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T.S. Sunshine

作:驟雨


おことわり

この物語はフィクションです。劇中に出てくる人物・団体等は全て架空のもので、実在のものとは何の関係もありません。





朝日が差し込み、さわやかな朝を迎え、
カーテンをシャッと開き、「朝だぁ!!」……と叫ぶ。

夕日を小高い丘から眺め、
沈み行く紅い光を臨む……


――今、こんなことができるのは「女性のみ」となっている。
男性はこのような行為ができない、どうしても、どうしても……っ!
……できない理由があるのだ。



「夏だって言うのに、なんでこんな暑苦しい格好しなきゃならないんだろうな……」

「なんでって……知ってんだろ?」

「そりゃそうだけど……でも本当なのかな?」

学校の帰り道を、3人ならんで歩く男子学生。
男子学生なら着ているものはYシャツか、学らん。
最初のセリフで「夏」と言っているので、Yシャツのはずなのだが……

「……実際に変わった人も見たことないしなぁ。」

似たような口調が並ぶが、
どれが誰のセリフでも、今のところは構わない。

3人とも格好はYシャツではなく、白装束。
顔も白い布で覆われ、目と鼻と口も息と声が通る程度の細かい穴しか開いていない。

上記の1人の男子学生のセリフ、「知っているだろ?」の内容はこうだ……






「えー、本日で20○○年も終わりなのですが、今年の『陽に当たった男性』の数は全国で200人以上。要するに200人以上の男性が減り、女性が増えたということです。」

テレビのアナウンサーが落ち着いた口調で話し始めている。

「現に隣に座っている青山さんも先日不注意で陽の光に当たってしまい、女性化してしまいました。」

隣に座っているのはどこからみても女子アナと呼ばれておかしくない、
女の格好をした人物。

「こないだまで男だった青山です。」

このセリフをこの高い声で言われると、信じられないことも、
信じずにはいられなくなってしまう。
元男女子アナはしゃべり続ける。

「日本だけで女性化した男性は陽の光が性転換光線だと分かってからすでに10000人を超えました。このままでは男性がこの世から消滅してしまうのも時間の問題となります。そのため政府は新たな対策法を……」





そう……これが、「理由」だ。











「あ〜、外での体育の授業が無くなる日が来るなんてな……」

「男子は室内運動ばっか。女子は夏に水泳もあるし、プールに行ったりできるのに……うらやましいよな。」

「まあしょうがないっちゃ、しょうがないけどな。」

まだ愚痴の話は続く。
3人は曲がり角でそれぞれの帰路につき、
そのうちの1人を追ってみることにする。その人物が今回の主人公だ。

「ただいまぁ! ……ふぅ〜やっと脱げる。まったく、男ってのがこんなにも大変だとはな。」

汗をだらだらかきながら帰ってきたので、
白装束はびしょびしょ。
換えはまだあるが、毎日がこんな調子では身体が狂いそうだ。

男子は運動部に入れないので、部活も室内球技などがメイン。
だが、オレは文化部のパソコン部に入っているのでそれも関係ない。
今日もいつも通り、部活はサボってきた。

さっき「ただいま」と言ったが、
家には今、誰もいないはずである。
父さんも母さんも仕事、中学生の妹はまだ学校だ。

「疲れた……」

冷蔵庫を空けて麦茶をとり出す。 
透明のコップを手に取り、注いで、一気に飲み干す。

「プハァ!」

オヤジ臭い声をだして、麦茶をしまう。
部屋に置いてあった漫画を手に取ってリビングのソファーに腰掛け、
読み始めた。
……いつもこんな生活を送っている。
本当なら、みんなとサッカーしたり、野球したり……
今は叶わない夢だ。



太陽光線が突然、男性のみに作用する「性転換光線」と化したことがわかったのは、
つい最近のことだ。
外を歩く男性が、急に女性化し始めたのだ。
初日で5000人を超える人数が女性化した。
まだその程度ですんだのは、情報網のおかげ。
現代ほど情報がうまく流れる時代はない。
全ての男性は建物に『避難』し、
政府の(現実世界の政府には考えられないほどの)すばやい対応によって、
すべての男性が女性になるという、最悪の事態は防ぐことができた。



「……ったく、外に、出れないから……よっ、身体が、なまっちまうよ……」

2階の自分の部屋に戻り、いつも通り筋トレを始める。
上のセリフは、筋トレをやりながら言ったからこうなった。
その筋肉を生かせる場所というものが無いにもかかわらず、
筋トレは続けている。
もっとも、あまりそのことは知られたくないから、誰もいない時にしかやらないが。

「よっ、今日は終わりか。」

それもそのはず、
下の階からドアの開く音、フローリングの床を踏む音、
そして……

「お兄ちゃん! いるのぉ!?」

甲高い、女の子の声。
どうやら妹が帰ってきたみたいだ。
気がつけば、もう6時を回っている。

「ああ! 今行くよ。」

ドンドンと荒い音をたてて階段を駆け降り、
1階のフローリングをトンとふむ。

妹の由紀はソファーに座って、真正面にあるテレビを注視していた。
まあいつものことだが、この時間のなんたらかんたらっていう番組は見逃さないのが、
妹の日課となっている。

「なんたらかんたらじゃなくて、『人生これ一番』よ。」

な、なんで聞こえたんだよ。





「……そうそう、今日学校の先生がお兄ちゃんのこと言ってたよ。『真也は女の子になんかなってないよな?』だって。」

遅くなったが、オレの名前は橘真也。
妹が通っている中学校は、当然オレが卒業した中学校。
先生もまだオレのことを覚えてるらしい。

「ふーん、んなわけないのにな。言ってた先生って井出だろ?」

先生の名前を呼び捨てにする。
こんなのはいつものことだ。

「まああたしの担任だからね。いちいちうるっさいんだよね。……お兄ちゃんがなんにも問題を起こさなければ言われないのに。」

「うっ。」

オレも中学の時は、かなりの悪ガキだった。
学校で問題(とは言っても警察沙汰にはなったことはないが)を起こしては、
かつての担任井出先生に怒られていた。
さらに今日一緒に下校していた岩本直、池田恭平も一緒に怒られた友達となると、
由紀に迷惑をかけるのも無理なかった。

「そ、それも過去の話しだよ。今はオレもあの2人も更生……一応したんだからな。」

「そ。」

由紀は一言返事を返すと、またテレビを見だした。

絶対……信用してないな。





今日もまた学校。
週末だったら良かったのに。
いつもそう思う。

外は晴天。
男にとって晴天は敵……なのか?

「この白装束には慣れないよなぁ。」

そう言いつつ、学生服の上から白装束に袖を通す。
光を反射する素材を使用しているので、表面はつるつるしていて、
触り心地はよくは無い。
内側の生地は普通の布製。
綿100%と記述してあるが、これは嘘だ。
だって表面はポリエステルと書いてある。

白装束に身を包み、革製の鞄を握り、
机の上にほうってある本を鞄に放り込むと、  
階段を駆け降り、台所で悠々朝飯を食べている由紀と親父を尻目に家を出た。





「それにしてもさぁ? 昨日の『人生これ一番』に出てた女の子かわいかったよなぁ。」
 
そう話を切りだしたのは直。
登校途中に「いつもの」2人と合流して並んで歩く。
その言葉に恭平はすばやく反応した。

「そうだよな。ん〜、でもあの娘が元男って考えると、な……」

話についていけない。
思い切って聞いてみることにした。

「なぁ、なんの話?」

「え!?」「は!?」

2人の声がかぶった。
しかもその顔通りのセリフを口にした。

「「え〜、お前知らないの!?」」

そこまで同時に言うことないだろ〜っ(涙)。



2人の話によると、
あのタイトルからは想像もできない若者向けの番組らしく、
いろんなアイドルや歌手、
それに男の子から女の子に『不幸にも』なってしまった娘が出演している番組らしい。
まあ現実世界に例えるならH○Y×3……見たいな番組がイメージ。





というわけで、話題に乗り遅れたオレは、その番組を今日見てみようと決心した。






「えー、今から話すことをよく聞いて欲しい。最近……と言ってもこの学校やこの周辺じゃないが、男性が女性に変わる……要するに太陽光線を直に浴びてしまうことが多発している。その行為が自分の意志で無いにしろ、良くないことだ。くれぐれも気をつけるように。」

朝のSHRに教卓に立つ担任の大川先生。
とりあえず男の先生。
その発言に対して反論する者が1人、

「先生! なんで良くないことなんですか?」

やっぱり恭平だった。
いつも変な話題に絡んでいく彼の姿勢は悪くはないが、
どこかがずれている。

「なんでって……そりゃ……」

先生が言葉を詰まらせる。
なんとなく分かる読者(いたらの話ですが)もいると思いますが、
これ以上は言えません。




「ふーん、女の子になっちまう野郎が増えてるのか。」

「そうらしいな……」

昼休み、3人は固まって話していた。
男子の席は教室の中央に固められていて、
窓には白い特殊コーティングされた窓ガラス。
全ての学校でこのような対応策はとられている。
無論この学校でも、だ。

「うーん……でも、日の下で動きたいっていう男子は星の数ほどいることは間違いないし、そんなこと考えたら、女になってもいいって思う奴もいるんじゃないか?」

「でも、先生は自分の意志じゃないって言ってたじゃん。」

直が反論した。

「それが確かな情報か……って聞いたら先生も答えられなかっただろ?」

恭平がさっきの言い合いの話を持ち出した。
朝、結局あの話から発展、恭平は細かいところまで先生に尋ねていた。
追及し過ぎ……と心の中で突っ込んでいたが。

「どうする? まだ信用してないんだろ? 真也。」

直が聞いてきた。
それは事実だった。
今まで浴びていた太陽光線が性転換の原因になったなどと、
まだ信じられない。
でも、どうするって……

「どうしろと?」

直が目を光らす。
それに反応して恭平が直の目を見る。

「ちょっと!」「こっちへ!」

2人がオレの腕を掴む。
直と恭平が、2人がかりでオレの身体を持ち上げる。

「おい!? どこへ連れてくんだよ!?」

足を引きずられるように階段を上がり……

「痛い!! かかとがぁ!」

渡り廊下のドアに身体をぶつけられ……

「ぐあ! もっとやさしく……って何言ってんだオレは!」

しまいには持ち上げられた状態から腕を放され、
落ちた。

「……(悶絶!?)」
 
「さて、真也。……お前で実験させてもらうよ。」

と直。それに続いて言う恭平。

「この屋上のドアから生身で外に出れば、性転換の原因が太陽光線かどうか証明されるしな。ちょうどいい。」

「……な、何言って……」

バン!

ドアが開けられる。
日の光が、オレが倒れている屋上までのフロアに差し込む。
そんなに広くないこのフロア。足を伸ばせば日光がじかに当たることになる。

「じゃあ直、こいつをこのままほうり投げるぞ。」

「ああ!」

おいおい、こいつら何言ってんだ。
オレだってそれなりに身体を作って(毎晩の筋トレ)んだぜ?
そのオレをほうり投げるって……

「「せーの!」」

やっぱりこうなった。
オレの体重に引きずられて、2人も一緒に屋上に転がり出た。

「「「うわ〜!」」」









転換中。しばらくお待ちください・・・<(_ _)>
























「はっ! ハァ……ハァ……」

目が覚めた。
何かひどく疲れていた。 
しかも自分の周りを包む強い光。
これはまさしく太陽の光だった。
久しぶりに浴びた暖かい光。

で、ということは……

やっと自分の頭が回転しだした。

「オレ……今、日の下にいるんだよな!?」

自分から出る声がやたら甲高い。
あわてて自分の手のひらを見つめる。
さっきまでのオレの手とはうって変わり、
白く、手相があまり見えない。

袖がダボダボしている。
学生服が大きすぎるのか、肘の部分にしわがよっている。

オレはスッと立ち上がった。
ズボンがだらっと下がり、穿いていたスリッパが見えなくなった。
学生服もすそが当たる部分が、太ももよりちょっと上となっていた。
そして胸の部分にやや膨らみが見える。

首筋に妙な気配。
思わず手をやると、その感触はまさしく髪の毛だった。
しかも、それは長く、背中に流れていた。

「は、ハハ……。ホントにこれ、こんな、ことが……? 女の子になってる……。」

「……よう、やっと気づいたか、直也。」

「……まったく、なんでお前だけ気絶してたんだろうな。」

それはおまえらのせいじゃないのか……。
それはともかく、目の前に現れた少女2人は男子の学生服を着て、
黒いだぶだぶのズボンを穿いて、
1人は金色の長い髪を風で靡かせながら腕を組み、
もう1人は茶色のショートカットの髪を揺らしながら、そこに座っていた。

要するに現れたのではなく、
そこにずっといて、オレが気づかなかっただけらしい。 
腕を組んで立っている方の少女が口を開く。

「オレが恭平だって言っても信じないだろうな。……いや、そんなこともないか。」

胡座をかいて座る女の子が続く。

「まあ、こっちも自分が直だって信じられないんだから。」

「お前……お前が恭平? でこっちが直……なのか?」

「あのな、オレだって目の前にいるこんなにかわいい娘が直也だなんて、信じたくないぜ? でも、あのことは正しいってことがこれで証明されただろ。太陽光線は性転換の原因だったんだ。」

そう言うのは、恭平と名乗った金髪の少女。
ちなみに2人とも、年齢は同級生と変わらないらしい。
見た目が、そう語っている。

「それに、あのテレビに出てた元男の女の子があんなにかわいかったのも説明がつくな。この太陽光線、浴びるとこうなるってな。」

そう言ったのは直……と名乗るショートカットの少女。
そして差し出したのは手鏡。

「見てみな。」

そう言われて鏡をのぞく。 
映ったのは黒いロングヘアーを風で揺らし、
透き通った漆黒の瞳を持つ、言わば「美少女」という姿だった。
……これが、自分なのだ。

白く透明な顔に手を触れる。
その手も白く透明だ。ぷにぷにとした感触が伝わってくる。

「信じられないな……ひゃぁ!?」

突如感じた変な感覚。
全身を電撃が走った。

「うーん、しっかりあるな。当たり前か。」

金髪の女の子……恭平がオレの胸を掴んでいた。

「おいおい恭平、それぐらいにしとけよ。この小説が少年少女文庫に掲載出来なくなっちゃうだろ。」

「そうだな。」

ちょっと……オレのことはどうでもいいのかよ……。










「……さて、本当にこれからどうするか。」

屋上に3人丸くなって座って話し始めた。
恭平が仕切っている。

「女の子になっちゃったもんは仕方ないけど、もうすぐ昼休み終わっちゃうぜ?」

直が言った。

「とりあえず……先生に事情を話す……か?」

「待てよ。そんなことしたら、オレ達が分かってて外に出たってことになっちまうだろ? なんとか理由を考えないと……。」

お前らのせいだ!! それを忘れてないか?



女の子になってしまったオレ達を見る目はすさまじかった。
職員室へ向かう、男子学生服を着た美少女3人。
ずるずるとすそを引きずりながら……

先生に怒られる。
そう覚悟していたのも無駄だった。

この……スケベ教師。
オレ達を変な目で見る担任教師。
恭平にいつも口で負ける理由がやっと分かった気がする。


今日一日、学校中の人気者(?)になってしまった、
オレと直と恭平。
オレは真(まこと)、直は直(なお そのまま)、恭平は恭子(きょうこ)
……と、勝手に決められた。(クラス女子推薦)

ああ〜〜!! これからどうすりゃいいんだよ!!?
♪おし〜えて〜おじ○さん〜♪





続く……???










あとがき

ちょっと小説の様なスタイルでは無いですね。
<(_ _)>とか入ってますし、以上にボケが多い(?)ですし……。
反省します。

どうでしょうか。「T.S. Sunshine」。
自然において人間に1番か2番に必要な熱源と光源を司る太陽がこうなってしまうと、
世界中の男性がうらやむのか、困るのか……。
それはともかく、コメディという初めての素材を取り入れて、
作成しましたことが私の大きな進展だったと思います。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

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