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漆黒の魔王
第4話 夜明け

作:バンテツ


 

 

 

「こうなった以上、さっさと済ませます!覚悟ッ!」

青い宝石が輝く矛を構え、魔王と向き合うヴァルキリー。
少し赤面しているのは、やはりその格好が恥ずかしいのだろうか。

 

『元男とはいえ、女と戦うのは気が引けるな』

「能力は以前の数十倍です!なめないで下さい・・・・・ねッ!!」

『むっ・・・!?』

 

縦斬り、横斬り、突き。
多様な攻撃を素早く、的確にかけてくるヴァルキリー。

「てえぇいっ!」

『くっ・・・!』

矛を使った中距離からの攻撃に、武器を持たない魔王は反撃ができず、
立て続けの戦闘による疲労で、避ける事さえも困難になってきていた。

『・・・・チッ(武器を生成する暇も無い・・・!)』

 

「食らいなさいっ!」

矛先で地面を削りながら、下から斬り上げる。
魔王はかろうじて避ける事はできたが、
小石や砂が散って、魔王の視界をさえぎった。

『ッ!?』

 

「隙有りッ!!!」

 

 

 

 

 

ガキュッ!

 

 

『ぐっ・・・!!』

一瞬の隙を突いて、ヴァルキリーの矛先が魔王の左腕を斬った。
鎧の斬られた部分が砕け、実体を失って闇へと還ってゆく。

だが、腕を深く斬られたにもかかわらず、魔王の腕から血は出ていなかった。
そのかわり、魔王の左腕にはある異変が起きていた。

『・・・・・!』

 

外で遊びまくって真っ黒に日焼けした頑健な腕だったのが、
白くてか細い・・・・・そう、まるで女の腕のようになっていた。

『これは・・・・・』

 

「気づいたようですが・・・・・教えますか?サー」

「うむ、構わん。・・・教えてやらないと読者が困るしな

全身包帯ぐるぐる巻きのプロフェッサーが、仰向けで寝転がったまま答える。

「サー、イエッサー(・・・・・読者って誰?)

 

『まんまとはめられたな・・・』

変化した左腕を押さえ、ヴァルキリーの方を睨む魔王。

「そう・・・貴方もお気づきの通り、この矛には斬った相手を性転換させる機能があるのですよ。
もちろん通常攻撃を行うことも可能ですが、疲労している貴方を攻撃して、殺してしまっては元も子もありませんからね」

『・・・・・腕だけが変化している所を見ると、直撃を食らわせなければ効果が行き届かないようだが』

「なかなか鋭いですね。その通りですよ。
腕などの体の一部に当てても、その部位が変化するだけ。
この機能が完全に効果を発揮するには、相手の胸の中心に矛を突き立てるほかありません。
・・・そして、この情報を貴方に教えるということは、私には貴方を仕留める自信があるということです」

 

『・・・・ならば、やってみせろ・・・・!』

魔王が右手を伸ばすと、周囲の“闇”が集まって、
光を喰らい尽くすかのような闇黒の大剣となった。

「まだそんなものを創る力が残っていたのですか・・・」

『言っただろうが。怪物は復活させないと』

 

公園の中央、時計の下で向き合う2人。
切れかけの電灯に照らされ、途切れ途切れにその姿が見える。

純白の鎧に身を包み、矛を構える戦乙女。
漆黒の鎧に身を包み、大剣を構える魔王。

少しずつにじり寄っていく両者の間には、緊迫した空気が漂っている。

そして、次の瞬間―――

 

 

 

ザン!!

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・!」

パキン!

軽い金属音とともに、ヴァルキリーの鎧にヒビが入る。

そして、彼女が持っていたはずの矛は、その手元には無かった。

 

 

『・・・・・・・・・・・』

魔王は大剣を振り下ろした体勢のまま動かない。

その胸の中心には、ヴァルキリーの矛が突き刺さっていた。

 

『くそっ・・・・・!』

大剣が粉々に砕け散り、魔王は仰向けに倒れた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

おそるおそる、ヴァルキリーが足で魔王の頭をつつく。
魔王は目を閉じたまま動かない。

 


魔王の体がうっすらと光ると、魔王の体を包んでいた闇の鎧が消えた。

鎧が消えて現れたのは、Tシャツ短パン姿の12歳ほどの少女。
矛の機能によって性転換した魔王―――九野壱太郎である。

 

 

「やった・・・・・・・・!やりました、サー!」

「うむ・・・我らの勝利だ!」

 

 

ワアアアアアアア!!!

 

魔王を倒したと分かった途端、真夜中である事も忘れ、
仮面の男たちから勝利の大歓声が上がった。

仮面を放り投げて喜ぶ者もいれば、
なかには感動で涙を流す者もいた。

どこからかビールを取り出して乾杯している者や、
阪神優勝よろしく近くの川へダイブする者。

ラジオの深夜番組に夢中になっている者や、
周囲そっちのけでババ抜きを楽しむ者・・・・・?

なにやら全く関係ない事をしている者もいるようだが、
しかしそれでも命令は守り、公園の中に入ってくる者はいない。

プロフェッサーも達成感と喜びで顔がほころんでいた。
が、はっと我に返ると、すぐに真剣な顔つきに戻った。

「ずっと喜んでもいられん。ヴァルキリー!」

気が付くと、先程から魔王の体が光り続けている。
“怪物”がTSに共鳴して、封印が解けようとしているのだ。

「!・・・了解!すぐに第二段階に移ります!」

「ぬかるなよ」

「サーイエッサー!」

 

ヴァルキリーが矛を魔王の体から引き抜き、天にかざす。
それに合わせて、ヴァルキリーと魔王を中心にした陣が現れた。
魔法陣のようだが、呪文の代わりに複雑な数式が書かれている。

「捕縛制御システム、発動命令送信!」

ヴァルキリーの声に合わせて、数式が変化してゆく。
そして、陣の中央から天に向かって光がのびた。

光の行く先は――――

 

 

 

 

 

 

 

――――宇宙。

 

 

地上からの光を受け、今まで姿を隠していた巨大な物体が姿を見せた。

TSマシン0号機の本体にして、これから作られてゆくであろう全てのTSマシンの母体。

 

TS Management Satellite・・・・・TS管理衛星。

 

現存する科学技術をはるかに超越した存在である“それ”は、
自らのエネルギー源を受け取るために、静かに変形してゆく。

そして、パラボラアンテナのように大きく変形した管理衛星が、
今度は地上に向けて光を送った。

 

 

 

 

 

再び地上。

管理衛星からの光を受けた陣は、まばゆく輝きながら数式をめまぐるしく変化させてゆく。

「発動確認、捕縛準備完了・・・・・送信準備開始」

魔王の体から発せられる光がより強くなってきた。
それにあわせて、魔王の体が宙に浮く。

「怪物が復活します・・・・!」

「よし、捕縛陣構築!」

「サーイエッサー!」

 

プロフェッサーの命令を受け、陣から出るヴァルキリー。
そして陣の端に矛を突き立てると、空中にも陣があらわれた。
まるで檻のような形をした、球形の捕縛陣に囲まれる魔王。

そして、壱太郎の体がひときわ強く輝くと、陣の中にまばゆく光る物体が現れた。
それと同時に地面に倒れた。

 

「・・・怪物・・・・復活しました・・・・!」

「こいつが“怪物”か・・・」

まぶしくて直視はできないが、うっすらと人型をしているような気がする。
そう・・・まるで、人間の少女のような・・・・・・・・・・。

 

思わず見とれていたヴァルキリーは、はっと我に返ると、すぐに次の行程に移った。

「・・・捕縛陣、正常に稼働。エネルギー抽出開始」

ヴァルキリーの声に合わせて、再び空へと光がのび、“怪物”のエネルギーが衛星へと送られてゆく。
その途端、“怪物”の光が急に激しくなった。エネルギーを奪われて苦しんでいるのだろうか。

 

 

 

「・・・・・・・・・・メインタンク、貯蓄完了」

「ずいぶん早いな」

「凄まじいエネルギー量です。予備タンクも既に半分以上貯まってます」

「たしかに怪物じみたパワーだな。魔王もよくここまでのものを封印できたものだ・・・・・?」

プロフェッサーが壱太郎の倒れていたところを見ると、
そこに壱太郎の姿は無かった。

(・・・・・どこに消えた・・・・・?)

「サー、エネルギー満タンです」

「ん・・・ああ、分かった」

 

TS管理衛星へと続いていた光が消える。
“怪物”を覆う光も、かなり弱々しくなっている。

「“怪物”本体のエネルギー残量、ほぼありません」

「じきに消滅するだろう。捕縛陣を解除してもいいぞ」

「イエス、サー。捕縛陣、解除!」

捕縛陣が解除され、怪物が解き放たれる。
しかし、“怪物”はかなり弱っていて、半透明に透けている。
よろよろと地面につくと、そのまま消えてしまった。

 

「消えたか。・・・・・さて、次はあいつだな」

「あいつ?・・・・・!!」

プロフェッサーの見上げた方を見て、
思わず絶句するヴァルキリー。

 

 

『見事にやってくれたな・・・・・』

 

 

壱太郎・・・いや、漆黒の魔王が空中に浮いていた。
いつの間にか元の姿に戻っている上に、身にまとっている“闇”が大きく膨らんでいる。
おまけに、魔王の体からは有り余った魔力がオーラのように立ち昇っていた。

「どうにもあっけないと思っていたら、こういう事か」

『皮肉な事だが、封印が解けたことでこちらもフルパワーになれた。
それと同時に戦う意味もなくなったが・・・・・けじめはつけなければな』

そう言って魔王は再び闇を凝縮し、漆黒の鎧と大剣を再構築した。
大剣の柄には、覚醒時に砕け散ったはずの真紅の宝石がついている。

「ヴァルキリー・・・本気で行け」

「サー・イエッサー」

背中の翼の力で魔王と同じ高さまで飛び、矛を構えるヴァルキリー。
フェイスガードを下ろし、戦闘体勢をとる。

 

そして、再び戦いが始まった。

 

『せいッ!!』

驚異的なスピードで、ヴァルキリーのすぐそばまで飛んでくる魔王。
そして、そのまま大剣を上から振り下ろす。

かろうじて矛の柄で受け止めたヴァルキリーだったが、

「・・・・・っ!」

今までとは段違いのパワーに、慌てて横に受け流す。
矛を見ると、刃を受け止めた箇所にはヒビが入っていた。

「・・・やはり、もの凄いパワーですね」

『膨大な魔力を消費していた封印がなくなり、今の俺には魔力が溢れている。当然だ』

「成る程・・・・・ですが、こちらも本気を出す許可は下りました。油断なさらないように!」

そう言い終えた瞬間、今度はヴァルキリーが攻撃を仕掛けてきた。

『ッ・・・・・!』

矛の長いリーチを活かし、魔王の大剣も届かない位置から連続突きを食らわせる。
魔王は攻撃を避けつつ、体勢を立て直そうと後退するが、2人の距離はなかなか離れない。

『ふん・・・言うだけの事はあるな・・・・・だが』

魔王は突然進行方向を変え、「前に」突っ込んだ。
矛の攻撃で兜に傷をつけつつも、ヴァルキリーの懐に潜り込む。

「しまっ・・・!!」

距離が近すぎて、矛での攻撃が出来ない。

 

『せいっ!』

一瞬の隙を突いて、魔王がヴァルキリーのスカートをめくった。

「・・・・・きゃあっ!?」

突然の事に、思わず悲鳴を上げてスカートをおさえるヴァルキリー。
そして、その隙を突いて―――

 

『てぇいっ!!』

 

渾身の力をこめて、大剣を振りおろす魔王。
だが、ギリギリのところで回避された。

 

「な・・・・」

精神が女性化しているのも重なって、
顔を真っ赤にして怒るヴァルキリー。

「何をするんですかっ!!」

『攻撃する隙を作っただけだ』

しれっと答える魔王。

「それが誇り高い魔王のする事ですかっ!?」

『さぁな』

「さぁなって・・・」

『グダグダ喋ってる暇があったら、かかってこい』

「上等ですっ!!」

 

「待て!!」

「ッ!?」

 

怒りにまかせて突っ込もうとしたヴァルキリーだが、
地上から響いてきた大声に、思わず動きを止めた。

「プロフェッサー・・・!」

「スカートをめくられたぐらいで我を忘れるな!敵の思うつぼだぞ!」

「す・・すいません、サー!」

「うむ」

 

(・・・空飛んでるから、めくられなくてもパンツ丸見えだ。変身システムの改良が必要だな)

 

『チッ・・・・・立ち直られたか』

プロフェッサーの喝で、落ち着きを取り戻したヴァルキリー。
その様子を見て、魔王が舌打ちする。

「・・・・勝利のためには手段を選ばないのですね」

『策士と言ってくれ』

「いいでしょう・・・ならば、こちらも手段を選びません」

『・・・・・?』

 

「ヴァルキリーシステム、制御プロテクト開放」

“合図”と共にヴァルキリーが矛を構えると、矛が三叉槍に変形した。
程なくして、再びヴァルキリーの全身が白く光り輝き始める。

『必殺技、って奴か』

「かいつまんで言えば、そうですね」

『・・・ならば、俺も全力で行かせてもらおう』

そう言って魔王も、大剣を腰元まで持ってきて構える。

「・・・いざ」

『行くぞ・・・!』

 

気がつけば夜が明け、日が高くなりつつある。

徹夜で続いた戦いに決着が着こうとした、その時。

 

 

 

ピリリリリ・・・・

 

 

 

『「!?』」

 

突然、ケータイの着信音が鳴った。
思わず動きを止める魔王とヴァルキリー。

『俺はケータイ持ってないぞ・・・・誰のだ?』

「私も持ってませんが・・・」

「すまん。私のだ。少し待っていてくれるか?」

『あ・・・・ああ』

唐突な出来事すぎて、魔王は思わず承諾してしまった。
プロフェッサーが懐からケータイを取り出し、電話に出る。

 

ピッ

 

「もしもし・・・ああ、私だ。
・・・・・・今は大事な時なんだ。帰ってもらえ。
・・・・・・なに!?・・・・・・・そうか・・・・・・・
ああ・・・・わかった。すぐ行く・・・・・」

 

ピッ

 

「・・・・・」

『何の電話だったんだ・・・?』

 

 

 

「・・・・・撤退だ」

 

「え!?」

『なぬ!?』

 

 

「サー・・・・今、なんと?」

「今すぐ撤退だ!全員荷物をまとめてアジトへ帰るぞ!!」

「えぇ!?」

仮面の男たちは命令に従って、すぐに撤退の準備を始めたが、
魔王とヴァルキリーは納得がいかないようだった。

『待て待て待て!まだ決着がついていないだろうが!?』

「悪いが、また今度だ!貴様なら我々を倒すチャンスはいくらでもあるだろう!?」

『むっ・・・・!』

 

「サー・・・一体なぜ、そんな唐突に!?」

「TSマシン1号機の練習台にした娘がいるだろ?」

「ああ、あの元漢・・・・」

「あの娘がアジトに来ているのだ!お礼がしたいから、今すぐにでも会いたいんだと!」

「えええ!?そんな理由で!?」

 

「うるさい、行くぞ!うぬうううう・・・・・・ぬおおおおおおお!!

バキバキバキ!!ビリバリビリッ!!

ギプスを砕き、包帯を引きちぎって立ち上がるプロフェッサー。
全身ボロボロの筈なのに、人間離れした速さでアジトへ走ってゆく。
・・・一体、何が彼を突き動かすのか?

 

 

仮面の男たちも全員撤退し、
公園には魔王とヴァルキリーだけが残された。

『・・・・・なんなんだ、お前の上司は』

「さあ・・・・正直、私にもよく分かりません」

 

両者とも戦闘態勢を解き、地面に降りた。
壊れた遊具の残骸に腰を下ろす魔王。

『・・・・興が削がれた。お前ももう行くといい』

「それじゃあ、お言葉に甘えて」

『次に会う事は無いと思いたいな』

「果たして、そう上手くいきますかね?・・・・・では、さようなら」

『フン・・・』

 

ヴァルキリーも公園から去り、魔王1人だけとなった。
敵がいなくなって、必要の無くなった鎧と大剣が静かに消える。

遊具の残骸から腰を上げ、大きく伸びをする。

 

「・・・・・帰ろう」

そこにいたのは、いつもの壱太郎だった。

 

 

 

 

「ただいま」

「お帰り〜」

家に帰ると、いつもの半寝ぼけ顔で由美子が迎えてくれた。
一晩帰って来なくても、怒りもしない。普通の家庭ならありえないことだが、
九野家ではよくあることだった。

「朝ごはん出来てるよ」

「うん」

 

家族が揃って朝御飯を食べる(一般家庭ならおそらく)普通の光景。
一足先にトーストを食べ終えた壱太郎が、口を開いた。

「・・・・ねえ、母さん。質問があるんだけど」

「んー?」

真剣な顔で問う一太郎に、
トーストをかじりながら返事をする由美子。

「・・・・僕は一体、“誰”なのかな?」

「・・・・・・・・・・」

「なんだか、自分が分からないんだ。僕は本当に“九野壱太郎”なのか、そもそも“人間”なのか・・・」

「くさいこと言うわねぇ。まだそんな年頃でもないでしょうに」

「真面目に答えてよ!」

由美子は必死になっている壱太郎の頭を鷲掴みにして、
壱太郎の眼を真っ直ぐに見据えた。
そして、優しい表情で言った。

「大丈夫よ。あんたは私の子供。それ以外の何者でもない」

「でも・・・・・」

「魔王は魔王、あんたはあんた。前世なんて関係ないわよ」

「・・・・・!」

「魔王も、あんたには魔王としてではなく、あんた自身として生きて欲しいって願ってたわよ?」

「知ってたの・・・?」

「当然」

平然とした顔で答える由美子。

「じゃ、なんで教えてくれなかったの?おかげで酷い目に遭ったんだよ」

「あんたなら大丈夫だと思ったから」

「僕が魔王の生まれ変わりだから?」

「違うわよ」

「・・・・・?」

 

「あたしの息子、壱太郎ならきっと大丈夫。そう信じてたの」

 

「・・・・・・・・・・」

普段からは想像もつかない真剣な眼で、
真っ直ぐに壱太郎を見つめて言う由美子。

 

 

 

「・・・それって、単なる放任主義じゃないの?」

「・・・・・そうとも言うわね」

さくっと指摘され、壱太郎から目をそらす由美子。
反応からして、どうやら図星のようだった。

 

「壱太郎ー!遊ぼーぜー!!」

 

玄関から友達の呼ぶ声がする。
今日は日曜日。友達と遊ぶのはもはや定例行事だ。

 

「ほら、呼んでるわよ。遊んでらっしゃい」

「・・・・・うん!」

 

 

「行ってきまーす!」

「いってらっしゃ〜い」

壱太郎が友達と遊びに出かけ、
由美子は・・・

 

「さーて・・・・・

 

・・・・・おやすみ〜」

 

 

やっぱり二度寝するのだった。

 

 

 

 

 

 

公園の片隅に、赤い宝石が落ちている。
わずかに闇を帯びた、血のように紅い宝石。

 

『結果はどうあれ、これで魔王の役目は終わりだ。
首飾りに託していた前世の記憶も、そのうち消えるだろう。
あとは壱太郎・・・・・お前達の時代だよ』

 

どこからか声が聞こえたかと思うと、
宝石は音も無く崩れ、粉々になって消えた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・!」

どこかから声が聞こえた気がして、思わず振り向く壱太郎。
しかし、振り向いた先には誰もいない。

「どーした?壱太郎。早く来いって」

「・・・・ん、なんでもない。今行く!」

 

 

 

青空がどこまでも澄み渡る、爽やかな日曜の朝。
子供達の楽しそうな声が響いていた。
 

 

 

 


アトガキ?

なんてこったー!!

第3話よりさらに間が空いてしまいました。まことに申し訳ありませぬ。

えー、一応これで漆黒の魔王は終わりです。まだ明らかになってないところなんかは、
現在計画中の続編(もしくは番外編)にて明かされる予定です。

結局、壱太郎君はすぐに男に戻ってしまいましたね。
期待されていた読者の皆様、申し訳ない(大汗)

 

※内容をごっそりと加筆・修正しました。
マシになったかダメになったかは、読者次第ってことで。

 

・・・・・では、次回作で会いましょう。


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―――数日後の事。

 

「ふむ・・・・・なるほどな」

全身包帯だらけのプロフェッサーが、松葉杖をつきながら図書館で調べ物をしている。
そこへ、黒髪の美しい女性が歩いて来た。他の客も司書も、プロフェッサー除く全員が見とれている。

「サー、こんなところで何をしているんです?怪我に響きますよ」

「・・・・おお、お前か」

そう、この美女は変身を解除した幹部(ヴァルキリー)である。
髪や眼の色は元に戻ったが、性別などは戻らなかったのだ。

「例の“怪物”の正体について調べていた」

「へぇ・・・・・何か分かりました?」

文献を読みあさりながら、説明を始めるプロフェッサー。

「うむ。どうやら奴は、ドッペルゲンガーに近い特徴を持っているらしい」

「ドッペルゲンガーって・・・・あの?」

「そうだ。最初に遭遇した者の姿と能力をコピーする能力を持つ」

「と、いうことは・・・・・」

「昔、“怪物”はTS能力を持つ“何か”と出会い、その姿と能力をコピーしたのだろう。
しかし、コピーした力のあまりの強さに自分の体が耐え切れず、暴走した・・・・・
そしてその暴走を止めるために、魔王が封印したといったところだろう」

「それじゃあその“何か”とは一体・・・・・?」

「はっきりいってわからん。だが・・・・・」

プロフェッサーは読んでいた文献を閉じ、大きくため息をついた。
そして、深刻な表情で言葉を続けた。

「“怪物”がコピーした能力は、オリジナルよりもかなり劣化するものらしい。
もし今後、オリジナルに遭遇する事があっても、今の技術では制御はおろか捕獲すらも不可能だろう」

 

「・・・・・世の中って広いんですね」

「だからこそ、我々の計画もやりがいがあるというものだ」

 

 

 


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