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「死ぬ前にもう一度……。」

第三話 〜事故・あの世?・神様??〜

作:セル


「やっぱ、お前って体力ありすぎなんじゃねえの?」
「どうして?」
 小夜は首を傾げる。ちょっと可愛いかも……。
「だ、だってよ、いつもよりもずっと速く歩いてんのに、全然普通な顔してんじゃん」
「まあ、慣れってやつですかな」
 小夜は自慢げに言った。
「慣れって、まだ二分も歩いてねえぞ?」
「小夜様を甘くみちゃだめだよ」
「うわあ、すごぉいや〜」(棒読み)
「……バカにしてない?」
「さあ、どうでしょう?」
「白々しいわ! ボケェ!!!」
 ビシッ!!!
 すばらしいまでの効果音とともに小夜が突っ込みを入れる。
「痛ってぇ〜……つか、なんでお前が叩くと、気持ちいいくらいの効果音が流れるんだよ……」
「なんでだろうね……」
 ここで詳しく聞き始めたらどうにもならなくなりそうなので止めておいた。
「でも、お前ってマラソンじゃそんなに速くないよな」
「ああ〜」
「ああ〜って何だよ」
「マラソンは、めんどくさいの」
「めんどくさいって……」
 たしかにめんどくさいが、速く走れるんなら走ればいいのに……。
「だって、マラソンってずっと走るじゃない? でも、何で走らなくちゃいけないのか分からないのよ」
「いや、走る意味って言ったって達成感とかじゃないのか?」
「そうかな〜、そんなに達成感とか感じないけどな〜」
 小夜のマイペース振りには呆れる……。
「あ、もしかしてお前、ウソついてないか?」
「え?」
 小夜はちょっと驚いていた。
「実はマラソンが苦手なのを隠してんじゃないか?」
「そんなこと無いわよ!」
 ちょっと怒っている。
「じゃあ、走ってみるか!」
「いいわよ!」
 挑発に乗りやすいところを見ると駆け引きが下手にも見える。実際のところはどうなんだろう?
「じゃあ、行くぞ! 位置について〜! ……よ〜い…………ドン!!!」
 俺の合図で一斉に走り始めた。

 一〜二分走り終わったところで余裕で小夜がリードしている。
「はあはあ……お前な〜! こんなに……速く……走れるなら……マラソンも……もっと……真面目に走れよ!!」
「ていうか、そんなこと言う前にウソだって言ったこと謝りなさいよ!」
 小夜は走っている途中なのに息切れもしないで普通に話している。すごい……。
「ああ〜……ごめん。てか、後ろ向いて………走ってると……危ないぞ〜!」
「あ、そうだね」
 と、言って小夜が前を向こうとした時、ちょうど小夜の横からトラックが突っ込んできた。
「……え?」
「小夜〜!!! 危な〜い!!!!」
 俺はドラマとかで定番のセリフを言いながら小夜を道路の脇に突き飛ばした。
「…………!!!」
 トラックが突っ込んできたときには小夜とは距離があったのに小夜に追いつけた。こんなに速く走れるとは思いもしなかった。
 ただ、俺は重要なことを忘れていた。
 こんなことをしたら俺はトラックの目の前に立ってしまうことになる。つまり事故に遭ってしまうのだ。
 頭ではこんなに考えが回っているのだが、体が動かない。
 まるで時間が止まったようだ…………。
 トラックにひかれる直前にこんなにいろんなことを考えている。
 小夜には悪いことをしたかもしれない……。
 勝手な正義感で小夜の生命を救ったが、救われた小夜は一人の人間を殺してしまった罪悪感が残るだろう。
 小夜はこの罪悪感と生きていかなければいけない。
 そう、思った次の瞬間、
 俺は宙に舞った。
 何故か痛みはなんとも無かった。
「…………さ〜、……ばさ〜…………」
 遠くから小夜の声がぼんやり聞こえ始めた。
 とても遠く……俺と小夜の間に何か……何かがあるように……。
 それは小夜が遠くから叫んでいるのかもしれない。
 または、俺が死ぬ直前なのかもしれない。
 それとも、ただ俺の想像した声なのかもしれない。
 俺には何も分からなかったが、体が軽くなってきた。あの世ってところに行くのかな……。
 ここで突然意識が途絶えた。



「おい! お〜い?」
 今度ははっきりと聞こえた。この声は聞いたことの無い声だ。
「お〜い! 聞こえてるか〜?」
「ん? ここは誰? 俺はどこ?」
「こんな状態でボケかましとる場合か!!」
 バキッ!
 小夜が殴るよりもすごい効果音が流れた。
 てか、この効果音はありえないような……。
「痛ってぇえええ! ……ん? 痛くない?」
 殴った威力が弱かったのか、他に原因があるのか全然痛くなかった。
「お前な〜、先入観でそんな反応すんなよ……」
「あはは……」
「まあ、とりあえず今お前が知りたがってるこの状況について説明してやるからよ〜く聞けよ」
「はい……」
 この男は何故か偉そうだ。
「偉そうで悪かったな」
「え? す、すいません……」
 何で分かったんだろう? と、思いつつ男の話を聞く。
「いいか、お前自身も気付きつつあると思うが一応言っておく。お前は死んだんだ。
それと、ここはあの世って呼ばれている場所だ。
あの世には天国と地獄があると言われているが、ここは天国みたいなところだ。
お前は生きてる間に特に悪いことしてなかったからここに来たんだ。
そしてお前が死ぬ直前に友を救ったという功績ってやつがあって、その褒美みたいなことをしてやるために俺はお前のところに来た。
まあ、俺は下界で言えば……神様ってやつかな」
 いっぺんに色々言われて頭が混乱してしまった。とりあえず整理してみよう。
 ・俺は小夜を助けて死んだ。
 ・ここは天国。
 ・今の俺は外見は何も変わっていない。足も生えてる。
 ・この神様は俺が思ってことに怒ったからホントに神様なんだろう。かなりファンキーだが……。
 ・俺は偉いことをしたらしく、褒美をくれるらしい。
 その褒美ってものが気になる。
「褒美が気になるって、お前って欲張りだな……」
「ま、まあ貰えるもんは貰いたいんで……」
「ま、話を続けるぞ。褒美ってやつはお前を九時間だけ甦らせてやることだ」
「九時間ってかなり微妙じゃん……」
 俺は心で思っても読まれてしまうのではっきりと声に出して言った。
「俺だって精一杯やってんだからそんな突っ込み入れんなよ……。それに口で直接言われるとけっこう傷つくんだぞ……」
「はは……」
「話を戻すが、甦らすといってもお前の体はもう他の人間の目の届くところにある。そんなところで突然甦ったりしたら驚くだろ?
ちなみにその人間たちの記憶も消せるんだが、それは面倒だから却下だ」
「はあ、そうですか……。で、俺はどうやって甦るんですか?」
「それはな、別の人間の体を使うんだよ! 今ちょうど身寄りが火事で全員居なくなった引きこもりが自殺しようとしているんだ。
そいつの周りには人間は居ないし、そいつを知ってる人間も少ないから条件はクリアしているんだ。
そこで俺がお前の魂をその引きこもりにぶち込むと九時間だけお前は現世ってやつに戻れるんだ」
「え? でも、その引きこもりはどうなるんですか?」
「心配すんな。そいつの魂はすでにここに来ているんだ。その引きこもりに残ってんのは肉体とわずかな精神だけだ」
「はあ……」
 話がよく分からないが、とにかく安心なんだろう。
「あと、さっきも言ったが記憶を消すのが面倒なんだ。だからお前が甦ったことを知ったやつが出てきたら速攻ここに戻して褒美タイム終了だ。
つまり、気付かれんなってことだな」
「え? それって不便なんじゃあ……」
「ま、とにかくさっさとお前の魂ぶち込むぞ! 時間が残り少ないんだ。こんな経験、魂が消滅するまで二度と無いぞ。存分に味わって来い!」
「……はい」
「あと、最後に翼に言いたいことがある……」
「はい?」
 神様の雰囲気がちょっと変わった気がした。
「…………こんな運命にしちまってごめんな」
「え?」
 こんな運命って、死んだことだろうか? それとも、これからの……。
「それじゃあ、行って来い!!!」
 神様は俺を思いっきり投げ飛ばした。
「うわぁあああああああ!!!」




あとがき
ハイ、第3話デス。いかがでしたでしょうか。
今回は前回よりも、もっと表情とかを頑張って表現してみました。やっぱりダメダメデスね……。表現しきれてない感じがド素人丸出しで恥ずかしいデス……。
ってことで(?)次回に期待してくれたらホントうれしいデス。


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