戻る



「のび太、お友達が呼んでるわよ」

「・・・今忙しい」

 ドラえもんが未来に帰った数日後の未来

 のび太は相変わらずダメ人間丸出しの日々を過ごしていた

 だが無意味な時間ではない、今が巣立ちなのだ

 この数日の間が自分をすこしづつ大人に変えていくのだ

 少なくとものび太本人はそう思ったとか思わなかったとか

 そしてドラえもん帰還のメインイベントのラストを飾った我等が愛すべく悪役、ジャイアンは

「復讐してやる復讐してやる復讐してやる復讐してやる・・・
よくも俺をあんな・・・のび太のクセに・・・

「ジャイアン、そんなに力んじゃダメだってば。
どうせもうドラえもんは帰ったんだしさぁ、気軽にのび太の馬鹿をからかってやろうよ」

心の友こと親友、骨川スネ夫と4月1日、エイプリルフールに備えて計画を立てていた

それが人生を左右するのほどの嘘になるとはまだ歴史さえも知らなかった



どらえもんぬき
のび太は空き地の復讐鬼〜前編

作:黒白




「4月馬鹿ァァァァァァぁぁ!!!!」

 4月1日のある日、町にはのび太の失意と絶望の絶叫が響いた

「どうしたのび太君?悔しいの?
もしかしてのび太のクセに悔しいの?」

 スネ夫のお決まりな台詞、『のび太のクセに』・・・名言だなコレはと本人さえ思った

 このタイミングで使うには絶好の台詞だった

「・・・」

 開いた口がふさがらないのび太

 それもそのはずだ

 ロボットとはいえ仮にも一番の親友と銘うった友が帰ってくると信じていたのだ

 裏切られたショックは計り知れない

 そんな様子を見てジャイアンも胸がすくような思いだった

「文句があったらのび太も嘘ついてみろよ、
あん?、なんだその目?、その拳は?、
いくらこぶし握り締めたってのび太じゃあ迫力ないぜ」

いい気味だ

もっともっといたぶってやる

俺様がのび太なんかに負けた時の屈辱はこんなもんじゃなかったんだからな

「うっ後ろにお化けがいるぞっ!!!」

「・・・・」

「・・・・・・・・・ぷっ、
くはははっははははははははははは!!!
聞いたかよオイっ!、スネ夫よっ!、あの幼稚な嘘をよぉぉぉぉぉぉ!!!」


「うしゃしゃしゃしゃしゃしゃ、
まあまあこの程度でしょ、のび太がつく嘘なんてっ!」


 やけくそでのび太が叫んだ嘘は不発

 2人の悪魔に火に油を注ぐ結果になっただけだった

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・」

 ん、何かのび太がぶつぶつ言ってるな

 そんなに悔しかったかのか
「ちくしょう
ちくしょうちくしょうちくしょおぉ――――!!!」

 そう言い残すとのび太は普段では考えられないスピードで駆け出していた

「・・・あんなに悔しがらなくたっていいのにな、
本当にどこまでものび太なんだから、」

 お決まりのフレーズを決めるスネ夫

「いっこ、いっこ」

 これはジャイアン流で『行こう行こう』の意味である

 最高の気分だぜ、とりあえずこれからスネ夫の家でも行って漫画でも借りるかな

 もちろん永久にだ





――――――――――そしてのび太は





「うっ、うっ・・・
ドラえも〜ん〜〜〜〜〜!!!」

 映画のオープニングの要領で叫んでみたが変化はなし

 ママからの苦情が飛んでくるだけだった

「許せねえ・・・
この野比のび太はいわゆるダメ人間のレッテルを貼られている・・・
必要以上に遅刻し先生を怒らせ廊下に立つことだって多い・・・
威張るだけの能無しガキ大将に未来の道具で裁きを下した事だってあるっ!
静香ちゃんの入浴シーンを覗くことだってしょっちゅうよっ!!
だがこんな僕にも・・・
復讐する手段はあるっ!!!」

 ちゃららっちゃちゃちゃ〜ん(リポビタン風に)

「嘘800っ!!!」 ( うそえいとおーおー )

 見るからに怪しいどらえもん型の容器

 それこそドラえもんが駄目人間のび太に残した最後の道具であった

「え〜何々、
これを飲んで喋った事が全て嘘になります・・・ね」

 本当か?

 今までドラえもんの道具の滅茶苦茶さは飽きるほど実感してきたけどコレは・・・

「案外まともそうな道具でよかったよ、
あはは――」

 のび太はアッサリ信じた

 そう、これがドラえもんの道具

 22世紀のまともレベルなのである

「あいつら許せない、
ドラえもんが帰ってきたなんて・・・
僕にとってはベスト10に入る残酷な嘘だっ!」

 ちなみに残酷な嘘bPは静香ちゃん出来杉結婚である

 そう言ってのび太は怪しげなどらえもん型の容器をとりだして

「んぐっ、んぐっ、
ぷはぁ〜〜〜〜・・・
さて・・・いやむやみに喋るのは危険だな、
ここはひとまず・・・」

「僕は学校1頭が悪いドジ男だっ!」

 そう叫んだ

 聞く人によってはコレはただの開き直りに聞こえるかもしれない

 しかし今、この瞬間に『駄目人間野比のび太』は消滅したのだ

 頭の悪いままだといつ 禁句( タブー ) を口にするかわからない

 のび太にしてはしたたかな知恵であった





――――――――――同時刻空き地





「ジャイアンもう返してよ〜」

「もうちょっとだけ〜」

「いっつもそうなんだから、
それまだ買ったばかりのラジコンなんだからね。」

「うるさいな〜、
お前の物は俺のもの、
俺達親友だろ〜」

 ジャイアンとスネ夫が和気藹々とラジコンで遊んでいた

「やいお前らっ!!」

「あっ!?」

「誰だっ!」

「・・・やあ、僕だよ」

 のび太だった

 しかし多くは語らない

 おしゃべりが過ぎると言うコト言うコトがすべて実現してしまうからだ

 もっとも意味が反転した形でだが

「どういうつもりだのび太?」

「あ、わかった。
また何かくだらない嘘でも考えたな」

「その通り、今から僕は嘘をつくからね」

 もちろん本音だ

 をつくのだ

「へーおもしれー、
のび太のオツムでどんな嘘を考えたってんだよ?」

「さあ、言ってごらん」

 あくまで強気の二人

 ドラえもん無き今にあってのび太を恐れる必要などないのだ

「そうだね・・・まずは・・・」

 おもむろに土管に入るのび太

 その様子は馬鹿笑いしていたジャイアンたちですら思わす「ハァ?」と言いたくなる滑稽さだった

「今日はいい天気だね」

「・・・それが嘘?」

「あはははは、
やっぱりのび太だっ!
この天気のどこが嘘だってんだ?
そう見たって快せ・・・・・い?」

 ザァ――――――

 ジャイアンは言葉に詰まった

 いきなりの大雨、異常気象にしてもにわか雨にしても突然すぎる

「な、何をしやがったっ!!」

「怒るなよ、そんなにいつも怒ってるから陰口ばっか言われる・・・
いや、言われてないんだぞ」

 最後の台詞は小声で言った

 このあたりでミスをしないのが学校位置の秀才に早代わりしたのび太の知能の高さだ

「なんだとおぉぉぉぉぉ!!
のび太のくせにぃぃぃぃぃぃ!!!!」


「スネ夫だってジャイアンは嫌いだろ?
いつも本当に仲が良いもんな?」

 疑問形の質問は嘘になってもしょうがない

 答えるのはあくまであちらの方だからだ

「何っ!
スネ夫っ!!本当かっ!
俺の影口たたてるのかっ!?」

 アッサリと味方にまで火の粉を飛ばすガキ大将

 この性格で後ろ指さされない方がおかしいというものだ

「スネ夫は嘘つきだしね、
聞くだけ無駄なんじゃない?」

「の、のび太ぁ!
僕にそんな言いがかりをつけたってっ!
いつもジャイアンのことをボロクソ言っていたのたお前も一緒じゃないかっ!!」

「す、スネ夫っ!!
お前やっぱり俺のことをっ!!」

 今のスネ夫は正直者

 何でも話してしまういつもと逆の存在

(ふふふ、楽しいね。
でもこんなもんじゃあ済まさないよ、
特にあんな嘘をかましてくれたジャイアンはね・・・)

 のび太はニヤニヤ笑っていた

 ただし表面だけはである

 心の中はこてからのジャイアンに対するいじめを学校1秀才になった頭ではじき出している

「スネ夫君、
もういっぺん言ってみてくれるかな?
だれがゴリラだって?
だれの出ベソが出てるって」

 お決まりのパターンだがジャイアンは言われてもいないことを自分で言って怒りを増幅させている

「そ、そうっ!
まさにそれだよっ!
ジャイアンってさあ、いつも威張ってるけどただの横幅広いゴリラ・・・
じゃなくて豚ゴリラっ!!」


(ち、違う〜〜〜
・・・僕は何言ってるんだっ!?
思った事が勝手に・・・・)

「へぇ〜、
そう思ってたんだ。
そんならそうと早く言ってくれればいいのに。
俺達親友だろ〜」


 もうコレは止められない

 スネ夫ものび太も、そしてジャイアンもわかっていた

「ぼ、僕も早く言えば良かったと思う、
そうすればあのジャイアンの破壊的で世界を滅ぼすんじゃないかと思うほどの音痴な怪電波も聞かずにすんだかと思うと後悔してもし足りないよっ!」


(あわわわわわ、
僕の馬鹿っ!
こ、殺されるぞっ!
歌を持ち出して褒め殺しにしようと思ったのにっ!)

「ジャイアンってすぐ煽てりゃあ機嫌直るからねえ、
例えるなら『豚も踊ればバレリーナ』みたいな?
あれ?、ちょっと違うか。
そうだよ『ゴリラも魔法でシンデレ・・・』

しゃばばばばばあぁぁぁぁぁ!!!!」

 スネ夫は最後まで言葉を紡ぐことができなった

 あの顔にめり込む、ジャイアン必殺のストレートが彼の顔面を直撃したのだ

 たまらずコンクリートの壁まで吹っ飛んで行って動かなくなるスネ夫

「ぷっ、
ぷはははははははははははっ
正直者が馬鹿をみるってねっ!
やっぱりスネ夫は正直が一番だよ、うん!」

 とりあえずスネ夫の正直癖を元に戻してみたが

 しかしのび太はこのやりとりを見て思わず吹き出さずに入られなかった

 この二人はあまりにも良いコンビすぎる

 そんな事を思った

「のび太ぁ〜
テメーも笑ったな〜!
おもしれえ、あんな嘘じゃあ腹の虫が収まらなかったんだ!
ちょうどいい、この前の続きをしようじゃねえか」


(ギッタンギッタンに叩きのめしてやる
今日はもう手加減しねえぞ)

 この前も手加減などしていなかったのだが

 いくらドラえもんの為に必死になっていたとはいえ、のび太ごときに実力で負けたと思うのは彼のプライドが許さなかった

「ふん、お手柔らかに」

 のび太もまた少々の屈辱を与えるだけでジャイアンを解放するツモリは毛頭無かった

 これから生き地獄に叩き落すのだ

(さて・・・腹が決まったぞ
これでジャイアンもお終いだな)

 邪悪な笑みを浮かべ、その頭の中にはジャイアンに最もダメージを与える嘘が用意された

「行くぞのび太ァァァァァァ!!!」

 突進するゴリラ

 さながらアメフトのようだ

来いっ!!ジャイアンっ!!!」

「うおおおおおおおおおお
・・・おっ!!?、あれっ!?」

 突然ジャイアンの足が止まった

 文字通り行けなくなったのだ

「な、なんだりゃあ〜
う、動けねえぞっ!?」


「ははっ
そうしたのジャイアン?
来ないの?」

「や、野郎」

(コケにしやがってのび太のクセにっ!!)

 しかしどうやっても足が前に進まない

「ああ〜なるほど、
その場所が気に入ったんだね、
それとも情けかな?
ジャイアンはとっても強いからね〜
学校1弱い僕じゃあこの辺最強のガキ大将にはまるで歯が立たないからね」

 それはジャイアンを無力化、小学1年生よりも弱体化させ、

 ガキ大将から集団最最低位までそのランクを落とし、

 なおかつのび太自身の能力を更にアップさせる一石2丁ならぬ一石3丁の台詞だった

「あ、あったりまえだっ!
逃げんなよのび太っ!!
今すぐそこへ行ってっ!!!」

 そんなことは知らないジャアインは相変わらずのび太を捕まえようとあがいている

「おまけに虐めっ子だしね、
友達だってたくさんいるしさっ!
背は高いし体つきも恵まれてるっ!
性格も男らしいときて言う事なしだよっ!
本当に大しただよっ!!君はさっ!!!」


 これ異常ないほど褒めちぎる、今ののび太はまさにスネ夫だ

 もう完璧だった

 のび太はもうこれくらいでジャイアンの弱体化は十分だと思った

 後は勝手に堕ちて行くだろう

 それよりこれから余計なことを言わないようにするのだ大切だ

 恐らく効き目は約1日と踏んだのび太は今日の内に準備を済ませようと思った

 せっかくの嘘800、せっかくのドラえもんの最後の力だ

 もっともっと活用しなくては・・・

 その為にはこんな空き地より家で考えながら冷静に一言一句喋ったほうがいい

「じゃあね、明日また」

あえて明確な言葉は使わない

そうすればこの薬の効果は押さえられるのだ

「に、逃げんのかのび太っ!!
この弱虫がっ!それともビビっちまったのかよっ!?」


「・・・何言ってんだ、相手をしてやらないよ
もうそこから君は動けないしね」

(ったくこの馬鹿ゴリラが、せっかくかけた情けをフイにしやがって
・・・でも悪い考えじゃないな。
相手はどうせジャイアンだ、別に遠慮が必要な相手じゃないし)

「う、動けるぜっ!
そこを動くなよっ!のび太っ!今ぶっ飛ばしてやるからなっ!!」


 ジャイアンは再び突進を始めた

 ただし今度の突進は以前・・・数分前と少し違う

 パワーがないのだ

 スピードも並以下

 いや、かつてののび太以と言っていい

「ふん、君って本当に頭が良いよ」

 そうのび太が呟いた刹那

バキッ

「ぎゃああああああぁぁあぁあああああ!!!!」


 甲高い叫び声が空き地にこだましていた





――――――――――そしてしばらく経った後





 どう、どうなってんだ・・・

 酷く胸が痛い・・・

 あの野郎、人の胸をなんだと・・・じゃないっ!!何考えてるんだ・・・俺は

 いや、そんな事より俺はのびたに負けたのか?

 目の前にのび太の姿は・・・ない

 くそ、やっぱり負けたのか・・・

 ショックだぜ、あんな貧弱なボーやに

 悔しくて、そして握り締めた拳は・・・みょうに小さい

「??
なんだ、変な感覚だぞ」

 とりあえず立ち上がる

 ・・・なんか視線が低いな

 土管がいつもと違って見えるぞ

「草も、木も、全てが全然違って見える・・・
コレが自由になるってことか・・・」

 ジャイアンにはまだ冗談を飛ばす余裕があった

 妹のジャイ子が2次元オタクなのでネタは不自由しないのだ

 もっともガキ大将である彼はめったに口にしないのだが

「ん?
今の台詞妙に様になってたぞ、
どうしてかな」

注:この台詞はルパン3世ワルサーP38でヒロインが口にします、もちろん女

 そんなことを考えている折

「う、う〜ん・・・
ジャイアンの奴め・・・
あのクソゴリラっ、滅茶苦茶しやがってっ!
おばさんに言いつけてやる」

 スネ夫だった

 彼もジャイアン同様しばらく失神していたのだ

 当然ジャイアンはその場にいないものと思いつい本音を漏らしてしまう

 正直者という嘘はさっきののび太の発言で取り消され、元の嘘つきに戻っていたのだ

 ・・・調度いい、さっきのび太に倒されてムシャクシャしてたところだ、コイツを叩きのめしてすっきりしよう

「オイっ!、スネ夫っ!
誰がクソゴリラだって?
しかも母ちゃんに言いつけるだぁ〜?
お前まだこりてねーのかよ?」


 なんのことはない、唯のいちゃもんだ

 だがさっきとは明らかにスネ夫の反応が違った

「え、じゃじゃじゃ・・・ジャイアンまだいた・・・・・・の?」

「そーだよ悪いか?
お前が起き上がるの待っててやったんだよっ!」


「何言ってんだお前、
ジャイアンの真似なんかして、このスネ夫様を脅すなんて10年早いぞ」


 は?

 こいつ何言ってんだ?

 さっき強く殴りすぎたかな、もう一発殴って元に戻してやるか

「おらよっ!」

ガシっ!

 しかし勢いよく突き出した拳はスネ夫によってあっさり止められる

 ば、ばかなっ!?

 俺様のパンチが・・・スネ夫ごときに止められるとは・・・

 そういえばリーチも短いし

「あ、危ないなぁ!
何すんだよっ!この馬鹿女っ!!」


 馬鹿は認めるところだが

 お・・・女?

 こいつ頭大丈夫か、マジで心配になってきた

「オイ・・・スネ夫、
お前頭大丈夫か?、何なら病院まで連れてってやろうか?」

 頭を強く打ったつーなら・・・やっぱ俺のせいだよな

「うるさいなっ!
さっきからなんだお前はっ!僕はもう帰るんだよっ!
こんな雨の中濡れてたら風邪引いちゃうだろっ!
大丈夫な馬鹿はのび太とジャイアンくらいなもんさっ!!」


「な、なんだとスネ夫テメーっ!!」

「じゃあなっ!お前も風邪引くなよっ!」

 スネ夫は走り去ってしまった

「ま、待てっ!!」

 ふざけやがってスネ夫の奴、俺から逃げられると思ってんのかよ

 こうしてジャイアンとスネ夫の夕方のカーチャイェイスが始まった

 かに見えたが一瞬でスネ夫は見えなくなってしまった

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 そ、そんなコトは信じないぞ・・・

 このジャイアン様が事もあろうに 狐野郎( スネ夫 ) なんかに引き離されてまかれるなんて・・・

「きょ、今日はちょっと疲れてんだっ、
のび太なんかに負けちまうし・・・やっぱこの雨の中で風邪引いたのかな〜」

 風邪とは一瞬でひくものではない

 だいたい2、3日ばかり発病までの潜伏期間があるのだがジャイアンはのび太の嘘により正真正銘の大馬鹿になってしまったので本当に風邪なんだと思い始めた

 そうでなければのび太に負けたりスネ夫より足が遅くなったなどの結果は生まれていたはずが無い

「そうだよ。そうだよな。
うん、それ以外考えられないよ」

 その日空き地には珍しくいじけている小柄なジャイアンがいた


「・・・帰えろう」

 帰って寝よう

 明日になれば全て元通りだ





――――――――――豪田家玄関前





「ただいま〜」

「コラっ武っ!!」

 相変わらず元気な豪田、母

 彼女はジャイアンこと豪田武の母にして唯一彼を超えた力の持ち主であった

 もっともついさっきまでの話だが

「こんな遅くまでほっつき歩い・・・てぇ!?」

「母ちゃん勘弁、ちょっとのび太の奴がうるさくってさあ」

 ちっ、もうそんな時間なのか?・・・また飯抜きかよ

「あんたドナタ?」

「はっ?」

 おいおい、母ちゃんまでエイプリルフールかよ

 仮にも息子に向かって、いって良い冗談と悪い冗談があるぜ

 ・・・でも人のコト言えないか

 のび太の奴・・・思えば悪いことしたかな

「何のようですか?
お店なら今日は閉めましたけど」

「・・・母ちゃん勘弁、
もう門限破ったりしないから中に入れてくれよ」

「はぁ?
あんたサッキから・・・」

 どうも話が噛み合わねえ

「母ちゃんちょっとやりすぎだろっ!
俺だよっ!武っ!いくらなんでも小5の息子を野宿させよう本気で思ってないよなっ!?」


 はっきり言って不安だ

 まじで俺を野宿させる気かもしれん

 だが返ってきた返事はもっと冷たかった

「武っ〜?
うちの武は
男の子だよっ!」


ピシャ

 激しくドアが閉められてしまった

「ど、どうなってんだよ」

 とにかく俺の部屋から中に入ろう

 なんかわかんねえけど野宿は御免だ

 ガラリ

「ふう、何とか入れたな・・・
ここの鍵開けといて良かったぜ」

 俺は自室の鍵は常に開けとくようにしている

 もちろん脱出のために使うことが多い

 靴が置けないからだ

ぎぃ〜

「誰っ!!」

 まずいっ!!バレたかっ!?

「お兄ちゃん・・・?
そのシャツお兄ちゃんでしょ?」

 良かった・・・

 やっぱり我が妹だ、ジャイ子だけは俺を覚えていてくれる

「ああ、締め出されたんで窓から入った。
脅かしてすまなかったな」

「・・・違う」

「えっ!?」

「お兄ちゃんじゃないっ!!」

「にゃにぃ!?」

 またこの反応かっ!?

 同じネタ2度使うのは良くないぞ

 いくらエイプリルフールだからって親子で締め出そうとするなんてヒドイ

「お母さーんっ!
変な人が入ってきたよぉ―――――!!」

「マヂかっ!?」

「お母さーん!!」

 くそっ!マズイっ!今日は厄日かっ!?

「変な女の人が―――――!!!」

 ん?

 また女って言ったぞ

 スネ夫といい母ちゃんと言い女〃って・・・一体人をなんだと思ってんだ

 もしかして・・・

 俺は横に置いてある鏡を覗き込んだ



 鏡に手を合わせてみる

 すると向こう側のショートカットのも同じ動作をする、ただしまったく反対に

「おい、冗談きついぜ」

 ・・・間違いなく俺だ、このシャツ、この髪型・・・かなり小さくなって出てるとこでてるが・・・俺だ

 汗臭いけど良く見りゃあ悪いほうじゃねえじゃん、やっぱり俺ってカッコよかったんだな

 ちょっと現実逃避を始める俺、騒ぎ出さないだけ筋が通った男って思われたいぜ

「またアンタか!
不法侵入までしてっ!もう許さないよっ!!」


 ヤバイ、母ちゃんが来たっ!!

 この鏡に映ってる俺が母ちゃんたちの目にも映ってるとすると・・・

 俺が武だって絶対わからないっ!!!
 
・・・いや、ある

 わからせる方法が・・・

「母ちゃん、ジャイ子
聞いてくれっ!!俺は本当に武なんだ、豪田武なんだ」


「んなコト信じるかいっ!!」

「あのイカツイお兄ちゃんがこんなアンタみたいなサッパリ系に成るわけないわっ!!」

 ・・・いかついってジャイ子・・・

 お前だって俺にそっくりなんだぞ

 そう言ってジャイ子は鏡に割り込んできた

 どうやら俺と自分を改めて比べてみるらしい

 ・・・(直視)

 ・・・うげっ

 このカッコ見た後で俺とジャイ子が兄妹だなんてさすがに信じられんな

 ついさっきまではかわいい妹だったのに今はただの不細工な女にしか見えん・・・

 ―――愛着はあるがな

「ホラっ!!あたしのほうが全然かわいいじゃないっ!!」

ドッギャアアァァァアアン

 ほ、本気で言ってんのかこの妹は

「とにかくっ!第1前提で武は男なんですからねっ!
どうみたってアンタ女でしょうっ!!」


 うーむ

 さすがにギャップがありすぎて言葉じゃあ信じてくれそうに無いな

「そうだっ!
ドラえもんだよっ、ドラえもんっ!!
あのへっぽこ狸が俺をこんな姿にっ!!!」


「ドラちゃんならこの前帰ったって言うじゃない、
だいたいドラちゃんがこんな悪ふざけするわけ無いでしょ」

 あら〜

 ドラえもんの信頼絶大なのね、こりゃあ駄目だな

 やっぱ最終手段でいくか、もう遅くなってるし近所迷惑だけど・・・

「すぅ〜〜〜〜〜〜〜」

 俺は肺活量の限界まで空気を吸い込んで・・・そして

「げほっ!げほっ!」

 思いっきりむせた

 ・・・この体少々もろすぎるぞ

「何がやりたいんだろうねこの娘」

「さあ」

 いかんっ!

 俺を認識させる道が−1だぜ

「こうなったらもう前置きは良いや!!
行くぜっ!!全世界の・・・俺の

ファン達ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

 力の限り叫んだ

 俺の美声や自分で作詞作曲したこのナイスミウジゥィックを聞けば母ちゃんもジャイ子も俺だってわかるだろう

「お〜れはジャイア〜ン!!
がーきだ〜いしょ〜!!!
てぇ〜んかむぅ〜てきのお〜とこぉ〜だぜぇ〜!!」


 さすがに喉が辛いな・・・

 でもせめて一曲、最後まで・・・

「の〜びぃ〜たすね〜おはめじゃないよぉ〜!!!」





――――――――――30分後





「どうだ母ちゃん、ジャイ子。
おれが武だってわかったろ?」

「・・・」

「・・・」

 あれ?、気絶してら

 あまりの美声に聴覚がイカれたか?

「・・・うっ」

「おおっ!
母ちゃんっ、どうだっ?
相変わらず良い声だったろっ?」

「こ、この歌い方と音量は・・・
武しかいない・・・」

「お兄ちゃんだわ・・・
こんな歌最後まで覚えてる変態なんてこの世にお兄ちゃん以外いないもの」

 ん〜なんかヒドイ言われようだが俺が豪田武だってことはわかってくれたみたいだな





――――――――――豪田家居間





「・・・で?
どうしてそんな姿になってるわけ、武」

「知らねーよ母ちゃん、
気づいたらこうなってた。
俺の様子見てりゃあわかるだろ」

「それにしても変ねえ、
うちの家計にこんな顔の構造形作りそうなDNA持ってる人見たことないのよね〜」

「こらこらジャイ子、
それ以前に普通の人間は男から女になったりしない」

ら○ま1/2は?」

「アレは漫画、それに世界が違う」

「でもさっき雨降ってたし・・・
案外あたりかもしれないわ」

「ジャイ子・・・まじめに考えてくれ」

「あたしちょっとお湯持ってくるっ!!」

「・・・あの漫画馬鹿」

 豪田家会議は雑然としていた

 というより妹の意味が無い

 ほとんど母ちゃんと俺が意味のある会話をしている

 ジャイ子は・・・もうあっちの世界に行っている

「とにかく原因よ、
そんな姿になった原因はなんかないの?、心当たりとかで良いからさ?」

「だからドラえもん・・・」

 よく考えなくてもわかることだ

 こんな非常識起こせるのはこの時代じゃあの青だぬき一匹ってところだ

 他に可能性は無い

 俺は中国の泉でおぼれたりしてないし

 転校生とぶつかったりしてないし

 事故に遭って脳移植で蘇ったわけでもない

「だってドラちゃんはこの前帰ったって言ったの武じゃないのさ」

「・・・」

 俺もそう思う

 実際本当にドラえもんは帰ったと思う

 だってそうじゃなきゃのび太なんかに俺を倒すだけの決意なんて出来るわけなーんだ

「・・・ん?
のび太・・・?
そういえば今日ののび太は変だったな」

 俺に勝つにしても圧勝しすぎだ・・・

 あいつもしかしてまだドラえもんの道具持ってんじゃねーか

 いや、そうに違いない

 それ以外は有りえん、常識的に

「・・・武っ・・・
武っ!」

「おっ!、
すまん母ちゃん。考え事してた」

「これからどうすんのよっ?
まず戸籍が男じゃない」

「これからか・・・まずのび太に話を聞くよ」

 とにかくのび太だ

 あいつを押さえないことには話が進展しない

「でもねえ武、明日学校はどうすんのよ?
まさかそのまま行く気じゃないだろうねっ?」

「行く気満々なんだが、
なんか駄目かな?」

「駄目に決まってるでしょーが!!」

「・・・でも行く、
行けばこの状況何とかなるかもしれないし」

「・・・」

(この子本当に武かしら?
どうも性格があの子とちょっと違う気がするけど)

 いつもは肝っ玉母ちゃんのクセに変なトコは気を使うんだな

 どうせ俺のことだ、なんとかなるだろうに

 母はジャイアンのことを疑って懐疑的な視線で彼女を眺めていたのだが、それを心配の眼差しとジャイアンは受け取った

「わかったよ、ただし1日1日報告するんだよ」

「あいよ」

「お兄ちゃ〜ん、
お湯沸いたわよ〜」

 ・・・タイミング良い奴





――――――――――そしてジャイアン部屋





「よかった、お湯浴びても元に戻らなくて」

 いや、全然良くないんだが

 我が妹ながら考えてる事がよくわからん

 ひょっとして今の状況も製作中の漫画のネタとして考えてないか

「これって夢オチってことないかっ?」

「それはないわ、ココまで引っ張ったから」

「くそっ!のび太の奴めっ!!」

「何っ!今のび太さんって言ったのっ!?」

 ん?

 なんだこの反応はっ?

 そういえば昔一回ジャイ子の奴がのび太を好きになりかけてたな・・・俺の勘違いだったけど

「お兄ちゃんのび太さんに会ったのっ!」

「あ、ああ。
別に珍しいことじゃないだろ?」

「すごいっ!
お兄ちゃんすごいよ」


「・・・何がだ?」

 妹までおかしくなってしまったのか、のび太に会ったからなんだというのだ

 それとも・・・もしかしてこれものび太が何かやったのか

「のび太さんって言ったらもう小学校のアイドル的存在じゃないっ!
成績bP、スポーツ万能、生徒会長も勤めててなんでもできるまさに婦女子の憧れの 男性( ひと ) じゃないっ!」

「そ、そうなのか」

 あの野郎・・・

 まさかココまで好き放題するなんて

 ・・・でも待てよ、ドラえもんは確かに帰ったよな

 ・・・・・・・あれは芝居か?

 いやそんなはずは無い

 そんな事して何の意味がある?、第一あの馬鹿にそんな複雑なことを考える頭脳なんてあるもんか

 かと言ってのび太が成績なんばーわん・・・?

 『オンリーワン』の間違いじゃねえか

 スポーツ万能・・・アイツはスポーツなんて万能どころがカス以下

 そして何より有り得ないのが生徒会長・・・

 奴はまだ5年だぞ

 それに生徒会にだって入ってない、つーか駄目人間の総本山みたいな奴だ

 だいたいまだ4月じゃないか

 ――――絶対にドラえもんの道具だ

 こうなったら明日学校言ったら力ずくでも白状させてやる

 そしてなんとしても元に戻させてやるぜっ!、今日の借りもタップリ返させてもらうからなっ!

「楽しみに待ってろよっ!のび太っ!」

 今日負けたばかりだというのにもう勝てると思い込んでいるジャイアン

 その頭の悪さは天然化か、それとも嘘800によるものか?

 そしてジャイアンはまだ知らない

 何故のび太がアレほど饒舌にジャイアンの長所を褒めたのか

「明日が楽しみだよ、ジャイアン・・・」

 真に明日を楽しみにしているのはのび太の方だった


戻る

□ 感想はこちらに □