「計画は、順調に進んでいるかね」
一人の男の声がホールに響いた。
「はい、順調であります。」
その声を聞いて、男は満足した。
「そうか。ご苦労。」
「失礼しました。」
もう一人の男は、ホールから立ち去った。
「もう少しだ…。もう少しで、あいつがわがものになる。」
不気味な笑い声が、ホールに響いていった。が、突然服の中から黒いペンダントを取り出した。
「何もしないってもな。こいつで、少し楽しませてもらうとするか。」
男は、ペンダントに向かって「行ってこい」と言った。
すると、ペンダントは空中に浮かび、続いて小さなブラックホールのような穴に吸い込まれていった。
Strange occurrence
第1話「前兆」
作者 Revolution
7月。
函崎家には珍しく、目覚し時計が鳴っていた。
ピピピッピピピッピピピッ
「…もう少し寝かしてくれ」
と、よくありそうな言葉を言ったのは函崎翔である。
彼は、氷橋高校に通っている1年でクラスはB組。
身長は、173cm程で体つきも悪くは無い体系だ。
部活には入っていないが、運動に関しては優れている。ある友人のせいかもしれないが。
だが、成績は良いとはいえなかった。いってみれば、普通ぐらいである。
ピピピッピピピッピピピッ「あと15秒以内に起きなければ攻撃を開始ます」
単調な機械的な声が、目覚し時計から出たのである。
「…えっ?攻撃?…ちょっちょっとタンマ!中から何出してるの!?」
もちろん、何せ相手は機械。そんなことを言っても無駄である。
「目覚し時計ごときに負けてたまるかぁぁぁ!!」
なんだか壊しそうな勢いである。
結局、機械との数分の格闘の末、翔は目覚し時計の電池を抜くことに成功した。
つまり、壊さなかったのである。否、壊せなかったのである。
「危なかった…。というか、目覚し時計が電気で痺れさせようとすることはありなのか?」
一人で呟いた翔は、朝食を済ませた後、すぐに着替え学校へ向かった。
翔にとって退屈な授業を終え、昼休みへとあっという間に突入。
そして、翔は昔からの友人中石懋と話し始めた。といっても、彼がすることいえばそれくらいしかなかったが。
懋は、身長が168cmで翔より背が低い。
少し痩せている方なので、運動に関しては自信が無い。
だが、成績は良いので氷橋高校に合格するのにさほど苦労はしなかった。氷橋高校の中でもトップレベルに入るくらいだ。
ちなみに、クラスは翔と同じB組で科学部に入っている。
「俺にくれた時計のことなんだけどさ」
「昨日渡した目覚し時計のこと?」
「いくらなんでも起こすのに武器使うのは無しじゃねぇか?」
「それぐらいしないと、翔は起きないでしょ」
「もう少しで、欠席になるところだったんだぞ!」
翔は、懋に訴えたかったことを思いっ切り言った。
「じゃあ、遅刻しても良いと」
まったくもって正しい意見である。
「卑怯だぞ!いきなり、その話に戻すなんて」
懋は、ため息をついた。
「な、何?そんな呆れたような顔して」
「翔ってさ」
「何だよ、改まった言い方して」
「はっきり言うと、よく高校なんか入れたね」
「いくら懋でも、まじめにきれるよ」
ドスをきかして、翔は言った。
「ま、じ、め、に言ってるんだけどさ」
と、返されてしまった。そんな技は、懋にはきかないのである。
「…悪かった。確かに俺がいけねぇな。」
素直に反省するのだった。翔はそういう一面もある。
「でさ、もう一つ聴きたいことが──」
「なんであの時計が、あそこまで硬いかって?いい加減わかってよ。普通の時計だったら、朝を迎えたときに息の根を止められちょうでしょうが」
「うっ。色々はっきり言うな…。しかも言いたい事読まれてるし。」
翔にとって、懋の言葉はダメージが高かったらしく窓の外に顔を出して憂鬱そうに下を向いている。
「そういえば、休み時間なのに珍しく守は来ないね」
と、廊下を見渡しながら懋は言った。
「ん?そういや、そうだな。いつもうっとうしいくらいに騒いでるのにな。宿題でもやってる─ブッ」
「誰が宿題をやっているって?翔じゃあるまいし」
「今殴った力の2倍以上で、かえそうか?」
翔を怒らせたのは、佐々岡守。
翔の中学からの友人で、クラスはA組。
身長は178cmなので、翔より背が高い。
色々、暴れている?せいか、体つきはなかなか良い。
成績は、平均よりも少し上くらい。
部活は、中3まで入っていたが、高校では入っていない
部活に入らない理由は、本人にいわせると「やっぱ自由がいいよな」だ。
「暴力関係しか、翔にはできないのか?」
「そういう守は、口しか使えねぇのか?」
「そんな低レベルな争いするなら、無視すればいいのに」
そんな懋の呟きは、2人の耳には全く届かなかった。
翔と守の言い争いは昼休みが終了しても、続けようとしたので、懋が止めたのであった。何で止めたかは、言えたものではなかった。
ただ、止めた後2人は痺れていた─と言っておこう。懋の2人を止めている光景を見た人は、「懋がいなくなったら学校崩壊しかねないな」と思っていた。もちろん、一部の人ではなく全員である。
─放課後─
翔と守は、昼休みの戦いを再開すべく外に出ていた。といっても、帰る途中なのだが。
しかし、すぐに一人の少女によって遮られた。どうやら、外で待ち伏せてたらしい。
「翔!一緒に帰ろう♪」
と翔に言ったのは、佐藤恵美。
翔の幼馴染で、家は翔の家のすぐ隣である。
身長は、159cmで髪は肩にかかるぐらいの長さである。
大抵の人は、恵美をかわいいと思う、そういう顔立ちだった。
中学のころは、陸上部に所属していた。そのことだけあって走る速さは尋常ではない。現在は、部活には所属していない。
ある出来事が起きてから、翔と一緒に帰ろうとしたりする。翔にとっては、ただの迷惑にすぎないが。
「守、今日のところはひとまず休戦ってことで」
「は?俺の勝ちで決まり─行っちまった」
「逃げても無駄だと思うんだけどね…」
懋は、恵美のとんでもない速さで走る姿を見てそう言った。
翔は、肩で息をしていた。そうとう走ったようである。
「こ、ここまで、き、きたらさすがに─」
「じゃあ、ここからでもいいから一緒に帰ろうっか」
まったく疲れてないように見えるその姿は、なぜか翔は怖かった。
「!?っていうか速っ!…また、一緒に帰るのかよ」
「あの時のことは、忘れてないんだから!」
「それは、もういいって。いちいち過去のことにこだわるなよ」
「命を救われたのよ。だから──」
「それって、恩返しってことだろ?別に俺は、恩返しなんか望んでないから─わかった、わかった。そんな目するなって」
翔は、空を見上げた。
「信じられないことってあるもんだよな…。」
「あの時」か…。
中2のちょうど今頃だった。
俺は、その日一人で帰っていた。でも、何だか気持ちが落ち着かなかった。
帰り道の途中には、踏み切りがある。その踏み切りに、今すぐにでも行かなければいけない気がしたからだ。
根拠なんてないが、俺は走った。
行って、何でも無かったら家に帰る時間が早くなった、とでも思っておこうと考えた。
道を左に曲がって、踏み切りを見た。
そこには、踏み切りを渡ろうとしている恵美がいた。
やっぱ何でも無かったか。そう思った。
ふと、腕時計を見た。その時間を見て、俺は走りだすしかなかった。
電車が、毎日決まってあの踏み切りを通る時間だからだ。
踏み切りが閉じていない─壊れている。
突然、壊れるなんて事は無いとは俺でも思った。
だが、定期的に通るあの電車が迫ってくる音を聞いて俺はもっと走る速さをあげた。
恵美は、電車に気がついて恐怖で動けなくなっている。
─間に合わない。このまま行けば、確実に死ぬ。
でも、それだけは避けたかった。
何がなんでも助けたかった。
何かが起きた。
目の前が、真っ白になったと思ったらいつの間にか、線路の向こう側に立っている。恵美を抱えて。
助かった。それしか、頭に浮かばなかった。
これが、安堵感というものなのだろうか。
だが、一つ気になることがあとあと出てきた。
「自分が助けた」という決定的なところが記憶に無いことだ。
人間は、誰しも大きすぎる安堵感に浸るとそうなるのだろうか。
…ともかく、それ以来恵美は俺と一緒に帰ろうとする。
もう二度とあんな事は、起きないと思うんだが。
だが、翔は一つ気づいてなかった事がある。
不思議な点は、もう一つあったということに。
そして、翔の平凡的な生活にも終わりが近づいてきているのだった。
それは、これから翔の学校に転校する少女によってもたらされることになるである。
<第2話に続く>
あとがき
初めましてRevolutionです。
小説を本格的に書いたのは初めてなので、読みづらいところなどあると思いますが、楽しんで読めたもらえたら嬉しいです。
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