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「ゴッドファーザー乙女」、前回の三つの出来事!

ひとつ! 手のつけられない不良たちのクラスに美人教師、大原乙女がやって来た。
ふたつ! 乙女はかつて不良で、しかも男だったという。
そしてみっつ目! 不良たちの目の前で、二人の少年が美少女に変貌した
……

Count the Students! 現在、少女になった男子生徒は──

「尾藤美優(尾藤 蛮)」「近田千鶴(近田忠一)」




「けっ、クソ面白くねぇ……」

 その日、秋津明義は不良らしく(?)学校をサボっていた。
 うさばらしにとにかく暴れたい。授業中だろうが関係ねぇ……そう思い立ち、積年のライバルが仕切る隣町の高校へと、たったひとりでカチコミ(殴り込み)をかけたのである。

「おらぁっ高岩ああっ!! タイマン張りに来てやったぜええっ!! 出てきゃがれっ!!」

 校門から押し入るや否や、挑発……もとい、鬱憤を爆発させるかのように叫ぶ。
 ところが、

「お待たせしましたぁ♪」

 何故か秋津の目の前に現れたのは、セーラー服の女子生徒。
 短い髪を左右で結わえたキャンディヘアで、大きめのメガネが彼女の可愛らしさを強調していた。
「あ、秋津さん、お久しぶりですぅ」
「あん? 誰だお前?」
 秋津の“標的”はこの高校に通う長身の男子……自分からは決して手を出さないが、売られた喧嘩は必ず買う硬派中の硬派。
 その名は高岩清良(キヨシ)。そいつと一戦交えて溜まりに溜まりまくったストレスを晴らそうというのだ。
 ちなみにこれまでは全戦全敗。しかし、憤怒の炎がめらめら燃え上がっている今なら、奴を血だまりスケッチにする自信がある――
「俺は高岩に用があるんだ。とっととうせやがれっ!!」
 こいつ、俺のこと知ってるのか? 一瞬(不覚にも)ときめいてしまったことを否定すべく、秋津は彼女にすごんでみせた。
 しかし、
「はい、あたしが高岩せいらですけど?」
「へっ?」
 屈託のない笑顔でそう言われ、秋津の目が点になった。
(あ〜そういやあいつの名前、ほんとは「せいら」って読むけど、女みたいだからってまわりには「キヨシ」って呼ばせてたとか前に聞いたことが――)
 唐突にそのことを思い出し、同時に秋津の背筋に、ここのところ何度も感じている怖気が駆け上がった。
「ま、まさか……お、お前も女になっちまったのか? 高岩っ」
「えっ? やだ、どうして知っているんですか? 秋津さん」
 目の前の少女は小首を傾げて、可愛い声で無邪気に微笑む。どこからどう見ても100%女の子だった。
「…………」
 次の瞬間、秋津の怖気は怒気に変わり、マキシマオーバードライブした。

「あんのカマ先公おおおっ!! ここでもなんかしやがったのかあああああっ!?」
「ああっ、ち、ちょっと! あたしに用があるんじゃ――」

 少女の問いかけを無視し、秋津はくるりと回れ右をすると、砂煙を上げて全速力で来た道を駆け戻っていった――





ゴッドファーザー乙女

Lesson2 「魔法先生オトめ」

作:城弾





秋津明義(illust by MONDO)



「くぉらああああぁっオカマ野郎ぉっ!!」

 絶叫とともに秋津がZ組の教室のドアの横の壁をぶち破ると、オカマ野郎――もとい、担任教師である大原乙女の元には既に「先客」がいた。
 Z組に集められた不良生徒のひとり、堂島大介が教壇の乙女に詰め寄っていた。側頭部のソリコミがトレードマークだ。
「せんせーよぉ、いつになったら尾藤と近田の奴、元に戻るんだよぉ?」
 ぐるりと身体をねじって、乙女を下からねめつける。
 ちなみにまわりはそれを黙って見ている。誰も堂島に同調しようとはしない。
 もちろん多勢に無勢を嫌ったのではなく、乙女に突っかかって女子にされたくないから、傍観しているのだ。
(先にやっていたか……ならここは譲ってやるぜ、堂島)
 全速力で戻ってきて息が切れ、ちょっと気がそがれたのもあって、まずは様子見だ。
「なぁよぉ、せんせーよぉ……」
「元にって、あの子たちは正真正銘の女の子よ」
 乙女は相変わらずのスーツ姿。どうやら「教師はこうあるべし」というポリシーかららしい。
「あぁ? あんまりすっとぼけてるとあんたにも全部パンチ食らわしてやるぞごらぁっ!!」
 精一杯すごんで目を剥く堂島。しかし、奇妙な単語が周囲の耳に引っかかった。
「全部?」「パンチ?」
「……あ」
 怪訝な表情をする乙女と秋津に、堂島は表情をさっと変えた。「な、なんでもねぇっ! ハートキャッチなんてされて――」
「ハートキャッチ?」
 どうやら墓穴の底で、さらに墓穴を掘ってしまったようだ。
「堂島〜、オメーまさかアニオタか? アニメキャラに『萌えー』とか言ってる気持ち悪い奴なのか?」
 秋津はどこぞの都知事のように、「オタク」に対してあまりいい感情を抱いていない。
 その割にはいろいろなネタにツーカーで返すことができるが。
「うっせーよっ。話の流れってやつだろがっ」
 まあともかく、その嫌悪感は堂島にきっちり伝わったようだ。
「う……ううっ、あ、あんまりだ……」
 厳つい大男が、ぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「お、オイ? 何も泣くことは――」
 しかし堂島はその場に崩れ落ち、人目もはばからず泣き出した。
「あぁぁぁぁぁんまりだぁぁぁぁぁぁぁっ」
「…………」
 その有様に、秋津は戦慄すら覚えた。「な、何だ、コイツ。血管ぴくぴくで怒ってくるかと思いきや予想外っ。怒るより逆に不気味なものがあるぜ」
「あんまりだぁぁぁぁ。俺のつぼみがぁぁぁぁ……ばかにされたぁぁぁ」
「ま、待て。別に俺は――」
「不良がアニメ好きで何が悪いんたよぉぉぉぉぉぉっ!!」
 ため込んだ鬱屈を吐き出すように泣き続ける。秋津は思わず引いてしまったが、乙女はそんな堂島をそっと抱きしめた。
「……せ、せんせぇ」
「好きなの? アニメ?」
 乙女の声色や表情に嘲りはない。優しさだけがあった。
 堂島はこくりとうなずいた。まるで小さな子どもが「お姉さん」に優しくされたように。
「注ぎ込む愛情があるのはいいことよ」
「…………先生は……俺のこと、バカにしないのかよ?」
「どうして?」
 キョトンとした可愛らしい表情を浮かべる乙女。
 堂島は因縁をつけようとしていたにもかかわらず、彼女に心を開いた……開いてしまった。
「お、俺……アニメとかマンガとか大好きで……でもなめられたくなくて不良らしくツッパって……アニメのグッズ盗んだりしてこのクラスに放り込まれたりもしたけど――」
(こいつ、そんな理由でここにきたのかよ……)
 秋津は声に出さずにツッこんだ。
「泥棒はいけないわ。でも、人に迷惑かけなければ好きなことをしていいのよ」
 堂島は涙を流したまま、乙女の顔を見上げた。それは、理解者を得たことに対する歓喜の涙。
「そ……それじゃ俺、アニメ好きでもいいのか?」
「ええ。その欲望、解放しなさい」
「……!!」
 やべえっ! そう感じた秋津は思わず叫んだ。「ば、バカ野郎っ! 堂島っ! それに乗るなっ!!」
 だが……遅かった。

「……んあっ!」

 堂島は体の内側で何かが爆発したかのように、背筋をそらしてのけぞった。
 一拍置いて、剃り込みを入れた髪が爆発的に伸びた。それらは勝手に二つにまとまって、頭の左右に垂れ下がる。
 背が一気に縮んで、顔つきも幼い少女のそれになる。
 そしてぶかぶかになったガクランは、以前の二人(尾藤美優&近田千鶴)のような女子の制服にはならず、薄いピンクのブラウスと赤いミニスカート、ボーダーのニーソックスに変化した。
 手にはいつの間にかパステルピンクのステッキを持ち、髪の色もショッキングピンクに変わっていた。
「で、でたーッ。城弾作品にかなりの頻度で出るツインテールがぁぁぁっ」

 バラすな、それを。

「にゃ、にゃあ?」
 当の堂島は、自身の変化に驚いて甲高い声で叫んだ。
「な、なんかこの声で二つお下げだと、バンドのサイドギターって感じがするな」
「くそうっ、堂島の女体化がこんなに可愛いわけがない」

「あら、かわいい……それがあなたの理想なのね」

 騒然となる教室の中で、乙女だけが満足そうに微笑んでいた。
 そして、手にしていた手鏡を堂島だった少女に渡し、その新しい姿を確認させる。
「こ、これが俺?」
 「俺」という一人称がまったく似合わない、高い少女の声。
「すばらしい。新しい堂島君の誕生よ。Happy Birthday! おめでとう」
 乙女の拍手が、新しい少女の生誕を祝した。
「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」
 自分が被害に会わなかったからか、皮肉を込めてあちこちからも祝福の声と拍手が。
 それに戸惑っていた堂島だったが、その表情がだんだん明るくなっていき……
「そうかぁ……先生、この姿になるのは、こんなに素晴らしいことだったんですね」
 何しろ目つきの悪い不良が、アニメ張りの美少女に変わったのだ。
「ええ、では新しい名前をわたしがつけてあげる。その華やかな姿……それならお花の名前、だりあちゃんでどう?」
「だりあ――堂島だりあ……」
 自分につけられた新しい名前をつぶやき、少女は文字通り花のような笑顔を浮かべた。
「あっ、ありがとうございます先生っ。俺……ううん、あたし、これから可愛い娘になれるように努力します」
「…………」

 堂島大介改め堂島だりあ、あっさり陥落。

 そのあんまりな事実から、秋津は目を背けたくなった。だが意地で踏みとどまる。
(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……)
「それじゃ授業を再開します。遅刻してきた秋津くん、この文章を読んで」
 乙女はにっこり微笑んで、心の中でお経のように「逃げちゃダメだ」を唱え続ける秋津を指名した。
「お、俺?」
 乙女の担当教科は英語。当然、英語のリーディング。
 「うるせぇ」とか反発しようにも、目の前でまた一人女子に変えられて、秋津の戦意はもはやゼロに近い。
 仕方なく、言われたままに教科書を持って席を立つ。
 しかしまともに授業を受けてないのだから、まともに読めはしない。思わず変な節になってしまう。
「たーん……とぅ……ばっく……たー……と……たっとっばっ、たとばたとばっ♪」
「秋津くーん、音楽じゃないから歌わないでね〜」
「……歌は気にするな」
 その時、扉が開いて本来男子校にはいないはずの女子が二人、Z組の教室に入ってきた。
 この場でたった今変身した(させられた)だりあをのぞけば、該当者は二人だけ。
「ただいま戻りました……」「遅くなりました……」
 二人――尾藤美優と近田千鶴の声には元気がなかった。
「大丈夫? たくさん怒られたの?」
 心配そうな声で、乙女が問いかけた。
(ふうん……そんなナリでもまだワルの魂が残ってたのかお前ら)
 少女と化した二人だったが、呼び出しを食らうほどのことをしでかしたのだ。
 秋津は内心で喝采するが、
「もうっ、あんなに怒らなくてもいいのにね。校則違反したわけじゃないのに」
 一転、ぷんすか頬を膨らませる美優の唇は、真っ赤に彩られていた。
「全くだ。おしゃれは女の特権なのに」
 近田千鶴の頬は軽くチークが入れられて、まつげも遠目にはっきりと見える――マスカラだ。
 そう、二人とも化粧して登校してきたので、呼び出されていたのだ。
 もっとも男子校に「化粧禁止」の校則なんかないので、美優の言い分にも一理ある。
「…………」
 秋津の顎がだらしなく落ちた。
「二人とも可愛いわよ。でもまだお化粧は早いかな?」
「私、早く先生のような大人の女性になりたくて」
 だんだん「女の色気」がにじみ出てきた千鶴。ポニーテールから見えるうなじが色っぽい。
「うふふっ、でも背伸びしたくなる御年頃よねっ」
 そう言って乙女は二人の耳たぶをチェックする。案の定、ピアスホールが開けられていた。
 近年では男でも珍しくはないが、二人は男の時には開けていなかったのだ。
「えへへっ、可愛いのがあったんですよ」
 「女同士」の気安さゆえか、あっさりとばらす美優。そしてスカートのポケットから小さなアクセサリーを取り出す。
 それはハート形の可愛らしいピアスと、シルバーの指輪だった。
 千鶴もセーラー服のスカートから、同じものを取り出した。どうやら没収は免れたらしい。
 二人とも、「男の先生だと女子のスカートはチェックしづらい」という知恵まで回りだしたようだ。
 もともと男子なのだから、男性心理は熟知していて当然かもしれないが。
「いいでしょー? おそろいなのよ」
「昨日二人で見つけてきたんです。フェイクなんですけどね」
 美優と千鶴は、指輪を左手の薬指にはめた。うっとりした表情を浮かべるのを、クラス全員が恐怖の目で見つめた。
 どう見ても結婚願望のある女性の表情だった。
 完全に頭の中から女になっている……もはや二人の「恋愛対象」は男性なのではないか? そう思わせるほどの表情だった。
「えいっ、ウルトラタッチ!」
 美優はにこにこしながら、千鶴と指輪をはめた手でグータッチした。
「いや、それだとどっちかというと『でてこい! シャザーン』の方が──」
「そっちの方がマイナーだろうがよっ」
「「「…………」」」
 間髪入れずにツッコむ秋津に、教室中の不良たちは全員、心中でツッコみ返した。
 ツッコミポイントが違う──と。



 昼休みの学食。テーブルをともにしている秋津、美優、千鶴、そしてだりあの四人。
 端から見ると秋津が女子たちをはべらしているように見えてしまい、体裁が悪いので人数合わせで男子が二人、それにつき合わされていた。
 髪を金髪に染めた江原栄治と、痩せ型に丸メガネの、一見まともそうだがどこか切れた雰囲気がある福本富士夫の二人だ。
 全員定食を注文したのたが、女子たち三人は明らかに食べるスピードが遅い。
 その上ずっとくっちゃべっているから、余計に箸が進まない。
「そうか……おまえも女にされちまったか、堂島」
「うんっ、でもなってみるとわかるけど、女の子っていいよね。男じゃ何かとオタクは白い目で見られるけど、女の子だとそうでもないし──」
「コスプレとかするの? だりあ」
「するする! 絶対する! こんなに可愛くなったんだもん、やらなきゃ嘘よ」
「ふふっ、楽しそうだな」
 女子たちだけですっかり盛り上がっている。
「まったくよぉ、おめぇらしまいにゃ嫁にでも行くんじゃねぇのか?」
 肘をついて、呆れ返ったように言う秋津。
「お嫁さん……いいなぁ、あたしはやっぱりウェディングドレスがいいなぁ……」
「私はやはり和風でいきたいな」
「…………」
 ごく当たり前に「お嫁さんな自分」を想像している。
 そんな彼らの態度に、秋津はイラっとなった。
 どんっ! とテーブルに手を突いて彼女たちをにらみつける。「おいっ、てめーらも不良だとかなんだとかまで言われたワル中のワルだったんだろがっ。少しは硬派らしくしやがれっ。……そう、あの人のように――」
「「「…………」」」
 さきほどから怒ってばかりだった秋津が、何かに憧れるような表情を浮かべる。
 対して美優たちは、「まぁたその話?」とうんざりした表情になった。
「そいつはもう耳にタコができたぜ……」
 黙って食事をしていた江原が、ぽつりとつぶやいた。食べ終わって箸を置く。
 秋津は彼らを鋭い目つきで見回すと、
「いいから聞け。あれは俺がガキのころだった。高熱を出してオフクロが俺を医者につれていこうとしたがその日は都内にはありえないほどの大雪で車の車輪がスリップして途方にくれていたときにその人は現れて男が命の次に大事にしているガクランを車輪の下にしいてスリップから助けてくれて俺自身の命も助かったんだ。俺にとってあの人は英雄で、あの人にあこがれて同じ髪型にしてんのさ。後であの人が『伝説の不良』と呼ばれてこのガッコにいてたことを知ったから、ここに進学したくらいだし」
 改行すらしないで一息で一気にまくし立てた。そして恍惚の表情になる。
「それが言いたくて私たちを呼びつけたのか?」
 千鶴の言葉は質問と言うより確認だった。
「思うんだけど……S英社に怒られない? この話」
 い……いや……元々パロられることの多い作品だし、この程度は大目に見てくれると思う……たぶん(弱気)。
「とにかくよぉ、俺の心の中にはいつだってあの人がいるんだ。だからお前らも思い出せ、不良としての、ワルとしての誇りをっ。そうすりゃ男に戻れるかもしれねーぞ」
「それなら私の中には、既に理想の男性がいる」
「へえ……」
 千鶴のその言葉に、秋津は少し嬉しくなった。「なりたい自分か。どんなだ?」
「ああ、やはり私より強い男だな。男ならではの力で私を軽々と抱きかかえて……ば、ばかっ。何を言わせるんだっ」
「…………」
 頬を染めて口ごもる千鶴。元は男と知っていても、可愛らしく見えた。
「誰が理想の恋人像を話せと言ったよ? しかも男が相手かよ……」
「えー、だって女の子だもん。あたしはちょっとくらいエッチな男子がいいな。そのくらい積極的なほうが」
「あたしはオタクな男の子。自分を持ってるもん。それに趣味が一緒の方が楽しいわよ。二人で同人誌を作ったりとか」
「あのなぁ……ん?」
 秋津はそこで、あることに気がついた。

(これって……みんな元の自分のことじゃねぇのか? どういうことだ?)

 秋津はない知恵を絞って仮説を組み立てだした。三人を女性化させた、乙女の「魔法」についての。
 しかし、そこへくだんの「魔法先生」が現れて、その試みは中断させられた。
「あら? 楽しそうね」
「ちっ……あっち行きやがれカマ野郎っ」
 ランチのプレートを手にして朗らかに声をかけてくる乙女に、邪険に応じる秋津。
 だが彼女は特に気にもせず、ランチについていたプリンをテーブルに置いた。
「ねえ、誰かこれ食べてくれないかな? 職員室でチョコレートを食べ過ぎちゃって……」
「女ですから、甘い物の誘惑には勝てませんよね」
 乙女の言葉に同意する千鶴。
 そして乙女は、江原が一瞬、目の前のプリンを欲しそうに見つめたのを見逃さなかった。
「それじゃ、江原くんにあげようかな?」
「プリンだぁー。けっ。俺は不良だぜ。プリンなんて女子供の食うものは……」
 喜んで手を伸ばしかけたが、「不良のスタイル」としてあわててそれを突っぱねる江原。しかし、途端にその体が縮みだす。
 それも美優たち三人の少女よりも、さらに小さくなっていく。
 髪の毛も快活な印象のあるショートカットに変わり、ガクランの下のTシャツが縮んで可愛い女児向けのキャラクターものになる。
 ズボンがミニスカートになり、ガクランがピンクのカーディガンに変わる。
 そして何処からか江原の潰れた学生カバンが飛んできて、その小さな背中に張り付き、真っ赤なランドセルへと変化する。
「え、江原ッ? な、なんでお前までっ?」
 小学生くらいの女子「児童」に変わってしまった江原の姿に、秋津は絶句した。
「江原くん、あなた今うらやましいと思ったんでしょ? 人目を気にせず甘いデザートを食べられる『女、子ども』が」
「それでかよっ!」
 何が変身の引金になるか、わかったもんではない。
「か……かーわいぃ〜っ」
「ちっちゃーい」
「ほっぺぷにぷに〜」
 困惑している当人を無視して、美優と千鶴、だりあは「母性本能」を刺激されたのか、ちっちゃな女児になった江原の体を交代で抱きしめる。

「あ、あたしも早く大人になりたいな……お姉ちゃんたちみたいになりたい……」

 三人のスキンシップで、江原本人もだんだん「女の子」としての気持ちが芽生えてきたらしい。
 彼女の言葉に、内に秘めた女心を再度刺激される三人の少女。きゃーきゃー言いながらかわるがわる抱きつき直す。
「あらあらすっかり仲良しさんね。それじゃあ、あなたはエリちゃんということで」

 江原栄介改め江原エリ。肉体年齢10歳だった。

「……ったく。ガキの高校生なんてどこの飛び級だよ」
 黄色い声にしかめっ面を浮かべ、悪態つく秋津。
 ふと目を向けるともう一人の男子、福本が青い顔で震えていた。
「おいどうした? もうびびるほどのもんでもねぇだろが」
 何しろこれで、四人の男子が女子に変わってしまったのだ。だが、福本はうわ言のようにぶつぶつつぶやきだした。
「ついに、ついに江原までが…………つ、次は俺だ……俺の番だ……」
「はぁ? 何だよそりゃ? いくらなんでも警戒し過ぎだってぇの」
 軽く笑い飛ばす秋津に、福本は真剣な表情で向き直った。「秋津……お前、『法則』に気がつかないのか?」
「法則だぁ?」
 自分もそれを考えようとしていた。だが、福本の言おうとしていたのは違っていた。
「尾藤、近田、堂島、そして江原……アルファベット順だということにッ!」
「な、なんだってー!!!」

 だからそういうことをばらすなと……

「ああ、そういや作者の奴、当初は不良A B Cとしていて面倒だからってそれを元にネーミングしたんだっけな。ところでLとかQとかXはどうするつもりなんだか」

 そんなもの、とばすに決まっている。

「Eの次はF……頭文字がF・Fの俺が次だ…………あああもうだめだっ……俺はもう男じゃいられないっ!!」
 激しく気持ちが落ち込んでいく。そして福本はついに叫んだ。

「絶望した! しょーもないことで性転換することに絶望した!」

 ・ 古い薬と肺炎で性転換
 ・ 服に着られて性転換
 ・ 太古の遺恨で性転換
 ・ 放射線で性転換
 ・ 指輪はめたら性転換
 ・ 子宝の湯に浸かると性転換
 ・ 墓参りすると性転換
 ・ 大ぐらいだと性転換(巻き添えあり)
 ・ 酔っ払うと性転換
 ・ 人体実験で性転換……臨床実験と言いなさい。


「……はたしてそれは絶望かしら?」
「!!」
 ひっそりとその後ろに立っていた乙女。秋津ですら気配を感じ取れなかった。
「あ、あんな姿にされて──」
 希望なんか持てるか!? と福本は言おうとした。しかし眼前の光景は仲むつまじい少女たち。
 あくまでも明るく、そして健全だ。
「全ての希望を絶たれて……そしてとことんまで堕ちたら、新しい希望が見つかるわよ。破壊からしか再生はできないのよ。そう……かつての私のように」
 不良として社会からドロップアウトした自分を破壊して、新しい姿でやりなおす。
 福本にはそれが、ひどく魅力的に思えた。
「せ、先生、俺……あれれっ?」
 いつの間にか福本は、ちゃっかりと少女になっていた。まるでどこか明治や大正の「女学生」を彷彿とさせる袴姿だった。
 身長や胸は控えめ、ただしすらっとした細い腕と、何よりつややかな直毛の黒髪が美しかった。
 まっすぐに切りそろえられた前髪が、なおさらレトロだった。
「まあ素敵。大正浪漫ね」
「素敵なもんかよっ。勝手に女に変えやがってっ!」
「でも、いやな気分じゃないでしょ?」
「…………」
 確かにそうだった。あれほど恐れていたのに、いざ女子になってしまうと、そうでもなかった。
 そして、女子になってしまったから、もう恐怖する必要がなくなってしまったこともあった。
 福本は人生のリセットができたことで、新たな希望を見出した。
「先生、彼女にも新しい名前を」
 千鶴が言った。女の子になったばかりのエリを含めて、みんないい笑顔を浮かべている。
 蔑みや哀れみはない。気分のいい微笑みだった。
「それじゃあ、文乃ちゃんで」
「文乃……それが新しい俺の──私の名前……」
「ようこそ、文乃ちゃん」
 美優が手を差し出し、新しい少女を歓迎する。
「やっぱり決め台詞は『二回死ね』よね」
 もうアニオタ趣味を隠す必要がないから、さっそくネタに走り出すだりあ。

 泥の中をもがいていたのが、雲の上に抜けた気分になった福本富士夫改め福本文乃だった。

「ああ、ここに私の希望があったのねっ。乙女先生っ、感謝します」
「がんばってね」
「…………」
 ほほえましいやり取りをよそに、頭痛薬を飲む秋津であった。



「ふっざけてんじゃねぇぞっ」
 秋津は不本意ながら職員室に出向いていた。もちろん乙女に対してのいちゃもんを他の教師たちにぶつけるのが目的だ。
 校長に直接……とも思ったが、実はろくに校長の顔を覚えていない。校長室に出向けば会えるのはわかっているが、なんとなく敷居が高い。
 そこで、まずは乙女の前にZ組の担任だった男性教師をとっ捕まえようと出向いてきたのだ。
 ところがその元・担任が見当たらない。秋津は職員室の入り口から中をきょろきょろと見渡した。
(まさか……音古河の野郎も女にされたのか?)
 そんなことを考えていたら、いきなり眼前にとんでもない男が現れた。
 「ゲイ」と言われて連想するレザースタイルのマッチョ。ディップで髪をオールバックになでつけ、ご丁寧に取ってつけたような口ひげまである。
「お……お前、音古河っ!?」
 女性化した美優や千鶴は、そのまま家族にあっさり受け入れられた。
 それと同じように、秋津もこのマッチョが元の担任、音古河素樹(おとこが・すき)だと何故か理解できた。
 ちなみに元々は、きわめて細い女性的な男性だった。その風貌からZ組の連中は彼を勝手に「ホモ」呼ばわりしていたのだが――

「秋津……や ら な い か」

 ……それは直球ど真ん中だった。
 レザーベストのジッパーを下ろしながらずいっと近づく音古河。一瞬で背筋が凍りついた秋津は、半ば反射的に彼を殴り飛ばした。
「しっ、職員室で同性の教え子にアプローチかける教師がどこにいるっ!?」
「いいじゃないか。恋愛は自由だ。私は解き放たれたんだ」
「……! もしかしてあのオカマ──大原のせいか!?」
 しかしだとしたら、なんでまたコイツだけは女にならない?

「彼女はすばらしい。私の性癖を蔑まず、こうして理想の姿へと導いてくれた」
「理想の姿!?」

(そう言えば、尾藤の奴は巨乳の女を欲しがって自分がそうなった。アニオタの堂島もアニメみてーな女に──こいつはもしかしたら……)
「…………」
 本来の目的を忘れ、秋津はひとつの考えを固めた。



 この日の最後の授業は、ロングホームルーム。そこで新たに少女となった三人……だりあ、エリ、文乃が紹介されていた。
 その「変わり果てた」姿に再度恐怖する不良たち。だが反面、自然に明るく振る舞う彼女たちにあこがれるものもいた。
 秋津はどちらでもなく、何故か自信満々な笑みを浮かべている。
「それじゃみんな、彼女たちとも仲良くしてね」
 乙女がその透き通る声で言い、アニメ風美少女、小学生女児、和風少女はぺこりと頭を下げた。
 秋津はそのタイミングでひょいと片手を上げ、いきなり切り出した。
「せんせーよぉ、ひとつ聞かせてもらえねーかな?」
「何かしら? 秋津くん」
「せんせーはさぁ、どうしてその姿になったんだ?」
 一応「先生」と呼んではいるが、単に話を円滑に進めるためだけの目的で、乙女に対しての敬意などひとかけらもこもっていない。
 秋津は乙女からそれ──不良の男子生徒だった乙女が女性になったいきさつを聞き出して、自分の「仮説」の裏づけをしようとしていた。

「そうね、それもいいわね……それじゃ話してあげる。あれは私がみんなくらいの頃、まだ男の子だった頃の話よ──」

 乙女は遠い過去を思い出して語りだした……

 高校二年の乙女──このころはまだ大原 修(おおはら・おさむ)という名前の男子で、そして「不良」だった。
 背はさほど高くはなかったが、男前でリーゼントがびしっと決まっていた。

 修が従うのは自分だけ。自分の掟にのみ忠実だった。納得がいかなければ絶対やらない──それが彼の掟だった。
 誰かと衝突したら、場合によっては叩き潰す。
 暴力の対象は同類である不良だけにとどまらず、何人もの教師を病院送りにしていた。

 ある日のこと、今は女教師として通うこの学校で、修は喧嘩をしていた。
 腕っ節の強さは校内で知らないものはいない。誰も彼を恐れて近寄らない。彼自身もそれを「勲章」と考えていた。
 そしてその強さを耳にして、彼を倒して名を上げようとする者も少なからずいた。
 それを学校で迎え撃ち、「公開処刑」するのがある種、修の趣味と化していた。

 今回はエキサイトし過ぎて、相手を殺しかねないところまで追い込んでいた。
 誰もが「むごい」と思っていた。しかし頭に血の上った修に意見するなど、死にに行くようなものだ。誰も止めようとはしない。
 ところが一人の老人がふらりと現れてそこへ割って入ると、修の繰り出したパンチを軽々と受け止めた。
 そしてその勢いを利用して、彼の体を投げ飛ばした。

「な……っ!?」

 見守る「ギャラリー」の前で、地面に仰向けに叩きつけられてしまう修。
 もちろん見物人の中には彼に反感をもつ者もいた。「無様ね」と笑い声が修の耳に聞こえてきた。

「ほれ。立てるか?」

 当の老人は、修に「処刑」されかかっていた学生を助け起こしていた。
 小柄な老人だった。髪は真っ白。中国をイメージさせる衣服を身に纏っていた──

「てめぇっ! 何のまねだ!?」
「お前さんこそ何のつもりじゃ? 勝負ならついていたであろう……その若さで外道に落ちたいか?」
「てめえが地獄に落ちろっ!」

 修は老人に近寄ると、問答無用で蹴りを見舞った。いわゆるヤク……ケンカキックだった。
 しかし老人はそれを軽々とかわし、起き上がりつつ「背中」でその脚を払う。

「わわっ!?」

 また転ばされた……二度までも恥をかかされた。修の心が殺意で満ちた。
 怒りのままに殴りかかるが、しかし一撃も当たらない。

「そんな攻撃では百年経っても当たらんわい。惜しいのう……いいものを持っておるのじゃが──」
「ぬかせぇっ! ぶっ殺してやるっ!!」
 今の乙女からは想像できないほどすさんだ言葉遣い。しかし修はとうとう一撃も当てることができず、先にやってたケンカの疲れもあり、ばてて座り込んでしまった。

「ひょほほ……そろそろ暑くなるというのにタフな奴じゃ。一発ですむところをこれだけ手数を繰り出すのじゃからな……」
「ば……ばかに──」

 もう口も利けない……喉がカラカラだ。

「よかろう、暇つぶしにお前を鍛えてやろう。獣の拳ではなく、人の拳へと導いてしんぜよう」
「て……てめえ………何もん、だ?」
「通りすがりの拳法家じゃよ。覚えておきなさい」

 それから「修行」が続いた。
 といっても、修が老人に素直に従ったわけではない。とにかく拳を繰り出し、通りすがりの拳法家──「老師」がそれを避けるだけだ。
 しかし、修の拳は一度も当たらない。かすりもしない。いつしか彼の動きは、無駄がそぎ落とされ、洗練されていった。

「そうじゃ、女人のごとく振舞え。女は非力じゃからな。その動きを真似れば無駄な力を使わずにすむ」
「るせえっ!」

 怒鳴りつつも、知らず知らずのうちに無駄な振りや溜めがそぎ落とされ、動きが小さくなっていく……

 修と老師の「戦い」は続く。だが、いつしか彼は目の前の老人に敬意を持ち始めた。
 「不良」と忌み嫌われ、両親すら見放した彼に対して、ここまで関わってくれた……その心に、彼もまた心を開き始めたのだ。
 そう、二人は「拳で語り合って」いたのである。

 しかし、さんざん拳を繰り出しても、それでも修は老師に一撃もくわえることができなかった。
 とうとう彼は音を上げて、老師に強さの秘密を請うた。

「柳に風」

 それが返答だった。

「なんだよそれは?」
「どんな荒れ狂う嵐とて、やんわりとした柳の枝は折れぬ」
「……そうか! 俺はあんたに勝ちたい一心だけで、ひたすら拳を打ち続けていたが、それはすべて流された」
「壁に拳をぶつければ拳は痛むし、壁も痛む。だが包みこまれれば誰も痛まない。そして攻撃をやめさせるにはそれで充分……」

 老師は修の手を、己が両手でそっと包みこんだ。

(暖かい……なんて優しい手だ。俺の手は人を殴り続けて荒れているのに、本当に強い人間の手はこんなに優しいのか……)

 修の中で何かが変わった。

「修よ。包みこむ大きな心を持て。強いものとは優しいものだ。さあ、生まれ変わった姿を思い浮かべてみよ」

 修は老師に言われるまま、目を閉じてイメージしてみた。全てを包みこむ、優しい自分を。
 脳裏に浮かんだそれは女性の姿だった。
 小さな動きの、そして敵意を微塵も感じさせない笑顔の女性だった。

(これが……俺の求める姿? ……!?)

 最初に感じたのは胸……そして体のいたるところから違和感を覚えて、修は目を見開いた。

「な……っ、なんだぁっ?」

 背が縮みはじめていた。逞しい肩は優しげななで肩に、厚い胸板は優しい二つの膨らみに──
 割れた腹筋はなだらかに変わり、ウエストがくびれていく。
 もともとがっちりしていた腰が、ふっくらとした安産体型へと変わる。
 太い腕は華奢な細腕になり、脚も細くなる。
 肌の色が健康的な白になり、顔つきは優しげな女性のものに。
 リーゼントだった前髪がさらさらと落ちて後ろ髪が異様なスピードで伸び、やや明るい色の癖っ毛が背中、肩の下のあたりまで達した。
 その服装も、ガクランがボレロに、ワイシャツがスクールブラウスに、ズボンが大きく変化してジャンバースカートになる。
 履いていた革靴も、ローファーに変わった。

「こ、これは無限塾の(女子)制服……なっ!? 何だよ? この声?」

 口から出る声も、透明な女声になっていた。
 そう、修は女子高生へと変化していた──

「ほほうなるほど……女人か。それも道理」
「し……師匠っ、どうして私、こんな姿に──女になったのです?」

 いつしかその口調まで、女性的に変わっていた。

「うむ、女人の大きな愛の前には、男の猛りなど無意味。修よ、お前は『男』という枠すら飛び越えたのだ」
「すると……この姿が私の理想だと?」

 老師は大きく頷いた。
 修だった少女の顔に、喜びの表情へと浮かんでいく。

「ああ……私は荒れ狂う獣から、やっと人になれたのですね……」

 歓喜の涙を流しつつ、彼女は老師の手をとって謝意を示した。

「老師、お導きありがとうございました」
「うむ……それほどのことをなしたお前だ。同じように道を踏み外した者たちを導くこともできるじゃろう」
「はい、やります。私、先生になります。そしてかつての私みたいな不良生徒たちを更生させていきます。この全てを優しく包み込む心と体で」
「人生の目的が見つかったか。では修よ、お前に門出にふさわしい、新しい名前を与えよう」

 老師は修が変じた少女を改めて見つめた。
 彼女に男性的な面影はもはやない。そこから思いついた名を口にする。

「よろしい。お前は今日から乙女──大原乙女だ」
「はい、ありがとうございます。私、大原乙女は今から教師を目指します!」


「それから猛勉強して、何とか先生になれたのよ。そしていくつも学校を渡り歩いて、今はここにいるの。……どう? 参考になったかしら?」
 まさか自分自身すらも女性に変えていたとは……それでは他人など、なおさら簡単に変えられそうだ。
 Z組の不良たちは、乙女のその力に改めて恐怖した。
 しかし、秋津だけは不敵な笑みを浮かべてうなずいた。「……ああ、なったなった。あんたの『魔法』の秘密がよぉくわかったぜ」
 秋津は席から立ち上がると、乙女に向かって人差し指を突きつけた。
 無礼千万な行為だが、“謎解き”のお約束なのでやってしまう。

「あんたは自分でも気がついてなかったらしいが、何かの能力者だ。そしてその力を最初に自分自身に対して発動させた」

 探偵もののクライマックスで犯人を暴く気分。
 秋津は口調も滑らかに、乙女の「魔法」を謎解きしていく。

「どこかで読みかじったが、人間には理想の異性が心にあるとか……アミバとかいったか?」

 それを言うなら男性の場合はアニマ、女性の場合はアニムスである。

「そうっ、あんたの“能力”は、『心に潜む理想の人物と現実の自分を入れ替える』ことだっ」


 大原乙女のスタンド 「ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー」

破壊力−なし スピード−なし 射程距離−C
持続力−A 精密動作性−B 成長性−なし

 能力 … 現実の自分と心の中の理想の異性と入れ替える。
  そのため男が女性化した場合はいきなり女性的になる。
  また理想を反映させているので美人が多い。

(A−超スゴイ B−スゴイ C−人間並み D−ニガテ E−超ニガテ)


「すっごぉーい、そうだったんだぁ……」
「…………」
 秋津の説明に手を叩いて喜ぶ乙女。
 拍子抜けする秋津だったが、まだだ……まだ勝利宣言が残っている。
「けどなぁ、その『魔法』は俺には通じないぜ。ホモの音古河が女にならずにマッチョゲイになったのがその証拠だ」
 そうだ。自分の理想像が女でなければいいのだ。そうすれば女にされることはない。
「そうさ。俺の心にはいつも憧れの『あの人』がいるからなぁっ!」
 もう何も恐くない。ここで秋津は憧れの存在──『伝説の不良』の話をした。
 最高に気持ちよく、嬉々として語るそれに、クラスメイトの大半は「またか」とうんざりした表情を浮かべた。
 逆に乙女は、それを興味深そうに聞いていたが、いきなりぽんと手を打った。
「あら、懐かしい。確かにそんなこともあったわねぇ……」
「……へ?」
 なんだと? このリアクションはいったいどういうことだ?

「それじゃあの時の自動車にあなたがいたの? 病気は大丈夫だったみたいね。こんなに立派になったんですもの」
「ま、まさか……」

 天国から地獄。まるで魔女を倒してどや顔浮かべた直後に頭からかぶりつかれて噛み殺されたような、話の展開――
「ええ、それって男の子だったときの私みたいね」
「……んがっ!?」

 ぴしぃっ!

 秋津の心にヒビが入った。
 大事にしてきた思い出を破壊された衝撃は、余人には測り知りない。
(う、う……嘘だろっ!? 俺が髪形を真似るほど憧れた『伝説の不良』が…………目の前のオカマ!?)

 秋津は現実を直視出来なかった。
 現実逃避と妄想の中間を漂い続ける。
 そして秋津は泣きたいと思っても泣けなかったので、考えるのをやめた。

「どうしたの? 秋津くん。ぼーっとして……おーい? 聞こえてる〜?」
「先生、そっとしてあげておいてください。今はそれが優しさだと思います」
「「「…………」」」

 千鶴の言葉が、クラスの総意だった。



 次ぃ〜回っ!
 秋津のこの手が真っ赤に燃えるっ。
 果たして彼は、この衝撃から立ち直れているのかっ!?







あとがき

 「ゴッドファーザー乙女」のLesson2です。
 起承転結の『承』で。
 不条理ではありますが女性化の原理などに理屈付けで。

 今回はパロディが暴走気味(笑)
 メタ発言も増量ととんでもない展開に。
 けどこの作品に関してはかなり制約がゆるいのでやっちゃいました(笑)

 冒頭の『高岩せいら』は言うまでもなく『戦乙女セーラ』のそれで。
 EPISODE40『少女』とリンクさせてあります。
 とはいえセーラを書いていた時は『GFO』は構想すらなく、完全に後付けですが。
 このリンクが構想にあり、季節は同じ秋ごろの設定になってます。

 乙女を鍛えた師匠は当初は「機動武闘伝Gガンダム」のマスターアジアのイメージでした。
 しかし受け流すタイプと言うこともあり飄々とした人物に変更。
 それにマスターはファンも多いので余計なトラブルを避けて。

 秋津のあこがれた「伝説の不良」が実は乙女の変身前と言うのはある人のアドバイスを受けて。
 この場を借りてお礼申し上げます。

 劇中にある通りネーミングはアルファベットで。

 それでは「ゴッドファーザー乙女」Lesson3『ハンター・ミッション』でお会いしましょう。

 お読みいただきましてありがとうございました。

城弾










−おまけ「パロティ原典集」−

「魔法先生オトめ」
 今回のサブタイトルは、「魔法先生ネギま」から。

「前回の三つの出来事」
 「仮面ライダーOOO(オーズ)」は他の平成仮面ライダー同様、基本的に二話でいちエピソードが完結する。
 「オーズ」では後編の出だし(アバンタイトル)で、前編を「三つの出来事」で振り返る。

「血だまりスケッチ」
 「魔法少女まどか☆マギカ」のこと。
 キャラクターデザインが蒼樹うめ先生、シナリオが虚淵玄さんなので、放映前からこう呼ばれていた。

「はい、あたしが高岩せいらですけど?」
 スペシャルゲスト?は「戦乙女セーラ」の主人公、高岩清良(せいら)。
 episode39で完全女性化し、episode40で女子として登校している状態での遭遇。くわしい顛末はこちらをクリック

「マキシマオーバードライブ」
 「ウルトラマンティガ」に登場した、超光速航宙システムのこと。

「ドアの横の壁をぶち破る」
 「人造人間キカイダー」に登場したキカイダーのライバル・ハカイダーは、キカイダーとの戦闘中に突然プロフェッサー・ギルの呼び出しを受け、それに腹を立ててわざわざ指令室のドアのすぐ横の壁をぶち破って入ってきた(そのあと天井突き破って出ていった)。

「全部パンチ」
 「ハートキャッチプリキュア」の主人公、キュアブロッサム(花咲つぼみ)の必殺技。
 ちなみにどう見ても「パンチ」じゃなくて体当たりである。

「いろいろなネタにツーカーで返すことができる」
 「這い寄れ! ニャル子さん」の主人公兼被害者(笑)八坂真尋のこと。
 自分の投げた古めのネタにもちゃんとツッコミ返してくれるから、ニャル子さんは真尋にベタ惚れなのだ。

「あぁぁぁぁぁんまりだぁぁぁぁぁぁぁっ」
「な、何だ、コイツ。血管ぴくぴくで怒ってくるかと思いきや予想外っ。怒るより逆に不気味なものがあるぜ」

 「ジョジョの奇妙な冒険」第2部に出てきた敵、エシディシは怒る代わりに泣き喚いて心をすっきりさせる。ちなみに腕を切断された時の叫び。
 そして同じく「ジョジョ」から、上記の場面でエシディシと戦っていた第2部主人公ジョセフ・ジョースターがつぶやいた台詞。

「その欲望、解放しなさい」
 「仮面ライダーOOO」に出てくる異形の生命体グリードは、人間の欲望を元に怪人ヤミーを作り出す。グリードの一人であるウヴァがその際にささやく台詞「その欲望、解放しろ」から。

「城弾作品にかなりの頻度で出るツインテール」
 例1:「PanicPanic」の赤星瑞樹(後期) 例2:「PLS」の高嶺まりあ 例3:「戦乙女セーラ」のジャンス・ヴァルキリアフォーム

「にゃ、にゃあ?」
 該当は多数あるが、ここは「迷い猫オーバーラン」の霧谷 希の口癖。

「な、なんかこの声で二つお下げだと、バンドのサイドギターって感じがするよ」
 「けいおん!」の中野 梓のこと。髪型がツインテールで、担当はサイドギター。主人公からは「あずにゃん」と呼ばれている。

「くそうっ、堂島の女体化がこんなに可愛いわけがない」
 「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」より。

 ※ ちなみに上記三つ(霧谷 希、中野 梓、「俺の妹が〜」のヒロイン高坂桐乃は、いずれも声優の竹達彩奈さんが担当したキャラクター。

「こ、これが俺?」
 TS物の定番台詞(笑)。

「すばらしい」「Happy Birthday!」「おめでとう」
 「仮面ライダーOOO」の登場人物、鴻上会長がよく口にする台詞コンボ(爆)。「誕生」にこだわる会長はのべつまくなし「ハピバースデイっ!」といった感じの発音なのだが、乙女は英語教師なのできちんと発音しています(笑)。

「おめでとう」「おめでとう」「おめでとう」
 「新世紀エヴァンゲリオン」テレビ版最終回のラストシーンから。

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……
 「新世紀エヴァンゲリオン」の主人公、碇シンジの定番台詞から。

「たっとっばっ、たとばたとばっ♪」
……歌は気にするな」
 「仮面ライダーOOO」の基本フォーム「タトバコンボ」成立時には、オーカテドラル(変身ベルト)からこの歌が流れる。
 そして第一話で初めて変身した主人公が、突然流れてきた歌にうろたえたのを見て、腕だけの怪人アンクが口にした台詞。

「ウルトラタッチ!」
 「ウルトラマンA」の主人公、北斗星児と南 夕子は、互いの指にはめた指輪を合わせることでウルトラマンAに変身する。その時のかけ声。

「でてこい! シャザーン」
 「大魔王シャザーン(原題:Shazzan)」より。1000年前のアラビアンナイト風世界にタイムスリップした双子の兄妹チャックとナンシーが、指にはめた指輪を合わせてこう叫ぶと、余裕の高笑いとともに大魔王シャザーンが出現し、ピンチを救ってくれる。

「いいから聞け。あれは俺がガキのころだった。……
 秋津が語った思い出話は、「ジョジョの奇妙な冒険」第4部の主人公東方仗助の思い出そのまんま。

「プリンだぁー。けっ。俺は不良だぜ。プリンなんて女子供の食うものは……
 「ジョジョの奇妙な冒険」第4部、イタリアンレストランでのエピソードの締めくくり。結局は美味しい物を食べて健康にまでなった虹村億康の台詞から。ちなみにこれで水虫が治っている。

「ガキの高校生なんてどこの飛び級だよ」
 該当は多数あるが、ここは「あずまんが大王」の主要登場人物の一人、美浜ちよ。10歳にして高校生へと進級した。

「な、なんだってー!!!」
 「MMR」の中で、トンデモ(陰謀)説をぶっちゃける主人公キバヤシに対して、残りの登場人物が間髪入れずに叫ぶ台詞。
 この(大仰な)掛け合いが頻出するため、この作品は「90年代最強のギャグマンガ」とも評される。

「絶望した! しょーもないことで性転換することに絶望した!」
 「さよなら絶望先生」の主人公、糸色 望の決め台詞から。余談だがこの迷台詞の初出は「絶望先生」ではなく、前作「かってに改蔵」のヒロイン(笑)名取羽美が使ったのが最初。
 なお、その下にある箇条書きは、「絶望先生」及び「改蔵」で頻出する羅列ネタ。エピソードのテーマに関連した事例を並べていくギャグである。
 今回は、全て城弾の作品から。

 ・ 古い薬と肺炎で性転換 … 「城弾シアター」で連載していた長編、「PanicPanic」の主人公、赤星瑞樹のこと。中三のときに肺炎になりかけて朦朧とした状態で飲んだ薬が十年以上前の代物で、それと本人の体質が合わさり、回復した時は30℃以下の水を被ると女になる体質になっていた(ちなみに「らんま1/2」に対するリスペクト)。
 ・ 服に着られて性転換 … 「着せ替え少年」の主人公、二村 司のこと。詳細はこちらをクリック
 ・ 太古の遺恨で性転換 … 「戦乙女セーラ」の高岩清良(セーラ)、伊藤 礼(ブレイザ)、押川 順(ジャンス)のこと。詳細はこちらをクリック
 ・ 放射線で性転換 … 「ボーダーレス」のこと。詳細はこちらをクリック
 ・ 指輪はめたら性転換 … 「Made of Fire」のこと。詳細はこちらをクリック。なお、この話は読者投票で次を決めるという展開であった。
 ・ 子宝の湯に浸かると性転換 … 「湯の街奇談」及び「湯の街余談」にでてくる秘湯「子宝の湯」のこと。詳細はこちらこちらをクリック
 ・ 墓参りすると性転換 … 「美少女組長奮戦記」の主人公、久美のこと。詳細はこちらをクリック
 ・ 大ぐらいだと性転換(巻き添えあり) … 「同居人」の北原素直のこと。後に主人公である誠治も女性化する。詳細はこちらをクリック
 ・ 酔っ払うと性転換 … 「とらぶる☆すぴりっつ」の主人公、酒井真澄のこと。詳細はこちらをクリック
 ・ 人体実験で性転換……臨床実験と言いなさい。… 「アンテナショップ」に登場した性転換システムのこと。詳細はこちらをクリック。なお、「臨床実験と言いなさい」は登場人物の一人、国近たまきの台詞から。

「破壊からしか再生はできない」
 「仮面ライダーディケイド」第1話での、紅 渡のセリフから。

「二回死ね」
 「迷い猫オーバーラン」のヒロイン芹沢文乃の口癖。

「や ら な い か」
 とあるマンガのホモネタで誘いをかけている場面の台詞。元ネタは山川順一なる漫画家の作品と聞くが、ネットスラングとして定着しており、筆者もそちらでとった。

「いわゆるヤク……ケンカキック」
 プロレスラー蝶野正洋の繰り出す前方へのキック。
 「やくざキック」が本来の名前だが、イメージの悪さかテレビでは「ケンカキック」と呼ばれてる。

「無様ね」
 「新世紀エヴァンゲリオン」の登場人物、赤城リツコの台詞から。

「通りすがりの拳法家じゃよ。覚えておきなさい」
 「仮面ライダーディケイド」の主人公、門矢 士の決め台詞「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えとけ」から。

「無限塾の(女子)制服」
 「PanicPanic」の舞台、無限塾の女子制服は「らんま1/2」へのリスペクトで、風林館高校と同じ白のブラウスにブルーのジャンスカである。

「アミバとかいったか?」
 「北斗の拳」に登場した悪役、アミバのこと。主人公ケンシロウの義兄トキに成りすまして悪事を行っていた。ザラブ星人(ニセウルトラマン)同様、ニセモノキャラの代表格でもある。
 ちなみに投稿雑誌「Fanroad」のシュミの特集(シュミ特)に、作品とは全く無関係なのに「アミバ」の項が定番化している。

「大原乙女のスタンド 『ジャスト・ザ・ウェイ・ユー・アー
 スタンド(Stand by me)とは「ジョジョの奇妙な冒険」第3部から登場した、超能力に映像が伴ったもの(概念)。能力表は第5部を収録した単行本から掲載されるようになった。
 なお「城弾シアター」版と乙女のスタンドの名前が違うが、本家でもジャンプ掲載版と単行本で違っていることが多々ある(笑)。

「もう何も恐くない」
「魔女を倒してどや顔浮かべた直後に頭からかぶりつかれて噛み殺された」

 「魔法少女まどか☆マギカ」第3話のサブタイトル及び登場人物の一人、巴マミの台詞。そしてその直後の衝撃的な展開より。
 ちなみに上記の台詞は、「この戦いが終わったら彼女と結婚するんだ」に匹敵する死亡フラグとして定着している?

「現実を直視出来なかった……考えるのをやめた」
 「ジョジョの奇妙な冒険」第2部のラスボスであるカーズは究極の生命体(アルティメット・シイング)になったが、火山の大噴火によって大気圏外に吹き飛ばされ、そのまま地球に戻れず、しかし死ねない肉体だったので思考を停止した。その時の末路をつづった文章から。

「次ぃ〜回っ!」
 「海賊戦隊ゴーカイジャー」次回予告時のナレーションから。「カーレンジャー」のパターンを踏襲して、最初の一音を伸ばす。

「秋津のこの手が真っ赤に燃える」
 「機動武闘伝Gガンダム」主役機ゴッドガンダムの必殺技「ゴッドフィンガー」を放つ際の、主人公ドモン・カッシュの決め台詞「俺のこの手が真っ赤に燃える」から。
 
 ※ ちなみに「ゴーカイジャー」のナレーターと、ドモンの声は声優の関 智一さんが担当している。

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