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「はあ、つかれた〜」
 ばたんっ! と大きな音を立てて布団に寝そべった。
「今日は寝よっと……」
 言葉を喋り終えたとほぼ同時にいびきが部屋中に響き渡った。
 
 
 この物語の主人公は、
 山中 翼(やまなか つばさ)、十五歳。
 外見は中の下といったところだ。
 この物語の舞台となるのは某県にある小さな小さな村で「すんごい田舎」である。
 少し大きな街に行くにも徒歩一時間も掛かってしまう。
 まあ、前書きみたいなこの説明はこんな感じで終わる。
 え? お前は誰かって?
 まあ、作者が設定を変えなければ、後々出てくるであろう。
 
 さあ、本編スタート!
 
 
 


「死ぬ前にもう一度・・・。」

作:セル



 
 今日は八月三十一日。
 いつもなら「らすとすぱぁとぉおおおお!」とか喚きながら宿題に取り掛かっていたところだろう。
 だが、今年は違った。
 なんと、毎年夏休みの宿題忘れプロ(?)であるこの俺が宿題を終わらせていたのだ! (昨日終わったばかりだが……)
 
 思えばこの夏休みほど辛いものは無かった……。
 毎日毎日、英語の単語練習。
 ほかの宿題には見向きもせずひたすら練習あるのみ。(オイッ!)
 その所為で最終的には他の宿題もやることになり非常に大変な思いをした。(当たり前だろ!)
 その上、今年は受験だから親の目も厳しい。
「でも、終わったものは終わったんだぁあああ!」
 と自分自身に言い訳をしながらマンガを読み始めた。
 
 ……どのくらい時間が経っただろうか、下から声が聞こえてきた。
「こら! 翼ぁ〜! 宿題終わったからっていつまでも寝てるんじゃないの!」
 母さんの声だ。
 マンガを読んでるのを知られたらもっと怒るので、今起きたように見せかける。
「はいはい、今起きるよ〜」
 ちょっぴり棒読みだった気もするが、うちの母親はかなり鈍いので安心だ。
「もうすぐご飯だから降りてらっしゃい」
 時計を見ると十時を回っていた。
 もうマンガを読み始めて三時間は経っていた。
「俺って集中すると周りが見えなくなるタイプなんだよなぁ〜」
 と独り言を呟きながら下に降りていった……。
 
 俺は飯を食べる速さなら自信がある。
 食べられる量は少ない方だが、速さだけならクラストップ、いや学年トップかもしれない。
 まあ、自慢とは言えないが……。
 俺はちゃっちゃと朝飯を済ませて自分の部屋に潜っていった。
「はあ、今日は何もすることないな〜。暇だし、気分転換に散歩にでも出かけるか……」
 そういって外へ出た。
 
「つぅ〜ばぁ〜さぁ〜!」
 突然後から声をかけられて少し驚いた。
「ん? あぁ、小夜かぁ〜」
 こいつは小林小夜(こばやし さよ)。
 俺とは幼馴染で今も仲良くやっている。
 外見はけっこう可愛い分類に入るだろう。
 しかし、性格がかなりキツイらしい。
 俺は幼馴染だから良かったものの、小夜と付き合った男は必ず三日後には別れているという噂が流れるぐらいだ。
「小夜、どうした?」
「どうした? はこっちのセリフよ! あんた、また去年みたいに宿題残してるんでしょ? さっさとやっちゃいなさいよ〜!」
 小夜は意外と世話好きである。
「ふっふっふ……」
「な、何よ?」
「今年の俺様は一味違うのだ〜!」
「え? もしかして……」
「そう! 俺はついに宿題をやり終えたのだ〜!」
「嘘っ! あの毎年恒例の徹夜祭もしないで!?」
「毎年恒例とは何だ! 毎年恒例とは!! 俺だってしたくてしてた訳じゃないんだぞ!」
「あはは、でも良かったじゃない終わって」
「ま、まあな……」
「じゃあさ、一緒に街に行かない?」
「え? 何しに?」
「買い物よ、か・い・も・の! いいじゃない宿題終わったんだし、ね?」
「ま、いっか」
「よぉし、決定〜。じゃあ早速準備してきて、あんたの家の下で待ってるから」
「おう! 分かった!」


「……本気で言ってるのか?」
 俺は少し不安そうな目で小夜を見る。
「ええ、もちろんよ!」
 小夜は何か問題ある? と言いたそうな目で俺を見ている。
「何で街までチャリで行かなきゃいけねぇんだよ! 電車があるだろ、電車が!」
「いいじゃない。自転車で行けるんだから」
「そりゃあそうだけど……」
「お金も掛かんないんだしさ。文句言ってないでさっさと行くよ〜」
 小夜は先に走り出してしまった。
「あ、ちょっと待てよ〜!」
 俺は慌てて小夜の後を追いかけた。
 
「え? もうバテたの??」
 街に着いたが、俺は息を切らしていた。
「はぁはぁ……だってよ……この道……坂が……多くて……疲れんじゃんか……。それに……全力疾走することないだろ!!!」
「どうせなら早くついた方がいいじゃない。それに、翼の体力が無いだけじゃないの?」
「お前の体力がありすぎなんだよ!」
 小夜は徒歩一時間の道のりをずっと全力で走ってきたのに、息切れすらしていない。
「まあ、そんなことはいいからお店行こうよ」
「あ、あぁそうだな……」
 
「ねぇねぇ、この服似合う?」
「あぁ、そだな」
「じゃ、こっちは?」
「あぁ、そだな」
「……ねぇ、聞いてんの?」
「あぁ、そだな」
 バシッ!!!
 まるでアニメのような効果音が店内に響いた。
「いってぇ〜、何すんだよ!」
「あんたが人の話を聞いてないからじゃない!」
「だからって殴ることはねぇだろ! それに昔っからこうゆう性格だったろうが!」
「あ、そうだったけ? あんたと一緒に来たの久しぶりだったから……」
「ん? そうだったけ?」
「そうよ! まあ、二人とも忘れてたからお互い様ってことで……」
「それって俺が殴られ損じゃねぇか!」
「いつまでも女々しいこと言ってんじゃないの、わかった? 『つっちゃん』」
「こら〜! その呼び方するなって言ってんだろうが!!」
 
 そんなこんなでもう夕暮れだ。
「夕暮れだし、もう帰るか?」
「えぇ〜、いいじゃないもう少し。ね、次で最後にするからぁ〜」
 小夜が珍しく甘えてきた。
 夕日をバックに見るとかなり可愛い。
 小夜を初めて見る男はこれで一発だろう。
「次で最後だぞ」
「はぁ〜い」
 小夜はゆっくり歩き始めた。
 周りをキョロキョロ見ているからかなり迷っているみたいだ。
「ねぇ、もう二軒じゃだめ?」
「だ〜め!」
「ケチィ〜!」
 ちょっぴりムカッとしたが、減らず口はいつもの事なのでそっとしておいた。
「あ! あれ、いいんじゃない?」
 小夜は「占い」と書かれている看板を指差した。
「ん? お前って占いとかって信じるタイプだっけ?」
「ほら、あたしたち今年は受験じゃない? だからちょっぴり気になっちゃって……」
 口ではそう言っているが、内心かなり気になっていそうだ。
「まあいっか、行くならさっさと行こうぜ」
「うん、行こっ!」
 
 看板の近くに少々くたびれた家が建っていた。
 中に入ってみると、少し薄暗く埃もたまっていた。
「汚ねぇな……」
「そうね……」
「何か用かね?」
「!?」
 奥の扉から七十歳くらいの老人が出てきた。
「あのぅ、占いに来たんですが……」
「ほう、こんな小汚い所に占いに?」
「ごめんなさい! 汚いとか言ってしまって」
「まあ、いいんじゃよ。汚いものは汚いんじゃし。ほれ、突っ立てないでそこの椅子にでも掛けなさい」
 俺たちは目の前にあった椅子に座った。
「わしはここの占い師じゃ。で、何を占って欲しいんじゃ?」
 と、決まり文句を言ってきた。
「えっと、あたしたち今年受験なんですよ。だから、どうやったら高校に合格できますか?」
 さすが小夜だ。「合格できるか」ではなく「どうやったら合格できるか」と希望が持てるような質問をする。
「そりゃ、勉強すればいいじゃろう!」
 と、占い師はかなり見当違いなことを言ってきた。
「え? いや、そうじゃなくて、じゃあ、何かラッキーアイテムとかないんですか?」
「そんなもん占いの本でも見るが良かろう」
「…………」
 俺は、こいつホントに占い師か? と思った。
 小夜もそう思っているらしく、呆れた顔で占い師のことを見ていた。
「ここ……占いじゃないんですか……?」
「そうじゃよ、看板にも書いてあったじゃろうが」
「でも、何にも占ってくれないじゃないですか!」
「わしはただ、困っている人に助言をする占い師じゃ。おぬしは少しでも楽になるようにしようとしているだけじゃろうが!」
 俺はその言い方にムカついたが、小夜は言われたことが当たっていたらしくおとなしくしていた。
「すまぬ、少々言い過ぎたかもしれん」
 占い師は少し反省しているように見えた。
「いえ、そんなこと無いですよ……あたしも怒ってしまいましたし……」
 小夜も反省しているようだ。
「しかし、おぬしも困っていることがあるじゃろ?」
「え? いえ、何も……」
「いいや、あるじゃろ? ちょっと耳を貸してくれんかのう」
「はい……」
 そう言って小夜は老人の近くに行き、耳打ちされていた。
 俺にはまったく聞こえない声で……。
「え!?」
 小夜は老人の話を聞いて思い出したのか、驚きの声を上げた。
 小夜は何故か見る見るうちに顔が赤く染まっていった。
「ち、違いますよ!」
 小夜はすごく照れていた。
「いやいや、図星じゃろう?」
「……」
 小夜はホントに図星なのか黙った。
 占い師は近くの棚から可愛らしいアクセサリーを取り出した。
「これはおぬしが勇気を出すのを手助けしてくれるお守りじゃ。大切にしなさいよ」
「はい!」
「あと忠告じゃ。おぬしが勇気を出す相手は近い未来、災難に会うじゃろう」
「え!?」
 小夜は真剣な顔で話を聞いていた。
「わしにもどのくらいの災難か、そしていつ起きるかも分からん。ただ、その時おぬしが近くにおるはずじゃ。必ず助けてあげるんじゃぞ」
「……はい」
 小夜はそう返事をして俺たちは占いの家をあとにした。
 
 
 
 
 

あとがき

 セルの初作品をご鑑賞いただき真にありがとうございます。
 まだまだ、TSはしません(笑)もうちょっと翼と小夜の日常生活(?)を前面に押し出していこうと思います。あ、でも最終的にはTSは絶対します。
 まあ、TSと呼べるほどのものじゃないデスけどね……。(泣)
 ってことで(?)次回に期待してくれたらうれしいデス。


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