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 「おい、先週引退発表した俳優の仲街、どうやら『エスプラス』だったらしいぞ」
 「あ? なんだそのエス……なんとかって」

 昼休み、教室で本を読んでいた俺の耳に、少し離れた場所で交わされている数人のクラスメイトの会話が聞こえてきた。

 「知らねえのかよ?」
 「えーっと……あーあれか、コーヒーを泡立てたやつ?」
 「馬鹿、そりゃエスプレッソだ。だいたいエスプレッソってのは単に泡立てただけのコーヒーじゃなく、エスプレッソマシンというのを使ってだな……」

 今喋ってる奴は、クラスではいろいろともの知りということで有名だ。ただ、話に夢中になり過ぎて横道にそれやすく、現に今も話の内容が脱線している──

 「……まあ、それよりも『エスプラス』のことなんだが」

 あ、復帰した。

 「最近、芸能人やスポーツ選手なんかの有名人が、突然引退したり無期限休養を宣言したりとか、結構多いだろ?」
 「そういやそうだな……まだ若手なのに持病の悪化とか体力の限界とか」
 「仲街もいきなりだっただろ? しかも本人の会見はなしでコメントのみ。テレビドラマにいくつも出演してて、割と好きだったんだけどなあ」
 「イケメンだったから女どもも騒いでたぜ。勿体ねえよな、『持病の腰痛が悪化した』ってことらしいけど」
 「それがな、どうも本当は別の原因があるらしいんだ……俺の聞いた話だと、そういった連中が一部で『エスプラス』と呼ばれてるらしい」
 「ふーん、で、その『エスプラス』って具体的になんだ? 病気か? 現象か? なにかの運動とか? それとも芸能イベントとか?」
 「それは……よくわからん」
 「なんだそりゃ? 意味ねーっ」
 爆笑が起こり、その後は別の話題へと移っていった。

 「…………」
 俺は読みかけていた本に視線を戻し、読書を再開した。




エスプラス

作:ライターマン


三好奈あきら(illust by MONDO)
 「三好奈あきら(みよしな・あきら)さん。どうぞお掛けください」
 「はい」
 大学病院の診察室。担当医に勧められて俺は椅子に腰掛けた。
 「先ほどの心理テストの結果ですが……前回よりも進行してますね」
 「ええっ!?」
 さっき別室で受けたテストの結果を聞いた俺は、驚きの声を上げた。
 この「心理テスト」、四百問に及ぶ質問の回答をマークシートに記入することで精神的傾向を測定するもの……らしい。
 「意識レベルは前回とほぼ同じですが、嗜好に変化が見られます。このまま進行すると、意識や肉体的にも影響が出てくるでしょう」
 「…………」
 俺の動揺を無視するかのように、医者は淡々と事実のみを語った。
 「身体測定、および前回行なった血液検査の結果は、特に変化は見られませんでした」
 「よかった……」
 俺は少しホッとして、胸を撫で下ろした。
 「それでは薬を処方しますが、治療方針に変更はありませんか?」
 「はい、今まで通りでお願いします」
 俺の言葉に医者はキーボードを叩き、プリンターから出てきた診断結果と処方箋をそれぞれ封筒に入れて俺に渡した。
 「しかし、最初に説明したように、現時点ではこの症例に対する根本的な治療法は存在しません。今は投薬で進行を抑えてますが、それでも症状が進んでしまう場合があります」
 「はい、解ってます」
 「……では、お大事に」



 料金を払って薬を受け取った俺は、病院を出て帰ろうとした。その時──

 「……三好奈くん?」

 後ろから小さな声で呼び止められた。
 「はい?」
 振り返ると、声をかけてきたのはすらりとした身体つきの、二十歳過ぎくらいの人だった。上はシャツにジャケットを羽織ってボトムはジーンズ。それらをきれいに着こなしていた。
 帽子とサングラスで顔はよく見えないが、確かどこかで見たような……
 「あっ!?」
 俺は思わず声を上げそうになり、慌てて口を押さえた。
 そして小声で訊ねてみる。 「も──もしかして……仲街さん?」
 するとその人は、小さく首を縦に振った。



 「いらっしゃいませ」
 レストランに入ると、ウエイトレスが明るく声をかけてきた。ピンクとクリーム色の、すごく可愛らしいデザインの制服だ。
 俺と仲街さんは、まわりに人がいない隅のテーブルに腰掛けた。
 「ご注文はお決まりでしょうか?」
 「特製クリームパフェ。三好奈くんは?」
 「じゃあ……アイスココアを」
 「ありがとうございます。特製クリームパフェにアイスココアですね。少々お待ちください」
 向かいの席に座った仲街さんは、注文をとって引き上げるウエイトレスの動きをじっと見ていた。
 「ふーん、女の人ってあんな歩き方をすれば映えるんだ。それに今の喋り方……今度練習しておこう──」
 「仲街さん……」
 俺のつぶやきに仲街さんは、こっちに顔を向けて「ああ、ごめんね」と謝まり、小さく肩をすくめた。
 仲街優一(なかまち・ゆういち)、イケメンで演技力も高く、映画やテレビドラマに多数出演している若手男優……だった。
 「驚いた?」
 「ええ、それはもう。だってその──」
 仲街さんと初めて会ったのは二ヶ月前、大学病院の専用の待合スペースで……同じ症状の患者同士として──だった。
 「引退……しちゃったんですね」
 「ああ、もう少し頑張れるかなと思ったんだけど……早めに準備しといてよかったよ。全部の仕事にけりがついた直後に『声変わり』が始まったからね。おかげで会見はドタキャン、事務所には迷惑かけちゃったな……」
 「そういうことだったんですか……」
 俺は初めて仲街さんの引退の事情を知った。……なるほど、今の声じゃ記者会見で本人が喋る訳にはいかないよな。
 「そういえば、うちのクラスの連中が休み時間に話してました。あなたが……というか俺たちのことを『エスプラス』だって」
 「エス……ああ、あれかい? 研究者の間で、俺たちの症状のことをそう呼んでる連中がいるらしいって話を聞いたことがあるけど……どっかで漏れたのかな?」
 仲街さんが軽く首を傾げる。
 「なんですか、その……『エスプラス』って?」
 「ジョークだよジョーク。『He(=彼)の頭にSがプラスされてShe(=彼女)になるからS−plus(エスプラス)だ』……てね」
 「ぶっ!?」
 苦笑を浮かべる仲街さんの言葉に、俺は飲んでいた水を吹き出しそうになった。
 「おっ、俺は──俺はまだ『She』じゃありませんよっ」
 張り上げそうになった声を潜めて言い返すと、仲街さんは苦笑いのまま右手を横に振った。
 「だからジョークだってば。ただ、『突発性進行性遺伝子変異若年性男性女性化症候群(仮称)』なんて長い名前、憶えるのも大変だからね」
 「はあ……」
 ……俺はその仮称、まだ半分も憶えていない。

 「お待たせしました。特製クリームパフェとアイスココアです」

 ちょうどその時、ウエイトレスが注文した品を運んできた。
 テーブルに置いて戻っていくその後姿を見送り、俺たちは中断していた会話を再開した。
 「あのウエイトレス、俺のこと気づいてないみたいだね」
 「……みたいですね」
 仲街さんは、髪を女性のように肩の辺りで切りそろえていた。そして胸の部分が小さいながらも盛り上がっている。声も高くなって男声と女声の中間あたりの高さになっていた。
 一見するとその姿は女性であり、本当は男性俳優だったとは見えないだろう。



 突発性進行性──というのは十年くらい前から見られるようになった病気……みたいなものらしい。これに罹ってしまうと少しずつ肉体的、精神的に変化を起こし、最終的には遺伝子レベルで完全に女性になってしまうのだ。
 発症するのはほとんどが若い男性だが、稀に中高年の男性が若返りながら女性になっていく──というのもあるらしい。原因やプロセスは世界中で研究されているが、未だにその全容は解明されていないという。
 そんな状態だから、治療といっても男性ホルモン、そして女性ホルモンを効きにくくする薬、というのを併せて服用して進行を遅らせる程度だ。
 社会的な影響が大きいということで、この病気は公表されていない。知っているのは一部の役人や医者、そして実際に罹った患者とその家族、といった限られた範囲である。



 「仲街さんは……今、どのくらい……?」
 「進行度かい? ……87だよ」
 「──っ!!」
 俺は思わず息を呑んだ。
 病院では患者の身体や心理を検査して、結果を「進行度」という数字で表している。これが100になると、完全に女性化したことになるのだ。
 聞いた話だと、進行度が70を超えると男性ホルモンを与えても悪影響しか出ないため投薬を中止、あるいは女性ホルモンの投与による女性化の促進に切り替わるという。
 「今は女性ホルモンを処方してもらっているんだ。声ももっと高くなるし、おっぱいやお尻も膨らんで……恐らくあとひと月ほどで初潮を迎えることになるだろう、ってさ」
 「…………」
 「三好奈くんの方はどうなんだい?」
 言われて俺は、診察結果の入った封筒を差し出した。
 中身を取り出して目を通した仲街さんは微笑を浮かべながら言った。
 「なんだ、まだ28じゃないか。大丈夫大丈夫、俺なんか見つかった時は、もう40超えてたからなあ……」
 その点は幸運だったと思う。たまたま診察を受けた医者が大学病院から一時的に派遣された医師で、この病気──「エスプラス」の研究者の一人だったのだ。
 進行度20未満で見つかったケースは少なく、そして早い方だという。
 「おっと、早く食べないとパフェが溶けちゃうな」
 そう言って仲街さんはスプーンを手にしてパフェを食べ始めた。クリームを口に含んで嬉しそうな表情を浮かべる。
 「お、美味しそうですね……」
 ……俺もそっちにすればよかったかなぁ?
 「うん、女性になっていくのにつれて甘いものに目がなくなってね。……三好奈くんもそうやってココア飲んでるとこを見ると、甘いもの好きになってない?」
 「……あっ」
 俺はハッとなって、自分の手の中にあるアイスココアのグラスを見た。
 「以前は喫茶店とかじゃいつもコーヒーだったんだけど、今じゃ苦く感じちゃって……気がつくとこんなのばっか頼んでるんだよね」
 「…………」
 ……こ、心当たりがありすぎるぅぅぅ────っ!!



 「ただいま……」
 「あら、おかえりなさい」
 家に帰ると、母さんがキッチンから出てきて俺を出迎えた。「……ちょうどよかったわ。晩御飯の支度をするから手伝って」
 「えーっ?」
 「お願いっ、母さん炒め物があるから手が離せないのよ」
 「はああ……帰ったばかりだってのに」
 両手を合わせられ、仕方なくキッチンへと向かう。
 「そこの野菜を切って盛り付けて欲しいの」
 「……ったく、しょうがねえなあ」
 溜息を吐きながら、俺はレタスの葉を剥いで、ざく切りにする。
 「父さんはまだ帰ってないの?」
 「もう帰ってきてるわよ。ただ、持ち帰った仕事があるから部屋に篭ってるわ。終わるのは深夜になりそうだって」
 「ふーん、最近結構忙しいんだな」
 玉ねぎを薄くスライスしながら俺がそんな感想を漏らすと、母さんが呆れたように言った。
 「なに言ってるの? あなたのために少しでも給料が上がるように頑張ってるんじゃないの」
 「えっ!?」
 「あなたの診察やお薬、補助が出てるからって無料じゃないんだから」
 「…………」
 俺はさっき病院で支払った金額を思い出した。確かにあの支出が続くと、家計としては厳しいだろう。そういえば母さんがパート始めたのも俺がこうなってからだったし……
 「ごめん……その──」
 「いいのよ、それより残りの野菜を早く切ってね。もうすぐこっちの料理もできるから」
 「うん」
 俺は母さんの言葉に頷くと、トマトをクシ型に切った。人数分の器にレタス、玉ねぎ、トマトを乗せ、貝割れ大根をふりかけるようにばらまき、ドレッシングをかけて──
 「サラダできたよ」
 「じゃあ、それリビングに持っていってくれる?」
 俺はサラダを盛りつけた器をリビングへと運んだ。テーブルの上に器を置きながら上に置かれていた書類を片付け……ん?
 「か……母さんっ!?」
 「あら、どうしたの?」
 炒め物が乗った皿を持ってリビングに入ってきた母さんが、俺の声に首を傾げた。
 「……なんだよこれ? 若花女子学園のパンフレットに、転入手続き申込書?」
 「ええ。その学校、設備も充実してるし、転入生をいつでも受け付けてるんですって。あなたも以前、あそこの制服を見て『可愛い』って言ってたでしょ?」
 ええっと、そんなの言ったことあったっけ? 確かに若花女子の制服は、うちの学校でもときどき話題になるくらい可愛いけど……
 「誰が転入するんだよ?」
 「もちろん、あ、な、た、よっ♪ だって、うちにはあなたしか子供がいないじゃない」
 や、やっぱりぃぃぃ────っ!!
 「かっ、母さんっ、俺は男だぜっ! 男が若花女子になんか──」
 「でも、もうすぐ女の子になるんでしょ? 戸籍もすぐに書き換えてくれるという話だし、そうなったら問題なく転入できるでしょ?」
 「俺は女になる気はないっ!!」
 「でも……最近は文句を言いつつも台所仕事手伝ってくれてるでしょ? 以前はお願いしても完全無視してたのに」
 「…………」
 「それに台所で渡したエプロンを抵抗なく身に着けてくれたし。それ、思ったとおり似合ってるわよ。元々細身だったけど、その姿で野菜切ってる姿はかなり女の子っぽかったわよ」
 「ああっ!?」
 俺は自分の姿を見下ろした。視界に入ってきたのは胸にアップリケの入ったフリルつきのエプロン……俺、こんなの着けてたのかよっ!?
 「お父さんも『可愛い娘のためならば』って、がんばってるわ。引越しや新しくそろえる衣服とか、転校に必要な費用とかも、ちゃんと確保できるから安心してねっ」
 「あ、あんたら……『頑張ってる』のはそういう魂胆があったからかいっ!?」



 それから二週間後――

 「なあ三好奈、お前最近痩せてきてねえか?」
 「えっ?」
 体育の授業で着替え中、クラスメイトの一人が俺に声をかけてきた。
 「そ、そうかな?」
 「うーん、以前に比べると肩のあたりが緩くなってる様な気が……肩痩せってやつ?」
 「なんだそれ? 肩痩せなんて聞いたこともねえよ」
 「だな、やっぱ気のせいか……」
 まわりで笑い声が湧き起こり、その後はそれぞれ着替えを再開する。
 だけど……



 ……気のせいじゃ……なかった。

 「肩幅が若干狭くなっていますね。それと腰まわりのサイズが大きくなっています」
 大学病院の診察室で、医者が俺に告げた。
 「骨格の変化が進行しています。血中のホルモン濃度にもわずかですが変化が見られます」
 聞いていた俺は、緊張に両手をグッと握り締めた。
 「現在のところ進行度は……35ですね」
 「そんなに……」
 「今のところはまだ大丈夫です。抗ホルモン剤で抑えられるレベルだし、体型の変化もそれほど目立つものではありません」
 医者が安心させるように言う。「……ですが油断しないでください。ちょっとしたきっかけで症状が一気に進行することもありますので」
 「…………」
 俺は医者の言葉に小さく頷いた。



 「……な、なんだこれ?」
 朝、俺は寝ていたベッドを凝視していた。布団の上に、小さく黒く細長い物体があちこちに散らばっている。
 「これって……俺の髪の毛……じゃないよな?」
 右手で髪の毛を触ってみるが、特に異変は感じられない。そもそもベッドの上に散らばっているのは髪の毛にしては細く、そして短すぎる。
 首をかしげながらパジャマとシャツを脱ぐと、ベッドの上の物体と同じものが大量にこぼれ落ちた。
 「げげっ!? じゃあこれって……俺の体毛かぁ?」
 つぶやきながら、俺は右手で左腕を撫でてみた。すると残っていた体毛が根こそぎ抜けていった。
 触ってみると、肌はスベスベでプニプニ── 「うわっ、これってまさか……肌の女性化が進行したってことかあっ!?」



 「おい三好奈、お前、昨日の放課後さっさと帰っちまっただろ?」
 朝、登校して教室に入った俺に、クラスメイトの一人が話しかけてきた。
 「ああ、用事があったからな。昨日も話しただろ?」
 昨日は診察の日だったのだ。ホームルームでの会議が長引いて放課後に続きをやることになっていたのだが、気がかりなこともあったので参加せずに病院へと直行したのだ。
 そして不安は的中していた。「エスプラス」の症状が進行していたのだ。
 肌はきめ細かになり、皮下脂肪が増えていた。進行度はとうとう40を超え43までいってしまった。おまけに髪が異常ともいえるスピードで伸びてきている。これも症状のひとつらしい。
 医者からは暗に治療方針の変更……つまり女性化の促進を勧められたが、もちろん俺はそれを断り、今回は今までより強い薬を多く処方してもらった。
 「それがな……会議の議題が『文化祭の出し物』だったろ? あの後話し合った結果、『メイド風喫茶』にしようってことになったんだ」
 「ああそうかい」
 俺は生返事を返す。喫茶店というのはありがちな選択だな。あまりにもありがちだから衣装をメイド風にしてちょっと目立とうと……これもありがちだな。
 「で、役割を話し合った結果……三好奈には接客をやってもらうことになったんだ」
 「ふーん…………って、はあっ!?」
 クラスメイトの言葉を聴き流しかけて……俺は思わず声を上げた。「ち──ちょっと待てっ!! 『メイド風喫茶』なんだろ? それの接客っていったら、メイド風のウエイトレス……普通女子だろっ!?」
 「その女子がさ、『ウエイトレスも裏方も女子にやらせて男子は楽しようなんて許せない』って騒いだんだよ。で、話し合った結果、男子からも何人か女装させてウエイトレスとして働いてもらおうって」
 「だからってなんで俺が?」
 「お前が会議に参加せずに帰ったからだ」
 「う……」
 きっぱりと断言されて俺は沈黙した。
 「大丈夫だって。三好奈だったら最近痩せてきてるし、よく見ると男にしては色白だし、メイド服着たら絶対に似合うって」

 だからっ、似合ったら困るんですけどぉぉぉ────っ!!



 「…………ううっ」
三好奈あきら・メイド衣装(illust by MONDO)
 俺の喉から小さなうめき声が漏れた。
 「きゃあっ、三好奈くんかわいいっ!!」
 俺を着替えさせていた女子たちがまわりではしゃぐ。
 文化祭当日、抵抗むなしく俺はウエイトレスの衣装に着替えさせられた。
 濃紺のワンピース、フリルつきのエプロン、同じくフリルつきのカチューシャ……あろうことか、悪乗りした女子に眉毛を整えられて薄化粧までさせられてしまった。
 全然似合ってない……ことはない。というか目の前の鏡に映ってる美少女、これが俺ですかあぁぁぁ────っ!?
 準備が終わったことを聞いて教室に入ってきた男子も、俺を見るとみんな驚いた顔になった。
 「おい、このアイドルみたいな女の子って……誰?」
 「げげっ、これが三好奈?」
 「ちょっと似合いすぎなくね?」
 なんかちょっとまずい……というか、かなりまずい気がする。注目を浴びてるせいか、なんかあちこちがムズムズして……

 「あ──あのっ、あ、あんまりジロジロ見ないで…… ……っ!!」

 自分の声に驚いて、慌てて両手で口を押さえた…………が、遅かった。
 「えっ、なに今の声? 三好奈くん?」
 「すごい、今の完全に女の子の声だったわよ」
 「もしかして、これのために隠れて練習してたの?」
 「三好奈っ!! 感動した、感動したぞ────っ!!」
 「萌える、萌えるぜぇぇぇ────っ!!」
 勝手に勘違いして盛り上がったクラスメイトの連中に、声を低くして「い、今のは違うんだ」と言う俺の声は届かなかった。
 数日前から喉が少しガラガラするとは思っていたが、「声変わり」の前兆だったのかぁっ!?
 「……じゃあ三好奈くん、文化祭の間は今の声でお願いね♪」
 「ううう……」


 「あ、お客様よ、三好奈さんお願い」
 「い……いらっしゃいま──」
 「三好奈さんっ!!」
 クラスの模擬店を訪れた客に挨拶をしようとした俺は、近くにいた女子のクラスメイトから叱咤されてしまう。
 俺は小さく溜息を溜息を吐く……ったく、模擬店が始まってからスタッフのクラスメイトのチェックの厳しいこと厳しいこと。仕方なく俺は喉に込めていた力を抜く。

 ……い、いらっしゃいませ、ご主人様」

 「おおっ!!」
 女の子の声で出迎えると、客が嬉しそうに表情を崩した。
 (もうっ、まったく男の人ってあたしみたいな女の子が微笑んで優しい声をかけたら、みんなこんな風にデレデレと……って、違う違うっ、俺は男だっ。女の子じゃねえっ!!)
 ああ……女の子が着るようなメイド服風の衣装着て、女の子のような声で女の子のような喋り方をさせられてると、考え方や気持ちまで本当の女の子になっちゃうわ……じゃなくって、なってしまうっ!!
 (なっ、流されちゃダメだ、流されちゃダメだ、流されちゃダメだ……)
 ただでさえ「エスプラス」の症状が進行してるっていうのに、考え方まで女の子みたいになったら手遅れになって──

 「ご注文はこちらがコーヒーとチーズケーキ、そちらはアイスティーにアップルパイでよろしいですね?」
 「は、はい」「よ、よろしくお願いします」
 「ありがとうございます、ご主人様っ♪」
 「「うおおおっ! カワイィィィ────っ!!」」
 「やだもうっ♪ カワイイだなんてっ♪」

 だ・か・らっ!! ノリノリになったりとか「かわいい」とか言われて嬉しそうに身をよじるんじゃねえ俺ぇぇぇ────っ!!








































 「あ……あは……あはははは…………」

 乾いた笑い声が、俺の喉から漏れ出た。

 「血中のホルモン濃度ですが、女性ホルモンがかなり増大しています」
 文化祭が終わってから一週間後、病院の診察室で医者に診察結果を告げられる。「……骨格の変化もさらに進行。ウエストのサイズは前回より5センチ以上減少。かなり急激な変化ですね」
 たぶん、文化祭で休憩なしでウエイトレスやらされたのがまずかったんだろうなあ……
 ううっ、「やらなきゃクラス八分だっ」って言われてしぶしぶ承諾したけど……やっぱやるんじゃなかった。
 「それと、乳腺の発達が始まってますね」
 「…………やっぱり」
 今朝、胸を押さえると左右に小さなしこりのようなものを感じたのだ。間違いであって欲しいと思っていたのだが……
 「恐らく数日中に胸が膨らみ始めるでしょう」
 「そんな……」
 ただでさえ華奢で丸みを帯び始めた身体に、そんな変化が起こってしまったら……
 「それと……」
 「ま、まだあるんですか?」
 「はい、先程超音波で調べた結果ですが……こことここ、子宮と卵巣が出来つつあります。完成したら卵巣から大量の女性ホルモンが分泌されるでしょう」
 「ええっ!?」
 俺の身体の中に……そんなものが──
 「進行度は62ですが、許容されている最高レベルの薬を処方したにもかかわらず、短期間でここまで症状が進行したことから女性化を止めることはもはや不可能でしょう。今後は薬の投与を中断し、希望するなら女性ホルモンの投与による女性化の促進を……」
 「…………」
 呆然となっている俺の耳に医者の説明が通り過ぎていった。








































 「さあ、次はこれを着けてね」
 目の前で、母さんがこれ以上ないくらいににこやかに微笑んだ。
 「か、母さん……それ、着けなきゃダメ?」
 俺が小さな声で訊ねると、母さんは笑顔のまま大きく頷いた。
 「当たり前じゃない。これ無しで外を出歩くつもりなの?」
 「うううっ」
 俺の中で「それは確かにそうだ」と、「それ着けて外を出歩くなんてとんでもない」という思いが激しくぶつかる。
 「さあ早くっ」
 母さんはそう言うと、心の葛藤で硬直している俺の腕に素早く手にした衣類=ブラジャーをくぐらせた。
 「……あっ?」
 驚く間に母さんは後ろに回りこみ、背中からパチンッとホックを留める音がした。
 「ホックを留めたら、ちゃんと形を整えないとね」
 「ひゃあああっ!!」
 母さんの両手が、俺の胸のあたりでワキャワキャと動く。こそばゆいような未知の感覚に、俺は思わず悲鳴を上げてしまった。
 「……はい、これでよしっ。サイズはぴったりね」
 大きく頷きながら、母さんが背中から離れた。
 壁の姿見に下着を着けた俺の姿が映っていた。胸を包むブラジャーの、股間に張り付いたショーツの、さらには俺自身の肌の白さが目に眩しかった。
 「…………お、俺が……ブラジャーなんて──」
 「仕方ないでしょ。そのサイズじゃもう隠しようがないじゃない」
 母さんの言葉に、俺はがっくりと項垂れた。
 二週間でCカップのブラジャーが必要になるまで膨らむなんて……俺の胸の馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁっ!!
 「さあ、次はいよいよこれよっ♪」
 満面の笑みを浮かべた母さんが、今度は水色のワンピースを手に近づいてきた。

 母さんっ、そんなものを俺に着せようって言うんですかあぁぁぁ―――っ!?

(おわり)


おことわり

この物語はフィクションです。劇中に出てくる人物、団体は全て架空の物で実在の物とは何の関係もありません。










































 「…………はあーっ」
 「どうしたの? 詩緒里(しおり)ちゃん」
 廊下を歩きながら大きく溜息を吐いた俺に、母さんが声をかけてきた。
 俺はそんな母さんを、軽く睨みつける。「……母さん、その『詩緒里ちゃん』っていうのやめてくれよ」
 「どうして? 詩緒里ちゃんは詩緒里ちゃんでしょ?」
 微笑みながら首を傾げる母さんの言葉に、俺はがっくりとうなだれた。
 「ったく、どうして俺にそんな女の子みたいな名前を──」
 「だって、あなた『女の子』でしょ?」
 「あううっ」
 思わず両手で頭を抱え、うめき声を上げてしまう。
 そんな俺の目の前を、女子高生の集団が通り過ぎていった。襟には真っ赤なリボンタイ、胸に学園のエンブレムが入った落ち着いた色のブレザー、その下には色鮮やかなスカートをフワリと広げ、おしゃべりに花を咲かせている。
 さっき終礼のチャイムが鳴っていたから、放課後になったのだろう。
 制服も可愛いが、それを着ている女の子もみんな可愛かった。そしてまわりを見渡せば同じ制服を着た大勢の女子と数人の職員。女ばかりで男は一人もいない。
 当然だ、ここは近所でも有名な若花女子学園。「女子学園」なのだから、女子しかいるはずがない。そして俺は……
 「俺……来週からあの制服を着て……ここに通わなきゃならないのか……?」



 俺は少し前まで、普通の男子高校生だった。
 それが「エスプラス」という病気だかなんだか判らないものに罹っちまって、身体が女の子へと変わっていった。
 病院で女性化の進行を遅らせる薬を処方してもらったり、いろいろとやったのだが……あるイベントをきっかけにして、病状が一気に進行してしまったのだ。
 医者は匙を投げ、俺は前の学校を退学した。
 家に篭ってる二ヶ月間に、俺の身体は丸みを帯び、髪が伸び、低い声が出せなくなり──
 そしてとうとう俺の身体に……「あれ」が訪れてしまったのである。
 え? 「あれ」ってなんだって?  ば、馬鹿野郎っ、そんなものを俺の口から言わせるんじゃねえっ!!
 ……ったく、うちの両親、特に母さんの喜ぶこと喜ぶこと。お赤飯やご馳走を並べながら「これであなたも大人の女性の仲間入りよ」だって? 仲間入りなんてしたくなかったぜっ!
 見た目も中身もすっかり女の子になってしまったことで、両親はそれまで準備していた若花女子学園への転入手続きを始めた。
 男の俺が女子高なんて……と抵抗したら、母さんが「あなたはもう完全に女の子なのよ」って戸籍謄本を俺に突きつけた。

 三好奈……詩緒里(しおり)? 性別……女? 続柄……長女……長女? ……長女おぉぉっ!?」

 二人とも、とっくの昔に俺の戸籍の変更手続きを済ませていたらしい。
 そりゃあ確かに今の俺は、「肉体的には」女の子なんだろう。すっかり甘い物が好みになっちゃったし、気がつくと髪の毛をいじったりとか女の子みたいな仕草をすることもある……らしいし、「あんなこと」も起きちゃったし……
 それでも……それでも俺は自分のことを男だ、と思っていた。
 鏡に映る女の子を自分だとは思えず慌てて目を逸らすし、ブラジャーやスカートを着ける──着けさせられる時は「女装させられてる」と感じていた。
 なのに母さんはそんな俺を強引に連れ出し、若花女子学園へとやってきた。
 「さすがにこれ以上ブランクが空いたら、勉強の遅れを取り戻せない」という意見はまあ、正しいとは思うんだけど。
 簡単な面接を終えると、俺の転入はあっさりと承認された。面接官の女性教師は、「あなたなら芸能科に転入した方がいいかも」なんて言って笑ってやがった。
 この学園、芸能科があってアイドル志望の学生を受け入れているために、しょっちゅう転入があるらしい。おかげで俺みたいな突然の転入生も抵抗なく受け入れてもらえるし、間が空いて遅れた分を取り返すために補習授業を開いてくれたり、レポートの提出で出席に代えたりしてくれたりと、長期間家に篭っていた身としては実に都合がいい。
 都合はいいのだが……
 制服を作るために保健室で採寸……ああっ、恥ずかしかったっ!
 学園と提携しているブティックがあって、サイズを連絡すると週末には自宅に届くという。
 俺が若花女子学園に転入……つまり……俺があの制服を着て……女子高生に――
 ああ……憂鬱だ。

 「あら? もしかして……三好奈──さん?」

 突然、背後からそう呼び止められて、俺は声のした方へと振り返った。
 「やっぱり……久しぶり」
 振り向いた先に、一人の女性が微笑みながらこちらを見ていた。服が地味なのと長い髪を首の後ろで無造作に縛っていること、大きなサングラスで目の辺りが隠れているのだが……それでもかなりの美人だった。
 俺にはその人が誰だかすぐに判った……判ってしまった。
 「お久しぶりです。……仲街さん」



 「どうも初めまして、三好奈詩緒里の母です」
 「初めまして。……そうかあ『詩緒里』ちゃんかあ」
 学園の軽食コーナーのテーブル席に座り、母さんと仲街さんが挨拶を交わす。こんな施設もあるなんて充実しているというかなんというか。
 「もうすっかり女の子だね。……特に胸のあたりが」
 「あうぅぅぅっ」
 Eカップにまで育った胸に視線を注がれて、俺は顔を真っ赤にして呻いた。仲街さんっ、あんただってFカップは確実にあるじゃないですかっ!
 俺は大きく溜息を吐き、そして仲街さんに言った。
 「そういえば芸能界に復帰されたんですよね。おめでとうございます」
 「ありがとう。本当は『ほとぼりが冷めるまで三年待たなきゃいけない』って言われてたんだけど……『例の件』でエスプラスの存在が公になっちゃったからね」
 仲街さんは嬉しそうに微笑んだ。
 「そ、そうですね……」
 例の件──というのは先月世間を騒がせたニュースのことだ。とある超大国の大統領が、特殊な症例……ま、早い話が「エスプラス」に罹ってしまったのだ。
 今までのケースだったら、かつての仲街さんみたいに公にすることなく引退して世間から身を隠すことになるんだろうけど……投げ出すにはあまりにも惜しい地位だったんだろうな。超大国の大統領は自分が「エスプラス」であることを公表した上で、それまで伏せられていた情報を公開した。
 当然世間は大騒ぎになった。
 もちろん初めは信じない人間も多かったけど、公の場に姿を現すたびに女性らしくなっていく大統領の姿は説得力抜群だった。
 どうも大統領は女性化を積極的に進めていたらしく、若年化も相当進んで、今ではすっかり見た目二十歳くらいのグラマーな黒人美女に変わってしまった。今、超大国では「彼女(?)を初の女性大統領と定義するかどうか」というのがまじめに議論されているとかいないとか。
 おかげで今では「エスプラス」という言葉が世間に広まり、いろいろと話題の種になっている。そういった中で、かつて「エスプラス」に罹って引退を余儀なくされていた人々がインタビューで心境を語ったり、女子として活動を再開したりと、再び世間に姿を現し始めている。
 そして仲街さんも、少し前から芸名を仲街美優(なかまち・みゆう)と変えて芸能界に復帰した。最初は雑誌の写真入り記事とか簡単なインタビューだったが、最近はバラエティー番組にゲスト出演したり……まあ、そこそこ順調のようである。
 「そういえば、仲街さんはどうしてここに?」
 「それはね、この学校にうちの事務所に最近入ってきた子が……ああ、来た来た」
 そう言って美優さんが向けた視線を追ってみると、一人の女子高生が急ぎ足で近づいてきた。
 「お、お待たせしてすいませんっ。美優さん」
 「いいのよ美乃莉(みのり)ちゃん。私も今着いたばかりだし、時間はまだ余裕があるから。それよりスカート直した方がいいわよ」
 そう言って仲街さんが微笑むと、彼女は顔を真っ赤にし、捲れていたスカートの裾を慌てて直し始めた。
 「紹介するわね。彼女は真壁美乃莉(まかべ・みのり)ちゃん。うちの事務所に最近入ってきたアイドル候補生で、先週この学園の芸能科に転入したばかりなんだ」
 「あの、真壁……み、美乃莉です。よろしくお願いします」
 「え、えーっと、み、三好奈……詩緒里です。こちらこそよろしく」
 お互い身体をもじもじさせながら自己紹介する。
 アイドル候補なだけあって顔立ちはかなり可愛い。スタイルも良さそうだし、初々しい感じがかなりの好印象だ。
 そんな真壁さんは俺を見て少し考えるような仕草をしていたが、向き直って仲街さんに質問をした。
 「仲街さん、失礼ですけど……三好奈さんって……ボクと同じ理由でここに?」
 「正解っ。さすがは『エスプラス』同士、よく判ったね」
 「ええっ!?」
 二人の会話に俺は仰天した。
 「そんな、それじゃあ……真壁さんも……俺と同じ『エスプラス』?」
 俺の言葉に、仲街さんと真壁さんが頷いた。
 「真壁さんの家は郊外で小さな工場を経営してね。自分たちは引越しできず、美乃莉ちゃん一人だけ他の場所で生活させる余裕もなかったんだよ。それを知った私が事務所に相談して、アイドル候補として私と同居することになったんだ」
 「ボク……急にこんなことになって不安で……でもよかった、仲街さんや三好奈さんのようにボクと同じ立場の人が他にもいて、みんな頑張ってるんだ……」
 真壁さんが両手を握りしめて瞳をウルウルさせながら言った。その姿を見て、俺の心の中で何かがグッと込み上げてきた。
 俺は思わず右手を差し出し、真壁さんはそれをがっちりとつかんだ。
 「真壁、さん……」
 「三好奈さん……ううん、詩緒里さん、頑張って一緒に合格しましょうねっ!!」
 「……へっ!?」
 言葉の意味が解らず、俺は首を傾げた。「……合格? なにそれ?」
 「だってボクと同じなんでしょ? 『エスプラス』に罹って、この学校に転入して、芸能科で勉強しながらアイドルを目指すって……」
 「えっ、あ、いやっ、ちちち違うっ! 『エスプラス』と、この学園に転入するとこまでは同じだけど──」

 ピッ、ピッ、ピッ── 「……ああ社長? 今、若花女子にいるんですけど、美乃莉ちゃんと同じ境遇の転入生がいて、この子が美乃莉ちゃんに負けないくらいに可愛いんですよ。一緒にオーディションを受けさせてみたらどうかと…………いいんですかっ!?」

 「ちょっと待ってください仲街さんっ! 今、携帯でなにを話してるんですかっ!?」
 「うちの社長が先方に話をつけてくれるそうだから、今から一緒にオーディションを受けられるよ。よかったね詩緒里ちゃん」
 「よくありませんっ!! だいたいなんのオーディションなんですか?」
 「『TSF44』の研究生オーディションだよ」
 「それって……今人気のアイドルグループのっ?」
 「やったあ! ボク、詩緒里さんと一緒なら合格できるような気がします♪」
 「まあ詩緒里ちゃん、よかったわね」
 真壁さん、だからそれ間違ってますっ!! 母さん、手を叩いて喜んだりしないでくださいっ!!
 「さあ、善は急げだよっ」
 「詩緒里さん、一緒にデビュー目指して頑張りましょうね♪」
 「詩緒里ちゃーん、いってらっしゃーい」

 「だからぁっ、俺はアイドルなんかなりたくないってぇぇ────っ!!」








































 そして次の週。

 「みなさ〜ん、彼女が今日から芸能科に転入してきた──」
 「み、三好奈……詩緒里……です」

 ああっ、太ももがスースーする。この制服、スカートが短すぎるぞっ!!
 それに……芸能科に転入なんてっ。
 「ねえ聞いた? 彼女、プロデューサーに一目で気に入られて美乃莉ちゃんと一緒にオーディション合格したんですって」
 「顔も可愛いしスタイルもいいし……納得かも」
 「詩緒里ちゃん、仲良くしようね」
 「しおりん、お昼一緒に食べない?」
 「しーちゃん、トイレ行こうっ」
 「あ……あはははは──」

 頼むっ、誰か嘘だと・・・悪い夢だと言ってくれえぇぇぇっ!!





三好奈詩緒里(illust by MONDO)

(おまけのおわり)



あとがき
 どうも、ライターマンです。

 「He(彼)+S→She(彼女)」というのは以前どこかで読んだWeb小説が元になっています。
 そっちの方はたしか一夜にして変身していたと思うのですが、こちらの方は病気らしきものにして徐々に変化するようにしてみました。
 本当は「油断すると女の子として振舞ってしまい慌てふためく」というのを前面に出そうかと思ったんですが……
 今回はおまけの方も苦労しました。
 当初の予定では「まだ男の部分が残っている状態でオーディションを受けることになってしまい、衣装を着せられたり歌やダンスをやらされたことで完全に女の子になってしまう」つもりだったんですが、いろいろと合わない部分が多くなって断念しました(泣)。

 この作品を読んで楽しんでいただけたら幸いです。
 それではまた。


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