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姉がくれたもの(3)

作:うえきバチ

 ジリリリリ……カチッ!
「んー……朝か」
僕は目覚まし時計を止めて布団から出た。窓に目を向けて軽く伸びをした。
「さてと、ご飯ご飯」
パジャマのまま、一階に向かった。居間に入るとすでに朝食のご飯と味噌汁が並べてあった。
「おはよ」
「あら、おはよ」
僕はお母さんにあいさつした後、自分の席に着き朝食を食べ始めた。お父さんはもう会社に行ったらしくお父さんの気配はなかった。
「あー、もう高校かぁ。早いなぁ」
「人生あっという間よ」
なんだかなぁという気持ちだった僕は溜息が出た。さっさと朝食を済ませてから自分の部屋に入った。僕は、10分だけと自分に言ってベットに寝転がった。
「はぁ……、学校嫌だなぁ」
僕は天井を見ながら呟いた。そして、だんだん瞼が下りてきていつの間にか夢の世界に飛んでいた。


「あれ?ここどこ?」
僕は気付くと白い光に包まれたところに立っていた。
「ここはね。あなたの意識の中なんだよ」
と言って誰かが前から近づいてきた。その人には見覚えがあった。
「お、お姉ちゃん!」
「久しぶりね」
お姉ちゃんは優しく微笑みながら言った。
「あらあら、私の髪をバッサリ切って茶髪にしちゃったの?」
訳が分からなく混乱している中、お姉ちゃんは「困った子ねえ」と言うように苦笑した。
「なにしに来たんだよ」
「なにしにって、あなたに会いに来たのよ」
「会って何するんだよ?」
気付けば僕はお姉ちゃんにすごく怯えていた。
「会ってお話しするのよ」
「嘘だ!どうせ身体を取り返しに来たんだろ!」
僕はお姉ちゃんに怒鳴っていた。
「そんなことしないわよ。だって私があげたんですもの」
「嘘だ!嘘だ!嘘だ!」
「嘘なんかじゃないわよ」
「嘘だ!どうせこの身体くれた理由は僕を消すためだろ!」
「何を馬鹿なこと言ってるの?」
僕は自分が何を言っているのか分からなくなっていた。
「僕がいなくなればいいと思ったからこうしたんだろ!そうしたらお母さんもお父さんも僕という重荷を背負わなくても済むと思ったからこうしたんだろ!どうせ僕は弱くて皆の重荷なんだよ!僕なんか死ねばいい存在なんだよ」
「いい加減にしなさい!」
お姉ちゃんは僕の頬を思いっきり平手打ちをした。僕は少し身体が揺らいだ。
「馬鹿なこと言うんじゃありません!死ねばいいって?簡単に死ねばいいなんか口にするな!」
「じゃあなんでお姉ちゃんは僕にこの身体くれたんだよ!僕にこの身体あげたらお姉ちゃん死んじゃったじゃん!」
「死んでないわよ」
「死んでないって、だってお姉ちゃんいないじゃん」
お姉ちゃんは僕を優しく抱いてきた。お姉ちゃんの身体はとても温かかった。
「生きてるわよ。あなたの身体として」
「身体として?」
「そうよ。今、私の身体にはあなたの魂が入ってる。だけど身体は私の身体なの。だから、私はいつまでもあなたのそばにいるのよ」
「言ってる意味が分からないよ」
「ふふっ……、私はいつでもあなたのそばにいるっていう事がわかれば充分よ。力にはなってあげれないけど」
「うーん。分かった」
「いい子ね」
お姉ちゃんはゆっくり僕から身体を離した。
「じゃあ私は行くね」
「何処行くの?」
「あなたにはまだ遠いところよ」
「また会える?」
「もう会えないわよ。これが最後」
「寂しいな……」
「私はいつでもそばにいるわよ。あなたの身体として」
「うーん。でも……」
「こら!元気を出しなさい!あなたは強い子でしょ!」
「わかったよ。がんばる!」
「よし!」
「なんかいつもお姉ちゃんに助けられてたり勇気付けられたりされてたから、僕もお姉ちゃんになんかしたかったな」
「何言ってるのよ!姉として姉弟として当然のことよ」
「そうなの?」
「そうよ。だからあなたは私の身体で頑張って生きなさい!どんな困難にもめげずに立ち向かいなさい!それが私の一番嬉しいことなのよ。分かった?」
「分かった。一生懸命生きるよ」
「それじゃあね。これが本当に最後のお別れよ」
「うん。僕頑張るからね」
僕とお姉ちゃんは強く握手した。
「バイバイ!薫」
お姉ちゃんは手を振りながら光の中に消えていった。


「んー……。ん?」
僕ははっと目が覚めた。やばいと思って時間を見ると、まだ5分しか経っていなかった。
「あー、よかった。それにしてもなんか懐かしい夢だったな。どんな夢だっけ?んー思い出せないな。まあいっか。風呂風呂」
僕はさっさと風呂に入り制服に着替え、玄関に向かった。
「さて高校生活頑張りますかね!いくぞ美夏!」
僕は妙にテンションの高い自分に気付いた。
「軽く寝たら気分が良くなったのかな?僕。まあいいや。いってきまーっす!」
僕は居間に居るお母さんに充分に聞こえるくらい大きな声であいさつをした後家から外に出た。
「うん!いい天気!」
僕は空を仰ぎながら学校へ歩き出した。

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