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Seven Keys

第1話  使命「さだめ」


作者: 驟雨

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周りは緑生い茂る草原と森。
岩があったり水の音が聞こえたりと2004年の地球の環境と変わらない地形。

今オレが座っている場所だけは土がむき出しになっていて、しかも白く光っている。
いや、光っているのはオレの身体のようだ。
この白く透き通った肌が光っているのか。
それともこの服・・?

「『能力者・白のフュール』?」

「こんなところになんで・・」

目の前に立つセスもノブナガもなんだかとても大きく見える。
セスの言う白のフュールって・・?
こんなところになんで?
まだ頭の整理がつかない。

「ノブナガ・・・セス・・?」

見えているノブナガもセスもなぜかすごく大きく見える。
なんで・・なんで・・と疑問詞が連なる。

「なっ、なんで名前を知ってるんだ?『能力者』それぞれの場所で楔を守ってる存在・・。広い宇宙でたった2人の人物の名前をしってるなんておかしくないか?」

「丿、ノブナガ。何言ってるんだよ。知ってて当たり前だろ。だってオレの名前は・・ルーフ。」

「ルーフ、ですって?あなたは『能力者・白のフュール』・・のハズだけど。」

オレが白のフュール?
確か白のフュール、青のギオ、赤のサガが楔を守る『能力者』・・。
オレの名前は・・ルーフ?フュール?

頭が混乱した。
もう何も見えなかった。
見えるのは暗闇だけだった。
オレは深い闇に堕ちていった・・・・

  

第1話  使命「さだめ」



隣の部屋から話声が聞こえる。

「あの娘はフュール。でも自分でルーフって名乗った。ルーフがいそうな場所は全部探したけどルーフはいない。それであの娘がいる。なんか引っ掛かるわ。」 

「だけどセス嬢。もしあの娘がルーフだとしたら本物のルーフはどこに・・」

「それも気になるけど今はそれどころじゃないわ。ルーフの消息は不明。私たちの側には本物の『能力者。』こっちが大きな問題じゃない?」

「『能力者』はガーデッドの敵であり最終目的でもある存在だ。このまま放置・・じゃまずいよな。」

「それにあの娘がルーフって名乗ったのならフュールがルーフの意志を持ってるって考えても不自然じゃない。一緒に連れていかない道理なんて無いわ。」

「そうだな。彼女がルーフなら俺たちの大切な仲間だ。外見がどうなろうと、目的が変わろうとルーフはルーフだからな。」 
 

・・・・・


目が覚めた。
木でできた天井。
見る限り相当な高さである。  
チリチリと枕元のランプが燃える音がする。
起き上がろうとするが力が入らない。

「う・・・ん・・・?」

やっぱりダメだった。
何をしても身体が動かない。

ガチャリ。
ドアの開く音。
2人分かと思われる足音。
一歩一歩その音は近づいてくる。

「目が覚めたかルーフ。いや、『能力者・白のフュール』。」

まただ。そう言うノブナガの身体がすごく大きく見える。
その隣のセスもオレより小さかったはずが今ではセスでさえ大きく見える。

「ルー・・・あ、えーと、動ける?」

そう言って差し伸べられたのは腕ではなく手でもなくセスの右人指し指と中指。
しかしそれがオレにとってはまるで大きな丸太のように見えたのだ。
頭の下に指を入れられてその力でやっと身体を起こすことができた。
  
「あ・・んん・・・」

声がうまくでない。
声のトーンが高いというのは分かるが言葉にならなかった。
  
「あんまり無理するなフュール。羽が消えた途端倒れ込んじまったんだからな。」

「は、羽・・・?」

そう言った瞬間だった。
身体に力がみなぎってきた。
そして・・

「わっ!」

セスが小さな叫び声を上げる。
急に浮き上がるオレの身体。
枕の横に広がっていた白銀の長い髪は一瞬で元に戻り、背中に流れる。
服が光ってるのか、身体が光ってるのかわからないが、周りが妙にまぶしかった。

「と、飛んでる!?」

「もしかして羽が出てきたら急に元気になった?」

「・・セス。なんでオレがフュール?オレはルーフっていう名前が・・」

「セス嬢。元ルーフはだいぶ参ってるらしいから説明してやるか?」

「う、うん。えーとルーフ。あなたは今すごく小さくなってる。それは分かってると思うけど・・私たちからみたあなたはどう見間違えたとしても『能力者・白のフュール』にしか見えないの。 白のフュールは妖精で、羽が生えてる。それくらいは知ってるわよね?」

その質問を聞いてすべてが頭に戻ってきた。

「そうだ!セス、ノブナガ!フュールが、フュールが大変なんだよ!ガーデッドに襲われてて助けてくれって・・・」

オレは必死でノブナガに説明しようとするが、言葉がまとまらない。
取り乱してあわてるオレをノブナガが押さえる。
ノブナガの耳にしているピアスが揺れる。猫目石と呼ばれる緑色の小さな石でできたピアス。
枕元のランプの光できらりと反射した。

「待て、落ち着けルーフ。(まあ今はルーフって呼んどくか。)とにかく今お前の姿は正真正銘の白のフュールなんだ。そのフュールが危ないってどういうことだよ?」
 
「えっ・・あ。そうか。あのときの言葉でオレがフュールを助けるって言って・・。で、これが助かる方法?」

誰かに聞くつもりの質問ではなかった。
しかしその答えがかえってきた。   
頭の中に響く透き通った気持ちが落ち着くきれいな高い声。
もちろん聞き覚えがあった。


〖ルーフ、ルーフ。聞こえますね?今私は残り少ない力であなたに語りかけています。もうあと数分もしないうちに私の意志は消滅するでしょう。 そのまえに私の意志を伝えておく必要があります。ルーフ。あのときのあなたの言葉によって私は助かることができました。 まずはそれにお礼を言わなければなりませんね。あなたの使命は運命と言う羅針盤に乗って動き出しています。あなたは生きなければなりません。 楔を守ること・・それが私たち『能力者』の使命です。どうかその使命を受け継いでください。 この導きを・・忘れないで・・大切なのは・・これから出会う・・仲・・間。やがては・・ガーデッドをも開放することが・・・あなたの強靱な精神力と仲間を思う心があれば・・できる・・はず。
ありがとう・・ルーフ。あなたのおかげで・・・私は・・・〗

  
そこで言葉は途切れた。
しっかりと頭に残るフュールの最後の言葉。

ふと気づくと両手首に不思議なオーラを発する青い長めのリボンが結んであった。
リボンの両端には紫色で彫られたハート型の紋章が輝いていた。

「これが・・フュール・・君の最後の言葉なのか・・。」

「ルーフ?どうしたんだよ。急に固まったりして。それにそのリボンは?」

「あ、これは・・・本物のフュールの最後の意志の象徴・・とでも言うのかな?」

ベッドの上に降りたってから言った。
今度は羽をしまっても力は抜けなかった。
手首の青いリボンに触れる。
さらさらとした感触。触っていてとても心地よかった。

「ルーフ。事情はよく分からないけど・・あなたはルーフなんでしょ?」

「あったり前だろ。・・身体や、目的が前とは全然違うけど、な。」

最後の方は呟くように、セスとノブナガに聞こえないように・・・。
そう思って言った。

オレがフュールになってしまった理由(わけ)、これからの使命、目的。
すべてを話した。




                    ○





「ルーフ、あの・・大した質問じゃないけど・・これからもルーフって呼んで欲しい?それともフュールって呼ぶ?」

セスが大した質問じゃないと言ったこの言葉。
オレにとってはかなり重要だった。

「フュールでいいよ。この名前の中にルーフって文字も入ってるし、オレがフュール自身を忘れないためにも・・」
 
「じゃあフュール。でも中身はルーフだからいつもと変わらない・・わけにもいかないか。せっかく覚えた剣術も念撃がその身体じゃ使えないね・・。剣はまだ持ってるみたいだけどね。」

そういうセスにつられて腰に手をやる。
後ろ腰にいつもと同じ感覚が走る。
記憶のあるレーザーブレードはそこにあった。

「ホントだ・・。」

剣を抜いてみる。
見慣れた青い剣身。
だが大きさも小さくなっていてほんの5,6センチ以下。

「うーん、オレもなんとかすべての技を教えたらお前と一緒に戦いたかったが・・妖精になって身体がまあ25センチくらいか。それじゃあ無理だよなぁ。」

「セス・・ノブナガ・・。」

そう呟いてからオレは首を2度3度横にふった。
剣を鞘に収めながら言う。

「ごめん2人とも。でもこれで良かったと思ってる。もしオレがこうしてフュールになってなかったら”太陽”(サン)の楔は外れてたんだし、フュールも役目を果たせないままいなくなったのかもしれない。 フュールは自分で言ったんだ。これで良かったって。だから・・・」

その言葉を聞いてノブナガの堅くなっていた表情が和らいだ。
セスにも笑顔が戻る。

「・・そうか。それならオレから言うことはもうないよ。お前は今のお前らしく生きればいい。オレの力がお前の使命を全うする手助けになればいいが・・。」 

「私も協力するよっ。だって今まで一緒に戦ってきた仲間だもんね!」

「仲間・・」

『大切なのはこれから出会う仲間』。
フュールの最後の言葉が頭に浮かぶ。
セスとノブナガはこれから出会うと言うワケではなかったが、2人とも自分の大切な仲間だ。

一瞬か数秒後か。
その時間の感覚は残っていないが、オレがフュールのことを考えていた時だ。

「・・フフ、泣かせるセリフですね。ですがあなた方の命運もここまでです・・。」

突如部屋の中に声が響く。
オレは羽を羽ばたかせ(とはいっても実際は羽は動かず、浮力だけが働く。)
セスの方の上に乗った。

「何!?この声は?」

セスが部屋を見渡す。
オレも目で探るが人の姿など無かった。

「2人とも気をつけろ。さっきから妙な気配はしていた。・・殺気だ。だがガーデッドじゃない。一体何者が・・」

ノブナガは辺りを警戒し始めた。
それと同時に腰の刀、”獅子桜刄”に手を掛ける。
  
セスも持っていた本をギュッと握り締める。
オレはセスの髪を軽く掴んでいたが、それを放して、再び剣を引き抜いた。
青く光る刃。手には汗が溜まっていた。

また声が響いた。

「わたしに剣は通用しない。なぜならこの場にいなくてもあなた方を殺めることなど容易いからです!」

そして軽く鼻で笑うような音がした。
その音がおさまった瞬間だった。

ドドドドドドドドドド!!

何発もの銃弾がこの部屋に打ち込まれる。
だが狙いは適当、どうやら威嚇のようだった。

「くっ!」

ノブナガは机を傾け、銃弾の飛んでくる方向に盾とした。
セスは自分に向かってきた銃弾を魔力で防ぎ、その場にしゃがみ込んだ。
その反動でオレは浮き上がってしまい、急いでセスの影に隠れる。

「10連撃・・”微塵銃”(アトミックガン)か!やばいぞ、蜂の巣にされちまう!」

「アトミックガンってあのアトミックガンだよね?そんな代物、なんで・・・」

セスが質問する。
が、ノブナガがその質問に答える前にまた無数の銃弾が部屋に打ち込まれる。

ドドドドドドドドドド!!

”物理防御”(フィジィクガード)

今度は狙いは確実らしい。
すべての銃弾はセスの防御シールドに当たった。
しかしセスのシールドは強力だった。
銃弾はシールドに当たった瞬間吸収され、消滅した。

「セス嬢!」

ノブナガの声も意味がなかった。
セスはピンピンしている。

「あ、さすがセス嬢だな。」

「セスっていつの間にこんなに腕上げたんだ?」

オレもノブナガの言葉に続いて質問した。
  
「ただの防御魔法じゃない。フュール、それより弾に当たらないように気をつけてよ。」
  
「ああ、それなんだけどオレには常時防御シールドが展開してるみたいで、しかもかなり強力なやつ。だから大丈夫だよ。」

「そう。じゃあ今度のは隠れずに自分のシールドで守りなさいよ。」

オレはセスの肩の後ろに浮遊していた。
もちろん隠れていたのだ。

「あ・・ごめん。」

「なかなかやりますね。ですが、今度はそうは・・・そこにいるのは妖精・・・?」

どうやら狙撃者はオレの存在に気づいていなかったようだ。 
光る白い羽を背中に纏い、その力で浮き上がっているオレ。
妙な目線を感じた。どうやら狙撃者の位置からオレが見えているらしい。

「・・・その服装・・その青いリボン。もしかしてあなたは『能力者・白のフュール』だと言うのですか?」

「だったら?」

オレが答える。
部屋に響く声はどうやら密かに仕掛けられたスピーカーから出ているらしい。
そのスピーカーをセスが見つけた。
それを持ち上げ、側にあった椅子で壊そうとする。

「なっ、お待ちください!わたしの誤りです。今からそちらに出向きます!」

突然そう言い放つと部屋のドアが開く。
入ってきたのは長い赤いコートを着た若い紳士だった。
黒のズボンに体中に巻き付けたアトミックガンの弾がついたベルト。
そして右手には銃口が10以上はあるかと思われるアトミックガンが握られている。
頭に不思議な形のゴーグルを掛けて、茶色の髪を押し上げている。   

「・・・本物のフュール・・だったのですか・・。そちらは・・ノブナガ!!」

「やっぱりヴァンナだったのか。・・久しぶりだな。友よ。」

ノブナガが入ってきた男をヴァンナと呼び、
お互いに再会の時を喜び合うように抱き合った。
オレとセスは訳が分からず建ち尽くしていた。
   
「ちょ、ちょっとノブナガ。説明しなさいよ。」

「え?あ、悪い。えーとこっちの今打ちまくってくれたのがヴァンナだ。えーとオレの昔の戦場仲間ってやつかな。オレのいた星の戦いでまあ活躍してくれて、勝ったんだ。いわゆる英雄ってやつさ。」

次に口を開くのはヴァンナ。

「ふがないマネを致したことにおわび申し上げます。わたしはヴァンナと言います。まったく、白のフュールを撃つだなんて英雄の名が聞いてあきれますね・・。

「私はセス。こっちの妖精がご存知『白のフュール』・・まあいろいろ事情があってこんなんだけど、もともとは私たちの仲間のルーフっていう悪ガキだったんだよ。」

「オイこら、悪ガキは余計だろ。」

「そんな高いきれいな声で言われてもなんとも思わないよ。フュール。」

「・・・・オレがルー・・フュールだ。さっきまで俺たちを殺そうとしてた奴をすぐに信用なんてしたないけどノブナガがそう言うんじゃ仕方ないな。」

「よろしくセス。それからフュール。それにしてもこのゴーグルの性能も堕ちたものですね・・。」

そう言って頭のゴーグルに手をやる。
黒いレンズがついている変わった形のものだった。
使い込まれていて、ちょっと古びた感じがする。
ノブナガが突っ込みを入れる。

「それで遠くから見てたのか?」

「大体2,30キロくらい離れていました。銃弾が町の人に当たらないように計算した場所にいましたで。このゴーグルは遠距離狙撃用に作られたものなのですが、ノブナガが遠くからじゃ教団員に見えました。 この町に教団員が潜入したという情報を入手したので見張ってはいたのですが・・」
  
  「教団って?」

セスがオレを肩に乗せながら聞いた。
オレもその言葉には興味があった。

「この周辺の惑星、恒星を回って荒らし回ってるゼノバスの手先です。数十万体のガーデッドを操ってるゼノバス軍のナンバーツーが教団を仕切っているのです。」

ゼノバスの名前が出た時オレは一瞬頭に血が上った。
オレの両親を殺したのがそのゼノバス・ガーデッドだったからだ。
もともとこの旅はガーデッド撲滅と、オレの両親の敵討ちでもあった。
「オレの」と言ったが、セスもノブナガも同じ境遇にあった。
セスは住んでいた惑星を消され、ノブナガはさっき言ってた戦いで師匠を亡くした。

「ゼノバス軍のナンバーツー・・。」

「セス嬢、フュール。俺たちの旅の目的はそれだ。」

「教団の撲滅ってこと?」

「そうですね。ですが最終的にはゼノバス軍を壊滅させることが目的となります。無論ガーデッドと共に滅ぼさなければなりません。」

ヴァンナが言った。
オレの握り締めた手に一層力が入る。
セスも歯をぐっと食いしばる仕草を見せた。

「ヴァンナも目的は同じだ。・・今回のできごとは忘れてやってくれないか?」

「・・・今は無理でもそのうちに忘れることができれば。」

「オレもだ。ただでさえ命を狙われてるんだから。」

「・・・申し訳ありません。」

ヴァンナが何度も謝る。
きっちりとした輪郭が歪み、嘆きの表情を浮かべている。

「ヴァンナ。それからセス嬢、フュール。これから仲間は4人だ。力を合わせるのは簡単なことじゃない。戦闘も犠牲も伴うだろう。それでも教団と戦う自身はあるか?」

ノブナガが警告をする。
セスは深くうなずいた。
ヴァンナも手をギュッと握って胸の前に掲げる。
オレは・・・

「オレの使命は生き延びることだ。自分から死ににいくようなものだ・・。でも、本当にそれでいいのか・・。そう自分に問いかければそうじゃないことも分かる。オレも一緒に行くよ。 妖精だから身を隠しやすいし、何より心強い味方が3人いる。」

相変わらずの高い、きれいな声で言う。
これが、オレの使命であり、始まりの物語だった。

・・しかし自分でしゃべっていてこのしゃべり方ではかなり不自然だと思った。
そして女言葉、練習しようかなと思うこの頃であった。






                    ○




「とりあえず装備を整えるか。この星ではガーデッドはすでに50体は倒したし、辺境のこの星じゃあ教団の手もあまり届いていなから、そんなに被害は出ていない。 それより惑星首都の”ガザルイーブル”へ向かおう。戦闘人形の援護に行かないとな。あそこは被害が大きい。それに女王が『能力者』だってうわさもあるから。」

ノブナガがスラスラと言う。
元々地球を飛び出して宇宙を放浪しただけあって宇宙情勢をよく知っている。
ヴァンナがそれに賛同する。

「そうですね。戦闘人形でも限界がありますし。わたしたちが行けば戦力にはなるでしょう。今女王は戦闘兵を集ってたからちょうどいいですね。 女王が『能力者』ならなおさらですが。加えて言いますけど50体のガーデッドを倒したのならおそらく教団員もこの星を去ったでしょう。 辺境のこの星にガーデッドを援軍によこすはずがないですから。」

「そういえば3人の能力者って名前が白のフュール、青のギオ、赤のサガだよね?フュールはここにいるからいいとして残りの2人の内の1人が女王ってこと・・だよね?」
 
「セス嬢。これはただの噂に過ぎない。ギオ、サガのどちらかが女王って場合もある。それに守っている楔が第2銀河の中心にある”漆黒曜渦”(ブラックホール)だ。” ガザルイーブル”も第2銀河にある。場所もあってるし。」

セスにノブナガが答える。
オレは3人の会話を聞いていて思った。
そもそもなんで楔なんてこの世にあるんだろう。
なんのために。そして楔がはずれたら・・一体どうなってしまうんだろう・・・



「フュール。お前はどうするつもりだ?今まで通りガーデッドを倒して回るんだろう?ゼノバスに近づくにはナンバーツーの教団長が一番手っ取り早い手がかりだ。 身を守るためにもガーデッドはいないほうがいい。惑星首都”ガザルイーブル”に向かうべきなんじゃないか?」

「そうだな・・それでいいんじゃないかな?目的は変わってないワケだし。要は・・わ、私・・が、死ななければいいんだし。」

その言葉を聞いて3人は驚いた。
一番驚愕の色を露にしていたのはセスだった。

「フュール・・あんた、いつの間にそんなしゃべり方になったの・・・?」

「え?あ、だってこんな高い声でオレとか言うのも・・ほら、変だろ?・・あ、変でしょ?」

片言でしゃべる。
まあ徐々に慣れていくさと気楽に思った。

「それは変だけど・・急だったから。・・いいわ。フュール、頑張ってよ。言っとくけど大変よ?女の子って。いくら妖精だからって女の子に変わりないんだから仕草も女の子らしくしてよね。」

「え?あ、うん・・。」
 
肩の上で返事をするオレじゃなくて私。
周りはみんな大きな普通の人間。
私が小さくなったのにまだ慣れないのはこの環境だった。



町に出ると待ち行く人の視線を感じる。
みんながみんな、セスの肩に乗っている私を見ている。

「なんか・・・ここ歩きにくいなぁ。」

セスの肩に腰かけ、足をぶらぶらさせながら言った。
風とセスの歩く反動で髪が揺れる。

「フュールは歩いてないでしょ。」

セスは横顔で語る。
私が左を向くとセスの白い頬がある。
白くて柔らかそうな頬だ。

「それはそうだけどさ。でも・・居にくいでしょ?」

「まあそう言うな。妖精自体珍しいのにそれに加えてお前は『白のフュール』なんだから。注目されるのは無理ない。」

ノブナガがそう言った。
側でヴァンナがフフッと笑っている。

「ん、ここですね武器屋。アトミックガンの弾も補充しないといけないですし、セス様は魔法薬買うんでしたね?」

ヴァンナが前の建物を見る。

「うん、予算に余裕があればね。ノブナガは何か買うの?」

「オレはいいよ。」

「私も。」

セスとヴァンナは店の中へ入っていった。
私はノブナガと店の外で待ってることにした。
  


「武器屋なのにあんまり物が無いのね。」

「はい・・。そうみたいですね。」

殺風景な店内。 
壁に掛けられている剣や斧は古びていて使えそうもない。
店の端に置いてある”電光砲”(カリ・キャノン)も壊れていた。
武器屋なのに置いてあるのは変わった帽子やら古びた剱、鎖鎌など原始的な武器ばかりだった。

セスは店の中を見渡し、
ヴァンナは棚の上に置いてあるすらっとしたフルーレを手に取る。
木製でできた棚の上に無造作に置かれたフルーレ。
なにか不思議な感じを漂わせている。

「突き専用の剣みたいだな。」

「銃と一緒に背負えない?これ。」

「え、どういうことでしょう?」

「だって戦闘は遠距離ばかりじゃないでしょ?接近戦用の武器も必要だよ。ノブナガに剣術教えてもらったら?」

「ああ・・確かにそうですね。」

「魔法薬は置いてないみたいだし、私は”ガザルイーブル”で装備は整えるよ。」

「そうですか。うーん、アトミックガンの弾も無いですし、これだけ買っていきますか。」

ヴァンナが店の人を呼ぶ。
セスは店の中をじっくり見ていた。

ちなみに、先程のフルーレはレーザー加工が施されている。

  
「ホントにお前、変わったよな。フュールもなんだってお前を選んだんだろうな。」

店外で建物の壁に寄り掛かるノブナガ。
その肩の上に座り白銀の髪を靡かせる私。
ノブナガの改めて言うセリフ。
答えが見つからない。   

「フュールはなんで私を選んだの・・・?」

もはや存在しないフュールに問い掛ける私。
答えてくれるフュールはいない。
  
「悩んでも始まらないな。とりあえずオレたちは己の使命を全うするまでだ。オレはお前を守る。この刀でな。」

ノブナガはきりっとした眼差しをのぞかせ、
腰に提げる”獅子桜刄”に手をかける。
ノブナガはいろんな意味で私の兄貴分だった。
剣術も念撃も教えてくれたのはノブナガ。
この言葉は心細かった私の胸に響いた。

「ノブナガ・・。ありがとう・・・」

「んん?あ、い、いやいいんだよ。・・フッ、なんだかんだ言ってお前にお礼を言われたのは初めてだな。」

「え?そうだっけ。」

ノブナガは軽く目を閉じて笑っている。
ノブナガのこんな顔は久しぶりだった。

そんなノブナガの横顔を眺めていた時だった。

ガチャン!!

急に大きな音がたつ。
後ろの店の窓ガラスが割れた。
通行人や旅業者がその光景に目をやる。
もちろんノブナガも私も割れた窓ガラスを見る。

「店にはセスとヴァンナがいるよ!ノブナガ!!」

「わかってる!」

ノブナガは駆け出した。
もちろん店の中へ、だ。
私はノブナガにしっかりとしがみついていた。


  
「万引きとはやってくれるじゃねえか。」

「誤解よ!ヴァンナは代金の支払いしようとおじさんを呼んだんだから!」
 
セスが必死で説明する。
おじさんというのはこの店の主人らしい外見30〜40歳の、お兄さんとはとても言えないおじさん。
黒いレザーのジャケットに灰色のゲートルをつけていた。
なぜか歩き方が不自然だった。

「殿方。どういうつもりかは知りませんがわたしたちは決してこの品を盗もうとした訳では・・」

ヴァンナが丁寧に言うも、甲斐はなしだった。    
「おじさん」は店に飾ってあった古い”二連双斧”(ダブルアックス)を手に取る。
そして・・

「盗っ人は許さねぇ!!」

大きな両刃の斧を振り上げヴァンナに向かって切りつけてきた。

ドスッ!!
  
床が引き裂かれ、斧は木の床に挟まれた。
ヴァンナは軽くバックステップして斧をかわし、弾みで揺れたアトミックガンを手に取る。

その瞬間にノブナガと私が見せに傾れ込んできた。
ヤジ馬なのか、大勢の人が店の外に集まっている。
その波に押されてノブナガは店の中に倒れ込んだ。
倒れる瞬間に大きな音がした。

ゴンッ!!

「うっ!」

私は倒れる前に浮き上がり、
ノブナガに潰されることは無かった。

「ノブナガ!・・・大丈夫?すっごい音がしたよ。」

起き上がりながら額を押さえるノブナガ。

「ああ・・大丈夫だ。それよりどうしたんだって・・うわ!!」

きらりと光るダブルアックス。
刃はノブナガに向けられている。
それより早く動いたのはヴァンナだった。

「殿方。それ以上動くとあなたの命がありません。どうかご静粛願いたいですね。」

アトミックガンを構え言い放つヴァンナ。
私はセスの肩につかまっていた。

「セス、一体どうしたの?」

「ああ、フュール。いやね、あのおじさん、ヴァンナがフルーレを盗んだって勘違いしててさ。手がつけられないのよ。」

「ふーん。でもこの状態なら大丈夫でしょ。」

ヴァンナはアトミックガンの銃口を「おじさん」向け、 
ノブナガは体勢を立て直し、獅子桜刄を鞘から引き抜く。

「さて、そろそろ暴れるのはやめてもらおうか。誤解なら解かなきゃならないしな。」

「わたしはこのフルーレを盗もうなんて考えていません。どうか、信じてください。」

ヴァンナは再度説明をする。
だがこの「おじさん」、聞く耳を持たずにこちらに気づいた。
私は嫌な予感を覚えた。そしてそれは的中した。

「も、もしかして妖精か?」

「ええっ?」

私に気づいた「おじさん」はセスに向かって飛びかかってきた。
私は反射的に飛び立ち、セスはシールドを張って「おじさん」をはじき飛ばした。
勢いよくシールドで跳ね返る。

「ぐあっ。くっ、せっかく本物の妖精をみつけたんだ。ここで引き下がる訳には・・」

ガン!! 

ノブナガがついにしびれを切らし、太刀を床に打ち付ける。
はじきとばされ、床に転ぶ「おじさん」の目の前に刃が光る。
ヴァンナも頭にアトミックガンを突きつける。

「いい加減にしろ。」

「まあ、うすうす気づいてはいましたが・・・あなたは『ヘイム』ですね。」

「なっ、なんのことだ?」

「隠しても無駄だ。人間の歩き方ぐらい練習しろ。」

「フッ・・ハハハハハ!!」

ヘイムと呼ばれた「おじさん」は急に笑い出した。
そして頭に手をやると上に引っ張る。
すると頭がその方向に伸びてそれにつられて顔も伸びる。

バッ!

顔につけていたマスクを取り払う。
現れたのは男の子の顔。
不敵な笑みを浮かべている。
すばやく立ち上がると、ヴァンナのアトミックガンをはらった。

「レアハンター”ヘイム”。こんな辺境の星に何のようです?」

ヴァンナが問い掛ける。
笑ったままのヘイムは答えるどころかまだ私のほうに歩み寄る。
セスの前にノブナガが立ちはだかり、ヘイムを止める。

「それ以上足を進めれば命はない。いくらヘイムと言えど・・」

太刀をヘイムの喉元に突きつけた。

「ノブナガ・・いやに殺気立ってるじゃねえか。ただ妖精を手に入れようとするオレを殺すか?」

「言っておくがな、ここにいる妖精は『白のフュール』だ。お前には触れることすらできない。」

「知ってるさ。だがな、そんなことはどうでもいいんだよ。妖精を捕まえる手はいくらでもある。」

「だから・・どうすると言うのです?」

「英雄ヴァンナ。キサマも堕ちた、な。堕ちたのはそのゴーグルだけじゃないのか。」



3人のやり取りを後ろで眺めるセスと私。

「セス、ヘイムって何?」

「フュールになると昔の記憶無くしたりするの?ヘイムは宇宙のレアハンターって呼ばれてて、珍しい物なんかすぐ自分の物にしたがるタチの悪い奴なんだけど・・知ってるでしょ?」

「ええ?まあ・・うん。そうか。でも、あいつは・・」

「・・・?」



「さて、妖精をこちらに渡してもらおうか。」

ヘイムは右手を差し出し、煽る。
ノブナガは喉元に突きつけた獅子桜刄をさらに突き立てる。

「そうはいかない!」

「フュール様を守るのが役目なのです。」

ヘイムはその言葉にも動じず、
咽に突きつけられた太刀を素手ではらった。

「ノブナガ、オレを殺すことなど無理だ。」

目の前にまで迫るヘイム。
セスの肩から離れ、側にあった棚に移ると、ヘイムの目を見つめた。
言葉遣いからは想像も出来ない透き通った灰色の目。

「紫電の瞳、光る白銀の髪に羽か・・まちがいないな・・。」

「どうするつもり?君は私に触れることは出来ないよ。」

「・・・捕縛結界というものを知ってるか?『白のフュール』。」

【”捕縛結界”(クォートエンド)】

私の腕に足に、
魔法で出現した鎖が巻き付く。
完全に私の自由は奪われた。

「くっ・・これは!」

「ほらな。触れることなく捕まえた。」

「フュール!」」様!」

ノブナガ、セス、ヴァンナの声が重なる。
私は身動きできないからだを揺さぶり、結界からの脱出を図る。

「無駄だ。戦闘に猛る魔法使いでも捕縛結界からは逃れられない。」

私の身体に暖かいなにかが流れ込む。
全身を行き渡るどこか懐かしい温もりだった。

「フュール・・?」

セスが青い目を開き、こちらを見つめる。
 
「・・私を誰だと思っているのです?」

自分の声では無い声が発せられる。
しかもそれは元の私の声、ルーフの声だった。
まだ完全に声変りをしていないが、軽く低い声が混ざる。

「この声は!?」

ノブナガがうろたえる中、
私はルーフの分身を纏い、羽を広げ、完全に宙に浮き上がる。
そして私の自由を奪っていた捕縛結界を振りほどき、氷のようにそれは散った。

「!!」

私の後ろにルーフが立っているかのように、そこにいた。
だが、その姿は薄く、空気と同化しているみたいだった。

「3人とも、今すぐここから離れろ!」て!」

2つの声が折り重なる。
これは私の意志でも有り、ルーフの意志でもあった。
 
白い小さな右手を前に差し出す。
同じように、ルーフの右腕が私の腕をすり抜けて前に差し出される。


【”円形螺旋撃”(ブレストウェーブ)】

紫電に光る目を大きく見開く。
手から小さな衝撃波が発動した。
小さいながらも強力な衝撃波は、ヘイムを突き飛ばす。   
ヘイムは店の壁を打ち破って外に放り出された。
レンガ製の壁の破片は外の道に散乱し、道行く人の注目を集めた。その中に倒れるヘイム。

白銀の髪は揺れ、
その魔法とともにルーフの影は消え去った。

「・・・・」

自分の右手を見つめる私。
まださっきの暖かさが残っていた。

「私はルーフでルーフは私・・・」

フワフワと宙に浮く私を優しく包むこれもまた白い手。
  
「フュール、その力は・・・?それに一緒にいたのはルーフなの?」

「その答えはきっとここにあるんだと思うよ。」

白い手の主であるセスに、
艶麗の笑みを浮かべながら手首に縛ってある青いリボンを握る。
ハートの紋章が握り締めたことでゆがむ。
そして私の足下に残るはルーフの黒いマントだった。

 




                    ○
  
 





「もうすぐこの星ともお別れだな。」

改まって言うノブナガ。
地球とほぼ同じ環境のこの星はかなり気に入っていたノブナガにとって、
この星を出るのは惜しいに違いなかった。

「これでガーデッドがいなければ・・この宇宙が平和なら別れも惜しくはないでしょうが・・」

と言うのはヴァンナ。
それはもっともだった。

「それが目的、教団を倒すんでしょ?」

「セスの言う通りだね。私は今はフュールだけど、分かった通り、いつもルーフは側にいる。きっと・・ここにいる。」

私は自分の胸に手を置く。
じっと目を閉じて念じる。
目を閉じれば暗い世界が広がるはずだが、今は違った。
どこか明るい、柔らかい世界・・そんな感じがした。

 

  
ヘイムをとりあえずは追い返し追っては無い。
そして、歩くにつれて見えてくるこの星の玄関、”コスモステーション”。

「やっと見えたな。・・・この時期に”ガザルイーブル”に入星できればいいがな。」

「そうですね・・。ガーデッド襲撃できっと荒れているでしょう。」

ガザルイーブルにも兵隊はいる。
SG(スターガーディアン)、通称自動人形と呼ばれているロボット達だ。
数々の武器を駆使し、まず強いと言える。
死を恐れず、立ち向かうのだが、成りは小さい少女の形をしている。

「まあなんとかなるでしょ。」

セスは軽い口調で言った。
私もそんな感じで考えていた。
それが大きな間違いだとも知らず・・

to be continued・・

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