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この作品はフィクションです。
実在の人物、団体、事件、地名などには、
いっさい関係ありません。

あってたまるか!


漆黒の魔王
第2話 魔王覚醒

作:バンテツ






気が付くと、壱太郎は見たこともない場所に立っていた。

血のように赤い空。不気味なほど黒い大地。それが地平線まで続いている。
不気味な光景のはずなのに、壱太郎はなぜか懐かしさを感じていた。

呆然と眺めていると、突然、どこからか声が響いた。

『壱太郎・・・・』

「え?誰?」

初めて聞いたようで、どこかで聞いたような声。
不思議と怖い感じはしなかった。

『時間が無い。壱太郎、俺の言う事をよく聴くんだ』

「う・・・うん」

『今、貴様に災いが訪れようとしている。それは放っておけば世界中に散らばる災いだ』

「え・・・!?」

『それを防ぐ為の手段が、お前にはある』

「・・・・・!」

あまりにも唐突で非現実的な話だったが、声には妙な説得力があった。
今、声の言う事を信じなかったら、本当に世界が滅びるような気がした。

「・・・・どうすればいいの?」

『首飾りを外せ。ひきちぎってもいい』

「・・・わかった」

これが夢で、全てが自分の妄想だったとしても別に構わないだろう。
母も良いと言っていたから、きっと大丈夫だ。問題ない。
戻ったら、間髪入れずに首飾りをぶッちぎってやれ。
壱太郎はそう考えていた。


『首飾りを外した時、全てが分かるはずだ。全てがな・・・』


この言葉を最後に、壱太郎の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

町外れの廃ビル

仮面の男たちが機材を運び、TSマシンのセッティングをしている。
窓から外を見ていた黒づくめの男に、幹部が近づいてきて言った。

「お言葉ですが、サー」

「なんだ?」

「彼の調査データから考えて、眠らせて誘拐する必要は無かったのでは?」

「まあ、普通に考えたらな」

孤立した町で育ったせいか、壱太郎はかなり純粋なところがある。
警戒されても、少し話して打ち解ける事さえできれば、簡単について来ただろう。

「でもな、あれを見てみろ」

「?・・・・・・!!」

黒づくめの男が指差した方を見ると、
トカゲのようなコウモリのような怪生物が空を飛んでいた。
不気味な声で鳴きながら、廃ビルの周りを飛び回っている。

「な、何ですかあの化け物は!?」

「あの怪物の復活を予知してきたのだろう」

「もし、九野少年を普通に連れて行ったら・・・?」

「ちょっと待て・・・・・・・・・・来たぞ」

視線に気付いた怪生物が、窓に向かって突っ込んできた。
廃ビルなのでガラスがなく、そのまま中に転がり込む。

「ギィィィィィッ!!」

「っ!サー!!」

声を上げて威嚇する怪生物。
慌てて幹部が黒づくめの男をかばう。

「落ち着け。外ならともかく、屋内で一匹だけだ。問題は―――」

 

ズゴォォォン!!

 

「―――無い」

黒づくめの男の鉄拳を食らい、鳴き声を上げる間もなく崩れ落ちる怪生物。
すぐに清掃担当が来て、怪生物の死体を運んでいく。

「研究室に持っていけ。後で解剖して調べる」

「イエス、サー」

「・・・・・」

「普通に連れて行ったら、道端で襲われていただろうな」

「・・・・何も知らず、申し訳ございませんでした、サー!」

「構わんよ。結局襲ってきたんだ、無駄金を使ったことには変わりない」

 

土下座する幹部を黒づくめの男がなだめていると、
白衣を着た仮面の男が報告をしに来た。

「サー、準備完了です」

「そうか。じゃあ始めるぞ」

「「サーイエッサー!」」

眠っている壱太郎を椅子に座らせ、電源を入れる。
装置が低く唸り、怪しげなランプが点灯する。

「固定しなくてもよろしいので?」

「最低でも後1時間は寝ているはずだ。問題ない」

「イエス、サー。了解です」

ひとつスイッチを入れるごとに、唸る音が大きくなる。
それに呼応するように、壱太郎の体が光を帯びてきた。

「共鳴しています。やはりこの方法で開放できるようですね」

「性転換の力を持つ怪物は性転換の力で蘇る、か。妥当だな」

(しかしそうすると、あの首飾りは何だ?・・・・・・・・・・・・・・・・まさかな)

「どうしました、サー?」

「いや・・・・なんでもない」

エネルギーが限界まで溜まり、TSマシンの準備が完了した。
黒づくめの男が最終起動用のレバーを握る。

「いくぞ・・・・!」

ゆっくりとレバーが下がっていく。
幹部と仮面の男たちが、固唾を飲んで見守っている。
完全にレバーが下がり、マシンが起動しようとした瞬間―――

 

 

―――目覚めた壱太郎が、首飾りを思い切り引きちぎった!

 

 

「なにっ!?」

壱太郎を覆っていた光が消え、“闇”が壱太郎を包む。
TSマシンはその闇に弾かれるように破損し、機能を停止した。
慌てて装置から離れる黒づくめの男。

「くそっ・・・!やはりか!」

「サー!一体これは・・・・!?」

「あの首飾りはストッパーだったんだ!封印の解除を防ぐ為の―――」 

 

『その通りだッ!!』

 

「!?ぐぉあっ!!!」

黒づくめの男は突然吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
血を吐いて、床に崩れ落ちる黒づくめの男。

「が・・・くそ・・・・・っ!」

辺りを見回すと、仮面の男たちは既に全員気絶させられ、
幹部もうつ伏せになって倒れていた。

「ゴフッ・・・気づくのが遅かった。“魔式転生”・・・・自ら怪物を抑えていたとはな・・・!」

『俺自身、たった今思い出したんだがな』

 

黒づくめの男を吹き飛ばしたのは壱太郎のようだったが、明らかに様子がおかしかった。
喋り方や性格が変わっており、眼の下にクマができている。そしてなにより、
壱太郎の身体を取り囲んでいる“闇”が、尋常ではない雰囲気を出していた。

「九野壱太郎・・・いや、伝説に在りし魔物“漆黒の魔王”・・・!!」

『怪物の力を利用しようとしてたんだろうが、そうはさせん』

「現代科学を遥かに超えた、我が超科学ならば制御は可能だ!」

『できる、できないの問題じゃねェ。“やらせない”んだ』

「我が野望の為に、やってみせる!戦闘要員収集!!」

黒づくめの男が号令をかけると同時に、武装した仮面の男が大量に現れた。
気絶している連中を他の部屋に運び、すばやい動きで壱太郎を取り囲む。
幹部も何時の間にか意識を取り戻して、完全武装していた。

「準備完了です!」

「うむ、ご苦労」

 

「「我等のプライドに賭けて貴様を倒し、怪物を手に入れる!覚悟しろ!!」」

 

『・・・・・・』

窓に腰掛けて見物していた壱太郎は、無言で立ち上がった。
それに合わせて、壱太郎を取り囲んでいた“闇”が凝縮し、黒く輝く鎧となる。

鎧を身に纏った壱太郎――――漆黒の魔王は、ニヤリと笑って言った。

 

 

 

『それじゃあ、始めようか』

 

 

 

続く


アトガキ?

えーと、どちらの味方をしたら良いのかな?(爆)

今回、予想を裏切られた人が多いのではないでしょうか。
あとちょっとで壱太郎が女の子になっていたのに!って。

次回の話では、多分間違いなく(?)TSあります。
数少ない(爆)読者の方々、もうちょっと待って下さいませんか(汗)

 

では、また。


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