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−まえがき−

 どうも、初めまして。初めてこのサイトの小説コーナーに投稿させていただくKnightと申します。以後よろしくお願いします。
 この小説は、人気漫画『遊戯王』でおなじみのカードゲーム、『デュエルモンスターズ』をテーマとして、主人公に降りかかる様々なトラブルを描いております。もちろん、性別変化もテーマとなりますし、このサイトのテーマを汚すことはありません。カードゲームがお好きな方、知らない方でも、こちらにルールはありますので、どうぞ、白熱したデュエルをお楽しみください。素人ではありますが、これから頑張って連載したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。



「……さて、とどめだ」
「ああ、しまった! い……今のは俺のミスだ! なぁ、キヨ、もう一回……もう一回だけっ!」
 俺の名前は宮島キヨ。世界中で大人気のカードゲーム「デュエルモンスターズ」にはまっている中学二年生だ。
 今も“デュエル”の真っ最中。俺のデッキの最強カードである『青眼の白龍』が、対戦相手にとどめをさしたところだ。
 相手をしてくれているのは、俺のデュエル仲間であり、親友である中島浩二。
「今度は負けねーぜ。なぁ、いいだろう?」
「その言葉さっきも言っただろ? いい加減終わりにしようぜ」
「あと一回だ。絶対に今度で終わりにするから」
「ったく……しょうがねーな」
 俺は奴のわがままに付き合ってやった。

 こんな風に、いたって普通のデュエル少年の俺たちだったが……この時はまだ、とんでもないことに遭遇することなど、知るよしもなかった。




The Magician of Duel

作:Knight


第一話


 ここは俺たちの馴染みのカードショップ『アリーナ』。
 品揃えが良く、ちょっとした喫茶店も兼ねていて、繁盛している。
 俺と浩二は、最近ほとんど毎日のようにここへ来て、自分のデッキを強化したり、デュエルを楽しんだりしている。
 店のオーナー鈴木健二さんは、俺たち2人の良きデュエル仲間であり、デュエルを教えてくれた師匠的存在でもある。
「よぉ、来てたな」
 本人のご登場のようだ。店のエプロンをまとい、お得意のたばこのにおいを撒き散らしながらこっちへやって来る。
 今年で40代に突入したはずだが、まだまだ30代前半を思わせるような容姿をしている。
 こっちへ来ると、健二さんは俺たちに紅茶を1杯ずつご馳走してくれた。
「おじさん、相変らずの繁盛ぶりですね」
「ああ、この時間帯はお前たちのように、学校帰りにデュエルを楽しむ学生でいっぱいだからな」
 健二さんの言うとおり、店はほとんど学生で埋め尽くされていた。小学生から高校生、時には大人など、このカードゲームは幅広く人気がある。
「あ、おじさん」
 と、浩二。「……デュエルディスクの調子が悪くてさ。ちょっと見てくれませんか」
「ディスクが? わかった、お安い御用だ。……なーに、金はいらねーよ。弟子のお前たちの頼みだからな」
 おいおい……どうせまた、あとで店の手伝いさせたりするんだろう?
 俺は首をかしげた。
「じゃ、頼みます」
「ああ、今日中には終わると思うから……明日も来るんだろう?」
「はい」
 浩二はかばんからデュエルディスクを取り出し、健二さんに手渡した。
 デュエルディスクというのは、カードを立体映像で実体化させ、より白熱したデュエルを楽しむことができる夢の機械だ。
 今では所持していないデュエリストの方が少ない。
「……あれ? キヨと浩二じゃない?」
 振り返ると、そこには同じ学校に通う、俺の幼馴染の女の子、南春香の姿があった。
 長いストレートヘアに、すらっとしたスタイルの良い体。魅力的な容姿を持った彼女は、学校でも人気者だ。
「久しぶりにここに来たけど、あなたたち2人は毎日みたいね。……おじさん、アイスコーヒーひとつ」
「はいよ。……春香も忙しいようだな、こいつらと違って」
 ちぇっ、余計なお世話だ。
 健二さんは店中に響くような笑い声を上げながら、春香の注文したアイスコーヒーの準備をしに厨房へ入った。
 春香も、俺たちと一緒に健二さんからデュエルを教わった1人で、おじさん曰く、「唯一の女の子の弟子」である。
「何戦目?」
「9戦目。あと1戦で10戦目だ」
「……ええっ? もうそんなにやってんの? 良く飽きないわね」
 ちぇっ。こいつもまた……
「他に客は大勢いるんだ。ちょっとは相手を変えてみたらどうだ?」
 健二さんが注文されたアイスコーヒーを、春香に差し出しながら言う。
 それと同時に3、4人の高校生らしき男子が、俺たち3人のテーブルに寄ってきた。「ほら来た……」
「春香ちゃん、最近ご無沙汰だね。……どう? 久しぶりに俺たちと」
「ごめんなさい。今日はデュエル、やる気なくて。連れもいるし……またね」
「ああ、そう……ごめんね、こっちこそ。じゃあ、今度は絶対にやろうな」
 そう言い残すと、高校生たちは元の自分の席へ戻っていた。
 ん? 「あのガキたちがいなけりゃ……」などと聞こえたのは、気のせいだろうか?
 春香のような美少女と一緒にいると、周りの男達から怒りの視線を喰らうことになるのだろうか?
 なんてことを考えながら、ふと店を見回すと……一組の奇妙な客に目が止まった。
 全身を黒い服で覆った二人組の男だった。
 お互いに向き合って、話すでもなく、じっとコーヒーをすすっていた。うつむき加減で、顔はよくわからなかった。
「……何ぼーっとしてるの?」
 春香が声を掛けてくる。
「デュエルの相手でも探してるのか?」
 次に浩二。「……お前にはまだまだ相手してもらわなくちゃいけないから、逃げんなよ」
「あ、ああ、そうじゃなくて……」
 その時だった。でかい声とともに、ドアが大きな音を立てた。
 客のほとんどが音の方向をに目を向けた。音の原因は、店に入ってきた三人の男たちだった。
 三人とも長身で、体格も良く……しかし悪質な雰囲気を出していた。

「くぉんにちわあああ〜!! 皆すわああん〜っ!!」

 男の一人が挨拶をする。……いや、それはもはや「挨拶」ではなかった。
「くっ……うるさい……」
 挨拶と言うより、無茶苦茶に叫び声を上げるだけ。
 邪魔になる辺りの椅子やテーブルを体で押し退けながら、連中は奥へと歩いていく。店にいる客のほとんどが、迷惑そうな顔を浮かべた。
「また来たのかお前ら……」
 健二さんが男たちに向かって一言つぶやいた。「……いつもならもっと客がいない時に来るんじゃねーのか? もっと静かに――」
「っるせんだよ親父! さっさと酒持って来いよ! こっちは客なんだぞ!」
 三人組……不良たちは店の外まで聞こえるような大声で健二さんに言い放つ。
 「客」というその言葉に負け、健二さんはしぶしぶ注文された酒の準備に取り掛かる。俺は厨房へ向かおうとする健二さんを呼び止めた。
「おじさん、何なんだよあいつら?」
「一週間前から客のあまりいない時間帯に来てる連中でな。今もあんな調子なんだが、酒を飲み始めるともっとひどくなるんだよ。客にも手を出しかねないし、こんな時間帯に暴れてもらっちゃ困るんだよな……」
「デュエルは?」
「やるみたいだ。いつも酒に酔いながら他の客負かしてたし」
「ふ〜ん、そうなんだ……」

 ガタッ。

 俺と浩二、そして春香の3人は一斉に立ち上がった。
「お、お前ら一体何を……」
 健二さんがそう言い終わるか終わらないかのうちに、俺たち3人は同時に歩き始めた。
 目標はもちろん、奴らのテーブルだ。歩きながら、それぞれ自分のカードデッキを取り出す。
 不良たちのテーブルへ着くと、連中は俺たちに気づき、鋭い目で睨み付けてきた。
 俺たちも、負けないくらい睨み返した。
「あん? 何だこのガキども……」
「ねぇ、あんたらデュエルやるんだよね?」
 俺が真っ先に口を開く。「……ちょうど三人ずつだし、ちょっとやってみない?」
「はぁ? 何言ってんだこいつら?」
「俺たちが勝ったらさ……」
 浩二が続けて言う。「……この店から出て行ってくれないかな? そしてもう二度と来ないでくれる?」
「何だと? このガキども!!」

 ガッ!!

 俺と浩二の二人は、不良の一人に胸倉をつかまれて空中に持ちあげられた。
 さすがに、女性の春香には手出しはしないようだが。
「いいぞ楯岡! やっちまえ!」
 こいつ、楯岡っていうらしい。
 他の客から「やべぇよあいつら」「無茶だわ」などと声が聞こえる。
「すぐ暴力?」
「何?」
 春香が口を出した。
「カバンの中からはみ出してるの、ディスクよね? デュエリストならデュエルで決着つけたら? ……それとも『なんちゃってデュエリスト』なのかしら?」
 春香のその言葉を聞くと、楯岡という男は俺と浩二を床に叩きつけた。「……いいだろう、やってやるよ。俺らが勝ったら、そんな口二度ときけないようにしてやる。……おら、最初の相手は誰だよ!?」
 楯岡は、デュエルディスクと自分のカードデッキを取り出した。
「……じゃあ、俺からいかせてもらうぜ」
 俺は尻についた汚れを払って、デュエルディスクにデッキをセットした。



 店のテーブルが隅に寄せられ、デュエルディスクを使ったデュエルにほどよいスペースが設けられた。
 俺と楯岡はディスクにセットされたデッキから五枚カードを引き、手札にした。
 準備は全て揃った。
「先行はお前だ小僧……二度とデュエルができない体にしてやるからよ」
「あんたたちもさっさと出る準備をしといた方がいいよ」
 俺は楯岡を無視して、後ろの二人に声をかけた。
「小僧……」
 お互いのライフポイントは4000。俺はデッキからカードを一枚ドロー。
「リバースカードを一枚セット。さらに、『アックスレイダー』(攻撃力1700)を召喚っ」
 ディスクの効果によって、場にリバースカードと、鎧に身を包んで斧をもった戦士が一体、リアルに浮かび上がった。
「……ターンエンドだ」
 俺が自ターンの終了を宣言すると、楯岡がカードをドローした。
「すぐに叩き潰してやるよ……『ブラッド・ヴォルス』(攻撃力1900)を召喚!」
 『ブラッド・ヴォルス』。四つ星モンスターの中でも最大級の攻撃力を誇るレアカードだ。
 巨大でグロテスクなモンスターが場に実体化され、観戦しているギャラリーが思わず身を引く。
「キヨの奴。大丈夫なのか?」
 健二さんの声が聞こえた。「……もしあいつがデュエルに負けたりしたら――」
「心配すんな、おじさん」
 俺は力強く宣言した。
「……おじさんの弟子は誰だっけ? 師が弟子を信じないなんてことねーだろ?」「キヨ……」

 ザクッ!!

 振り向くと、俺が召還した『アックスレイダー』が、『ブラッド・ヴォルス』の斧で切り刻まれ、消滅していく光景が目に飛び込んできた。
 これで俺のライフポイントは200削られ、残り3800ポイント。
 相手プレイヤーの楯岡は、攻撃が成功したことで高笑いを上げた。
「ハハハッ! 大口叩いてるわりには貧弱じゃねーか。……言っとくが、このモンスターを倒すには攻撃力2000以上のモンスターが必要だぜ。相打ちでも1900が必要だ。生贄もないお前にゃ、上級モンスターを召喚するのは不可能に等しいな」
 その言葉の後に、続けざまに後ろの不良2人が口笛を吹く。
「そうだね」
 と、俺。「……『ブラッド・ヴォルス』は確かに強いよ。でも、今の攻撃が終了した瞬間、俺のリバースカードが発動するよ」
「何!?」
「リバースカードオープン! 罠(トラップ)カード、『遅かった護衛』!」
「『遅かった護衛』、だと?」
「そう。四つ星モンスター以下のモンスターが戦闘によって破壊された時、同じモンスターカードが手札にあれば、それをその瞬間に特殊召喚することができる」
「何? それじゃあ……」
「そう、俺の手札にはもう一枚、『アックスレイダー』のカードが存在するっ」
 俺は手札から、もう一体の『アックスレイダー』を召喚した。
 相手のバトルフェイズは終了している。このターンで、二体目の『アックスレイダー』が倒されることはない。
「いいぞ、キヨ!」
 俺を応援する浩二の声。
 楯岡は、自分の場に一枚リバースカードをセットし、ターンを終了した。
「俺のターン! ……いくぜ、『アックスレイダー』を生贄にし、『破壊導師レオン』(攻撃力2100)召喚!!」
 場から『アックスレイダー』の姿が消え、代わりにマントに身を包んだモンスターが一体召喚された。
 同時に、周りの人々から歓声が上がった。
「これだったら『ブラッド・ヴォルス』もイチコロだよね、お兄さん? 『破壊導師レオン』で、『ブラッド・ヴォルス』を攻撃!!」
 『破壊導師レオン』が、風を切るようなスピードで相手モンスターに向かっていく。
「馬鹿め!! リバースカードオープン! 『破滅の雨』! ……このカードは自分のライフポイントを1000ポイント削ることで、モンスターを一体破壊することができる! これで俺のライフは3000ポイントに減るが、『ブラッド・ヴォルス』は破壊されねえっ。……死ねえっ!!」
「……残念でした」
「何!?」
「『破壊導師レオン』には特殊能力があるよ。場の魔法・罠カードを一枚破壊する。しかも、そのタイミングは自分で指定できるんだ」
「ま、まさか……」

 ズガガガ……

 俺のモンスターの攻撃が見事に直撃し、敵の『ブラッド・ヴォルス』を蹴散らした。
 楯岡のライフポイントは、3000から2800ポイントとなった。
「くっ、くそ……」
「無駄にライフを削っただけだったね」
 俺は皮肉っぽく相手に言った。「……俺は特殊能力を使うタイミングを、『破滅の雨』の条件、ライフを1000ポイント削った直後を選ばせてもらったよっ」
「ガキイイイイイイイッ!!」
 楯岡は、いきなり猪のごとく俺に突進してきた。その脚が俺の腹に直撃し、小柄の俺の体は後ろに吹き飛ばされた。
「ぐは……っ!!」
「「キヨっ!」」
 浩二と春香、健二さんが、倒れている俺に駆け寄ってきた。
「大丈夫? ……ちょっとあんた! デュエルで勝負するって約束でしょ!? 約束はちゃんと守って――」
「いや、いいんだ春香……」
 そう言うと、俺はゆっくり立ち上がり、相手を睨み付けた。「こんな汚れたデュエリストに、“約束”なんて大切な言葉を使うのが間違いだ」
「け……汚れたデュエリスト、だと?」
「自分のミスに対する怒り、人にぶつけてんじゃねーよ」
 俺の言葉に、楯岡は一歩後ろへあとずさった。「ちっ……つくづく生意気なガキだ。……おら、さっさとターンエンドを宣言しろよっ」
「ああ、俺はリバースカードをセットして、ターンエンドだ。そして言っておく……あんたを倒すのに、3ターンもいらないぜ!」
 俺は相手を指差しながら言い放った。楯岡の口元ははっきり分かるほどひくひくうごめいていた。
 負ける気などさらさらないが、もし俺が負けたとしたら、ただの暴行じゃすまないだろう。
「ハハハ……なんだあのガキ。こんなに大勢の前であんなこと言い切っちゃって。負けたらどうするんだよ? な?」
「お前ら黙ってろ!」
 しびれを切らした楯岡が、仲間の言葉を大声で止めた。そして、デッキからカードを一枚ドローする。
「俺のターン……馬鹿なガキだ。3ターン以内にやられるのはお前だよ! 『心変わり』!」
「『心変わり』!?」
 楯岡の引き当てた『心変わり』とは、相手モンスター一体のコントロールを、1ターンだけ得ることができるカード。つまり、俺の場にいる『破壊導師レオン』のコントロールは、相手の手中に移動したということだ。
「これで貴様の場にはモンスターはいなくなった。……さらに、『死者蘇生』を使って『ブラッド・ヴォルス』を場に呼び戻す!」
 『死者蘇生』の効果で、『ブラッド・ヴォルス』が楯岡の場に再び召喚された。
「そして、この2体で一斉攻撃だ!!」
 2体のモンスターの攻撃力の攻撃は4000。このままだと、俺のライフはあっという間になくなってしまう。しかし……
「……残念だったね。リバースカードオープン! 『テラ・オラ』!! このカードは、捨てた手札の分だけ相手モンスターを破壊することができる。俺はこのターン、2枚手札を捨てる! これでこのターンのダメージは、0になる!」
「……何っ!?」

 ズゴーン!!

 『テラ・オラ』の効果で、相手のモンスターが二体とも破壊される。これで、お互いの場にはカードはなくなり、ほぼリセット状態だ。
「そ、そんな……」
「俺のターンだ! 魔法カード『死者蘇生』!! このターン、俺が復活させるのは、こいつだ!」

 ブオオオ……

 物凄い音と共に、そのモンスターが墓地から蘇る……それはまさしく、俺のデッキ中最強モンスター、『青眼の白龍』!!
 巨大な白い体をし、巨大な翼で飛び交うその龍は、ギャラリー全員を絶句させた。攻撃力3000の超激レアカードだ。
「ぶ、ブルーアイズ……」
「このターン、あんたの場にはモンスターはいない! このターンで終わりだ! プレイヤーにダイレクトアタック!! 青眼(ブルーアイズ)の攻撃! 滅びのバーストストリーム!!」

 カッ!! ズゴーン!!

「ぐあああ……」
 『青眼の白龍』の攻撃が見事に直撃し、そのパワーに楯岡は圧倒され、膝をついた。
 同時に、勝敗が決まった。その瞬間、店中からさらに大きな歓声が湧き上がった。
 俺はゆっくり、膝をついた楯岡の元へ歩みより、縮こまった巨体を見下ろした。
 楯岡も、そのショックを隠しきれない様子で、しぶしぶ俺を見上げた。
「俺の勝ち♪」
「…………」
「カードの力は十分だけど、気持ちの方では俺の方が上だったね」
「……く、くそおおお〜っ!!」
「お、おい楯岡〜っ!」「待ってくれよ〜っ」
 あっという間に、たった今俺にデュエルで負けた楯岡とその仲間は逃げ去っていった。
 出番のなかった浩二と春香が、不満そうにそれを見送った。



 俺たちが店を出た時は、もうとっくに八時を回っていた。
 健二さんが俺たちを見送ってくれた。「お前たちのおかげで助かったよ。あいつらももうここへ来ようとは思わないだろう」
「そうね、私たちもデュエルやりたかったんだけど」
「ああ、俺たちにかかれば何人だって敵じゃないさ!」
 浩二と春香の言葉を聞き、おじさんは満足げに微笑んだ。
 ……ん?
 その時、俺はある人影を見つけた。暗くてはっきりはしなかったが、かろうじてそれが何者なのかわかった。
 それは、さっきカードショップにいた、黒い服の男たちだった。連中は急いでいるのか、周りに怪しまれないように、こそこそと1本の細い道へ入り込んでいった。
「浩二、春香、お前ら先に帰っててくれ。……俺、急用思い出しちまった」
「ええっ? 何よ、急用って? ……えっ? ちょっと!」
 俺は、春香の言葉をほとんど無視するようにそこから走り去った。あきらかに怪しいあの二人の行動を、どうしても知りたくてしょうがなかったのだ。
 さっき男たちが入って行った道へ、急いで入り込んだ。
 すると、数秒も走らないうちに、空き地のような場所へ辿り着いた。
 夜の暗闇で辺りは全く見えなかったが、複数の低い声が聞こえ、俺は男たちの居場所を確信した。
 空き地の隅っこの方で、何かこそこそと話し込んでいる。俺は壁に背を向け、後ろ目でその男たちを確認した。
 さっきの二人に加え、さらに二人加わり、四人になっている。
「どうだった? こっちの世界は?」
 男の一人が口を開く。……こっちの世界? 何を言ってるんだ?
「ああ、なかなか面白かったよ。だが、弱いな。……この分だとあっという間にこの辺は吹き飛ばせる」
 何!? 吹き飛ばすだと!?

 ザッ……

 後ろから足音が聞こえ、俺は音の方を振り向いた。その瞬間、俺は大きな手に首をつかまれ、内緒話をしていた四人の前へ放り投げられた。
 くそっ、もう一人いたのか……
「何事だ!?」
「ったく……気をつけろ。こんなガキに話を聞かれて……」
 俺はあっという間に五人の男たちに囲まれ、全員の凍りつくような視線を喰らう。
 近くで見て初めてわかったが、男たちの目には赤いコンタクトが入っており、暗闇の中、怪しく光っている。
「誰かと思えば昼間のガキか……」
 男の一人が口を開く。「昼間のデュエルはなかなかのものだった……どうだ? この俺と今からやってみないか?」
「……何?」
「ククク、マジで言ってんのかそれ?」
 と、次は別の男だ。「……まぁ、やらなかったらこの場で殺されるだけだがな。やるというのもそれまた恐ろしい――」
 何を言っているのか、俺はさっぱりわからなかった。
 ただ言えることは、物凄いピンチの状態にあるということだ。
「どうだ? お前が勝ったら今聞いたことを言いふらすなりなんなり好きにしていい。……ただし、俺が勝った時にはこの場で殺される。やらなかった場合は即、死だ」
「…………」
 しばらく沈黙が続いた。
「決まってるだろ……」
 俺は口を開いた。「売られたデュエルは買うしかねー。すぐにやってやるよ!」
 俺は、デュエルディスクをかばんから取り出そうとした。しかし、男の一言によってその手は止まった。
「そんなおもちゃは必要ない……もっと良いデュエルを教えてやるよ」
「何?」
 デュエルディスクが必要ない? 俺は意味がわからなくなった。
 男の指示で、俺は対戦相手の男と距離を置いて立った。同時に俺は驚くべきものを目撃した。
 無造作に放った男のデッキが、空中で止まったのである。まるで、見えないテーブルにデッキを置いたようだった。
 何だ? マジックか?
「さぁ、貴様も同じようにやるといい……大丈夫。デッキが崩れ落ちることはない」
 俺は半信半疑で同じようにデッキを放ったが、同じように空中にセットされた。まさに魔法だった。どうなっているのだろう?
「いいか、よく聞け……」
 相手が不気味に言う。「油断するとデュエルが終わらないうちに死ぬかもしれないからな……」
「くっ……」
 どういうことかわけが分からないまま、デュエルは始まった。



 20分くらい経っただろうか? 俺は相手の強さに圧倒されていた。
 俺のライフポイントは1400ポイントまで落ちていた。しかし、相手にいたっては無傷の4000ポイントだ。
 さらに、場にもその強さが現れていた。
 相手のモンスターは三体の上級モンスターがいた。それと正反対に、俺の場には下級モンスターの『翼の騎士』がいるだけであった。
 俺はリバースカードを一枚セットして、ターンを終了した。
 『攻撃の無力化』。このカードは、相手の攻撃を一回だけ全て無力化することができる。次のターンで俺のライフが0になることはない。
「ククク……俺のターン、ドロー」
 男がカードを引く。
「ガキ……このターンでお前は終わりだ」
「何だと!?」
「そのリバースカードでこのターンをしのぐつもりだろうが、無駄だ。何故なら、俺の手札にはたった一枚で、貴様のライフを0にできるカードがあるからだ」
 お、俺のライフをたった一枚で0にするだと!?
「見せてやるよ。こいつだ!!」

 ブオオオ……

 一瞬のできごとだった。何が起こったかはわからなかった。
 俺が見たのは、相手のモンスター三体が生贄に捧げられ、一体の巨大なモンスターが召喚された光景。
 同時に、俺のモンスターとリバースカードが破壊された映像だった。
 今まで見てきたどんなモンスターより巨大だった。そして、何か普通とは違う邪悪なエネルギーを発していた。
「こ……こいつは……」
「残念だったなガキ。こんな所に来なければ、死なずに済んだものを」

 ピカッ!!

 そのモンスターから光が発せられ、その攻撃が俺に直撃する。
「ぐあああっ!!」
 そこで、俺はさらに驚いた。何故なら、立体映像だと思っていたその攻撃は、本物のような……いや、本物だったのだ。
 その直撃を喰らった俺は、倒されたモンスターのように、足元から自分の体が溶けていくような苦しみに襲われた。
 同時に、意識が吹っ飛びそうになる。

 ドサッ……

 攻撃が終了した瞬間、俺はその場に倒れこんだ。
「……死んだな」
 男の一人が口を開いた。
「だめだ。あの攻撃をまともに喰らっちゃ、生きてられない」
「まだ開発して間もない……今回は仕方がなかったが、もっとこれを使うまでには様子を見る必要がある。さぁ、行くぞ」
「このガキはどうするんだよ?」
「そのままにしておけ。こっちの世界じゃ変死体として片付けられるだろうよ」
 そして、男達が去っていく足音が聞こえてくる。
 ま、待て……俺……は、……まだ……
 もう限界だった。目の前がたちまち暗くなってきた。



 あれから何分経っただろうか?
 いや、何時間か?
 何にせよ、俺の体はあの世に運ばれて……
「キヨ? キヨ、起きて」
 あれ?
「おい、キヨ! どうしたんだよ!?」
 浩二と春香の声が聞こえる。
 俺の後を追ってきたのか? いや、まさかな……
 だったら考えられることはただひとつ。俺はまだ死んでいないということだ。
 俺はゆっくり目を開けた。
「……浩二……春香……」
「気づいたか、キヨ」
「ああ。よかった……俺、死んでない……」
「ああ、俺達もひやひやしたぜ。……で、でも、お前……」
「ええ……どういうことなの? これは」
「へっ?」
 俺は二人が何のことを言っているのかさっぱりわからなかった。
 だが春香から鏡を差し出され、初めてそれを確信した。
「ぎゃああっ!!」
 俺はあわてて鏡を投げ捨てた。「こ……こりゃ、どういうことだよ!?」
「……さぁ、どうにも説明がつかないわ……」
 なんと、俺の顔、体や声までも、女に変わっていたのである。

(続きます)





−あとがき−

著者:ってなわけで、第1話完成で〜す!(パチパチパチ……)
キヨ:本当に書き上げちゃったよ。まさかこのめんどくさがり屋のこの人が本当に書き上げるとは……
浩二:後半から書き方雑なような気はするけどね。
著者:だまらっしゃい! はやく公開したくて執筆のスピードが速くなったんだよ。ま、今回は連載開始ということで、増量版でお送りしましたが、2話以降はもうちょっと短くなるかなと(^^;)
キヨ:てか1番大事な部分を最後に持ってきましたね。
春香:短すぎだわ。
著者:まぁまぁ。続きが気になるじゃないか。主人公が女の子に変わっちゃって、今後どうなるのか。
キヨ:どうかな〜? それより、メインがデュエルのような気がするのは俺だけか?
著者:そうだね。そりゃあ読者さんにもデュエルを楽しんで欲しいからね。
春香:じゃあ、さっそく2話の執筆お願いね。
著者:ええっ!? ちょっとは休憩くれよ!
キヨ、浩二、春香:やれ!
著者:はい……

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