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「"ルーイン"」

低く冷たいその声を聞いた少女は、素早く数メートル後ろに移動した。

”声”の後に何が起きるか分かっていたのである。

”声”を発した男の右手の先から、無数の黒い矢の光が出ることを。

目に見えない速度で、光は放たれ、少女を追った。

その攻撃の正確さは、少女の予想を上回っていたらしく、完全には避けきれず、宙を舞った―



Strange occurrence

第2話「始まり」

作者 Revolution




ガバッと布団から勢いよく翔は体を起こした。

翔の着ている服と、翔の髪は汗でびっしょりとぬれていて、何キロも走ったかのように、肩で息をしていた。

「…し、死ぬかと思った…」

翔は、さっきまで見ていた夢を思い出していた。

見覚えの無い男、無数の黒い光、そして鋭い痛み―

妙にリアルだった夢を、翔は早く忘れることにした。翔は、嫌なことを早く忘れようとするタイプなのだ。

「さて、朝食でも食べるとするか…」

そう呟いた翔は、立ち上がろうと膝に手をついた―

「イッ!いつつ…。この痛み…夢と一緒だ…」

翔は、全身に苦痛があるものの、何とか気合で立ち上がることにした。

どれだけ体に痛みや疲れがあっても、周りの人には全然何ともないと振舞うのが翔のモットーでもあるのだ。

それは、翔にとって同時にプライドでもあった。

なので、翔はたった一度も授業を休まなかった。

また、翔には特異体質と言うべきものがあった。

異常なほど、人より何倍も傷や痛みの治りが早いことだ。

例えば、翔は5歳の頃、右腕を骨折するという大怪我をしたが、次の日には完治したのだ。

これには医者も、頭を抱えるばかりだった。

普通─いや、人ではありえない力を、翔は持っていたのだ。

そして、翔は気づいていない。宙を舞い、ダメージを受けたのは少女。痛みを感じたのは翔。この2つの関連性に。



テレビから、最新のニュースを伝えるべく、アナウンサーが現場の近くで早口で内容を話している声が流れた。

「―今日6時50分に発生したと思われる火災が今ちょうど消しとめられました。現在遺体は、親とみられる2体が発見されています。まだ、子供は発見されておらず捜索中です。引き続き―」

翔は、毎朝こうしてニュースを聞きながら朝食を一人で食べている。

別に一人暮らしを好んでしているわけではない。

母親は、翔が中2の時原因不明の病で亡くなっていて、父親は、海外で働いているので帰ってこないのだ。

生活は、定期的に銀行に振り込まれるお金で生活をしている。

「父さん、元気にしてるかな…」

素早く出かける準備をし、玄関で翔は、振り返った。

「母さん…行ってきます。」

その声は、孤独に暮らしてきた翔の辛さが語られていた。



30分程で学校到着。

「なぁ、翔。今日、転校生来るって知ってるか?」

守が翔に会ってそうそう話をしてきたのである。

翔と話したくてしょうがない様子だった。

まず友人に話しかけることから、朝が始まると守は考えていた。

「知るわけないだろ。というか、そういう情報を手にいれるのは速いよな」

「まぁこの俺様にかかれば調べられないものなんてないぜ」

「で、そんな自慢話するために話かけたのか?」

「まぁそんなところだ─嘘だよ。嘘だって嘘だからー!その手をこちらに向けないで―ブッ」

「ったく、朝っぱらから俺に殴らせるなよ…」

「…まるで殴ったのはしかたがなかったっていうふうに聞こえるのですが」

守の言葉など無視し、翔は腕時計に記されている時間を読み取った。

もともと、翔は守の話に興味は無いのである。

「そんなことより、もうホームルーム始まるぞ」

「ちぇっ、今回のことは覚えとけよ!」

よくあるセリフを残し、守は自分のクラスへと戻って行き、入れ替わりに翔のクラスの担任が入ってきた。

「今日は、転校生がうちのクラスに入ることになった」

「ふーん…守の情報は確かにあってるな」

あれだけ文句を言っといて、守の情報の信用性を確かめる翔である。

だが、それほど興味は無さそうに担任の言葉を聞いていた。

自分にさえ危害が加わなければ、関係無いことだと翔は考えたのだ。

「では、入りなさい」

そう担任が言うと、教室のドアをゆっくりと開けて一人の少女が入ってきた。

身長155cmくらいで、髪は黄色、腰の辺りまである。

ちなみに、この氷橋高校では髪の色、長さは制限していないので、校則違反では無い。

だが、実際この高校では髪の色を変えているのは、ほとんどいないので、クラスの人の注目は集中した。

当然といえば、当然だが。

「光奈美です。よろしくお願いします。」

軽く、自己紹介は終了し、授業へと移った。

転校生が来たのにもかかわらず、授業やクラスの雰囲気は全くといっていいほど変わらなかった。

翔と懋と奈美以外は、何かに取り憑かれたように、授業中ノートに字をすごいスピードで書いていた。

この以前には無かった、クラスの雰囲気を感じ取った翔は、急に外を眺めたくなった。

昔から翔は、風が吹き、木の葉が揺れるその様を見ていると、心が落ち着くのだ。

そして、そんな翔の様子を奈美がじっと見ていた。

そんな状態が、放課後になるまで続いた―

放課後になると速攻で、翔は学校から出て普段使われて無い道に行った。

どうしても、恵美から逃げたかったのだ。

「今日は何とか一人で帰れた…わざわざ森の中の道を選んだかいがあったなー。」

(でも、毎日こうやって回り道するわけにもいかねぇしな。

他の策を練ってく必要があるか。

だいたい、俺が頼んでも無いのに恵美が一緒に帰ろうとするからこういうことになるんだよな…。

そういえば、最近この道使ってないから家までどれくらい時間かかるかわからねぇな。

こんなことなら、守でも無理矢理連れてくれば良かったな。退屈しのぎにはなりそうだし。)

翔の好きな透きとおっている空を見上げながら翔は、そんなことを思っていた。





─そのころ守は懋と帰っていた。帰り道は、ほとんど一緒なのだ。

ちなみに、翔の家とは、反対方向にあるため翔と帰る時は、何かあった時だけである。

「うっ…。すっげー寒気がする。」

「風邪ひいたんじゃない?」

「いや、そんなんじゃないぞ。この寒気はきっと俺に危険がせまってる感じだ。」

なぜか守は、背を低くし辺りをキョロキョロ見ている。

まるで、どこからか銃弾が飛んでくるかのように。

「翔の…殺気?」

「その確率は99%ありそうだな。こなったら、明日は全神経を使って生き延びるぞ!ウォー!やるぞー!」

守は、山に向かって叫ぶようにしてそう叫んだ。

目は、微妙に死んでいるが。

「それって気合入れるところ?」

「そうしねぇと、死にそうな気がするんだよ。」

肩をおとす守を見た懋は、さすがに同情したくなってしまった。

翔が守をオモチャ扱いした時のおぞましい光景は、口には出せないものなのだ。

だが、[守の方についたら危ない]と自分にいいきかした。

守側につくということは、翔が敵になるということだからだ。

すると、そんな気持ちが顔に出たのか守は懋を見て叫んだ。

目には、微妙に軽蔑と怒りが入り混じっていた。

「やっぱり翔の味方だったのか…。翔の味方だったのかー!ウォー!やるぞー!」

その結果その地区の住民からいかにも「迷惑だ」という視線が守に一斉に送られた。

当の本人はきづいていないのだが。






─守の叫びが辺りに響き渡った、ちょうどその時翔は、森の中で目を凝らしていた。

(あれ?あそこの神社にいるのは…確か、転校生の奈美さん?)

神社からかなり離れているのに翔は、その高い視力で人物判定を行なっていた。

その神社はとても古ぼけていて、やたら広いスペースがあるだけであった。

(あの神社って、もう何年も前から使われてなかったと思うんだけどな。)

翔が、神社に近づけるにつれ奈美の姿がはっきりしてきた。

(祈って…る?そんなに大切な神社か?あれ?奈美さんに誰かが近づいてる)

好奇心が沸いたのか翔は小走りに、でも音をたてず、もっと近くで見ようと急いだ。

こういうことには、じっとしてられないのだ。

(やたらデカイ奴だな。っていうか…あそこにいるのって…)

目をこすりながら尚も翔は走り続ける。

今度は、好奇心からではなく、恐怖心からでもあった。

普通は、逃げるところ、翔は近づくのだ。

(襲う気、か?は?この世に神社に祈ってる人を襲う奴がいるのか?)

「目の前にいるか」と自分にツッコミをいれ、ようやく神社にたどり着き全力で"未確認生命"を通り越し、奈美の隣に立ち、振り返った。

獣の体全体は黒っぽく、頭はゴギブリの気持ち悪さを2倍にしたようだった。

しかも、ご丁寧に触覚が2本生えていた。

(まともにこれ以上見てたら…吐きそうだな。っていうか、あんなのが存在するのってあり!?)

奈美がようやく翔に気づいたのか、祈ることを中断した。

奈美の顔は、いかにも寝起きの顔と言った感じで、ボーッとしていた。

「え?えーっと…」

「お、俺函崎翔。同じB組だよ、よ、よろしく。」(俺、何こんな時に自己紹介してんだよ…)

「は、はい…」

「な、なぁあいつって奈美さんの…知り合い?」

それを聞いた瞬間、奈美の顔は何か不思議な物を見るような表情を見せた。

「あ…ごめん。そうだよな、あんな奴が知り合いのわけ…ない、か。」

"未確認生命体"は狂ったように体をうねらせて戦闘態勢に入っていた。

まるで、暴れ牛のようである。

「あれ…見えるん…ですか?」

声までもボーッとしている奈美のその一言で、翔はこの現実から逃げ出したくなった。

もちろん、翔も人間だ。

現実にあり得ないことが起きればパニックになる。

そして、心にこう誓った。

(奴を狩って帰って、今日のことは寝て忘れる!)

こう誓うのは、常人には理解できないのだが。

「うぉぉぉぉ!!」

もはや冷静ではいられなかった翔は行動に出てしまった。

「翔さん、待って…」

奈美の声もきかず、獣に飛びかかった。

ありったけの力を拳にこめて。







−「現実とは厳しいものだな。」翔はそう思った。そういう問題じゃないのだが。

翔は、あの後獣攻撃をまともにくらい、5mくらいとばされていた。見事に宙をまった姿は、見られるものではなかった。

(血が、見える。このままいけば…まぁ死ぬ、な。

体に力が、入らない…。

俺って…こんなに無力なのか…。

守なら、簡単にぶっ飛ばせるんだけどな…)

「最後までどんな時でも生き抜く。これを誓ってちょうだい。」

(母の声だ。俺が最後に聞いた言葉でもある。

そうだ。俺は、母さんに何もできなかった。

絶対に忘れないと誓ったんだ。

それが、俺にできる唯一のことだ!)





「おい…。俺はまだ死んでねぇぜ。」

その声に反応し、獣は鋭いキバをむき出しにして翔の方に走り出す。

「俺は、俺は、絶対にあきらめねぇ!母さんと誓ったんだ!!」

翔がそう叫んだ途端、翔の周りに"何か"が渦巻き始めた。

風が翔の周りを激しく包みそして─バサッ

純白の翼をまとった翔がそこには立っていた。

だが、以前の翔には無かった─いや、男ではありえない膨らみが2つ存在していた。

翔は、そのことは気づかず夢中で一つの言葉を発した。

「ライトニングバースト!!」

甲高い声が辺りに響く─と同時に、怪物は消滅した。

怪物がいた場所には、少し大きめのクレーターができていた。

その夜のニュースで取り上げられることになるほど、それは影響力があった。

なぜなら、空から巨大な雷─いや、雷かどうかもわからない巨大なエネルギーが落ちたのを誰もが見たのだから。




<第3話に続く>


あとがき

Revolutionです。下手な小説ですが、読んでもらえると幸いです。

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