時間もわずかとなりました。この白熱した空気を、最後のプログラムであるブラスバンドに引き継げればと思います。また、ぼくたちも皆さんとそろそろお別れしなければならい時間でもあり、とても残念に思います」
 その言葉に、特に女子生徒が不満の声を漏らす。こうしてみてみると、僕(新穂翔)のファンも結構いたんだなぁ。でも、これをきっかけに柳のファンも増えてくれるといいな。そんなことを考えていると、柳が曲を紹介する。
「最後の曲は、作詞作曲、杉本竜一さん。みんなで歌いましょう。『Believe』」

 多くの人が、特に学生時代に歌ったことが、聞いたことがあるだろうこの曲は、音楽の教科書にもなった。人と人が手を取り合い、未来に歩き出すことの大切さ、そしていつか世界から悲しみがなくなり、愛であふれることを信じる想いがこめられたこの曲は、とてもシンプルだけど、深く胸にしみこんでくる。
 そんな曲を、僕らなりにロック風味にアレンジし、僕と柳による混声二部合唱系式で歌う。メンバーからは最初に子どもっぽいと言われたけど、この曲のメッセージ性を、僕は信じる。先ほどまでの盛り上がり方もいいけど、ロックで多くの人に感動を与えることができるなら、それはどれほどすばらしいことだろう。ロックは若者メッセージから生まれ、そして多くの人を共感させてきた。原作を大きくアレンジしてしまったこの曲でも、多くの人に僕らの想いを伝えることができたなら、それ以上うれしいことはない。
 1番、2番を歌い、最後のリフレインにさしかかろうとしたとき、僕はステージの上で歌いながら驚いた。なんと、ステージの前方のあたりで固まっていた女子が、抱き合って泣いているのだから。しかも先生方や校外から訪れた人々までもが口ずさんでくれ、サッカー部員の男子生徒は絶叫するように熱唱している。漫画でもありえないような景色に、僕はただただ、胸が苦しくなった。それは息切れ寸前の苦しさとは違う、感動による心地よさに似ている。いや、きっとそのものだ。
 僕の狙いは、ど真ん中に命中するどころかその向こう側へと貫いていた。まさか、泣いてくれるとまでは思わなかった。結果は分かった。なら、僕は命いっぱい楽しもう。そして、残りたった数小節しかないリフレインを、僕らは思いっきり歌いきった。

 感動と興奮の嵐の中、僕たちの演奏はフィナーレを迎えた。巨大スピーカーから流れるギターとベース、そして2発のシンバルによる、長くて勿体つけたようなリバーブレーションが、徐々に収まってゆく。途端、「どうして演奏やめちゃうの」っていう女子生徒からの猛烈な視線を浴びるけど、こればっかりはどうしようもない。そして、もう完全に何もしゃべることができない僕の横で、楠森が言う。
「ご声援、ありがとうございました! またライブを開くその日まで、俺らシャウトを、忘れないでください。俺たちも皆さんとこんなに素晴らしい時間を過ごしたことを、ずっと忘れません。……ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
 僕も、そろそろ枯れかけの声で叫ぶ。大勢の人が、叫びながら、泣きながら、僕らの退場を惜しみながら手を振ってくれている。それが、心を貫くほどうれしくてたまらなかった。いつまでもこんな瞬間に浸っていたい、そう思っていた。

 ステージを降りて、僕らは舞台裏へと戻ってきた。そこには、スタンバイを終えているブラスバンドからなる女子6人以外、誰もいなかった。見事に、紙コップは散らかされている。
「よかったよ、みんな! あんたらには会場を暖めてくれればいいくらいにしか思ってなかったけど、お見事、あたしら一気に自信失ったわ!」
 チューバ担当の大雑把そうなやつが、僕の肩をベシベシ叩きながら言う。その態度が自信なくしたやつのコメントか。シャウトメンバー全員が引いてるわ。
 僕がそう突っ込もうとすると、ブラスバンドのホルン、パーカッション(今回はドラム)が彼女の両側にはさむようにして言う。
「でも、素直にすごいと思いますよ。ロックであんなことができるなんて。わたしたちは伝説の『スペクトラム』をカバーしようと思いましたが、本当に自信がなくなりました」
「そこで、なんだけどね☆」
 ホルンの大人しめ少女に続く、パーカッションのにぎやかそうな少女が何を言おうとしているのか知っているのだろう、ほかの5人は「うんうん」と言いながら、パーカッション少女の言葉を促す。
 そして、彼女たちの提案に。
 僕らは驚きながらも、大きくうなずいた。





《Track7 無限の可能性》

 あのあとどうなったかって言うと。

 ブラスバンド少女6人は、オープニングからスペクトラムの『トマト・イッパツ』で僕らの父さん母さん世代の人たちを中心に沸かせたあと、ジャズミュージシャンのグラン・ミラー代表作『イン・ザ・ムード』、映画『スター・ウォーズ』のテーマを披露。
 さらには、スッペの『軽騎兵・序曲』、鳥山雄司の『ソング・オブ・ライフ』、そしてヴァンゲリスによる2002年ワールドカップの公式曲『アンセム』の3曲を、メドレー形式で発表した。6台の楽器から奏でられているとは思えない壮大なるオーケストラに会場は震え、喚起の声が沸き立っていた。
 そして最後の1曲に差し迫ったときブラスバンドは、予定を変更し、用意していなかった曲を発表すると言った。
 ブラスバンドが用意した最後の曲、それは彼女たちなりの観客へのサプライズ。なんと、僕らシャウトと共演し、先ほど大好評だった『Believe』を再び演奏すると言うもの。僕は充分にのどを潤し呼吸を整えたあと、再びステージにて熱唱したのだった。ロックアレンジの曲にブラスバンドの弩派手なメロディーを乗せ、学校中の大地と空気、そしてすべての人々の心を揺るがす、爆音落涙ソングと化した。
 突然の出来事に多くの人が押し寄せ、野外ステージ周辺は人で埋め尽くされた。そして僕たちはとうとう舞台裏に戻っても、そこから抜け出せない事態にまで陥った……

 それからしばらくしても鳴り止まない鼓動を抑えつつ、僕はギターをケースにしまった柳の手を取り、校舎裏へと走った。
「どうしたの、翔くん!?」
 いつもは小さな声でつぶやくように言う柳も、僕と同じように興奮が鳴り止まないままこうして舞台から連れ出されたのでは、大声で叫ぶように言ってしまうのだろう。それでも僕は無視し、とうとう目的地までたどり着いた。そこは、名桜高校の正門。がっしりとした大きな門柱の右側に、2人の人物がいる。それは、青島直哉、翡翠夫妻だ。僕はあらかじめ、ライブが終わったらそこで待っているようにお願いしていたのだ。
「……っ!」
 息を切らして立ち止まったのもつかの間、柳は両親におびえるように、一歩二歩と後退した。けれど、ここで逃げられたら何の意味もない。
「向き合うんだ、2年もすれ違ったままの想いに!」
 そのとき僕は、あの晩のような表情をしていたことだろう、親子丼をひっくり返した、あのときのように。
 そんな僕にもおびえながら、足にだけ力を入れて逃げ出そうとする柳に、歩み寄ってきた直哉さんは、柳に声をかけた。
「おびえることはないよ、柳」
「えっ……?」
 直哉さんは、まだ混乱し続ける柳の肩にそっと触れて、言葉をつむいだ。
「すべては、翔くんから聞いている。いろいろ、大変な想いをしたことだろう」
「……そうやって、翔くんまで拒絶するの? わたしのよう」
「違う」
 そう、違うんだ。柳、いい加減に目を覚ませ。
「俺たちは、どうやら柳に辛い想いをさせていたみたいだ。お前の成長が何よりも楽しみだったのに、それがお前にこんな想いをさせていたなんて、親のエゴだったのかもしれない」
「どういう、こと?」
 震え続ける柳に、今度は翡翠さんが声をかける。
「柳。あなた、2年前の私立受験に失敗したことをまだ悔やんでいるのね。そして、その頃から柳は塞ぎこむようになり、何でも悪いほうに考えるようになった。
 でもね。あたしたちは、柳に羽を伸ばしてもらいたくて、今の学校とアパートを紹介したの。新しい高校で、お友達を作り、自分のやりたいことをやれるように」
 そう、柳は2年前の私立受験不合格を境に、すべてをマイナスの方向に考えるようになり、精神的に引きこもるようになった。教室でずっとジャンルに一貫性のない本を読んでいるのも、誰とも話さないのもその影響のようだ。
 そして、柳自信が私立受験の先に何を望んでいたのかと言うと、ハードルの高い大学を卒業し、直哉さんの父、つまり柳にとって父方の祖父から受け継いだ超大手重機製造会社『青島重機』を手伝い、やがては社長となって父の地位を受け継ぐこと。今の自分がいるのは父のおかげ、そして祖父のおかげだということを幼い頃から分かっているから、その夢も大きく、覚悟も相当なものだったに違いない。
 僕はそれを、青島夫妻にカミングアウトした日の、ちょうど1週間後の土曜日に食事に再び夫妻から呼ばれたときに知った。だとしたら、柳のマイナス思考はどれだけ酷いものだったのだろう。僕だったらそんなものは背負いきれず、気でも違っていたかもしれない。
 ……けど、もうそれは過去のことだ。柳はもう充分、そのマイナス思考を打ち破るだけの強さを手に入れた。あとは、直接の原因を撃破するだけ。
「でもね、柳」
 翡翠さんは続ける。
「分かって、わたしは柳に何も期待していないし、押し付けていない。期待しているものがあるとするなら、柳が1人の人間として健やかに育ってほしいということ。あたしも直哉さんも、それが唯一で一番の期待なのよ」
「柳。お前が青島重機を背負ってくれると聞いたときは、それはもう飛び上がるほどうれしかったさ。けど、一方で少しさびしかった。勉強に明け暮れ、小さい頃のように甘えてくれなくなってな、柳の将来性が今から狭くなっていくと思うと。
 だから柳。お前には遠くの学校、遠くの家を紹介したんだ。青島重機から一度目をそらしてほしくて、青春ってやつを味わってもらいたくてな」
 やっぱり、僕の思ったとおり。青島夫妻は、柳のことを嫌ってなんかいない、愛していたんだ。愛しているからこその言動だったのに、それを柳は悪い方向に捉えたため、2年間ものすれ違いが、このような結果となってしまった。
 柳、幸せじゃん。こんなにも恵まれていて、とても心が温かくてやさしい、娘に対して思いやりのある親が、お前の最強のサポーターなんだからさ。僕なんかじゃさすがに、お前の両親に太刀打ちできない。アリと大神ゼウスの差じゃないか。
「うそ、うそ……!」
「うそなんかじゃない、柳。おれたちは、今までもこれからも、お前を大切に想う。翔くんと入れ替わってしまったのは微妙なところだが、お前は青島柳、おれたちの娘であることに代わりはないんだから」
 涙があふれ、今にも零れ落ちそうな状態。柳は速すぎる呼吸を涙とともに必死でこらえていた。
「な、柳」
 青島夫妻の言葉は、どこまでも優しく、僕にとってとてもうらやましいものだった。
 そしてとうとう、柳は泣き崩れた。人目もはばからず、両親の胸に顔をうずめて慟哭した。2年間も閉じこもっていたせいで忘れていた両親の暖かさを、全身で感じていることだろう。すれ違っていた時が再び重なり合って動き出した柳にとって、救われた瞬間だったんだろう。
 僕は、背中でそんな柳の鳴き声をずっと聞いていた。この3人に、もらい泣きの涙なんざ見せたくないし。

 こうして、青島柳の心を黒く塗りつぶしていた心の闇は少しずつ晴れていったのだが、まだ1つ、僕=新穂翔にとって厄介な問題が残っている。
 果たしてそれは、文化祭終了後のホームルームに乗り込んできた西邊先生だったのだ。

「新穂くん、青島さん、そして軽音楽部の皆さん!」
 担任がホームルームを進めている最中だってーのに、そいつは乗り込んできた。西邊先生だ。
「よくもまあ文化祭では会場を混乱の渦に巻き込んでくれましたね! あなた方の行為、大変許しがたいものです! 今度と言う今度は、じっくり反省してもらいます!」
「ふっざけんな、輸入雌ブタ! ロックのよしあしも分からんやつに、オレらの」
 反論したのは、暴言と卑猥な表現、考え足らずの即行動で多くの人に迷惑を撒き散らす橋本だ。だが、柳が乱暴に立ち上がることで、はじまったばかりの2人の睨み合いは止まったのだった。
「ホームルーム中です」
 簡潔、そして完結。
 かと思いきや。
「お黙りなさい新穂くん! 私が口を開けばいつもそれと正反対な行動を起こして、まるで私を挑発しているような言動に、どれだけ怒りを覚えたか、少しは知りなさい! ……そして」
 西邊先生にとって柳は、『新穂翔』という存在なんだ。だから、柳が珍しく反論しても、それを僕のいつもの反抗的態度として認識したのだろう。そして、西邊先生はとうとう僕、つまり『青島柳』に対しても怒りの矛先を向けたのだった。
「青島さん。あなたはこのクラス、この学年で最もできた子だと思っていました。成績優秀、品行方正は誰もが認める、お嬢様の見本のような学童。それがなんです、こんな下品な軽音楽部に属し、挙句の果てに騒動に参加するなんて、私は怒り心頭でした!」
 やっぱり、こいつは軽音楽部を駄目な連中の集まりとしか思っていなかったのだろうか。
 そして、最後にこんなことを言いやがった。
「私はロックが嫌いです。パンクロックも含め、社会に対して反抗的な態度を取るそのジャンルを。世の中には秩序というものがあるのに、それに反抗していかなるものになるのか。……だから」
 言いながら西邊先生は左に90度方向を換えると、捨て台詞のように吐いて出て行った。
「人々に夢を与えられる、素晴らしい音楽だけを、これからも奏でてゆきなさい」
 嵐のように現れ、そして嵐のように去った西邊先生。結局、あいつは何が言いたかったんだろうという気もしなくもないが。
 ま、僕には分かったけどね。
「上等だよ」
 僕は、西邊先生の言葉を軽く鼻で笑い飛ばしてやった。
 そうとも。
 音楽には、無限の可能性があるんだから。音楽というジャンルを通じて、多くの人の想いをつなぐ、それが僕の目標なんだ。



 時は過ぎて。



 大学受験、就職を控えたその時点でなお、僕たちはまだ入れ替わったままだった。
 入れ替わった当初から2人で、またぶつかってみようかとか、危険だけどあえて階段から一緒に転げ落ちてみようか(定番?)とか考えたけど、死ぬ寸前のところに飛び込むのはどうかというところで却下。オカルト関連の書籍をあさってみたけど、手がかりになりそうなものは得られない。そんなことを繰り返しているうちに1年が過ぎ、とうとうまじめに受験と就職を考えなければならない時期になった。
 同時に、僕ら『シャウト』の活動停止と軽音楽部からの引退も決定となり、部長の座は長野舞に受け継がれた。1年前のライブの影響か、軽音楽部の部員は一気に増え、ブラスバンドとかけ持ちする部員まで現れた。おかげで長野はてんてこ舞い、僕たちがたまに顔を出しては軽音楽部運営に力を貸している。ついでに、視聴覚室に轟く爆音の中で勉強もしてゆく(案外はかどるのだ)。

 そんなある日のこと、僕らが『新穂翔』の家で勉強していると、柳はこう切り出したのだった。
「2つ、提案があるんだけど」
 こいつもとうとう男に染まってきたか、卓袱台で勉強するのにあぐらに猫背という姿勢になり、僕が来ているのにノースリーブにホットパンツ(たまにトランクス)というラフもいいところの格好になったり、ココアからコーヒーが好きになったり味付けも濃くなったりし、もとの僕よりもワイルドな行動に出るようになった。一番変わったのが、プライベートのときでも一人称が「ぼく」になったところだろう。
 しかし、柳本来の癖のようなものは受け継いでいるようで、僕のビジュアルを保つためでもあるのだろうか基礎化粧は欠かさず、部屋はきちんと整理整頓され、まじめに勉強もして成績は上位に追い上げてきている。こっちは『青島柳のイメージ』を保つのに気を配っているっていうのに。
 ……シャウトの仲間はどうなっているかと言うと、
 城嶋は「特に将来のことは考えてないけど、できれば音楽関連の仕事がしたい」ってことで、どこの大学に行くかは決めていないまでも、勉強はしているようだ。とりあえずハードルの高さがバラバラの大学を片っ端から受けるようだけど。
 楠森はバンド一筋でやっていくらしく、通信制の大学に通いながら校外の仲間とバンドを結成、アマチュアバンドを立ち上げ、ストリートライブを起こしたり、各方面に売り込みを開始したりしている。30代になるまで卒業してからはバイト生活を覚悟しているようで、あいつらしいと言えばらしい。
 ちなみに、橋本の将来なんて知ろうとも思わない。これは柳を含む全員の意見だ。と言ったら本人が悲しむので一応聞いてみれば、芸能関係のカメラマンになるそうだ。自慢のカメラで、グラビアでも撮るのだろう。
 さて、柳が言う2つの提案とやらを聞いてみよう。
「どうしたんだよ?」
 柳は言い辛そうに、口を半開きにしたまま何も言えないでいる。
 そして。

「あのさ。ぼく、もうもとに戻らなくてもいいと思うんだ」





《Track8 再開》

 そして、柳は言った。
「あのさ。ぼく、もうもとに戻らなくてもいいと思うんだ。ぼくは新穂翔として生きたいと思う。翔くんは、青島柳で、ずっといてよ」
 ショックだった。まさか、柳がそんなことを考えているなんて。
「はぁ!? 待てよ、約束どうすんだ! 大学に受かったら、またもとに戻る方法を探すって約束だ!」
「忘れてよ、そんなの」
「そんな…… ムリだよ!」
「そんなことない。気付いてるでしょ、翔くんも。もう異性の体に馴染んできて、自分を男となんて認識していない。ぼくが、そうであるみたいに。今すぐその方法が見つかっても、ぼくは元の体に戻って、それを自分であると受け入れる自信が、どうしても持てないんだ」
「そんなの、実際に戻らなきゃ分からないんだろ? それに、それが最善なんだ、いつまでもこんな関係を続けるわけには」
「翔くんは、ぼくの体、嫌い?」
「うっ」
 嫌いかどうかって言われたら、嫌いじゃないよ。けど、そこまで心の中でつぶやいて、ふと思った。最近の僕はどうだろう、家事や化粧をする、服を長時間眺めて悩む、それに恋愛ストーリーのコミックやアニメ、ドラマが好きになりはじめている自分がいる。そして、当初は赤面してどうしても洗えなかった女性特有の部位をスポンジで洗うことに、もはや抵抗を覚えなくなったことを。
 ダメだ、僕はもう。
 柳に、女性になりきりはじめている。
「……それとね、もう1つ」
 いたって冷静な口調で、柳は言う。
「もう解散しちゃった『シャウト』。大学受験が終わったら再開しようよ」
「えっ?」
 思いがけない、柳からの提案。僕の中でシャウトは、軽音楽部の引退と同時に解散したものだったから、二度とその名を掲げるバンドのメンバーとして演奏することなんてないと思っていた。
「シャウトは、ぼくが未来に踏み出すきっかけを与えてくれたバンドだから、解散なんてしたくないんだ。……『音楽というジャンルを通じて、多くの人の想いをつなぐ』。ぼくは、ぼくと翔くんならそれができると思うんだ」
「柳……」
「はじめようよ、ぼくたち2人で。バンドメンバーなら新しく集めればいいんだ。大学試験が終わってからでいい、時間なら幾らでもあるんだから」
 僕は感激し、そして困惑した。もう、油断をすれば涙があふれんほどに。
 僕にとって軽音楽部など、シャウトなど、あの弩変態野郎・橋本に拉致も同然に引きずりこまれた変わり者の巣窟だった。それが、いつの間にか居心地のいい空間になっていた。……だけど、軽音楽部を引退し、シャウトも解散した今、もうそんな心地よさの中には戻れないと思っていた。そして、これからステージの上でみんなでわいわい楽器をかき鳴らす楽しみも味わえないものだと思っていた。
 けど、それは単なる思い込みなんじゃないのか。シャウトの終焉イコール、ライブの楽しみの終焉だって勝手にピリオドを打っていただけじゃないのか。そう思うと、僕は何て勿体無いことをしていたんだと気付かされてしまう。
「ね、翔くん?」
「……ああ」
 僕はそれまで握っていたシャーペンを放り出し、そして長い髪を振り乱しながら、両手をカーペットが敷かれた床に突いた。ふぅーっ、と大きく息をついてみると、なんだかいろいろと気楽に考えてみよう、そんな風に思えてきてしまった。
「僕の中で音楽の炎は、心の奥底でくすぶり続けているままだ。それが消えてしまう前に」
 右手に強く力を入れて床を押し、右から上半身を起こす。そのまま右手を強く握り、僕は柳へと突き出す。相手もそれを分かったようで、僕が突き出すと同時に、2つの右拳が衝突する。

「もーいったん! シャウト!」



 大学受験に向けて、僕たちは勉強を続ける。
 柳は『新穂翔』として新たに歩き始めたと同時に、大学のレベルの高さなどのしがらみにとらわれなくなり、自分が楽しむために臨んでいる。そして僕も、『青島柳』の面子は多少気にはしているが、以前ほどそれを守らなくなった。今でも『互いの存在』に遠慮しているところがあるが、そのわだかまりも、少しずつ無くなってゆくだろう。
 僕は、青島柳と精神が入れ替わってしまったからこそ、今こうしてがんばれると思う。それがなければただシャウトの解散と同時にすべてを諦め、大学受験なんてやっていられないとわめいて就職かフリーターへの道を選んでいたことだろう。
 柳と入れ替わってしまった、そしてその先にシャウトの成功と、僕の進むべき道の開拓、柳と両親の和解、柳自身が前向きになったことと言う、たくさんの成功の結果がこうして栄光に輝いている。
 まぁ、なんにしても。
 僕に…… わたしにとってシャウトとは心地いい居場所であり、わたしにとって青島柳は親友と呼べる存在にしてわたしの一部。柳も、同じように思っていてくれたらいいな。



 最後に。



 音楽にはさまざまなジャンルと、音楽好きの人の数ほどあるはず。そして、その楽しみ方にきっと正解はないのだろう。音楽にも歴史があり、その歴史を継承してゆくのもアレンジしてゆくのも、その時代の人々。だから、音楽はその時その時で楽しめればいいんじゃないかって、わたしは思う。
 悲しい時癒されたり、うれしい時に興奮したり、怒った時に発散させたり、愛する気持ちを贈ったり。音楽の形、それに乗せた想いの形はたくさんあると思うけど、わたしはわたしが思い描く形で、音楽を楽しんでいきたい。

 もしも、あなたの心がものすごく曇っていて、唐突に音楽の風を吹き込んでみたい時は、この言葉を思い切り叫んでみてほしい。それは、音楽を心のエネルギーへと変えてくれる、魔法の言葉だから。



「シャウト」、と。





《楽曲紹介》
情熱大陸/葉加瀬太郎
ザ・ワン/バックストリートボーイズ
Believe/坂本竜一
トマト・イッパツ/スペクトラム
イン・ザ・ムード/グレン・ミラー
スター・ウォーズ/ジョン・ウィリアムズ
軽騎兵・序曲/スッペ
ソング・オブ・ライフ/鳥山雄司
アンセム/ヴァンゲリス
(いずれも敬称略)

《出演》
新穂翔(ギター&ヴォーカル)
青島柳(ゲストヴォーカル)

城嶋七雄(ギター)
楠森樹生(ベース リーダー)
橋本駈(ドラム)
長野舞(機材および音響その他サポート)
金城優(部長)

クラリネット
ホルン
ユーフォニアム
スネアドラム(マリンバ)
バスドラム(ドラム)
シンバル(ヴォーカル)

青島直哉
青島翡翠

西邊佳子
名桜高校のみなさん
地域のみなさん

《プロダクションおよびコーディネート》
名桜高等学校
サンダバ・ラジオ スタッフ&パーソナリティー

《ジャケット》
バレット

《製作全指揮》
魔王ディリゲント(デュアルワールド 『サンダバ・ラジオ』責任者)





《ライナーノート》

 どうも、『デュアルワールド』では散々お騒がせしております、バレットです。
 フルメタルワイルドだけで充分なファッ○ンロックストーリーを描いてみたわけですが、いかがでしたでしょうか。ちなみに、銃撃戦はありません。バトルもありません。
 それにしても、『Kick! 〜彗星の軌道(コメットライン)〜』以来の短編になるんですね。しかも、僕の中で初めての入れ替わりもの。ちょっとドキドキしております。

 さて、作品について説明いたします。
 今回の登場人物の名前に意味はなく、由来のほうが、かつて僕が作ったことのある音楽をテーマにした小説の登場人物からです。ちなみに、西邊先生の名前はフッと思いついたもので、由来もモデルもありません。
 青島柳、新穂翔は、虐められっ子と、それを守る男勝りの女の子のはずでした。それが今回は形を変えて、再び主人公の座を得ることができました。他のキャラクターについての説明は省きますが、今とはまったく異なる役柄だったということだけは付け足しておきます。
 タイトルおよび翔が属するバンド名の『シャウト』については、英単語『Shout=叫ぶ、叫ぶように歌うこと』と、『翔と=with Shou』を引っ掛けています。翔と一緒に音楽にノッて、心の底から秘めた想いを叫んでほしい、そういう願いをこめてみました。

 今回のテーマは2つ。
 1つ目は、音楽というジャンルを通じて、多くの人の想いをつなぐということ。これは、目標を持たなかった翔が抱きはじめた想いであり、無趣味で何事に対しても醒めた翔が目標を抱きそれを成功に導くまでのテーマです。また、これは『デュアルワールド』本編の中でフルメタルワイルドによって確立されるテーマでもあります。
 2つ目は、すれ違い続ける想いがやがて向き合い和解するまで。柳は両親と、軽音楽部は西邊先生と、いつもすれ違い続けています。しかし、翔の活躍と文化祭での成功を通じ、それまで通い合わなかった想いはやっと和解を果たします。
 でも、実際のところそんなカチカチに凝り固まったテーマなんてお気になさらず、「あー面白かった」と言っていただければ何よりです。

 ここからは駄文となりますので読み飛ばしていただいてもかまいません。
 僕は洋楽をあまり聴きませんが、興味を持ったものなら歌詞の意味も分からず聞いています。たまに意味を調べたりしています。けれど、邦楽も同じように歌詞を無視してメロディーに気分がノレばそれでいい時もあります。もちろん、歌詞に共感して聞き入ってしまうこともあります。たまにクラシックを聞いたり、かと思えばガシャガシャうるさいメタルを聞いたり、隣の町に行ってはオルゴールアレンジされたCDを買ったり、趣味がいいのか悪いのか、幅は広く浅いです。
 某所で「ミスターホワイト」さんの名前で紹介したその人は、僕の音楽の趣味を広げたきっかけとなった、自称「なんちゃってパンクロッカー」でした。アニメ、映画にもなった『デトロイト・メタル・シティ(作:若杉公徳氏)』、衝撃的なタイトルや歌詞が特徴のミクスチャーロックバンド『マキシマムザホルモン』様の作品やその他のアーティストを紹介してくれたり、数々の過激な表現や暴言なんかも教授してくれたりもしたのですが、気付けばある日「バレットさん、僕と付き合うようになってから言葉が汚くなりましたね」なんて言われる始末。思えばこれが、僕のパンク魂覚醒のきっかけなんだっけ。
 ある年の夏、たった1回のライブのために、新幹線に乗って1人で大阪に行ったこともありました。それが、かの有名な葉加瀬太郎氏のライブです。横浜でもやっていたのですが、ついでに遊園地で遊んで帰ろうと思い、大阪を選びました。その頃、ある掲示板で知り合った女性がいたのですが、とうとうオフで会えずじまいでした。その遊園地のあるコーナーで働いていたということなのですが。
 とあるアニメのテーマ曲を作曲したロックバンドのライブにも1度だけ行ったことがあるのですが、そこがなんと原宿。おっかない外国人に絡まれそうにもなりましたね。そして薄暗くて狭くてライトがキラキラ光るライブハウス、そんなところに初めて足を踏み入れ、たくさんのバンドが代わる代わる出演する中、名前も知らないお客さんと一緒になってワイワイ騒いでしまいました。おかげで終電を逃がし、偶然横浜まで行っていた親に助けてもらわなければ危うく野宿するところでした。ああ、ライブでの興奮はやっぱり最高だぜ……!

 さて、ここまで本当にどうでもいいことを並べてきましたが、いかがでしたでしょうか。面白おかしく読んでいただけたなら、とても感激です。もしつまらなかったとしても、読むに値しねぇよなんておっしゃらずに、「そんなもん」と解釈して、何も考えず盛り上がってください。

 ……はい?
 第一ロックで泣くなんてことが有り得ない!?
 そもそも、お前の音楽に対する見方が完全におかしいって?

 ぷちっ

 そうかよ、そんなに僕は腐れているのか。
 そんなことを言ってくれたお前に、イギリスの伝説的パンクロックバンド『セックス・ピストルズ』解散時にジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)氏が言い放った言葉を、教えてくれようか!





「あーっはっは!
 騙された気分はどうだい?」




戻る
Disc1へ

□ 騙されたことによる直訴はこちらに □






《Bonustrack2 ふたりの、とある日》

 冬休み中のある日。
 わたし、青島柳は、わたしが今いる体の本来の持ち主=新穂翔として暮らしている。今日もまた、彼に代わってギターの消耗品(主に絃)、クロス、メンテナンス用のスプレーなどを買ってきた。翔くんの趣味で集めているCDをたまに聞いていて演奏してみたくもなって、今日ははじめて楽譜を買ってみた。
 その帰り道だった、今は入れ替わってしまっているわたしの体の持ち主、翔くんに鉢合わせたのは。
 それも。
「……あ、柳?」
「翔くん、その格好は一体どうしたのさ?」
 翔くんの現在の格好、それはいわゆる「かっこかわいい」ストリート風味のカジュアル。翔くんはそれに身を固め、翔くんの持ちギターであるギブソンのギターケースには、キャラクタープリントのビンバッジや銀色のスタッド、ドクロのステッカーなどで飾り付けされていた。腰には飾りベルトとして、フェンダーのロゴが刺繍されたストラップを巻いている。
「どうしたって…… どう?」
「かっ、かわいい…… でも、でも『わたし』のイメージじゃない……!」

 わたしの体をそんな風に飾り付けたのは、翔くんなりのこんな意見によるものだ。
「冬休み明けたらさ、先輩たちの卒業式じゃん。だから、卒業式の後にお別れライブを開こうと思うわけよ。これはそのための衣装なんだ。だけどこのまま町を歩いたって違和感ないだろ?」
「でっ、でもこんなの、わたしのキャラじゃない……」
「そんなこと言うなら、僕の格好でその言葉はやめてもらいたいな」
「うっ」
 今はプライベートなんだからいいじゃない、とは言えないか、街中だし。
「それに、すぐに4月がやってきて、新年度に入学してくる1年生たちを勧誘するためにライブも開かなきゃなんない。1年生だけじゃないぞ、新年度の2年生は女子の長野しかいないから、欲を言えば各学年から部員を集めたいし、次のライブや軽音楽部アピールは結構真剣にやんなきゃ」
「成る程。かなり考えてるんだね、翔くん」
「まあな。橋本のヤツに強引に引きずり込まれたとは言え、僕も軽音楽部の部員だしさ、現在の軽音楽部の部長としても、やらなきゃなんないっつーか…… 誰だよ、僕なんかを部長に推薦したヤツは」
「きみ以外全員だよ」
 そう、金城先輩の引退後に次期部長を決める会議のとき、わたしや後輩の舞ちゃんを含め、部員全員が翔くんを部長に推薦したのだ。それは、文化祭のライブを成功に導いたことを評価されたからだろう。ちなみに、橋本くんは「みんなが推薦するからオレも挙手してやったんだ、感謝しやがれ新穂。そうでなきゃオレが部長に名乗り出てたところだぜ」と言っていたが、橋本くんが部長をつとめる部活なんて死んでもお断りだ。

 すると。
「あれ? おーい、翔先輩!」
 という、1人の女子の声が、わたしたちの前から聞こえてきた。ちょうど今その噂をしていた、舞ちゃん本人だった。彼女の私服を見るのは初めてだが、オーソドックスでふわっとした感じのキャミソールにハーフパンツという格好も、すごくかわいい。その舞ちゃんは、買い物袋を両手に持ったままダッシュしてきて、そのまま何と、翔くんの胸へとダイブしてきたのだ!
「うひゃっ!?」
 なんかすごい声を出して驚く翔くん。その格好もそうだけど、最近いろいろと女の子に馴染みはじめてきたぞ? それに、舞ちゃんも舞ちゃんだ。顔をそんなに胸にうずめて、すっごくウットリ顔。いつもいつもわたしの、と言うより翔くんの胸に飛びついてくるけど、そんなにいいのかい。
「うぅ〜ん、先輩のおっぱいはいつもフニフニで気持ちがいいです〜」
「やっ、やめろ長野! みんなが、って言うか柳が見てるだろ!?」
「そんなこと言わないでくださいよ。あたしと翔先輩の仲じゃないですくぁあ〜」
 いつもこんな調子だ。
 ちなみに、これが最初の頃は「どんな仲なの?」と聞いて2人をにらんでやったが(そのときの翔くんの怯えようはそのあたりの女の子よりもかわいかったので、ついつい罪悪感を抱いてしまったほどだ)、当の舞ちゃんはわたしのおっぱいが好きというよりも、かわいいもの全般が大好きだということが分かったのでとりあえず許してやった。だが、わたしにとって舞ちゃんのその趣味と行動は至極迷惑であることになんら変わりはない。
「それにしても、どうしたんですかぁ〜柳先輩。こんなに派手な格好をしちゃって」
「うん。卒業生たちを送るライブの衣装だよ。どうかな?」
「ええ、とってもカッコいいですよ! いつも静かでおとなしくて軽音楽部にはもったいないいつもの先輩とはすごいギャップです!」
 それは、本来のわたしとしては喜んでいいコメントなんだろうか、微妙なところだ。
 すると、ここに来て舞ちゃんがとんでもないことないことを言い放ったのだった。
「でも、惜しかったですねぇ先輩。せっかく衣装を用意してもらったところ言いにくいんですけど、今回の卒業生の送別会は、制服じゃなきゃダメみたいです。文化祭のときは制限こそあれど自由な衣装でよかったのに、先生たちも意地悪(パンク)ですねぇ」
 あらま、せっかく買ったのにもったいない。そう思って同情してやろうと思ったら。
「あ、あはは、あははははは…… そっ、そうだねぇそれは残念だねぇ」
 と、まるでとんでもない隠し事がばれてしまったような気まずそうな表情をして、しかもわたしの表情を伺っているようにも見える視線を向けながら、棒読みのようにつぶやくのだった。
 ショークン、ナニカナソノりあくしょんハ。

「……さて、事情を説明してもらいましょうか?」
 その後、翔くんに近くの裏通りに連れて行かれて言われた理由が、次の通り。
「だってさ、柳ってば持ってる服少ないし地味なのばっかりだし、バリエーションがないんだもん、しょうがないじゃん!」
 悪かったわね。どうせわたしは年頃のクセにおしゃれに興味ありませんよ。
 それはそれとして、翔くんのその怒り方、どこからどう見ても女の子だ。
「それに、柳はもう少しおしゃれしたほうがいいよ。鏡を見ているつもりで見てみたらどうだよ、結構かわいいだろ?」
「うっ……」
 こうして自分の顔を改めてみてみると、確かに舞ちゃんには及ばないものの、結構かわいいかも。顔立ちも、結構整っているほうなんじゃないかな。けど、だからってどうだっていうの。
「だから、もっと柳はおしゃれするべきだと思うんだ。イメージにそぐわないとかそんなこと言ってたらまたお前はあの時みたいに、自分の殻の中に閉じこもってほかの意見を受け付けなくなっちまうぞ? せっかく柳は、過去のしがらみや暗い考え方にとらわれなくなったんだ、もう少しラフに生きてみたらどうだよ?」
 そうだ、確かにわたしは軽音楽部に入り、シャウトの一員としてロックバンドに参加するようになってから、ずいぶんと変わった気がする。それに、翔くんのおかげで、両親とも和解できたんだし、それまでずっと距離を置いていたクラスメイトが、しきりに話しかけてくるようになってきた。対応するのはいつも翔くんだってことが微妙なところだけど、『新穂翔』もまた新しいファンを獲得して、文化祭からしばらくはわたしたちのクラスにはいろんな人が訪れていた。
 けどさ、翔くん。
「……あのさ。今の時点で『そのかわいい女の子』の体の持ち主は翔くんでしょ? それって自画自賛って言わない?」
「うーん、そこら辺微妙なんだよね。なんか、言っててナルシストみたいな感覚を抱かなくもないし。そんなこと言ったら、僕もそうだよ。その顔を見て自分だって認識している一方で、その顔イコール柳っていう認識もあるんだ。混同しちゃって、ちょっと複雑だよ」
「……それ、分からなくもない。確かに、それはわたしの体だけど、今はそれが翔くんで…… わたしも思うよ。翔くんって改めてみてみると結構そこそこだなって思うときもあるけど、今じゃそれがわたしなんだよね」
 改めて見てみてそれかい、って思ったかもね。いま、ちょっと残念そうな顔したぞ。
「……ね、翔くん。1つ思うんだけど」
「ん?」
「たとえば、わたしと翔くん、一番大切にしている宝物を1つ選んで、交換するとするよ。それを、しばらく互いに預けて、それをいつか返すその日まで大切にするっていうのどう? その、預けるものは、お互いの存在。わたしは、『青島柳の存在』を翔くんに貸してあげる。その代わり、『新穂翔の存在』をわたしに貸してよ。そうすれば、互いの存在は相手のもの。混乱しなくて澄むじゃない」
「互いの存在を…… 柳、柳はそれでいいの?」
「構わないよ、もう。だから、いつかもとに戻る日まで、『わたし』を大切にしていてほしいんだ。いいよね?」
「柳…… ………… ……ああ、約束する。ありがとうな、柳」

 まあ、それがその日での出来事なんだけど。
 ストリートファッションに着飾った『わたし』に、わたし自身がちょっとだけ惚れてしまい、そしてしばらくもドキドキが続いていたことは、絶・対・にっ、翔くんには内緒だ!





《Bonustrack3 打ち上げパーティー》

 その日は、文化祭での成功を祝して、軽音楽部全員で打ち上げパーティーを開いていた。確かに、あのライブは成功を通り越して大成功と言っていいだろう。だけど、だけどさぁ。
「橋本ぉ、何故に居酒屋で打ち上げなんだよ! 学生7人で来るところじゃねぇだろ!」
 柳とそろって遅刻してきた僕の言えたことじゃないけど、そりゃどう考えてもおかしいだろ。居酒屋だぞ、お酒出るんだぞ?
「心配すんな、ここはオレの叔父さんが経営しているところだから。なんなら、こっそりワインなんて紛れ込ませてもらおうか?」
 待て。学生がそんなもの飲んでいいわけがないだろ。だが、僕が「不謹慎だぞ」と言うと何と返されたか。「かわいいぞ、翔」だと。こいつはどうも苦手だ。

 居酒屋、『たそがれ』。そして橋本のおじさんの家。
 僕らは、畳が敷き詰められた座敷に通された。そこにはツヤが美しいテーブルに7つ敷かれたコバルトブルーの座布団が用意されている。メニューはすべて壁に貼り付けられており、ビキニの女性がビールジョッキを掲げて「飲んで」といわんばかりに笑っているポスターまで貼られている。どう見ても食事所にあるべきものではなかろう、「F__K! く_食らえサノバビ_チ」と吼えているパンクロッカーのポスターが隅っこにあるのは、おじさんの趣味か甥の趣味か。
「それではみなさん! 名桜高校軽音楽部バンド、シャウトの文化祭ステージ成功を祝して、くぁんぱーいっ!」
「かんぱーい!」
 乾杯の音頭を取るのはもちろん、部長である金城優先輩だ。
 柳はオレンジジュースを、長野は乳酸菌飲料を、それ以外の僕らは全員ウーロン茶を注文している。そして目の前に運ばれてきたのは、これまたとんでもない量の刺身、ご飯、味噌汁、焼肉! 待て、こんだけの量を7人で食いきれと? ……橋本きゅん、テイクアウトのサービスはあります?
 さて、話題だけど今回のライブの反省点を、よかったところ、悪かったところともに振り返り、楠森と城嶋、僕で次のライブについての会議をしている。金城先輩は食べるものがなくなり次第次々に注文しているけど、自分が平らげるつもりだろうか。柳は中身が女の子同士だからということで長野と舞い上がっているが、その長野が、反省が終わると同時に橋本によるセクハラの餌食になってしまった。
 次がクリスマスイヴ、終業式のあとに体育館で開こうということまでが決まり、演奏する曲は後日決めるということになった。すると、柳は持ち込んだ楽譜で分からないところがあると僕に提示し、僕はそれを教えていた。
「……ああ、『C(onG)』ってのは、ギターはCのコード、ベースはGを弾くって意味なんだ。ギターの練習の場合は、Cと捕らえていい」
「ありがとう、翔くん。……それと、これ食べてもらってもいいかな、わた、じゃない、ぼくはもうお腹いっぱいだよ」
「ベルト、きつく締めてるからじゃね? でも、僕ももう満腹だ、食べられない。それに脂っこいものばかり食べている所為もあるしのども渇いたし、ここでウーロン茶がほしいな」
 その言葉を聞いたのだろう、僕の横に橋本がヒョイッと現れると、やつは僕の腰に手を回して「おっちゃーん、ウーロン茶1つ、よろぴくー」と言うのだった。いろいろと移動する理由を見つけては神出鬼没の忍者がごとく現れるから困る。このあたりもこいつの始末に負えないところの1つだ。
「そう言えばさぁー、新穂。お前、青島と付き合ってんだってぇ?」
 藪から棒に橋本が言う。そんなあんまりな質問に、僕は食べかけたマグロの赤身の刺身と、柳は豚の冷しゃぶをのどに詰まらせてしまった。しかも、柳を挟んで僕の向こう側にいる長野まで、飲んでいたジュースを噴出し、蒸しエビをはじめとしたおいしそうなネタが乗ったお寿司の皿を、見事に台無しにしてしまった。
「ごほっ、ぐはっ……! 橋本、お前なんてことを!」
「ABCのどこまで行ったんだ? Zとか言ったらたいしたもんだ」
「どれもしてねぇよ!」
「ふーん。……んで、ホントは?」
 ダメだ、橋本ははぐらかすこともウソをついて騙すこともできないようだ。こんな場所でこういったことを平然と問い詰めてくる辺り、もうある意味橋本は最強で逆らえない存在なのかもしれない。と言うより、僕が軽音楽部に引きずり込まれたときからすべてこいつの言いなりなのかもしれない。
「………… ……きっ、キスくらいは、した」
「やっぱ!? ……うぅ〜ん、うらやましいなぁ。彼女いない暦17年のオレには、お前がうらやましくてまぶしくてマジしょーがねぇ」
 おい、自分自身に原因があるって重々承知しての発言か?
「って言うか、楠森先輩。なんか、橋本先輩酔っ払っていません?」
「そりゃねーな。さすがにそこは自重するところだろ」
 長野の言葉に楠森が返し、城嶋や金城先輩もうなずくが、それにしてもシラフでこの状態とは。橋本、完全にそのあたりのセクハラオヤジ化しているぞ。今考えると、文化祭にマムシ酒を持って来たのこいつなんじゃないかって思えて来た。
「おい、橋本、その辺にしてくれ。2人が迷惑そうにしてんだろ?」
 最後に金城先輩が暴走寸前の橋本をたしなめ、橋本は「これからいいところなのに」とつぶやきながら、最初に座っていた場所に戻る。何がいいところなんだよ。金城先輩の言うとおり、迷惑そうっつーか実際迷惑だ。
 すると、ちょうどいいところにお盆を持ったお姉さんがやってきた。大学生アルバイトだろうか、大人の色っぽさと子どものあどけなさが調和したような、『かわいい系』の感じの人だ。……うん、柳を、って言うか自分をもう少しオシャレにするのに参考となる人だ。
「はーい、ウーロン茶ご注文のお客様、お待たせしましたー」
「あ、ぼ、……わたしです」
 僕がそう言うと、お姉さんは僕の隣にすそを丁寧に直しながらかがむ。その上品な立ち振る舞いでよく、たった1人で大勢の客の相手ができるものだ、要領がすこぶるいいのだろう、この人。そして、厨房では橋本のおじさんが包丁やらフライパンやらいろんなものを操っている。
「こんばんは、三織さん、今日もまた一段と美しい♡」
「もう、店長の甥っ子さんだからっていたずらは禁止よっ♪」
 こういう、シラフ酔っ払い糞餓鬼(橋本)のあしらい方も、普段酒に酔った大人たちを相手にしてきた経験による賜物だろう、三織と呼ばれた人、土屋三織(つちや みおり)さんは、僕でもかなわない橋本のナンパ(?)を軽くあしらう。が、それでも多少は迷惑のようで、なかなかテーブルにウーロン茶を置けない。……あるいは楽しんでるのか? なわけないよねぇ?
「もう、これ以上ふざけたらここ辞めちゃうわよぉ?」
「そんなこと言わないでくれよ〜、三織さん以外のスタッフを雇うなんて、親父が許してもオレがやだぁ〜」
 とうとう、こいつ崩壊してやがる。色仕掛けのような態度と口調で橋本をあしらう三織さんも三織さんだが。
「……はい、ごめんなさいね。ウーロン茶をお持ちしました」
「ありがとうございます。橋本、お前のせいだぞ」
「ふーん、橋本くんといい翔くんといい、三織さんみたいな女性が好みなんだ……?」
 待て、どうしてそうなるんだ柳。
「だって、翔くん三織さんに見とれてた」
「バカ言うなよ。2人のやり取りに呆れてただけだ」
 そう言って、僕は結露したグラスを手に取り、氷が浮かんでいるウーロン茶を飲んだ。うん、脂っこいもののあとにはこれに限るぜ! つか、橋本の叔父さんもサービスし過、ぎぃ……?
 はれ?
「おりょりょ? どうして僕2人もいるんだ?」
「はい? 翔くん何をバカなこと言ってるのよ。わたしたち入れ替わっちゃったんだから、目の前にいるわたしは翔くんじゃない」
「しょーじゃりゃくて、そこと、そこり、なんれいるのら?」
「翔くん、目でも回し…… ちょっと待って!」
 そう言うなり、僕の目の前にいる2人の僕=柳は、僕の手からグラスを奪い取り、ほんの少しだけウーロン茶をすすった。しかも、味見程度に。
「やっぱり! これ、ウーロン茶じゃない、アルコールが入ってる! 割ったでしょ! さては、橋本くんの仕業ね!」
 おーい、そこにいる僕、じゃなくて柳。僕の声でお姉さん言葉使うなよ、気持ち悪いぞー、うぇっぷ。
「あはは、バレた? おっちゃんに、ちょっとしたサインを送っといたのよ。どうよ新穂、ウーロンハイのお味?」
 あはは、これウーロンハイだったの? ………… ……ウーロンハイ!?
「くっそ、はひ本……! よくもはめやがったら。どんらけ破目をはずしてもタバコとアルコールは絶対禁止られ先生にも言われていりゅひ、そのくらいは常識らろが!」
「馬鹿だなー。高校生にもなれば、どこかでその味はしめているもんさ。オレなんざ、オヤジに中学生のときにロックで芋焼酎呑まされ」
「うりゅへぇロックバカ! そこから先の発言は僕が阻止する! りゃらくて、こいつを即刻戻してこ」
「はい、のーんでのーんでのんで、のーんでのーんでのんで♪ さあみんなも一緒に!」
 軽音楽部の連中は、柳を含め全員そろって、口をぽかんと開けて呆然としている。対し、橋本が未成年(同級生)に酒を押し付け、しかも僕の口を強引に開けて、柳の衣服がびしょぬれになろうと知ったことかと言わんばかりに口の中にウーロンハイを注ぎ込んでいる(#)光景を、この店の客が見て手拍子を打っているのはなぜ!? これがこの店の常識ですか!?
 そして、とうとうグラスからウーロンハイと氷がなくなった。柳の服をはじめ、内側のブラジャーやパンツ、座布団、畳、もろともびしょ濡れだ。
 一方、僕はと言うと、一度に大量のアルコールが注がれたために急性アルコール中毒にでも陥ったのだろう。そしてここから先の記憶がまともに残っていなかった。

 後日聞けば。
 僕はあのふらふらした状態で柳につめより、何と柳を僕が自ら色仕掛けで誘惑し、挙句の果てに赤面しまくった柳を押し倒してそのままキスを果たす破目に。この瞬間を、そのとき店の中にいた全員に見られてしまっていた。軽音楽部のメンバー、三織さん、橋本のおじさんだけじゃない、見ず知らずのお客さんにまでだ!
 その日から、僕は『キスで(おとこ)を殺す妖怪濡れ女』として、その店では有名になってしまった。なぜそう呼ばれるようになったかは、その時ウーロンハイを文字通り浴びたせいで全身びしょ濡れだったことによる。
 そして、長野はこう漏らしたと言う。
「………… ……不潔です、翔先輩」

 それから、しばらくの間僕と柳の関係が軋んでいたのは言うまでもない。

#:よい子のみんなは真似しちゃダメだよ♪





《Jacket ジャケットイラスト》