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時は現代、地上より3km上空は雲の海であった。
そのさらに上空にはオゾン層が広がっていた。
そんな雲の海には羽の生えた人間が住んでいた。
そこの人々は自由に雲の海を飛び、魔法さえ使えた。
そんな彼らを地上人は「天空の魔道士」と呼んでいる。
ここの人々は18になると地上へ試験のために旅立つ。
この試験に合格しないとその者は大人として認められない。
天空の魔道士としての記憶を消され、地上人として生活することになるのだ。
そんな重要な試験に今年も一人の魔道士が地上へと向かうときが来た。
彼女の名は「レイ」という。

「長老様、では行ってまいります」
「うむ、気をつけてな」
「はい!」

彼女は雲の海に飛び込んでいった。
その様子を彼女の両親は静かに見守っていた。







卒業試験

作:NATO





「あ〜暇だな」
俺は手に持っていた漫画の本をベットへ投げ捨てた。
今日は珍しく何も予定がなかったので漫画を呼んでいたのだがどれも読み飽きたのばかりでちっとも面白くない。
気晴らしに散歩でもするか。



俺は今商店街のなかを歩いている。おっと自己紹介がまだだったな。俺は狭山純(さやま・じゅん)、高校3年生だ。
もうすぐ大学へ進学する予定になっている。
商店街を抜けると心地よい風が吹いてきた。
ふと空を見るときらっと何かが光った。何だろうと見ているとその光はじょじょにこちらに近づいてきた。
「な、何だ?」
その光は俺に激突した。
「わぁぁーーー!」



起き上がるとそこには羽の生えた少女が一人倒れていた。
「こいつ誰?」
その少女は見た事もない格好をしていた。
「おい、しっかりしろ」
俺はその少女を揺さぶった。
「う、う〜ん……」
「気がついたか?」
「あれ? 私もしかして着地失敗した?」
「着地?」
「あーん。試験開始から災難〜」
「おい、俺のことは無視か?」
「あ、ごめん、ごめん。ところで私、あなたにぶつかった?」
「さっきの光のことか? 俺にぶつかったけど?」
「またまた災難〜。ごめんなさーい!」
「お、おう……」
「これじゃ試験が……そうだ、あなた手伝ってくれません?」
「試験?」
「あ、試験ってのは『私の魔法が完璧に使えるようになること』なの。その魔法にあなたが実験台になってくれればでいいの」
「実験台? そんなのヤダ」
「そんなこといわないでよ。こうして知り合った仲だし……」
「で、でもなー」
「大丈夫、あなたに危害を与えるつもりはないから。とにかくよろしく。私レイ、あなたは?」
「純だ」
「よろしくね」
「ああ」
「じゃあ、早速魔法をかけるけどいいかしら?」
「その前にレイは何者なんだ?」
「私は魔道士よ」
「魔道士ねぇ……」
「もういい? 魔法をかけて?」
「ああ」
「じゃあいくわよ……えーい!」
レイは顔の前で手を合わせて念じると右手を俺に向かって押し出した。
とたんに俺に向かってものすごい風がふいてきた。俺は飛ばされないように足をふんばった。やがて風がやんだ。
「これであなたは以外の人に私は見えなくなったわ」
「そんな魔法が必要だったのか?」
「だってこんな姿を見られたら大騒ぎになるじゃない」
「まあな」
「あとは私の魔法が効きやすくなったこと、私以外の人の魔法が効かないことね」
「そんなのも必要なのか?」
「だって試験中には誰にも手を出されたくないし、弱い魔法はときどき効かないこともあるし」
「ふーん」
「じゃあもう一つ、私のパートナーとしてふさわしい姿にするのを作らないと」
「ふさわしい姿?」
レイは静かに目をつぶり、念じ始めた。
するとレイの手の中に赤いリボンと髪留めが現れた。
「さあ、まずはリボンを頭に付けて」
「あ、ああ」
リボンを蝶結びにして頭に結んだ。
すると俺の体が変化を始めた。
短かった髪が少しずつ長くなり両肩にふわりとかかった。男顔だったものが女顔へと変わっていく。
胸には二つのふくらみが生じて膨らんでいく。そして股間のモノが痛くなり、少しずつ短くなって最後には体内へ消えた。
Tシャツは少し小さくなり可愛いデザインのあるものへ変わった。ズボンの丈が短くなっていきヒラヒラしたミニスカートになった。
胸にはブラジャーが現れて胸を締め付けた。トランクスはショーツへと変化していく。
すべての過程が終わったときその光は消えていった。
俺は自分の体がすっかり女の子へと変わったのがわかった。
「お、俺女の子になっちゃった? ま、まさかな……」
ためしに胸を触ってみる。ふにふにとした柔らかい感触が伝わってきた。
こんどは股間に触ってみる。スカートの上から右手で触ってみた。
いつもならモノがひっかかるはず。しかし手はスイと後ろまでいってしまった。
「嘘、嘘だよな?」
俺はゴクと唾を飲みショーツをまくってその中を見た。
「な、ない!!」
股間にはいつものモノはなかった。
「お、おいレイ。何だよこの姿?」
「それが私のパートナーとしてふさわしい姿なの」
「女の姿なんてヤダ」
「そんなこと言わないで。さ、髪留めも付けてよ」
「わ、わかったよ」
俺は髪留めも頭に付けた。
「どう?」
「んーいい感じね。あれ?」
「ふふ、その髪留めはあなたの言葉遣いと仕草を女の子ぽくするものなの」
「それでね」
「ふふ、そのほうが自然でいいじゃない?」
「元は男よ? こんなのヤダ」
「ヤダ? ん〜髪留めを外せば元に戻るけど?」
「じゃあ今外す」
「残念ね、いちど付けたら1週間は外せないの」
「えー」
「いいじゃない、せっかくだから楽しんだらどう?」
「・・・」










(1週間後)

「今日は、なに着ようかな♪」
私はルンルン気分でクローゼットを開けた。中には女物の可愛い服がたくさん入っていた。
よく見ると端のすみっこには男物の服が入っていた。
「あれ、こんなのあった?」
私の記憶にはその服のことはほとんど残っていなかった。
「あら、忘れたの? 純がついこの前まで着てた服じゃない」
「そうだったかしら?」
「もしかして男だったの忘れた?」
「それはない」
「それなら髪留め外したら? もう外せるわよ?」
「・・・」
「どうしたの? 外さないの?」
「外していいの?」
「いいわよ少しくらい。また明日に付けてもらえればいいから」
「いいよ、レイの試験が終わるまで付けてる」
「いいの? あれほどイヤって言ってたのに」
「いいの。だってこの姿、気に入ったし」
「そう? じゃあ、そのままでもいいのね?」
「うん」
「(おかしい。本当ならもうすこし嫌がるはずなのに。まさか私の魔法が効きすぎてもう男に戻りたくないとか?)」
「どうしたの?」
「なんでもない」










(数ヶ月後)

「えい!」
ボン!
「やった、今日も成功!」
「レイ、魔法うまくなったわね」
「ええ、純のおかげよ」
「『純』じゃなくて『香奈(かな)』」
「あ、そうだったわね」
「もう!」
「・・・私、もういかなくちゃ」
「え、どこに?」
「空」
「空?」
「私、かなり完璧に魔法を使えるようになったでしょう? だから試験を受けないといけないの」
「じゃあ、もうお別れなの?」
「そうよ」
「そんな・・・」
「じゃあ、魔法を解くよ? えい!」
レイは顔の前で手を合わせて念じると右手を私に向かって押し出した。
とたんに私に向かってものすごい風がふいてきた。それと同時に頭に付けていた髪留めとリボンが消えた。
そして私の体が変化を始めた。
両肩にかかっていた髪が少しずつ短くなっていく。女顔だったものが男顔へと変わっていく。
胸の二つのふくらみはじょじょに小さくなっていく。そして股間に違和感を覚えると、股間はじょじょに膨らんでいった。
可愛いデザインのTシャツは少し大きくなり地味なデザインになった。スカートの丈が長くなっていき両足を覆うズボンになった。
胸のブラジャーが消え、胸の締め付けが無くなった。ショーツはトランクスへと変化していく。
すべての過程が終わったときその光は消えていった。
私は自分の体がすっかり男へ変わったのがわかった。
「あ、戻った・・・」
「うれしくないの?」
「だって、レイとお別れだし・・・」
「そんなに悲しまないでよ。かえって行きにくくなるわ」
「だって私・・・あれ?」
「あれ? 魔法を解いたはずなのに?」
「レイ、どうなってるのよ?」
「うーん・・・わかんない」
「あのねぇ・・・」
「帰って長老様に相談してみる」
「おねがいね」
レイは空へ飛び立った。










(しばらくして)

「じゅーん!」
「あ、レイ」
レイはこんどはちゃんと地上へ着地した。
「どうだったの?」
「それがね・・・」
レイは私に今回の件のことを話してくれた。
それによるとレイは条件を満たしたら試験に合格するらしいの。その条件は「私に少し残ってしまった女性化の魔法を完全に解くこと」だって。
今、残っているのは心の女性化だけみたい。
「じゃあもうしばらく一緒にいられるのね?」
「ええ、純の魔法が解けるまでね」
「ヤダー。ずっと一緒にいたいよ」
「私もそうしたいけどできないの。がまんして」
「・・・」










(数年後)

「おい、レイ」
「なあに香奈?」
「だからその名前で呼ぶなよ。俺は男だぞ?」
「ふふ、でも体は女の子よ?」
「う・・・」
ここまでくればわかるだろ?
俺は今度は体の女性化が残ってしまったんだ。レイがいろいろ魔法を試しているうちにこうなったんだ。
おかげで心は元に戻っても体が変わってしまったんだ。
レイがまた長老様に相談したけど、もう対処法はないらしい。責任をとってレイは俺とずっと一緒に暮らすことになった。
いわいる”同居”だ。ちなみにレイは記憶を消されず、普通の人になった。

これから俺の人生はどうなるんだー?

さあ? ←作者つっこみ

「おい!!」

(終わり)


おことわり

この物語はフィクションです。物語に出てくる 人物、団体は全て架空の物です。実際の物とは全く関係ありません。


〜あとがき〜
いやー魔法って奥が深いですね。なかなかうまくできないようです。
おかげで大変なことになってしまいました。
レイさん、魔法を使うときには細心の注意をお願いしますm(_ _)m

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