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「…間違い無いのか」
一人の老人と、髪が長い少女が向かい合って話していた。
「間違いありません、おじい様」
「そうか…皮肉なことじゃな…結局わし等はあやつに頼るしかないのか…」
「…でも私…少しだけ嬉しいです」
「ん?そうかお前は、あやつに戻って来てもらいたかったのか…」
「…はい」
「だが、あやつは…」
「それでも!…それでも構いません…」
「うむ…どちらにせよ──」
扉は思い切り開けて、兵隊が入ってきたので、2人の会話は中断されることになった。
「長老!何者かが結界を突破したようです!」
「ご苦労。ついに奴等も動き出したようじゃな…後は頼んだぞ我が娘よ」



Strange occurrence

作:Revolution

第3話 魔法




太陽は南中し、光の強さは最高点まで達して、窓に、地面に、地球に降り注いでいた。
小鳥は鳴き、猫は昼寝を始め、ジョギングをしている人達もいる。
こんな平和そうなここ──光町では、一つの事件が起こっていた。
…といっても、実際事を起こしたのは──神崎翔である。
そんな彼は、こんな時間まで大きないびきを……たてておらず、かわりに小さな寝息が静かな翔の部屋を満たしていた。
「う…ん…ふわぁ〜…眠い…と、時計…どこ……」
翔は、布団に包まりながらモゾモゾ芋虫のように時計を求めて動き出した。
他人から見たら、完全に変人である。
「おぉ…あった、あった……えぇと…14時20分か……えぇ!?」
時計の指す針の意味を、眠い頭で一瞬で理解した翔は、眠気が80%→0%へと、劇的な変化を起こし──つまり、目が覚めたということだった。
「え!?今日って…あぁ良かった今日は土曜だ…危ない危ない……では2度寝を……ってえ!?」
もう一度甲高い声を上げて、頭を思い切り起こした翔はまず最初に昨日何をしでかしたかを思い出した。
どうやら頭の上で「電球」が光ったようである。ピカーンと。
「あり得ないあり得ない。絶対無い…。絶対!無限大!間違い無し!………って何か声高いような…」
喉元を触った翔は、喉仏がないことに気づいたのである。ようやく。
「どうやら俺は、謎の病にかかったんだ…きっとそうだ!うん!寝れば治る!」
といいつつ、違和感があるパジャマの中を覗いた翔は、生まれて初めて悲鳴を上げた──



一方、佐々岡守はというと、暇を持て余し転がっていた。もちろん、守の部屋で。
「あぁ〜暇だー!暇暇暇暇暇だ〜!!…そうだ!あいつなら暇だきっと!」
近所迷惑という言葉を知らない守は、ポケットから携帯を素早く取り出し、メールをすごい──いや、超人並みの速さで打った。
「これでよしっと。さぁ〜って出かけるとすっか〜!」
メールの返事を待たずに、メールを送った相手の家とダッシュで向かうのだった。…相手の許可無しに遊びに行かなかった日は、もちろんこの性格上あり得ないのである。



翔のお気に入りの曲が突如、携帯から鳴り出した。あの人からのメールである。
「こんな大変なときに、誰だ…?えっと、あぁ守か…なになに? 「今から遊べるか〜?最新の格ゲーやろ〜ぜ〜」だって? あれか〜あれ面白いんだよな〜。」
突然翔の思考が停止した。このメールが来たということは何を意味するのかと。
「まさか…あいつ家に来ないよな?」
翔は外を睨み、そして見つめた。
「絶対来る…」
(あいつならやりかねない…扉を開かなくてもこじ開けるとか、窓から入るとか、数々の犯罪をこなしてきたあいつなら…)
今にもピンポーンと鳴りそうで翔は、怖くてしょうがなかった。
翔の今には、死のチャイム以外に考えることができないのである。
(どうしよ…今の体で守に会ったら…無理だ絶対ばれる…う〜…どうしよう〜…そうだ!!)
翔の頭の上で「電球」が閃光を出したとき、死のチャイムが翔の家に鳴り響いた。



「翔〜いるか〜返事しろよ〜。ってかそこにいるのはわかってるぞ〜」
(翔のやつめ、居留守使う気だな…。よし…窓行くか…。翔の家は、すでに攻略済みだからな。ここの窓が一番入りやすい…っと。この前仕掛けといた、これを使って…と。
よし、開いた開いたっと。)
「おじゃましま〜す。翔〜!もう逃げも隠れもできねぇ〜ぞ」
(ん?返事がねぇな…。翔のやつ、まだ抵抗する気か?1階は…いないな。じゃあ2階にいるのか?そういや、翔って掃除してねぇな…。階段ほこりだらけだぞ…。2階は、翔の部屋から探すか。いないな…。今日はまじでいないのか?いや…待てよ…。さっきまでこの部屋にいた感じがする…。この感じを辿ってくと…窓から逃げたな!)
まるで、超能力者である。この後、パトカーのサイレンが翔の家まで迫ってきたことは言うまでもない。あれだけの不法侵入をしたのだから。



「ハァッ、ハァッ、ま、まじびびった…」
(何とか、翼を広げられて良かった…)
あの「死のチャイム」直後、翔は迷わず部屋の窓を開け、体を外に出し、外を睨み、翼を広げる試みをしたのだった。
幸い、誰もこの瞬間を見たものはいなかった。
いたら、翔に消されてたが。
「ってか、あれは夢じゃなかったんだな…。今翼で飛んでるし…とすると、この力は一体…」
(そういえば、誰も俺に気づかないな…上空に誰か飛んでたら普通気づくのにな)
試しに、翔は一気に急降下してみた。
(気持ちいな〜空を飛ぶことって。…と、今はそれどころじゃない。)
翔は、路地を歩いてる子供の少し上まで近づいた。が、子供は空を見ているにも関わらず、翔には全く気づいていない様子だった。
(もしかして、この姿なら誰にも気づかれないのか?)
「そこの君〜!俺見えないの〜?」
子供の目には相変わらず、ただ青い空が写っているだけだった。
「じゃあこのままでも誰にも気づかれないのか〜良かった〜…って良くない!いつ戻れるんだ!?」
(う〜んこの姿になった時は、頭に血が上ってて全く覚えてないし…。あっ!でもあの時転校生の奈美さんがいた!)
「全ての鍵は、奈美さんが握ってるってことか!…でも、どこにいるかわかんないし…困ったな…」
翔が、完全に困り果てたその時。救いの神が舞い降りた。
「私ならここですよ…」
光奈美の姿が翔の後ろにあったのだ。
「ってえ!?いつの間に!?というか、奈美さんも飛んでる!?」
「私も、天使化使えますからね…」
「天使化って何!?昨日のあれは何?いつ戻れるの?俺──」
普通は、全部の質問に答えられないものだが、奈美はそれに答えてみえた。
その答えを聞いた翔は唖然とするしかなかったが。



「魔法!?それってアニメとかマンガとかの世界じゃないの?」
翔は、1秒に3度瞬きした。
「完全にああいうのでは無いのですが…。大体は一緒ですね」
白い肌、長い黄色い髪を持つ美少女──奈美は、翔に説明していた。
「じゃあ、炎をどこからともなく出したり風を操ったりできるってこと?」
「上級クラスに達してるマジシャンならできますね」
「へぇ〜。…ってやっぱり納得いかないな…。と言いたいけど、今の俺の体の状況からして信じるしかないか…」
「………」
「どうかした?奈美さん」
「い、いぇただ、懐かしいな…と…」
「え?懐かしい?だって俺──」
「す、すいません…そうですね神社前で会ったくらいですからね」
「それより、俺の体いつもどるかな…」
「それなら、今日ちゃんと寝れば治りますよ。翔さんの体は、ただ疲れてるだけですから。」
「そ、そっか〜よかった〜」
思わず翔の頬が緩み、笑顔が出た。以前の翔にはないこの笑顔は、見るものの心を奪いそうな力を持っていた。
「しょ、翔さんが戦ったモンスターは、あれで終わりでは無いですよ」
奈美は、何かを誤魔化すようにして、話を切り出した。
「え?あぁあの変な怪物か。ゴキブリみたいな」
「モンスターは、種類が様々で強さもそれぞれです」
「じゃあドラゴンみたいなやつもいるのか?」
「そうですね。上級系になればそれぐらいはいますね」
「そっか〜ってもしかしてまた戦うことになる…とか」
「戦闘は避けられないと思います。何しろ敵の狙いは翔さんなんですから」
「…お、俺!?俺何かした?確かに守を顔が変形するぐらい遊んだり、指の骨折ってあげたりしたけど。」
したんじゃん。
「今、どっかから冷たい声がしたような…ってとにかく何で俺が狙われるの?」
「力──ですよ。翔さんの強大な力です」
「俺そんな力──
「翔さん!後ろです!」
「えっ?」
後ろから、エネルギー弾が翔に飛んできていたのだ。翔は、左に飛んで避け、飛んできた方向を睨んだ。
「うわっ!あぶねっ。何なんだ一体…」
「モンスターですよ翔さん。先ほど言ったように、翔さんの力を狙ってるんです」
翔の睨んだ上空から、緑色の「ドラゴン」が優雅に舞い降りてきた。
興奮してるらしく、鼻からは、赤色を含んだ鼻息──というより煙を頻繁に出していた。
「で、でか…」
「ブルードラゴン…なぜこんなところに…翔さん気をつけてください」
ブルードラゴンは、大きく口を開き空気を思い切り吸い始めだした。
「なんだ?大きな欠伸だな…」
「違います!ファイアブレス──炎の玉を吐こうとしてます!」
「えぇ!?どうしよ…俺、魔法の使い方よくわからないし…」
翔が救いを求めて奈美を見た時、奈美は目を瞑っていた。
「…えぇ!?ここで死ぬ気?ちょちょっとまってこんなとこで死にたくないー!せめて守を盾にさせて〜!」
この時、守は大きなくしゃみをした。
「──凍りの刃よ。私の力となり、敵を滅せよ…アイスブレード!!」
「え?」
(な、何だ?奈美さんの少し上に…青い魔方陣?みたいなのが突然でてきて…氷柱?でかっ!ドラゴンの方につっこんでいったな…8本も)
「ドラゴンもファイアブレスきた…ぶつかる!」
翔は思わず目を瞑ってしまった。「ジューッ」と氷がとけるような音がした後、ドラゴンの叫び声らしき物が翔の耳に降り注いだ。
「や、やったのか?」
(ドラゴンがいない…。)
「どうやら倒したみたいですね。でも、少し弱ってた感じがします…。」
「あ、あのさ…倒した時って…どうなって──」
「モンスターが死ぬ場合、青い光に包まれて消えます」
「そ、そっか…」
(何で、俺…こんなに悲しいんだろ…)
「翔さん?涙が出てますよ?」
「え?あっ、ほんとだ…ご、ごめん…何か…止まんない…うぅ」
数分後、翔は泣き止んだ。目の周りは見事に赤くなっている。
「ごめんな…何か突然涙が…」
「こういうのを見るのが初めてだからだと思いますよ。」
「そ、そうかな…こんなことで泣くような俺じゃないのに…」
「これ…渡しときます」
「ブレスレット…だなこれ」
「これを付けといてください。天使化など色々制御できると思います」
「せ、制御?俺暴走したりするのか?」
「無いとは言えませんが…他にも理由があります」
「理由って…何?」
「…心が女性化することです…」
翔は、しばらくの間身動きが取れなくなった。まるで、蛇に睨まれた蛙である。
「えぇ〜!?」



翔の試練は続く…



<第4話へ続く>

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