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 カーテンの隙間から朝を告げる光が溢れて来る。
「ピピッ、ピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ」
 
 目覚まし時計が鳴り出した。
「カチッ」
 
 まだはっきりとしない意識の中、俺は目を覚ました。
「ふぅ〜、もう朝かー。俺も今日からいよいよ高3かぁ……あれ?」
 
 何だか自分の声に違和感があった。
 声がいつもと全然違うのだけれど……風邪? そんなわけは無いか。
 まあいっか、とっとと着替えるとしよう……。
 
 タンスへと行きタンスを開ける。
 あれ? 俺のタンスってこんなのだった? それに部屋もいつもと違うような……? 
 まあきっとまだ意識がはっきりしなくて寝ぼけているのだろう。
 昨日までは春休みで不規則な生活を続けてたからなぁ……。
「……あれ?」
 
 タンスを開けたら何やら中身がおかしい。
 何で俺のタンスの中に女物の下着があるんだ……? 
 試しにもう1個下の段のタンスを開けてみる。
「……どうみても、これスカートだよな?」
 
 でもきっと寝ぼけているせいなんだ。
 寝ぼけていて意識がはっきりしてないだけなんだろうなぁ……。
 
 タンスの横を見ると、ハンガーに制服が掛かっているのに気づいた。
 ああ、今日からこれを着て再び高校へまた行くのかぁ……めんどうくさいなぁ。
 
 さてと、着替えるとするかな。
 ……でも、この制服何だか女物の制服に見えるのだけれど……。
 ま、まあきっと意識がはっきりしていないせいだろう……。
 
 一通り着替え終わったら近くにあった鏡で自分の姿を確認してみる。
「アハッ、今日もあたしかわいい……ん? ……アハッ?」
 
 自分の姿を良く確認すると……そこにはかわいい制服を着た小柄な女の子の姿が。
 そういえば何だか股が微妙にスースーするような……試しに手を当ててみる。
 次の瞬間、意識が完全にはっきりとして今までのは幻では無かったと気づいた。
 ついでに胸にも手を当ててみる……何かある。
「ま、まさかこれって……うわああああああああああ」
 
 
 この物語は……これから始まる非日常を体験する少年の物語……。
 
 
 



 はちゃめちゃ学園生活

 
 作:STS

 
 
 
 い、一体何が起こったんだ!? 俺が女の子になっている!? 
 俺が女の子だ〜わ〜〜〜〜〜い! ……って、喜んでる場合じゃねええええ! 
「愛梨、起きたの? 今日は中学校の入学式だからどんどん準備してね」
 
 下の階から誰かの声が聞こえた。
 愛梨……? あれ、今の俺って女の子だよね……? 愛梨って俺の事? 
 まあ俺が今女の子で愛梨でこの部屋に居るって事は……。
 理由はわからずとも、俺が今愛梨と言う女の子になってしまっている事は間違いない。
 何でこんな事に……ま、まあ考えてもしょうがないか……。
 とりあえず今日は新学期だし、一旦下に下りてご飯を食べながら考えるとしよう。
 
 
「愛梨、起きたのね。朝ご飯そこに出てるから食べてね」
「う、うん……」
 
 ついつい「あんた誰?」って言おうとしちゃったけれど今の俺は愛梨なんだよな……。
 きっとこの人は愛梨の母親なんだろう。
 さっき1階から聞こえたのと全く同じ声の人であった。
「今日から愛梨もいよいよ中学生だからね。初日は時間に余裕を持って出るのよ」
「え? 中学生……? どこの中学校なの?」
「何言ってるの、すぐ近くのM中学でしょ?」
 
 M中学……それって、俺の母校じゃないか? 
 となると……今俺の居るこの家がどこかまではわからないけれど、本来の俺の家とそこまで遠くは無いみたいだ。
 ん、俺が今ここに居るって事は……本来の俺の体は今家に居るのか? 
 気になる……とりあえずまずは自分の家に行って確かめてみるべきかな……。
「愛梨、何ボーッとしてるの? 早く食べないと遅くなるわよ」
「あ……は、はーい……」
 
 ま、まあ俺が今愛梨な以上は入学式へ行くしかないのか……。
 自分の家へは終わってから向かってみるしかないのか……。
 
 
 
 
「行ってきまーす」
「愛梨、気をつけて行って来るのよ」
 
 何で女の子になってしまったのか分けのわからないままであったが、俺は朝ご飯を食べてM中学へと向かった。
 考えたって今はまだわからないしどうしようもない……流れに身を任せるのみである。
 それにしてもこの制服のスカート、すごくスースーするなぁ……慣れてないせいかな? 
 
 M中学へ只管ただ歩いて行く……それにしても、1人で登校するのも寂しい物だな……。
 いつもは友達とわいわいしながら高校へと行くのが日常であった。
 まあでもいきなり女の子だし、俺自身も分けがわからないし……仕方無いのかな……。
「あ、愛梨ちゃんおはよー、今日から中学生だね」
 
 途中道端で誰かに声をかけられた。
 もしかしたら愛梨ちゃんの友達だろうか? 
「あ、おはよ……あれ? 君は?」
「ん? 愛梨ちゃんどうかした?」
 
 顔を見たらその子は俺の知っている顔だった。
 俺が小学校6年生の時、1年生で同じ学校に居た花音ちゃんだったのだ。
 同じ近所って事で良くめんどうを見てたなぁ。
 時々一緒に登校したり、昼休みに花音ちゃんのお友達も混ぜて校庭でかくれんぼに付き合ったり……。
 
 その花音ちゃんが今では見違えるかのように大きくなっていた。
 俺が中学校に入っちゃってからは全然干渉も無くなってたものなぁ……。
 でも顔付きだけは昔のままと変わってないかな、一目ですぐわかった程だし。
「愛梨ちゃん?」
「え……、あ、はい」
「どうしたの? 初日早々調子でも悪い?」
「あ、いや、何でもないよ……」
「そう? 調子悪いなら無理しないでね。じゃあ一緒に学校行こうか」
「う、うん」
 
 こうして俺は流れに身を任せるがままに、花音ちゃんと一緒に学校へと登校した。
 何だか小6当時の事を思い出すようで懐かしい感じだった。
 花音ちゃん、雰囲気はちょっと大人っぽくなってて確かに見違えるようになってた。
 でも、ずっと一緒に歩いて居ると何だか昔のままかな……? と言う感じも僅かに感じた。
 
 
 
 
 
 学校へと到着した。
 学校へ来るまでの間、俺はまともに花音ちゃんと話が出来なかった。
 久しぶりで話したい事は沢山あるけれど、今の俺は本当の俺じゃないわけで……。
 いきなり女の子になっちゃっているし、花音ちゃんに対してどう接すれば良いのか迷っていた。
 普通に「俺、実はあの時の奴だ」ってこの姿で言うのもおかしいし……。
 別に誰かに俺の正体を隠してる必要もあるのかわからないけれど……でも一応正体は隠しておく事にした。
 だって普通、いきなり「本当は俺、男だよ」なんて言って誰が信じるものか? 
 
 そのような理由により、俺は一応表上は女の子を演じる事を決めたのだった。
 
 
「あ、見てみて愛梨ちゃん!」
 
 花音ちゃんが校庭に設置されているクラス票を指差した。
「ほら、私達2組で一緒のクラスだよ! 良かったね〜! !」
「あー、う、うん。私も嬉しいよ」
 
 とりあえず自分で考える「愛梨ちゃんらしい」反応をしてみた。
「これからまた1年間よろしくね!」
「うん、私もね……その、色々と聞きたい事もあるし……」
「え? 何?」
「あ、ううん、あとでいいよ」
 
 女の子の事も色々と聞いておきたいし……。
 色々と戸惑っていて朝からトイレすらも実は行ってないのよね……。
 女の子のトイレの仕方とか……。
 
 へ、変な意味で何かじゃないんだからね。
 俺が分けも分からず女の子になっちゃった以上は仕方ないじゃないか……。
 トイレをしない分けにもいかないだろうし……。
 
 
 
 
 
 教室へ入って先生が来るまでの待機中、俺は花音ちゃんと少しだけ話をしていた。
 まだ女言葉に慣れていないものであまり良く話せない感じで……。
 自分から色々と話もしたいけれど、とりあえずは花音ちゃんの持ちかけて来る話題に相槌を打つ程度であった。
 
 それにしても周りには何人か薄っすらと覚えているような顔の女の子が数人程居た。
 まあ皆花音ちゃんの同級生だろうし、俺が6年だった頃学校内の至る所で見かけていたりするのかもな。
 でも誰が誰なのか名前まではわからなかった。
 俺がはっきりと顔も名前も覚えているのは花音ちゃんだけであった。
 それには色々と理由があるのかもしれない。
 
 あの当時はまだ色々とガキ過ぎて自分のそんな気持ちには気づいてなかった。
 でも恐らく、俺はきっとあの時花音ちゃんの事が……きっと好きだったのかもしれない……。
「ガラーッ」
 
 突然教室のドアが開いた。
 どうやら先生が入って来たようである。
「おう、皆ー席に付けー」
「あ、じゃあ私席に戻るね。とは言ってもすぐ後ろだけれど」
「あ、うん」
 
 花音ちゃんの席は私のすぐ後ろだった。
 どうやら初めは仮の席として誕生日順で席が並んでいるらしい。
 どうやら俺(愛梨)と花音ちゃんは席順から察するに誕生日が近かったようなのだ。
「さて、今日から皆も中学生だ。小学校の時とは違って色々と戸惑うかもしれないが、頑張ってくれ」
 
 そう喋っている先生の顔を見ると……何だか見覚えのある顔だった。
 まあM中は俺の母校だし当然かな……? 
 確かこの先生は……俺が部活でお世話になっていた……。
「今日から皆の担任となる相澤だ、よろしくな」
 
 そうそう、テニスの部活でお世話になった相澤先生。
 何だか良くわかんない人だったけれどそんなに悪い人でも無かったな。
「じゃあまずは入学式だ。全員体育館へと移動だ」
 
 俺達クラス全員は体育館へと移動した。
 
 
 
 
 
 はぁ〜……ダルいなぁ……。
「で、あるからして。中学生としてそれは大人への第一歩であり……」
 
 校長が長話の真っ最中だ。
 未だに俺の中学時と変わっていない「長話で有名な程の」校長であった。
 あー、早く終わらないかなぁ……。
 校長の話は適当に流し、俺は色々と考え事をしていた。
 急に女の子になってしまった事……未だにこれは実は夢なんじゃ? とすらさえ思っている。
 でも朝触ったあの胸の感触……間違い無くこれは夢なんかじゃないだろう……。
 
 それに第一花音ちゃんが俺の夢に出てくるのもおかしいと思う。
 当時は確かに花音ちゃんの事が好きだったのだろうけれど、俺が中学に入って以来それっきりで。
 今更急に花音ちゃんの事を思い出すのもおかしいだろうしなぁ……。
「愛梨ちゃん、どうしたの?」
 
 花音ちゃんが小声で私に声を掛けてきた。
 とりあえず今は整列も仮の並び順で席順通りになっている。
 それなので花音ちゃんは私の後ろに居る。
「やっぱり調子悪かった?」
「あ、だ、大丈夫……」
 
 俺はあまり大きな声は出せないので、小声で言ってVサインを作ってみた。
「ならいいけれど……本当に無理しないでね」
 
 花音ちゃんの心遣いが、何だか俺の心にジーンと来た。
 
 
 
 
「以上で入学式を終了します」
 
 校長の話が長過ぎてかなり時間がかかったが……やっと入学式が終わった。
 そして入学生達は1組から順番に教室へと戻って行った。
 
 教室へ戻る途中……俺はトイレへと行きたくなった。
 朝から行ってなかった為か、尿意を感じて来た。
「花音ちゃん、ちょっとトイレ行かない……?」
 
 俺は花音ちゃんをトイレに誘ってみた。
 べ、別にさっきも言ったが嫌らしい事を考えている分けではない……。
 女の子になっちゃったからってトイレに行かないわけにはいかないしね……。
 何だか女子トイレへ行くのにためらいがあり、花音ちゃんと一緒なら……と考えてた。
「うん、いいよ。確か10分くらい休憩だよね、一緒に行こ」
 
 花音ちゃんもOKを出してくれた事だし、俺と花音ちゃんは一緒に女子トイレへと向かった。
 
 
「……」
「…………」
「………………?」
「あ、あの〜……」
「……中、入らないの? 愛梨ちゃん」
 
 や、やっぱり女子トイレ内へ入るのは何だかためらいがあるままだった……。
「ほら、休憩時間終わっちゃうから早く入ろ?」
「う、うん……」
 
 俺は花音ちゃんに軽く腕を引っ張られ、女子トイレへと入って行った。
「じゃあ私はこっちに入るね」
「う、うん」
 
 俺は花音ちゃんの1個隣の個室へと入った。
 こういうトイレ……今までは大の時でしか使った事が無かった。
 でも女の子な以上はこれから頻繁に使う事になるんだろうなぁ。
 それにしても女の子ってのは実にめんどくさい。
 トイレの時、いちいちパンツを全部下ろさなくちゃならないんだね……。
 
 パンツを脱いだらスカートがトイレの床に付かないよう、ちょっと持ち上げて便器にしゃがんだ。
 女の子のトイレとは言え、やはりトイレだけにあまり綺麗なイメージは抱けない。
 俺は何も考えずに身に任せ、用を済ませた。
 出来るだけ何も考えないようにしたせいか、特にその時は何も感じなかったが……。
 
 パンツを穿きなおす時、愛梨ちゃん(今の俺)のパンツを初めてまともに見た。
「か、かわいいパンツ……」
 
 鏡で今日初めて自分の今の姿を見た時、まだ寝ぼけてて良く覚えて無かったが……。
 でも今の俺は小柄な女の子なんだよなぁ……。
 パンツもこんなに小さくてかわいくて、お尻も小さくて……。
 
 色々と考えていると、ついつい顔が火照って来る感じがわかった。
 愛梨ちゃんの身体でエッチな想像を……。
 でも、これ以上は大人の事情により詳しくは書けないので、俺の妄想内容は各自にお任せするとしよう。
 
 おしっこをする時は何も考えていなかったので、愛梨ちゃんの大事な部分は見ていなかった。
 その辺りも家に帰ってからゆっくりと……おっと、あとは各自の想像にお任せで……。
 
 
「愛梨ちゃん、もう出られる?」
「あ、ごめん今出るよ……」
 
 俺が中で色々と考えてもたもたしている間、花音ちゃんはとっくに用を済ませて個室の前で待っていたようだ。
「ごめん、お待たせー」
「じゃあ手洗って教室に戻ろ」
 
 
 
 
 
 トイレから出た俺と花音ちゃんは教室へと戻った。
 そのまま教室で花音ちゃんと話し込む流れとなった。
 まあ相変わらず、こっちからはまともに話題を出せず相槌を打つのみだが……。
 
 それにしても花音ちゃん、他に仲の良い友達って居ないのかな? 
 学校来てからはずっと俺としか話をしていないような……。
 たまたま同じクラス内に仲の良かった同級生が居なかっただけなのかな……? 
 
 
 
 しばらく話し込んでいると、先生が教室へと入って来た。
「えー、入学式も終わり今日の日程はこれで終了、と行きたい所だが」
 
 え、まだ何かあるのか? 
 早く学校を終わらせて自分の家へ行きたいのだが……。
「その前に一通りクラス全員に自己紹介をして貰おうと思う」
 
 自己紹介? 普通こういうのって初日以降にする物じゃないのかな……? 
 ま、まあ何だか良くわかんない人だったからそうなるのかもな……。
 
 自己紹介は教室のドア側の席から順番に行われて行った。
 俺はと言うと……自己紹介で何を言えば良いのか必死に考えていた。
 だって、自己紹介ってよりこの場合他人紹介だものな……。
「次、愛梨ちゃんお願いな」
「あ、はい」
 
 この先生、苗字じゃなくて名前で呼ぶのな……何だか慣れなれしいなぁ……。
 まあ何だか良くわからない人だし……。
「こんにちは、愛梨と言います。好きな事は読書で、部活はテニスにしようかな……? なんて思ってます。よろしくね」
 
 俺はスタンダードでシンプルだが、それらしい自己紹介を適当にしてみた。
 ほとんどの人は趣味と部活を言ってたので、俺も同じように言ったのだが……。
 その時口から咄嗟に出た部活名が「テニス」になってしまっていた。
 ま、まあ中学校時代は前もテニス部だったし……それでもいいかな……。
「愛梨ちゃんはテニス部希望かー、先生は男女共に顧問だから入ったら宜しくな」
「あ、はい、宜しくお願いします……あれ?」
「ん、どうした?」
「あ、いや……何でもないです」
「そっか、次、花音ちゃん」
 
 この先生って、俺の中学時代は男子のみの顧問だったよな……。
 いつの間にか男女両方の顧問になっていたのか……。
 
 次は花音ちゃんの自己紹介が始まった。
 これからお世話になるかもしれないし、良く聞いておこうかな。
「ほとんどの人は初めまして、花音です。趣味は音楽と料理かな? 部活は私もテニス部希望です。皆さんよろしくね」
「ほぉ、花音ちゃんもテニス部希望か、入る事になったらよろしくな」
「はい、宜しくお願いします」
 
 趣味は音楽と料理かぁ……何だかとても女の子らしいなー。
 そういえば小さい頃、将来は料理人になりたいって聞いた事あったかも。
 あと、ピアノも確か上手だったかなぁ。
 
 ん、花音ちゃんもテニス部希望? 
 と言う事はもしかして花音ちゃんとは部活でも一緒になるのかな? 
 
 
「では、今日はこれにて終了だ。皆、気をつけて帰ってくれ。そうそう、明日は身体測定があるから体育着を忘れずにな」
 
 今日1日の日程はあっという間に終わった。
 それにしてもこの先生、本当に良くわからない人だなぁ……。
 普通は「規律」「礼」とかするだろうにそれすらも無しで終わりなのか。
 
 
 
 
 
 帰り道、俺は花音ちゃんと一緒に帰っていた。
 教室で花音ちゃんに「一緒に帰ろ」と声をかけられ、そのまま一緒に帰路へと着いた。
「花音ちゃんもテニス部希望なんだ?」
「うん」
「テニス得意なの?」
「いやー、実は得意なのかも好きなのかもわからないや……;」
「じゃあどうして?」
「実は出任せで愛梨ちゃんと同じ部活の名前言っちゃった、特に何も決めてなかったし……」
「吹奏楽部とかは考えて無かったの?」
「うん、最近はピアノもあまり弾かなくなっちゃったしね……」
 
 なる程なぁ、俺と同じ部活になりたくて……。
「あ、あと実はテニス部って言ったのにはもう1つ理由があるの」
「え、何?」
「実は私の好きな人が……テニス部で……」
「へぇ〜、そうなんだ」
「うん、小学校でまだ小さい頃、私のめんどうを良くみてくれてた優しいお兄さんだったの」
 
 え、それって……もしかして。
「とは言っても、まだ愛梨ちゃんに会う前の事だけれどね。愛梨ちゃんに会ったのは5年生の時の事だし」
「そっかぁ、でも中学行っちゃってからはもう会わなくなっちゃってたよね、何でテニス部ってわかってたの?」
「うん、実は中学校の近くを通りかかった時、テニス部の方を見たらそのお兄さんが居たの」
 
 へぇ〜、そうだったのか。
 花音ちゃん、俺が中学生になっちゃっても俺の事見ていてくれたんだ……。
「あれ? でも何で愛梨ちゃんが中学校以降会わなくなったとか知ってるの?」
「え? あ、いや、何でだろうねー……?」
「あはは、愛梨ちゃんっておもしろいね」
「ははは……」
 
 やばい、普通に素で言ってしまっていた。
 ちょっとは良く考えて発言しないとボロが出そうで怖いな……。
 
 
「じゃあ私はこっちだから。じゃーねー」
「うん、またね」
 
 花音ちゃんが大きく手を振りながら遠ざかって行く。
 すると突然花音ちゃんが立ち止まり、俺に大声で言ってきた。
「愛梨ちゃーん、明日からも一緒に学校行こー」
「うん、いいよー」
 
 私も大声で返した。
「じゃあ明日からはここの場所で待ち合わせねー」
「うん、また明日ー」
 
 こうして今日はここで花音ちゃんと別れた。
 
 
 
 さてと、俺もまずは一旦愛梨ちゃんの家へと戻りますか。
 それから自分の家へと向かってみよう……。
 朝、登校する時の景色は見覚えのある近所であった。
 なので、愛梨ちゃんの家から本来の自分の家の位置関係はバッチリだ。
 
 
 
 
「ただいまー」
「愛梨、おかえり。入学式どうだった?」
「うん、特に普通だったよ」
 
 俺はそそくさと部屋へと向かった。
 恐らく愛梨ちゃんの母で間違いないのだろうけれど、まだ慣れてない俺からとっては知らない女性だ。
 あまり会話が長くなるのも何だか気まずい感じで言葉につまりそうだしな……。
 
 
 
 2階にある愛梨の部屋へと入った。
 朝は色々と戸惑っていたので、改めて落ち着いた状態で愛梨の部屋を見る事になる。
 うん、どこからどうみてもこれは女の子の部屋だな……。
 愛梨の部屋の雰囲気は全体的にポップな感じになっていた。
 
 とりあえずまずは制服を脱いで私服に着替えよう。
 そしてタンスの1番上の段を開けた。
 ……そこに見えた物は愛梨ちゃんのかわいい下着ばかりであった。
 
 理性を失いそうになったので、どうしても必要な時以外はなるべく上段は開けないでおこう……。
 
 上から2段目の段を開けると、普通の私服が一通りまとめられて入っていた。
 上半身はこの服でいいとして、下は……愛梨ちゃん、スカートしか持ってないのかな……。
 まだ女慣れしていない俺はできればズボンが良かったのだが……スカートしか見当たらなかった。
 
 仕方無いので、適当に選んだ上の薄ピンクの服と合いそうなチェック柄のスカートを取り出した。
 そして、俺はあえて鏡の前で着替える為に制服を脱いでいった。
 
 愛梨ちゃん……愛くるしいかわいい体してるなぁ。
 胸にはスポーツブラ、下は今日トイレでも見たかわいい真っ白なパンツであった。
 そういえば今朝、胸を触ってもそこまで弾力は感じなかったものな……。
 まあでも、俺的にはこのくらいの程良い膨らみがちょうど好みかもしれない。
 
 このまま全部脱いじゃって愛梨ちゃんの大事な部分も拝んじゃおうかな……。
 い、いや、でもこれ以上はさすがに理性が飛んじゃうかもしれないな……。
 俺は思い止まり、私服へと着替えていった。
 
 
「愛梨ー、お昼ご飯できたよー、食べちゃってー」
「あ、はーい」
 
 どうやらもうお昼の時間のようだ。
 お腹も確かに空いている事だし、お昼を済ませてから自分の家へ向かうとしようかな。
 
 
 
 1階へ降りて台所内の席へと着く。
 お昼は数種類のサンドイッチが2個と、大変質素な物であった。
「いただきまーす」
 
 とりあえずまずはハムチーズのサンドイッチから食べてみる。
 ……こ、これは!? ……意外と美味い。
 質素そうに見えたが、味はかなり十分であった。
 
 たまごマヨネーズの挟まってるほうも食べたがこちらもなかなか。
 俺はあっという間に完食してしまった。
「ごちそうさまー」
 
 小さいサンドイッチを2つしか食べてないのに、俺はお腹いっぱいになっていた。
 普段の俺はご飯派で、茶碗2杯は食べないとお腹いっぱいにならない。
 パンなんて俺には普段は軽過ぎるのだが……。
 でも今は愛梨ちゃんだし、愛梨ちゃんの胃袋の大きさに見合えばどうやらそれで満腹になるらしい。
 
 
 
 再び愛梨ちゃんの部屋へと戻り、出かける準備をしていた。
 一応今の俺は女の子だし……鏡を見て髪を直したり、きちんと身だしなみを整えてみた。
 それにしても今の俺って……良くみるとやっぱりかわいいんだなぁ……。
 今はこのかわいい子が俺だなんて……。
 
 あれ? となると……。
 今俺がなっている本物の愛梨ちゃんは一体何処へ……? 
 
 
 
 ま、まあ考えてもわからないし仕方ないかな……。
 とりあえず俺自身がもし今もきちんと存在しているようであれば何か手がかりが判るかもしれない。
 ちょっと不安になりつつも……俺は本来の自分の家へと向かったのだ。
「行ってきまーす」
 
 
 
 
 
 愛梨ちゃんの家がうちの近所の事もあってか、数分歩いたらすぐに本来の自分の家へと到着した。
 果たして……本来の姿の俺は、今ここに居るのだろうか……? 
「ピンポーン」
 
 まあ、一応俺の家とは言っても今はこの姿だしな……。
 きちんと丁寧にまずは呼び鈴を鳴らしてみる。
 
 …………。
 
 反応が全く無い。
 
 今の時間帯は……うちは4人家族で俺、妹、母、父なのだが……。
 母はきっと出かけているのだろう、父は会社で……妹は居ないのかな? 
 あ、どうせ初日でも学校の部活だろうなぁ……。
 
 じゃあ俺は……? 
 もし仮に俺が存在していて学校へ行っているとしたら、もう家に戻っているはずだ。
 俺の学校は初日からは部活が無く、確実に終わっている時間で……。
 
 仮に俺の中に本来の愛梨ちゃんが入っている、と仮定しよう。
 そうなると愛梨ちゃんは俺の高校なんてわからないし、きっと家に居ると思われる。
 もしかして……家に居るけれど出てこないだけ? 
「カチャ」
 
 あ……。
 扉に手をやってみるとカギが開いたままであった……無用心だなぁ。
 
 
「すみませーん、誰か居ますかー?」
 
 一応玄関で確認を取ってみる。
 
 シーン……。
 
 反応は何1つ無い。
 本当に誰も居ないのかもしれないな……。
 まあ、今はこの姿言えども一応は俺の家だし……上がる事にした。
 
 
「失礼しまーす……」
 
 何故か自分自身の部屋なのに、一応断って入る俺……。
 本来の自分の部屋を捜索する事にした。
 
 部屋に入ると俺自身の姿は無く、状態も自然な感じでそのまま。
 特に何もこれと言った手がかりは無さそうだ……。
 
 その他にも家中を色々と調べたが……。
 しかし、手がかりは何1つ無かった。
 でも……俺自身の姿が無かったのが気になる。
 誰かが俺を部屋から運び出した? もしかしてずっと起きずに病気と勘違いされ、身体が病院へ運ばれているとか……。
 それとも、本来の俺自身の身体はきちんと生きていてきちんと動いているのだろうか……? 
 
 
 
 
「ただいまー」
 
 結局何もわからないまま、俺は愛梨ちゃんの家へと帰って来た。
 愛梨ちゃんの事、俺の本来の身体、愛梨ちゃんになった理由、全てが謎のまま……。
 
 (こんな状態で女の子としての慣れない生活……きちんと続けられるかなぁ……)
 
 
 
 あ、そういえば愛梨ちゃんの部屋……パソコンがある。
 今は俺が愛梨ちゃんだし……使っても大丈夫だよな……? 
 
 パソコンを使ってインターネットで調べればもしかして……何かがわかるかもしれない、と考えた。
 パソコンを起動してインターネットへと繋いでみる。
 定額制のプランを使っているようで、長時間勝手に使ってもどうやら問題無さそうだ。
 
 そしてパソコンで調べていると、有力と思われる情報を見つけた。
 俺の見つけたそのサイトは、人の魂や憑依について解説しているサイトであった。
 
 大まかにそのサイトには憑依の云々を中心として書かれていた。
 覚醒している状態、つまりきちんと意識のある相手に対しては憑依する事は出来ない。
 憑依をしていると基の人格の意識は眠りに就いているような状態が続く。
 そのまま憑依を続ければ場合によっては相手を乗っ取る事も出来てしまう。
 
 つまり、今の俺の状態はもしかしたら愛梨ちゃんに対する憑依状態なのでは? と考えてみた。
 もしそうだとすると、愛梨ちゃんの意識は今の愛梨としての俺の中で眠っているのかもしれない……。
 現に俺の身体がきちんと生きている保証は無いわけで……。
 何かしらの理由で、俺が愛梨ちゃんに憑依してしまっているのだろうか……? 
 
 それとも、愛梨ちゃんの意識は既に今の俺の中にはもう無いのだろうか……? 
 
 
 
 もし、愛梨ちゃんの意識が俺の中に眠っているのだとしたら、心で呼びかけて起こしたりも出来ないだろうか? 
 試しに心の中で愛梨ちゃんに呼びかけてみた……が、何も反応は無い。
 やはり、愛梨ちゃんの意識が俺の中にあるままなのかどうなのかも……全てが謎のままでわからない……。
 
 結局何もかもが謎でわからないまま、女の子としての1日目を終えたのであった。
 
 
 
 
「ピピッ、ピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ」
 
 朝を告げるかのように目覚ましが部屋に鳴り響く。
「カチッ」
 
 (ふぅ、もう朝か……やっぱり、女の子のままなんだなぁ……)
 
 昨日は色々と考えていたらなかなか寝付く事が出来なかった。
 目覚めは最悪な状態で眠気たっぷり……。
 
 昨日からM中の女生徒だし……今日も中学校かぁ……。
 まあ、そのうち何かしらの手がかりも判るかもしれないし……頑張って学校に行くとしよう。
 
 
 
 
「行ってきまーす」
 
 愛梨の家を出て学校へと向かう。
 そして、昨日花音ちゃんと別れた場所まで来ると花音ちゃんが待っていた。
「愛梨ちゃん、おはよー」
「うん、おはよー。時間良かったかな?」
「大丈夫だよ、私は今来たばかりだよ。じゃあ行こっか」
「うん」
 
 俺と花音ちゃんは2人で学校へと向かった。
 まあ、相変わらず話は俺が相槌を打っているばかりであったが……。
 さすがに女の子2日目ではまだ慣れないよなぁ……。
 未だにスカート自体にも股がスースーして違和感を感じている程……。
 
 
 
 
「愛梨ちゃんは好きな人、居るの?」
「へっ?」
 
 教室でホームルームが始まるまでの待ち時間、花音ちゃんに急にこんな質問をされた。
「私、昨日テニス部のお兄さんの事話したじゃん? だから愛梨ちゃんの好きな人の話も聞きたいなー」
「私の好きな人かぁ……まあ、居る事は居るけれど……」
「え? 誰々?」
「それは……」
「それは?」
 
 まさか愛梨ちゃんとして「花音ちゃん、あなたが好きです」だなんて言えないよな……。
「内緒よ、テヘッ」
 
 ここまで引っ張っておいてなのだけれど、俺は女の子らしいようなおとぼけっぽい反応を取ってみた。
「え〜、そんな〜。居るんだったら教えてよ〜」
「そ、そのうちね……」
 
 うん、俺が元の本来の俺に戻れたら……その時は花音ちゃんに……。
 あ、でも俺を愛梨として聞いているのだし関係無くなっちゃうかな……。
「キーンコーンカーンコーン」
「あ、チャイム鳴ったね。私席に戻るね、すぐ後ろだけれど」
「うん、また後でね」
 
 しばらくすると教室のドアが開いて先生が入って来た。
「皆、おはよー、まずは今日の日程から大まかに説明するぞー」
 
 すると、黒板に今日の日程がずらーっと書き出されていった。
 まずは対面式、そして先生の離脱式に……最後は身体測定であった。
 
 あ……そういえば昨日、確かに先生が言ってたな、身体測定があるから体育着を忘れずに、って。
 どうしよう……体育着、素で忘れてきちゃった……。
 まあ、きっと愛梨ちゃんのタンスのまだ見てない段に入っているとは思うが……。
 ただ単に、俺の頭に身体測定の事が無くて完全に忘れてしまっていた……。
「じゃあまずは対面式だが、準備がちょっと遅れているみたいでとりあえず教室で待機していてくれ」
 
 先生はそう言って教室を出て行った。
 先生が出て行くと、次第に教室内はわいわいと賑やかになってきた。
 俺と花音ちゃんも再び話を再開する。
「花音ちゃん、体育着きちんと持って来た?」
「うん、持って来たよー。もしかして愛梨ちゃん、忘れたの?」
「え……う、うん……」
 
 仕方無いから保健室でも行って借りるか、制服で検査を受けさせてもらうか……。
 ただでさえ慣れない女の子で恥ずかしいってのに、パンツ1枚で検査になるのだけはごめんだ……。
「あ、じゃあ私の体育着貸してあげるよ」
「え? そしたら花音ちゃんの体育着が……」
「大丈夫大丈夫! 私、体育着の予備持って来ているから」
「予備持ってるの?」
「うん、部活見学がいつから始まってもいいように学校に置いて置こうと思ってね」
「そっかー、じゃあお願いしちゃおうかな……」
 
 俺は花音ちゃんから体育着の一式を受け取った。
 あれ、でも花音ちゃん……体育着入れにはもう服が無かったみたいだけれど……。
「予備の服って本当にあるの? もう体育着入れには服が無いみたいだけれど……」
「えへへ、実は既に下に着ているんだ」
 
 そう言って花音ちゃんはスカートを少しだけめくり上げ、私にブルマーをちらっと見せてきた。
 ……も、萌え。
「……愛梨ちゃんどうしたの? 何だか顔赤いよ」
「え? あ、あはは〜何でもないよー……」
「もしかして私のスカートまくりにドキッとしちゃった?」
「えっ!? わ、私女の子だし決してそんな事は……」
「冗談だよ! そうだよね、女の子同士だもんね」
 
 実は中身は男なのですが……。
 でも花音ちゃんはその事を知っているはずがないわけであって……。
 
 そういえばこの学校って未だにブルマーなんだよね……。
 花音ちゃんにブルマーを見せられたものだから借りた体育着を確認したら、やはり下はブルマーだった。
 男としてこの学校に居る時は嬉しかったが、女の子の立場としてブルマーを穿くのは何だか微妙な心境だ。
 まあ、身体測定はまだだからきっと穿く事になるのはこれからだろうけれど……。
 
 しかも、何も考えずに流れで普通に借りちゃったけれど……これ、花音ちゃんのブルマーなんだよな。
 花音ちゃんのブルマーを俺がこれから穿く事になる、と考えると何だかドキドキしてしまう。
 まるで男の状態のまま花音ちゃんのブルマーを穿き、花音ちゃんを感じているようだ……と妄想をしてしまった。
 まあ、実際まだブルマーは穿いていないのだけれどね……。
「全校生徒へお知らせです。対面式の準備が整いましたので全生徒、速やかに体育館へ移動してください」
 
 校内放送で対面式準備完了のお知らせがあった。
「じゃあ行こっか、愛梨ちゃん」
「うん……」
「どうしたの? また今日も何だか元気無いね」
「あはは……だ、大丈夫だよ」
 
 何だか……妙に花音ちゃんを意識しちゃって、まともに顔を見れない俺であった……。


 
 


 
 
 ■あとがき的な物■
 
 初めまして、ここへは初投稿となりますSTSと申します。
 HNと言いますかペンネームと言いますか、結構適当っぽくて申し訳ありません……;
 
 この作品は第二掲示板で試験的に投稿した物の本編的な物となります。
 第二掲示板でも指摘があったように、とある作品と雰囲気が似ているかもしれないですね……。
 オススメ作品の通り、その作品が好きで結構影響されちゃった面も多々あるかもしれません。
 でもパクるつもりもありませんし、話の展開を自分なりに上手く持っていければ、と考えています。
 
 とりあえず、今回の段階では色々な事が謎に包まれたままとなっています。
 今後話を追って行くうちに、愛梨になっちゃった理由、本来の主人公自体の身体の行方等明らかになって行くかもしれませんね。
 まあ迷宮入りってオチも有りかもしれませんが……TS作品的にはどうかなぁ、と思ってしまいます。
 やはり女の子になるからには、普通は何かしらそれ相当の理由がありそうですしね……。
 
 
 さて、長くなりましたが最後まで読んでくださった読者の皆様には心底感謝致します。
 次回は「どきどき☆身体測定」的な所から話がスタートする感じになりそうです。
 
 過去にもTS小説を沢山書いていましたが……詳細は伏せておくとします。
 
 
 

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