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奈緒:「はぁ・・・・はぁ・・・・・・・はぁ」

浩:「な・・・奈緒。もうその辺にしとけって、死ぬぞ。」 俺をなだめる兄さん。

奈緒:「で、でもこの人、僕の胸を・・・・・・」

※ 奈緒に一体何が遭ったかは前回の最後をご覧下さい。

浩:「いや、だからこれ以上殺ったら確実に死ぬって!」

奈緒:「か・・・かなり恥ずかしかったんだからね!!」

浩:「(羞恥心MAXだな)。奈緒、言葉、言葉。微妙に女言葉になってるぞ。」

奈緒:「へ?・・・・・あ。」  今、気付いた。自然に女言葉になってなかったか今?そういやさっきブラが弾けた(外れた)時の悲鳴も女言葉になってなかったっけ?

比嘉:「ふ・・・ナイスファイトだ、奈緒ちゃん。」 親指を立てる。

奈緒:「貴方はもう黙ってて下さい!!(赤恥)」
 
ふみゅふみゅふみゅ・・・・・・    と比嘉のお腹を軽く踏みつける。

比嘉:「おふっ!」 変な声が出た。しかも何か顔が綻んでるし・・・・・・・

ひなた:「お〜い奈緒?浩兄さ〜ん。 あ、いた。・・・・・って何これ?」 俺が踏んでる物を見る。

浩:「こいつ比嘉だよ、ひなた。」
ひなた:「ええ!?あの比嘉さん!?」

(ナレーション:浩)
 こいつの名は比嘉 寿(としき)。俺達がまだ沖縄にいた時(二年前)に奈緒の事をずっと追いかけてた変態。無理もない。奈緒は顔は女顔で身長も低く、武術を習っていたとはいえ(俺と剛も習っていたけど)体格も華奢ゆえに(しかも何故か女物を着ると、腰のラインとかが絶妙になるから不思議だ・・・・)全校生徒(男女問わず)からかなりの人気があった。まあ、それは今でも変わらないんだけどな。大抵は俺とひなた、剛で追い払ったんだがこいつだけは何度追い払っても奈緒に迫ってくるのだ。まあ、奈緒も当時、面白がってこいつをからかったから誤解されても無理はない。

ひなた:「あ、そうそう。そろそろ次の競技始まるって。」

浩:「ん、そっか分かった。おい、行くぞ奈緒。」

奈緒:「う、うん。分かった。・・・・比嘉さん、失礼します(_ _)」 そう言ってその場を後にする。




奈緒の憂鬱
第七話:大喰い王とスピンオフ
作:SAYA




ナレーション久保寺:「さあ、O・H・C(オーク)の第三種目はフードファイト。ルールは簡単。沖縄の『煮物』『揚げ物』『炒め物』『汁類(麺類含む)』『菓子』『その他』のジャンル、全100メニューの全てを食べて貰います。尚、食事中(競技中)、選手は交代可能ですが、物を食べている途中での交代は禁止です。交代の際は今食べている物をきちんと処理してから行って下さい。以上!!」

和也:「うおおおおおおおお!!!!(気合)」

ひなた:「きゃあ!? な・・・何?」
剛:「い・・・いきなりどうしたんだ?急に大声上げたりして?」

理奈:「えっと、ごめんね二人共、驚かせちゃって(苦笑)」
ひなた:「え・・・っと、どういう事理奈ちゃん?」
理奈:「和也はね、大食感(大喰らい)なの。」

剛:「・・・・つまり『ガチマヤー』って事か?」
理奈:「が・・・・がち・・?」
奈緒:「『よく食べる奴』の事だよ理奈。」
理奈:「あ、そうなんだ・・・・・。」

和也:「喰うぞーーーーーーーー!!!」

ボカッ!  

奈緒:「和也うるさい!ちょっとは落ち着け!」  軽く和也の頭をどつく。

和也:「何だよ奈緒。俺、昨日の夜から断食してたんだ。早く飯喰わせろって!!(怒)」

 と、俺の両肩を掴んでユサユサを前後に振る。
奈緒:「お、落ち着け和也ーーーーーー!」  あああ・・・・頭が揺れる〜〜〜〜(混)

和也:「喰〜わ〜せ〜ろ〜〜〜〜(ゾンビ化)」

理奈:「和也、何やってんの。会場はあっちだよ。ほら、行くよ?」 

和也:「あ〜〜う〜〜〜〜〜?」 ゾンビ化した和也が理奈に引っ張られながら会場に向かった。

浩:「・・・・・俺達も行くか。」   
奈緒:「そだね。」

ひなた:「じゃ私たち、応援席に行ってくるから。」
剛:「勝てよ〜〜(楽)」

 互いに手を振って俺たちも和也と理奈の下へと向かった。





 第三種目のフードファイトは『炒め物』『揚げ物』『煮物』『汁物(麺類含む)』『菓子』『その他』のジャンル、全百種類を食べなければならない競技だ。それぞれのジャンルを好きな順で選んで行き、先に上がったチームの勝利となる。尚、クリアしたジャンルごとにポイントが入るため、途中でギブアップしてもポイントが入るのだ。

ナレーション久保寺:「尚、ご飯(おかず用)、お水などはご自由にお変わり出来ますが、たくさん取り過ぎると食べ物が入らなくなるためご注意を。では皆さん。準備はいいですか?」

和也:「早く始めろーーー!!!」

ナレーション久保寺:「はっはっはっ、威勢がいいねぇ。では第三種目フードファイト開始!」

 ゴーーーン・・・・・・・・・・

 ゴーーン・・・・・・

 ゴーン!!

 そして鐘の音で始まるフードファイト。伝説はここから始まった・・・・・・

和也?:「ヌオオオオオオオオ!!!!!」

 物凄い勢いで食べていく和也。凄い、手が見えないぞ・・・・・・





 そして三十分後、

和也:「ごっそさん♪」 軽くお腹を擦りながら余裕の声を上げる。

奈緒:「やっぱり俺達の出番は無かったか。」

浩:「何かこう・・・・・一つくらいは食いたかったな。」

理奈:「お菓子・・・・・・・」 こっちはこっちで残念そうな声を上げる。

剛:「何だよあいつ。人間か?」

ひなた:「剛、それは失礼だよ(苦笑)」


 会場がざわめく。それはもう某ギャンブル漫画で出てくる『ざわわ・・・・』みたいな感じで。

ナレーション久保寺:「こ、これは凄い事になりました!なんと、奈緒チームの一番手、和也選手が100品あった食べ物を一人で食べきってしまいました!いかがでしたかスポンサーの木野さん?」

灯:「いやー、凄いですね和也選手。こんな才能があったなんて私も知りませんでした。」

ナレーション久保寺:「知りませんでした・・・・って私の手元の情報によると和也選手は同じ高校の同級生だと伺っているのですが?」

灯:「同じ学校に通っているからといっても知り合いとは限りませんよ?奈緒選手とは昔からのお友達ではありますがね。」

ナレーション久保寺:「では木野さんは和也選手の大食いの事はごそんじではないと?」

灯:「ええ。でないとフェアじゃないですからね♪」

ナレーション久保寺:「そうですか。では改めて、フードファイトbPは奈緒チームで・・・・・」

 ナレーション久保寺がこの種目を制した和也を紹介しようと和也の方を向くと、
 和也「うまうま・・・・・・・」
 和也は既にギブアップしたチームの料理に手を出していた。

理奈:「ちょっと和也、行儀が悪いよ!?」
和也:「いいじゃないか、余ってるんだし。」 っとまだ食い続ける。

ナレーション久保寺:「和也選手、どうやらまだ食べてる模様です・・・・・・・」

浩:「いつもながら凄い食欲だよな。」   呆れた感じで言う。

奈緒:「ああ、普段はあいつ、別に大食いではないんだけどね。」

和也:「もぐもぐもぐ・・・・・・?・・・・っ!!?」


 バタッ・・・・・・        食い続けていた和也が突然倒れる。


理奈:「え? 和也? ちょ・・・どうしたの!?」

和也:「・・・・・・・・・・。」 動かない和也。

剛:「い、医者だ!早く医者を!」 いち早く、医者を呼ぶ剛。すると、

麻奈華:「は〜い♪」  母さんが出てきた。あ、そういや医者なんだっけ。一応。

奈緒:「・・・・・何やってんの?母さん・・・・・・」

麻奈華:「あ、奈緒ちゃん。やほ♪ どう?似合ってる?」 っと着ている物を見せびらかす。

 母さんの格好は、下は青のビキニに上は何故か夏用(そんな物あるのかな?)の生地の薄いナース服。ビキニの青色が丸見えだ。おいおい・・・・・

浩:「母さん。ナイス!」 こっちは鼻を押さえながら母さんに親指を立ててるし。

奈緒:「そんなのはいいから、早く和也を見てやれって。理奈が泣きそうになってるぞ?」

 っと俺等が倒れている和也の方を見ると、何やらカメラが近くに来ていて和也と理奈を撮っている。何、やってんのかな、この人達は?

麻奈華:「はいはい、ちょっと御免なさいね。お医者さんですよ〜。」 っと和也に駆け寄る。

 ※ ちなみに医者が着るのは白衣であって、ナース服なんか着ないぞ?

 母さんが和也に聴診器をお腹に当てた、そしてはっとしたようにお腹を触診し、やがて苦悶の表情で首を横に振り、カメラに向かって真剣な顔でこう言った。

 その場にいた全員が最悪の想定を思い浮かべた、理奈は大泣きしている。

麻奈華:「これはずばり・・・・・『かなり食べすぎね』!!」 っと力説した。

 当たり前の答えに、みんなが一丸となって盛大にずっこけた───────────





ナレーション久保寺:「さあ、色々ありましたが気を取り直して次に行こう! 次は『スピンオフ』だ!力押しでもいいが、ここでは相手の行動も読まないとやられてしまうから気を付けてくれ。詳しい説明はパンフレットをご覧あれ!」

 『スピンオフ』
 某、筋肉番組で芸能人やらアスリートやらがやっていた競技の改造版だ。縦30m×横30mの巨大リングに対角線に線が入っていて、赤と青のエリア分けされている。要は大玉を押し合って相手側のエリアに落としてしまえば勝ちなのだ。うん、そこは実に簡単だ。
 ただ、この競技、ただ押し合えばいいって話じゃない。こちらが押して相手がワザと引いたらどうなるか。するとこちらは勢い余って転んだり、相手がこちらが押す寸前で大玉の方向を変えられてしまったらあっさり負けてしまう。
 要するに、相手の行動を先読みすることがこの競技の勝敗を決める。

 っと、ちなみにこの競技、某、筋肉番組では一対一。つまりタイマンでやるものだとここにいる選手、及び観客席や恐らくテレビの前にいる奴等もそう思っていたに違いない。しかしこの今回の大会、何かと変更点が多い。

ナレーション久保寺:「─────あ、そうそう。変更がありました。この種目は一対一のタイマンで行うはずでしたが、これじゃあ盛り上がらないと大会側からのクレームがあり、この種目はチーム戦で行う事になりました。詳しくはこの画面をご覧下さい!」

浩:「えーっと、何々? チーム戦で、しかも使用する大玉は・・・・3つ!?」

奈緒・ひなた・剛:「「「えええ!?」」」

 変更になった競技『スピンオフ』。変更点は二つ。一対一のタイマン勝負ではなく、チーム戦で行う事。そして玉は一つじゃなく三つになった事。そして三つの内、二つを向こうのエリアに落とせば勝ちなのだ。

剛:「・・・・・なるほどな。タイマンでやらすと即決着が付いてしまうから、あえてチーム戦にして大玉を一つじゃなく三つにした訳か。」

ひなた:「確かにこれなら大会も盛り上がるわね。」

奈緒:「始まる直前に変更するのはあまり良くないけどな。ほれ。」

 俺が指差した先、そこには先ほどのフードファイトで食い過ぎてダウンしている他のチーム達が休業中の『島宝』で唸りながらお腹を擦っている。
 本当はチームの一人をスピンオフの為に残し、その他の人数をフードファイトに当てるという戦略だったのだが、その次の競技の直前で『チーム全員』が参加することになってしまったが為、本来『スピンオフ』に出る選手以外はみんなグロッキーになり、唯一の医者(?)であるナース服の母さんに胃薬を貰っていた。
 中には色気120%の母さんにメロメロになってる男連中の奴等もいたが気にしないようにしよう。うん。母さんと俺を見比べて成長した俺を想像しているなんて事はないよな?俺、本当は男だし。

浩:「で、どうすんだよこれ? これじゃあ俺達が余裕で勝っちまうぞ。」
奈緒:「そうだね。俺達は和也だけ死んでる(ダウンしてる)もんね。」

 と、対する他のチームの体調を心配していると、先に会場に向かっていたひなたと剛が何やら慌てて走って戻ってきた。一体どうしたんだ?





奈緒:「何だって!? 大会は明日に持ち越し!?」

 会場に戻ると巨大スクリーンに『全選手、先ほどの種目にてダウンした為、大会は翌日に持ち越し。』という画面が書いていた。

浩:「大会が二日以上続くなんて多分初めてじゃないか?」
灯:「ええ、そうみたいですよ。本来、他の番組の都合で生(中継)じゃ二日以上出来ませんけど、KONOグループが一つの局を抑えましたから大丈夫です。それにどうせこのままじゃまともに競技なんて出来ませんし。」

理奈:「そうだね。和也も明日には復活出来そうだし。」 嬉しそうだな。
剛:「ま、弱った相手に勝つのも気が引けるしな。」

 つーことで、大会は明日に持ち越しという事になった。他の選手は宿泊しているサンライトホテル(KONOグループ経営)で療養中であるが、例の如く、男の連中の何人かは母さんの所に来ては診察を受けてもらっている。理由は不純だが、男なら母さんみたいな良妻賢母、美人巨乳でおまけに38歳なのに若すぎるという五段コンボで来られたら誰だって落ちる。間違いない。うん。



 そして二時間後、午後五時半───────────

奈緒:「ふう、疲れたーーー。」   昼過ぎのフードファイトで和也が全部食べてしまい食べ損なった俺達は祖父ちゃんが経営しているホテルの一階、沖縄料亭『島宝』で昼間食べたかった物を祖父ちゃんに作ってもらい、みんなで食べた。もちろん復活した和也も含めて。

灯:「奈緒ちゃん。いるー?」
 祖父ちゃんの家でくつろいでいた所を灯が訪ねてきた。何だろう?

奈緒:「何だ、灯か。どうした?」  ちなみに今の俺は男バージョン(指輪装着時)。

灯:「えっと話があるんだけど。いい?」
奈緒:「別にいいけど。」

 俺達は祖父ちゃん家の屋上に出た。
灯:「えっとね。話っていうのは貴女のその指輪の事なんだけど・・・・・・」

奈緒:「!? もしかして契約解除の方法が分かったのか!?」 思わず灯の両肩を掴む。

灯:「ち、違うわよ。って痛いよ奈緒ちゃん!!」 叫ぶ灯。

奈緒:「あ、ごめん・・・・・・」 つい勢い余っちまった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

奈緒:「え?指輪の事は他言無用?何で?」

灯:「だから言ってるでしょ?その指輪は完全に契約完了されていなくてその途中なの。だから指輪が形を保ったままなの。だから解除出来るんだけど。危険も伴うの。」

奈緒:「だから何なんだ、危険って?」

 灯は俺に兄さんに話したことをそのまま教えてくれた。指輪のこと、その指輪が他にも存在する事、そしてこの指輪はどんな願いも叶えてしまう事。そのせいで昔いくつかの国同士が指輪を巡って戦争を起こした事。まだまだ解明されていないは多いが、今分かっている事を灯は教えてくれた。

灯:「─────そういや浩さんに戦争のことは話してなかったわね。」 と、独り言。

奈緒:「ん?何か言った?」

灯:「え?あ、いや、浩さんに戦争の事は言ってなかったなーって。」

奈緒:「そっか。」

 俺はなんとなく指輪を指から外して呟く。そして姿は男から女へと変化する。主に胸辺り。

奈緒:「一体、何なんだろうな。これ・・・・・・・・」 指輪を握り締める。

灯:「さあ・・・・・・。」



 今まであまり深く考えなかったけど、この指輪は一体どこから来て、一体何をするものだったんだろう?

 灯にも調べてもらったけど誕生(発見)した時期が不透明で、しかもそれが原因で戦争が起きている。

 KONOグループが確認した指輪の数は全部で17個。しかしこれで全部ではない。

 今もどこかで起きている戦争も確認されていない指輪を巡っての戦いなのかもしれない・・・・・・・

 ・・・・・・もし、俺が持っている『コレ』が日本政府、または国連などに知られたら・・・・・・

 命の危険があるかもしれない。そして日本もまた戦争に巻き込まれるかもしれない。

 そう思うと身震いがした。目頭が熱くなり視界が歪む・・・・・・・・



灯:「え? 奈緒ちゃん・・・・泣いてる?」

奈緒:「え?・・・・・・あ・・・・・。」 手の甲で涙を拭う。

 そうだった。今の俺は女で、指輪が無いと男に戻れない。争い事にならない様にするのは簡単だ。この指輪を灯(実際は灯の父)が経営するKONOグループに提供する事。でも、そうしたら俺は一生女のままで生活しなければならない。戸籍の変更や世間の目、そしていずれは明にバレる日が来る。

 正直、俺は『友達として』明が好きだ。けど決して明に恋愛感情を抱いてはいない・・・・つもりだった。指輪を見つけ、女になってしまうまでは・・・・・・・。

 女になった事で、いや多分指輪の仕業なんだろう。毎晩のように夢の中で明が出てくる。

 転校したての小学校の頃とかはよく見ていて、中学になって見なくなったと思ったら最近になって幼い頃の夢を頻繁に見るようになり、起きていてもあいつの事を考えるようになった。

 俺と明は互いに『男同士』。だから好きになってはいけない。小さい頃、これが祖父ちゃんの叩き込まれた教え・・・・・いやこれは一般常識であって祖父ちゃんは気付かせてくれただけ。

 なのに今は『男と女』。常識や世間から見ても何のおかしな事はない。むしろ自然な事だ。

 俺自身は自分を『男』だと思ってはいるが、時より幼い頃の『ナオ』が表に出てきて言葉使いが微妙に女っぽい言葉になってしまう。いい例が、前回の最後と冒頭にあった比嘉さんが僕の・・・・・・こほんこほん。俺の胸をわし掴みした後の俺の行動。あれは完全に男らしくないな。

灯:「おーい、奈緒ちゃ〜ん?」 変な思考に陥っていた俺に灯が手を振って呼びかける。

奈緒:「え? あ、灯。どうした?」

灯:「どうした・・・・ってそれはこっちの台詞。考え事してないで早く家の中に入ろうよ。ほら。」

奈緒:「ん?」 と、上を見上げる。

 パラパラ・・・・・・・    空が曇り、小雨が降ってきた。

奈緒:「そうだな。スコール(熱帯性にわか雨)になりそうだし。」

灯:「まさに沖縄って感じ?」

奈緒:「沖縄じゃなくてもスコールはあると思うぞ?」 ・・・・・・多分。





 ─────────と、いうことで翌日。

ナレーション久保寺:「さあ、大会の二日目がやって参りました。連日の大会は事実上初の試みとなり、テレビ局などではどの局が放映するか、未だに決まっていません(笑)」

奈緒:「決まってないって、いいのかよ?」

浩:「ま、元々大会や祭り事を全部放送する事自体無いからな。」

和也:「というか、他の番組潰してまでこの大会を放送する意味が分からない。」

剛:「あ、お前等は知らないんだっけ? この大会は『賭け(トトカルチョ)』が出来るんだ。もちろん胴元は県が持つことになっていて、賭けれるのは満15歳以上からだから高校などでもかなり盛り上がるぞ。」

理奈:「それって賭博法違反なんじゃ?」

ひなた:「賭博法違反て・・・・・・」

浩:「はいはい、その話は後でな。今は大会に集中しようぜ。」

奈緒:「そうだね。」

 今、俺は男の状態(指輪装着状態)でここにいる。服装は店のロゴが入ったTシャツと半ズボン。髪はそのまま一本に纏めたまま後ろに垂らしている。ちなみにこれ、男装じゃないよ?

応援席の女の子達(主に小さい女の子中心):「キャー!」「お姉さまカッコイイ!」「抱いてー!(悶絶)」

応援席のムサイ男共:「ふむ、その格好もなかなか・・・・」「昨日の黒ビキニといい、その格好といい、かなり魅力的だ(>_<)b」「奈緒ちゃん。俺を罵ってくれ!!」

応援席の大人の女性達:「「「(い、妹に欲しい!!!)」」」

 ──────────などと応援席から聞こえてくるが、気にしない方がいい。うん。





 試合直前の打ち合わせで『スピンオフ』の人数振り分けはこうなった。

レフト(左)ボール:兄さん(浩)・理奈

センター(中央)ボール:俺(奈緒)・和也

ライト(右)ボール:剛・ひなた

 ルールは簡単。三つの内、二つ以上を向こうのエリアに落とせば勝ち。逆に落とされれば負け。




 ─────────────そして、

浩・剛:「「うおおおおおおおおお!!!」」

奈緒:「はああああああああああ!!」

 俺と兄さん、そして同じく祖父ちゃんに扱かれた剛は最初から全力で大玉を相手側に押し込む。

和也:「ぬおおおおお・・・・・」 ずるっ! 「ふべっ!?」

理奈・ひなた:「んんんん〜〜〜・・・・」 ずるっ! 「きゃあ!?」

 そしてその俺達に触発されたのか、和也達も懸命に押し合いしようとするが逆に相手に翻弄されてしまい、盛大にずっこけて応援席を沸かせる始末。いや、悪い意味じゃないんだよ?


 レフトは兄さんが、センターは俺が、ライトには剛が付いている為、並みの選手じゃあ祖父ちゃんに扱(しご)かれた俺達に敵う筈が無い。そしてほとんどの試合が勝負にならずに俺達は決勝戦へと辿り着いた。

奈緒:「ってか何気に強くないか、俺達?」

浩:「自分で言うのも何だが、このメンバーだと負ける気はしない。」

剛:「それはそうだとして、次、どうするんだ?」

ひなた:「そうだよね。だって決勝戦は比嘉さんも出てくるんでしょう?」

奈緒:「う・・・・そうなんだよね(鬱)俺、あの人嫌いじゃないけど何か苦手なんだよな。」

浩:「多分、奈緒がどの玉に行ってもあいつはそれに合わせて来そうな感じがする。」

奈緒:「はぁ・・・・・・」

ひなた:「そ、そんなに落ち込まなくても・・・・・・・」

奈緒:「いや、分かってるんだけどさ、あの人の相手をしていると疲れるんだよ。」

 俺がため息を付いていると、和也と理奈が俺達を呼びに来た。
和也:「おーい。決勝戦始まるぞ。」
理奈:「ほら奈緒。いつまでも落ち込んでないで、早く行くわよ。」
奈緒:「う〜ん・・・・・・」

 理奈に手を引っ張られながら決勝の地へと俺達は赴いた。


 決勝の相手はさっきも言った比嘉さんに、第一試合で俺と戦った結構なやり手の許田さん。後は知らないけど、見た目的に結構強そうな人達ばかりだ。

奈緒:「・・・・・・・やっぱりね(鬱)」 思わず溜息が出る。

比嘉:「お、奈緒ちゃんが相手か。ラッキー♪」

許田:「何を白々しく偶然かましてるんだお前は?煎杜がこっちだからって直前で勝手にライン変更したのはお前だろ。」

奈緒:「やっぱりそうでしたか・・・・・・・・・」 ジト目で比嘉さんを睨む。

比嘉:「な、奈緒ちゃん・・・・。そんなに見つめないでくれよ。照れるじゃないか(照)」

奈緒:「・・・・・・・はぁ。」 小さい以下略。

和也・許田:「「お前も大変なんだな。」」
奈緒:「分かってくれますか?」

比嘉:「あはははは!!(昇天気味)」

和也・許田:((駄目だこりゃ。))





ナレーション久保寺:「さあ!『スピンオフ』の決勝戦。ここまで勝ち上がって来た勇者達を紹介しよう!

 青コーナー『奈緒チーム』
レフト(左)ボール:兄さん(浩)・理奈

センター(中央)ボール:俺(奈緒)・和也

ライト(右)ボール:剛・ひなた

奈緒:「いつの間に『奈緒チーム』になったんだ?」 確か最初『エキセビジョンチーム』だったんじゃ?


 赤コーナー『奈緒ちゃん大好きチーム』

・・・・・・・って何じゃそりゃ!!?」 手元にある資料を読んだ久保寺が自分でノリツッコミを入れる。

 俺が比嘉さんを睨んだ事で、会場にいる選手全員及び、応援席、ホテル関係者、スポンサー、そして多分テレビ(放送されていたらだけど)の前にいる視聴者までも比嘉さんに視線を送った。

全員:((犯人はお前かーー!!?)) この時みんなの心はひとつになった(笑)

ナレーション久保寺:「し、失礼しました。赤コーナーは『東流チーム』です。」

レフト(左)ボール:金城(男)・玉城(女)

センター(中央):比嘉(男)・許田(男)

ライト(右):糸数(ゴツイ女)・西原(女)


 応援席にて─────────────
金城(同じバイトの子):「にぃにぃ!浩さーん!頑張ってー!!」

藍:「え?お兄ちゃんの相手って金城さんのお兄ちゃん!?」

金城:「え?そうだよ。言ってなかったっけ?」

藍:「初耳です。」


 リングの上(試合場)にて───────────
理奈:「浩さん・・・・。何か相手の男の人(金城)がこっち睨んでるんですけど何でですか?」

浩:「さあ?」

 同じバイトの金城の兄が『シスコン』とは知らず、相手を見て首を傾げる浩。



剛:「何か見てて凄いんだが、本当に女なのかこいつ?」 糸数を見て小声でひなたに話す。

ひなた:「剛、気持ちは分からなくは無いけどそれはさすがに失礼だよ。」 っと剛に言う。

糸数:「ゴツくて悪かったわね!(怒)」 っと聞こえていたのか野太い声で怒鳴る。

ひなた・剛:「「ご、ごめんなさい(_ _)」」 糸数の凄い形相で怒られて思わず謝る二人。



比嘉:「うへへへへ (´д`)」 奈緒の相手が出来て思わずだらしない笑みになる。

許田・奈緒・和也:「「「・・・・・・・・・・・・・・。」」」





 ゴーーーン・・・・・・・・・・

 ゴーーン・・・・・・

 ゴーン!!

全員:「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」

 昨日のフードファイト同様、鐘の音で決勝戦がが始まった。レフト、センター、ライト、三つの大玉を12人の勇者が押し合い、わざと力を抜いて相手を転ばせようとしたりして、最終的に何故か三つの大玉が自然と中央に集まってきたのだ。

浩:「くっ・・・・最悪だ。」

剛:「こりゃ総力戦になるな。」

 そう、全ての玉が一つに集まった為、ここからは総力戦になる。

 三分後、
ナレーション久保寺:「さあ、『スピンオフ』の決勝戦。なんと大玉が一箇所に集まってしまい総力戦になって硬直状態になりましたがスポンサーの木野さん。貴女はこの後、どうなると思いますか?」

木野(灯):「そうですね。恐らく体力の少ない女性が多い奈緒チームが多少不利になるかと。」

久保寺:「なるほど、奈緒チームには『奈緒、理奈、ひなた』という現役女子高生がいますからね。対する『東流チーム』は比嘉を除く全員が何かしら武術の類を受けてると聞きます。」

灯:「それって『東流古武術』の事ですね。」
久保寺:「おや、知っているのですか?」
灯:「ええ、まあ噂程度には。」

 ───────────と言う解説が実況席から聞こえてきた。
浩:「やっぱりこいつら『安須馬(あずま)流』の者だったのか。」

奈緒:「うぐぐ・・・・・。兄さん、知ってるの?」 押し耐えながら問う。

浩:「お前は手合いした事が無いと思うが、結構強いぞこいつら。」

奈緒:「うくく・・・・・。そ、そうなんだ。」

 だから第一試合で戦った許田はあんなに足が早かったんだ。だた、第二試合は理奈のファインプレイとアンカーが比嘉さんだったからチームとしてはあまり目立たなかっただけで、第三試合のフードファイトは和也に軍配が上がったからな。気付かないのも無理は無い。

 そして二分後、久保寺ナレーションと灯が言っていた通り、普通の女子高生である『ひなた』と『理奈』に体力の限界が訪れた。

 その所為で大玉を支えるバランスが崩れ、時が動き出したように試合が動いた。大玉が三方向に傾き始めた。

ひなた:「きゃあ!?」  足の重心が崩れ、しかも汗でマットが濡れていた為、滑った。

理奈:「も、もう駄目・・・・・・・」  体力の限界で力尽きる。

 俺の方はこの二人より断然体力はあるが相手はまだまだ全員元気そうだ。駄目だ、負けてしまう。

剛:「くそっ・・・・・・」  踏ん張る剛。

 二人が脱落した為、まずゴツイ女の人がいるライト(右側)には剛しかいない。剛も祖父ちゃんに扱かれていた為結構なやり手だが如何せん。いくら相手二人が女性だとしてもその人達も武術を携わっている人達だ。2対1じゃ敵う訳が無い。ズルズルと後退していって俺達のエリアに落とされた。これで1敗。

浩:「・・・・・・やばいな。」

奈緒:「くううぅぅぅ・・・・・・・っ」

和也:「おい、奈緒。どうするんだ?轟(剛の事)の奴、やられちまったぞ?」

奈緒:「ああ、俺達はまだ良いけど兄さんも今、一人だから・・・・・え?」 と兄さんを見ると、

浩:「・・・・・・・・(にやり)」
 兄さんは不敵に笑みを浮かべながら、大玉をジリジリと相手側のエリアに押していっているではないか。相手は二人なのに一人で対等に競り合っている。何となくその兄さんの足元を見てみると、大玉のマットに触れる接点に兄さんの片足が潜り込んでいる。あ、これってもしかして・・・・・・・

奈緒:「蒼雅(そうが)流・影柱(かげはしら)・・・・・・?」

 蒼雅流とは祖父ちゃんが代々受け継いでいると言われている流派で、空手の『剛』、柔道の『柔』、そして忍術の『極』という組み合わせ、まさに日本の格闘術の総体性である。・・・・・といってもさすがに『分身の術』とかは無いけどね(笑)。

 そして今、兄さんが使っているのは『影柱』。対象となる物体の底の接点に、己の足の踵か爪先で直接その触れている物体を『縛る』ことが出来るのだ。ちなみにこれ、兄さんと祖父ちゃん、そして今はいないけど父さんには出来て、俺には出来ない。聞くと、俺にはその才能が無いんだそうだ。・・・・・・別にいいけど。

浩:「奈緒、和也!こっちは大丈夫だ。そっちはそっちで何とかしろ!」
 段々と余裕が無くなってきたのか、ぶっきら棒に兄さんが俺達にそう言ってきた。

奈緒・和也:「「わ、分かった。」」  とりあえず、こっちはこっちで何とかしないと!

 とはいえ俺はともかく和也は普通の一般人。相手は2人とも武術の心得がある人だ(比嘉さんは知らないけど)。このままじゃいずれ押し切られてしまう。ここは一か八か賭けるしかない!

奈緒:「和也」
和也:「くっ・・・・・何だ奈緒?」 苦悶の表情で聞き返してくる。

奈緒:「俺に作戦がある。乗るか?」

 ごにょごにょごにょ・・・・・・・・

和也:「・・・・・・それはいいが、危険は無いだろうな?」

奈緒:「大丈夫。一線を抜けられれば俺達が勝つ。」
和也:「わかった。じゃ、行くぞ!」

 そう言って和也は最後(?)の力を振り絞り、相手に対抗する。

 そして俺は、一気に3〜4Mくらいバックステップし、大玉に向かって助走してスライディングした。

比嘉:「・・・・・え?」
許田:「ぬ?」

 大玉の下から潜り込んだ俺はそのまま大玉を浮かせ、相手の押し元へと辿り着き、

奈緒:「うりゃ!!」

許田:「んな!?」
比嘉:「あれ?」

 そのまま二人に足払いをした。もちろん怪我しない様に足だけを払うだけだけど。

和也:「よし!」

 完全にフリーになった和也がそのまま相手側のエリアへと持っていく。よし、勝てる!


 ・・・・・・・と、誰もが思ったその時、

??:「どすこい!!」

 ドカン!!

和也:「ぐふおぉ!?」

 誰かが和也の横から突然現れて和也を真横に吹っ飛ばしたのだ。あのゴツイ女の人、糸数さんだ!(怖)

 軽く4メートル位飛んだけど大丈夫かな和也?・・・・・ってそれどころじゃない!大玉はどこ!?

 俺は玉の飛んで行った方を見ると大玉は俺達のエリアと相手側のエリアの境目を飛んでいる。

 ・・・・・・いや少しこちらに傾いているじゃないか!?拙い!負ける!

 しかし諦めかけたその時、

??・???:「「せーの・・・・・えいっ!!」」

 意外な奴等が・・・・・理奈とひなたもいつの間に復活したのか、大玉の軌道に合わせて体当たりしたのだ。これによって大玉の軌道がズレて、ギリギリで相手エリアに落ちた。これで一勝一敗。勝負は兄さんの大玉で決まる。

 しかしそこで相手側の選手全員が残っている一つの大玉に集まって来たではないか!拙い、兄さんがピンチだ!
 すかさず俺達も残っている大玉に集まるが、そこでちらっと見たけど和也がさっきの糸数さんに殺られて(笑)完全に伸びている。相手側ではさっき俺が足払いした時に、許田さんは受身を取っていたのだが、比嘉さんは何故か打ち所が悪かったのか後頭部に瘤が出来ていてこちらも伸びていた。剛はいない。どこ行った?

 そして残った一つの大玉を互いに押し合おうと全員が組み合ったその瞬間、


 バコッ・・・・・!


全員:「「「「・・・・・・・・・・・・・・。」」」」

 今まで交換もしないで(っていうか最初から予備が無い)同じ物を使い続けた結果、今の衝撃で残った一つの大玉が破壊してしまったのだ。これにはもう・・・・・・・

ナレーション久保寺:「これは・・・・・どうしましょうか木野さん?」

灯:「予備の大玉はもうありませんしね。ここは引き分けしかないでしょう。」

久保寺:「ですね。では『スピンオフ』決勝戦は引き分けということで・・・・・・・・・」

 ナレーションの久保寺が締めようと俺達のいるステージに目を移すとそこには、

金城(バイトの子の兄):「てめーか!俺の妹をたぶらかしてる奴ってのは!?(怒)」
浩:「はあ!?何言ってんだお前?妹って誰の事だ!?」

 話の見えてこない口論を続ける二人。兄さんには何の事なのか分かってないらしい。

理奈:「和也の仇ー!」
ひなた:「剛の仇ー!」
西原:「わ!?ご、ごめんね!・・・・ってかそこで気絶(和也の事)してるのは私の所為じゃない!」
玉城:「ま、まあまあ、みんな落ち着いて(汗)」

 K.Oされてしまった(笑)恋人の仇を取るつもりなのか取っ組み合っている三人となだめる人。

許田:「おーい、大丈夫かー?」
和也・剛・比嘉:「「「・・・・・・・・・・・・・・。(気絶中)」」」
許田:「駄目だこりゃ(笑)」

 剛はさっき場外に大玉を落とされた時、糸数にプレス(圧し掛かり)を喰らって圧死中(笑)そしてその後、糸数は和也に思いっきり横から不意打ちで張り手を喰らわして和也は脳震盪にてダウン(笑)。比嘉さんは俺がやった事なんだけど、やっぱり打ち所が悪かったらしくまだ起きて来ない。いや、起きなくていいよ?

奈緒・糸数:((こいつ・・・・・できる!))

 互いに互いの値踏みをする二人。その間には火花が散っているようだ。

久保寺:「えーっと、何時まで続けるつもりなんでしょうか?」

灯:「でも何か微笑ましいですよね♪」

久保寺:「どこが!?」

 中継も忘れ、普通に突っ込んでしまうナレーション久保寺。この灯と久保寺のコントも沖縄の視聴率を上げる結果となることは後日明らかになるが、今は誰にも分からない。

 つづくよ?





 っという事で第七話、いかかだったでしょうか?私としてはさっさと夏休み編を終わらせて学校編に行きたいのですが、やはり順番は守らないといけません。・・・・・てことで後2、3話くらいは沖縄にいる事になりますがお付き合い下さいね(_ _)。

 ちなみに予告として次の話から奈緒の父親が登場します。名前はまだ決まっていませんが(笑)

 ではまた次回にお会いしましょう♪(今回はおまけ無し)



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