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 俺こと烏戒 明(うかい あきら)は幼い頃の懐かしい夢を見ていた・・・・・・・・




「────────あー君!ぜったい・・・ぜったいナオの事、忘れないでね!(泣)」  夢の中でナオちゃんが泣きながら車の窓から顔を出す。

「ナオちゃんの事なんて忘れるもんか!大きくなったら会いに行くから」

「うん!ナオ、まってる。あー君のこと、まってるから!」



 ───────────ぜったい・・・・まってるから───────────




 これはナオちゃんと別れる直前の出来事。こういう別れってのは世間ではよくあることだと大きくなった今ではよく分かる。幼い頃の約束なんて大抵忘れている事もあるし、たとえ会ったとしてもそのあと何をするのかまったく考えていないからだ。それに会いづらい事情もあったら向こうも困るだろう。例えば俺の事なんてすっかり忘れてて今じゃあ立派に『彼氏持ち』なんて事になってたら会いに来た俺が痛い人になってしまうからだ。だから大きくなって自力で会いに行けるようになった今でも会うのが怖くてナオちゃんを探そうとせず、会いにも行かなかった。

 だが、先日そのナオちゃんと思われる少女が街に現れた。最初、灯と理奈と一緒にいることからナオちゃんじゃなく『那雄』だと思ったが、那雄は正直女装は大嫌いなはず。たとえ脅されていたとしてもそこだけは譲らないはずだ。それに遠くからでも結構胸が──────ゲフンゲフン!っと、とにかく後日、当事者である灯、理奈、そして那雄に聞いたところ、那雄とは全く関係なく、ナオちゃんに似た少女は街を歩いていた所、灯に那雄と間違われた上、強引にお店に連れ込まれたらしい。んで水着やらその他の衣類選択まで付き合わせてしまったらしい。灯と理奈は那雄じゃないと分かった瞬間謝ったらしいがそのナオちゃんは笑って許してくれたらしい。

 ここまで来ると、もういてもたってもいられない。たとえナオちゃんが俺に会いに来たにせよ偶然ここに寄ったにせよ会わない手はない。会うと言っても実際にナオちゃんと対面するのではなく遠くから見るだけということにしたのは、幼い頃の約束を破り、忘れようとした俺がどんな顔して逢えばいいか分からなかったからだ。

 けど、街でナオちゃんを見かけて以来、毎晩のように夢を見るようになり、『逢いたい』という気持ちが溢れてきたのだ。

 だから探した。トコトン探した。既にここにいないと分かっていてもその後の足取り位は掴めるかもしれないから。

 ──────────────そしてやっと見つけた。ナオちゃんが今、沖縄にいるってことがわかった。




「─────当機はまもなく沖縄那覇空港に到着いたします。シートベルト───────」 スチュワーデス(ちょっと古い)のアナウンスにより夢から起こされる俺。

「またこの夢か・・・・・・・」  くしゃくしゃになった顔を手で隠し、隣にいた人に見られないよう手で隠した。


 とりあえずここまで来たんだ。たとえ忘れられたり、彼氏持ちだったりしたとしても絶対に逢ってやるからな。待ってろナオちゃん!!




奈緒の憂鬱
第9.5話:ナオちゃんとあー君
作:SAYA




 ・・・・・・・・・・・思えば俺とナオちゃんの出会いは互いにあまりにも不思議な出会いだった。


 それは最近見た幼い頃の夢の話─────────

 俺の家は新開宅の土地で当時、俺の家の周りには誰も住んではいなくそしてすぐ向かいは公園があり、幼稚園(学校)が終わって、両親が仕事から帰って来るまでの時間までいつもここで遊んでいる。

 そして俺はいつもの様に幼稚園から帰ってきて公園で遊ぼうとした時、そこに一人でブランコで乗って遊んでいた女の子がいた。この公園にはブランコが一つしかなくそこは俺の指定席だった。いつも最初にそこで遊んでいる俺としては、さすがに譲れないと抗議に出る。

 明:「おい、お前!そこは僕の『していせき』なんだぞ!」  っと指を指して言った。

 ?:「・・・・・・・・・・・」  しかしその子は黙ったまま俯いていた。

 明:「なんとか言えよ!」 っとその子に近寄って服を引っ張る・・・・・・・・

 ?:「・・・・・・・・・・・・」  しかしその子はビクともしない。そしてそこからも離れようとしなかった。

 明:「ちぇ。」 っと俺はその日、ブランコを諦めて他の物で遊んだ。

 しかしそのブランコは次の日もその次の日も俺が遊ぼうとした時には既にあの子が座っていた。
 当然抗議に出るが、その子はいつもちらっと一瞬だけこっちを見てすぐに俯いてしまう。

 (なんなんだよあいつ・・・・・・) っと思いつつ。俺はその子が居た日からブランコに乗れずに他の物で遊んでいた。


 しかし、俺とあいつとの関係に変化が起きたのはその二週間後、一つしかなかったブランコにもう一つ付けられるようになったときだ。

 (これでやっとブランコに乗れる。)

 っと早速学校(幼稚園)が終わってから出来立てのブランコに向かう。当然ながらそこにはあの子が居た。いつもと同じく俺が乗っていたブランコに座り、ゆらゆらと揺れながら相変わらず俯いたままで漕いでいる。

 いつもならここで抗議か、諦めて他の物で遊ぶのだが、今日からは違う。今日は新しく出来たもう一つのブランコに乗る事にしよう!


 今思うとアレは新しく出来た─────というより、元々このブランコは二対あったが、訳あってそのひとつは使えなくなり、取り除かれただけなんだけど。つまり、新しく出来た訳じゃなく、元々取り除かれていた所にもう一つブランコが追加されただけなのだ。まあ、この頃の俺にとってはどうでもよかったが。


 ここ最近乗れなかったが為に俺はブランコを大きく前後に揺らす────────────

 前後に揺れるブランコの頂点差し掛かる時にある無重力感と下に降下するときのGがなんとも言いきれない!


 ちなみに俺はジェットコースターも大好きだが、高校の男友達(和也、那雄も含む)のほとんどはアレがあまり好きではないらしい。何故に?


 ブランコが前後に揺れる何とも言えない快感を堪能していた時、その横のブランコに乗っていたあの子も何故か大きく揺らし始めた────────

 明:「な、なに僕のマネしてるんだよ!」  っと言い放つ。

 ?:「・・・・・・・・・・・・・・。」  しかし無言でブランコを揺らすこの子。心なしか俺よりも揺れが大きい?

 明:「く、ま、負けるかぁーーーー!!」  変な対抗心が出来たのか、俺も勢い良くブランコを揺らす。


 俺とその子のブランコが大きく揺れ、ブランコの揺れる限界に差しかかる時、この勝負(?)が決まる。そう『ジャンプ』だ。ブランコが前へ揺れる力を利用して大きく前へとジャンプする。そしてその距離を測るブランコならではの競技だ。

 ※:そんな競技はありません。むしろ危険なので良い子・・・・いや、悪い子も大人でも真似しちゃ駄目ですよ?(by佐夜)


 明:「うぉりゃああああ!!!」

 ?:「────────!!!」


 俺の掛声(あの子も何か叫んでた?)とともに両者共前へと跳んだ────────────


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・


 明:「くっそう〜〜〜〜〜!!」  俺はコブシを握りしめながら唸る。


 結局両者が跳んだ距離は大体20cm位の差で俺の負け。まあ、同じ勢いで飛んだのなら軽い方が遠くへ飛ぶのは当然か。

 明:「お、お前、なかなかやるな・・・・・・(苦笑)」  悔しながらもなんとか笑顔で言う。何だかんだで俺は結構面白かったし。

 ?:「──────────っ!!(赤面)」  自分のやった事に今更気づいたのか、顔を真っ赤にし、

 ?:「───────────────────────────────!!!(赤面)」

 ────────────────────────顔を真っ赤にしたまま、どこかへ走り去ってしまった。

 明:「何だあいつ・・・・・・」  

 そいつのその真っ赤にした顔がかなり可愛かった故に、俺はしばらくその場に呆けていた(と思う)。



 ・・・・・・・・・・思えばこの頃にこの子を・・・・ナオちゃんを好きになっていたのかもしれない・・・・・・・・・・







 んで翌日、俺が幼稚園(学校)を終え、いつものように公園に行くと丁度反対側からあの子がやって来た。

 ?:「あ・・・・・・・・。」  あ?

 明:「っていうか初めてしゃべった・・・・・・・」 

 ?:「──────────っ!!!(真っ赤)」   あ、また真っ赤になった。

 明:「っていうか今日はきのうの『りべんじ』だ! こんどはまけないぞ!」  俺は指さして言った。

 ?:「・・・・・・・・・・(コクコク)」   相変わらず顔を真っ赤にしたままだが、やがてコクコクを頷いた。




 ─────────────────────んで、

 明:「くうぅぅぅぅ〜〜〜〜〜。また、負けた・・・・・・・」   ガクリと膝を着いて項垂れる。

 ?:「だ・・・・だいじょう・・・・・・・ぶ?」    うえ!?

 明:「うん・・・・・。でもお前、強いなー。」    負けたショックは大きいがそれよりも得た物があったから   

 ?:「え・・・・・?」

 明:「僕のなまえは『うかい あきら』だ。お前は?」

 ?:「・・・・・・・なお。」

 明:「なお?」   首を傾げて聞き直す。

 ナオ:「うん・・・・・。なお・・・・だよ。」    その子・・・・・ナオちゃんは照れているのか相変わらず俯いたまま言った。

 明:「カワイイ・・・・・・」

 ナオ:「え・・・・・・・?」

 明:「え、あ、いや、なんでもないなんでもない。」

 ナオ:「?」

 明:「んじゃあ、きょうから僕とおm、ナオちゃんは『らいばる』だ!」

 ナオ:「らいばる・・・・?」   首を傾げて頭の上にハテナマークを付けるナオちゃん。

 明:「う〜ん。なんだっけ?こうてき・・・・・・・あれ?」

 ナオ:「?????」     

 二人して首を傾げる。何ともシュールな絵になってるだろう。

 明:「ん〜、わかんないからもういいや。なら僕とナオちゃんはきょうから『ともだち』だからな。」

 ナオ:「え?とも・・・・だち・・・・・・?」   はてなマークがさらに二つ追加した。

 明:「え?もしかしてだめ?」   

 ナオ:「ううん。だめじゃないよ。ちょっとびっくりしただけ。」   

 明:「じゃあ、いいんだな。ナオちゃんよろしくな!」     勢い良く右手を差し出す。   

 ナオ:「う、うん・・・・・・・・」    ナオちゃんも照れながらも手を差し出して握手をした。


 こうして俺とナオちゃんは友達・・・・・いわゆる『幼馴染』というものになったのだ。







 それからというもの、俺とナオちゃんは時間を忘れ、幼稚園が終わるないなや公園で夜になる直前まで遊び、俺とナオちゃんは親に怒られた。

 ちなみにナオちゃんが俺と出会った頃、ナオちゃんは遊ぶ人がいなかったらしい。兄弟はいるらしいんだけど自分を放ったらかしでいつも友達と遊びに行っているらしい。だから学校が終わっても一人ぼっちだったらしく、家の近くにあるこの公園で一人寂しくブランコに揺られていたらしい。


 ナオ:「あー君、いつもありがとね(照)」  何の脈も無く突然ナオちゃんは言った。

 明:「ん?どうしたのナオちゃん?」

 ナオ:「ううん。ただ言いたかっただけ♪」

 明:「???」



 小学校に上がり、俺とナオちゃんは同じ小学校に通うことになった。まあ、家が近くにあっただけに当り前ではあるが。


 この時間が楽しかっただけに、俺はこのナオちゃんとの時間が永遠に続くと思っていた────────────────────


 が、小学3年生になる前の春休み。別れというものは突然やって来る。そう親の事情というやつだ。

 明:「ナオちゃん!なんで、なんで行っちゃうんだよ!?」

 ナオ:「いきたくない! ナオだってあー君のいない所にいきたくないよ!」

 浩:「ナオ!わがまま言うな!」  ナオちゃんの兄という奴が言った。

 ナオ:「だって、だって・・・・・・・・(泣)」   ボロボロと泣き出すナオちゃん。

 明:「ナオちゃん・・・・・・・」  俺はナオちゃんに何も言えず、何も出来なかった。







 そして別れの日、俺はナオちゃんの見送りの前に親父に呼ばれた。

 親父:「明、お前に良い物をやろう。」

 明:「良い物・・・・・・?」

 親父:「これだ。」 

 親父が俺に渡したのは二つにくっついた『指輪』だった。親父曰く、この指輪は代々烏戒家に伝わる『家宝』というやつらしい。

 親父:「この指輪の半分をお前の好きな娘にあげなさい。そうすればたとえ別れてもこの指輪がお前たちを繋ぐはずだからな。」

 明:「え?どういうこと?」

 当時、8才な俺にこんなこと言われても分かるはずがなく、親父はそれから二時間かけて俺に説明し、ようやく理解した。



 そして話は第五話の部分へと戻る─────────────────

 明:「ナオちゃん。これ。」   親父から貰った『指輪』を二つに分け、その一つをナオちゃんに渡す。

 ナオ:「・・・・・『指輪』?」   泣きながらも指輪を受け取る。

 明:「うん。この前、おもちゃ屋さんのガチャガチャで取ったんだ。ナオちゃんに似合うと思って。」  

 本当は家宝物だけど、それを言ったらナオちゃんは受取って貰えないからな。

 ナオ:「ピッタリ・・・・・・」   その指輪は何故かナオちゃんの指にピッタリ嵌った。

 明:「・・・・・だね。気に入った?」

 ナオ:「うん。ありがとう・・・・・これ、たいせつにする・・・・・・・」   指輪を嵌めたままの手を抱きしめるようにギュッとするナオちゃん。


 ※:ここから、五話目と大分内容が違います。ご了承ください。


 明:「うん。この指輪があればたとえ離れ離れになってもいつか会える不思議な指輪なんだって。」  親父の説明を掻い摘んで話す。

 ナオ:「おもちゃ・・・・・なんだよね?」

 明:「うん。だから、信じて。僕は絶対大きくなったらナオちゃんに会いに行くから!!」  ナオちゃんの両肩を掴んで力説した。

 ナオ:「あー君・・・・・・。うん!ナオも、大きくなったらあー君に会いに行くから!!(大泣)」


 俺達は道のど真ん中で抱き合った。小2〜3年生のくせに(笑)。今、思うととてつもなく恥ずかしい。めっちゃハズイ!


 ナオの父親:「おーい。周りの人達が見てるぞ〜。・・・・・・青春だなー(しみじみ)」

 ナオの母親:「あらあら(笑)」

 浩:「ナオ!いつまで抱き合ってるんだ!早くしろ!」  イライラしたように言うナオの兄。何かこいつムカつく。



 ナオ:「じゃあ、あー君。ナオ、行くね・・・・・・?」   寂しそうに言う。

 明:「ナオちゃん。そんな悲しそうに言うな。これは別れのあいさつじゃないんだぞ?」

 ナオ:「ふぇ?」

 明:「また会うための約束だ。そうだろ?」  ニカッとはにかんで言う。

 ナオ:「────────────うん!!」  ようやくナオちゃんに笑顔が戻った。




 明:「・・・・・・・・っく・・・・・・ぐすっ・・・・・・・」 


 ナオちゃんが去った後、誰にも聞かれないよう下唇を血が出るまで喰いしばり、必死に泣くのを堪えていた───────────────









 子供の頃の約束なんて少し大人になれば大概忘れるもので、それは俺にとっても例外ではなく、最初は再会した時にでもナオちゃんを守れるよう空手や護身術などを習っていたが、中学に上がる頃にはナオちゃんの事なんかすっかり忘れていた───────────


 ──────────────が、そんな俺に衝撃をもたらす事件(?)が起きた。



 それはそう、中学二年になった春、ようやくちょっと大人の階段の初級編(学生服を着始める中学一年生の事)を終え、一年の時のダチとか、二年になってから会う人達とかとの交流を深める事に胸が高まる季節。


 そこで起きた一つの出会い────────────


 ダチ1号:「おい、烏戒、聞いたか?今日このクラスに転校生が来るんだってよ。」

 明:「いや、転校生じゃなくて編入生じゃないのか?」

 ダチ2号:「そんなのどっちでもいいって。しかもその子、どうやら『女の子』らしいぜ?」

 明:「だからどうした?中二の女子なんて対してみんな変わらないだろう?」

 ダチ1号:「おい、それは全国の女子中学生に失礼だろ。謝れ。俺に謝れ。」

 明:「何でお前に謝るんだよ?」

 ダチ3号:「そんなことよりよ、その子、このクラスになったらしいんだ。」

 明:「へぇ〜〜。」  ペチペチと何かを押す仕草をする。

 ダチ2号:「うわ!おざなりだ。」

 ダチ3号:「良いよなー。特定の彼女がいる奴は。」

 ダチ1号:「何ぃ!?烏戒!お前いつの間に彼女なんて(血涙)」

 明:「いねーよ。彼女なんて。それに・・・・・・・」    


 その時、俺はナオちゃんの事を思い出した。思い出すのはいいがそれがどうしたというのだ。結局、あの指輪なんてまがい物だったし・・・・・・・


 担任:「おーい。お前ら席に着け。・・・・・・で、どっから話が漏れたか知らんがこのクラスに編入生が入る事になった。入れ。」

 ?:「はい。」


 みんなが注目するその先に現れたのは、ポロシャツに学生ズボンを履いた『男子生徒』だった。



 全員:「え、えええええ〜〜〜〜〜!!!!??」  そいつを見たこのクラス全員が衝撃を受けた。



 そいつは確かに男子制服を着ていたが、その女顔、髪、そしてその容姿、どこからどう見ても『女の子』だった。ゆえにみんなビックリしている。

 中でも一番驚いたのは他でもない──────────俺だ。


 明:「な、ナオ・・・・・ちゃん?」  思わず立ち上がって椅子が音を立てて倒れる。

 担任:「んを?何だ烏戒。煎杜(せんと)と知り合いなのか?」

 明:「え?せん・・・・と?」  

 担任:「ああ、そうだったな。煎杜。自己紹介を頼む。」

 担任に促され、自ら自己紹介をするナオちゃんに似た奴。黒板に字を書くその指は細い。

 煎杜:「・・・・・・今日からこのクラスに編入する事になった煎杜 那雄(せんと なお)です。初対面で間違えるのも仕方ないけど俺は『男』です。そのだけは間違えないように。・・・・・・先生、以上です。」

 担任:「あ、ああ分かった。そういや烏戒がお前の名前を知ってるみたいだがあいつと知り合いなのか?」

 那雄:「・・・・・いや。初対面です。人違いでしょう。」

 担任:「だ、そうだ烏戒。見間違いじゃないのか?」

 明:「・・・・・・・た、多分そう・・・・なのかな?」   


 見間違い・・・・・?いや、そんなはずがない。・・・・・まぁ今まで忘れていた奴が言うのはなんだが、その顔、今はっきりと思い出した。

 この子・・・・いや、こいつは・・・・・しかし何で男の恰好を・・・・・・そもそも本人とも限らないし同姓同名って可能性無くはない。



 ────────────けど本当にこいつ別人なのか?


 一時限目、本当は数学(担任)の授業だが、先生の計らいで自習になった。『那雄』と名乗る奴は女子に囲まれて質問攻めに遭っている。まあ、美形だしな。

 ダチ1号:「くは〜〜。かなり可愛い子だってのに『男』かよ!」  

 ダチ3号:「昨日職員室で見た時は私服だったからそれっぽく見えただけ・・・・・か。」

 ダチ2号:「顔も可愛いし、髪も長いし、身体は細いし、声も何かハスキーだし。私服だと女にしか見えないし・・・・・・」

 ダチ3人:「俺達、道を外しそうだ・・・・・・」   っと女子に囲まれている『那雄』の方を見つめる馬鹿三人。

 明:「外すなよ。」

 ダチ2号:「だってよ〜〜〜。」  っとニヤけた顔で机に沈む。

 ダチ1・3号:「なぁ〜〜〜〜(可愛い物を見る目)」  同じく机に沈む2人。

 この三人を見て気付いた。そして周りを見るとこの三人同様クラスの男子全員が『那雄』を見て悶えたり、机に沈んだりしている。

 明:「お前等・・・・・・」   溜息しか出てこなかった。


 ダチ1号:「ん!? そういや烏戒。何でさっきあいつが自分で自己紹介する前に名前知ってたんだ?」

 ダチ2号:「そういや『ナオちゃん』って言ってたな。」

 ダチ3号:「何ィ!? 烏戒、お前あの子とはどういう仲だ!?」  っといきなり喰ってかかる馬鹿。

 明:「どういう仲って言われてもな・・・・・うわぁ!?」  


 気付けばクラスの男子全員が俺を取り囲っている。いや、俺何かしたか?







 クラス全員からの追及から逃れた俺は昼休み、屋上へ来ていた。

 明:「ったく。何なんだよ、一体・・・・・」   日の当たる所で寝転ぶ。

 クラスの男子からは『どういう仲なんだ!』っとしつこく追及され、ことあるごとに俺を使って『那雄』に取り入ろうとするクラスの馬鹿共。当然その『那雄』の味方(?)についた女子がそれを阻止する。そしてその騒動で次の授業どころでは無かった。 

 そうすると今度は女子からも追及される羽目になって一々みんなに説明するのが面倒だった俺はそそくさと逃げ出してここに来た。

 ??:「あー! もう、一体何なんだよ───!!」  んうぉ!?反対側に誰かいるのか?

 っと階段の反対側にやって来るとそこには先ほどまで騒動に巻き込まれた『煎杜 那雄』が居た。

 俺は恐る恐るそいつに近付いて、声を掛けた。

 明:「何やってんだ、お前。」

 那雄:「ん? あああ!!? お前・・・・・この野郎ぉ!!!!」  っと俺を見るや否や殴りかかって来る那雄。

 明:「うぉおおおお!?」   俺は紙一重で避けた。つかリスト(パンチを繰り出す速度)早!!

 那雄:「お? 避けた!? お前なかなかやるじゃん。」

 明:「って何いきなり殴りかかってるんだよ?」

 那雄:「あ、そうだった。お前、クラスの連中に何言ったんだよ!?」

 明:「・・・・・は?」  言うも何もまだ何も言ってませんが?

 那雄:「何か『小さい頃の幼馴染で烏戒に逢いに引っ越して来た』とか『親公認の仲』だとか、天津の果てに『結婚を約束した許嫁』だって言ってたぞ。それもこれも全部お前が絡んでんじゃねーか。一体どういうつもりだ、コラ!」

 明:「いや、俺は何も言ってない。確かにお前は俺が知ってる『ナオちゃん』に似ていたがその子は『女の子』だ。それにその事は誰にも言った事は無いぞ。」

 那雄:「じゃ、じゃあ・・・・あの事はみんなの妄想だっていうのか?」

 明:「まあ、そういうことだな。」   

 那雄:「じゃあお前、みんなにそれを説明しろよ。このままじゃ俺達、転校初日から公認カップルにされちまうんだぞ!?」

 明:「マジすか?」

 那雄:「マジもマジ。今じゃもうクラスの全員、俺を『男』だと思ってないみたいだし・・・・・・」  ガクリと項垂れる那雄。

 明:「はぁ? お前、男なんだろ?」

 那雄:「そうだよ!俺は男だ!!」   那雄が叫ぶ。うん。男には見えません。はい。

 明:「はぁ〜〜。 分かったよ。 俺からみんなにきちんと説明しておく。」

 那雄:「当たり前だ。転校初日からホモ扱いされたくないっての。」

 その時、昼休みを終える五分前のチャイムが鳴り、俺達は教室へ戻ろうとした。その途中、

 那雄:「・・・・・そういや、お前の名前、聞いてなかったな。」

 明:「んあ? みんなから噂やらなんやらで俺の名前言ってなかったのか?」

 那雄:「いや、みんな苗字でしか言ってないからな。本名は知らん。」

 明:「そっか。じゃあ改めて自己紹介だ。俺の名前は──────────」







 こうして俺と那雄は友人となった。といっても実際そんな平和な状況じゃなかったが。 

 那雄はいつも学校中の生徒(全体の約80%が男子)から告白され、那雄は当然断っているが、時折諦めずに喰ってかかって来る奴には殴っ・・・・・丁重な話し合いで解決してる。んでその後那雄といつもつるんでいる俺に応復がやってくるという始末。那雄は転校してくる前から何か古武術やらをやってたらしく、かなり強い。俺も自慢じゃないが空手と合気道くらいは初段持ちだ。那雄が告白を一蹴し、俺がその後始末する。いつの間にかそんな関係になっていて教師から散々注意されたがこればっかりは仕様がない。

 そして俺は高校も那雄と同じ所に行くことにした。べ、別に那雄と別れたくなかったわけじゃないんだからね!・・・・・って何言ってんだ俺。

 もちろん理由は他にある。そう、那雄の事じゃなく『ナオちゃん』の事だ。俺達が今通っている栂野高校は俺の家から電車を一駅行った都心地の所にある。俺の家の近くにもレベルが一個上の進学校があるがそこに通うとナオちゃんを捜す行動範囲が狭くなるため、高校を通いつつ、街を探索できる理由から俺は栂野高校に進学した。

 ちなみに那雄の方は自宅から近い理由としてここを選んだらしいが周囲の馬鹿共(学校の連中)はそう思ってないらしく俺が『那雄に合わせて高校を選んだ』事になっている。本当は違うのだが、説明するのも面倒くさいので適当に流した。

 高校に上がってからというものの、俺と那雄の関係は少し落ち着いたと思う。まぁ、これは周囲が少し大人になった証明でもある訳で、俺と那雄がそれぞれ違うクラスになった所為でもある。なので中学の時のような噂はあまり聞かなくなった。

 俺が那雄をナオちゃんと見間違えたのが第一話・・・・・いや、何言ってんだ俺・・・・・。高校入ってからの体育祭の時だ。那雄はクラスの競技で『コスプレ障害物競争(何故か男子のみ)』に出る事になったらしがそれがいかんせん。中学では一回も女装しなかった(強要されたが頑なに断った)那雄が女物の服を着てるではないか!

 おおお・・・・・・。那雄が恥じらっているじゃないか。いや、そりゃ恥ずかしいに決まっていると思うが、その容姿にそのセーラー服が良く似合っていてとてもじゃないが男には見えなかった。多分俺を含め、学校全生徒がそう思っているんじゃないかと思うくらい那雄は可愛かったからだ。

 そして競技が始まったのだが、那雄の動きがちょっとおかしい。ああ・・・・そっか、スカートのヒラヒラが気になって上手く走れないんだな。那雄は恥じらいながらも片手でスカートを抑えながら後ろを警戒しながら走っている。が、後ろにいる他の選手(ってか那雄以外の全員)はそんな那雄の表情にメロメロになっていて競技どころではなかった。

 そして事件は起きた。

 それは那雄が最後のハードルを飛ぼうとした時、足を引っ掛けて派手に転んでしまったのだ。そしてついに那雄は泣き出した。声を殺して。それが決定的な瞬間だった。

 学校全生徒(俺以外の全員)の何かが切れて那雄の元に集まった。多分襲いかかる事はないだろうが、正直当事者である那雄はかなり引いている。

 それ以来、またもや那雄は男子からは『もの凄く可愛い女の子』。女子からは『かなり可愛い子(性別不明)』として可愛がられる結果となった。ご愁傷様。

 俺はこの那雄と出会ってから、昔の『ナオちゃん』の事は忘れがちだったが、この時の那雄(女装時)を見てやっぱり本物に会いたいと強く思った。







 そして機は訪れた。それは夏休みに入った直後のバイト帰り。家に帰る途中の交差点で俺は見た───────────


 ・・・・・・・・・・・・ナオ・・・・ちゃん? 


 高級そうなベンツにどこかで見たような奴と一緒に乗っていたがそんなのはどうでもいい。一瞬、那雄かとも思ったが、那雄が自分から進んで女装するなんてことは絶対あり得ない。その事は俺が一番良く知っているからだ。

 急いで追いかけようとしたのだが、そのベンツは反対車線にあり、追いつく直前で行ってしまったのだ。

 しかし、俺は諦めなかった。もしナオちゃんがここに来ているのなら、まだ会えるチャンスがあるかもしれないからだ。

 そうとなれば聞き込み開始。まず最初に女の子が行きそうな場所と言えば定番の『らんじぇりーしょっぷ』だ。ナオちゃんが行きそうなデパートに行き一瞬、いや十分くらい入るのを躊躇ったが意よ決して入り店員さんに聞いた。最初ストーカーだと疑われたが、事の経緯を話すと何とか信じてもらえたがその時他の客も聞いていた為、かなり恥ずかしい思いをした。いやマジで。もしここで本人に会っていたら切腹していたね。うん。

 そして得た情報は、『木野グループのお嬢様とお知り合いの方』『箱入りのお嬢様』『世間に疎い』などなど。それに木野のお嬢様は多分灯の事だろう。

 そして俺が知りたかった最重要な有力情報は、現在ナオちゃんは『沖縄』にいるらしい。沖縄に住んでいるのか、それとも観光に来ているのかは知らないが、これはナオちゃんに会うチャンスだと俺は思い、バイトを休んで沖縄へと向かった。


 ─────────────そういえばあいつ等(那雄と和也と理奈と灯)も沖縄に行ってなかったっけ? まぁ、縁があれば会うかも知れないな。


 そして話は冒頭へと戻る。

 明:「・・・・・俺の事覚えててくれてるかな・・・・・・・」  指輪の片割れを強く握りしめながらナオちゃんが俺の事を覚えている事を強く思った。




 それは幼き頃の約束、大きくなった今でもその約束が通用するとは限らない──────────────

 けどもし、その約束を君も覚えているのだとしたら─────────────────────────




 ───────────つづく(のかな?)








 奈緒:「話長いな。」 
 灯:「長いねー。」
 理奈:「長いわね。」
 和也:「つか長すぎだろ!」  明以外の四人に同時に突っ込みを入れられた。

 佐夜:「だ、だって仕様がないじゃん!明は一話目以降出て来てないんだからこのくらい説明しないと話繋がらないよ?」

 奈緒:「明の話なんてどうでもいいって。どうせ誰も気にしちゃいないんだから。」

 灯:「いや、奈緒ちゃん。それは言いすぎじゃ・・・・」

 奈緒:「いいの!」  

 和也:「そこで不貞腐れても・・・・・」

 佐夜:「ってか君達、平気で話の外に出て来てるよね・・・・・・」

 理奈:「それより佐夜さん。この後はどうするつもりですか?」

 佐夜:「無視ですか・・・・・・。この後の話は当然、学校編になります。ってか最初にこれをやれば良かったなぁ・・・・・・・」

 全員:「・・・・・自分でやっといて落ち込んでるよ」




 ・・・・・・と、という訳でいかがでしたでしょうか?今回のは明が主役で題名も変えようかとも思いましたがややこしいのでやめました。

 次の十話(長いな・・・・)からはやっと学校編になります。思えばこれを先にやっておけば後々楽になったのですがもう仕方がありません(笑)

 コメディの部分も増えていくのでこれからも宜しくお願いします(_ _)

 ではまたお会いしましょう♪




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