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この作品はフィクションです。
実在の人物、団体、事件、地名などには、
いっさい関係ありません。

あってたまるか!


漆黒の魔王
第1話 計画始動!

作:バンテツ




夜明け。

由美子は寝起きから嫌な予感がしていた。

普段なら起きることができずに2度寝しているのに、
早朝5時に目覚め、気持ち悪いぐらい気分がサッパリしている。
彼女の経験では、こんな朝は12年振りだった。

(壱太郎が生まれた日以来ね・・・・)

それが一体何を意味するのか、由美子にはわかっていた。
なんでもない、ただの偶然であってほしかった。

「おはよー・・・あれ?母さん、今朝は早いね」

だが、起きて来た壱太郎の胸元を見て、予感は確信へと変わった。
首飾りの赤い宝石が、黒に染まっている。

(“最厄日”――――どうしようもないわね)



「母さん?どうしたの?」

とても真剣な顔で悩んでいる母を見て、壱太郎は不安になっていた。
普段、母がだらけているせいか、今朝は別人のように見える。

「なんでもないわ。さ、遊んどいで」
「?・・・・うん!」

出勤(?)許可を得て、いつもの早脱ぎで服を着替える。

「あ、まって」

いざ玄関から飛び出そうとしたとき、いきなり母に呼び止められた。
勢い余ってこけそうになりつつも、母の方に振り返る。

「なに?」
「身の危険を感じたら、首飾りを外しなさいね」
「・・・・・んー、わかった」

今日に限って、一体どうしたのだろう。
これまで、何があっても絶対に外すなと言われてきたのに。
さっきに真剣な表情と関係があるのだろうか。

気にはなったが、遊びたい気持ちには勝てなかった。

「じゃ、いってきまーす!」
「いってらっしゃい」

由美子は、これから起こるであろう事に不安を感じつつも―――――



「寝るか〜」



―――――いつものだらけ生活に戻った。








場所は変わり、鞍谷見町廃ビル・地下

「離せ!何をするつもりだ!」

暗い地下室に、全身マッチョで毛むくじゃら、漢と書いてオトコと読みそうな男が、
仮面をつけた男たちに拘束されている。

(こいつら・・・!俺の力でも振り払えないだと!?)

「おやすみ」
「!?うぐっ・・・・!」

突然声がしたかと思うと、
仮面の男の1人に睡眠ガスを吹きかけられ、漢は深い眠りについてしまった。

「おやおや。眠かったのかな?」

闇の中から現れたのは、スーツに身を固めたビジネスマン風の男。

「君のように実験体にピッタリな男はなかなかいないのでね。練習台にさせてもらうよ」

男が右手を上げると、仮面の男たちが眠る漢を椅子に固定した。
まるで電気椅子のような形の椅子で、変な形の装置がいくつも取り付けられ、
背もたれには『TSマシン1号』と書かれている。

「起動」
「イエス、サー!」

仮面の男の1人が、渾身の力でレバーを引く。
その途端、真っ暗な地下室が閃光に包まれた。


やがて光がおさまると、椅子に固定されていたはずの漢の姿はなく、
代わりに、純白のワンピースに身を包んだ長髪の美少女が座っていた。

「転換率100%、洗脳率87%。服装変換率98%です、サー」

幹部と思われる黒い仮面の男が、装置のモニターを確認して言う。

「そうか。・・・・おい、お嬢さんの拘束を解いてやれ」
「サーイエッサー!!」
「あれ?なんか気合入ってない?」

少女は拘束を解かれ、そばに置いてあったベッドに寝かされる。

「部屋の模様替えを」
「イエス、サー」

1人が壁のボタンを押すと、途端にライトが付き、仕掛けが作動した。
壁の色は白系のピンクに変化し、椅子は装置ごと床に沈んでいく。
汚れたタイルの床の上に、自動でフローリングが敷かれていく。
仮面の男たちはぞろぞろと部屋から出て行き、後に残ったのは
ベッドに寝かされた美少女とスーツの男だけだった。


やがて、少女が目覚めた。

「あら?ここは・・・・・」
「気が付きましたか」

キリッとした口調でしゃべるスーツの男。
男でさえときめきそうな爽やかスマイルだ。

「私は一体どうしたのですか?」

おしとやかな口調でしゃべる少女。
どうやら何も覚えていないらしい。

「あなたはこの近くで倒れていたのです。大丈夫ですか?」
「・・・・はい、おかげさまで」

天使のような美少女の、天使のような微笑み。
あまりの可愛さに、スーツの男は一瞬よろめきそうになった。
が、どうにか踏ん張り、表情を変えずに言葉を続ける。

「い、家まで連れて行ってあげましょうか」
「いえ、1人で行けますわ。有難うございました」

外に出て少女が振り返ると、そこにはピカピカのオフィスビル。
親切な人だったなと思いつつ、少女は帰路に着いた。


「ふう・・・・・ビルの外装変換も完璧だな」
「親族・知人の洗脳、戸籍の変更もすんでおります、サー」
「うむ、ご苦労だった」

男はスーツを脱ぎ、漆黒のマントを羽織った。
狂気じみた髑髏の杖をつき、黒のサングラスをかける。

スーツの男の正体は、昨夜の黒づくめの男だった。

「これで装置が完璧であることは立証されたな」
「多少の誤差は確認されましたが、計画に支障はありません、サー」
「よかろう。計画実行までのカウントダウンを」
「予定時間まであと11時間です、サー」

「ふふふふふ・・・・・待っていたまえ、九野 壱太郎君!」








「・・・それにしてもあの娘、予想以上に可愛かったなー」

「サー、何か言いましたか?」
「ん?いや、なんでもない。独り言だ」
「顔が赤いですよ、大丈夫ですか?」
「う、うむ、問題ない。ちょっと風邪気味なだけだ(嘘)」









そして、夕刻。

「じゃあなー!」
「うん!またねー」

たっぷり遊び、友人に別れを告げて帰る壱太郎。
その様子を物陰で見つめている者が2人。
例の黒づくめの男と、黒仮面の幹部である。

「サー・・・あの少年が、例の?」
「うむ。ターゲットの九野 壱太郎少年だ」

真剣な表情で話しているが、はたから見れば
物影に隠れてボソボソ言っている変人コンビである。

「私の調べによれば、彼は幼少時代、隣の帝衛洲町に住んでいたらしい」
「TS町ですか」
「そしてその帝衛洲町には、一つの伝説がある」
「伝説・・・?」
「そうだ。聞きたいか?」
「サー、是非聞かせてください」
「よかろう・・・まだ定刻には時間がある。奴が家に帰るまでに、超早口でみっちりきっちり言ってやる」
「イ・・・イエス、サー!」

聞くんじゃなかったと幹部は思った。
壱太郎の後をつけながら、あきらめて話を聞く。

「あまりにも長すぎるので要約して言うぞ。
遥か昔、世界を一撃で滅ぼすことができるほどの力を持つという、強大な魔物がいた。
しかし魔物は、その凄まじい力を使うこともなく、平和に暮らす事を望んでいた。
ある日、遥か遠い世界から怪物がやってきた。恐るべき力を持った怪物が。
怪物はその力を存分に使い、天を地に、地を天に、女を男に、男を女に変えてしまった。
困り果てた人々は魔物の住処へ行き、懇願した。『あの怪物を倒すため、力を貸してくれ』と。魔物は快諾した。
しかし怪物は予想以上に強かった。魔物は苦戦し、傷つき、敗走した。魔物は悩んだ。
我が望む平和のために、この怪物をどうにかしなければならない。悩んだ末に、魔物は人々に言った。
『これから私は、命を賭けてコイツを封印する。そのための器を用意してくれ』と。
それを聞いて、元は男だった一人の娘が出てきて言った。『私を使え』魔物はそれを聞いて驚いた。
『本当にいいのか?』すると娘は即答した。『家族のために』。てこでも動きそうにない娘の様子を見て、人々も魔物もやむなく認めた。
魔物が自分の心の臓を取り出し、呪文を唱えると、怪物がみるみる娘の体に吸い込まれていった。
そして怪物が娘の体に完全に封印されると、魔物は力尽き、岩となって眠りについた。
天と地が元に戻り、人々も元に戻ったが、怪物の封印された娘だけは元に戻らなかった。
やがて娘は結婚し、子供を産んでハッピーエンド・・・・・ってわけだ。わかったか?」

「(早すぎて全然聞き取れなかったけど)イエス、サー!」
「まあそれがどう関係するのかは後で話す。ちょうど、計画実行の時間だ」



鼻歌を歌いながら帰宅中の壱太郎。
昨日よりもより赤い、気持ち悪いほどの夕焼け空。
立ち止まってそれを見上げていると、
いきなり背後から口を抑えられた。

「むぐっ!?・・・・・むぅ」

全身の力が抜け、地面に倒れこむ。
薄れていく意識の中、壱太郎は話し声を聞いた。

「第一段階成功!」
「やりましたね、サー!」
(誰・・・?この人たち?)
『よーし、マ○ドナルドで出だし好調の祝杯といくかー!』
『『サーイエッサー!!』』
(あ、いいなー・・・・・)

そこで意識が途切れた。





続く



アトガキ?

ども、バンテツです。前回のヒント意味なし(爆)

今回TSしたのは漢(オトコ)と、黒づくめの男が語る伝説の中の人々ですね。
科学とオカルトがごっちゃごちゃ(笑)

さて次回、いよいよ壱太郎君が変身します・・・・・が、
果たしてどうなることやら。

では、また。


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