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 深夜。静まり返った漆黒の街を、疾走する一人の少年。ハッ、ハッ、と短く息を切らし、街灯の下を駆け抜ける。
 「よう少年。そんなに走ってどこ行くんだ?」
 突如、背中にかかる声。少年は、足を止める。振り返ると、そこには、よれよれのコートを着た中年男「山川夏夫」が。
 嫌なやつに出会ったものだ。
 「はは! ようやく、自分の気持ちに従うようになったか。ったく、最初からそうすれば、終里ちゃんも救われたんじゃないのか? あの娘は、心の奥底で、ずっと仲間を欲しがってたのに」
 ニヤニヤとした笑いを浮かべながら、山川は言う。相変わらず、人を小馬鹿にしたような態度。少年はムッとし、思わず言い返す。
 「うるせえよ。どうせ、あいつの心の支えになることなんてできないんだよ。オレじゃあ……三四郎先輩の代わりは無理だった」
 「お前が、全力でぶつかることにビビッてたからだろ」
 これまでのふざけた口調から一転し、ピシャリと言ってのける山川。少年は、思わずグッと言葉に詰まる。
 「好きになった相手をまた失いたくない。だから、誰も好きにならないし、誰の味方もしない。そうやって、自分の気持ち誤魔化そうとしてたやつを、誰が好きになるっつーんだ」
 少年は、言い返さない。ただ、山川をジッと睨んでいるだけ。
 本当に、つくづく人の心を見透かしてくる。
 「だけどよ、お前は変わった。ちゃんと自分の気持ち、伝えられたじゃねえか。まあ、振られちまったけどよ。もしか、今のお前なら、お友達レベルにはなれるかもしんねえぞ?」
 再び、ニヤッと笑う山川。少年は、それを無視し、再び先を目指す。
 そうだ、こんなのに構ってなんかいられない。急がないと、間に合わないかもしれない。やっと、自分の気持ちに気づいたのだから。


 「あ〜あ、行っちまったよ。さぁて、俺もボツボツ行きますか。確か、朝風ここみの新刊が今日出るんだったっけ。いや、エーテルワークスの取材がまず……」
 山川は、独り言を呟きながら、コートを翻す。
 あと、五時間くらいで夜が明ける。胸に思いを秘め、各人は「旭小学校」へ。




ホーリーメイデンズ
最終夜「明日へ」

作:流離太



 「行くぞ、渡辺!」
 「はい!!」
 秋綺と春花は、同時にオーヌサステッキを振り下ろす。
 「鳴り響け、怒りの閃光!!」
 「吹き荒れろ、青き風!!」
 「『青嵐陣』!!」
 二人が言霊を唱えた瞬間、巨大な竜巻が辺りを包み込む。
 身を捩じらせ、旋風は砂嵐を辺りに撒き散らす。
 青白い雷をまとい、ゴウゴウと轟く様子は、まるで龍虎の咆哮。
 木々を、地面を、アヤカシを、次々と食い散らかしていく。
 嵐が止むと、そこには、なにもなかったような静けさが。ただ、無数の残骸が散乱するのみ。
 「キャ――! 初めての合体技、大成功ですね!」
 春花は秋綺に抱きつき、頬をスリスリとこすりつける。まるで、羽毛布団のように柔らかな感触が、秋綺の全身へ。戦いがひと段落したこともあり、全身の緊張が緩む。
 ――碓氷も、こんなに柔らかいのかな……って、なに考えてるんだよ、俺!?
 「あれ、顔が真っ赤ですよ? もしかして『碓氷もこんなに柔らかいのかな』なんて考えていたんですか?」
 思わず、秋綺はカァッと顔を赤らめる。
 「なんでわか……いやいや、そんなんじゃないから、マジで」
 顔を離し、秋綺は顔を離す。横目で見た春花の口元には、黒い笑みが。
 多分、全部お見通しなのだろう。悔しい。
 その時。
 「春花さん、秋綺さん!!」
 昇降口から、少年の声が響く。目を移すと、そこには三四郎が。背中には、変身が解けた終里を背負っている。
 「三四郎さん!! 無事だったんですね!!」
 春花は、安堵の笑みを浮かべ、駆け寄る。
 「ええ、そちらもご無事で何よりです!」
 「ふふ、あんなアヤカシくらいに苦戦する私たちじゃありませんよ。ねえ、秋綺ちゃん?」
 「だから、その名前で呼ぶなって」
 そう言いながらも、秋綺の顔は、自然とほころぶ。どうやら、八岐大蛇復活を阻止できた様子。先ほどの妄想を忘れ、秋綺はその豊かな胸を撫で下ろす。
 「それで、夏月ちゃんと冬雪ちゃんは?」
 瞬間、三四郎の笑顔が凍りつく。背中の終里は、気まずそうに顔を背ける。
 不意に、秋綺の心を不安が駆り立てる。この二人の様子は、一体なんなのだろう?
 「ねえ、どうしたんですか? 終里さんが帰ってきたということは、夏月ちゃんたちもいるはずですよね?」
 両者とも黙りこくったまま、決して口を開かない。その表情は、この空のように暗く、沈んでいる。
 「ねえ、二人はどうしたんですか!?」
 血相を変え、春花は三四郎を揺さぶる。見かねた秋綺は、急いでそれを引き剥がす。
 「おい、やめろって」
 秋綺が春花の顔を覗き込むと、その大きな瞳は潤んでいる。
 「だって……だって、さっき戦ってる最中、とっても嫌な気分になったんです。まるで、二人が遠くに行っちゃうような……」
 春花の言葉に、愕然とする秋綺。
 それは、自分も同じ。丁度あの時、なんとも言えない悪寒が体を駆け巡った。心の中に、暗雲が立ち込める。もしかして、冬雪になにかが。
 秋綺が思考を巡らせていた時、校舎の中から、紅い影が飛び出す。息を切らせたその姿は、紛れもなく夏月。


 「夏月ちゃん!!」
 パァッと顔を輝かせ、春花は夏月の手を取る。
 春花……また会えて嬉しい。夏月は心の底から思う。だが、今はそれどころじゃない。
 「ごめん春花、こいつを治してあげて!!」
 夏月は、急いで冬雪を背中から下ろす。変身が解け、ところどころ緋色に染まったブラウス。その表情は、先程より蒼白い気がする。
 「冬雪ちゃん!?」
 春花はその翠がかった瞳を、一杯に見開く。
 「碓氷……嘘だろ?」
 呆然とした表情で、ふらふらと冬雪に近づく秋綺。冬雪の側に座り込み、その顔を覗き込む春花。二人とも、目の前のできごとが信じられないよう。
 「冬雪ちゃん……死んだら駄目ですよ。一生のお願いです、目を開けてくださいよ。冬雪ちゃん!!」
 「ったく、バッカじゃねえの? 坂田が帰ってきたのに、お前がいなくなったら、意味ねえだろが。なあ……なんとか言えよ」
 肩を震わせ、うつむく秋綺。地面には、雨でもないのに数滴の雫が。その背中に、三四郎は声をかける。
 「落ち着いてください!!」
 キッと顔を上げ、秋綺は三四郎に食いつく。
 「これが落ち着いてられるかよ!! お前だって、碓氷のことが好きだったじゃねえか!! なのに、なんで落ち着いていられるんだよ!!」
 「冬雪、生きてるよ!!」
 必死の表情で、夏月は叫ぶ。春花はハッと顔を上げ、その耳を冬雪の胸に押し当てる。
 「……動いてます。冬雪君、生きてます!!」
 興奮した表情で、春花は叫ぶ。
 「お願い春花、早く治して!! じゃないと、本当に手遅れになっちゃう!!」
 「は、はい!!」
 春花はオーヌサステッキを構え、言霊を唱える。サァッと、絹糸のように柔らかな風が頬をなで、冬雪を包み込む。傷や血、服の裂け目が、まるで、時間を巻き戻すかのように引いていく。
 その傍らで、秋綺は、三四郎の背中にいる終里に詰め寄る。
 「おい、碓氷をこんな目に合わせたの、お前か?」
 元々きつめな目を一層吊り上げ、声を震わす。そこには、押さえきれない怒気が込められている。それに対し、終里の口元には自嘲的な笑みが。
 「あーあ、碓氷先輩が受け入れるなんて言ってたけど、結局それ? くす、殺したいなら殺せばいいよ。アヤカシとも手を切っちゃったし、もう、疲れた」
 「そんなこと言わないで下さいよ、終里ちゃん!! 秋綺さんも、怒りを納めて下さい。冬雪君を刺したのは、こっくりっていうアヤカシで」
 「関係ねえよ。そのアヤカシ操ってたのはこいつだろ? 桃ノ木、さっさとその女降ろせ」
 「降ろしません!!」

 「やめて!!」

 夏月は、堪らず叫ぶ。口論を止め、一斉にに顔を向ける秋綺たち。
 辺りは、静寂に包まれる。そこには、物音一つない。
 骨が砕けんばかりに、夏月は、両手の拳をギュッと握り締める。

 「確かに……終里はダークメイデンだった。アヤカシを操ってたのも、この娘。だけど、あたしがあんなことしなければ、ここまでやらなかったかもしれない。それに……それに、冬雪だって……」
 再び視界がぼやけ、目から熱い思いが溢れ出す。唇を噛み締め、夏月はそれを押しとどめようとする。
 ダークメイデンとはいずれぶつかる。それは、夏月にもわかっていた。しかし、結果は違っていたかもしれない。みんな無事で、またいつもの日常が。だけど、もうそれは、過ぎ去ってしまったこと。
 「おい……わかるように、きっちり話せよ」
 秋綺は、極めて冷静な口調で、夏月に詰め寄る。
 「夏月さん、いいんですか?」
 心配そうな顔をする三四郎に、夏月はぎこちない笑顔を向ける。
 「うん。あたしが黙ってたからこうなったんだもん。ちゃんと話す」
 もう、誤魔化しきることなんてできない。自分のまいた種は、自分で刈り取らないと。たとえ、そのために嫌われたとしても。
 覚悟を決め、夏月は口を開く。

 夏月の口から事実が飛び出すたびに、春花と秋綺は驚きを露わにする。
 冬雪に昔、怪我を負わせてしまったこと。
 終里をいぶりだすため、三四郎を利用しようと考えていたこと。
 そのために、春花を騙したこと。

 話し終えた夏月は、二人の顔を、まともに見れない。我ながら、本当に最低なことをしたと思う。
 春花と秋綺は、相変わらず押し黙っている。多分、その目線は、軽蔑に満ちているだろう。それも、自分のしたことから考えれば、当然のこと。
 だけど、できれば……できることなら、もう少しだけ、友達でいたかった。
 夏月が、そのような考えを巡らせていた時。
 「碓氷先輩!」
 終里の驚いたような声が、耳に飛び込む。思わず、夏月はバッと顔を上げる。視線の先には、むっくりと起き上がった冬雪が。
 「冬雪!!」
 肩まであるポニーテールを揺らし、冬雪に駆け寄る夏月。そのまま力いっぱい抱きしめる。本当によかった、冬雪が生きていて。自分には、冬雪のいない世界なんて、想像もつかない。
 「ごめんね、冬雪。あたし」
 「あなた……だれ?」

 ――え?

 思わず耳を疑う夏月。
 冬雪は、不思議そうに顔を傾けている。邪気が感じられないその表情は、赤ん坊のよう。瞳には光がなく、とろんとしている。
 「おい、碓氷。こんな時に、冗談は止めろよ!」
 秋綺の言葉に構わず、冬雪は辺りをキョロキョロと見回す。
 「ねえ……わたし、なんで、こんなところに?」
 わたし? これまで女の子になった時、一度も「わたし」なんて言ったことはない。一体、冬雪に何が……。
 「これって……呪い」
 「正確には違うけど、こっくりの仕業であることは間違いないね」
 冬雪の背中から、ピョコッと何かが顔を出す。メロンパンのようなふわふわとした甲羅、ビーズのような瞳を持つ聖獣「玄武」。
 「冬雪が死なないよう、なんとかカバーしたつもりだったけど、失敗したよ。まさか、心を壊されるなんて。そうだろ、アヤカシの巫女?」
 玄武はそう言って、顔を上げる。その視線の先には、終里が。
 「おい、源。どういうことか、説明しろよ?」
 グィッと終里の胸倉をつかむ秋綺。終里は、セーラー服の襟を両手で握り締めながら、ポツリポツリと話す。
 「アヤカシ十二神将、筆頭『こっくり』は、唯一終里が生まれる前にいたアヤカシ。だから、その能力は、性転換じゃなくて、心に関するもの。心を、自在に読み、相手の心を、九本の尻尾で、まさぐる」
 「じゃ、じゃあ、冬雪ちゃんは、そのこっくりっていうアヤカシのせいで」
 終里はうなずく。
 「今の性格は、自分の体を見て、再構成されたものにすぎない。記憶や性格が、完全に破壊されてる。ホーリーアクアに変身できないだけじゃない。男だったことや、その感覚、先輩たちのことだって。ううん、自分のことだって、忘れてるはず……」
 夏月は、終里の前に割り込む。
 冗談じゃない。そう簡単に、忘れられてたまるもんか。
 「ねえ、終里! 治す方法はあるんでしょ?」
 「そうです! 確か、私と冬雪君が入れ替わった時も、一日くらいで元に戻りました。こっくりを倒したんですよね? だったら、そのうち元に戻るはずです!」
 しかし、終里はうつむきながら、ゆっくりと首を横に振る。
 「残念だけど、無理だよ。一度壊れたものは、二度と元には戻せない。たとえ巫女の力を取り戻したとしても、その時の記憶がない限り、男には戻れない」
 夏月は、底が見えないほど深い暗闇に、叩き落される。そこには、光が全く見えない。目の前の少女は、冬雪であって冬雪でない。つまり、いなくなってしまったんだ。冬雪は。結局、守れなかった。あの日、誓ったはずなのに。

 その時だった。空気が、ピンと張ったテグスのように張り詰める。

 顔が自然と強張り、瞳には緊張の色が浮かぶ。体は、まるで氷にでも閉じ込められたかのように、ピクリとも動かない。

 オォォォォォォォォォォォンン……

 ビリビリと体を震わす雄叫びが、旧校舎から聞こえる。地の底から響くような声は、まるで亡者の断末魔。
 ジットリと、夏月の体全体から、暑くもないのに汗がにじむ。心臓の鼓動は早まり、自然と息づかいが荒くなる。恐らく、ヒグマと遭遇したとしても、これほどの威圧は感じないだろう。
 刹那、夜の闇でさえ敵わないほどのどす黒い闇が、昇降口から噴出する。その勢いは、まるで、噴火口から際限なく湧き出すマグマのよう。ボコボコと泡立ち、ヌルリと漆黒の蛇が鎌首を持ち上げる。

 オォォォォォォォォォォォンン……

 再び吼える大蛇。身の丈は、約十メートルほど。その目は闇の中で紅々と輝く。大木のような八つの首からは、黒い粘液が絶えず滴り落ちている。
 「や、や、八岐大蛇!!」
 三四郎は、大きくのけぞる。秋綺は大声で怒鳴る。
 「一旦引くぞ!!」
 その声を聞くや否や、夏月は冬雪の手を引き、校門まで走る。


 「ハァ……ハァ……」
 夏月は電柱に手をつき、息を切らせる。
 ついに、蘇ってしまった。最強のアヤカシが。初代が苦戦したほどの強敵。一体、どれほどの力を秘めているのだろう。
 夏月は、旭小学校の方へ目を移す。そして、思わず、自分の目を疑う。
 月光を浴び、大蛇の首がスルスルと、まるでろくろ首のように伸びていく。ガパッと口を大きく広げ、家の瓦を喰いちぎっている。いや、家ではなく空間ごと。無残にも剥ぎ取られた場所には、ポッカリと漆黒の空間が広がっている。
 「マジかよ……あいつ」
 「八岐大蛇は人間のあらゆる闇を司る存在。光を食み、永遠の夜を作り出す」
 秋綺の言葉を受け、終里は淡々と解説する。
 「黄泉比良坂はそんな大蛇が作り出した暗黒の世界。光は月明かりだけで、時間の進み方だって現実より遅い。ほら、先輩たちが黄泉比良坂に入ったのは昼時なのに、今は深夜の二時くらい」
 「要は、竜宮城みたいなものですね?」
 三四郎の問いに、終里はこっくりうなずく。
 「だけど、黄泉比良坂と現世は統合され始めている。見て、校舎が未だに旧校舎のままでしょ?」
 言われて目を移す。確かに、相変わらず木造校舎が静かにたたずんでいる。それに、ゲートは零時でなければ現世と繋がらないはずなのに、自分たちは出ることができた。
 「大蛇が全ての光を喰らったら、陽は永遠に射さないよ」
 「あ、あいつ、そんなに危険なんですか!?」
 素っ頓狂な声を上げる三四郎。秋綺は、冷ややかに答える。
 「まあ、五人の巫女が苦労して封印したやつだ。それくらい当然だろ?」
 「どっちにしろ、早く対抗策を考えないと」
 「でも、冬雪君が……」
 三四郎がそう言った時、夏月はすっくと立ち上がる。冬雪の側を離れ、ブーツの向きを校門へ向ける。
 「おい、坂田。どこにいくんだよ?」
 「決まってるでしょ。大蛇を……倒す。あたし一人でね」
 夏月は、ギュッと唇を結ぶ。琥珀色の瞳には、覚悟の光が。
 終里の言った通り、八岐大蛇は強大。一人では敵わないかもしれない。だけど、冬雪を守るのは自分の役目。心が死んでも、せめて命だけは守らなければ。それに、これは全部自分のせい。責任を、果たさないと。
 「大丈夫、あんたたちには迷惑かけないから。だけど、せめて冬雪の側に」
 「いい加減にしてください!!」
 背中に、怒声が突き刺さる。ビクッと体を震わし、夏月は振り向く。そこには、厳しい視線を向ける春花が。
 「なんでそうやって、なにもかも背負い込もうとするんです!! 三四郎さんに嘘吐いたこともそうです。そんなことしなくたって、私たちに相談してくださいよ!! 夏月ちゃん、冬雪ちゃん、秋綺ちゃん、私の四人で、ホーリーメイデンズじゃないですか!!」
 夏月の脳裏に、初めて出会った頃の春花が蘇る。ひとりぼっちで、他人と馴染めない、どことなく冬雪に似ている少女。だけど、今の春花からは、それが感じられない。その様子は、しなやかで力強い、風そのもの。
 そのようなことを考えている夏月の肩に、ポンと白い手袋を穿いた手が置かれる。秋綺だ。
 「坂田。碓氷も渡辺も、本当に変わったよ。もう、お前に守られるだけじゃねえ。だから、もっと俺たちのこと頼ってもいいぞ?」
 呆けた表情で、夏月は口を開く。
 「あたしのこと……怒って、ないの?」
 「怒ってますよ、ものすごく! だけど……夏月ちゃんがいなくなるのは、もっと嫌です」
 ふわりと、夏月を抱きしめる春花。耳元で、小さくささやく。
 「この戦いが終わったら、みんなで縁日に行きましょう。ここにいる六人で。勿論、夏月ちゃんも付き合ってくれますよね?」
 あの時の冬雪に感じた暖かさ。どんどん重い荷物が崩れ落ち、体が軽くなっていくのを感じる。春花も冬雪も……本当に強くなったんだ。
 「春花……ありがとう」
 夏月は体が震え、それしか言えない。こんな自分を許し、また受け入れてくれるなんて。自分には冬雪しかいないと、ずっと思っていたのに。
 それを見て、秋綺は口の端を吊り上げる。
 「それじゃあ、反撃開始と行くか」
 一同は、大蛇の方へ顔を向ける。八本の首は濁流のようにくねり、空間を貪る。星空に、家々に、山に亀裂が走り、バラバラと硝子のように崩れる。確かに、急がなければならない。
 「じゃあ、俺と渡辺で大蛇抑えとくぞ。ちっと辛いと思うけど、さっきの延長戦だ。その隙に桃ノ木と源は、五芒星を東西南北にそれぞれ書く。丁度、大蛇を囲むようにな」
 秋綺はそこで、夏月に目を向ける。
 「そして、坂田は碓氷についてやってくれ」
 夏月は、冬雪に目を向ける。冬雪は脚を投げ出し、その場に座り込んでいる。その視線は虚ろで、ボゥッと宙を見つめている。
 確かに、今の冬雪は心配。だけど、これ以上、みんなに甘えてなんかいられない。
 夏月は顔を上げ、大きく首を振る。
 「あたしだって戦う!! みんなががんばってるのに、やだよ!」
 それを、秋綺は制す。
 「坂田、無理するな。お前、体中ボロボロじゃねえか」
 確かに秋綺の言う通り、テケテケとの戦いで体中は切り傷だらけ。だけど。
 「それに、碓氷はこの戦いに必要だ。メイデンズ全員が揃わなきゃ、大蛇は倒せねえ。その碓氷を引き戻せるとしたら、お前しかいないだろ。お前と碓氷の絆は誰よりも強い。そこに俺や桃ノ木が入るスペースなんてねえよ」
 「あれぇ、三四郎さんはともかく、なんで秋綺ちゃんが入ろうとするんですかぁ?」
 「う、うるせえんだよ、お前はいちいち! 例えだよ、例え」
 そんな春花と秋綺のやり取りを尻目に、終里は夏月に目を向ける。
 「坂田先輩。碓氷先輩、言ってたよ。『このまま戻れなくなったとしても、夏月のことを好きでいられると思う』って。本当に、坂田先輩のことが好きだったんだと思う。碓氷先輩はこの戦いに必要。あの人を連れ戻すのは、立派な義務だよ」
 夏月は、うつむきながら、彫像のように黙りこくる。
 しばし沈黙が続いた後、夏月は顔を上げる。その表情は、先ほどとはうって変わり、闇を照らすほど明るい。それはさしずめ、真夜中の太陽。
 「わかった。だけど、死んだりしないでよ! あたしが、このバカの目覚ますまでさ!」
 自分には、冬雪を呼び戻す責務がある。それが、自分にできる償いなら、願ってもみないこと。
 「ほんじゃ、行ってくる。桃ノ木、小便ちびってないよな?」
 「大丈夫です! 驚きすぎて、出そうと思っても出ません!」
 秋綺、春花、終里、三四郎は、それぞれの持ち場へと走っていく。それを目で見送り、夏月は小さく呟く。
 「がんばって……」
 それは、聞き取れないほど小さな声。だけど、心には届いたはず。

 「冬雪……」
 夏月は、そっと冬雪の前に座り込み、その目を見つめる。しっとりと濡れた瞳は、相変わらず視界が定まっていない。
 「あたしが知らない間に、いっぱいいっぱいがんばったんだね」
 今でも信じられない。あの冬雪が。だけど、開かずの間で見せた優しい目線。あれが、全てを語っている。本当に、冬雪は強くなったんだ。
 「ふゆ……き。それが、わたしのなまえ?」
 「うん、そうだよ。そして、あたしは夏月。あんたの幼馴染」
 キョトンと、冬雪は不思議そうに首を傾げる。こうしていると本当に、ただの女の子にしか見えない。
 「それじゃあ、あなたとわたしはおともだちだったの?」
 そっと、夏月はその艶やかな髪を撫でつける。ふわりとした柔らかな感触が、手に返ってくる。
 「驚かないで聞いてよ? 覚えてないかもしれないけど、あんたはあたしのこと好きだって言ってくれた。……本当は、男の子だったんだよ」

 サァッと、駆け抜ける夜風。月明かりを反射し、長い髪はサラサラと流れる。その様子は、空に架かる天の川のよう。

 「わたしが、おとこのこ?」
 力なく、冬雪は笑う。
 「おもしろいじょうだん……いうね。みてわからない? わたし、りっぱなおんなのこだよ」
 その言葉は、吹雪のような冷たさを帯び、夏月の胸に突き刺さる。ぐらぐらと、揺らぐ心。どんどん今までの記憶が、遠くへ霞んでいく。ひょっとしたら、冬雪は最初から女の子だったのでは? 今まで見ていたのは、長い、長い夢……。

 夏月は、自分の両頬を、手のひらで思い切り叩く。

 いけない、なに考えているんだろう。そうだ、夢で終わらせるもんか。冬雪と過ごした十四年間だけじゃない。それは、春花や秋綺と出会ったことをも否定することになる。
 「ううん。あんたは間違いなく男だった。いい、最初からよく聞いて?」
 夏月は、白樺の小枝みたいに細い冬雪の両手を、握り締める。
 絶対、思い出させてやる。冬雪には、まだ言っていないことがある。そう、大事な大事な秘密が。



 戦いは、先ほどから続いている。
 大きく首をくねらせる大蛇。
 その口中から、紅蓮の火球が次々に飛び出す。
 それは、まるで機関銃のごとく。
 勢いよく、終里たちへと迫る。
 「青春陣!!」
 春花が言霊を唱える。
 瞬間、辺りに柔らかな風が吹き抜ける。
 それは絹糸のように、優しく終里たちを包み込む。
 「くぅ……!!」
 春花は顔をゆがめ、必死にステッキを押し出す。
 「う……ぅっ!」
 が、風はこらえきれず、粉々に砕ける。
 途端、スコールのように降り注ぐ焔。
 地面が砕け、アスファルトの破片や土埃が舞う。
 そして、その猛威は、終里にも。
 それは、彼女の小さな体を、跡形もなく燃やし尽くしてしまうほど大きい。

 ――やられる!!

 サッと体中の血の気が引く。逃げることを考える暇さえない。
 そのまま火球は、終里の目前へ。
 その時、終里を大きな腕が抱きとめる。その格好のまま、二人はゴロゴロとアパートの陰へ。
 「大丈夫ですか、終里ちゃん!?」
 頭に響く、優しげな声。顔を見なくてもわかる。
 「三四郎……先輩?」
 背中に、温もりを感じる。いつも部活が終わると、自分の頭を撫でてくれた大きな手が。
 「よかった、なにもなくて。いやあ、間一髪でしたね」
 三四郎は立ち上がり、その場に終里を降ろす。そして、背中を向けたまま、口を開く。
 「終里ちゃん、ここで休んでいてください」
 え?
 「あと二箇所です。がんばれば、僕一人でもできます」
 「で、でも!」
 終里は、そこで気づく。三四郎が、足を引きずっていることに。
 ――まさか。
 「先輩……もしかして、怪我」
 「大丈夫です! こんなの……メイデンズのみなさんに比べたら……」
 にっこりと、笑顔を向ける三四郎。額からは、赤い筋が数本垂れている。
 「すみません……頼りない先輩で。これは、終里ちゃんの力になれなかった……罪滅ぼしです」
 そんなの、三四郎は全然悪くない。あれは、自分が勝手にやっただけのことなのに。だけど、その言葉が喉に引っかかり、出てこない。
 「それに、女の子だけがんばらせるって……格好悪いですよ。特別な力なんかなくたって、僕は……僕は、やってやります! お荷物になるのは、たくさんです!」
 チョークを握り締め、三四郎は歩き出す。何度も転びそうになりながら。だけど、その背中は、本当に力強い。ダークメイデンだった頃の自分なんかよりずっと。

 ――あれが、本当の強さ。
 ――碓氷先輩も、いや、メイデンズの全員がそれに支えられている。

 終里は、自分の無力さを噛み締める。前までの自分なら、わからなかった。

 ――終里もほしい。
 ――相手を倒す力じゃない。
 ――大事な人を、守るための力が。

 「じゃあ、やろうか? オレが」
 終里の視線が、声の方へと向く。そこには、頭をスポーツ刈りにした、小柄な少年が。終里には馴染み深い。ことあるごとに自分をからかい、喜ぶ存在。クラスメイトでバスケ部員の、グドンこと「野々宮 始」。
 「始!?」
 驚きを隠せない終里。なんでこんなところに? そして、なぜこの事態に驚かない?
 それに対し、始は、チッチッチと人差し指を左右に揺らす。
 「ごめん、騙してて。実は『野々宮 始』なんて人間は、実在の人物・団体とは一切関係ないんだよな、これが」
 そう言うや否や、始の体を金色の光が包み込む。神々しいほど、まばゆい光。思わず、目をつぶってしまう。
 光が弱まり、終里は、うっすらと目を開ける。
 そこには、両手で包み込めるくらいの黄色い物体が、ぱたぱたと小さい羽を羽ばたかせ、浮かんでいる。それは、小型の竜だ。黄金色の体色、ピョコンと突き出た尻尾や角、短い手足、トカゲに似た顔はどことなく愛嬌がある。
 「もしかして……『黄竜』?」
 間違いない。中央を司る、大地の聖獣。
 「へへっ、そういうこと! オレさあ、ずっとメイデンズを見てたんだぜ。先代のそのまた先代、いや、最初からずうっとずうっと。ま、人間なんかに手を貸すつもりは今日までなかったけど」
 黄竜は、ふわりと終里の前に降り立つ。
 「だけど、冬雪先輩見てて思った。この人は、自分が好きな人のためには、本当に必死なんだ。役に立つとかそういうのじゃなくて、大切な人を守ろうとする。相手が、自分のことをどう思ってようと、関係なしにな。そういうのも悪くないんじゃないかなって、考えるようになったんだ」
 黄竜は、終里に顔を向ける。同時に、固い棒のような感触が、手に訪れる。ふと見ると、そこには琥珀色のオーヌサステッキが。
 「もう、自分の気持ちに嘘を吐けない。オレは、人間を……終里をいつの間にか好きになっていたんだ。自分のパートナーとなるお前、つまり土の巫女『ホーリーガイア』を興味半分にからかっているうちにな」
 ――終里が……五人目の戦士?
 信じられない。まさか、ダークメイデンとして、メイデンズと敵対していた自分が。それにしてもあの告白、冗談じゃなかったのか。三四郎、冬雪、そして始。自分を受け入れようとする人間が、三人もいるとは。
 「オレはさっきも言ったように、お前を……お前の未来を守りたい。だから終里、力を貸してくれ」
 終里はうつむき、口を大きく歪める。
 力を貸してくれ、だって? そんなの、決まっている。
 「くすくす、碓氷先輩には貸しがあるしね。今回だけだよ」
 終里はそう言いながら、オーヌサステッキを構える。
 自分も黄竜と同じ。なにかをしてもらうために戦うのではない。相手が好きだから戦う。だからこそ、冬雪は強かったのだろう。
 「古(いにしえ)は天地未だ剖れず、陰陽(めを)分れざりし時、渾沌(まろが)れたること鶏子(とりのこ)の如くして、ほのかにして牙(きざし)を含めり。……時に、天地の中に一物生(ひとつのものな)れり。伏葦牙(かたちあしかひ)の如し。すなわち神となる。国常立尊と号(もう)す」
 言霊を唱え終えた時、金色の光が終里を包み込む。千早や手袋、ストッキングの色は黒から白、袴は紫から漆黒へと変化していく。月明かりの白と闇の黒。その姿は、まさしく夜の使者。間もなく「ホーリーガイア」への変身は完了した。
 (行くぞ、終里!)
 こっくりとうなずき、終里は駆け出す。この力で、大切なモノを守るため。そう、仲間という名の。



 「……はなしはわかった。だけど」
 冬雪は、困惑した表情を上げる。
 「しんじられない。わたし、みこなんかじゃない。ふつうのおんなのこだよ?」
 玄武は顔をゆがめ、熱を帯びた口調で叫ぶ。
 「冬雪、君にとって、みんなと過ごした記憶はそんなものなのかい!! 思い出すんだ!!」
 ビクッと体を震わす冬雪。その瞳には涙がにじみ、困惑しているよう。
 「そんなこといわれても……わたし、わたし、わかんないもん!!」
 体を縮め、冬雪は顔を覆う。とても、記憶を呼び戻すどころではない。それを見て、夏月は目を伏せる。
 「……もう、いいよ」
 途端に、玄武は焦燥を露わにする。
 「な、なにを言ってるんだ君は! 冬雪がこのままでいいのか!? それでも冬雪を」
 「いいわけないでしょ!!」
 夏月は、キッと玄武を睨みつける。
 そんなこと、わかっている。冬雪は、誰よりも大切な幼馴染。いや、もう二人で一つと言っても良いほど。
 だけど、冬雪は嫌がっている。こんな冬雪、見てられない。今思い出せないなら、ゆっくりと思い出せばいい。
 夏月は、冬雪のなだらかな肩に手を置く。
 ごめん、春花、秋綺、三四郎、終里。自分には、なにもできない。本当に、無力だ。
 夏月は、そっとささやく。
 「ひっく……ごめん、冬雪。あ、あたし……冬雪の力になれなかった……」
 今日、何度涙を流しただろう。今度泣く時は、嬉し涙って決めていたのに。
 「でも……でも、これだけは聞いて。あんたが好きだって言ってくれた時、本当に嬉しかった。あたしも同じだから」
 夏月は、冬雪に顔を寄せる。
 「たとえ、あんたが女の子のままだったとしても……あたしが好きなのは、冬雪だけなの」

 夏月は、静かに唇を重ねる。あの時と同じ、甘く、柔らかな感触が全身に行渡る。まるで、小さな果実を口に含んでいるよう。
 冬雪はそれに呼応し、夏月を抱きしめる。同時に、夏月の口に小さな舌が。それは、お互いを離すまいと絡み合う。
 「んん……」
 「ん……ふっ」
 混ざり合う唾液。同じ女の子の体だからだろう。冬雪と、これまでにないほどの一体感を感じる。息づかい、肌の温もり、胸の鼓動さえも、溶け合って一つになっていく。

 「――って、ひゃめろっての!!」
 夏月は、顔を赤面させ、冬雪に手刀をかます。
 「はみゅっ!?」
 そのショックで、お互いの舌を噛んでしまう。冬雪は顔を離し、泣き言を言う。
 「ふぇ〜ん、ひりょいよなちゅきぃ! 僕……ほんの出来ごこりょだったのにぃ……」
 「うっひゃい!!」
 プイッと顔を背け、夏月は口を押さえる。
 どこの世界に、中学生でディープキスをかます馬鹿がいるというのだ。全く、油断も隙もあったものじゃない。

 ――……「僕」?

 夏月は、ハッと振り向く。
 「ただいま、夏月」
 白い月明かりを受け、笑みを浮かべている冬雪。その瞳は、碧い宝玉のような輝きを取り戻している。
 「ふ……ゆき?」
 夏月は、呆けた表情のまま、立ち尽くす。喉からは、声も出ない。が、次の瞬間、抑えていた気持ちが一気にあふれ出す。
 「冬雪ぃっ!!」
 声を張り上げ、夏月は冬雪の胸に飛び込む。そこは暖かく、まるでお風呂にでも浸かっているかのよう。そんな夏月の頭を、冬雪は優しく撫でる。
 帰ってきた。帰ってきたんだ。冬雪が。もう、二度と会えないかもしれないと思っていたのに。
 「バカぁ! あたしが……あたしが、どれだけ心配したと思ってんの……」
 「ごめんね、夏月……本当に、ごめん」
 口で謝りながら、街の中心に目を向ける冬雪。そこには、邪気の立ちこめる、黒々とした闇が広がっている。冬雪は、碧いオーヌサステッキを握り締め、口を開く。
 「行こう。みんなが待ってる」
 「うん!」
 元気よくうなずく夏月。そのまま二人は、決戦の場へと駆け出した。



 秋綺は、迫る火球を雷槍で防ぐ。
 ガツンと、重い衝撃が何度も叩きつける。
 まるで、熱した鉄球で殴りつけられているよう。
 ――くそっ! なんて力だ……。
 これまで、様々なアヤカシと戦ってきた。しかし、この一撃一撃は、そのどれよりも強い。正直、さばくことで精一杯。
 秋綺は歯を食いしばりながら、ふっと前に目を移す。
 そこには、新幹線の勢いで、地面スレスレに伸びる首が。
 それは、ガパッと大口を広げ、秋綺をはさみ込む。
 「ぐあっっ!!?」
 歯を食いしばる秋綺。
 ミシミシという悲鳴が、体中から。
 体の芯まで、激痛が響きわたる。

 ――こんなところで負けてたまるか。
 ――こんなところで。
 ――こんなところで。

 秋綺は、その細腕に全力を込め、顎を開こうとする。
 が、それは、まるで万力のように、秋綺の体を砕こうとする。
 その時だった。
 目の前に、突如黒い影が躍り上がる。
 それは、白と黒の巫女服に身を包んだ終里。
 「地絶刃!!」
 振り下ろされる、黄金の鎌。
 まるで影のように立ち尽くす終里。それは、亡者をあの世へといざなう死神のよう。
 太い首が弾け、牙から解放される秋綺。その場に噴水のようなしぶきが立ち上る。
 「おい……その姿」
 「くすくす、そうだよ。終里が五人目の巫女。そんなことより、だらしないね。天下のメイデンズ様が」
 「うるせえ」
 不機嫌そうに顔を背ける秋綺。
 やっぱり、こいつだけは好きになれない。たとえ、こうして助けられても、素直に喜べない。いや、それはとにかく、まさか終里が五人目の仲間だったとは。
 秋綺がそのような思考を巡らせている時。
 「う……ゲホッゲホッ、ゴホッ!!」
 突如、その場にうずくまり、激しくせき込む終里。手袋がじわりと朱色に染まっていく。指の股からは、ポタポタと紅い雫が。
 秋綺は顔色を変え、終里の顔を覗き込む。
 まさか、自分を守ったせいで攻撃を? 今までの終里から、想像できない。
 「キャハハ、勘違い……しないでよ。終里はねえ、碓氷先輩への借りを、返したいだけだから。戦力が消えるのは……終里のとって、マイナス。それに、渡辺先輩よりは……マシ」
 終里に言われ、春花のいた方へと目を移す秋綺。そこには、グッタリとした春花が横たわっている。ところどころ焼け焦げた鶯色の巫女服。切れ目から見える白い肌は傷だらけ。ゆったりとした三つ網は解け、血溜まりの中に揺らめいている。
 「渡辺!!」
 急ぎ駆け寄り、春花を抱き起こす秋綺。翠がかった半開きにし、春花は息も絶え絶えに言葉を漏らす。
 「秋綺ちゃん……大丈夫ですか? 今、回復を」
 「なに言ってやがる! 自分の体力も回復できないくらいなのに……」
 秋綺は春花をその場に横たわらせ、大蛇に視線を向ける。
 「お前はここで休んでろ」
 山吹色だった巫女服は、今や朱一色に染まっている。袖もボロボロで、海草のよう。
 目が霞む。体の節々が痛む。足がガクガクと震える。正直、このまま倒れてしまいたい。
 だが、負けてなるものか。ここで倒れていては、冬雪や春花に合わせる顔がない。なにより、終里にいい格好させてたまるか。

 ――立て。
 ――立つんだ、卜部秋綺。

 秋綺は覚悟を決め、雷槍に持たれかかる。足が思うように動かない。どうやら、折れているよう。だが、関係ない。
 大蛇は首を一斉にもたげる。
 その口には、うねる炎が。

 ――来る!!

 死力を振り絞り、秋綺は身構える。
 その時、ちらちらと白いものが目に留まる。まるで、この世のものではないかのような、穢れなき色。舞い落ち、肌の上で溶けてしまうそれは――雪。
 ――なんで、こんな季節に?
 次の瞬間、胴体から離れる八本の首。
 空を舞い、大蛇の頭は、闇に霧散する。
 秋綺は口を開け放ち、二つの影を見上げる。雪が降りしきる中、ボゥッと浮き彫りにされる蒼と紅の巫女服。髪や広い袖をたなびかせながら、二人は声を揃えて言い放つ。
 「お待たせ!」
 「夏月ちゃん! 冬雪ちゃん!」
 春花は、歓喜の声を上げる。その表情には、明るい春の日差しが。まるで、先ほどまでの怪我が嘘のよう。その様子に、なんだか秋綺まで力が湧いてくる。
 「ったく、来るのが遅えんだよ」
 ニッと笑う秋綺。
 そういえば、痛みがいつの間にか消えている。恐らく、あの雪は回復の術。もう、吹雪は止んでいる。
 秋綺がそのような考えを巡らせている時、遠くから三四郎の馬鹿でかい声が響く。
 「秋綺さ――ん!! 準備、完了です!!」
 言うや否や、三四郎は仰向けにばったりと倒れる。どうやら、もう限界だったらしい。
 三四郎はよくがんばった。今は、ゆっくり休んで欲しい。これからは、自分たちの番。
 メイデンズは全員集合し、大蛇を倒す準備も整った。まさに、万全の状態。
 「よし、じゃあ作戦を発表する。いいか、やつを倒すのは今の俺たちには不可能だ。桁が違いすぎる。だから、もう一回封印する。今、桃ノ木がやつの周りに門を敷いた。源、お前はそれを黄泉比良坂に繋げてくれ。本当は俺がやろうと思ってたけど、境界を司るお前の方が適任だ。その間俺らは、やつを弱らせる」
 五人は、一斉に大蛇に目を向ける。ブクブクと沸騰する大蛇の体。そこから、まるで間欠泉が吹き上がるかのように、新たな首が現れる。
 「さっさと終わらせて……帰るぞ!」
 「「「「オ――!!」」」」
 五人は、オーヌサステッキを頭上に掲げ、交差させる。今、最後の戦いが、始まったのだ。

 八本の首から、次々と攻撃が繰り出される。
 冬雪たちは、飛び上がり、それを回避する。
 「嵐琴!!」
 「フツノミタマ!!」
 「轟雷戟!!」
 「ムラクモ!!」
 思い思いの武器を形成し、空を駆け抜ける冬雪たち。
 闇の中、蒼、紅、翠、黄の閃光がきらめく。
   尾を引きながら闇を切り裂く姿は、まるで流星。
 ひらりひらりと袖をはためかせ、縦横無尽に駆け巡る。
 怒涛のごとく攻撃は続く。
 吹き荒れる風。
 巻き起こる焔。
 突き抜ける雷。
 躍り上がる渦。
 いずれも鋭い刃となり、轟音と共に大蛇を貫く。
 その巨体に、次々と蜂の巣のような風穴が。
 次第に、大蛇は防戦一方となる。
 それに対し、メイデンズは、次第に素早さを増していく。
 目と目を通わせる四人。
 攻撃を隙間なく、敷き詰めていく。
 それは、あたかも一つの意思で動いているかのよう。

 敵は、これまでの中でも最強。満身創痍の自分たちが、まともに相手をできるはずはない。しかし、今の冬雪には、負ける気が全く起きない。多分、他のみんなも同じだろう。

 「繋がった……繋がったよ、門が!!」
 叫ぶ終里。と同時に、眩い純白の光が溢れ出す。
 そのまま地面を走り、大蛇を囲む。
 その漆黒の巨体は、白いヴェールに覆われたかのよう。
 大蛇は、首を振り回し、光をなぎ払おうとする。
 しかし、まるでそこに壁でもあるかのように、ガツンとぶつかる。
 「離れるぞ! 五方向から、やつを囲むんだ!!」
 秋綺の声に従い、冬雪たちは地面に降り立つ。


 「渡辺、まずはお前だ!!」
 「はい!!」
 春花は、オーヌサステッキに意識を集中する。  いつも一人で、光を求めていた自分。深い闇の中に飛び込み、夏月は自分の手を引いてくれた。そして、今度は冬雪と秋綺が。その恩を返してもいないうちに、倒れたくない。
 春花の体を、光が覆っていく。オーヌサステッキを振り上げ、夏月に向かってそれを放る。
 「夏月ちゃん!」


 夏月は光を、同じくステッキで受け取る。
 決して自分は人に弱みを見せなかった。じゃないと、冬雪を守れないと思っていたから。自分なんて強くない。冬雪が……いや、今はみんながいるからがんばれるんだ。
 「終里!」


 光を受け継ぎ、終里は周りに目をはせる。
 友達。そんなの、お互いの傷を舐めあってるだけのもの。そう自分に言い聞かせていた。だけど、本当は光を怖れていただけ。もう光を手放せない。三四郎と出会った、あの日から。
 「卜部先輩!」


 秋綺は、片手でそれを受ける。
 最初、冬雪たちが気に食わなかった。ベタベタして、なにが楽しいのか。群れるなんて、面倒くさいだけ。だけど、いつからだろう。冬雪たちから、離れたくないと思い始めたのは。今だけは、素直になろう。
 「頼んだぜ……碓氷!!」


 四人分の想いが、冬雪の手に圧し掛かる。
 今まで、ずっと嫌いだった。弱虫で、優柔不断で、頼りない自分が。何度変えようとしても、結局は直せない。今なら言える、メイデンズでよかったと。夏月だけじゃない。みんながいると、わかったから。
 冬雪は、スゥッと目を開ける。途端に、光は空へと駆け抜ける。冬雪の手には、天を突くほどの剣が。

 ――だから、負けられない。
 ――僕はみんなと……ずっと一緒にいたい。
 ――たとえ、世界中を敵に回したとしても、怖くなんかない。
 ――この六人なら。

 「木火土金水!! 闇を照らせ『アメノハバキリ』!!!」

 巨大な剣が、大蛇に向けて、勢いよく振り下ろされる。
 縦一閃。
 ズンッという鋭い音が響き、大蛇は真っ二つに。

 オォォォォォォォォォォォォンン……

 天高く、大蛇は吼える。
 その悲痛な鳴き声すらも、閃光は包み込む。
 まるで、溶けるかのように、薄れる輪郭。
 大蛇は、その身を激しく蛇行させながら、ズブズブと闇の中へ沈んでいく。

 光は、まもなく消える。それと同時に、辺りは風の音一つない静寂へ。まるで、最初から何もなかったかのよう。
 「ハァ……ハァ……」
 冬雪は、荒い息を吐く。ただ、大蛇の消えた一点だけを見つめる。まだ、緊張が解けない。あれだけの敵が、消えたなんて。だが、復活しそうな気配はない。ただ、濃紺の薄闇だけが、静かに降り注ぐのみ。
 冬雪の体が、どんどん軽くなっていく。まるで、先ほどの光が体を駆け巡るよう。

 ――勝った……勝てたんだ!!

 冬雪は、頭の中で何度も繰り返す。今の冬雪の胸は、これまでにない達成感で一杯。辛かった戦いを、自分たちの手で終わらせることができた。冬雪には、それがなによりも誇らしい。
 「冬雪ぃ!!」
 夏月は冬雪に駆け寄り、その両手をとる。
 「やったね……本当に、勝てたんだね」
 感激の声を上げ、飛び跳ねる夏月。肩をすくめ、秋綺は得意げに笑う。
 「はぁ? 勝てて当たり前だろ。だって、俺たちだぜ」
 「くすくす、自画自賛?」
 「いえいえ、間違いなくみなさんの力です! ホーリーメイデンズ万歳!」
 「あれ、三四郎さんいたんですか?」
 「ひどっ!!」
 ふっと、冬雪は空に目を移す。東の空が、うっすらと白み始めている。もう、時間は暁。細やかな橙色をした光の中、夏月たちの顔はどれも燃えるよう。それを満足げに眺めながら、冬雪は、いつまでもいつまでも立ち尽くしていた。


 その光景を、物陰から見ている人物がいる。口元には、相変わらず品のない笑みが浮かんでいる。新聞記者の山川だ。
 「いやぁ、やったねあいつら。お母さんとしては、鼻が高いんじゃないの?」
 頭をポリポリと掻きながら、山川はこちらに目を向ける。やはり、見つかっていたらしい。
 電柱の影から姿を現す、冬雪の母「深雪」。長い髪を一つに束ねており、どことなく冬雪に似た顔立ちをしている。
 「あはは! 山ちゃん久しぶり! 全然変わってないね、私が中学生だった時と」
 「盗み聞きっていうのは、よくないんじゃない? ああ、皐月ちゃん元気?」
 「やだもう! たまたま通りかかっただけだってばあ! ちなみに、皐月は元気だよ!」
 笑顔を取り交わす二人。しかし、深雪の表情は、どことなくひきつっている。
 「まあ、勝ててよかったな。どうだい、この後映画でも見に行かないか? 確か、今ならGFWRかTRADING FIGHTがやってるはずだな。昔敵だった仲だし、いいだろ?」
 ふっと、深雪は口元を歪める。
 「昔? 今でもあんたは、ボクの敵だよ」
 山川はコートを翻し、歩き出す。やはり、何年経っても、この男は油断ができない。



 数日後の黄昏時。
 「夏月、できたよ」
 小川のせせらぎのような声が響き、玄関の戸が開く。
 「夏月に合わせてみたんだけど……どうかな?」
 扉から出てきたのは、浴衣に身を包んだ少女。藍色の生地に、薄紅色の朝顔が咲き乱れている。蒼みがかった、艶やかな髪は一つに束ねられ、ふわりと風にそよぐ。
 「うわぁ! 冬雪、似合ってるよ!」
 「そ、そうかなあ……」
 はにかみながら、もじもじと広い袖を擦り合わせる冬雪。側にいる夏月の浴衣も同じもの。こうして見ていると、まるで双子のよう。
 「んじゃ、行こうか! 春花たち、待ってるし」
 「だね!」
 カラッコロッと下駄の音が軽やかに響く。そのまま二人は、神社の方へ歩みを進める。

 穏やかな夕陽が、辺りを優しく包み込んでいる。それは、あの日見た暁のよう。
 影を落とし、静かにたたずむ家々。空を横切るカラス。時々聞こえてくる、豆腐屋の笛の音。それらを見守りながら、茜色の雲は、ゆっくりと流れる。

 「ねえ、男の子の感覚……まだ戻らないの?」
 「うん、まだちょっと」
 「そっか……」
 沈黙する二人。塀に映し出された影は、細く長い。
 こっくりによるダメージは、冬雪に爪痕を残している。記憶は戻ったものの、男だった時の波長をうまくつかみとれない。だから、未だに女の子のまま。いつ戻れるかなんて、わからない。
 「もしかしたらさあ、運命だったのかもしれないね。ほら、あんた昔から女の子っぽかったじゃん。今の方が……ずっと似合ってる」
 もうすぐ、神社に着く。そこで、夏月はピタッと歩みを止める。
 「ねえ……別にいいんだよ、あたしに遠慮しなくても。普通に男の子と恋愛して、結婚して、子ども生んでさ。案外、あたしとあんたって、いい女友達に」
 「なぁに水臭いこと言ってるのさ! ……って、僕が夏月なら言うね」
 冬雪は、にっこりと微笑みかける。
 「言ったでしょ? 僕が好きなのは、世界でたった一人だって」
 そう、これは変わらない。たとえ、一生女の子のままだったとしても、自分は夏月が好き。そして、自分たち六人の絆も。
 「夏月ちゃ〜ん! 冬雪ちゃ〜ん!」
 遠くで、四つの影が手を振っている。大分、待たせてしまった。
 「夏月!」
 冬雪は、そのミゾレのように白い手を差し出す。顔をほころばせながら、夏月はそれを握り締める。つながれた手と手。そこから微かな温もりが伝わってくる。二人はブランコのようにそれを揺らし、春花たちの方へ駆け寄る。
 「ごめ――ん! ちょっと手間かかっちゃって」
 「何分遅刻してるんだよ、まったく。これだから女は……」
 「くすくす、今の卜部先輩だって女じゃない」
 「まあ、大目に見てあげましょうよ」
 「ですね! さあ、行きましょう」
 明るい声を響かせる六人。低い日差しの中、まるで影絵のようにその姿は揺らめいていた。



 恨み、妬み、妄執、怯え、そして、噂。

 人は光を見失い、時にはそれらに惑わされるだろう。

 闇を一人で彷徨うこともあるだろう。

 だけど、周りを見て欲しい。

 きっと、そこには誰かがいるはずだから。

 明けない夜なんて、決してない。

 手を繋ぎあい、僕たちは……明日へ。


[あとがき]

 こんにちはんこ〜、流離太です♪
 こうして後書きを書くのは、今回が初めてです。
 なので、蚊取り線香のごとくキンチョーしています(^^;)

 まあ、そんな話はともかくとして、少年少女文庫の門を叩き、約五ヶ月。
 時々、ふっと思うことがあります。
 「なんで私はここにいるのだろう?」
 これまで、萌えとか恋愛とか書いたことなかったのに、まさかこのような作品を書くことになるなんて。
 いや、本当に今まで、小学校低学年向けや特撮モノばかり書いていたんですよ(^^;)
 でも、今まで好意的な感想をくれても、意見してくれる人がいませんでした。
 だから、高校時代に憧れていたここへ♪
 そうしたら……そうしたら、ただの感想じゃなくて意見まで!
 「ここをこうしたらいい」「そこは駄目なんじゃないか」
 小説を書いていて、ここまでたくさんの、そして暖かい感想をもらえるとは思ってもいませんでした。
 それまでは「感想もらえなくても、最後まで書き続けるぞ!」と突っ走るつもりだったのに。
 みなさん、優しすぎます。
 
 さて、ホーリーメイデンズのキャラについてです。
 彼女らには、いずれも私の一部を引き継いでいます。
 冬雪は、他人に逆らえない情けなさを。
 夏月は、好きな相手に対する異常なまでの妄執を。
 春花は、友達を必死に求めていた小学校から中学校の私を。
 秋綺は、ただ強がっていた高校時代の私を。
 終里は、名前の一部と仲間意識に対する怨念を。
 考えてみれば、私に初めて友達ができたのは、18になってから。
 だから、普通の人間が描けないんですよ。
 私の描く人間は、いつも一人で、おちこぼれのアウトサイダーです。

 そんな私を何度も救ってくれたのは、家族です。
 その時感じました、自分は一人ではないと。
 そして、価値なんかなくったって、それが自分なんだと。
 だから、私はがんばれました。

 そしてそれは、この小説にも言えることです。
 K.伊藤さんがいらっしゃらなければ、設定や文体、萌えなど、小説を書く上での全てが、ないに等しいものだったでしょう。
 きりか進ノ介さんと水銀さんがいらっしゃらなければ、描写はもっとあっさりしたものだったでしょう。
 天爛さんがいらっしゃらなければ、後半の展開はなかったでしょう。
 バレットさんがいらっしゃらなければ、戦闘はもっと単調なものだったでしょう。
 華村天稀さんやアッキーさん、もすごさんがいらっしゃらなければ、キャラはあそこまで突出しなかったでしょう。
 こうけいさんがいらっしゃらなければ、文体による文章の影響など、考えもしなかったでしょう。
 GmaGDWさんがいらっしゃらなければ、メイデンズに「闇」というテーマはなかったでしょう。
 感謝をしたい人は、まだまだたくさんいますけど、この方達には特にお礼を申し上げたいです♪
 ……って、あれ?
 私はなにをやったんだろう?
 本当に私は、この小説の作者なのだろうか?(笑)

 これを通して、私にも光が見えた気がします。
 拙い文ではありますけど、この作品を通して、一人でも多くの人が光をつかめたら幸いです。
 TSモノである必然性は、ほとんどないですけど(^^;)

 これまで感想をいただいた、猫野さん、K.伊藤さん、日本海さん、きりか進ノ介さん、天爛さん、h.hokuraさん、
虎瀬さん、バレットさん、たけしさん、長束さん、バンテツさん、こうけいさん、せるさん、四迷さん。
 素敵な音楽を提供してくださった、原案の伊藤さんと作曲のあずささん。
 メイデンズ祭りを開いてくださった、アッキーさん、もすごさん、水銀さん。
 メイデンズの設定ページを作っていただいた、華村天稀さん、GmaGDWさん。
 素敵な挿絵をくださったもすごさん。
 私が泣きついても、温かく受け入れてくださった、担当の鈴忌紫さん、運営委員会の方々。
 そして、現在この小説を読んでいるあなた。
 本当に、感謝してもし切れません。
 どうもありがとうございました!!

 さてさて、そんなメイデンズですが、実は番外編という形で続きます。
 冬雪や秋綺は男に戻れるのか?
 アヤカシは本当にいなくなったのか?
 深雪と山川の因縁は?
 てなことを、語っていけたら幸いです♪

 でも、彼女達の活躍はひとまず終わり。
 またどこかで会いましょう♪
 闇の中で、いつも私は待っています。


huyuki

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