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   皮という名のアルバイト

 作:hide109


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 0.

 会社からの帰り道、あるチラシを見つけた。

それにはこう書かれていた。

『異性になりたいと思ったことはありませんか?

一夜限りの楽しい夢をお届けいたします。

○○駅徒歩三分……。』

 馬鹿らしいと一蹴して通り過ぎようと思ったが、ただ帰るのもしゃくなので寄ってみることにした。

書かれている地図の通りに進んでゆくと、陳腐な小汚い看板にチラシの名前があった。

それは地下へと続いていて、古びた自動ドアを通し中へはいる。

「いらっしゃいませこちら×○△事務局です。ご用件はいかがでしょうか?」

「え、っと、その。通りのチラシを見て来たのですが……」

 しどろもどろに答える。チラシの内容と相手の台詞がかみ合わないからだ。

「チラシの方でございますか。失礼いたしました。当方カモフラージュとして一般の業務を致しておりまして……」

 業務員はなにやらメニューを取り出した。

「こちらになります」

 彼からメニューを受け取る。

「お客様は初めての方でしょうか?」 

「はい」

「年齢はいかががご希望でしょうか?」

 メニューを上から下まで眺めながら答えた。

「若い方がいい、十八ぐらいで」

「なら、Aコースがよろしいかと存じます」

「じゃあ、それでおねがいします」

「了解いたしました。では、しばらくお待ち下さいませ」

 にやり、と会釈をすると彼は席を立ち、奥へと消えた。

暫くすると、彼は帰ってきて席に着く。

「では、三日間のレンタルで五万円になります」

「ちょっと高くないか?」

「はあ。これくらい払って頂けませんとやっていけませんので……。でも満足していただけると僭越ながら自負して
おります」

「そうか」

「ではよろしいでしょうか」

 俺は代金を五万払った。

すると彼はにこりと営業用スマイルをして、バッグを手渡した。

「では、商品はこちらになります。後、取り扱い説明書はこちらです。何かご不明点ご質問ございましたらお伺いし
ますので……」

「もし、期待していた効果が無かったときは返品できますか?」

「もちろんでございます。もし、不良品がございましたらお手数かけますがご足労お願いいたします」

「そうですか……」

「他には何かございますか?」

「いえ、ありません」

「あ、それと一つ注意していただきたいのですが」

「なんでしょう」

「説明書にも書いてありますが期限は守ってくださいね」

「ああ、はい」

「もし返却期限を三日過ぎますと、強制的に回収することになっていますので……」

「そうですか、たぶん大丈夫だと」

「はい。では、いい夢を……」

 そうきな臭い台詞を自然な表情で小首を下げる。

 俺は荷物を持ち、踵を返して店を去る。

「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております」


 ††


 家に帰り、先ほどのバッグの中身を開けてみると、学校の制服と下着に生徒手帳、それとなにやら怪しげなゴム人

形らしき物などがあった。

それはペラペラで、割れた風船のように不気味な事になっていた。

 どうやら説明書によると、このゴム人形を洋服のように着込むらしい。

俺は着ている物を脱ぎ、右手をその中に入れてみた。

すると、右手の感覚が消える。

不思議な感覚に急かされるように左手、右足、左足と次々に着込んでゆき、最後に頭をかぶる。

その瞬間に異変が起こった。

全身の感覚が歪み、目の前がぐにゃりと歪むと、体勢を崩し床に手をつく。

だんだんと意識が遠ざかり、次第に眠るように落ちた。



 1.

 目が覚めると、そこは見慣れた部屋だった。

体が軽い、意識が次第にはれてくると異変に気づく。

立ち上がると、見慣れた自分の部屋なのにも関わらず違うようなこそばゆい違和感。

それに胸が重くて苦しいと思って目を向けると、あり得ない物がついていた。

女性のバストである。

一瞬思考が停止する。

ある文面がフラッシュバックした。

『異性になりたいと思ったことはありませんか?』

ああ。

『一夜限りの楽しい夢をお届けいたします。』

なるほど、と納得する。

本当にそんな馬鹿げたことが起こるわけ無い。

そう思っていたので理解できなかったが、それで腑に落ちた。

この理解しがたい現象も、現実に起こっているのでしかたない。

この非現実を受け入れると、ふつふつと限りない欲望が芽生え始める。

 まず、男にあって女にない下腹部に注目する。

大胆にも俺はあそこへ手を伸ばす、するとやはり、ある物はなかった。

 その後も、暫く女体を楽しんで、それに少し飽きると説明書通りに下着を身につけることにする。

全裸ではどうも具合が悪いし、肌寒かったからだ。

すこし苦戦したけれども何とかブラを着込み、同じくスカートにてこづりつつも制服を着るとやっと落ち着いた。

居間に移動し、慣れた手つきでたばこを取る。

火を付けて吸うと吃驚した。

「! けほっけほっけほっ……」

 一瞬なにが起こったのか混乱した。

けど、なんてことはない。

今は女子高生の体で、紫煙の耐性がなかったからであろう。

 さて、これから何をして遊ぼうか。 

せっかく手帳と制服があるのだし、高校生をしてみるのもいいかもしれない。

明日は平日で会社があるが知ったことか。

適当にファックスでも送っておくことにした。



 2.

 その翌日、いつものように朝六時に起床すると、手帳に書いてある情報を元に高校へ出かけた。

日常と真逆の非日常に心なしか興奮を隠せない。

周りもこの体と同じような年代の生徒が歩いていた。

すると不意に声をかけられた。

「おはよう亜里香≪アリカ≫。ねぇ、聞いてよー昨日さー友達の彼氏が……」

 訳がわからず表情が凍り付く。

が、取りあえず不意に声をかけてきた友人らしきものに相づちを重ねる。

「……でさ、ってちょっと聞いてる?」

「う、うん。聞いてるよ実春≪ミハル≫」

 なぜだかわからないが勝手に口から知らない単語が飛び出した。

「今日はどうしたの? 何か黙っちゃって」

「別に、いつも通りだよ」

「ホントー何か隠してない?」

「そんなこと無いって」

 少しの間訝しむミハルという友人。

「わかった。あれでしょあれ。なぁーんだあれかー」

 キャッキャ、と楽しげにはしゃぎ出すミハル。

「ちょっとぉ、あれって何よー」

 また、意識してないのに勝手に女言葉が出てくる。

新鮮な感じで悪くないが気味が悪い。

「あれはあれでしょ。今度あたしが一から十までお手伝いしてあげよっか」

「もー、いぢわる」

 のほほんとほほえましい会話を楽しんだ。

そのように何気ない身のうち話をしているうちに、靴を履き替え、階段を上り、教室に入っていった。

それはさながら立体的な映画を見ているみたいで嘘偽り無く楽しかった。

――まるで夢の中のようで

 若き青年時代を彷彿させる学校の授業。

懐かしさと、女性の友人とのおしゃべりするなんて言う刺激的な時間。

 体育の授業。

女子更衣室はまるで異次元かつ空想的でしかし現実で性的にも不思議な刺激を与える。

スポーツで、体を動かすたびに揺れる大きな自分の胸。

何一つとして退屈なことはなく、学校での時間は日常と比べて実に魅力的過ぎた。

時間の経過は早かった。

HRは終わり、友人に誘われて下校途中遊び回った。

 無茶をする若い少年。

キャーキャーと高い声でわめき騒ぐ女達に自分の口。

何から何まで新鮮を超越していた。

俺はそれらの余韻をできるだけ噛みしめて渋々と皆に別れを告げる。

 そして、帰宅すると、現実に、戻された。

ファックスから、上司のぼやき、散らばった自分の見慣れた部屋。

と、そのファックスの途中で身に覚えの無いファックスがあった。

『ぶー。○×△商事です。期限は後二日ですので何卒よろしくお願いします』

 不快な電子音と共に途切れる音声。

俺には何のことだかわからなかった。

思い出せないと言うことは大したことは無いのだろう。

それよりも明日学校でどうするかが大事だった。

――それからも、夢のような楽しい日々を送った。

全てをそれに優先させた。

がむしゃらに、貪った――



 3.

 そうして、三日が過ぎ、一週間が過ぎてのこと。

あたしは、いつものように学校へ通っていた。

今日は友達の○○君や××ちゃん達とパーティーだって、めちゃくちゃ楽しみ。

洋服は、昨日△△君に買ってもらった服におじさんに買ってもらったブランドバックを持って行こうと思う。

クールなブラックの色調に私好みなデザインで気に入っている。

え? あんた誰って?

やだなあ、今週は例のバイトで知らないおっさんがあたしのこと買ったみたいだけどルール破っちゃったからね。

約束の一週間たっちゃったので、どうなったのかあたしも知りません。

水蒸気みたいに蒸発しちゃったのかな? あはは!

ちゃんと、一週間たちましたら強制的に回収いたしますーって書いてあったでしょ。

え、何? あんた何者だって?

○×△商事にアルバイトでくっしゃくしゃのひょろひょろな皮になるアルバイト。

ちょっと危ないけどー、給料が高いし面白いから気に入ってる。

日給一万三千円で、ちょっとした肉体労働並、かな。

付け足しとして、着ぐるみになってる間はー、別にー、その気になれば自分でコントロールできるしー、安心?

ひょろひょろの時でもその気になれば動けたし、お客さんが着てる最中ならもっと楽に動けるよ。

なんか不思議系。

まあ、難点としてちょっときもかった。

まあこの仕事、ギャグ的で楽しかったから全部許すよ。

 というわけで、うよきょくせつあったけど、今日ので目標金額まで貯まりました。

パチパチ。

これであれもこれも買えるね、でも、だーめー。

貯金しますので。

 そう言うわけですから、これでこの仕事からは足を洗います。

短かったけど不思議で刺激あって楽しかったよ。

これからもあのアルバイトをする子がいるのでしょう。

うんうん。

じゃ、そういうことで解説終了。

出かけてきまーす。

ばいばーい。



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   後書き

 と、言うわけで短編を一つ投稿してみる。

取りあえず二時間そこらで即興に書き上げたので、描写少ないとか誤字脱字文法ミスなどあったらごめんなさい。

 皮です。本来はエッチィです。いい感じに十八禁っぽい感じになりやすいレアなカテゴリーの皮です。

なんか、やってみたかったので書いてみました。

五流ライターもどきよろしく、やっちゃいました。

楽しかったです。うん。

結構満足なので、今後は当分書かないかも。

そんな感じです。

 では、謝礼。

まず、全てお読みいただいた希有な読者様、それにこんな文章を載せてくださる少年少女文庫様ならびに関係者様、
ありがとうございました。お世話様でした。

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