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The Othello

            作者: 驟雨



キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪
今では鳴らない学校も多いのではないか。

授業の終わりを告げるとともに、
生徒達の待望の休み時間の始まりを告げる合図。

今日もその音は教室だけでなく、
学校中に、そしてそとの校庭にまで響き渡る。

この鐘の音が鳴ると同時に、
生徒の声が廊下を貫き、
教室をいっぱいにする。

「やっとおわったなぁ!」

「ホントだな。特に今日の化学の授業はきつかったな。」

「そうですか?ボクはそうは感じませんでしたけど。」

「お前は勉強が得意だからいいんだよ。」

「腰が痛くなっちゃったぁ!」
「あの先生話長いね!」

「あのハゲ教師。絶対キモイよね。」

「そういえば次の時間現代文じゃないか!?」

「うげ〜またアイツの自慢話の始まりかよ・・憂鬱だな。」

「そうだな・・。」

教室内は、傍から聞けばかみ合うような、かみ合わないような。
どうにも気楽で明るい会話が飛び交っている。

その中で一番目立つ声で。
「彼」はこう切りだしたのだ。

「なぁ!これからオセロやらねえか!?」

教室内が不思議と静まり返った。
記してなかったが、ここは公立高校。
休み時間にオセロなんて今どきやるだろうか。
だいたいは短いトイレ休憩みたいな休み時間。
だが、今日だけはなにかが違った。

「いいんじゃない?」

「でもよ、それ2人でやるゲームだろ?」

「盤も駒も無しでどうやってやるんだよ。」

幾多の質問に「彼」はこう答えた。

「盤も駒もいらないさ。みんなが駒。この教室がオセロの盤の上だ。」

「はぁ!!?」

「そんなのどうするんだよ。」

「まあまあ、そういきり立つなよ。今からやるってんだからさ。とりあえず机を下げちまおう。」

「お、おう。」

「仕方ねえな・・」

ぶつくさ言いながらも生徒達はなぜか一致団結。
みんなで机を下げ始める。

「よしよし・・準備は整ったな。じゃ、代表の男女各2人ずつ前へ来てくれ。」

「じゃ、オレが行くよ。」

「ん、俺も。」

クラスの盛り上げ役?+運動君。
岸山と笹岡が名乗り出た。

「それじゃ・・私が。」

「うちもやるよ。」

クラスのアイドル?+委員長。
曽根と池田だ。

「んじゃ、真ん中に4人。オセロの初期位置のように並んでくれ。簡単に言えば男子は白、女子は黒のそれぞれの駒の役目ってワケだ。」

「あ〜なるほど。駒は人間自身ってわけか。」

「んで床の切れ目が升目・・。考えたな。」

生徒の内の誰かが言った。
みんな、この言葉に納得したらしい。

が、ここで重要なことにみんなは気づいていなかった。

「さて、先攻の黒、女子からどうぞ。好きなように男子をとってくれ。」

「じゃあ次あたしが行くね。」

名乗りは陸上部の岡部。
交互に並んでいる男子を挟むようにして立つ。

「さぁ、ここからがこのゲームのおもしろいとこだ。」

「彼」がそういうと、
挟まれた男子、岸山が急にうろたえだした。

「うっ、うわぁぁ!!」

クラスのみんなが岸山に注目する。
皆、その目を疑った。

「えっ!?」

「こ、こんなことが・・?」

岸山の胸がどんどん膨らんでいき、
髪がサラッと背中に流れるようにして伸びていく。
身長がぐんぐん縮み、背の高かった岸山の身長より30センチは低い。
そして服装が男子の制服から女子の制服に変わり、
靴下からスリッパまで。
すべて女子用に変わっていく。
白い足がスカートからすっと伸び、
絵に描いたような美少女になった。

「な、なんだこれ!?」

岸山の男子の裏返ったような、
それでいて高くきれいな声に「彼」は答える。

「これがこのゲームのおもしろいとこだ。駒の色が変わるんじゃなくて、その人の性別が変わる。」

「こんなゲームやらせるなよ!!」

そう言って岸山が盤から動こうとする。

「おっと待った!そこから動いたら一生元に戻れないよ。」

「彼」は警告する。
岸山はあわてて元の位置に足を踏み直した。

「畜生!元に戻せ!」

「ゲームを終わらせることだ。そうすれば元に戻れる。どっちかが勝てばいいんだから。」

「おい、いいよなぁ。岸山の姿見てみろよ。めっちゃかわいいじゃんか。」

「胸もでかいし・・」

「岸山〜かわいいぞ。」

クラスの男子が岸山をはやし立てる。

「っ!ちゃかすんじゃねえ!」

岸山はすかさず言い返すが・・

「そんなかわいい声で怒る岸山、かわいいぞ。いっそのことずっとそのままでいたらどうだ?」

「うるせ〜!早くこんなゲーム終わらせてくれ。」

「わかったよ。じゃ次は俺っちの番だ。」

山田が足を進め、女子を挟む形で立った。
すると今度は・・

「ひゃっ!!」

男子に挟まれたクラスのアイドル?曽根。
その身長が伸び、胸がぺたんこになる。
髪が短くなり、服装も変わっていく。

「きゃ〜かっこいい〜!!」

クラスの女子が男になった曽根を見て叫ぶ。
クラスのアイドルは男にも、女にもモテる立場になってしまった。

「アイドルの曽根さんが〜!・・」

と嘆く男子もいるが。






そんなこんなで進むゲーム。
一気に5人女性化したり、
元に戻ったり。
角をとった生徒は大喜び。(だって、絶対に性転換しないから。)
何度も何度も入れ替わる奴もいるし、
女性化してその身体をじろじろ眺める健全な男子高校生も幾人か存在する。
その逆もいたりするが・・。




ついに最後の一手となった。
打ち手は黒縁眼鏡のガリ勉君、倉谷。
クラスに1人はいそうなタイプな人である。

「倉谷君!あと1人なんだから早く〜!」

「ボ、ボクは・・このようなゲームには・・」

そう、もちろんゲームの「ゲ」の字も知らないような奴。
ということはオセロのルールもわからない。
ここまで見といてそれもどうかと思うが、クラスの連中はそれも承知である。

「いいから開いてる枡に立てばいいのよ〜!」

女子がせかすが、倉谷はなかなか動かない。
ついに「彼」が口を開いた。

「ほら、みんな元に戻れなくて困ってるよ。キミで最後なんだからさ。」

「う・・うん。」

倉谷は足を進める。
なぜ、こんなに緊張しているのだろうか。
足は震え、額には汗をかいている。
普通テストとかのほうが緊張するはずなのに、
テストではすらすら。

それが倉谷である。

そしてみんなが恐れた最悪の事態に陥った。
倉谷は足をひねり、その場で転倒したのだ。
もちろん教室に均一に並べられた「駒」の中で、だ。
そうなれば他の誰かに倉谷自身が当たるのは必至・・

「うわっ!!」

「きゃっ!」

クラスの元男、元女数人に当たり、倉谷は床に頭を打ち付けた。
当てられた元男、元女共は無論枡から動いてしまった。

「彼」が言う。

「は〜い、動いた。ゲームはそこまで。それじゃまたね。」

「彼」教室を後にする。
その後ろ姿を見てぼう然とする一同。

美少女になってしまった岸山が叫ぶ。

「元に戻せ〜!!!!」




あとがきです〜


完結、みじか〜くまとめてみました。
謎なのはどうして一致団結してクラスのみんなはゲームを始めたのか。
そして「彼」とは誰なのか。
答えは・・誰も知りません。(オイ)

こんなオセロ、やってみたい人・・いますか?

世にも奇妙な物語(核爆)

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