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 どこか遠くで、何かを必死になって叫んでる…。それとも、訴えてるのか?

 いや、どっちでも同じか。

 人が自分のことを主張したり、相手を責めたり、そういう時は自然に叫ぶような形になる。

 

 俺にだって、必死になって叫んだことはある。病院の中で、今にも消えそうな命の灯火を持っている母さんに対してだ。

 俺をずっと見守ってきた母さんが死ぬなんてことは、許せなかった。認めたくなかっただけかもしれない。

 とにかく叫んだ。「死なないで!」と。そんな言葉しか浮かんでこなかったんだ。あの時の俺は。

 たとえ、この身が滅びても、母さんは…俺のたった一人の母さんだけは、失いたくなかった…。

 


Strange occurrence

作:Revolution

第4話「記憶」



「ふわぁ〜っ、良く寝た…」

 朝…か? 窓から注ぎ込む光からして、そうだろう。

 んと、携帯、携帯はっと…。

「7時50分か…珍しく休みの日に早起きしちゃったな…」

 ってか、昨日何してったけ? 朝起きて、テレビ見て、守からのメール見て…んと、何したんだっけ。

「休みボケかな。全然昨日何したか覚えてないや…」

 ボーッと口をあけて天井を見つめていると突然、俺の携帯からメロディが流れ出した。

「ん? 誰だこんな時間に…守からの電話か。あいつ、何の用だ?」

 でないわけにもいかないし…遊びの誘いなら即効で切るか。

「もしもし? 何だ? 家にはくんなよ?」

「ん? 今から行きたくても行けねぇから。というか、お前こんな時間まで何やってんだ?」

「は? だって今日──」

「ブッ、お、お前今日何曜日だと思ってんだよ。ははぁん。わかったぞ、お前今日休日だと思ってんだろ。よぉ〜く携帯の日付見とけよ。じゃ」

 ブツッ…切ったな。

「あいつ…なんだったんだ? 昨日が土曜だったんだから、今日は…月曜!?」

 そんなことって…でも、何か…忘れてる気がする。

 ってそんなこと考えてる場合じゃない! 狭い階段を急いで降りて、掃除してないリビングを通って靴を乱暴に履いて、とにかく学校へ全力疾走! はぁ…疲れる。

 

 

「え〜出席をとる。井口、遠藤、小川──」

 月曜の朝にだけ存在するHR。俺の通う氷橋高校では、この時点でいない奴は遅刻となる。でも、今日は1時限目から授業なくてよかった…。

「翔?珍しいね。こんなに遅れるなんて」

「しーっ、懋頼むから静かにしてくれ」

 抜き足差し足忍び足、と…。呼ばれる前に何とか着席…と。朝から心臓に悪い…。

「小野、神田、え〜神崎は欠席と」

「えぇ!? 俺ならいますよ!なぜにあえて無視!?」

「そんなにこそこそと席に着いても無駄だぞ。むしろ欠席扱いにするからな。遅刻したくないなら、寝坊しないようにしなさい」

「ば、ばれてたのか…」

 突然、全員ゲラゲラ笑い出しやしやがった。笑いを必死に口に手をあててこらえようとするやつまでいる。

「翔、お前いかすなぁ〜」

 どれくらいだよ。

「どうせだったら、堂々と挨拶しながら入ればいいのに」

 ちわ〜っすってか? そんなことできるか。

「写真撮らせて〜」

 1枚150円でOK。ただし3枚以上は+1000円ということで。

 しっかし俺としたことが。今日がなぜ月曜だとわからなかったのか不思議だ。って、気づいてれば苦労はしないか。

 しかもなぜだか俺の話でどこもかしくも、もちきりだな。この広がり方は尋常じゃない…裏で誰かが糸を引いてる…絶対間違いない、守だな。複雑骨折じゃすまないようにしてやる。

 でもこういう時に限って守の姿が見当たらないし…。あ〜っむしゃくしゃする!

 そうこうしている間に昼休み突入。とりあえず昼休みのいつものポジション──俺の場合、屋上に懋と移動し、校内販売されてる弁当を開いた。ちなみに焼きそばを購入した。どうでもいいけど。

「翔、大丈夫? 精神爆発起こすんだったら、僕がそれを止めようか?」

「そ、それはしないで欲しい。懋に止められるってことは、俺にダイナマイトを紐でグルグル巻きにして点火するってことだろ…」

 殺すチャンスでも狙ってるのか懋は。

「おぉ〜よくわかったね〜。でも、ダイナマイトじゃなくスイッチ可動式爆弾ってとこかな」

「どっちでも死ぬことにかわりないと思うんだけど」

「そうしないと翔、止まらないでしょ。僕に危害を加えるつもりなら、やらざえるおえないよ?」

「大丈夫、大丈夫、懋に危害を加えようなって、これっぽちも思ってないから」

  やっぱ、色んな意味で懋が怖い。唯一、俺の苦手な相手が懋だった。理由は、まぁ…今は振り返りたくないから今度にしよう。

「どうやら守が屋上に来たみたいだよ」

 懋がそういうので、屋上のたった一つのドアを見て見ると、低く鈍い音を出すドアを威勢よく開けて守がニヤニヤしながら屋上に足を踏み入れた。

 とりあえず、俺の顔に泥、その他もろもろを塗ってるこいつには制裁を下さなきゃな。

「よぉ〜翔、いや寝ぼけ魔。俺をみつめっちゃって、まだボケてんのか? ん? 何、突然立ち上がっちゃって…そうか、俺に感謝しようとしてくれてんのか〜俺って救世主〜?」

 自滅キャラかお前は。そんな態度できたら速攻で潰すに決まってるだろうが。

「よくあれだけ翔の爆弾のスイッチを入れるようなこと、早口で言えるね…」

 懋はなぜか関心し、俺のリミッターが外れるのを近いことを知っているらしく、少し離れて見学することにしたみたいだ。

 毎回思うんだが、この見学を懋の趣味に入れるのはどうかと。研究レポートを書きそうになったところを俺が一度ならず2度止めたこともあった。

 何をテーマとして書く気なんだ、まったく…。

「そうかそうか、守は俺の為にここに来たんだよな? 救世主君?」

 毎度こういう展開で殴られてるのを忘れてるのかこいつは…。まさか実は楽しみにやってるとか!? …ホモ?

「い、いやだなぁ俺は救世主なんだから、もっと感謝してもらわなきゃ、うん。そ、そんなに睨まなくたって──」

 左足に力を加えて…体勢を低く…。

「え? しゅ、瞬歩!? アニメならともかくちょっ、グハッ!」

「殺す…」

「そんな簡単に殺さないで〜! 殺すならその前に、カツ丼食わせてぇ〜! ギャー!」

「カツ丼食べれりゃそれでいいのかオラオラオラオラオラオラオラ!」

「ブッ──そ、そうだな…カレーもいいかな──ゲハッ」

「余裕ぶっこいてんじゃねぇよ! この死に底無いがぁぁ!」

「て、てめぇの─ブッ、こ、攻撃なんか──グハッ、こ、この俺には──ゲボハッ、き、きかな──」

「そうか…わかった。俺の全力をかけてお前を葬ることにするよ」

「わかったってえ!? 意味不明だぜ!? お前自分のいいように解釈してねぇか!? ちょっ、その拳は!? 殺劇舞荒拳ってか!? ギャー!!」

 ふぅ無駄な体力使わせやがって。…でも、何かおかしい…。何だろこの感じ…。まぁいいや。

 その後即、守は保健室へ懋によって搬送された。保健室に居た先生は、ただただ唖然としていたらしい。で、俺は何事も無かったように教室へ。

 中にいた生徒は口々にこういった。

「こ、怖い」

 結構。

「守大丈夫かな」

 あいつなら5分もすればHPMAXになって帰ってくるって。

「さすが翔ってところだね」

 それはほめ言葉か?

「かっこいい…」

 危険な臭いがするんですけど。

「ま、まだし、死ぬ覚悟はで、出きてません」

 出直して来い。

「…………グ」

 「グ」って何!? い、言いたいことがあるならはっきり言えよ。何か逆に怖いよ。

 昼休み終わる直前、守は”不完全復活”を成し遂げ教室に戻ったらしい。これは懋から聞いた話だ。「僕の薬でもこれが限界だった」とか言ってたな…。飲ませたのか…懋が作った薬。

 

 

「ふぅ…」

 放課後、俺は一人屋上に佇んでいた。空には雲無く、いかにも快晴といった感じだ。心地よい風が吹き、そろそろ夏だと告げてくれた。

「いい空だな…何か心が開放されるって感じ…」

 久しぶりにこんな空を見た気がする。こんなに透き通った空は好きだし、全然飽きない。でも、こんなところ守にでも見られたら何て言われるかわかったもんじゃないな。

 この青空…母さんにも見て欲しかったな…。

「翔らしくないね〜」

「うわっ!?お、脅かすなよ懋」

「いや?さっきからずっとここにいたんだけど?」

「まじっすか…」

「だから翔が詩人みたいな──」

「言うな!恥ずかしいから言うな…」

「でもな〜せっかく得た情報なのに、勿体無いから…実験に付き合ってくれたらいいよ」

 ひ、卑怯な…。しょうがない逆らったら本当にやるから抵抗は諦めるか…。

「わ、わかったよ。その代わり誰にも言うなよ?」

「うん。じゃ、地下の研究部室に行こう」

 研究部室、行きたくないんだよな…何かくさいとかそんなんじゃなくて、この世にないような臭いが漂ってるし…。

 おまけに、わけのわからないパソコンが何台も置いてあるし…。一体何の目的で設置されたことやら。

 ってそんなこと考えてるうちに着いちゃったよ。

 うわ…なぜだか腐ったリンゴと香水を付けすぎた人が混ざったような臭いがする…。しっかし、久しぶりに来たなこの研究室。入学式以来か。

「じゃ、ここに横になって」

「ん?このベットにか?」

 しょうがない、ここまで来たんだ言うとおりにするか。俺は病院に置いてあるベットのようなところに寝かされた。…俺は病人じゃないぞ。

「ってか、相変わらず薄汚れてるなこの研究室」

「大丈夫、衛生面なら完璧にクリアーしてるから」

「クリアーって…でも、ゴキブリとかしょっちゅうでそうだけど」

「それも大丈夫。例えこの研究室に進入しようと試みても、センサーが反応して抹殺するから」

「やっぱ帰りたい。明らかにここ危険だろ…」

「じゃ、そのまま目を閉じて」

 スルーかよ。逃がす気0だな…。

「はいはい、仰せのままに」

 ん?何か急に…眠くなってきた気がする…。

 

 <神崎翔、睡眠状態に入りました>と、懋がいじくってるパソコンの画面にそう表示された。

「さて、僕の推理と研究がただしければ…」

 懋のパソコンには、様々なデータやグラフが出現し、懋はそれを見続けていた。

 <神崎翔の精神安定度55%、肉体的ダメージ160%、エネルギー放出率65%。以上の結果から、神崎翔は危険域に達しています>

「やはり…。このままだと確実にまずい。またオーバーロードしかねない…。どうしましょうか奈美さん」

 いつの間にか懋の隣に、なぜか輝いて見える光奈美はそこに居た。

「予想以上に進行速度が速いです。制御装置を翔に渡したんですが、それでもこれだけのダメージが発生…これは翔の命に関わります」

「このデータから読み取ると、明日には非常に不安定な状態になり、明後日には…」

「そうですね…。もう待つことはできませんね」

「では、翔のマジアスアグリガン魔法の集合体 に刺激を与えなくては」

「それで…私に提案があるんです」

「”コンタクト”を使う気ですね? 危険を承知の上でですか?」

「もちろんわかってます。でも、もう時間がありません」

「わかりました。では僕は、ここからデータをとることにします」

「じゃあ翔はお借りしますね」

 奈美はそういい、眠っている翔を抱き上げた。寝ているとかなり無防備な翔の顔は、普段では想像もできないものだった。

 

 

 俺は夢を見ているのだろうか。

「し…しょ…!」

 やっぱり…誰かが叫んでる。でも誰だろう。

「翔! 大丈夫!?」

 大丈夫って何が…。俺はいったい…。

「大丈夫。ちょっとミスっただけ」

 俺はそう言っていた。どうやら俺の自由がきかない夢みたいだ。

「このままじゃまずいです。この形勢を立て直すにはあれしかない」

「あれって…まさか! 奈美! それだけは止めろ!」

 え? 顔が良く見えないから誰かと思ったけど、奈美さん!? しかも服のあちこちが破れてるし、血も出てる…。

「でもこうするしかないんです。他に方法は無いのは翔だってわかってますよね?」

 俺はただ黙り込んでいた。何の名案も浮かばないことに俺はいらついていた。自分を、憎んだ。

「行きます…」

 突然奈美さんが走り出した──と思ったら飛んでいた。背中からは太陽の日差しを浴びて輝いている白い大きな翼が出ていて、それで飛んでいる。

「開いて…マジックサークル!」

 空中に浮いている奈美さんの目の前に、身長よりやや大きめの赤い魔法陣──としかいいようの無いものが出現した。

「フォーマルスペルマジック…D…W…P…L。 R…A…T──」

 奈美さんは歌うようにアルファベットをはっきりと発音していた。全て言い終わったのか、魔方陣の真ん中に直径1メートルの円が描かれ、その中にさっき発音したアルファベットが刻まれた。

「翔! 後は頼みました…」

 俺ははっとした。なぜ俺は黙って見ているんだ。このままでいいはずがない!

「止めろ! そんなことしなくても俺が…俺が何とかするから!」 

 奈美さんは空中からこっちを見て、笑顔を見せた。でも、俺には泣いているように見えて仕方が無かった。何だろうこのもやもやした気持ち…。

「今まで有難う…。翔が私といてくれた時間はとても楽しくて、嬉しくて…」

 呼吸が乱れ、心臓の鼓動は高鳴り、俺は歯を食いしばっていた。止めたいの止められない…俺は…。

「もう何も失いたくない…。俺は…2度と誰も失わないと決めたんだ!」

 2度…? 何を──いや、忘れている?

「母さんに…誓ったんだ!」

 っ…!! 思い…だした…。その途端、目の前が真っ暗になった。

 

 目を開けると、仰向けになっていたらしく木々の間から透き通った青い空が見えた。

「っ! 頭が…いてぇ…!」

 石で叩かれたみたいに、俺の頭は痛み出した。思わず俺は頭を両手でおさえた。我慢しながら起き上がって見ると、奈美さんがそこに立っていた。

「よ、よぉ…」

 何て話しかけたらいいのかわからなかった。さっき見た光景を思い出さずにはいられなかったからだ。

「大丈夫…でしたか?」

 奈美さんは、そう言いながらしゃがんで俺に近づいてきた。

「ちょっと頭がボーッとする」

「ちょっとやりすぎたみたいですね。ごめんなさい…」

 泣きそうな声でそういわれると、俺が何かしたみたいで悪い気持ちになってしまった。

「べ、別にたいしたことないから…。謝られても…困るというか…」

 今にも泣きそうな目をしたまま、さらに奈美さんは顔を近づけた。もう少し寄ったら息が当たってしましそうだ。

「思い…出せましたか?」

 急に小声でそう奈美さんが言ったのを聞いた途端、俺は目を伏せてしまった。完全には思い出してはいないのが、俺を苦しめた。

「8割ってところかな。俺が、奈美を止めようとしたところまでは大体ね…」

「そう…」

 きまづかった。奈美さんもまた、目を伏せたのだ。完全じゃないことを知って気を落としているのだろうか…。

「私を…」

「え?」

「私を、思い出しましたか?」

「魔法使いとしてはトップクラスの力を誇る幼馴染だけど、小さい頃は泣いてばかりで…ってな」

「翔…」

「な、何だよ」

「おかえり…」

「た、ただいま…」

 そのまま奈美は泣きながら俺に抱きついた。恥ずかしい…。こんなに顔が赤くなったのは久しぶりだ…。でも、嬉しかった。何より俺のために泣いてくれたことが…。

 

 

 

 

 

 




 Revolutionです。かなり遅れて完成しました。

 しかし、小説作成は初心者なので、だめな点も多く存在しますが、色んな人に楽しんでもらえると嬉しいです。

 次回は、出番がほとんどなかったあるキャラを出したいと思います。

 あと、この作品より以前のは見にくかったと思うのでそのうちリメイク的なことします。

 それでは〜。

 


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